(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、近年、電気機器等の電源として使用されており、さらに、電気自動車(EV、HEV等)の電源としても使用されつつある。そして、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、その更なる特性向上、例えばエネルギー密度の向上(高容量化)、出力密度の向上(高出力化)やサイクル特性の向上(サイクル寿命の向上)、高い安全性等が望まれている。
【0003】
現在、小型電気機器等に使用されているリチウムイオン二次電池の多くはLiCoO
2等のリチウム複合酸化物を正極活物質として用いたものであり、高容量、高寿命の蓄電デバイスを実現している。しかしながら、これらの正極活物質は、異常発生時の高温高電位状態等において、激しく電解液と反応し、酸素放出を伴って発熱し、最悪の場合、発火に至る場合がある等の問題がある。
【0004】
近年、高温高電位状態でも熱安定性に優れた正極活物質として、ポリアニオン系の正極材料が検討されている。この内、オリビン型Fe(LiFePO
4)や類似結晶構造を有するオリビン型Mn(LiMnPO
4)等が検討され、一部、電動工具用途等に実用化に至っている。また、最近、熱安定性に優れた類似正極活物質として、ナシコン型のリン酸バナジウムリチウム、Li
3V
2(PO
4)
3が注目されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ポリアニオン系正極材料は、電子電導性が低く、表面に導電性カーボン等を被覆する必要がある。ところが、活物質表面に導電性カーボンを被覆することにより比表面積が増大し、製作環境の水分吸着によりセル特性が低下するといった問題があった。
【0006】
上記問題を解決する手段として、特許文献2には、一般式Li
xFe
1−yM
yPO
4(式中、Mは、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Srからなる群より選ばれた少なくとも1種以上である。また、0.9<x<1.2、2.0≦y<0.3である)で表される化合物を正極活物質とする正極と、リチウム金属、リチウム合金又はリチウムをドープ、脱ドープすることが可能な材料を含有する負極と、非水電解液とを備え、非水電解液がフッ素化エチレンカーボネートを含有することを特徴とする非水電解液二次電池が開示されている。すなわち、正極に導電性カーボンを被覆したポリアニオン系の活物質を使用した場合の水分によるセル劣化を抑制する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、非水電解質二次電池に関する技術である。非水電解質二次電池としては、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。後述するように、本発明の非水電解質二次電池において、正極以外の構成は、特に制限されず、本発明の効果を阻害しない限り、従来公知の技術を適宜組み合わせて実施することができる。
【0015】
本発明の実施形態の非水電解質二次電池は、正極活物質を含む正極合材層を備えた正極を有し、正極活物質がポリアニオン正極材のカーボンを被覆したLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の第1活物質と、リチウムニッケル複合酸化物の第2活物質とを含んでいる。
【0016】
[LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3]
本発明において、LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3はどのような方法で製造されても良く、特に制限されない。例えば、Li
3V
2(PO
4)
3は、LiOH、LiOH・H
2O等のリチウム源、V
2O
5、V
2O
3等のバナジウム源、及びNH
4H
2PO
4、(NH
4)
2HPO
4等のリン酸源等を混合し、反応、焼成する等により製造できる。Li
3V
2(PO
4)
3は、通常、焼成物を粉砕等した粒子状の形態で得られる。
【0017】
また、LiFePO
4、LiMnPO
4は、例えば、酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム等のリチウム源と、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等のリン源と、Fe元素又はMn元素を含有するシュウ酸塩、酢酸塩、酸化塩、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等のFe源又はMn源を混合し、反応、焼成する等により製造できる。なお、リチウム源とリン源を兼ねる化合物であるリン酸リチウムや、リン源とFe源又はリン源とMn源を兼ねる化合物のリン酸塩を原料として用いてもよい。LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3は、通常、焼成物を粉砕等した粒子状の形態で得られる。
【0018】
また、LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3は、それ自体では電子伝導性が低いため、その表面に導電性カーボン被膜加工を行う必要がある。これによりLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の電子伝導性を向上することができる。導電性カーボンの被膜量はC原子換算で0.1〜20質量%であることが好ましい。
【0019】
導電性カーボン被膜加工は、公知の方法で行うことができる。例えば、カーボン被膜材料として、クエン酸、アスコルビン酸、ポリエチレングリコール、ショ糖、メタノール、プロペン、カーボンブラック、ケッチェンブラック等を用い、上述のLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3製造の反応時や焼成時に混合すること等によって表面に導電性カーボン被膜を形成させることができる。
