(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記当接部は、前記取付体本体の後面側から該当接部に向かって前記周壁から突出しながら傾斜する案内部を一体に備えるとともに、該案内部は、前記取付体本体の内側に変位可能に形成され、
前記取付体本体を後面側から前記壁孔に挿入するときに、前記案内部は、前記壁孔の内面に当たって前記当接部を前記取付体本体の内側に変位させる請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の配線器具取付体。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図8に従って説明する。
図1に示すように、配線器具取付体としての器具取付体11は、壁Wに配線器具Hを設置するために、壁Wに穿設された壁孔Waを通過させて壁Wの裏側に配置されて使用されるものである。なお、壁孔Waは、縦長円形状をなしている。また、壁Wは、石膏ボードにより成形されてなる。
【0016】
器具取付体11について、
図1〜
図4に従って説明する。
図1に示すように、器具取付体11の取付体本体12は、縦長円形状の底壁13と、底壁13の周縁から立設された四つの側壁14a〜14dとから前面(一面)に開口Kを有する有底縦長円筒状に形成されている。そして、底壁13及び側壁14a〜14dにより取付体本体12の周壁が形成されるとともに、底壁13及び側壁14a〜14dによって収容部15が囲み形成されている。以下の説明において、
図1の上下に対向する側壁を上側壁14a及び下側壁14bとし、
図1の左右に対向する側壁を右側壁14c及び左側壁14dとする。また、器具取付体11は合成樹脂製である。
【0017】
上側壁14a及び下側壁14bは、それぞれ湾曲形成される一方で、右側壁14c及び左側壁14dは、それぞれ平板状に形成されている。また、
図4に示すように、上側壁14aは、右側壁14c及び左側壁14dとの間に隙間Sを空けて底壁13の周縁から立設されている。また、下側壁14bも、上側壁14aと同様、右側壁14c及び左側壁14dとの間に隙間Sを空けて底壁13の周縁から立設されている。また、
図4に示すように、右側壁14c及び左側壁14dは、その基端が、器具取付体11の長辺方向に沿った二箇所で底壁13に連結されている。このため、右側壁14c及び左側壁14dは、その基端を中心として、取付体本体12の外側及び内側に向けて弾性変形可能に形成されている。また、右側壁14c及び左側壁14dの基端側には、孔Qが形成されている。
【0018】
図1及び
図3に示すように、器具取付体11の長辺方向に沿った長さL1は、壁孔Waの長辺方向に沿った長さN1よりもやや短くなっている。ここで、「やや短い」とは、壁孔Waに器具取付体11を挿入可能な長さであることを指す。また、器具取付体11の短辺方向に沿った長さL2は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりもやや短くなっている。
【0019】
上側壁14a及び下側壁14bには、第1ケーブル挿通孔16が、底壁13に跨って形成されている。また、上側壁14a及び下側壁14bの内面であって、上側壁14a及び下側壁14bの前面側には、ボス部17が設けられている。このボス部17には、ナット(図示せず)が、取付体本体12の厚み方向へ移動不能に嵌入されるとともに、このナットによりボス部17の内周面に雌ねじが形成されている。よって、本実施形態では、ボス部17及びナットにより取着部が形成されている。各ボス部17は、取着部材としてのビス43を用いて、配線器具Hを器具取付体11に取着するために用いられる。
【0020】
また、取付体本体12の前方には、側壁14a〜14dと略同じ厚みの薄板状をなす突出リング18が、開口Kを取り囲むように設けられている。なお、
図1及び
図2(a),(b)に示すように、突出リング18は、支持部19を介して、弾性変形可能に構成された伸縮体20と接続されている。また、伸縮体20は、薄板状をなしており、内部に空間を有するよう、該薄板を菱形状に折り曲げることで形成されている。
【0021】
伸縮体20は、内部に空間を有するよう折り曲げて形成されることで弾性を備えることになり、その結果、伸縮体20は、側壁14a〜14dの立設方向と同一方向に伸縮可能となる。また、
図2(a),(b)に示すように、上側壁14a及び下側壁14bにおいて、右側壁14c及び左側壁14d側の両端部は、伸長させる前段階の伸縮体20が接触することがないよう、それぞれ切欠形成されている。
【0022】
突出リング18の開口端部であって、ボス部17の対向方向と直交する位置、すなわち、右側壁14c及び左側壁14dよりも前方には、壁Wの表面に当接する第1当接面22aを備えたフランジ体としての第1フランジ部22が、それぞれ形成されている。具体的に説明すると、第1フランジ部22は、薄板状をなしており、右側壁14c及び左側壁14dの長辺方向に沿って、かつ器具取付体11の外方に延びるように形成されている。第1フランジ部22は、突出リング18及び伸縮体20を介して取付体本体12に連結されていることになるので、器具取付体11は、取付体本体12と第1フランジ部22とによって形成されることになる。
【0023】
図3に示すように、器具取付体11の短辺方向に沿った第1フランジ部22の外側端部間の長さL3は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっている。それとともに、第1フランジ部22は、突出リング18の開口端部に形成されているため、弾性変形不能となっている。よって、第1フランジ部22を壁孔Wa内に挿通することは不可能である。
