特許第5798079号(P5798079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798079
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ニット帽子およびニット帽子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/04 20060101AFI20151001BHJP
   A42B 1/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A42B1/04 A
   A42B1/04 G
   A42B1/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-83887(P2012-83887)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-213297(P2013-213297A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年10月29日
【審判番号】不服2014-21726(P2014-21726/J1)
【審判請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】504113190
【氏名又は名称】株式会社finetrack
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 洋太郎
【合議体】
【審判長】 千葉 成就
【審判官】 栗林 敏彦
【審判官】 佐々木 正章
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−099309(JP,A)
【文献】 特開平04−209815(JP,A)
【文献】 特開平2006−089853(JP,A)
【文献】 特開平2008−308795(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3026438(JP,U)
【文献】 実公昭30−013433(JP,Y1)
【文献】 米国特許第4620325(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0010823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球形状のニット帽子であって、
ニット帽子の天頂部よりも額側に複数の縫合ラインが至る位置である縫合中心位置があり、
ニット帽子の開口縁の第1ラインと、ニット帽子の天頂部から当該第1ラインへ垂直に引いた第2ラインとの交点と、前記縫合中心位置とを結んだ傾斜角度が、第1ラインを基準として50°〜80°の範囲であることを特徴とするニット帽子。
【請求項2】
前記縫合中心位置が、ニット帽子着用時に着用者の頭頂部に位置する、請求項1に記載のニット帽子。
【請求項3】
筒状の編地の一方開口部を閉じて半球形状に形成し、ニット帽子の天頂部よりも額側に複数の縫合ラインが至る位置である縫合中心位置が形成されるように縫製するニット帽子の製造方法であって、
ニット帽子の開口縁の第1ラインと、ニット帽子の天頂部から当該第1ラインへ垂直に引いた第2ラインとの交点と、前記縫合中心位置とを結んだ傾斜角度が、第1ラインを基準として50°〜80°の範囲である、ニット帽子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば防寒用の帽子に関する。より詳細には、ニット帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のニット帽子は、着用者の頭頂に合うように半球形状に形成され、半球形の中心位置の帽子天頂部55(図5、非着用時のニット帽子の側面図)で縫合をしていた(例えば、非特許文献1)。そして、通常、ニット帽子は、前方から後方にかけて斜めにかぶる。そのため、図5の帽子側面図に示すように、帽子着用時には、この縫合位置(帽子天頂部55)が頭後側に位置することになる。
【0003】
しかし、長時間着用や激しい動きに伴って、ニット帽子が頭後方から頭前方へ移動し、ニット帽子の開口部分が額から目へかかることがあった。すなわち、長時間着用や激しい動きの中でニット帽子が頭後方から頭前方へ次第にずれでいき、視界を妨げることがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yahooオンラインショッピング、平成24年3月27日検索、インターネットホームページhttp://store.shopping.yahoo.co.jp/exas/q2.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、長時間着用時や激しい動きの中でも帽子が視界を妨げる方向(頭前方)へズレることを抑制できる帽子(ニット帽子)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、帽子の形状からその縫合部が頭頂部にあるのが最も安定すると考え、帽子の縫合部の位置を帽子の天頂部よりも額側にオフセットさせることで上記課題を解決することを新たに見出した。
【0007】
本発明は、半球形状(半球形部と筒部が合体した形状を含む)のニット帽子であって、ニット帽子の天頂部よりも額側に複数の縫合ラインが至る位置である縫合中心位置があることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ニット帽子の天頂部よりも額側に縫合中心位置が位置することで、ニット帽子着用時に縫合部と頭頂部とをあらかじめ一致させて、ニット帽子が額側へズレることがなく安定した着用を長時間維持でき、また、激しい動きの中でもニット帽子が視界を妨げる方向(頭前方)へズレることを効果的に抑制できる。
【0009】
