(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁体から成る基板と、互いに一定間隔を空けて該基板上に設けられた一対の電極と、該電極に電気的に接続するように形成され特定成分と反応する試薬層を有する反応部と、検体を該反応部まで導入する供給口と、を備え、
前記反応部が前記供給口から導入された検体中の特定成分と反応し、該特定成分を定量分析し、
前記試薬層中に、
(a)酵素
(b)親水性高分子、
(c)セリシンの加水分解物とグルコン酸カリウムの混合物
を含むことを特徴とするバイオセンサー。
【背景技術】
【0002】
従来から、検体の血糖値等を測定するバイオセンサー及びその製造方法が案出されている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照。)。
図1に従来の一般的なバイオセンサー(センサーチップ)1を示す。このバイオセンサー1は、電極絶縁基板2上に作用電極3及び対電極4を平行近接して設け、電極絶縁基板2、作用電極3及び対電極4上に、反応部セル5を有するマスクシート6を熱接着し、反応部セル5内の作用電極3及び対電極4上に酸化還元酵素を含む反応部用塗布液を塗布し乾燥して試薬層からなる反応部7を形成することにより製造されていた。なお、マスクシート6上には電気絶縁性のスペーサシート8及び透明のカバーシート9が積層される。このバイオセンサー1によれば、血糖値計測表示器に取り付けて検体を取り込み、血糖値計測表示器が血糖値を計測表示することにより、血糖値を認識できる。
【0003】
ここで、一般に、バイオセンサーは、吸湿により試薬層に含まれるメディエータが還元されることがあり、実際に反応によって還元されるメディエータ量が多くなるために、バックグラウンドが上昇し誤差が生じることがあった。
【0004】
そのために、バイオセンサーはアルミ個包装内や樹脂製のボトル内を低湿度に保つために乾燥剤を入れるなどの対策が行なわれている。しかし、特にボトルに複数のチップを入れる場合は、繰り返しの開封による吸湿の影響を受け、出力変化が起こる可能性がある。また、アルミ個包装は製造コストを増大させる。
【0005】
このため、吸湿による出力変化を抑制し、性能変化の無いバイオセンサーが望まれている。
【0006】
特開2002-207022には、熱や水分の存在化で、試薬層に含まれる酵素タンパク質や親水性高分子の一部などと、電子伝達体との還元反応が生じるため、バックグラウンド電流(ノイズ電流)が発生し、経時的にバックグラウンド電流値が上昇することにより、センサー性能が悪化するという問題が顕著に見られる、と記載されており、その対策のために糖アルコールや金属塩を添加する手段を講じている。
【0007】
また、特開2008-261653には、目的のタンパク質水溶液の溶状を安定化するため、該タンパク質に加え、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を水溶液中に共存させることにより、濁りの発生を抑制できることが開示されている。
【0008】
あるいは、特開2008-239512には、抗体を、セリシンおよび/またはその加水分解物、もしくはその同等物と共存させることを特徴とする、抗体の安定化方法が開示されている。
【0009】
さらに、特開2008-143790には、タンパク質に、セリシンおよび/またはその加水分解物もしくはその同等物を水溶液中に共存させることを特徴とするタンパク質の溶解性改善方法が開示されている。
【0010】
さらにまた、特開2007-151546に 生体分子、特に臨床診断薬に用いる酵素または標識抗体の安定化のために、(a)生体分子、および、(b)セリシンおよび/またはその加水分解物、もしくは、その同等物、を共存させる、生体分子を安定化する方法が開示されている。
【0011】
しかし、これらの方法はそのまま血糖値等を測定する上述のバイオセンサーに適用しても必ずしも吸湿に対する安定化について所望の改善効果が得られない。
【0012】
一方、特許 3867959に電気絶縁性基板、前記基板上に設けられた少なくとも作用極と対極を有する電極系、および前記電極系に接してまたはその近傍に形成され、少なくともピロロキノリンキノンを補酵素としたグルコースデヒドロゲナーゼを含む反応層を具備するグルコースセンサーであって、前記反応層が、グルコン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含むグルコースセンサーが記載されている。
【0013】
しかし、これらの方法はそのまま血糖値等を測定する上述のバイオセンサーに適用しても必ずしも吸湿に対する安定化について所望の改善効果が得られない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一般的なバイオセンサーを示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)はA−A線切断部断面図である。