【0020】
LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3粒子の粒度には特に制限は無く、所望の粒度のものを使用することができる。粒度はLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の安定性や密度に影響するため、LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の2次粒子の粒度分布におけるD
50が0.5〜25μmであることが好ましい。上記D
50が0.5μm未満の場合は、電解液との接触面積が増加することからLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の安定性が低下する場合があり、25μmを超える場合は密度低下のため出力が低下する場合がある。上記の範囲であれば、より安定性が高く高出力の蓄電デバイスとすることができる。LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の2次粒子の粒度分布におけるD
50は1〜10μmであることが更に好ましく、3〜5μmであることが特に好ましい。なお、この2次粒子の粒度分布におけるD
50は、レーザー回折(光散乱法)方式による粒度分布測定装置を用いて測定した値とする。
【0021】
[リチウムニッケル複合酸化物]
本発明では種々のリチウムニッケル複合酸化物を用いることができる。本実施の1つの形態では、第2活物質のリチウムニッケル複合酸化物として、例えば、リチウムニッケルコバルト複合酸化物であるLiNi
0.8Co
0.2O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2、LiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2を使用している。ここで、リチウムニッケル複合酸化物のNi元素の構成比率はリチウムニッケル複合酸化物のプロトン吸着性に影響する。本発明において、Ni元素は、LiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3からの鉄、マンガン又はバナジウムの溶出の抑制の作用をも有しているが、主にはフッ素化エチレンカーボネートと水分により発生するフッ化水素を抑制するために用いられる。第2活物質に含まれるニッケルの量は、第2活物質をLiNi
xCo
yM
zO
2(x+y+z=1でありx>0)と表したときのxの値が0.3〜0.8であることが望ましい。第2活物質としてLiNi
0.8Co
0.2O
2やLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2を使用した場合は、正極内の比率を10〜80質量部とすることで上記のニッケルの制限量を満足している。第2活物質としてLiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2を使用した場合は、正極内の比率を15〜85重量部とすることで上記のニッケルの制限量を満足している。第2活物質としてLiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2を使用した場合は、正極内の比率を50〜85重量部とすることで上記のニッケルの制限量を満足している。
【0022】
また、本発明のリチウムニッケル複合酸化物には、Niサイトに、原子番号11以上のNiとは異なる金属元素が置換されていてもよい。原子番号11以上のNiとは異なる金属元素は、遷移元素から選択されることが好ましい。遷移元素はNiと同様に複数の酸化数をとることができるため、リチウムニッケル複合酸化物において、その酸化還元電位の範囲を利用することができ、高容量特性を維持できる。原子番号11以上のNiとは異なる金属元素とは、例えば、Co、Mn、Al及びMgであり、好ましくは、Co、Mnである。
【0023】
リチウムニッケル複合酸化物は、どのような方法で製造されてもよく、特に制限されない。例えば、固相反応法、共沈法又はゾルゲル法等により合成したNi含有前駆体とリチウム化合物とを所望の化学量論比となるように混合し、空気雰囲気下で焼成する等により製造できる。
【0024】
リチウムニッケル複合酸化物は、通常、焼成物を粉砕等した粒子状の形態で得られる、その粒径には特に制限は無く、所望の粒径のものを使用することができる。粒径はリチウムニッケル複合酸化物の安定性や密度に影響するため、粒子の平均粒径は、0.5〜25μmであることが好ましい。平均粒径が、0.5μm未満の場合は、電解液との接触面積が増加することからリチウムニッケル複合酸化物の安定性が低下する場合があり、25μmを超える場合は密度低下のため出力が低下する場合がある。上記の範囲であれば、より安定性が高く高出力の蓄電デバイスとすることができる。リチウムニッケル複合酸化物の粒子の平均粒径は、1〜25μmが更に好ましく、5〜20μmが特に好ましい。なお、この粒子の平均粒径はレーザー回折(光散乱法)方式による粒度分布測定装置を用いて測定した値とする。
【0025】
[正極]
本発明における正極は、正極活物質として上述のカーボンを被覆したLiFePO
4、LiMnPO
4又はLi
3V
2(PO
4)
3の内の少なくとも何れか1種と、リチウムニッケル複合酸化物を含んでいれば良く、それ以外は公知の材料を用いて作製することができる。具体的には、例えば以下のように作製する。
【0026】
上記正極活物質、結合剤、導電助剤を含む混合物を溶媒に分散させた正極スラリーを、正極集電体上に塗布、乾燥を含む工程により正極合材層を形成する。乾燥工程後にプレス加圧等を行っても良い。これにより正極合材層が均一且つ強固に集電体に圧着される。正極合材層の厚みは10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0027】
