(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に示す本実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。図面は模式的なものであり、装置やシステムの構成等は現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0030】
本実施の形態の電波伝搬における損失量の推定方法は、防災無線、列車無線、消防無線、警察無線、携帯電話機無線等の配置局の検討、回線設計、マイクロ波干渉等に適用できるが、本実施の形態では地物をビルとして説明する。
【0031】
なお、本実施の形態では、表層モデルはCAD等の面構成データにより再現される都市モデルも含むが、本実施の形態ではこの表層モデルは、航空機によるレーザ計測や、ステレオ写真による自動マッチングにより得ているとして説明する。
【0032】
また、本実施の形態は、ナイフエッジ回折モデルの考え方を基本とする(
図1参照)。次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
このナイフエッジ回折モデル(多重リッジ回折モデルともいう)による損失量は電波の損失量を、
(1)自由空間伝搬損失値、(2)山岳回折損失値、(3)近接リッジ付加損失値、の総和として計算できる。
【0034】
なお、(1)自由空間伝搬損失値は、空間を伝わる距離によって減衰する損失量である。
【0035】
(2)山岳回折損失は、地形(建物含む)を回り込む際に減衰する損失量(回折損失値:第一フレネルゾーン半径の1/2以内にリッジがかかる際に生じる遮蔽損失値)である。この遮蔽損失値の算出は、ナイフエッジ回折モデルにおいては無限遠の壁を想定している。
【0036】
(3)近接リッジ付加損失値(近接リッジ損失値ともいう)は、電波の伝搬に必要なゾーン(第一フレネルゾーン)が地形に遮蔽されることにより減衰する損失量(遮蔽損失値)である。
【0037】
本実施の形態の電波伝搬における損失量の推定方法は、前述の(2)、(3)に対して改良を施したものであり、
図2に示すような概念である。
図2においては、ビルは1個として説明している。
【0038】
すなわち、
図2に示すように、表層モデル(DSM)を用いて送信局Tと受信局Rとの間の伝搬路の中心線DRi(DR1,DR2)(見通し線ともいう)を定めてビルの回折点Mi(M1、M2・・)を抽出し(
図2(a)参照)、これらの回折点をビル毎にグルーピングして代表回折点Msiを定める(
図2(b)参照)。
【0039】
そして、第一フレネルゾーンFi(F1、F2)を求め、この第一フレネルゾーンの断面に重なるビルが表層モデルに存在する場合は、遮蔽の割合を算出して(
図2(c)参照)、この遮蔽率が近接リッジ付加損失値に含むようにする。
【0040】
また、右廻り及び左廻りについても伝搬路の中心線DRiの回折損失を求める(
図2(d))。そして、最も損失値が小さい損失値を実測値に最も近似する損失値とする。
【0041】
なお、表層モデルはCAD等の面構成データにより再現される都市モデルも含むが、本実施の形態ではこの表層モデルは航空機によるレーザ計測やステレオ写真による画像マッチングにより得ているとして説明する。
【0042】
<実施の形態>
以下に本実施形態に係る伝搬路損失推定シミュレーション装置の構成を
図3を用いて説明する。
【0043】
図3に示すように、本実施の形態の伝搬路損失推定シミュレーション装置1は、キーボード11、マウス13、地図データベース14、地図表示処理部15、表示部17、表層モデルを記憶したDSM・DB(データベース)19、送受点読込部21、送受点間伝送路標高値サンプリング部23等を備えている。
【0044】
また、回折点地物毎決定部32、回折損失計算部33、第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35、仮想障害物パラメータ算出部36、近接リッジ損失計算部38、左周り・右回りルート算出指令部39、近似実測値決定部40、伝搬路総損失量算出部41等を備えている。
【0045】
さらに、標高値リスト25(メモリ)、回折モデル解析用のワーキングメモリ50、回折モデルの回折点Miが記憶される第1回折点リスト51(メモリ)、第1回折点リスト51(メモリ)の中の間引かれた回折点Mpiが記憶される第2回折点リスト52(メモリ)、第2回折点リスト52の代表回折点Msi並びに左右回りのリッジ深さ(Lsi、Rsi)が記憶される第3回折点リスト53(メモリ)、遮蔽率が記憶されるメモリ54を備えている。
【0046】
さらに、上回りの回折損失値及び近接リッジ損失値が記憶されるメモリ55a、55b並びに左回りの回折損失値が記憶されるメモリ55c、右回りの回折損失値が記憶されるメモリ55d、推定した実測値が記憶されるメモリ56、伝搬路総損失量が記憶されるメモリ57等を備えて、表層モデルからビルの回折点Mi(M1、M2・・)を抽出し、これらの抽出回折点(Mpi)をグルーピングしてビル毎に代表回折点Msiを1個定め、第一フレネルゾーンの断面に重なるビルの遮蔽の割合を前述の表層モデルを用いて算出し、この遮蔽率による影響が近接リッジ付加損失値に含むようにする。
【0047】
また、ビルの代表回折点Msiに対応するリッジ深さCs´iを基準にしてビルの左右の幅を表層モデルを用いて求める。そして、これをビルの右、左回りのリッジ深さとすることで、表層モデルを用いてもナイフエッジ回折モデルに組み込めることになる。
【0048】
前述の地図表示処理部15、送受点読込部21、送受点間伝送路標高値サンプリング部23、回折点地物毎決定部32、回折損失計算部33、第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35、仮想障害物パラメータ算出部36、近接リッジ損失計算部38、左周り・右回りルート算出指令部39、近似実測値決定部40、伝搬路総損失量算出部41等は、ROM(図示せず)に記憶されたプログラムであり、CPU(図示せず)がプログラム実行用のRAM(図示せず)に記憶して、これらの処理を実行する。
【0049】
なお、伝搬路検討のために、電波の見通し線を直線で表現できるように、地球の曲率を補正している。補正の考え方は,等価地球半径という考え方を使う。一般には、地球の半径を4/3倍としている。こうすることにより、電波を直線で作図でき、どこで引っかかる(回折する)かについて容易に検討できるようになる。
【0050】
つまり、表層モデル(DSM)からサンプリングした標高リストに対しては、前述のように地球の曲率を補正して回折点計算、遮蔽率計算、近接リッジ損失値の計算、回折損失値の計算等を行なっている。
【0051】
すなわち、グラフの曲率分、標高値を加算して作図するイメージであり、「等価地球半径に基づく補正表現を行い、幾何学的に回折点を検討する。」ということを行なっている。但し、本実施の形態では、グラフの横線を真っ直ぐにして記載している。
【0052】
<各部の説明>
地図表示処理部15は、キーボード11、マウス13によって指定された地図を地図データDB14から読み込み、この地図データを表示部17に表示する。
【0053】
送受点読込部21は、キーボード11、マウス13によって指定された地図上の送信点Tおよび受信点Rの位置座標Tm(x,y),Rm(x,y)並びに入力されたアンテナ高、周波数等の無線回線緒元(無線回線パラメータともいう)を取得し、これらを結ぶ直線Liを求める。
【0054】
送受点間伝送路標高値サンプリング部23は、送受点間読込部21からの直線Li(送信局及び受信局含む)を表層モデル(X,Y、Z)に定義して、この直線Liに対応する各格子の座標(x、y、z)を順次読み込む。そして、送信局を基準にして各格子のx座標値(又はy座標値)を距離換算し、z値を標高値に換算して、この距離値(di)と標高値(hi)とを一組にした標高値データをメモリ25に記憶する(標高値リスト25を作成する)。
【0055】
回折点地物毎決定部32は、標高値リスト25が作成される毎に、この標高値リスト25の標高値データ(標高値、距離値:送信局、受信局を含む)をメモリ50に読み出して、送信局Tと受信局Rとの間において見通線DRiを順次生成し(
図4、