上記発明において、ニット帽子は、編地のニット帽子であることが好ましく、編地が1重でもよく2重でもよく、編地の中に中間層(1層または1層以上)が挿入(全ての部位にあるいは部分的に挿入)されていてもよい。中間層は、例えば、フェルト、不織布、生地、プラスチックフィルムであってもよい。ニット帽子は、鍔部が設けられていてもよく、耳あて部が設けられていてもよい。また、ニット帽子に、装飾(例えば、ぼんぼん)が取り付けられていてもよい。ニット帽子は、冬用に限らず、春夏秋用の薄い編地で構成されていてもよい。
【0010】
上記発明の一実施形態として、前記縫合中心位置が、ニット帽子着用時に着用者の頭頂部(あるいは頭頂部近傍)に位置することが好ましい。着用者の個人差によって縫合中心位置が頭頂部と完全に一致することが難しい場合もあるが、縫合部中心位置が略頭頂部、頭頂部近傍にあっても上記作用効果を有するものである。
【0011】
本発明は、ニット帽子の開口縁の第1ラインと、ニット帽子の天頂部から当該第1ラインへ垂直に引いた第2ラインとの交点と、前記縫合中心位置とを結んだ傾斜角度(α)が、第1ラインを基準として50°〜80°の範囲である。
【0012】
この構成によれば、ニット帽子着用時に縫合中心位置を頭頂部(または略頭頂部)に位置させることができる。αは、55°〜75°がより好ましい。
【0013】
他の本発明のニット帽子の製造方法は、筒状の編地の一方開口部を閉じて半球形状(半球形部と筒部が合体した形状を含む)に形成し、ニット帽子の天頂部よりも額側に複数の縫合ラインが至る位置である縫合中心位置が形成されるように縫合する。製造されたニット帽子は、ニット帽子の開口縁の第1ラインと、ニット帽子の天頂部から当該第1ラインへ垂直に引いた第2ラインとの交点と、前記縫合中心位置とを結んだ傾斜角度が、第1ラインを基準として50°〜80°の範囲である。また、縫合する前に、半球形状にするために余分な編地部分を切断することが好ましく、または縫合中心位置で縫合した後に、縫合製中心部に生じた余分な編地を切断して取り除いてもよい。
【0014】
ニット帽子の原材料となる編地は、特に限定されず、例えば、ウール、獣毛、コットン、化学繊維(アクリル、ナイロン、ポリエステル、レーヨン)などの糸で編まれた生地が挙げられる。編地の編み方法は、特に制限されない。編地は、円筒状に編んでもよく、平たい編地を縫い合わせて筒状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の非着用時のニット帽子の顔側の正面図である。
図2A】本発明の非着用時のニット帽子の側面図である。
図2B】本発明の着用時のニット帽子の側面図である。
図3】本発明の非着用時のニット帽子を上から見た平面図である。
図4】非着用時の縫製中心位置を傾斜角度を用いて説明するための図である。
図5】従来の非着用時のニット帽子の側面部(従来の縫製中心位置を説明するため部)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態のニット帽子について、図面を参照しながら説明する。図1は、非着用時のニット帽子1の顔側から見た正面図である。図2Aは、非着用時のニット帽子の側面図である。図2Bは、着用時のニット帽子の側面図である。図3は、非着用時のニット帽子を上から見た平面図である。図4は、非着用時の縫合中心位置15を傾斜角度(α)を用いて説明した図である。
【0017】
図1〜3で示すように、本実施形態のニット帽子1は、半球形状である。ニット帽子1の天頂部11(半球形の天頂位置)よりも額側(顔面側)に縫合中心位置15がある。図2Bに示すように、ニット帽子1を着用したときに、この縫合中心位置15が着用者の頭頂部Aの位置にくる。これによって、ニット帽子1の天頂部11よりも額側に縫合中心位置15が位置することで、ニット帽子1の頭前部へのズレが生じにくくなり、長時間着用時や激しい動きの中でもニット帽子1が視界を妨げる方向(頭前方)へニット帽子1がズレることを抑制できる。
【0018】
また、縫合中心位置15から6本の縫合ライン12a〜12fが示されている。半球形にするために円筒の編地を切断し、上記縫合ラインで縫合している。縫合ラインは6本に限定されず、半球形に形成できれば、それよりも少なくてもよく多くてもよい。
【0019】
また、ニット帽子1には、耳あて部17、18が形成されている。耳あて部17、18は、この形状に制限されず、他の形状でもよく、または耳あて部を設けなくてもよい。
【0020】
ニット帽子1の縫合中心位置15が、ニット帽子着用時に着用者の頭頂部に位置させるために、縫合中心位置15を所定の傾斜角度αの範囲に形成することが好ましい。図4において、ニット帽子1の開口下端の第1ラインXと、ニット帽子1の天頂部11から当該第1ラインXへ垂直に引いた第2ラインYとで交点Pを形成する。この交点Pと、縫合中心位置15とを結んだ傾斜角度αが、第1ラインXを基準として50°〜80°の範囲である。本実施形態では(図4では)、αが68°である。着用者の頭部形状はさまざまであり、かつ着用位置もさまざまであるため、傾斜角度αを50°〜80°の範囲に設定し、帽子サイズまたは耳あて部の有無、鍔部の有無に応じて傾斜角度αを設定する。
【0021】
(製造方法)
ニット帽子1の製造方法は、筒状の編地の一方開口部を閉じて半球形状に形成し、次いで、ニット帽子1の天頂部11よりも額側に縫合中心位置15が形成されるように縫合する。半球形にするために円筒の編地を切断し、縫合ライン12a〜12fで縫合する。
【0022】
ニット帽子1の原材料となる編地は、特に限定されず、例えば、ウール、獣毛、コットン、化学繊維(アクリル、ナイロン、ポリエステル、レーヨン)などの単糸、あるいは混糸で編まれた生地が挙げられる。編地の編み方法は、特に制限されないが、例えば、ラッセル編み、フライス編み、天竺編み、丸編み、メッシュ編み(レース編み)等があげられる。編地は、円筒状に編んでもよく、平たい編地を縫い合わせて筒状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 ニット帽子
11 天頂部
15 縫合中心位置(縫合中心部)
17、18 耳あて部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5