【
図2】本発明において実験例に用いたバイオセンサーの要部を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)はA−A線切断部断面図である。
【
図3】本発明において実験例に用いた他のバイオセンサーを作製する方法を説明するための図であり、同図(a)は第1層を形成した時の平面図であり、同図(b)は第1層を形成した時の断面図であり、同図(c)は第2層を形成した時の平面図であり、同図(d)は第2層を形成した時の断面図である。
【
図4】本発明の実験例におけるグルコース濃度と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の実験例におけるグルコース濃度と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実験例におけるグルコース濃度と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実験例における30℃、65%暴露時間と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図8】本発明の実験例におけるグルタミン酸ナトリウム添加量と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の実験例におけるグルタミン酸カリウム添加量と電流積分値との関係を示すグラフである。
【
図10】本発明の実験例におけるグルコン酸カリウム添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図11】本発明の実験例におけるCMC1%+グルコン酸カリウム添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の実験例におけるセリシン添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図13】本発明の実験例におけるCMC1%+セリシン添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図14】本発明の実験例におけるグルコン酸カリウム添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図15】本発明の実験例におけるセリシン添加量と変化量との関係を示すグラフである。
【
図16】本発明の実験例におけるグルコース濃度と電流積分値との関係を示すグラフであり、初期特性を示すグラフである。
【
図17】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度0mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図18】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度100mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図19】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度100mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図20】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度300mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図21】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度300mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図22】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度500mg/dlの場合を示すグラフである。
【
図23】本発明の実験例における経過日数と電流積分値の変化との関係を示すグラフであり、グルコース濃度500mg/dlの場合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、試薬層に酵素活性を維持するために添加される酵素安定化剤を添加しなければ、吸湿によるバックグラウンド上昇しないことを見出し、酵素タンパク質がバックグラウンド上昇の原因ではないことを明らかにした。しかし、この酵素安定化剤が無い場合は、高温あるいは長期間の保管時の酵素失活による出力低下が起こってしまう。
【0025】
ここで、本発明者らは、さらに、酵素安定化に有効でバックグラウンド上昇しない添加剤を各種検討した結果、親水性高分子とセリシンの加水分解物、または親水性高分子とグルコン酸カリウム、あるいは親水性高分子とセリシンの加水分解物とグルコン酸カリウムを含むことが有効であることを見出した。
