(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料をガス化するガス化炉と、前記ガス化炉に燃料を供給する燃料供給装置とを備え、前記ガス化炉は、該ガス化炉内に燃料および空気を導入する内筒を備え、前記ガス化炉内で発生したガスを、ガス経路を介してエンジンに供給するように構成したガス化装置において、
前記内筒の下端部が燃料で塞がれているか否かを検出するための検出手段と、
前記検出手段の信号に基づいて前記内筒の下端部が燃料で塞がれていないと判断した場合に、前記エンジンへのガスの供給を停止する制御装置とを設けたことを特徴とするガス化装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1〜
図6は、本発明の一実施形態を示す。
【0022】
先ず、ガス化装置1の概略について説明する。このガス化装置1は、
図1および
図2に示すように、例えば、木質系材料を燃料とする木質バイオマス発電プラント(システム)である。ガス化装置1は、燃料供給装置10、ガス化炉20、サイクロン30、ガス冷却装置(熱交換器)40、スクラバー50、貯水槽60、冷却塔70、フィルタ80、誘引ブロワ90、エンジン発電機100、および余剰ガス燃焼装置200等で構成されている。
【0023】
燃料供給装置10は、
図2に示すように、ガス化炉20に燃料を供給するもので、ホッパ11、モータ12および燃料吐出用のスクリュー13を備えている。すなわち、ホッパ11底部に水平筒部15を連結し、この筒部15内にスクリュー13を回転自在に取付けたものである。
【0024】
そして、モータ12の周波数をインバータ制御することによって、スクリュー13の回転速度を制御し、ガス化炉20への燃料投入量を調整する。
【0025】
ガス化炉20は、燃料供給装置10からの燃料をガス化するものである。ガス化炉20内には、燃料のガス化を促進させるためガス化剤(空気)が供給される。なお、
図1に示す点線矢印は「空気」の流れる経路を示す。
【0026】
サイクロン30は、ガス化炉20からのガスに含まれる大きな塵等を遠心分離によって除去する。なお、
図1に示す実線矢印は「ガス」の流れる経路を示す。ガス化炉20とサイクロン30との間には、ガス経路101が接続されている。
【0027】
熱交換器40は、サイクロン30からのガスを冷却するガス冷却装置である。熱交換器40内には、ガスを洗浄する散水ノズル41が設けられる。サイクロン30と熱交換器40との間には、ガス経路102が接続されている。
【0028】
スクラバー50は、熱交換器40からのガスを水によって洗浄、冷却する。貯水槽60は、スクラバー50および熱交換器40に供給する水を貯溜する。貯水槽60には、熱交換器61が設けられる。熱交換器40とスクラバー50との間には、ガス経路103が接続されている。
【0029】
貯水槽60内の水は、ポンプ62によって散水ノズル41およびスクラバー50に圧送される。貯水槽60内の水は、熱交換器40およびスクラバー50から貯水槽60に戻る。つまり、貯水槽60内の水は、ガスに含まれるススやタール等を含む。以下、貯水槽60内の水を「循環水」という。なお、
図1に示す二点鎖線矢印は「循環水」の流れる経路を示す。
【0030】
冷却塔70は、熱交換器40および熱交換器61に供給する水を貯溜する。冷却塔70内の水は、ポンプ71によって熱交換器40および熱交換器61に圧送される。
【0031】
冷却塔70内の水は、熱交換器40および熱交換器61から冷却塔70に戻る。冷却塔70の水は、熱交換器61によって貯水槽60内の循環水を間接的に(貯水槽60内の循環水と冷却塔70の水とが混ざらないように)冷却するとともに、熱交換器40によってガスを間接的に(ガスと冷却塔70の水とが混ざらないように)冷却する。つまり、冷却塔70内の水は、ガスに含まれるススやタール等を含まない。以下、冷却塔70内の水を「冷却水」という。なお、
図1に示す一点鎖線矢印は「冷却水」の流れる経路を示す。
【0032】
フィルタ80は、ガスに含まれる小さな塵等を濾過する。スクラバー50とフィルタ80との間には、ガス経路104が接続されている。
【0033】
