【実施例1】
【0015】
〔ポンプユニットの構成〕
図1は本発明によるポンプユニットの一実施例を模式的に示す概略構成図である。
図2は本ポンプユニットにおける液体の流れを順に示す図である。尚、
図1ではポンプユニットの全体構成を分かりやすく示すため、各部が上下位置及び前後位置、左右位置をずらして記載されており、後述する
図3〜
図8に示す位置とは異なる箇所に記載されている。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、ポンプユニット10は、例えば、ガソリンや軽油などの液体燃料(以下「液体」という)を供給する燃料供給装置に搭載され、地下タンク12に貯蔵された燃料を汲み上げると共に、液体に含まれる気泡を分離させて流量計20へ送液するように設けられている。尚、流量計20で計測された液体燃料は、燃料供給装置のホース、ノズルを介して車両の燃料タンクに供給される。
【0017】
ポンプユニット10は、ケーシング30の内部に流入室31、ロータ室32、空気分離室33、流出経路34、気液分離室36が形成されている。流入室31には、ケーシング30の底部に開口する流入口37に連通されたストレーナ取付室38と、ストレーナ取付室38の下流側(流出側)に隣接された逆止弁取付室39とが設けられている。尚、ストレーナ取付室38及び逆止弁取付室39は、ケーシング30の同じ側面に隣接して設けられている。さらに、ストレーナ取付室38の流出側と逆止弁取付室39の流入側との間は、連通路45によって連通されている。
【0018】
ストレーナ取付室38は、ケーシング30の側面から加工された第1開口(ストレーナ取付用開口部)38aと、開口38aの奥部に形成されたストレーナ受け部38bとを有する。ストレーナ取付室38には、ストレーナ44が収納されている。また、ストレーナ44は、流入口37から流入された液体に含まれる異物を捕獲する金網からなり、円筒形状に形成されている。
【0019】
ストレーナ44は、第1開口38aから挿入され、一端(挿入側端部)がストレーナ受け部38bに当接され、且つ他端(取出側端部)が第1開口38aに螺入された第1蓋部材(ストレーナ取付用蓋)41Aに当接される。第1蓋部材41Aは、ストレーナ取付室38の開口38aを閉塞するように締結されると共に、ストレーナ44をストレーナ取付室38に保持する。第1蓋部材41Aの内側には、ストレーナ44の端部が嵌合固定されている。そのため、第1蓋部材41Aをストレーナ取付室38の開口38aから外すことによりこれと同時にストレーナ44も取出すことができる。
【0020】
ポンプ駆動により流入口37から吸引された液体は、ストレーナ44により濾過された後、連通路45を通過して逆止弁取付室39に流入する。
【0021】
逆止弁取付室39は、ストレーナ取付室38の下流側に設けられ、ケーシング30の側面から加工された第2開口(逆止弁取付用開口部)39aと、流入側逆止弁40により開閉される弁座39bとを有する。逆止弁取付室39には、流入側逆止弁40が開閉動作可能に取り付けられている。
【0022】
流入側逆止弁40は、コイルバネ42のバネ力により閉弁方向に付勢されており、ポンプ駆動時は弁座39bを開弁し、ポンプ停止時は弁座39bを閉止する。また、コイルバネ42は、第2開口39aを閉塞する第2蓋部材(逆止弁取付用蓋)41Bにより保持される。弁座39bには、連通路45に連通された連通用開口部39cが設けられている。また、逆止弁取付室39の天井には、ギヤポンプ48のロータ室32へ流体を流出するための流出用開口部39dが設けられている。
【0023】
流入側逆止弁40は、ポンプ駆動又はポンプ停止に伴う負圧の変動に伴って連通用開口部39cを開または閉とする開弁位置又は閉弁位置に動作する。従って、流入側逆止弁40が開弁動作すると、連通用開口部39cが開放されて連通路45を流れた液体燃料が連通用開口部39cから上方に配された流出用開口部39dを通って吸込み側流路46に流出される。
【0024】
逆止弁取付室39の下流側には、ロータ室32の吸込み側に連通された吸込み側流路46及びロータ室32が設けられている。ロータ室32には、ギヤポンプ48が設けられている。ギヤポンプ48は、モータの回転駆動力を伝達されて回転するロータ50と、ロータ50により回転駆動されるピニオン52とを有する。
【0025】
ロータ50は、ロータ室32の内径に対応した円盤形状に形成されており、円盤状の平面には半円形状の係合部50aが回転方向(周方向)に所定のピッチ(間隔)で複数個設けられている。また、ピニオン52は、回転軸53により回転可能に支持されており、外周にはロータ50の係合部50aに対応する半円形状の凹部52aが所定のピッチ(間隔)で複数個設けられている。
【0026】
また、ロータ50の回転中心とピニオン52の回転中心とは、上下方向に偏心している。ピニオン52の外周とロータ50の内周との間には、偏心量に応じた三日月形状の仕切り部51が設けられている。仕切り部51の内周面51aは、ピニオン52の外周が摺接するピニオン摺接面であり、仕切り部51の外周面51bは、ロータ50の係合部50aが摺接するロータ摺接面である。