【0026】
これらのことを以下に示す実験例により説明する。なお本明細書において濃度あるいはあるものに対する他のものの%表示はことわりのない限りは重量基準の比率(重量%)である。
【0027】
センサーチップの作製
図2に示す構成のセンサーチップを用いた。
図2において、符号10は本実験例に用いたセンサーチップである。このセンサーチップ10の製造方法は、電気絶縁基板12上に作用電極14及び対電極16を平行近接して設ける電極部形成ステップと、反応部セル18を有するマスクシート20を熱接着するマスクステップと、反応部セル18内の作用電極14及び対電極16上に酸化還元酵素を有する反応部22を形成する反応部形成ステップと、マスクシート20上に電気絶縁性のスペーサシート24及び透明のカバーシート26を積層する積層ステップとを含む。
なお、作用電極14及び対電極16は、ポリイミドフィルムの一方の面に白金をスパッタリングし、他方の面に熱融着材料(エチレン酢酸ビニル)をコーティングしたものを、細断してテープ状にしたものを用いた。このテープを電気絶縁基板12上に熱接着することで電極部を形成する。
【0028】
反応部形成ステップは、作用電極14及び対電極16上に、酸化還元酵素を有する第一の反応部用塗布液を塗布し乾燥させて第一層28を形成する第一層形成ステップと、第一層28上に、親水性高分子化合物及び電子受容体を有する第二の反応部用塗布液を塗布し乾燥させて第二層30を形成する第二層形成ステップとを含む。第一層形成ステップにおいては、例えば、酸化還元酵素を水に溶かして塗布する。第二層形成ステップにおいて、第一層28が溶けないように、親水性高分子化合物は、第一層28が溶けない溶媒で溶解される。この溶媒として、本実験例ではエチルセロソルブを用いた。このような反応部形成ステップにより、
図2に示すように、試薬層である第一層28及び第二層30から成る反応部22が形成される。
【0029】
センサーの評価方法
グルコース水溶液を用いて、グルコース濃度と電流積分値との関係を求めた。ここで、電流積分値とは、測定検体を吸入した後に電極間の電位を0V→-0.2V→0V→+0.2Vを50mV/secの速度で変化させ、-0.1V→+0.2V電圧走査時に電極間に流れる電流を電圧に変化して、0.1secごとに60回A/D変換した結果を積算したものである。
【0030】
耐熱性の評価方法
センサーチップを乾燥剤とともにアルミ袋に個包装し、温度50℃に7日保持した後のグルコース濃度300mg/dlにおける出力低下を指標とする。具体的には以下の数式を用いた。
50℃7日保管後の濃度低下
Δ300=初期の濃度300mg/dl積分値−加熱後の300mg/dl積分値
低下量(mg/dl)=Δ300/感度a
※感度a:グルコース濃度0、100、300mg/dlの出力値を直線近似した際の傾き
この低下量が少ないほど耐熱性がよいことになる。
【0031】
耐湿性の評価方法
センサーチップを個包装せずに、温度30℃湿度65%に16時間保持した後のグルコース濃度0mg/dlにおける出力上昇を指標とする。具体的には以下の数式を用いた。
温度30℃湿度65%保持後の濃度低下
Δ0=加湿後の0mg/dl積分値−初期の濃度0mg/dl積分値
増加量(mg/dl)=Δ0/感度a
※感度a:グルコース濃度0、100、300mg/dlの出力値を直線近似した際の傾き
この増加量がバックグラウンドの増加であり、増加量が少ないほど耐湿性がよいことになる。
【0032】
反応層の形成方法
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%と添加剤を含む水溶液を、電極上に0.78μl滴下した後、40℃6分間乾燥を行い、第1層を形成する。さらに、更に、微粒子化したフェリシアン化カリウム(メディアン径3.9μm)をPVP(ポリビニルピロリドン)1.3%のエチルセロソルブ溶液中に27.6%になるように分散した0.76μlの溶液を、第1層18上に滴下して第2層を形成した。
【0033】
図4に添加剤の有無による、グルコース濃度−電流積分値の関係の違いを示す。添加剤としてはグルタミン酸ナトリウムを酵素量と同じ1.8%添加した。添加剤ありの場合はグルコース濃度500mg/dlまで直線性があるが、添加剤なしの場合は直線性が低い。このときの酵素活性は、センサー1チップ当たり、添加剤ありで4.2U/チップ、添加剤なしで1.0U/チップであった。添加剤なしでは、酵素活性が低くなるためにグルコース濃度に対する感度が下がってしまう。
【0034】
次に、これらのセンサーを50℃7日加熱した後の特性を
図5、
図6に示す。添加剤あり(
図5)では50℃加熱後の特性も初期とほぼ変わらず、濃度300mg/dlでの変化量は9.8mg/dlであった。添加剤なし(
図6)では低下量は61.3mg/dlと大きく、保管時の加熱により出力が大きく減少する。
【0035】
さらに、これらのセンサーを30℃65%RHに加湿した時の出力の経時変化を
図7に示す。