誘引ブロワ90は、負圧作用によってガス化炉20からのガスをエンジン発電機100側に誘引する。
【0034】
フィルタ80は、ガス経路106を介してエンジン発電機100および余剰ガス燃焼装置200に接続されている。このガス経路106の途中には、前記誘引ブロワ90が接続されている。また、ガス経路106における誘引ブロワ90よりも下流側は、エンジン発電機100に接続されるエンジン用ガス経路107と、余剰ガス燃焼装置200に接続される余剰ガス用ガス経路108とに分岐されている。なお、エンジン用ガス経路107には、開閉バルブ112が接続されている。
【0035】
また、前記ガス経路104からバイパスガス経路105が分岐され、このバイパスガス経路105は、前記フィルタ80下流側のガス経路106に接続されている。このバイパスガス経路105には、開閉バルブ111が接続されている。
【0036】
また、ガス経路104におけるバイパスガス経路105の分岐位置よりも下流部には、開閉バルブ110が接続されている。
【0037】
エンジン発電機100は、ガスエンジンによって発電機を駆動する。余剰ガス燃焼装置200は、余ったガスを燃焼処理する。
【0038】
次に、前記ガス化炉20の詳細について説明する。このガス化炉20は、
図2に示すように、外筒からなるガス化炉本体21と、内筒23とを備えている。ガス化炉本体21の下側には、ガス出口22が設けられる。ガス化炉20内の残留物(ガス化後の灰等)は、排出コンベア(図示省略)によってガス化炉20外部に排出される。ガス化炉本体21の上端部からは、内筒23が上方に突出する。
【0039】
内筒23は、その内部に燃料を導入する円筒状の部材である。内筒23は、ガス化炉本体21と互いの軸中心が一致するように上下方向に立設されている。内筒23の上下両端部はそれぞれ開口されている。なお、内筒23の上端開口部は、蓋24によって閉塞することも可能である。
【0040】
内筒23の下部は、ガス化炉本体21内に上方から差し込まれ、上下方向においてガス化炉本体21内に臨み、下端開口235がガス化炉本体21の中程に位置している。内筒23の上部は、ガス化炉本体21の上端部から上方に突出し、内筒23の上端部(一箇所)からは、ガス化剤(空気)が導入されるようになっている。内筒23上部の外周一側には、燃料供給装置10からの燃料が投入される投入口231が開口されている。
【0041】
投入口231には、投入管232の一端部が連通される。投入管232は、他端部が斜め上方に延びるように設けられ、投入管232の他端部からは燃料供給装置10からの燃料5が投入される。
【0042】
ガス化炉本体21には、内筒23の下端開口235よりも下方位置にくびれ部210が設けられている。このくびれ部210は、ガス化炉本体21の中心方向に向けて突出する環状凸部からなる。くびれ部210は、ガス化炉本体21の内周面21aの開口面積が下方に向けて次第に小さくなる傾斜面211aを有する縮小開口部211と、この縮小開口部211下端から下方に延設される開口212aを有するスロート部212と、このスロート部212から開口面積が次第に大きくなる傾斜面213aを有する拡大開口部213とから構成されている。
【0043】
具体的には、縮小開口部211の上端の開口面積は、ガス化炉本体21の内周面21aが形成する開口面積と同等に設定されている。縮小開口部211の下端の開口面積は、スロート部212の開口面積と同等で、しかも、内筒23の開口面積と同等に設定されている。拡大開口部213の上開口面積は、スロート部212の開口面積と同等で、しかも、拡大開口部213の下開口面積は、ガス化炉本体21の内周面21aが形成する開口面積と同等に設定されている。
【0044】
図2に示すように、内筒23上部には、内筒23内に堆積する燃料5の高さ位置(燃料の堆積高さ)を検出するためのレベルセンサ25が設けられている。このレベルセンサ25は、内筒23内軸方向(上下方向)に垂れ下がり且つ下端に錘251を有するチェーン252と、錘251を昇降すべく、チェーン252を巻き上げたり、巻き戻したりする駆動部