図5参照)、この回折点Mi(M1、M2・・)を抽出して第1回折点リスト51(
図7(a))参照)を作成する。なお、第1回折点リストの回折点Mi(M1、M2・・)の距離値diは、距離値dMi(dM1、dM2、・・)と記載し、標高値hiは、hMi(hM1、hM2、・・)と記載している。
【0056】
そして、この第1回折点リスト51の回折点Mi(M1、M2・・)の標高値データ(dMi、hMi)を読み出して、閾値K(例えばK=5m)以上の間隔を有しているものは抽出回折点Mpiとし、閾値K以下の場合は標高が最大の回折点Miを抽出回折点Mpi(Mp1、Mp2・・)として抽出するフィルタリング処理を実行し、これらの抽出回折点Mpiのリッジ深さCsiをナイフエッジ回折モデルを用いて求めて第2回折点リスト52(
図7(b)参照)に記憶する。
【0057】
また、抽出回折点Mpi毎に、そのリッジ深さCsi及び標高値hppiを標高リストから各々求め、その標高値リストにおける抽出回折点Mpiを基準にしてリッジ区間ddiを求めて、これをその抽出回折点Mpiに関連づけて第2回折点リスト52に記憶する(
図7(b)参照)。
【0058】
そして、第2回折点リスト52の各抽出回折点Mpiのリッジ区間ddiが重なるリッジ区間ddiを検索し、この検索した区間ddiを有する抽出回折点Mpiを検索する。
【0059】
さらに、これらの重なり合う区間ddi同士において、リッジ深さCsiを比較し、最もリッジ深さが深い抽出回折点Mpiを第2回折点リスト52から検索する。なお、リッジ深さに代えて標高値を比較して最も標高値が高い方を採用する。
【0060】
そして、検索した抽出回折点Mpiを一つの建物に対しての代表回折点Msiとして(
図6参照)、第3回折点リスト53に記憶すると共に(
図7(c)参照)、代表回折点Msiに対応する第2回折点リスト52の距離値dipを距離値dsiとし、標高値hipを建物高さHsiとし、並びに重なる区間ddiを仮想建物奥行きDsiとして、各々対応づけた第3回折点リスト53(
図7(c)参照)を作成する。この重なる区間ddiについては詳細に後述する。
【0061】
さらに、回折点地物毎決定部32は、第2回折点リスト52の抽出回折点Mpiから代表回折点Msiを得た後に、代表回折点Msi以外の標高値hip(Hsi)によって回折が発生しないように、代表回折点Msiに対応する標高値リスト25の標高値データ(距離値di、標高値hi)以外は無視する。また、この代表回折点Msiの決定の手法については図を用いて後述する。
【0062】
なお、回折点Mi、抽出回折点Mpi、代表回折点Msiというのは識別記号である。
【0063】
仮想障害物パラメータ算出部36は、第3回折点リスト53に代表回折点Msiが記憶されると、各代表回折点Msiの建物高さHsiと距離値diとからなる標高値データと送受信局の標高値データとに基づく見通し線を生成してナイフエッジ回折モデルによって各々のリッジ深さCs´iを求めて、このリッジ深さCs´iまでの標高値hpp´iを各々求める。
【0064】
そして、代表回折点Msi毎(距離値diと標高値hpp´i)に、その代表回折点Msiと送信局と受信局とを結ぶ直線LMsiを表層モデルに定義する。
【0065】
この直線LMsiを基準にして、左直角方向に直線Lmsiを標高値hpp´iを有して移動させながら標高値hpp´iが途切れる点を左側の交点とし、この交点と直線LMsiとまでの区間の距離Lsiを求める。これを左側の建物の幅Lsi(若しくは左回りにおけるリッジ深さLsiともいう)として、その代表回折点Msiに関連付けて第3回折点リストに記憶する(
図7(c)参照)。
【0066】
また、この直線LMsiを基準にして右直角方向に直線Lmsiを標高値hpp´iで移動させながら標高値hpp´iが途切れる点を右側の交点とし、この交点と直線LMsiとまでの区間の距離Rsiを求める。これを右側の建物の幅Rsi(若しくは右回りにおけるリッジ深さRsiともいう)として、その代表回折点Msiに関連付けて第3回折点リストに記憶する(
図7(c)参照)。これを総称して仮想障害物パラメータとも称する。
【0067】
左回り・右回りルート算出指令部39は、第3回折点リスト53の代表回折点Msi(送信局、受信局含む)に関連付けられているLsi又はRsiを読込指示と共にリッジ深さCs´iとして回折損失計算部33に送出する。
【0068】
このとき、Lsiの送出に当たっては左回りを示すコード、Rsiの送出に当たっては右回りを示すコードを送出するのが好ましい。
【0069】
左回り・右回りルート算出指令部39は代表回折点Msiに関連付けられているリッジ深さCs´iを上回りのコートと共にリッジ深さCs´iとして回折損失計算部33に送出する。
【0070】
回折損失計算部33は、回折点地物毎決定部32から読込み指示と代表回折点Msiの生成が知らせられ、かつ左回り・右回りルート算出指令部39から上回りルートの算出が知らせられると、第3回折点リスト53のデータである標高値hi(Hsi)、距離値di及び無線回線パラメータJi(基本諸元(周波数、基地局座標、送信出力)、アンテナ(指向性パターン、利得、方位、高さ)、その他(給電線損失、その他の損失)を用いて
図8、
図9に示す多重リッジ解析(ナイフエッジ回折モデル)のプログラムによって代表回折点Msi同士を直線で繋いだ伝搬路の中心線DRi(DR1、DR2・・・)を生成し、各代表回折点Msiにおける回折損失パラメータUiを求めて、回折損失Ziを求めて損失結果記憶部55のメモリ55a(
図35(a)参照)に記憶する。
【0071】
また、左回り・右回りルート算出指令部39から右又は左回りルートの算出が知らせられると、求めた回折損失値Ziをメモリ55d(
図35(b)参照)又はメモリ55c(
図35(c)参照)に記憶する。
【0072】
この回折損失Ziは、
図10(a)に示すようにして求める。
図10(a)は回折点Mと送信局Tと受信局Rとのみを示して、その概念を説明している。
図10(a)にはナイフエッジ回折モデルの概念を示している。
【0073】
そして、回折損失パラメータUiは、リッジの深さCsi÷同じ地点の第一フレネルゾーン半径rsiで求められる。
【0074】
すなわち、
Ui=Csi/rsi
として求め、回折点Msiに関連させてメモリ55a(
図35(a)参照)に記憶する。メモリ55aには、回折点Msiと回折損失値Ziと回折パラメータUiとが関連(対応)づけられて記憶される。
【0075】
本実施の形態では
図10(b)の関係式を図示しないメモリに記憶して、rsi、Csiを求めて、この関係式で直ちに算出するのが好ましい。
【0076】
第一フレネルゾーン内障害物遮蔽率調整部35は、第3回折リスト53のレコードを順に読み込んで、このレコード内の代表回折点Msi同士(T、Rを含む)を読み込んで、各々の代表回折点(T、Rを含む)の間において、第一フレネルゾーンFi(F1、F2・・・)を表層モデルに定義する(
図30参照)。
【0077】
この第一フレネルゾーンFiの半径rsi(断面の半径)は、
送信局Tと回折点M(本実施の形態では代表回折点Msi)との距離値をd1、受信局と代表回折点Msiとの距離値をd2とすると、
rsi=√λ・d1d2/D
但し、D=d1+d2
で示される。
【0078】
なお、本実施の形態では第一フレネルゾーンの半径rsiは、360MHzの1000mの見通し区間で最大14.4mとしている。また、第一フレネルゾーンの断面(円又は楕円)は、半径を一定として計算してもよい。
【0079】
そして、距離値diを設定して、この距離diに対応する第一フレネルゾーンの位置において、この第一フレネルゾーンの断面(円)を求めて表層モデル(DSM:X,Y,Z)に定義する。そして、この断面内のデータ群の面積Sを求める。このとき、この面積Sを用いて断面内における遮蔽率δiを求める(
図29参照)。
【0080】
この遮蔽率δiは、
S×100/πr
si2として求める。
【0081】
次に、標高リストにおいて前述の設定した距離diの標高値hiを読込み、この標高値hiを基準にして水平線Ldsmiを断面内に定義する。そして、この水平線Ldsmiが断面内に存在する場合は、水平線Ldsmi(仮想標高調整線ともいう)と断面とが成す断面下部の面積S´を求め、この面積S´と面積Sとを比較して、この比較結果で水平線Ldsmiを調整(上昇又は下降)する。なお、面積S´と面積Sとが一致した場合は、水平線LdsmiのZ座標を標高値h´iとし、この標高値h´iに前述の設定した距離diに対応する標高値hiを更新して後述する近接リッジ損失計算部38にこの標高値h´iでの近接リッジ損失値JR(遮蔽損失)を求めさせる。