添加剤ありでは、時間経過と共に出力が上昇し16時間時点で37.0mg/dlであった。添加剤なしではほとんど上昇せず、16時間時点で0.5mg/dlであった。
【0036】
以上から、吸湿によるバックグラウンド上昇は、酵素によるものではなく、酵素に含まれる安定化剤などの添加剤によると判明した。
【0037】
上記のような評価を添加剤の種類や濃度を変えて行った結果を次に示す。
【0038】
グルタミン酸ナトリウム添加量依存
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とグルタミン酸ナトリウムを0〜1.8%の範囲で添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図8に示す。添加量が多いほど耐熱性は良くなるが、耐湿性が非常に悪くなる。
【0039】
グルタミン酸カリウムの添加量依存
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とグルタミン酸カリウムを0〜1.8%の範囲で添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図9に示す。添加量が多いほど耐熱性は良くなるが、耐湿性が非常に悪くなる。グルタミン酸ナトリウムとほぼ同様の結果である。
【0040】
グルコン酸カリウムの添加量依存
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とグルコン酸カリウムを0〜1.8%の範囲で添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図10に示す。グルタミン酸ナトリウムやグルタミン酸カリウムよりも、耐湿性への影響が少ない。
【0041】
CMC(カルボキシメチルセルロース)1%とグルコン酸カリウムの添加量依存
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とグルコン酸カリウムを添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図11に示す。CMC1%単独添加で耐熱性が40mg/dlに上昇した。(グルコン酸カリウム添加0%の点)さらにグルコン酸カリウムを添加することで、グルコン酸カリウムの添加量が少なくても耐熱性が改善するので、耐湿性への影響を少なくできる。
【0042】
セリシンの加水分解物の添加量依存性
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とセリシンの加水分解物を添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図12に示す。耐熱性への効果は少ないが、添加により耐湿性が悪くならない。
【0043】
CMC1%とセリシンの加水分解物の添加量依存性
GOD(グルコース酸化酵素)1.8%とCMC1%とセリシンの加水分解物を添加した際の耐熱性と耐湿性の評価結果を
図13に示す。CMC1%単独添加で耐熱性が40mg/dlに上昇した。さらにわずかのセリシンの加水分解物を添加することで耐湿性に影響せずに耐熱性が向上する。
【0044】
CMCとグルコン酸カリウムとセリシンの加水分解物の同時添加の場合
この場合、センサーの評価方法として上記と同様にグルコース水溶液を用いて、グルコース濃度と電流積分値との関係を求める。ただし、ここで、電流積分値としては、測定検体を吸入した後に電極間の電位を0V→-0.2V→0V→+0.2Vを200mV/secの速度で変化させ、-0.1V→+0.2V電圧走査時に電極間に流れる電流を電圧に変化して、0.025secごとに60回A/D変換した結果を積算したものを用いた。
【0045】
また、反応層の形成方法としては、
図3に示す構成のセンサーチップを用いた。作用電極114、対電極116を電極絶縁基板110上にニッケルを直接スパッタしたものをフォトリソグラフィーによりパターニングして作製した。GOD(グルコース酸化酵素)3.0%及びCMC(カルボキシメチルセルロース)0.8%を含む水溶液0.15μlを作用電極114、対電極116上に滴下し、40℃で6分間乾燥させることにより、
図3(a)及び(b)に示すように、第1層118を形成した。更に、微粒子化したフェリシアン化カリウム(メディアン径3.9μm)をHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)1.13%のエチルセロソルブ溶液中に12.5%になるように分散した0.20μlの溶液を、第1層118上に滴下して、
図3(c)及び(d)に示すように、第2層120を形成した。このようにして第1層118及び第2層120から成る反応部122を形成した。
【0046】
この方式で、添加剤にCMC0.8%とグルコン酸カリウムとセリシンの加水分解物を添加した場合の特性を
図14に示す。セリシンの加水分解物1.8%でグルコン酸カリウムを添加しても、耐熱性・耐湿性ともに良好である。