を有する計測部253とを備えている。このレベルセンサ25で内筒23内に堆積する燃料5の上面位置を計測する際には、チェーン252の伸長により錘251が下降し、その錘251が燃料5に接したときに、計測部253が錘251の重量変化(錘の重量バランスの変化)を検知して燃料5の高さを求めることができる。このような燃料5のレベル検出は、定期的且つ連続的(例えば、1分間隔)に行なうようになっている。
【0045】
図2に示すように、ガス化炉本体21内には、複数個の圧力センサ26a、26bが取り付けられている。圧力センサ26a、26bは、ガス化炉本体21内の圧力(以下「内圧」という。)を検出するものである。一方の圧力センサ26aの取付位置は、ガス化炉本体21内の上部(好ましくは上端部)である。つまり、圧力センサ26aは、ガス化炉20内に堆積する燃料5から離間した位置に取り付けられている。また、他方の圧力センサ26bは、スロート部212よりも下部側(ガス化炉本体21の底部またはその近傍)に取り付けられている。
【0046】
図2に示すように、ガス化炉本体21内には、複数個の温度センサ27a、27bが取り付けられている。一方の温度センサ27aの取付位置は、ガス化炉本体21の内周面21aの上部である。つまり、温度センサ27aは、ガス化炉本体21内に堆積する燃料5から離間した位置に取り付けられている。他方の温度センサ27bは、スロート部212よりも下部側(ガス化炉本体21の底部またはその近傍)に取り付けられている。
【0047】
図2に示すように、ガス出口22には、ガス成分濃度を検出するためのガス濃度センサ29が設けられている。
【0048】
前記レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、温度センサ27a、27bおよびガス濃度センサ29は、
図1及び
図3に示すように制御装置28に接続されている。制御装置28は、レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、温度センサ27a、27bおよびガス濃度センサ29のそれぞれの検出信号に基いて、前記開閉バルブ110、111、112の開閉を制御するものである。
【0049】
なお、レベルセンサ25、圧力センサ26a、26b、温度センサ27a、27bおよびガス濃度センサ29は、タールの発生に起因する炉内雰囲気状態を監視するための検出手段に相当するものである。制御装置28には、燃料供給装置10のモータ12が接続されている。制御装置28は、処理部281と、記憶部282とを有する。
【0050】
処理部281は、CPU(Central Processing Unit)等で構成される。記憶部282は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0051】
次に、以上の構成からなるガス化装置1を使用して燃料5をガス化させる通常運転を行なう場合について説明する。
【0052】
先ず、燃料5を燃料供給装置10のホッパ11に投入する。燃料供給装置10は、モータ12がスクリュー13を所定回転速度で回転させる。スクリュー13を介して燃料5をガス化炉20の内筒23に供給する。内筒23内部に投入された燃料5は、ガス化炉本体21内に供給され、内筒23の下端開口235から上方に所定高さ(炉内レベル目標値)H1まで堆積される。そして、かかる燃料5が燃焼を開始しガス化する。なお、
図2に示すように、内筒23内に堆積される燃料5は、上部から乾燥層・乾留層A、酸化層Bおよび還元層Cが形成される。
【0053】
ガス化炉20内で発生したガスは、ガス出口22から吸引されガス経路101を介してサイクロン30に供給される。サイクロン30が、ガス化炉20からのガスに含まれる大きな塵等を遠心分離によって除去する。
【0054】
サイクロン30により、大きな塵等が除去されたガスは、ガス経路102を介して熱交換器40に供給され、熱交換器40により冷却される。熱交換器40で冷却されたガスは、ガス経路103を介してスクラバー50に供給され、スクラバー50において水によって洗浄、冷却される。
【0055】
スクラバー50で洗浄、冷却されたガスは、ガス経路104を介してフィルタ80に供給される。このとき、開閉バルブ110が開放されているが、開閉バルブ
111は閉じているため、ガスがバイパスガス経路105を流れることはない。
【0056】
