特許第5798058号(P5798058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798058
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20151001BHJP
   F04C 15/06 20060101ALI20151001BHJP
   F04C 2/10 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F04C15/00 G
   F04C15/06 D
   F04C2/10 341F
   F04C15/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-25358(P2012-25358)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-160205(P2013-160205A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズメジャメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】戸辺 光浩
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−25460(JP,A)
【文献】 特開2009−150315(JP,A)
【文献】 特開平6−159291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
F04C 2/10
F04C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられたポンプと、
前記ポンプから吐出された流体を液体と気体富化液とに分離する空気分離室と、
前記空気分離室に連通された気体富化液流入孔を有し、当該気体富化液流入孔から供給された気体富化液を気体と液体に分離する気液分離室と、
前記気液分離室に隣接し、前記ポンプのロータを収容するロータ室と、
一端が前記ケーシングの外側に突出し他端が前記ポンプのロータに連結するロータ軸と、
前記気体富化液流入孔よりも下方に設けられ、前記気液分離室と前記ロータ室とを区画する隔壁及び前記隔壁に対向する側壁のそれぞれから前記気液分離室内に突出し、それぞれ前記ロータ軸が挿入される挿入孔の前記気液分離室内側端部で、潤滑剤を介して前記ロータ軸を回転可能に支持する軸受を保持する一対の軸受保持部と、
前記気液分離室内であって、前記ロータ軸の軸方向において、前記隔壁と前記隔壁側の軸受保持部に保持されている軸受との間に設けられ、前記気体富化液流入孔から気体富化液が前記各軸受保持部の軸受に吹き付けられるのを防止する遮蔽部と、を備えることを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記気体富化液流入孔に対向し、前記隔壁側の軸受保持部の上側外周を覆うように設けられ、前記気体富化液流入孔より吐出する気体富化液を、前記隔壁との間から前記気液分離室の底部へと落下させることを特徴とする請求項1に記載のポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプユニットに係り、特に液体燃料を供給する燃料供給装置に搭載されるポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料供給装置の筐体内には、地下タンクに貯蔵された液体燃料を汲み上げてノズルに圧送するポンプユニットが搭載されている。ポンプユニットのケーシング内には、ストレーナ、逆止弁、ポンプ、空気分離室、気液分離室、フロート弁等の各機器が収納され、該ケーシング外にはモータが設けられ、プーリを介してポンプを駆動させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ポンプユニットは、地下タンクに貯蔵された液体燃料を汲み上げてポンプ吐出口から油液を吐出する過程で液体燃料に空気が混入するため、空気分離室において吐出口から吐出する流体を気体富化液(気体を含む液体)と液体に分離して液体を流量計へ送り出すと共に、気体富化液流入口を介し気体富化液を気液分離室に供給するように構成されている。
【0004】
また、気液分離室においては、気体富化液の供給により気体が分離された液体の液位が所定高さに達すると、液位の変化に応じて昇降するフロートの上昇によりフロート弁が開弁し、気体除去された液体がポンプ吸込み側に供給される。