【0082】
また、前述の水平線Ldsmiが断面内に存在しない場合は、断面下部端の所定位置(例えば端から20cm程度)まで水平線Ldsmiを上昇させて、以後は同様に面積S´、面積Sとが一致するまで上昇させる。そして、一致した場合は、このときの水平線LdsmiのZ座標を標高値h´iとし、この標高値h´iに前述の設定した距離diに対応する標高値hiを更新して後述する近接リッジ損失計算部38にこの標高値hi´での近接リッジ損失値JR(遮蔽損失)を求めさせる。
【0083】
なお、前述の上昇には基準がある。本実施の形態では遮蔽率δiが49%となる個所を最大値としている。
【0084】
前述の代表回折点Msi同士(T、Rを含む)と、式rsiと、距離diと、標高値hiと、面積Sと、面積S´と、遮蔽率δiと、標高値h´i(調整標高値)とフレネルゾーン番号とは関連づけられて図示しないメモリ35aに記憶する。これは後で必要に応じて解析に用いてもよい。
【0085】
近接リッジ損失計算部38は、回折損失計算部33からの読込み指示と、上回りのルートの送信局と受信局との回折損失値の算出が終了したことが知らせられと、標高値リスト25(標高は補正されている)の各データ(代表回折点:T,R含む)に対して見通し線(伝搬路の中心線DRi)を作成し、無線回線パラメータJiを用いて
図11に示す近接リッジ算出の手法(プログラム)によってクリアランスパラメータUcを求めて近接リッジ損失値JRを求め、これを損失結果記憶部55のメモリ55b(
図34参照)に記憶する。
【0086】
図34に示すように、代表回折点Msi同士(T、Rを含む)と、式risと、一定間隔の距離diと、標高値hiと、面積Sと、面積S´と、遮蔽率δiと、標高値h´i(調整標高値)とフレネルゾーン番号fiと近接リッジ損失値JRとを関連づけて記憶する。つまり、メモリ35aのレコードを複写して、これに近接リッジ損失値JRを関連づけている。
【0087】
近似実測値決定部40は、メモリ55a、55c、55dのレコード(上回り、右回り、左回り)を順次引き当てて、これらの中で最も回折損失が小さいものを検出し、これを最も実測値に近い回折損失値としてメモリ56に記憶する。
【0088】
伝搬路総損失量算出部41は、最も実測値に近い回折損失値と、メモリ55bの近接リッジ損失値とを合計すると共に,自由空間伝搬損失値とを加えた総計を伝送路の総損失量としてメモリ57に記憶する。
【0089】
すなわち、左右のいずれかのルートが回折損失が最も実測値に近い回折損失値とされても、上回りの近接リッジ損失を加えている。従って、左又は右ルートの近接リッジ損失の算出をあらためて行なわなくともよい。
【0090】
図12は回折点地物毎決定部32の概略構成図である。
【0091】
図12に示すように、回折点地物毎決定部32は回折点探索部32a、閾値処理部32b、各リッジ深さ・区間処理部32c、回折点グループ化処理部32d、不要回折点除去部32e等を備えている。
【0092】
回折点探索部32aは、標高値リスト25が作成される毎に、この標高値リスト25の送受点間のデータ(標高値、距離値)の中の凸頂点を回折モデル上のビルの回折点Mi(M1、M2・・)として第1回折点リスト51(
図7(a)参照)に記憶する。但し、送信局T、受信局Rは
図7には図示しない。
【0093】
閾値処理32bは、第1回折点リスト51の送信局Tを基準にして仮想パスを定義し(
図8、
図9参照)、この回折点Mi(M1、M2・・)が閾値K(K=5m)以上の間隔を有しているものは抽出回折点Mpiとし、閾値K以下の場合は標高が最大の抽出回折点Miを回折点Mpi(Mp1、Mp2・・)として抽出し、この抽出回折点Mpiを第2回折点リスト52に記憶する(
図6、
図7(b)参照)。なお、第2回折点52には、送信局T、受信局Rの標高値データも記憶されているが、本実施の形態では図示しない。
【0094】
各リッジ深さ・区間処理部32cは、第2回折点リスト52の抽出回折点Mpiを用いて
図8、
図9に示すようにして、リッジ深さCsiを求めると共に、前述のリッジ区間ddiを求めて、これらを回折点に関連付ける(
図7(b)参照)。
【0095】
回折点グループ化処理部32dは、抽出回折点Mpi毎に、そのリッジ深さCsiまでの標高値hppiを標高リストから各々求め、その標高値リストにおける抽出回折点Mpiを基準にして送信局側及び受信局側に標高値hppiを有する標高値データの区間ddi(リッジ区間ddiという)を求めて、これをその抽出回折点Mpiに関連づけて第2回折点リスト52に記憶する(
図7(b)参照)。この区間ddiには、左右の端点の距離値diと標高値hipと端点間の距離とが関連付けられている(図示せず)。
【0096】
なお、第2回折点リスト52の抽出回折点Mpiの標高値データは、距離値(di)はdip、標高値(hi)はhipと記載している。
【0097】
そして、第2回折点リスト52の各抽出回折点Mpiのリッジ区間ddi同士を比較し、これらのリッジ区間ddiが重なる区間を検索し、この検索した区間ddi(重ならせた区間)を有する抽出回折点Mpiを検索する。重なりあっているリッジ区間には、重なり合っていることを示すフラグを付加する。重なるかどうかは両端の距離値で判断できる。
【0098】
さらに、重なり合う区間ddi同士において、リッジ深さCsiを比較し、最もリッジ深さが深い抽出回折点Mpiを第2回折点リスト52から検索する。このとき、リッジ深さCsiに代えて最も標高値が高い抽出回折点Mpiを検索してもよい。重なり合う区間において標高値が同じものが複数存在している場合は、送受信局は標高値が相違していることが多いので、リッジ深さCsiが深い方を検索するのが好ましい。
【0099】
そして、検索した抽出回折点Mpiを一つの建物に対しての代表回折点Msiとして(
図6参照)、第3回折点リスト53に記憶すると共に(
図7(c)参照)、代表回折点Msiに対応する第2回折点リスト52の距離値dipを距離値dsiとし、標高値hipを建物高さHsiとし、並びに重ならせた区間ddiを仮想建物奥行きDsiとして対応づけた第3回折点リスト53(
図7(c)参照)を作成する。
【0100】
このとき、仮想奥行きDsiには、このDsiに重なる区間ddiを関連付けるのが好ましい。
図7(c)においては、MS2を例にすると、Ms2には、重なる区間ddiとしてdd3、dd4、dd5が関連づけられ、仮想奥行きDsiがdd5(Ds2)であることを一例として示している。
【0101】
なお、第3回折点リスト53にも送信局の高さと距離値、受信局の高さと距離値とからなる標高値データが記憶されているが、本実施の形態では図示しない。
【0102】
不要回折点除去部32eは、第3回折点リスト53に代表回折点Msiを記憶すると、後述する回折損失計算部33において、代表回折点Msi以外の標高値hiによって回折が発生しないように、標高値リストの代表回折点Msi以外を無視する。
【0103】
<動作説明>
以下に本実施の形態の電波伝搬における損失量推定シミュレーション装置1の動作を説明する。
【0104】
ここで、数値表層モデルDSMについて説明を補充する。
【0105】
数値表層モデルDSMデータ(表層モデル)は、最小単位をピクセル(小さな正方体:x,y)とし、そのピクセル毎に表層面の高さが割り付けられている。
【0106】
DSMデータは、メッシュ構造を有しており、利用の目的に応じメッシュの大きさ(0.5m、1m、2m、5m、10mなど)を選定すればよい。
【0107】
一般に、DSMデータは、対象範囲を格子で覆い、格子点毎に地物の標高値(建物や樹木等の高さを含む)が入力された(割り付けられた)表層モデル(X,Y、Z)のことを指す。
【0108】
本実施形態では、最小単位ピクセルが所定のメッシュサイズを有し、格子点毎に地物の標高値z(建物や樹木等の高さを含む)が入力されている数値表層モデルDSMデータ(地表モデル)をDSM・DB19に保存してあることとして扱う。
【0109】