フィルタ80は、ガスに含まれる小さな塵等を濾過する。誘引ブロワ90は、負圧作用によってガス化炉20からのガスをエンジン発電機100側に誘引する。誘引ブロワ90を通過したガスは、開閉バルブ112が開放されているエンジン用ガス経路107を介してエンジン発電機100に供給される。エンジン発電機100は、ガスエンジンによって発電機を駆動する。余ったガスは、余剰ガス用ガス経路108を介して余剰ガス燃焼装置200に供給される。余剰ガス燃焼装置200は、余ったガスを燃焼処理する。
【0057】
次に、タール回避制御について説明する。
【0058】
タールは、内筒内部の炉内レベルが適正範囲内にない場合やスロート部212でブリッジが発生し、そのブリッジが崩壊した場合に発生する。このため、炉内の内筒レベルが適正でない場合やスロート部212でのブリッジ崩壊を検知し、このときに発生するタールによる機器への影響を防止するのが回避制御である。
本実施の形態では、燃料をガス化するガス化炉20と、ガス化炉20に燃料を供給する燃料供給装置10とを備え、ガス化炉20内で発生したガスを、ガス経路を介してガスエンジンに供給するように構成したガス化装置1において、ガス化炉20内におけるタールの発生に起因する炉内雰囲気状態を監視するための検出手段と、検出手段による検出信号値と、予め設定された基準値とを比較し、炉内雰囲気状態がタール回避必要と判断した場合に、ガスエンジンへのガスの供給を停止する制御装置28とを設けている。
本実施の形態では、制御装置28が炉内雰囲気状態がタール回避必要と判断した場合に、ガスエンジンへのガスの供給を停止するため、タールを多量に含むガスをガスエンジン側に供給するのを防止でき、ガスエンジン等の構成機器のタールに起因する故障やトラブルを解消することが可能である。
【0059】
ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段が、レベルセンサ25である場合について、
図4に示すフローを参照しながら説明する。
【0060】
先ず、レベルセンサ25により、燃料5の内筒23内レベル計測を行ない(S1)、燃料5の炉内レベルHを検出する(S2)。
【0061】
炉内レベルHと予め設定された基準レベル(基準値)H0とを比較する。ここで、基準レベルH0とは、内筒23の下端開口235位置をいう。この場合、H0=0と設定される。H<H0(炉内レベルHが基準レベルH0よりも小さい)と判断した場合には、ガス化炉20内雰囲気状態が変化したと判断する。例えば、内筒23に燃料が堆積する通常運転時には、H>H0の状態である。すなわち、前記のように、炉内レベルHは炉内レベル目標値H1に相当する。
【0062】
H<H0となった場合(S3)には、燃料のブリッジ崩壊が発生し、これによりタールが発生したと判断できる。また、内筒23内部への燃料供給不足とも判断できる。
【0063】
そこで、制御装置28は、回避運転を開始する(S4)。具体的には、制御装置28は、開閉バルブ110および開閉バルブ112を閉じるとともに、開閉バルブ111を開く。これにより、タールを多く含むガスは、バイパスガス経路105を流れて、余剰ガス燃焼装置200に供給される。この結果、フィルタ80をバイパスすることにより、タールによるろ布の被害を最小限に抑えることができ、耐久性が向上する。また、タールでエンジンの過給機や吸気バルブ等が膠着し、動作不良を起こすことも防止できる。
【0064】
燃料供給装置10からガス化炉20に、燃料が供給され、H>H1となった場合(S5)、タイマーをカウントする(S6)。ここで、H1とは前記燃焼を最良に行なう炉内レベル目標値であるが、H1=H0と設定することも可能である。また、所定時間としては、燃料5の内筒23内レベルが復帰してから例えば15分に設定される。
【0065】
所定時間が経過すると(S7)、制御装置28は、通常の運転を行なう(S8)。すなわち、制御装置28は、開閉バルブ111を閉じるとともに、開閉バルブ110および開閉バルブ112を開く。これにより、スクラバー50を出たガスは、ガス経路104、フィルタ80、ガス経路106およびエンジン用ガス経路107を流れてエンジン発電機100に供給される。
【0066】