正極合材層の形成に用いる結合剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系樹脂、アクリル系バインダ、SBR等のゴム系バインダ、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、カルボキシメチルセルロース等が使用できる。結合剤は、本発明の蓄電デバイスに用いられる非水電解液に対して化学的、電気化学的に安定な含フッ素系樹脂、熱可塑性樹脂が好ましく、特に含フッ素系樹脂が好ましい。含フッ素系樹脂としてはポリフッ化ビニリデンの他、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体、エチレン−4フッ化エチレン共重合体及びプロピレン−4フッ化エチレン共重合体等が挙げられる。結合剤の配合量は、上記正極活物質に対して0.5〜20質量%が好ましい。
【0028】
正極合材層の形成に用いる導電助剤としては、例えばカーボンブラック(CB)等の導電性カーボン、銅、鉄、銀、ニッケル、パラジウム、金、白金、インジウム及びタングステン等の金属、酸化インジウム及び酸化スズ等の導電性金属酸化物等が使用できる。導電材の配合量は、上記正極活物質に対して1〜30質量%が好ましい。
【0029】
正極合材層の形成に用いる溶媒としては、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド等が使用できる。
【0030】
正極集電体は正極合材層と接する面が導電性を示す導電性基体であれば良く、例えば、金属、導電性金属酸化物、導電性カーボン等の導電性材料で形成された導電性基体や、非導電性の基体本体を上記の導電性材料で被覆したものが使用できる。導電性材料としては、銅、金、アルミニウムもしくはそれらの合金又は導電性カーボンが好ましい。正極集電体は、上記材料のエキスパンドメタル、パンチングメタル、箔、網、発泡体等を用いることができる。多孔質体の場合の貫通孔の形状や個数等は特に制限はなく、リチウムイオンの移動を阻害しない範囲で適宜設定できる。
【0031】
本実施の1つの形態では、正極の活物質に対して第2活物質であるLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、の割合は、10〜80質量部としている。本実施の他の形態では、正極の活物質に対して第2活物質であるLiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2、の割合は、15〜80質量部としている。本実施のさらに他の形態では、正極の活物質に対して第2活物質であるLiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2、の割合は、50〜85質量部としている。これによりニッケルの量が規定される。ニッケルが低過ぎると、Li
3V
2(PO
4)
3からのバナジウムの溶出の抑制効果が十分に発揮されず、良好な充放電サイクル特性が得られない。また、高容量が得られない。逆に高過ぎるとLi
3V
2(PO
4)
3からバナジウムの溶出を抑制することができても、蓄電デバイスの充放電サイクル特性が十分に向上しない場合がある。本発明においては、Ni元素は、上記のようにLi
3V
2(PO
4)
3からのバナジウムの溶出の抑制の作用を有しているが、同時にはフッ素化エチレンカーボネートと水分により発生するフッ化水素を抑制するためにも用いられる。
【0032】
[負極]
本発明において負極は、特に制限はなく、公知の材料を用いて作製することができる。例えば、一般に使用される負極活物質及び結合剤を含む混合物を溶媒に分散させた負極スラリーを、負極集電体上に塗布、乾燥等することにより負極合材層を形成する。なお、結合剤、溶媒及び集電体は上述の正極の場合と同様なものが使用できる。
【0033】
負極活物質としては、例えば、リチウム系金属材料、金属とリチウム金属との金属間化合物材料、リチウム化合物、又はリチウムインターカレーション炭素材料が挙げられる。
【0034】
リチウム系金属材料は、例えば金属リチウムやリチウム合金(例えば、Li−Al合金)である。金属とリチウム金属との金属間化合物材料は、例えば、スズ、ケイ素等を含む金属間化合物である。リチウム化合物は、例えば窒化リチウムである。
【0035】
また、リチウムインターカレーション炭素材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素材料等の炭素系材料、ポリアセン物質等が挙げられる。ポリアセン系物質は、例えばポリアセン系骨格を有する不溶且つ不融性のPAS等である。なお、これらのリチウムインターカレーション炭素材料は、いずれもリチウムイオンを可逆的にドープ可能な物質である。負極合材層の厚みは一般に10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0036】
また、本発明おいては、負極合材層の目付けは、正極合材層の目付けに合わせて適宜設計される。通常、リチウムイオン二次電池では、正負極の容量バランスやエネルギー密度の観点から正極と負極の容量(mAh)がおおよそ同じになるように設計される。よって、負極合材層の目付けは、負極活物質の種類や正極の容量等に基づいて設定される。
【0037】
[非水電解液]
本発明における非水電解液は、上述したフッ素化エチレンカーボネートを含有していれば良く、その他特に制限はなく、公知の材料を使用できる。例えば、高電圧でも電気分解を起こさないという点、リチウムイオンが安定に存在できるという点から、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用できる。
【0038】
[フッ素化エチレンカーボネート]
フッ素化エチレンカーボネート(FEC)としては、4-フルオル-1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5-トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5-テトラフルオロエチレンカーボネート等が挙がられる。
【0039】