【0005】
そして、前記ポンプユニットには、ポンプのロータを収容するロータ室が気液分離室に隣接して設けられている。ロータには当該ロータを回転させるためのロータ軸の一端側が貫通するとともに、他端側が前記気液分離室とは逆側に延在してケーシングの外部に突出するように設けられている。ロータ軸のロータの取付箇所の両側には、ロータ軸の振れを防止することによりロータ軸がスムーズに回転可能とさせるための軸受けがそれぞれ設けられている。さらに、ケーシングの外部に突出したロータ軸には、モータの回転駆動力をケーシング内側に配されたポンプのロータに伝達するためのプーリが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の構成のものでは、ロータを貫通するロータ軸をロータの両側に配置した一対の軸受けにより支持することでロータ軸の回転時の振れを抑制している。一方、ポンプユニットをより小型化するためには、ロータ軸の先端(一端側)にロータを取付けて片持ち梁構造で支持することが考えられている。しかし、この片持ち梁構造の場合、ロータ軸を支持する一対の軸受けがロータの両側を挟むように設けることができなくなり、ロータ軸の回転時の振れが大きくなってしまう。
【0008】
ここで、上記片持ち梁構造において、ロータ軸の回転時の振れを抑制するためには、ロータ軸を支持する軸受けを軸方向に離して二つ設けることが重要となるが、ロータ軸の回転時の振れを効果的に抑制するためには、ロータ室の外側に延在するロータ軸を二つの軸受けで支持すると共に、一対の軸受け間の設置間隔(軸方向の離間距離)をより大きく取る必要がある。
【0009】
このように、小型化を図るためにロータ軸の構造を片持ち梁構造にしても、ロータ軸の振れをより防止するために軸受けの設置間隔をより大きくとればとる程、結局、ロータ軸の他端側がケーシングの外壁よりも外側に大きく突出することとなり、これに伴い軸受けを保持する円筒形状の軸受け収納部がケーシングの外側に延在し、結果的にケーシングの外形寸法も大きくなるという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、各軸受け間の距離を確保可能としつつ、各軸受けがケーシングの外部に突出しないように各軸受けを配置して上記課題を解決したポンプユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、ケーシング内に設けられたポンプと、
前記ポンプから吐出された流体を液体と気体富化液とに分離する空気分離室と、
前記空気分離室に連通された気体富化液流入孔を有し、当該気体富化液流入孔から供給された気体富化液を気体と液体に分離する気液分離室と、
前記気液分離室に隣接し、前記ポンプのロータを収容するロータ室と、
一端が前記ケーシングの外側に突出し他端が前記ポンプのロータに連結するロータ軸と、
前記気体富化液流入孔よりも下方に設けられ、前記気液分離室と前記ロータ室とを区画する隔壁及び前記隔壁に対向する側壁のそれぞれから前記気液分離室内に突出し、それぞれ前記ロータ軸が挿入される挿入孔の前記気液分離室内側端部で、潤滑剤を介して前記ロータ軸を回転可能に支持する軸受を保持する一対の軸受保持部と、
前記気液分離室内であって、前記ロータ軸の軸方向において、前記隔壁と前記隔壁側の軸受保持部に保持されている軸受との間に設けられ、前記気体富化液流入孔から気体富化液が前記各軸受保持部の軸受に吹き付けられるのを防止する遮蔽部と、を備えることを特徴とする。
(2)本発明は、前記遮蔽部が、前記気体富化液流入孔に対向し、前記隔壁側の軸受保持部の上側外周を覆うように設けられ、前記気体富化液流入孔より吐出する気体富化液を、前記隔壁との間から前記気液分離室の底部へと落下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーシング内の気液分離室とロータ室とを区画する隔壁、及び気液分離室の隔壁に対向する側壁のそれぞれには、ロータ軸を支持するための軸受を設ける構成とし、気液分離室の空間を利用することによりケーシング内において当該ロータ軸を支持する二つの軸受の設置間隔を大きくとることができる。このため、二つの軸受の設置間隔を大きくとるためにロータ軸をケーシングの外側に大きく突出させる必要がなくなり、その分、ケーシングの小型化を図れる。また、気液分離室に遮蔽部を設けることにより、気体富化液流入孔より吐出される気体富化液が隔壁に設けられた軸受に直接付着することが防止でき、この結果、隔壁に設けられた軸受のグリスが気体富化液と接触することにより流出してしまうことを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるポンプユニットの一実施例を模式的に展開して示す概略構成図である。
