【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を備えたオプトエレクトロニクス半導体コンポーネントによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な構造形態および発展形態に関する。
【0005】
一実施形態によると、オプトエレクトロニクス半導体コンポーネントは、窒化物化合物半導体をベースとする半導体積層体であって、n型ドープ領域と、p型ドープ領域と、これらn型ドープ領域とp型ドープ領域との間に配置されている活性ゾーンと、を含んでいる半導体積層体、を備えている。n型ドープ領域およびp型ドープ領域は、必ずしも全体がドープ層から形成されていなくてよく、特に、アンドープ層を含んでいることもできる。
【0006】
本発明において、「窒化物化合物半導体をベースとする」とは、半導体積層体またはその少なくとも1層がIII族窒化物化合物半導体材料、好ましくはIn
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)を備えていることを意味する。この場合、この材料は、上の化学式に従った数学的に正確な組成を有する必要はない。そうではなく、この材料は、例えば、1つまたは複数のドーパントと、材料In
xAl
yGa
1−x−yNの特徴的な物理的特性を実質的に変化させることのない追加の構成成分とを備えていることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(In、Al、Ga、N)のみを含んでおり、これらの構成成分は、その一部分をわずかな量のさらなる物質によって置き換えることができる。
【0007】
活性ゾーンは、特に、放射放出活性層または放射受信活性層とすることができる。活性層は、例えば、pn接合、ダブルへテロ構造、単一量子井戸構造、または多重量子井戸構造として具体化することができる。この場合、量子井戸構造という表現は、閉じ込めの結果として電荷キャリアにおいてエネルギ状態の量子化が起こる任意の構造を包含する。特に、量子井戸構造という表現は、量子化の次元について何らかの指定を行うものではない。したがって、量子井戸構造には、特に、量子井戸、量子細線、および量子ドットと、これらの構造の任意の組合せとが含まれる。
【0008】
p型ドープ領域は、In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)からなるp型コンタクト層を有する。p型コンタクト層は、特に、GaN層とすることができる。
【0009】
p型コンタクト層は接続層に隣接しており、接続層は、一構造形態においては、金属または金属合金を備えている。この金属または金属合金は、特に、Al、Ag、またはAuを備えている、あるいはこれらの材料からなることができる。
【0010】
さらなる構造形態においては、接続層は、透明導電性酸化物を備えている。透明導電性酸化物(略して「TCO」)は、導電性の透明な材料であり、一般的には金属酸化物(例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO))である。TCOの群には、金属と酸素の二元化合物(例えば、ZnO、SnO
2、In
2O
3)のみならず、金属と酸素の三元化合物(例えば、Zn
2SnO
4、CdSnO
3、ZnSnO
3、MgIn
2O
4、GaInO
3、Zn
2In
2O
5、In
4Sn
3O
12)、あるいは異なる透明導電性酸化物の混合物も含まれる。
【0011】
p型コンタクト層は、接続層との界面に、Ga面方位(Ga-face orientation)を有する第1のドメイン(domain)と、N面方位(N-face orientation)を有する第2のドメインとを有する。第1のドメインおよび第2のドメインは、結晶構造の方位が異なる。
【0012】
窒化物化合物半導体は、エピタキシャル成長時、一般的にはウルツ鉱型結晶構造(wurtzite crystal structure)を形成し、この構造では、結晶のc軸が成長方向に平行に延びる。この場合、成長パラメータに応じて、結晶の[0001]方向に対応する、いわゆるGa面方位を有するドメイン、または結晶の[000−1]方向に対応する、いわゆるN面方位を有するドメインを生じさせることができる。
【0013】
窒化物化合物半導体は焦電特性を有し、すなわち、外部電界が存在しなくても電気分極を有する。この電界の向きは、Ga面方位およびN面方位において反対である。このため、Ga面方位を有するドメインとN面方位を有するドメインは、電気特性が互いに異なる。
【0014】
本発明は、窒化物化合物半導体材料からなるp型コンタクト層と、金属、金属合金、または透明導電性酸化物からなる隣接する接続層との間の界面に、Ga面方位を有するドメインとN面方位を有するドメインの両方が存在するならば有利であるという洞察を利用する。
【0015】
Ga面ドメインは、窒化物化合物半導体材料をp型にドープするうえで有利である。この理由として、特に、MOVPEによって半導体材料を成長させるとき、半導体材料内に水素が組み込まれ、これによって、p型ドーパント(特にマグネシウム)が部分的に不動態化される。p型ドーパントは、例えば熱処理によって活性化され、このとき半導体材料から水素が外部に拡散する(outdiffuse)。水素は、N面ドメインからよりもGa面ドメインからの方が良好に脱出できることが判明している。その理由として、結晶成長においてGa面の標準成長方向からN面成長方向への遷移が起こる界面を水素は通過できない、またはスムーズに通過できない。結果として、p型コンタクト層の表面がGa面ドメインを有するならば、p型ドーパントの活性化がより単純である。
【0016】
