【実施例】
【0040】
実施例1
一実施形態に従うMRAMセル1への書き込み操作が
図4に概略的に示されている。熱アシスト書き込み操作は、磁気トンネル接合2を加熱するステップと、第1の磁場電流41を第1の電流線4に流して第1の磁場42を発生させることによって接合抵抗R
MTJを変えるステップとを有する。例えば双極抵抗スイッチング挙動を示すスイッチング抵抗素子62の場合に、スイッチング抵抗R
Sが、磁気トンネル接合2に流れるスイッチング電流31の極性に従って切り換えられる。ここで、スイッチング電流31は加熱電流として使用することもできる。この実施形態では、スイッチング電流31が、磁気トンネル接合を高温しきい値で加熱するのに必要とされるスイッチング電流31の加熱の大きさよりも低い第1のスイッチングの大きさで流されるときに、スイッチング抵抗R
Sを切り換えることができると仮定する。
【0041】
より特定的には、
図4(a)が書き込み操作の第1のステップを示し、このステップでは、スイッチング電流31が、磁気トンネル接合2を高温しきい値で加熱するのに適した加熱の大きさで印加される。第1の磁場電流41が第1の極性で印加されて、第1の磁場42を第1の方向で発生し、接合抵抗R
MTJを第1の接合抵抗レベルから第2の接合抵抗レベルに変える。例えば、第2の強磁性層23の磁化を第1の強磁性層21の磁化方向に平行な方向に調節することができ、それにより接合抵抗R
MTJの低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowに対応する。スイッチング電流31が第1の大きさよりも高い加熱の大きさで印加されるので、スイッチング抵抗R
Sは、スイッチング電流31の極性に従って第1のスイッチング抵抗レベル、例えば低いスイッチング抵抗レベルR
S,lowに切り換えられる。
【0042】
図4(b)に示される第2のステップでは、第1の磁場42は印加されず、接合抵抗R
MTJはその低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowのままである。スイッチング電流31は、ステップ(a)でのスイッチング電流とはその極性を逆にして磁気トンネル接合2に流され、それによりスイッチング抵抗R
Sを高いスイッチング抵抗レベルR
S,highに切り換える。ここで、ステップ(b)に示されるように、スイッチング電流31は、好ましくは、より低い第1のスイッチングの大きさで流される。
【0043】
図4(c)に示される第3のステップでは、第1の磁場電流41が第2の極性で印加されて、第1の方向とは逆の第2の方向で第1の磁場42を発生して、第2の強磁性層23の磁化を第1の強磁性層21の磁化方向とは反平行の方向に調節する。これにより、接合抵抗R
MTJが高い接合抵抗レベルR
MTJ,highとなる。スイッチング電流31は、ステップ(b)と同じ極性で磁気トンネル接合2に流されるが、第1の大きさを有し、磁気トンネル接合を高温しきい値で加熱する。スイッチング電流31の極性はステップ(b)と同じであるので、スイッチング抵抗R
Sはその高いスイッチング抵抗レベルR
S,highのままである。
【0044】
図4(d)に示される第4のステップでは、第1の磁場42は印加されず、接合抵抗R
MTJはステップ(c)の高い接合抵抗レベルR
MTJ,highのままである。スイッチング電流31は、ステップ(c)のスイッチング電流とはその極性を逆にして第1のスイッチングの大きさで流され、それによりスイッチング抵抗R
Sは低いスイッチング抵抗レベルR
S,lowに切り換えられる。その結果、接合抵抗R
MTJとスイッチング抵抗R
Sの2つの抵抗レベルの組合せによって、MRAMセル抵抗R
Cの4つの異なるセル抵抗レベルがMRAMセル1に書き込まれている。
【0045】
実施例2
図5は、別の実施形態によるMRAMセル1の熱アシスト書き込み操作を示す。この実施形態では、例えば単極抵抗スイッチング挙動を示すスイッチング抵抗素子62の場合に、スイッチング抵抗R
Sがスイッチング電流31の大きさに従って切り換えられると仮定する。より特定的には、スイッチング抵抗R
Sは、スイッチング電流31が第1のスイッチングの大きさで流されるときに低いスイッチング抵抗レベルR
S,lowに切り換えられ、スイッチング電流31が第1のスイッチングの大きさよりも高い第2のスイッチングの大きさで流されるときに高いスイッチング抵抗レベルR
S,highに切り換えられると仮定する。さらに、第1及び第2のスイッチングの大きさは加熱の大きさよりも低いと仮定する。
【0046】
図5のステップ(a)で、第1の磁場電流41は、接合抵抗R
MTJを低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowに設定するように適合された方向で第1の磁場42を発生するように第1の電流線4に流される(
図4(a)のステップと同様)。スイッチング電流31は、加熱の大きさで磁気トンネル接合2に流され、磁気トンネル接合2を高温しきい値で加熱し、スイッチング抵抗R
Sをその高いスイッチング抵抗レベルR
S,highに切り換える(加熱の大きさは第2のスイッチングの大きさよりも高い)。
【0047】
図5(b)では、第1の磁場42は印加されず、接合抵抗R
MTJは低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowのままである。スイッチング電流31は、第1のスイッチングの大きさで流され、スイッチング抵抗R
Sをその低いスイッチング抵抗レベルR
S,lowに切り換える。
図5(c)では、第1の磁場電流41が第2の極性で印加され、それにより接合抵抗R
MTJは高い接合抵抗レベルR
MTJ,highに変えられる。スイッチング電流31は、加熱の大きさで流され、磁気トンネル接合2を高温しきい値で加熱し、スイッチング抵抗R