図2】ポンプユニットにおける液体の流れを順に示す図である。
図3】ケーシングの内部構成を示す縦断面図である。
図4図3中A−A線に沿う縦断面図である。
図5A】遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。
図5B】遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
図6A】変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。
図6B】変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
〔ポンプユニットの構成〕
図1は本発明によるポンプユニットの一実施例を模式的に示す概略構成図である。図2は本ポンプユニットにおける液体の流れを順に示す図である。尚、図1ではポンプユニットの全体構成を分かりやすく示すため、各部が上下位置及び前後位置、左右位置をずらして記載されており、後述する図3図8に示す位置とは異なる箇所に記載されている。
【0016】
図1及び図2に示されるように、ポンプユニット10は、例えば、ガソリンや軽油などの液体燃料(以下「液体」という)を供給する燃料供給装置に搭載され、地下タンク12に貯蔵された燃料を汲み上げると共に、液体に含まれる気泡を分離させて流量計20へ送液するように設けられている。尚、流量計20で計測された液体燃料は、燃料供給装置のホース、ノズルを介して車両の燃料タンクに供給される。
【0017】
ポンプユニット10は、ケーシング30の内部に流入室31、ロータ室32、空気分離室33、流出経路34、気液分離室36が形成されている。流入室31には、ケーシング30の底部に開口する流入口37に連通されたストレーナ取付室38と、ストレーナ取付室38の下流側(流出側)に隣接された逆止弁取付室39とが設けられている。尚、ストレーナ取付室38及び逆止弁取付室39は、ケーシング30の同じ側面に隣接して設けられている。さらに、ストレーナ取付室38の流出側と逆止弁取付室39の流入側との間は、連通路45によって連通されている。
【0018】
ストレーナ取付室38は、ケーシング30の側面から加工された第1開口(ストレーナ取付用開口部)38aと、開口38aの奥部に形成されたストレーナ受け部38bとを有する。ストレーナ取付室38には、ストレーナ44が収納されている。また、ストレーナ44は、流入口37から流入された液体に含まれる異物を捕獲する金網からなり、円筒形状に形成されている。
【0019】
ストレーナ44は、第1開口38aから挿入され、一端(挿入側端部)がストレーナ受け部38bに当接され、且つ他端(取出側端部)が第1開口38aに螺入された第1蓋部材(ストレーナ取付用蓋)41Aに当接される。第1蓋部材41Aは、ストレーナ取付室38の開口38aを閉塞するように締結されると共に、ストレーナ44をストレーナ取付室38に保持する。第1蓋部材41Aの内側には、ストレーナ44の端部が嵌合固定されている。そのため、第1蓋部材41Aをストレーナ取付室38の開口38aから外すことによりこれと同時にストレーナ44も取出すことができる。
【0020】
ポンプ駆動により流入口37から吸引された液体は、ストレーナ44により濾過された後、連通路45を通過して逆止弁取付室39に流入する。
【0021】
逆止弁取付室39は、ストレーナ取付室38の下流側に設けられ、ケーシング30の側面から加工された第2開口(逆止弁取付用開口部)39aと、流入側逆止弁40により開閉される弁座39bとを有する。逆止弁取付室39には、流入側逆止弁40が開閉動作可能に取り付けられている。
【0022】
流入側逆止弁40は、コイルバネ42のバネ力により閉弁方向に付勢されており、ポンプ駆動時は弁座39bを開弁し、ポンプ停止時は弁座39bを閉止する。また、コイルバネ42は、第2開口39aを閉塞する第2蓋部材(逆止弁取付用蓋)41Bにより保持される。弁座39bには、連通路45に連通された連通用開口部39cが設けられている。また、逆止弁取付室39の天井には、ギヤポンプ48のロータ室32へ流体を流出するための流出用開口部39dが設けられている。