フッ素化エチレンカーボネートの非水電解液中における含有量は、0.2質量%から10質量%が望ましい。0.2質量%以上であればサイクル特性を向上することが可能である。ただし、10質量%以上になるとフッ素化エチレンカーボネートが残存して環境水分により劣化するのでサイクル特性等に悪い影響を与え好ましくない。
【0040】
電解質としては、例えば、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
8Li、(CF
3SO
2)
2NLi、(CF
3SO
2)
3CLi、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4等又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニルカーボネート、トリフルオロメチルプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4-メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオトリル等又はこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0042】
非水電解液中の電解質濃度は0.1〜5.0mol/Lが好ましく、0.5〜3.0mol/Lが更に好ましい。
【0043】
非水電解液は液状でも良く、可塑剤やポリマー等を混合し、固体電解質又はポリマーゲル電解質としたものでも良い。
【0044】
[セパレータ]
本発明で使用するセパレータは、特に制限はなく、公知のセパレータを使用できる。例えば、電解液、正極活物質、負極活物質に対して耐久性があり、連通気孔を有する電子伝導性の無い多孔質体等を好ましく使用できる。このような多孔質体として例えば、織布、不織布、合成樹脂性微多孔膜、ガラス繊維などが挙げられる。合成樹脂性の微多孔膜が好ましく用いられ、特にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好ましい。
【0045】
以下に本発明の非水電解質二次電池の実施形態の一例として、リチウムイオン二次電池の例を、図面を参照しながら説明する。
【0046】
図1は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の実施形態の一例を示す概略断面図である。図示のように、リチウムイオン二次電池20は、正極21と、負極22とがセパレータ23を介して対向配置されて構成されている。
【0047】
正極21は、本発明の正極活物質を含む正極合材層21aと、正極集電体21bとから構成されている。正極合材層21aは、正極集電体21bのセパレータ23側の面に形成されている。負極22は、負極合材層22aと、負極集電体22bとから構成されている。負極合材層22aは、負極集電体22bのセパレータ23側の面に形成されている。これら正極21、負極22、セパレータ23は、図示しない外装容器に封入されており、外装容器内には非水電解液が充填されている。外装材としては例えば電池缶やラミネートフィルム等が挙げられる。また、正極集電体21bと負極集電体22bとには、必要に応じて、それぞれ外部端子接続用の図示しないリードが接続されている。
【0048】
次に、
図2は、本発明に係るリチウムイオン二次電池の実施形態の別の一例を示す概略断面図である。図示のように、リチウムイオン二次電池30は、正極31と負極32とが、セパレータ33を介して交互に複数積層された電極ユニット34を備えている。正極31は、正極合材層31aが、正極集電体31bの両面に設けられて構成されている。負極32は、負極合材層32aが負極集電体32bの両面に設けられて構成されている(ただし、最上部および最下部の負極32については、負極合材層32aは片面のみ)。また、正極集電体31bは図示しないが突出部分を有しており、複数の正極集電体31bの各突出部分はそれぞれ重ね合わされ、その重ね合わされた部分にリード36が溶接されている。負極集電体32bも同様に突出部分を有しており、複数の負極集電体32bの各突出部分が重ね合わされた部分にリード37が溶接されている。リチウムイオン二次電池30は、図示しないラミネートフィルム等の外装容器内に電極ユニット34と非水電解液が封入されて構成されている。リード36,37は外部機器との接続のため、外装容器の外部に露出される。
【0049】
なお、リチウムイオン二次電池30は、外装容器内に、正極、負極、又は正負極双方にリチウムイオンをプレドープする為のリチウム極を備えていてもよい。その場合には、リチウムイオンが移動し易くするため、正極集電体31bや負極集電体32bに電極ユニット34の積層方向に貫通する貫通孔が設けられる。
【0050】
また、リチウムイオン二次電池30は、最上部および最下部に負極を配置させたが、これに限定されず、最上部および最下部に正極を配置させる構成でもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0052】
実施例1〜4と比較例1〜3は、第2活物質がLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2である。
(実施例1)
(1)正極の作製
以下の正極合材層用材料:
第1活物質(Li
3V
2(PO
4)
3) ; 80質量部
第2活物質(LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2) ; 10質量部
結合剤(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)) ; 5質量部
導電材(カーボンブラック) ; 5質量部
溶媒(N−メチル2−ピロリドン(NMP)) ;100質量部
を混合し、正極スラリーを得た。正極スラリーをアルミニウム箔(厚み30μm)の正極集電体に塗布、乾燥し、正極合材層を正極集電体上に形成した。正極合材層の目付けを行った後、10×10mmの未塗工部分をリード接続用のタブとして残しつつ、塗工部分(正極合材層形成部分)を50×50mmに裁断した。なお、第1活物質のLi
3V
2(PO
4)
3はカーボンをC原子換算で1.4質量%被覆したものを用いた。