以下に本実施の形態の電波伝搬における損失量推定シミュレーション装置1の概略動作を
図13、
図14のフローチャートを用いて説明する。
【0110】
本実施の形態では、
図16に示すように、2つのビル上を通る直線Liが定義されたとする。
【0111】
そして、送受点間伝送路標高値サンプリング部23によってこの間の標高値リスト25が生成されているとする。
【0112】
(ステップS10)
次に、回折点地物毎決定部32の回折点探索32aは、標高値リスト25の標高値データ(DSM)に対してナイフエッジ回折モデルによる回折点計算処理を実行する(S10:
図4、
図5参照)。
【0113】
この回折点計算処理により得られた回折点位置(送信局からの距離)を第1回折点リストとして作成する。第1回折点リスト51は、
図7(a)に示すように、回折点番号Miと距離値dMiと標高値hMi等からなる。
【0114】
(ステップS15)
次に、回折点地物毎決定部32の閾値処理部32bは、第1回折点リスト51を読み込み、閾値K未満の間隔で近接する回折点位置については、標高値が最も高い個所(Mi)を優先して残すフィルタ処理(最も高い個所以外は削除)を行なう(S15:
図5参照)。
【0115】
このフィルタ処理後の回折点のリストを第2回折点リストと称する。また、フィルタ処理後の回折点を抽出回折点Mpiと称する。
【0116】
第2回折点リストは、
図7(b)に示すように回折点Mpiと送信器からの距離値dipと、その標高値hipと等からなる。
【0117】
具体的には、すべての回折点を距離順にソートし、順に2点間の間隔を確認して低い回折点に削除フラグを設定する。すべての確認を終えたところで、削除フラグのついた回折点を削除する。なお、本実施形態では、K=5.0mとするが、その他の数値でもよい。
【0118】
(ステップS20)
次に、各リッジ深さ・区間処理部32cは、第2回折点リスト52が作成されると、各々回折の深さCsiを計算し、その地上からの高さhppiにおけるリッジの区間を、標高リスト(DSM)との交点から決定する(S20:
図20(a)、(b)参照)。
【0119】
図20(a)、(b)はMp1とMp2とのリッジの区間ddiの算出を示している。この他にMpiが存在する場合は、リッジ区間ddiの算出は、同様なやり方で実施する。
【0120】
具体的には、各リッジ深さ・区間処理部37は、第2回折点リスト52に対して、各々の回折の深さCsiを計算し、その地上からの高さhppiにおけるリッジの区間を、表層モデル(DSM)との交点から決定し、第2回折点リスト52に付加する(
図7(b)参照)。
【0121】
(ステップS25)
次に、回折点グループ化部32dは、第2回折点リスト52に対して、リッジ区間ddiが重なる回折点群をグループとみなし、最も標高値が高い(高さHsi)、回折点を代表回折点Msiとする(
図20(c)参照)。この代表回折点Msiのリストを第3回折点リスト53と称する。
【0122】
ここで、仮想障害物パラメータ算出部36は、各グループ回折点のリッジ区間の最大範囲において、グループの奥行きDsi、同様に各回折点の高さhppiから横方向におけるDSM・DB19の表層モデル(DSM)との交点を算出し、その伝搬路方向の右手側最大範囲をRsi、左手側をLsiとし、パラメータDsi、Rsi、Lsi、Hsiで直方体(
図25参照)を定義し、第3回折点リストにおける仮想障害物と定める。
【0123】
(ステップS30)
次に、不要回折点除去部32eは、
図15に示すように、第3回折点リスト53以外のリッジ以外で回折が発生しないように標高値リスト(DSM)の伝搬路地形(標高値)を編集する(S30)。
【0124】
例えば、
図15(a)に示すように、代表回折点Msiと、代表回折点Msi+1と各々の奥行きDsi(重なるリッジ区間ddi)とが第3回折点リスト53に設定された場合は、各々の奥行きDsiの重なるリッジ区間ddiの間に対応する標高値リストの距離値群をデータ無し(空)と判断し、標高値リストの標高値データを表示する場合は、標高値データがある場合は、そのまま表示し前述のデータ無しの間は、直線で表示する(
図15(b)参照)。
【0125】
図15においては、m1までが標高値データがあって、m1とm2との間がデータ無しとされて(空)、この間をスキップしてm1からm2の間を直線で結び、m2からm3までがデータ有りでそのまま表示し、m3からm4までがデータ無しでスキップして、その間を直線で結んだ場合を示している。つまり、重なる区間ddiとされた標高値リストの区間はスキップされるので、この間に実際に標高値データが標高値リストに存在していても、それが読込まれることは無い。つまり、代表回折点以外で回折が発生しないようにしている。
【0126】
(ステップS35)
次に、第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35は、第3回折リストの各回折点間を用いて標高リストにおいて、第一フレネルゾーンの計算を行なう。ここで、伝搬路の横断方向のDSM・DB19の表層モデルのDSMデータを用いて遮蔽率(断面内の建物との遮蔽率)を計算し、伝搬路中心線上のDSMの伝搬路地形が、同等の遮蔽率となるように高さを編集(上昇又は下降)する(遮蔽部伝搬路地形編集)。ここで、上昇の場合には、新たな回折点が発生しないように、49%以上の遮蔽率は49%とする(S35:
図2(c)参照)。
【0127】
前述の遮蔽部伝搬路地形編集について説明する。但し、標高値を上昇する場合を一例として説明する。
【0128】
図17は送受信局間を上から見たときの伝搬路地形編集を説明する説明図である。
図18は伝搬路地形編集をグラフにして説明する説明図である。
図18においては、左縦軸に標高hi、横軸に距離di、右縦軸に遮蔽率をとっている。
【0129】
図17に示すように、伝搬路の中心線DRiはビルBL1に近接し(アの部分)、小さなビルBL2上(イの部分)、大きなビルBL3上(ウの部分)を通っているとして説明する。
【0130】
この
図17において、アの部分では伝搬路の中心線DRi上にはリッジがないが第一フレネルゾーン内にビルBL1が遮蔽物として存在する。このため、アの部分では標高が上昇する補正(
図18のア)となる。
【0131】
また、イの部分では伝搬路の中心線DRi上にリッジがあるが、第一フレネルゾーンに対して幅が狭いことから無限遠の壁と見なせる遮蔽率とはならない(
図18のイ)。
【0132】
また、ウの部分では、第一フレネルゾーンの幅に対して、十分な幅があるので、十分なリッジが存在することになる(
図18のウ)。
【0133】
従って、アの部分では
図18に示すように、元標高に対して、前述のh´iだけ標高を上げて(Ga)近接リッジ損失値を求める(Gb)。
【0134】
(ステップS40)
次に、回折損失算出部33、近接リッジ損失計算部38は、編集した伝搬路地形データ(S30で編集した伝搬路地形、S35の遮蔽部伝搬路地形編集)を用い、ナイフエッジ回折モデルのシミュレーションを実施し、回線損失値、近接リッジ損失値を算出する。
【0135】
(ステップS45)
次に、左回り・右回りルート算出指令部39は、第3回折点リスト53の仮想障害物パラメータRsi、Lsiを水平面の右回り、左回りの回折の深さと見なして、それぞれの回折損失を回折損失計算部33に計算させる。近似実測値決定部40は各回折点における回折損失値は、通常の地形遮断面における回折損失値及び近接リッジ損失の上回りルート、上記右ルート、左ルートの回折損失との3通りから最も小さいものを採用する。
【0136】
(ステップS50)
次に、伝搬路総損失量算出部41は、近接リッジ損失及び回折損失値を総計し、自由空間伝搬損失を加えることで、伝送路の総損失量とする。
【0137】
<詳細説明>
前述の回折点地物毎決定部32の各リッジ深さ・区間処理部32c、回折点グループ化処理部32dについて説明を補充する。
【0138】
図16、
図5に示すような2つのビルの上を通る伝搬路を考える。大型の構造物の場合、ステップS15でのフィルタ処理(回折点削除手法)では1つの構造物につき1回折点にまとめることはできない。このため、送信局Tから受信局Rへ至る伝搬路(距離D)上に障害物があり,伝搬路の形状をそのまま扱うと、2回の回折が生じる。
【0139】