【0027】
係合部50aがピニオン52の凹部52aに係合することにより、ロータ50がモータにより回転駆動されると共に、ピニオン52も同一方向に回転駆動される。そして、ロータ室32の負圧発生により流入側逆止弁40が開弁し、ストレーナ44を通過した液体がロータ室32の吸込み口32aに吸引される。ギヤポンプ48においては、ロータ50及びピニオン52が反時計方向に回転駆動すると共に、吸込み側流路46から吸引された液体は、ピニオン52の凹部52a及びロータ50の係合部50a間に流入し、ロータ室32の吐出口32bに連通された吐出側流路47へ吐出される。
【0028】
さらに、ギヤポンプ48から吐出された液体は、吐出側流路47の下流に配された空気分離室33へ流入される。空気分離室33は、下流側がフィルタ54に連通され、側壁には気体を含んだ気体富化液を気液分離室36に回収するための気体富化液流入孔58が設けられている。
【0029】
気液分離室36の底部には、液体をギヤポンプ48のロータ室32に戻す戻し孔60が設けられ、天井には大気開放孔62が設けられている。また、気液分離室36には、戻し孔60を開閉するフロート弁70が設けられている。
【0030】
フロート弁70は、気液分離室36内の気体富化液を含む液体の液面高さが所定高さ以上の場合に戻し孔60を開弁する弁部を有する。
【0031】
気液分離室36において、液体に含まれる気泡(気体)は上部空間に浮上し、大気開放孔62から大気中に放出される。また、気泡が分離された液体は、液面高さが所定高さに達したときフロート弁70の開弁により戻し孔60を通過して吸込み側流路46に戻される。
【0032】
また、空気分離室33において、気体富化液が分離された液体は、フィルタ54により濾過された後に流出経路34を通過して流量計20に供給される。尚、流出経路34に設けられた流出側逆止弁64は、ギヤポンプ48によって送出された液体の圧力により開弁する。
【0033】
また、ポンプユニット10には、リリーフ弁80が設けられている。流路内の液圧が必要以上に高まった場合等に、フィルタ54により濾過された液体の一部は、リリーフ弁80を開弁させてギヤポンプ48のロータ室32に戻される。リリーフ弁80は、コイルバネ82のばね力により閉弁方向に付勢されており、流出経路34の吐出圧力と、コイルバネ82のばね力にロータ室32の吸込み圧力を加えた合力との差に応じて開閉する。従って、リリーフ弁80は、コイルバネ82のばね力と吐出圧力と吸込み圧力の合力のつり合いにより、開弁と閉弁を繰り返す。
【0034】
〔ケーシング30の内部構成〕
図3はケーシングの内部構成を示す縦断面図である。
図3に示されるように、気液分離室36とロータ室50とを区画する隔壁36c、および、気液分離室36内において隔壁36cに対向する側壁36dには、それぞれ挿通孔102、104を有する軸受保持部36a、36bが設けられており、これらの挿通孔102、104にはロータ軸100が挿入される。
【0035】
ロータ軸100は、一端100aがケーシング30内のロータ室32に挿入されてロータ50に結合されており、ロータ50を片持ち梁構造で支持している。また、ロータ軸100の中間部分は、気液分離室36内に配された一対の軸受け93、94により回転可能に支持される。さらに、ロータ軸100の他端100bは、ケーシング30の外側に突出し、駆動モータの回転駆動力が伝達されるプーリ110が結合されている。
【0036】
なお、本実施例においては、駆動モータの回転駆動力はプーリ110を介してロータ軸100に伝達されるように構成されているが、駆動モータのロータ軸100への回転駆動力の伝達は、プーリ110を介さずに駆動モータの回転駆動軸とロータ軸100とを直結させて伝達するようにしてもよい。
【0037】
また、ロータ軸100が挿通される軸受保持部36a、36bは、隔壁36c、側壁36dの気液分離室36の室内に向けてそれぞれ突出するように設けられている。軸受保持部36aの内側には、軸受93と、オイルシール95とが挿入されている。さらに、軸受保持部36bの内側には、軸受94と、オイルシール96とが挿入されている。
【0038】
このように、ケーシング30の気液分離室36の隔壁36c、側壁36dの室内側にロータ軸100が挿通される挿通孔102、104を有する軸受保持部36a、36bが設けられている。このため、気液分離室36内の空間を、ロータ軸100を支持するための二つの軸受93、94の設置間隔を大きくとるための空間として利用しているため、従来のように二つの軸受93、94の設置間隔を大きくとるためにケーシング30の外側に軸受保持部を突出させずに済み、その分コンパクトな構成となり、小型化が図られる。
【0039】
ロータ50のロータ軸100は、水平方向に延在すると共に、気液分離室36の上部空間を貫通した状態に支持されている。また、ロータ軸100は、一端(左端)がロータ室32に挿通されてロータ50の軸に結合され、他端(右端)がケーシング30の側面より外側に突出している。さらに、ロータ軸100の他端には、従動側プーリ110が嵌合固定されている。尚、従動プーリ110の下方には、モータに駆動される駆動側プーリが設けられ、Vベルトを介してモータの回転駆動力が従動プーリ110に伝達される。