【0053】
(2)負極の作製
以下の負極合材層用材料:
活物質(グラファイト) ; 95質量部
結合剤(PVdF) ; 5質量部
溶媒(NMP) ;150質量部
を混合し、負極スラリーを得た。負極スラリーを銅箔(厚み10μm)の負極集電体に塗布、乾燥し、負極合材層を負極集電体上に形成した。負極合材層の目付けを行った後、10×10mmの未塗工部分をリード接続用のタブとして残しつつ、塗工部分(負極合材層形成部分)を52×52mmに裁断した。
【0054】
(3)電解液
以下の非水電解液:
添加剤(フッ素化エチレンカーボネート) ;3質量部
非水電解液 ;97質量部
を混合して電解液を得た。非水電解液はエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積比が1:2である混合溶液に、電解質としてLiPF
6を1M溶解させ、97質量部としたものに、フッ素化エチレンカーボネートを3質量部溶解した。
【0055】
(4)電池の作製
上述のように作製した正極19枚と、負極20枚とを用いて、
図2の実施形態で示したようなリチウムイオン二次電池を作製した。具体的には、正極及び負極をセパレータを介して積層し、積層体の周囲をテープで固定した。各正極集電体のタブを重ねてアルミニウム金属リードを溶接した。同様に各負極集電体のタブを重ねてニッケル金属リードを溶接した。これらをアルミラミネート外装材に封入し、正極リードと負極リードを外装材外側に出して、電解液封入口を残して密閉融着した。電解液封入口より電解液を注液し、真空含浸にて電極内部に電解液を浸透させた後、ラミネートを真空封止した。
【0056】
(5)充放電試験
上述のように作製した電池の正極リードと負極リードとを、充放電試験装置(アスカ電子社製)の対応する端子に接続し、最大電圧4.2V、電流レート2Cで定電流定電圧充電し、充電完了後、電流レート5Cにて2.5Vまで定電流放電させた。これを500サイクル繰り返した。初回放電時に測定した容量からエネルギー密度(Wh/kg)を算出し、サイクル後の容量からサイクル容量維持率(500サイクル時放電容量/初回放電容量×100)を算出した。容量維持率は92.1%であった。
【0057】
(実施例2)
第1活物質を10質量部、第2活物質を80質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.3%であった。
【0058】
(実施例3)
第1活物質を30質量部、第2活物質を60質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は95.3%であった。
【0059】
(実施例4)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.2質量部、その他の非水電解液を99.8質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は92.4%であった。実施例1から4の結果を表1に示す。
【0060】
(比較例1)
第1活物質を85質量部、第2活物質を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は85.2%であった。比較例に係るサイクル試験結果を表2に示す。
【0061】
(比較例2)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.1質量部、その他の非水電解液を99.9質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は88.1%であった。
【0062】
(比較例3)
第1活物質を90質量部、第2活物質を0質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は84.8%であった。比較例1から3の結果を表2に示す。
【0063】
実施例5〜8と比較例4〜6は、第2活物質がLiNi
0.8Co
0.2O
2である。
(実施例5)
第2活物質をLiNi
0.8Co
0.2O
2に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は91.3%であった。
【0064】
(実施例6)
第1活物質を10質量部、第2活物質を80質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.6%であった。
【0065】
(実施例7)
第1活物質を30質量部、第2活物質を60質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は94.8%であった。
【0066】
(実施例8)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.2質量部、その他の非水電解液を99.8質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は92.3%であった。実施例5から8の結果を表3に示す。
【0067】
(比較例4)
第1活物質を85質量部、第2活物質を5質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は86.2%であった。
【0068】
(比較例5)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.1質量部、その他の非水電解液を99.9質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は87.9%であった。
【0069】
(比較例6)
第1活物質を90質量部、第2活物質を0質量部に変更した以外は全て実施例5と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は85.2%であった。比較例4から6の結果を表4に示す。
【0070】
実施例9〜12と比較例7〜8は、第2活物質がLiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2である。
(実施例9)