しかし、障害物は1つの地物であるため、2回回折(M
1,M
2)としてナイフエッジ回折モデルを適用すると損失量を大きく見積もり過ぎる傾向がある。
【0140】
一般に、遮蔽物がある伝搬路において第一フレネルゾーンの幅に対して、十分な幅がある場合は
図10(a)に示すように、回折点としてナイフエッジ回折モデルの回折損失の式は、遮蔽物を無限大の平面として計算する。このため、
図10(b)に示すように、見通し限界点においては、−6dBの損失があることになる。
【0141】
そこで、以下に示す方法によって、ビル1個あたりに1個の回折点を付与する。
【0142】
本実施の形態においては、既に抽出回折点Mpi(Mp1、Mp2、Mp3・・・)が決定されて第2回折点リストに保存されているとする。
【0143】
初めに回折点地物毎決定部32の各リッジ深さ・区間処理部32cの処理を
図19のフローチャートを用いて説明する。
【0144】
各リッジ深さ・区間処理部32cは、第2回折点リスト52の初めの抽出回折点Mpi(送信局を含まない)を設定(読み込む)する(S1901)。
【0145】
次に、第2回折点リスト52の抽出回折点Mpiの抽出回折点データKDi(標高値データ:距離値dip、標高値hip)を読み込む(S1902)。
【0146】
第2回折点リスト52のレコードには、
図7(b)に示すように、回折点記号であるMpiに距離値dip、標高値hip等が関連させられて記憶されている。
【0147】
次に、ナイフエッジ回折モデルの解析手法を施して、MpiのリッジCsiを求めて、第2回折点リスト52に、このMpiに関連させて記憶する(S1904:
図7(b)参照)。
【0148】
このS1904における解析手法について
図20を用いて簡単に説明する。
図20は1個の建物においてMp1、Mp2を得た場合を一例とし、リッジ深さ・リッジ区間・回折点グループ化までを説明する説明図である。
【0149】
但し、
図20においては、DSMデータである標高リストのデータを距離値と標高値とでグラフにすると、建物は完全な四角形状のDSMデータとはならないで、例えば地盤から斜めに上昇する凸形状になっている。このため、端部は多少の傾斜を持たせて図示している。
【0150】
図20(a)に示すように、送信局の標高値データ(標高値hi0)からMp2の標高値h2pまでの仮想パスL1を求め、Mp1の標高値h1pから仮想パスL1に対しての垂線L2を求め、この垂線L2と仮想パスL1との交点LPaを求め、この交点LPaに対応する標高hpp1を求める。そして、h1p−hpp1の差をMp1のリッジ深さCs1とする。
【0151】
また、
図20(b)に示すように、第2回折点リストにおいて、Mp1から送信局が位置している縦軸(標高軸)に対して仮想パスL4を求め、この仮想パスL4と標高軸との交点から受信局の標高値hiBまでの仮想パスL5を求める。
【0152】
そして、Mp2の標高値hp2から仮想パスL6に対しての垂線L6を求め、この垂線L6と仮想パスL5との交点LPbにおける標高hpp2を求める。そして、Mp2の標高値hp2と交点PLbの標高値hpp2との差をMp2のリッジ深さCs2とする。ここまでが、Mp1、Mp2のリッジ深さCsi(リッジ高ともいう)を求めるまでの処理の概略である。このCs2、h2p、hpp2は回折点Mp2に関連させられて第2回折点リスト52に記憶される(
図7(b)。
【0153】
そして、交点LPaである標高hpp1を基準として、水平線HLj(j:a、b、・・・)を求める(S1905)。
図20(a)においては、Cs1までの標高hpp1を基準にして水平線HLaを求めることを示し、
図20(b)においては、hpp2を基準にして基準にして水平線HLbを求めることを示している。
【0154】
次に、この水平線HLj(j:a、b・・・)と標高値リストの送信局側の標高値データとの交点Pai、Pbiを求める(S1906)。
【0155】
図20(a)においてはPa1(距離d1a、標高値hpp1)と、Pb1(距離d1b、標高値hpp1)が求められる。
【0156】
そして、この交点PaiとPbiとの距離差をMpiのリッジ区間ddiとして求める(S1907)。
【0157】
次に、第2回折点リストに抽出回折点Mpiは他に存在するかどうかを判断する(S1908)。ステップS1908において、他に存在する場合と判定した場合は、Mpiを更新して処理をステップS1901に戻して、次のMpi(M
pi+1)のリッジ深さC
si+1、リッジ区間dd
i+1を算出させる(S1909)。
【0158】
図20を用いて説明すると、
図20(a)に示す交点Pa1(送信局側:距離d1a、標高値hpp1)とPb1(受信局側:距離d1b、標高値hpp1)との距離差(dd1=d1b−d1b)をMpiのリッジ区間dd1として求める。
【0159】
また、
図20(b)に示す交点Pb2(受信局側:距離d2b、標高値hpp2)とPa2(送信局側:距離d2a、標高値hpp2)との距離差(dd2=d2b−d2a)をMp2のリッジ区間dd2として求める。
【0160】
標高値リスト、
図20を用いて説明する。
【0161】
図20(a)における交点LPaの標高hpp1を基準(HLa)として標高値リストに設定し(フラグ)、この標高値以上の標高値を連続して有する標高値データ群(Ti)を標高値リストから送信局側及び受信局側方向で検索する。標高値リストにおける標高hpp1を有する送信局側の標高値データ群が途切れる個所のレコードの標高値データが送信局側の交点Pa1である。
【0162】
また、受信局側の標高値データ群が途切れる個所のレコードの標高値データが受信局側の交点Pb1である。
【0163】
そして、交点Pa1の距離値d1aと交点Pb1と距離差dd1(d1b−d1a)を求めて第2回折点リストに記憶する。
【0164】
さらに、
図20(b)における交点LPbの標高hpp2を基準(HLb)として標高値リストに設定し(フラグ)、この標高値以上の標高値を連続して有する標高値データ群(Ti)を標高値リストから送信局側及び受信局側方向で検索する。標高値リストにおける標高hpp2を有する受信局側の標高値データ群が途切れる個所のレコードの標高値データが受信局側の交点Pb2である。
【0165】
また、送信局側の標高値データ群が途切れる個所のレコードの標高値データが送信局側の交点Pa2である。
【0166】
そして、交点Pa2の距離値d2aと交点Pb2と距離差dd2(d2b−d2a)を求めて第2回折点リストに記憶する。
【0167】
このリッジ区間ddiは第2回折リストのMpiに関連させられて記憶(リッジ区間とするフラグが立てられる)される(
図7(b)参照)。
【0168】
次に、回折点地物毎決定部32の回折点グループ化処理について説明する。
【0169】
図21及び
図22は回折点グループ化処理の動作を説明するフローチャートである。
【0170】
回折点グループ化処理部32dは、第2回折点リスト52の各回折点Mpi(Mp1、Mp2・・)のリッジCsi、リッジ区間ddi(始点、終点、直線)が全て求められたかどうかを判定する(S2101)。
【0171】
ステップS2101において、全て求められたと判定した場合は、第2回折点リスト52におけるMpiのリッジ区間ddiをメモリJji(図示せず)に設定する(S2102)。
図7(b)においては、Mp1のリッジ区間dd1を設定する(
図20のMp1)。メモリJjiは距離軸と標高軸とを有するのが好ましい。つまり、両端が分る。
【0172】
次に、このメモリJjiのリッジ区間ddiと第2回折点リスト52の各Mpiの各リッジ区間ddi同士を比較して重なるリッジ区間ddiがあるかどうかを判定する(S2103)。
【0173】
第2回折点リストを用いて説明する。前述の設定したMpiのリッジ区間ddiのいずれか端点(距離値)を含む(重なる)リッジ区間ddiを有するMpiが第2回折点リスト52にあるかどうかを判定する。
【0174】
例えば、
図20を例にして説明すると、MP1のリッジ区間dd1とMp2のリッジ区間dd2とは重なる。
図20においては、Mp2のリッジ区間dd2を重ならせたリッジ区間ddi(Dsi)とする。また、
図36においては、Mp1のリッジ区間dd1とMP2のリッジ区間dd2とが重ならない。しかし、Mp3のリッジ区間dd3に対してはリッジ区間dd1及びリッジ区間dd2はに重なっていると判定し、dd3を重ならせたリッジ区間ddi(Dsi)とする。