なお、エンジンに都市ガスまたは液体燃料とガス化装置1で生成された燃料ガスとを、供給する場合には、燃料ガスの供給を停止している間には、都市ガスまたは液体燃料でエンジンを作動させることができる。また、燃料ガスの供給を停止している間、エンジンを停止することも可能である。
【0067】
また、燃料5の内筒23内レベル検出は、単位時間当たりの炉内レベルの偏差ΔHと、基準レベルの偏差ΔH0を比較することも可能である(S9)。本方法は、炉内の内筒レベルが適正でない場合と、スロート部212でのブリッジ崩壊のどちらの場合においても適用できる。
【0068】
次に、ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段が、圧力センサ26a、26bである場合について、
図5に示すフローを参照しながら説明する。圧力センサ26aは炉内の内筒レベル制御が適正でない場合の検知に、圧力センサ26bはスロート部212でのブリッジ崩壊の検知に用いる。
【0069】
先ず、圧力センサ26aにより、燃料5の内筒23内圧力計測を行ない(S1)、炉圧力(内圧)Pを検出する(S2)。
【0070】
内圧Pと予め設定された基準圧力(基準値)P0とを比較する。ここで、基準圧力P
0とは、炉内で燃料のガス化が通常に行なえる圧力をいう。
【0071】
P>P0と判断した場合には、炉内雰囲気状態が変化したと判断する。例えば、内筒23内部に燃料が堆積している場合には、内筒23が燃料で閉塞されているため、内筒23からの空気の吸引はほとんどなく、内圧Pが負圧となっている。P>P0となった場合には、内筒23からガス化炉本体21内に空気が吸引されるため、内圧が大気圧かあるいは大気圧に近くなり、燃料のブリッジ崩壊により、内筒23内部の燃料が落下したと判断できる。
【0072】
従って、内筒に燃料が堆積する通常運転時には、P<P0の状態であるが、P>P0となった場合(S3)には、燃料のブリッジ崩壊により、タールが発生すると判断できる。
【0073】
そこで、制御装置28は、回避運転を開始する(S4)。燃料供給装置10からガス化炉20に、燃料が供給され、P<P0となった場合(S5)、タイマーをカウントする(S6)。所定時間が経過すると(S7)、制御装置28は、通常の運転を行なう(S8)。
【0074】
また、くびれ部210部分は、開口面積が小さいため、このくびれ部210部分でブリッジを起こしやすい。このブリッジが崩壊した場合も圧力変化が生じるため、圧力センサ26bがかかる圧力変化を検知する。なお、圧力センサ26bの場合も前記圧力センサ26aの場合と同様であるため、説明は省略する。
【0075】
また、内筒23内の内圧は、単位時間当たりの内圧の偏差ΔPと、基準圧力の偏差ΔP0を比較することも可能である(S9)。
【0076】
次に、ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段が、温度センサ27a、27bである場合について説明する。温度センサ27aは炉内の内筒レベル制御が適正でない場合の検知に、温度センサ27bはスロート部212でのブリッジ崩壊の検知に用いる。なお、
図5において、符号Pは符号Tと変更して説明する。
【0077】
温度センサ27aにより、内筒23の外周部分の空間温度計測を行ない(S1)、炉内温度Tを検出する(S2)。
【0078】
炉内温度Tと予め設定された基準温度(基準値)T0とを比較する。ここで、基準温度T0とは、ガス化炉20内で燃料のガス化が通常に行なえる最低温度をいう。従って、内筒23に燃料が堆積する通常運転時には、T<T0の状態である。
【0079】
T>T0となった場合(S3)には、炉内雰囲気状態が変化したと判断する。炉内の内筒レベルが適性範囲でなく、内筒内部で偏流が発生した場合には、過剰に供給された空気により空間部分の温度センサ27aの温度が上昇する。一方で空気が通りにくくなったところでは、低温となりタールの発生が増える。
【0080】
そこで、制御装置28は、回避運転を開始する(S4)。そして、燃料供給装置10からガス化炉20に、燃料が供給され、T<T0となった場合(S5)、タイマーをカウントする(S6)。所定時間が経過すると(S7)、制御装置28は、通常の運転を行なう(S8)。
【0081】