【0047】
グルコン酸カリウム0.3%で、セリシンの加水分解物添加量を変えた場合
上記の方法で、添加剤にCMC0.8%とグルコン酸カリウムとセリシンの加水分解物を添加しセリシンの加水分解物添加量を変えた場合の特性を
図15に示す。セリシンの加水分解物の添加量によらず特性が良好である。
【0048】
以下に、本発明のバイオセンサーについて、高温で長期保管した場合の性能変化について説明する。評価方法として、本発明のバイオセンサーを高温で長期保管した場合の、経過日数と電流の積分値との関係を求めた。
【0049】
電流積分値としては、測定検体を吸入した後に電極間の電位を0V→-0.2V→0V→+0.2Vを200mV/secの速度で変化させ、-0.1V→+0.2V電圧走査時に電極間に流れる電流を電圧に変化して、0.025secごとに60回A/D変換した結果を積算したものを用いた。
【0050】
酵素にGOD(グルコース酸化酵素)を用い、グルコン酸カリウム及びセリシンの加水分解物を同時添加した場合、酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、グルコン酸カリウム及びセリシンの加水分解物を同時添加した場合、酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、グルコン酸カリウムを添加してセリシンの加水分解物を添加しない場合、酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、セリシンの加水分解物を添加してグルコン酸カリウムを添加しない場合、について、バイオセンサー1を低湿度に保持できるボトル内にチップを入れ、70℃で保管を行い、グルコース水溶液に対する出力を測定し、初期の出力に対する比率をプロットした。
【0051】
酵素にGOD(グルコース酸化酵素)を用い、グルコン酸カリウム及びセリシンの加水分解物を同時添加した場合、GOD(グルコース酸化酵素)3.0%及びCMC(カルボキシメチルセルロース)0.8%、グルコン酸カリウム0.3%、セリシンの加水分解物1.8%を含む水溶液0.15μlを、作用電極114、対電極116上に滴下し、40℃で6分間乾燥させることにより、
図3(a)及び(b)に示すように、第1層118を形成した。第2層120は、
図3の第2層120と同様の方法によって形成した。
【0052】
酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、グルコン酸カリウム及びセリシンの加水分解物を同時添加した場合、GDH(グルコース脱水素酵素)3.0%及びCMC(カルボキシメチルセルロース)0.8%、グルコン酸カリウム0.3%、セリシンの加水分解物1.8%を含む水溶液0.15μlを、作用電極114、対電極116上に滴下し、40℃で6分間乾燥させることにより、
図3(a)及び(b)に示すように、第1層118を形成した。第2層120は、
図3の第2層120と同様の方法によって形成した。
【0053】
酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、グルコン酸カリウムを添加してセリシンの加水分解物を添加しない場合、GDH(グルコース脱水素酵素)3.0%及びCMC(カルボキシメチルセルロース)0.8%、グルコン酸カリウム0.3%を含む水溶液0.15μlを、作用電極114、対電極116上に滴下し、40℃で6分間乾燥させることにより、
図3(a)及び(b)に示すように、第1層118を形成した。第2層120は、
図3の第2層120と同様の方法によって形成した。
【0054】
酵素にGDH(グルコース脱水素酵素)を用い、セリシンの加水分解物を添加してグルコン酸カリウムを添加しない場合、GDH(グルコース脱水素酵素)3.0%及びCMC(カルボキシメチルセルロース)0.8%、セリシンの加水分解物1.8%を含む水溶液0.15μlを、作用電極114、対電極116上に滴下し、40℃で6分間乾燥させることにより、
図3(a)及び(b)に示すように、第1層118を形成した。第2層120は、
図3の第2層120と同様の方法によって形成した。
【0055】
グルコース濃度0mg/dlの場合、
図17に示すように、GOD、GDHによらず同じ特性であった。セリシンの加水分解物だけ添加の場合は出力の変化が少なかった。グルコン酸カリウム添加だけでは、出力の上昇がみられるが、セリシンの加水分解物との同時添加により出力上昇が抑えられている。
【0056】
グルコース濃度100mg/dl、300mg/dl、500mg/dlの場合、
図18〜
図23に示すように、GOD、GDHによらず同じ特性であった。グルコン酸カリウムだけ添加した場合は、初期の維持特性は良いが、長期の保管ができなかった。セリシンの加水分解物だけ添加の場合は、初期の出力低下が大きかった。グルコン酸カリウム及びセリシンの加水分解物を同時添加することで、初期低下を抑えつつ、長期安定性が保てることが分かった。