第1活物質を75質量部、第2活物質をLiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2の15質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は91.3%であった。
【0071】
(実施例10)
第1活物質を5質量部、第2活物質を85質量部に変更した以外は全て実施例9と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.2%であった。
【0072】
(実施例11)
第1活物質を25質量部、第2活物質を65質量部に変更した以外は全て実施例9と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は94.1%であった。
【0073】
(実施例12)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.2質量部、その他の非水電解液を99.8質量部に変更した以外は全て実施例9と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は91.6%であった。実施例9から12の結果を表5に示す。
【0074】
(比較例7)
第1活物質を80質量部、第2活物質を10質量部に変更した以外は全て実施例9と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は83.8%であった。
【0075】
(比較例8)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.1質量部、その他の非水電解液を99.9質量部に変更した以外は全て実施例9と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は86.4%であった。比較例7から8の結果を表6に示す。
【0076】
実施例13〜15と比較例9〜10は、第2活物質がLiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2である。
(実施例13)
第1活物質を40質量部、第2活物質をLiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2の40質量部に変更した以外は全て実施例1と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.6%であった。
【0077】
(実施例14)
第1活物質を5質量部、第2活物質を85質量部に変更した以外は全て実施例13と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.0%であった。
【0078】
(実施例15)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.2質量部、その他の非水電解液を99.8質量部に変更した以外は全て実施例13と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は90.8%であった。侍史慰霊13から15の結果を表7に示す。
【0079】
(比較例9)
第1活物質を60質量部、第2活物質を30質量部に変更した以外は全て実施例13と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は82.1%であった。
【0080】
(比較例10)
電解液の添加剤(フッ素化エチレンカーボネート)の添加量を0.1質量部、その他の非水電解液を99.9質量部に変更した以外は全て実施例13と同一条件にして電池を作製し評価を行った。容量維持率は84.9%であった。比較例9から10の結果を表8に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
上述の実施例1から実施例15の実験結果からわかるように、正極活物質に対する第2活物質であるLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2の比率を10〜80質量部(LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2の場合は15〜85質量部、LiNi
0.3Co
0.3Mn
0.4O
2の場合は50〜85質量部)、フッ素化エチレンカーボネート(FEC)の電解液中の比率を0.2質量%以上とすることでサイクル試験において良好な結果が得られた。サイクル試験では概ね90%以上が良好と判断される。特に、実施例3に示すようにLiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2を30質量部、フッ素化エチレンカーボネートを3質量%とすることで特に良好な結果が得られている。また、比較例3、6に示すように、第2活物質とフッ素化エチレンカーボネートのないセルは良好な結果が得られなかった。これは、主に正極活物質に導電性カーボンを被覆することにより生じる水分吸着が、フッ素化エチレンカーボネートが存在しないため、抑制されなかったためである。また、比較例1、4、7及び9に示すように、フッ素化エチレンカーボネートが規定の質量部以上存在しても、第2活物質が規定の質量部以上存在しないとフッ素化エチレンカーボネートと水分によるフッ化水素の発生が抑制できず良好な結果が得られない。すなわち、第2活物質に含まれるニッケルの量が重要であり、Li原子1モルに対して0.3以上必要である。なお、フッ素化エチレンカーボネートが10質量%を超える試験データ、及び第2活物質が規定の質量部を超える試験データは示していないが、共にサイクル試験において、各実施例に比べて若干劣る結果が得られた。これは、前者の場合は前述したようにセル内でフッ素化エチレンカーボネートが過剰に残存したため、後者の場合はニッケルが過多となりセル内の電気的特性に影響を及ぼしたためと考えられる。
【0090】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。