その一方で、N面ドメインは、その利点として、金属、金属合金、または透明導電性酸化物からなる接続層に、低い電圧降下で、または電圧降下なしに、半導体材料を結合することが可能である。その理由として、N面ドメインは、Ga面ドメインとの界面の近傍においてn型半導体材料の性質を有する。この効果が生じるのは、N面ドメインにおいては結晶欠陥が発生し、これにより、本質的にp型にドープされた半導体材料のアクセプタに関して過補償が生じるためであると考えられる。N面ドメインがドメイン境界においてn型特性を有するため、p型コンタクト層のp型にドープされた半導体材料と、隣接する接続層との間に、局部的なトンネル接合が形成される。この効果によって、実質的に電圧降下なしに接続層を結合することが可能である。
【0017】
しかしながら、p型コンタクト層全体がN面方位を有することは有利ではなく、なぜなら、水素はN面ドメインからスムーズに脱出することができず、結果として、p型ドーパント(特にマグネシウム)の活性化が容易ではないためである。p型コンタクト層は、接続層との界面において、Ga面方位を有するドメインの面積割合が少なくとも10%であることが好ましい。さらには、Ga面方位を有するドメインの面積割合は、最大で90%であることが有利である。
【0018】
好ましい一構造形態においては、p型コンタクト層は、接続層との界面において、Ga面方位を有するドメインの面積割合が少なくとも40%、最大で70%である。接続層とp型コンタクト層との間の界面の少なくとも30%、最大で60%の残りは、n面方位を有するドメインを有することが有利である。N面ドメインとGa面ドメインのこのような割合によって、第一に、p型コンタクト層と接続層との間の界面における比較的低いかまたはゼロの電圧降下が可能となり、さらには、p型ドーパント(例えばマグネシウム)の良好な活性化も可能となり、これは有利である。p型コンタクト層と接続層との間の界面における電圧降下は、0.2V未満、特に好ましくは0.1V未満であることが有利である。
【0019】
第1のドメインもしくは第2のドメインまたはその両方は、例えば、約10nm〜約5μmの横方向範囲を有する。
【0020】
N面ドメインは、1μm未満、好ましくは100nm未満、特に好ましくは10nm未満の横方向範囲を有することが有利である。N面ドメインのこのような小さい横方向範囲は、p型ドーパントを活性化するうえで有利である。
【0021】
ドメインの大きさと、N面ドメインに対するGa面ドメインの割合は、特に、p型コンタクト層のドーパント濃度および層厚さによって設定することができる。p型コンタクト層は、例えば、5*10
19cm
−3〜2*10
21cm
−3の範囲内(両端値を含む)のドーパント濃度を有することができる。ドーパントはマグネシウムであることが好ましい。
【0022】
N面ドメインは、特に、成長面上に比較的高いドーパント濃度で形成されることが判明している。したがって、p型コンタクト層は、1*10
20cm
−3より高いドーパント濃度で、特に、1.5*10
20cm
−3〜3*10
20cm
−3の範囲内のドーパント濃度で形成されることが好ましい。
【0023】
p型コンタクト層の厚さは、5nm〜200nmの範囲内(両端値を含む)、特に好ましくは30nm以下であることが有利である。
【0024】
一構造形態においては、活性層が放射放出層であり、接続層は、本コンポーネントの放射出口面に配置されている。この場合、活性層によって放出される放射を接続層を通じて本コンポーネントから取り出すことができるように、接続層が透明導電性酸化物によって形成されていることが有利である。接続層は、特に、インジウムスズ酸化物(ITO)を含んでいることができる。
【0025】
p型コンタクト層が接続層との界面においてGa面ドメインおよびN面ドメインの両方を有するため、このp型コンタクト層は、ドメイン構造を有さないp型コンタクト層よりも粗さが大きい。この粗さは、本オプトエレクトロニクスコンポーネントからの放射の取り出しに有利に影響する。特に、p型コンタクト層の粗さを、その上に配置される接続層に引き継ぐことができ、したがって、接続層の表面も比較的大きな粗さを有し、これは有利である。接続層は、周囲の媒体(例えば空気など)に隣接させることができ、この場合、接続層の表面の粗さが比較的大きいことは、放射の取り出しに有利に影響し、なぜなら、周囲の媒体との界面における放射の全反射と、特に、半導体ボディ内での多重全反射も減少するためである。
【0026】
本オプトエレクトロニクスコンポーネントのさらなる構造形態においては、活性層が放射放出層であり、本コンポーネントの放射出口面は、活性層から見て接続層とは反対側に位置している。この場合、活性層によって放出される放射は、p型コンタクト層および接続層とは反対側の面において本オプトエレクトロニクスコンポーネントから出る。この構造形態においては、接続層は、特に、金属または金属合金からなるミラー層とすることができる。この金属または金属合金は、銀、アルミニウム、または金を含んでいる、またはこれらの材料からなることが好ましい。活性層によって放射出口面とは反対方向に放出された放射は、放射出口面において本オプトエレクトロニクスコンポーネントから取り出されるように、ミラー層によって放射出口面の方向に反射され、これは有利である。
【0027】
あるいは、接続層が、例えばITOなどの透明導電性酸化物を備えていることもでき、この場合、活性層から見て接続層の後ろにミラー層が存在していることが好ましい。ミラー層は、金属または金属合金からなる層とすることができる。ミラー層は、この構造形態においては誘電体ミラーであることが特に好ましい。誘電体ミラーは、異なる屈折率を有する2種類の誘電体材料が交互に何重にも配置された層(例えば、SiO
2およびSiNが交互に配置された層)を備えていることが有利である。誘電体ミラーを使用すると、所定の波長または所定の波長範囲において、金属ミラーの場合よりも高い反射性を得ることが可能であり、これは有利である。誘電体ミラーを使用するときには、p型コンタクト層の電気接続は接続層の透明導電性酸化物によって行われ、このような接続層は、たとえ隣接する金属層なしでも十分な電流拡散を提供する。