【0023】
流入側逆止弁40は、ポンプ駆動又はポンプ停止に伴う負圧の変動に伴って連通用開口部39cを開または閉とする開弁位置又は閉弁位置に動作する。従って、流入側逆止弁40が開弁動作すると、連通用開口部39cが開放されて連通路45を流れた液体燃料が連通用開口部39cから上方に配された流出用開口部39dを通って吸込み側流路46に流出される。
【0024】
逆止弁取付室39の下流側には、ロータ室32の吸込み側に連通された吸込み側流路46及びロータ室32が設けられている。ロータ室32には、ギヤポンプ48が設けられている。ギヤポンプ48は、モータの回転駆動力を伝達されて回転するロータ50と、ロータ50により回転駆動されるピニオン52とを有する。
【0025】
ロータ50は、ロータ室32の内径に対応した円盤形状に形成されており、円盤状の平面には半円形状の係合部50aが回転方向(周方向)に所定のピッチ(間隔)で複数個設けられている。また、ピニオン52は、回転軸53により回転可能に支持されており、外周にはロータ50の係合部50aに対応する半円形状の凹部52aが所定のピッチ(間隔)で複数個設けられている。
【0026】
また、ロータ50の回転中心とピニオン52の回転中心とは、上下方向に偏心している。ピニオン52の外周とロータ50の内周との間には、偏心量に応じた三日月形状の仕切り部51が設けられている。仕切り部51の内周面51aは、ピニオン52の外周が摺接するピニオン摺接面であり、仕切り部51の外周面51bは、ロータ50の係合部50aが摺接するロータ摺接面である。
【0027】
係合部50aがピニオン52の凹部52aに係合することにより、ロータ50がモータにより回転駆動されると共に、ピニオン52も同一方向に回転駆動される。そして、ロータ室32の負圧発生により流入側逆止弁40が開弁し、ストレーナ44を通過した液体がロータ室32の吸込み口32aに吸引される。ギヤポンプ48においては、ロータ50及びピニオン52が反時計方向に回転駆動すると共に、吸込み側流路46から吸引された液体は、ピニオン52の凹部52a及びロータ50の係合部50a間に流入し、ロータ室32の吐出口32bに連通された吐出側流路47へ吐出される。
【0028】
さらに、ギヤポンプ48から吐出された液体は、吐出側流路47の下流に配された空気分離室33へ流入される。空気分離室33は、下流側がフィルタ54に連通され、側壁には気体を含んだ気体富化液を気液分離室36に回収するための気体富化液流入孔58が設けられている。
【0029】
気液分離室36の底部には、液体をギヤポンプ48のロータ室32に戻す戻し孔60が設けられ、天井には大気開放孔62が設けられている。また、気液分離室36には、戻し孔60を開閉するフロート弁70が設けられている。
【0030】
フロート弁70は、気液分離室36内の気体富化液を含む液体の液面高さが所定高さ以上の場合に戻し孔60を開弁する弁部を有する。
【0031】
気液分離室36において、液体に含まれる気泡(気体)は上部空間に浮上し、大気開放孔62から大気中に放出される。また、気泡が分離された液体は、液面高さが所定高さに達したときフロート弁70の開弁により戻し孔60を通過して吸込み側流路46に戻される。
【0032】
また、空気分離室33において、気体富化液が分離された液体は、フィルタ54により濾過された後に流出経路34を通過して流量計20に供給される。尚、流出経路34に設けられた流出側逆止弁64は、ギヤポンプ48によって送出された液体の圧力により開弁する。
【0033】
また、ポンプユニット10には、リリーフ弁80が設けられている。流路内の液圧が必要以上に高まった場合等に、フィルタ54により濾過された液体の一部は、リリーフ弁80を開弁させてギヤポンプ48のロータ室32に戻される。リリーフ弁80は、コイルバネ82のばね力により閉弁方向に付勢されており、流出経路34の吐出圧力と、コイルバネ82のばね力にロータ室32の吸込み圧力を加えた合力との差に応じて開閉する。従って、リリーフ弁80は、コイルバネ82のばね力と吐出圧力と吸込み圧力の合力のつり合いにより、開弁と閉弁を繰り返す。
【0034】
〔ケーシング30の内部構成〕
図3はケーシングの内部構成を示す縦断面図である。図3に示されるように、気液分離室36とロータ室50とを区画する隔壁36c、および、気液分離室36内において隔壁36cに対向する側壁36dには、それぞれ挿通孔102、104を有する軸受保持部36a、36bが設けられており、これらの挿通孔102、104にはロータ軸100が挿入される。