【0175】
ステップS2103において、重ならせたリッジ区間ddiがあると判定したときは、Mpiに対して重なる全てのリッジ区間ddiを第2回折点リスト52から読込み(S2104)、メモリHhi(図示せず)にそのリッジ区間ddiをMpiに関連させて記憶する(S2105)。
【0176】
例えば、
図20においては、Mp1のリッジ区間dd1に、重なる区間はMp2のdd2として関連させて記憶する。
【0177】
また、
図36においては、Mp3に、Mp1のリッジ区間dd1、Mp2のリッジ区間dd2、Mp3のリッジ区間dd3を関連付けて記憶する。
【0178】
そして、Mpiに関連付けられた各リッジ区間ddiは同じ建物のリッジ区間と判定する(S2106)。
【0179】
次に、同じ建物のリッジ区間と判定された各リッジ区間ddiの中で、最も送信局側の端点と最も受信局側となる端点とを結ぶ区間を1つの建物のリッジ区間Dsiと決定する(S2107)。
【0180】
そして、これらの、Mpiの中で最もリッジ深さCsiが深いMpiを代表回折点Msiとする(S2108)。なお、最も標高値が高いものを代表回折点Msiとしてもよい。
【0181】
また、ステップS2103において、重なるリッジ区間がないと判定したときは、設定したMpiのリッジ区間を1つの建物のリッジ区間Dsiとし(S2109)、このMpiを代表回折点Msiとする(S2110)。
【0182】
そして、
図22に示すように代表回折点Msiとされた第2回折点リストのMpiの標高値hipを代表回折点Msiの標高値Hsiとして第3回折点リストにMsiの記号を付加して記憶する(S2201)。
【0183】
次に、代表回折点Msiとされた第2回折点リストの標高値hipに対応する距離値dip、リッジ区間ddi(両方の端点の距離と長さ)をMsiに関連付けて第3回折点リストに記憶する(S2202)。
【0184】
次に、第3回折点リスト53のリッジ区間Dsiをスキップ区間として標高値リスト25に設定する(S2203:
図7(d)参照)。そして、リッジ区間Dsiを奥行きとする(S2204:
図7(c)参照)。
【0185】
スキップ区間というのは、この区間は標高値データを読込まない区間であり、スキップ区間であることを示すフラグ(○印)を対応させている。例えば、
図7(d)に示すように、d100〜d120がスキップ区間とされる。従って、不要回折点除去部32eはこのスキップ区間は直線で表示することになる。
【0186】
次に、他にMpiは第2回折点リスト52にあるかどうかを判断する(S2205)。ステップS2205において、他にあると判断したときはMpiを更新して処理を
図21のステップS2102に戻して、第2回折点リストの次のMpiに対してステップS2102から2204の処理を行なう(S2206)。
【0187】
上記の重ならせたリッジ区間Dsiの決定について説明を補充する。
【0188】
例えば、ステップS2102で設定したMpiのリッジ区間ddiのいずれかの端点(距離値、標高値)又は両端が重なる他のMpiのリッジ区間ddiを抽出し、抽出したリッジ区間(重ならせたリッジ区間)に重なる区間を関連付けてメモリHhiに記憶する。
【0189】
そして、これらの関連付けられた各リッジ区間の内で最も距離値が送信局側となるリッジ区間の始点と最も受信局側となるリッジ区間ddiの終点とを結ぶ区間(直線)を1つの建物のリッジ区間Dsiとする。
【0190】
次に障害物パラメータ算出部36の処理を説明する。
【0191】
図23、
図24は障害物パラメータ算出部36の処理を説明するフローチャートである。
図25は障害物パラメータの算出を建物図で説明する説明図である。障害物パラメータ算出部36の処理は、
図25に示すように、幅Wsiの決定は、代表回折点Msiにおける高さで、横断方向に地表モデル(DSM)との交点を左右に検索する。これを回折点Ms
1〜Ms
2の区間において連続して評価し、その最大値とする。ただし,スキャン範囲は伝搬路長に見通しがあると仮定したときの第一フレネルゾーンの最大半径までとする。
【0192】
次にフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0193】
図23に示すように障害物パラメータ算出部36は、第3回折リストの代表回折点Msiに対して見通し線を引いてナイフエッジ回折モデルの計算式で各々のリッジ深さCs´iを求める(S2301)。
【0194】
次に、これらのCs´iまでの標高値hpp´iを求める(S2302)。すなわち、
図8及び
図9、
図20(a)、
図20(b)に示すようにして求める。
【0195】
次に、送信局(距離値のみ)と受信局z(距離値のみ)と代表回折点Ms(距離値のみ)を地表モデル(DSM)の座標系(X−Y−Z)に定義する(S2303)。
【0196】
次に、送信局と受信局と代表回折点Msiとを結ぶ直線LMsiを地表モデル(DSM)の座標系で求める(S2304:
図25(a)参照)。
【0197】
そして、この直線LMsiの移動方向Vi(Y軸方向又はX軸方向)を読み込み(S2305)、直線LMsiを代表回折点Msiに関連づけられているhpp´i(第3回折点リスト参照)を有してVi方向に移動する(S2306)。つまり、直線LMsiを基準にして新たに移動直線Lmsiを求めて、これを垂直方向(直線LMsiに対して左右直角方向)に代表回折点Msiに関連づけられているhpp´iを有して移動させる(
図37参照)。
【0198】
次に、移動距離が予め設定されている一定距離(例えば20m)以内かどうかを判定する(S2307)。
【0199】
ステップ(S2307)で移動距離が一定距離以内と判定した場合は、DSMデータがあるかどうかを判定する(S2308)。
【0200】
ステップS2308において、DSMデータが存在すると判定したときは、このDSMデータSMDi(xi,yi、zi)をメモリに記憶して、処理をステップS2306に移して直線Lmsiをさらに移動させる(S2309)。
【0201】
また,ステップS2308において、DSMデータが存在しないと判定したときは移動を停止して処理を
図24のステップS2504に移す(S2310)。
【0202】
そして、ステップS2308でDSMデータが存在しないと判定したときは、
図24に示すように、メモリの前回のDSMデータSMD
i−1の座標(yi)をVi方向側のビルの端VEi(VEa、VEb)とする(S2401:
図25(a)、
図37参照)。
【0203】
そして、このVEiの座標値(yi)とDSMの座標系に定義されたMsiの座標値(yi)との差をMsiからのVi方向(Y軸方向:左側)の幅Lsiとして第3回折点リスト53にMsiに関連させて記憶する(S2402:
図7(c)参照)。
【0204】
すなわち、
図25(b)に示すように、ビルの代表回折点Msiに対して左側の幅Lsiと右側の幅Rsiとを求めたことになる。また、奥行きDsiを求めているので、
図25(b)に示すように仮想的にビルの立体形状を得たことにもなる。
【0205】
従って、伝搬路に対して幅W
S・高さH
Sい・奥行き(厚さ)Dsiの仮想の遮蔽物があるものとすることができる。また,伝搬路が障害物の左端から通過する位置をL
Si、右端からの位置をR
Siとしているので、これら4つのパラメータ(奥行き(厚さ)Dsiを除く)によって回折損失を調整することができる。
【0206】
次に、移動方向Viは他にあるかどうかを判断する(S2403)。
【0207】
ステップS2403において、移動方向が他にあると判断した場合は移動方向を更新して(S2406)、処理を
図23のステップS2305に移して他の方向(たとえばX軸方向:右側)の幅Rsiを求めて第3回折点リスト53に記憶させる(
図7(c)参照)。
【0208】
また、ステップS2403において、Vi方向が他にないと判定したときは、代表回折点Msiが第3回折点リスト53に他にあるかどうかを判定する(S2404)。
【0209】
ステップS2504において、代表回折点Msiが第3回折点リスト53に他にあると判定したときは代表回折点MSiを更新(Msi←M
si+1)して(S2405)、処理をステップS2301に移す。