Sをその高いスイッチング抵抗レベルR
S,highに切り換える。
【0048】
実施例3
図6に示されるさらに別の実施形態では、MRAMセル1の熱アシスト書き込み操作は、磁気トンネル接合2に流されるスイッチング電流31をスピン偏極させることによって接合抵抗R
MTJを変えるステップを有する。スピン偏極スイッチング電流31は、第2の磁性層23での局所スピントルクを誘発し、スピン偏極電流の極性に従って第2の磁性層23の磁化方向を調節する。スピン偏極電流は、磁気トンネル接合2が高温しきい値で加熱されるように加熱の大きさで流さなければならない。この実施形態では、スイッチング抵抗素子62は双極抵抗スイッチング挙動を示し、加熱の大きさは第1のスイッチングの大きさよりも低いと仮定する。
【0049】
より特定的には、
図6(a)に示されるステップでは、スイッチング電極31が第1のスイッチングの大きさで流され、それにより、スイッチング電流31の極性に従って、スイッチング抵抗R
Sを例えば低いスイッチング抵抗レベルR
S,lowに切り換える。しかし、第1のスイッチングの大きさは、第2の磁性層23の磁化方向を調節するには低すぎ、したがって接合抵抗R
MTJを変えるには低すぎる。
【0050】
図6(b)では、スピン偏極スイッチング電流31の大きさが加熱の大きさに増加され、それにより、スイッチング電流31の極性に従って、第2の磁性層23の磁化方向を例えば低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowに調節することができる。スイッチング電流31の極性はステップ(a)と同じであるので、スイッチング抵抗R
Sのスイッチング抵抗レベルは変わらない。ステップ(c)では、スピン偏極スイッチング電流31が、ステップ(a)及び(b)のスイッチング電流とは極性を逆にして流され、それにより、スイッチング抵抗R
Sを高いスイッチング抵抗レベルR
S,highに切り換える。スイッチング電流31の大きさは第1のスイッチングの大きさであり、接合抵抗R
MTJは低い接合抵抗レベルR
MTJ,lowのままである。ステップ(d)では、スピン極性スイッチング電流31の大きさが加熱の大きさに高められ、それにより接合抵抗R
MTJを高い接合抵抗レベルR
MTJ,highに調節することができる。スイッチング抵抗R
Sは高いスイッチング抵抗レベルR
S,highのままである。
【0051】
上の3つの実施形態で示したように、接合抵抗R
MTJとスイッチング抵抗R
Sの2つの抵抗レベルの組合せによって、MRAMセル抵抗R
Cの少なくとも4つの異なるセル抵抗レベルをMRAMセル1に書き込むことができる。これは、第1の磁場電流41及びスイッチング電流31の極性、ならびにスイッチング電流31の大きさを適当に変えることによって実現される。また、これは、書き込み操作がスピン偏極電流を使用して行われ、スイッチング抵抗素子62が双極抵抗スイッチング挙動を示すときには、スイッチング電流の極性及び大きさを適当に変えることによって実現することができる。さらに、これは、書き込み操作がスピン偏極電流を使用して行われ、スイッチング抵抗素子62が単極抵抗スイッチング挙動を示すときには、スイッチング電流の大きさのみを適当に変えることによって実現することができる。スイッチング抵抗R
Sが切り換えられるスイッチング電流31の大きさ(第1の大きさ及び場合によっては第2の大きさ)は、接合抵抗R
MTJを変えることができる大きさ(加熱の大きさ)とは異なると仮定する。
【0052】
本発明は、様々な修正形態及び代替形態を取ることができ、それらの特定の実施例を図面に例として示し、本明細書で詳細に述べた。しかし、本発明は、開示した特定の形態又は方法に限定されず、逆に、すべての修正形態、均等形態、及び代替形態を網羅するものと理解すべきである。
【0053】
例えば、MRAMセル1は、
図1の例で示されるように第2の電流線5を備えることができる。このとき、第2の磁場電流51を第2の電流線5に流して第2の磁場52を発生させることができる。このとき、第1の磁場42と第2の磁場52の効果を併用して第2の磁性層23の磁化方向を調節することができる。この構成では、第1の電流線4と第2の電流線5の垂直方向に沿った第1の磁場電流41と第2の磁場電流51の相対強度及び場合によっては極性を適切に調節することによって、第2の強磁性層23の磁化を任意の中間方向に調節することができる。あるいは、第2の強磁性層23の磁化を任意の中間方向に調節することは、線4、5の一方で発生される磁場をスピン偏極書き込み電流33と組み合わせることによって実現することができる。これはさらに、上述した書き込み操作の1つと組み合わせることができ、MRAMセル1に5つ以上のセル抵抗レベルを書き込むことができるようにする。あるいは、第2の電流線5を第1の電流線4の上に、例えば第1の電流線4と平行に配設することができる。
【0054】
本明細書で開示したMRAMセル1は、磁気トンネル接合2の接合抵抗R
MTJがスイッチング抵抗素子62、22のスイッチング抵抗R
Sと組み合わされるので、従来のMRAMセルに比べて改良された読み出しマージンを実現する。したがって、MRAMセル抵抗R
Cのセル抵抗レベルは、従来のマルチビットMRAMセルで実現されるセル抵抗レベルよりも大きい。
【0055】
図示しない一実施形態によれば、メモリデバイスは、いくつかの実施形態によるMRAMセル1を複数備えるアレイを備える。MRAMセル1は、1本又は複数本の第1の電流線4によって接続することができる。メモリデバイスはさらに、MRAMセル1それぞれの選択トランジスタ3のゲートに接続された1本又は複数本のワード線を備えることができ、それにより、選択トランジスタ3を制御して、MRAMセル1の1つを選択的にアドレス指定する、又はそのセルに書き込むことができるようにする。