【0035】
ロータ軸100は、一端100aがケーシング30内のロータ室32に挿入されてロータ50に結合されており、ロータ50を片持ち梁構造で支持している。また、ロータ軸100の中間部分は、気液分離室36内に配された一対の軸受け93、94により回転可能に支持される。さらに、ロータ軸100の他端100bは、ケーシング30の外側に突出し、駆動モータの回転駆動力が伝達されるプーリ110が結合されている。
【0036】
なお、本実施例においては、駆動モータの回転駆動力はプーリ110を介してロータ軸100に伝達されるように構成されているが、駆動モータのロータ軸100への回転駆動力の伝達は、プーリ110を介さずに駆動モータの回転駆動軸とロータ軸100とを直結させて伝達するようにしてもよい。
【0037】
また、ロータ軸100が挿通される軸受保持部36a、36bは、隔壁36c、側壁36dの気液分離室36の室内に向けてそれぞれ突出するように設けられている。軸受保持部36aの内側には、軸受93と、オイルシール95とが挿入されている。さらに、軸受保持部36bの内側には、軸受94と、オイルシール96とが挿入されている。
【0038】
このように、ケーシング30の気液分離室36の隔壁36c、側壁36dの室内側にロータ軸100が挿通される挿通孔102、104を有する軸受保持部36a、36bが設けられている。このため、気液分離室36内の空間を、ロータ軸100を支持するための二つの軸受93、94の設置間隔を大きくとるための空間として利用しているため、従来のように二つの軸受93、94の設置間隔を大きくとるためにケーシング30の外側に軸受保持部を突出させずに済み、その分コンパクトな構成となり、小型化が図られる。
【0039】
ロータ50のロータ軸100は、水平方向に延在すると共に、気液分離室36の上部空間を貫通した状態に支持されている。また、ロータ軸100は、一端(左端)がロータ室32に挿通されてロータ50の軸に結合され、他端(右端)がケーシング30の側面より外側に突出している。さらに、ロータ軸100の他端には、従動側プーリ110が嵌合固定されている。尚、従動プーリ110の下方には、モータに駆動される駆動側プーリが設けられ、Vベルトを介してモータの回転駆動力が従動プーリ110に伝達される。
【0040】
図4図3中A−A線に沿う縦断面図である。図5Aは遮蔽部130の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。図5Bは遮蔽部130の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
【0041】
図4及び図5Aに示されるように、ロータ室23に隣接する気液分離室36の隔壁36cには、空気分離室33で液体から分離された気体富化液が供給される気体富化液流入孔58(図4中、破線で示す)が設けられている。
【0042】
気体富化液流入孔58は、ギヤポンプ48の吐出側から吐出された吐出圧と気液分離室36の圧力との差により空気分離室33からの気体富化液を気液分離室36に供給するための通路である。また、気体富化液流入孔58は、軸受保持部36aの上方に配されているので、気液分離室36に供給された気体富化液が軸受保持部36aに吹き付けられ、ロータ軸100及び軸受93にも気体富化液が吹き付けられるおそれがある。
【0043】
気体富化液流入孔58から空気分離室33に気体富化液が供給されると、気体富化液によって軸受93のグリスが流されて、潤滑不足になる。このような、気体富化液の供給による軸受93の潤滑不足を解消するため、気体富化液流入孔58から気液分離室36に供給される気体富化液の流れ方向を変更する遮蔽部130が軸受保持部36aと気液分離室36の天井36eとの間に設けられている。
〔遮蔽部130の構成〕
図5A及び図5Bに示されるように、遮蔽部130は、ロータ室32に隣接する気体富化液流入孔58が開口する隔壁36cに対向するように形成された仕切り部であり、隔壁36cとの間にU字状溝132を形成している。そのため、気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は、遮蔽部130により軸受93へ吹き付けられることが防止され、U字状溝132に沿って軸受保持部36aの側方に導かれて気液分離室36の底部に落下する。
【0044】