【0210】
すなわち、送信局と受信局との間に、建物が存在している場合は、その建物の右幅Rsi、左幅Lsiを地表モデル(DSM)から求めて、この右幅Rsi又は左幅Lsiを標高値hiとして回折計算部に出力するので、建物の高さが十分ある場合は、その高さ方向を無限の壁としてナイフエッジ回折モデルが近似することになる。つまり、表層モデルを用いても建物の左右回りの計算をナイフエッジモデルに組み込みさせることができる。
【0211】
次に、フレネルゾーン内障害物遮蔽率調整部35の処理を説明する。
【0212】
図26、
図27は第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35の動作を説明するフローチャートである。本実施の形態では
図29(a)に示す送信局Tから受信局Rに遮蔽物が存在する場合を例にして説明する。
図29(b)は
図29(a)の横断面Cを拡大した断面図である。
図29(a)に示すように送信局Tと受信局Rとの間には高いビルがあって回折は1回している。
【0213】
しかし、
図29(b)に示すように、横断面Cでは伝搬路の中心線RDiは2つのビルの間を通過している。一般には、第一フレネルゾーンの半径rの1/2以内の重なりの場合は、シミュレーション装置においては近接リッジ損失値として算出されない。
【0214】
ところが、実際はこの遮蔽物の影響で受信強度は低下する。このため、第一フレネルゾーンに重なるような建物がある場合は、半径rの1/2以内であってもしっかりとシミュレーション結果に反映させるべきである。第一フレネルゾーン内障害物遮蔽率調整部35はこの第一フレネルゾーンに重なる建物をシミュレーション結果に反映させる調整を行なう。
【0215】
本実施の形態では第3の回折点リストには、代表回折点MsiとM
si+1とが記憶されている場合とし、標高値を上昇させる場合として説明する。
【0216】
第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35は、無線回線パラメータJi及び代表回折点Msiを読み込んでこの代表回折点Msiに対応する表層モデルに各々第一フレネルゾーンFiを求める(S2601)、そして、標高値リストの距離値diを順次読み込み(S2602)、この距離値diに対応する第一フレネルゾーンの断面RDkiを求める(S2603)。
【0217】
次に、表層モデルの距離diに対応する位置に断面RDkiを定義して、この断面RDki内に存在するDSMデータを内挿処理によってサンプリングする(S2604)。
【0218】
そして、サンプリングしたDSMデータの面積Sを求め(
図29参照:S2605)、この面積Sの遮蔽率δiを求める(S2606)。
【0219】
次に、
図27に示すように、ステップS2602で読込んだ距離値diに対応する標高値hiを読み込み、この標高値を基準にして水平線Ldsmiを断面RDkiに定義(求める)する(S2701)。つまり、表層モデルに定義した断面RDkiの中心hdiの真下の標高値を標高値リストを検索し、この標高値を基準にしてRDki内に水平線Ldsmiを定義している。
【0220】
図29(b)においては、建物が2つあって、その間には何もないので、地盤の標高値で水平線Ldsmiが初めに定義される。
【0221】
そして、この水平線Ldsmiが断面RDki内に存在する高さかどうかを判定する(S2702)。
【0222】
ステップS2702において、水平線Ldsmiが断面RDki内に存在しないと判定した場合は、水平線Ldsmiを断面RDkiの下部端の所定位置まで上昇させる(S2704)。
【0223】
さらに、ステップS2701において水平線Ldsmiが断面内に存在する場合(
図38参照)は、処理をステップS2705に処理を移す。
【0224】
次に、この上昇した水平線Ldsmiと断面RDkiとが囲む断面RDki下部の面積S´を求める(S2705)。
【0225】
次に、求めた面積Sと面積S´とが等しくなったかどうかを判定する(S2706a)。ステップS2706aにおいて、面積Sと面積S´とが等しくないと判定したときは、面積S´が面積Sより小さいかどうかを判断する(S2706b)。
【0226】
ステップS2706bにおいて、面積S´が面積Sより小さいと判定したときは、水平線Ldsmiをさらに上げて、処理をステップS2705に戻して、その高さで面積S´を求める(S2707)。
【0227】
さらに、ステップS2706bにおいて、面積S´が面積Sより大きいと判定したときは、水平線Ldsmiを下降させて(S2706c)、処理をステップS2705に戻して、面積Sと面積S´とが同じか、面積S´が大きいか、小さいかの判定を行なわせる。
【0228】
また、ステップS2707において、面積Sと面積S´とが同じと判定した場合は、ステップS2605で求めた面積Sの遮蔽率δiが49%以下(45%、46%でもかまわない)かどうかを判定すると(S2708)。
【0229】
ステップS2708において、断面積Sの遮蔽率δiが49%以下ではないと判定したときは、ステップS2705で求めた面積S´が遮蔽率δi49%とするために水平線Ldsmiを下げて(S2709)、面積S´を求める(S2710)。
【0230】
次に、求めた面積S´は遮蔽率δiが49%かどうかを判定する(S2710a)。ステップS2701aにおいて、面積S´は遮蔽率δiが49%でないと判定した場合は、処理をステップS2709に移して、さらにLdsmiを下げさせる。
【0231】
また、ステップS2710aにおいて、面積S´が49%と判定したときは、Ldsmiの上昇を停止させる(S2711、
図29(b)参照)。
【0232】
そして、この停止したときのLdsmiの標高値h´iを求める(S2712)。次に、ステップS2602で読込んだ距離値diの標高リストの標高値hiを、この標高値h´iに更新する(s2713)。
【0233】
次に、代表回折点Msiは他にあるかどうかを判定し、他にある場合は、処理をステップS2601に戻し、他にない場合は処理を終了する(S2714)。
【0234】
また、ステップS2708において、Sの遮蔽率δiが49%以下と判定した場合(つまり、S=S´で、Sが49%以下の場合)は、処理をステップS2711に移して、水平線Ldsmiの上昇を停止させて、そのときの標高値h´iに更新させる(
図29(b)参照)。
【0235】
すなわち、
図29(b)に示すように、2つのビルの間に、遮蔽物が存在しない場合は、断面RDkiの中心hdiの直下に垂直線を引いて、標高値hiを検出し、この標高値hiを基準にして水平線Ldsmiを求め、この水平線Ldsmiが断面RDki内に存在するかどうかを判断する。
図29(b)においては、初期時であるから存在しない。
【0236】
そして、水平線Ldsmiが断面RDki内に存在しない場合は、Ldsmiを断面RDkiの下部端から所定位置に上昇させて、面積S´を求め、この面積S´と面積Sとが一致するか、小さいか又は大きいかを判断し、小さい場合は、さらに上昇させ、大きい場合は下降させる。そして、一致時点の水平線Ldsmiの標高値h´iに標高値リストの標高値hiを更新する。
【0237】
また、
図38に示すように、断面RDkiの中心hdiから垂直線を引いて、この垂直線に交わる標高値hiを基準として水平線Ldsmiを引いたときに、この水平線Ldsmiが断面RDki内に存在した場合(
図37においては、初期時において存在する。
【0238】
そして、水平線Ldsmiが断面RDki内に存在する場合は、Ldsmiと断面RDkiの下部とが成す下部領域の面積S´を求め、この面積S´と面積Sとが一致するかどうかを判断し、一致しない場合は、面積S´が面積Sより小さいか、大きいかどうかを判断する。
【0239】
そして、面積S´が面積Sより小さい場合は、水平線Ldsmiを上昇させ、逆に面積S´が面積Sより大きい場合は、水平線Ldsmiを下降させている。
【0240】
そして、面積S´と面積Sとが一致したときの水平線Ldsmiの標高値h´iに標高値リストの標高値hiを更新する。
【0241】