また、くびれ部210部分は、開口面積が小さいため、このくびれ部210部分でブリッジを起こしやすい。このブリッジが崩壊した場合、高温部分に大量の燃料が急速に供給され、燃焼に必要な空気量が低下するなどして、炉内の温度が低下する。このとき、大量の揮発分中にはタールも含まれており、炉内の温度も低下しているため、タールが分解されないまま炉外に排出される。かかる場合は、スロート部212より下方の温度センサ27bが温度変化をより確実に検知する。
【0082】
温度センサ27aでは、ブリッジ崩壊時に偏流があった場合には、温度変化に規則性がない。一方で温度センサ27bは、スロート部212での影響がなくなるため、温度変化に規則性がある。なお、
図4において、符号Hは符号Tと変更して説明する。
【0083】
温度センサ27bにより、スロート部212より下方の温度計測を行ない(S1)、炉内温度Tを検出する(S2)。
【0084】
炉内温度Tと予め設定された基準温度(基準値T0)とを比較する。ここで、基準温度T0とはガス化炉20内で燃料のガス化が行なえる最低温度をいう。従って、ブリッジ崩壊がおこっていない通常運転時には、T>T0の状態である。
【0085】
T<T0となった場合(S3)には、炉内雰囲気状態が変化したと判断する。例えば、スロート部212下方では温度が700度であるが、ブリッジが崩壊して燃料が大量に高温部に落下すると、燃焼用の空気が不足して温度が低下してタールの発生が増える。
【0086】
そこで、制御装置28は、回避運転を開始する(S4)。そして、燃料供給装置10からガス化炉20に、燃料が供給され、T>T0となった場合(S5)、タイマーをカウントする(S6)。所定時間が経過すると(S7)、制御装置28は、通常の運転を行なう(S8)。
【0087】
また、いずれの場合の温度検出時においても、単位時間当たりの炉内温度の偏差ΔTと、基準温度の偏差ΔT0を比較することも可能である(S9)。
【0088】
ガス化炉20内部の雰囲気状態を監視するための検出手段が、ガス濃度センサ29である場合について説明する。
【0089】
生成ガス成分には、メタン(CH
4)と窒素(N
2)も含有されている。そこで、CH
4とN
2により、制御することも可能である。
図6(a)にタール濃度とCH
4濃度との関係を示す。すなわち、タール濃度とCH
4濃度とは相関があるため、CH
4濃度をガス濃度センサで検出し分析計で分析することにより、タール濃度を検出することができる。
【0090】
そして、検出されたCH
4濃度が、基準濃度(基準値)Caを超
えた場合に、
図5に示すフローに基づいて回避運転をすることが可能となる。
【0091】
また、
図6(b)に、N
2濃度変動とCH
4濃度変動の関係を示す。すなわち、N
2濃度変動とCH
4濃度変動には相関がある。従って、N
2濃度変動ΔN
2が、基準値ΔCbを超えた場合に、
図5に示すフローに基づいて回避運転をすることが可能となる。
【0092】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、ガス化炉本体21内面にくびれ部210を有する場合について例示したが、くびれ部210は、必ずしも設ける必要はない。
図7に、くびれ部210を有していないガス化炉20を示す。
【0093】
そして、くびれ部210を有さないガス化炉であってもブリッジが発生する場合があるが、圧力センサ26b、温度センサ27bを
図7のようにガス化炉20の底部に設けることで高さ方向いずれの位置でブリッジが発生してもブリッジ下方の炉内雰囲気状態を検知できる。なお、同図において、
図2と同一部材には同一符号を付して、それぞれの説明は省略する。
【0094】
また、内筒23やくびれ部210を有さない単なる一重の筒状のガス化炉であってもよい。すなわち、かかるガス化炉においても、
図7に示したガス化炉20と同様に、圧力センサ26bおよび温度センサ27bを、ガス化炉の底部に設けることで、圧力センサ26bにより内圧の上昇または、温度センサ27bにより炉内温度の低下の何れかを検知して、ブリッジ崩壊による炉内雰囲気状態を監視することができ、タールの回避が可能となる。
【0095】
また、ガス化炉本体21および内筒23の断面開口形状は、円形、矩形状等の任意の形状が採用可能である。