遮蔽部130は、気液分離室36の隔壁36cの上部に開口する気体富化液流入孔58に対向するように天井36e、側壁36fと軸受保持部36aの上側外周との間に形成されている。
【0045】
従って、空気分離室33と気体分離室36との圧力差により気体富化液流入孔58から気体分離室36内に噴射された気体富化液は、遮蔽部130に吹き付けられた後、流れ方向が変更されて遮蔽部130と隔壁36cとの間に形成されたU字状溝132に集まり、U字状溝132を流れて軸受保持部36aの反対側の側方から気液分離室36の底部に落下する。このように、気液分離室36に供給される気体富化液は、軸受93のグリスを流出させず、気液分離室36の底部に貯留される。
【0046】
よって、気体富化液の供給に伴うロータ室32に隣接する気液分離室36の内部に設けられた一方の軸受93における潤滑不足が防止される。尚、他方の軸受94は、気体富化液流入孔58から離間しているが、上記遮蔽部130により気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は他方の軸受94に到達せず、グリスの流出も生じない。
〔変形例〕
図6Aは変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。図6Bは変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
【0047】
図6A及び図6Bに示されるように、変形例の遮蔽部130Aは、軸受保持部36aの端部外周より半径方向に突出する鍔状に形成されている。すなわち、遮蔽部130Aは、軸方向からみると円盤形状に形成されており、軸受保持部36aの外周の全周より突出するように形成されている。
【0048】
従って、空気分離室33と気体分離室36との圧力差によりロータ室32に隣接する気液分離室36の隔壁36cに形成された気体富化液流入孔58から気体分離室36内に噴射された気体富化液は、気体分離室36の内部に噴射され、その一部が軸受保持部36aに吹き付けられる。
【0049】
このように、軸受保持部36aに吹き付けられた気体富化液は、軸受保持部36aの端部外周に設けられた鍔状の遮蔽部130Aにより流れ方向が変更されて軸受93に到達せず、遮蔽部130Aにより軸方向への流れが遮蔽される。従って、気液分離室36に供給される気体富化液は、軸受93のグリスを流出させず、気液分離室36の底部に貯留される。
【0050】
よって、気体富化液の供給に伴う気液分離室36の内部に設けられた一方の軸受93における潤滑不足が防止される。尚、他方の軸受94は、気体富化液流入孔58から離間しているので、気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は他方の軸受94に到達せず、グリスの流出も生じない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上記実施例では、燃料供給装置に搭載されるポンプユニットを一例として説明したが、これに限らず、その他の機器に搭載されるポンプユニットにも本発明が適用できるのは勿論である。
【0052】
また、上記実施例では、ギヤポンプにより液体を汲み上げる構成について説明したが、これに限らず、他の形式のポンプ(例えばベーン形ポンプなど)を有するポンプユニットにも本発明が適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 ポンプユニット
12 地下タンク
20 流量計
30 ケーシング
31 流入室
32 ロータ室
32a 吸込み口
32b 吐出口
33 空気分離室
34 流出経路
35 バイパス経路
36 気液分離室
36a、36b 軸受保持部
36c 隔壁
36d 側壁
36e 天井
36f 側壁
37 流入口
38 ストレーナ取付室
39 逆止弁取付室
40 流入側逆止弁
41A、41B 第1、第2蓋部材
44 ストレーナ
45 連通路
46 吸込み側流路
47 吐出側流路
48 ギヤポンプ
50 ロータ
51 仕切り部
52 ピニオン
53 回転軸
54 フィルタ
58 気体富化液流入孔
60 戻し孔
64 流出側逆止弁
70 フロート弁
80 リリーフ弁
93、94 軸受
95、96 オイルシール
100 ロータ軸
102、104 挿入孔
110 従動プーリ
130、130A 遮蔽部
132 U字状溝
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B