すなわち、第一フレネルゾーン内遮蔽率調整部35は、代表回折点、送信局及び受信局の各々の標高値データを読込んで、これらの間の第一フレネルゾーンを求め、該第一フレネルゾーンに建物が掛かる場所における該第一フレネルゾーンの断面形状の中心直下の標高値データを前記標高値リストから検索し、この標高値データの標高値がナイフエッジ回折モデルに組み込まれるように調整する手段である。
【0242】
そして、これは、
(f1).前記標高値リストの代表回折点、送信局及び受信局の各々の標高値データを読込んで、これらの間の第一フレネルゾーンを求める手段と、
(f2).前記記憶手段の距離値(di)を順に読み込み、該距離値毎に、この距離値(di)での前記第一フレネルゾーンの個所の断面を求め、この断面の中心の標高値(hdi)、距離値を基準にして該断面を前記表層モデルに定義する手段と、
(f3).前記断面内に含まれる前記表層モデルのデータを抽出して前記断面内に収めて、この断面内のデータ領域の面積Sを求める手段と、
(f4).前記断面の中心直下の標高値データを前記標高値リストから引き当て、この標高値データが前記断面内に存在するかどうかを判定する手段と、
(f5).前記断面内に前記中心直下の標高値データが存在する場合は、該標高値データの標高値hiを基準にして前記断面内に水平線(Ldsmi)を定義する手段と、
(f6).前記断面内の中心直下の標高値データが前記断面内に存在しない場合は、該標高値データの標高値hiを前記断面内の所定位置まで上昇させ、この上昇した標高値h´iを基準にして前記断面内に水平線(Ldsmi)を定義する手段と、
(f7).前記水平線(Ldsmi)が断面内に定義される毎に、この水平線(Ldsmi)が囲む断面内の下部の面積S´を求め、この面積S´が前記面積Sに対して大きいか又は小さいか若しくは同じかどうかを判定する手段と、
(f8).前記面積S´が前記面積Sに対して大きい場合は、前記水平線(Ldsmi)を下降させる調整又は小さい場合は該水平線(Ldsmi)を上昇させる調整を行なって前記(f4)のステップにこの調整した水平線(Ldsmi)で前記判定を行なわせる手段と、
(f7).前記(f5)の手段で、前記面積Sと前記面積S´とが同じと判定した場合は前記調整を停止する手段と、
(f8).前記停止に伴って、該停止時の前記水平線(Ldsmi)の標高値(h´i)を求め、この標高値(h´i)に前記(f4)の手段で読込んだ前記標高値データの標高値(hi)を更新する手段と、
(f9).該更新に伴って前記標高値リストの前記第一フレネルゾーンの各標高値データを前記(F2)のステップに出力して近接リッジ損失値を求めさせる手段と
を備えている。
【0243】
次に、左回り・右回りルート算出指令部39の処理を説明する。
【0244】
次に、左回り・右回りルート算出指令部39は、回折点地物毎決定部32の不要回折点除去部32eから送信局と受信局との間の代表回折点の間の不要データを除去したことが知らせられると、回折点損失計算部33に対して上ルートの算出の指令を出力する。
【0245】
また、左回り・右回りルート算出指令部39は、回折点損失計算部33から送受点間の代表回折点の回折損失を求めたことが知らせられると、回折点損失計算部33に対して右ルート又は左ルートの算出の指令を出力する。
【0246】
回折損失計算部33は、左回り・右回りルート算出指令部39から上ルートの回折損失の算出指令が送出されると、第3回折点リスト53の各代表回折点Msiのデータ(Cs´i、距離値di)とを読み込んで
図9、
図10、
図11に示すナイフエッジ回折の解析方法で、各代表回折点Msiの回折損失パラメータUiを求める。
【0247】
そして、
図11(b)に示すようなグラフ(関数)を用いて回折損失パラメータUiにおける回折損失Ziを求める。
【0248】
この回折損失Ziと代表回折点Msiとを対応させて上回り用の回折損失結果用メモリ55a(
図35(a)参照)に記憶する。
【0249】
また、左回り・右回りルート算出指令部39から右ルートの回折損失の算出指令が送出され、かつ左回り・右回りルート算出指令部39から第3回折点リスト53の代表回折点Msiの右側幅Rsiが距離値diと共に出力されると、前述の多重リッジ回折(ナイフエッジ回折モデル)伝搬路の解析方法で回折損失パラメータUiを求めて、
図11(b)に示すようなグラフ(関数)を用いて回折損失パラメータUiにおける右回りの回折損失ZRiを求める。
【0250】
この回折損失ZRiと代表回折点Msiとを対応させて右回り用の回折損失結果用メモリ55dに記憶する(
図35(b)参照)。
【0251】
さらに、左回り・右回りルート算出指令部39から左ルートの回折損失の算出指令が送出され、かつ左回り・右回りルート算出指令部39から第3回折点リスト53の代表回折点Msiの左側幅Lsiが距離値diと共に出力されると、前述のナイフエッジ回折モデルの解析方法で回折損失パラメータUiを求めて、
図11(b)に示すようなグラフ(関数)を用いて回折損失パラメータUiにおける左回りの回折損失ZRiを求める。
【0252】
この回折損失ZRiと代表回折点Msiとを対応させて左回り用の回折損失結果用メモリ55cに記憶する(
図35(c)参照)。
【0253】
すなわち、右回りを代表にして説明すると、
図33に示すように、ビルの右回りの回折損失を第3回折点リスト53に記憶しているRs(左の場合はLs)から求めたことになる。
【0254】
次に近接リッジ損失計算部38について説明を補充する。
【0255】
近接リッジ損失計算部38は、第一フレネルゾーン内障害物遮蔽率調整部35から送受信局間において標高値調整が終了したことが知らせられると、第3回折点リスト53に記憶されている代表回折点Msiを順に読み込む。
【0256】
そして、無線回線パラメータを用いて
図12(a)に示すように第一フレネルゾーンを求めて近接リッジ損失JRを求めて、近接リッジ損失算出結果用メモリ55bに記憶する(
図34参照)。
【0257】
例えば、
図34に示すように第一フレネルゾーンの番号fiと、このフレネルゾーンを得た代表回折点、その代表回折点までの距離di、元標高値hi、調整標高値h´、近接リッジ損失JR、面積S、面積S´、遮蔽率δi等を1レコードとして記憶する。
【0258】
前述の近接リッジ損失JRは、クリアランスパラメータUc=Cs´i/rsiを求め、
図12(b)に示すグラフを用いて近接リッジ損失JRを求める。なお、必要に応じて
図12(c)に示す補助グラフを用いて算出する。
【0259】
従って、上ルートにおいては、1建物に対して1個の代表回折点に対して回折損失値及び第一フレネルゾーンの半径rの1/2以上の部分に重なる部分による損失の影響を考慮した近接リッジ損失並びに右ルートの回折損失、左ルートの回折損失が算出される。
【0260】
そして、近似実測値決定部40がメモリ55a(上回り)の回折損失と、メモリ55cの左回りの各回折損失値と、メモリ55d(右回り)の回折損失値とを比較して、これらの中で最も回折損失が小さいものをメモリ56に記憶する。
【0261】
伝搬路総損失量算出部41は、最も回折損失が小さいルートの回折損失とメモリ55bの近接リッジ損失と、自由空間伝搬路損失値とを加えた総計を伝送路の総損失量としてメモリ57に記憶する。
【0262】
図32は、横軸に実測値,縦軸に計算結果として各観測点をプロットしたものである。
【0263】
理想的には y=x の直線上にデータが並ぶ表現である。y=xの下側では,計算結果が実測値に対して過小であり,上側では逆に高すぎる受信電圧となったことになる。
【0264】
ここで各計算手法を比較すると,従来の計算では,弱電界域で実測値に比べて非常に低く計算されていることがわかる。Egli式は,回帰式から弱電界域になるに従い,実測値に対して高めに計算されている。これは地物の影響量が増えてくる領域では,統計的な前提条件から離れるためと解釈することができる。
【0265】
一方で本実施の形態の上記の計算手法では,回帰式がほぼy=xの直線に一致している。
【0266】
したがって,この手法による回折損失の調整モデルは,実測評価した25箇所のデータを非常によく説明していると言える。
【0267】
なお、このような手法を
図33に示すような鉄道無線の伝搬路における電波の損失計算シミュレーションに適用すれば、最も損失の少ない位置に無線局を配置できる。
【0268】
また、上記実施の形態では第1、第2、第3回折点リストを用いて説明したが、これらは一つの記憶手段に記憶して用いてもよい。