【0040】
図4は
図3中A−A線に沿う縦断面図である。
図5Aは遮蔽部130の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。
図5Bは遮蔽部130の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
【0041】
図4及び
図5Aに示されるように、ロータ室23に隣接する気液分離室36の隔壁36cには、空気分離室33で液体から分離された気体富化液が供給される気体富化液流入孔58(
図4中、破線で示す)が設けられている。
【0042】
気体富化液流入孔58は、ギヤポンプ48の吐出側から吐出された吐出圧と気液分離室36の圧力との差により空気分離室33からの気体富化液を気液分離室36に供給するための通路である。また、気体富化液流入孔58は、軸受保持部36aの上方に配されているので、気液分離室36に供給された気体富化液が軸受保持部36aに吹き付けられ、ロータ軸100及び軸受93にも気体富化液が吹き付けられるおそれがある。
【0043】
気体富化液流入孔58から空気分離室33に気体富化液が供給されると、気体富化液によって軸受93のグリスが流されて、潤滑不足になる。このような、気体富化液の供給による軸受93の潤滑不足を解消するため、気体富化液流入孔58から気液分離室36に供給される気体富化液の流れ方向を変更する遮蔽部130が軸受保持部36aと気液分離室36の天井36eとの間に設けられている。
〔遮蔽部130の構成〕
図5A及び
図5Bに示されるように、遮蔽部130は、ロータ室32に隣接する気体富化液流入孔58が開口する隔壁36cに対向するように形成された仕切り部であり、隔壁36cとの間にU字状溝132を形成している。そのため、気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は、遮蔽部130により軸受93へ吹き付けられることが防止され、U字状溝132に沿って軸受保持部36aの側方に導かれて気液分離室36の底部に落下する。
【0044】
遮蔽部130は、気液分離室36の隔壁36cの上部に開口する気体富化液流入孔58に対向するように天井36e、側壁36fと軸受保持部36aの上側外周との間に形成されている。
【0045】
従って、空気分離室33と気体分離室36との圧力差により気体富化液流入孔58から気体分離室36内に噴射された気体富化液は、遮蔽部130に吹き付けられた後、流れ方向が変更されて遮蔽部130と隔壁36cとの間に形成されたU字状溝132に集まり、U字状溝132を流れて軸受保持部36aの反対側の側方から気液分離室36の底部に落下する。このように、気液分離室36に供給される気体富化液は、軸受93のグリスを流出させず、気液分離室36の底部に貯留される。
【0046】
よって、気体富化液の供給に伴うロータ室32に隣接する気液分離室36の内部に設けられた一方の軸受93における潤滑不足が防止される。尚、他方の軸受94は、気体富化液流入孔58から離間しているが、上記遮蔽部130により気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は他方の軸受94に到達せず、グリスの流出も生じない。
〔変形例〕
図6Aは変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の横断面図である。
図6Bは変形例の遮蔽部の構成を模式的に示す気液分離室の縦断面図である。
【0047】
図6A及び
図6Bに示されるように、変形例の遮蔽部130Aは、軸受保持部36aの端部外周より半径方向に突出する鍔状に形成されている。すなわち、遮蔽部130Aは、軸方向からみると円盤形状に形成されており、軸受保持部36aの外周の全周より突出するように形成されている。
【0048】
従って、空気分離室33と気体分離室36との圧力差によりロータ室32に隣接する気液分離室36の隔壁36cに形成された気体富化液流入孔58から気体分離室36内に噴射された気体富化液は、気体分離室36の内部に噴射され、その一部が軸受保持部36aに吹き付けられる。
【0049】
このように、軸受保持部36aに吹き付けられた気体富化液は、軸受保持部36aの端部外周に設けられた鍔状の遮蔽部130Aにより流れ方向が変更されて軸受93に到達せず、遮蔽部130Aにより軸方向への流れが遮蔽される。従って、気液分離室36に供給される気体富化液は、軸受93のグリスを流出させず、気液分離室36の底部に貯留される。
【0050】
よって、気体富化液の供給に伴う気液分離室36の内部に設けられた一方の軸受93における潤滑不足が防止される。尚、他方の軸受94は、気体富化液流入孔58から離間しているので、気体富化液流入孔58から噴射された気体富化液は他方の軸受94に到達せず、グリスの流出も生じない。