【0024】
また、ボス部17の対向方向と直交する方向で対向する右側壁14c及び左側壁14dには、壁W裏(壁Wの裏面)に当接する当接部としての第2フランジ部31がそれぞれ形成されている。
【0025】
図3に示すように、右側壁14c及び左側壁14dの前面であって、かつ第1フランジ部22よりも後方には、薄板状をなす第2フランジ部31が、右側壁14c及び左側壁14dの長さ方向全体にわたって器具取付体11の外方に向かって延びるようにそれぞれ形成されている。つまり、第1フランジ部22は第2フランジ部31よりも前方に形成されていることになる。また、第2フランジ部31の前面は、壁W裏に当接する第2当接面31aとして機能する。そして、第2当接面31aと、ボス部17の前面は、同一平面上に位置する。よって、突出リング18は、第2フランジ部31の前面(第2当接面31a)よりも突出していることになる。
【0026】
前述したように、伸縮体20は、側壁14a〜14dの立設方向と同一方向に伸縮可能となるように形成されている。これにより、伸縮体20と接続されている突出リング18の開口端部に形成された第1フランジ部22の後面(第1当接面22a)と第2フランジ部31の前面(第2当接面31a)との距離は、伸縮体20を伸縮させることで調節可能となる。
【0027】
図3に示すように、器具取付体11の短辺方向に沿った第2フランジ部31の外側端部間の長さL4は、器具取付体11の短辺方向に沿った第1フランジ部22の外側端部間の長さL3よりも長く、かつ壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっている。ここで、右側壁14c及び左側壁14dは、その基端を中心として弾性変形可能になっている。この右側壁14c及び左側壁14dに第2フランジ部31が一体形成されるため、第2フランジ部31も取付体本体12の外側及び内側に向けて変位可能になっている。よって、第2フランジ部31を取付体本体12の内側に変位させる前、第2フランジ部31を壁孔Wa内に挿通することは不可能である。
【0028】
図4に示すように、右側壁14c及び左側壁14dの外面には、複数(この例では2個)の案内部32が形成されている。この案内部32は突条をなすとともに、取付体本体12の後面側から前面側に向かって突出しながら傾斜するように形成されている。より詳しくは、
図1に示すように、案内部32は、その一端が右側壁14c及び左側壁14dにおける孔Qの前端に位置するとともに、他端が第2フランジ部31の後面に繋がっている。さらに、案内部32は、第2フランジ部31の外側端部から外方に突出し、かつ第2当接面31aと同一平面まで位置するよう延設されている。
【0029】
また、右側壁14c及び左側壁14dの外面であって、右側壁14c及び左側壁14dの長さ方向両端には、補強リブ33が形成されている。この補強リブ33は、取付体本体12の後面側から前面側に向かって突出しながら傾斜するように形成されている。より詳しくは、
図1に示すように、補強リブ33は、その一端が、右側壁14c及び左側壁14dの後端に位置するとともに、他端が第2フランジ部31の後面に繋がっている。
【0030】
図2に示すように、取付体本体12の内側に変位させる前の案内部32において、その外面の一点を点Xとする。そして、取付体本体12の短辺方向で点X同士を結んだ直線の長さをL5とすると、この長さL5は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2と同一となっている。一方、取付体本体12の内側に変位させた後の案内部32において、点X同士を結んだ直線の長さL6は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも短くなっている。
【0031】
次に、配線器具Hを保持する器具保持枠40について説明する。
図1に示すように、器具保持枠40は、縦長矩形枠状に形成されるとともに、器具保持枠40には、縦長矩形状の器具保持孔41が形成されている。なお、器具保持枠40の長辺方向に沿った長さM1は、壁孔Waの長辺方向に沿った長さN1より長い。一方、器具保持枠40の短辺方向に沿った長さM2は、取付体本体12の短辺方向における開口幅よりやや短くなっている。つまり、器具保持枠40を器具取付体11に取り付けた際、器具保持枠40が第1フランジ部22と接触しないようになっている。器具保持枠40の短辺方向に沿った略中央には、器具保持孔41を間に挟むように一対の挿通孔42が、器具保持枠40を厚み方向に貫通してそれぞれ形成されている。各挿通孔42は、器具保持枠40の短辺方向に細長に延びる長孔状に形成されている。
【0032】
次に、器具取付体11の作用を、器具保持枠40を用いて配線器具Hを壁Wに設置する方法とともに、
図5〜
図8に従って説明する。なお、壁W裏には、ケーブルCが配線されている。
【0033】
まず、壁Wの所望位置に壁孔Waを、電動穿孔具を用いて穿設するとともに、壁W裏に配設されたケーブルCを壁孔Waから壁W表に引き出す。そして、作業者Pは、壁W表に引き出したケーブルCを、器具取付体11に形成された第1ケーブル挿通孔16に挿通する。
【0034】
次に、
図5に示すように、器具取付体11を、傾けることなく、取付体本体12の後面側から壁孔Waに向かって挿入する。具体的には、器具取付体11において、底壁13からの各側壁14a〜14dの立設方向が、壁孔Waの中心軸の延びる方向と平行になるように、器具取付体11を壁孔Waに対して真っ直ぐに挿入する。このとき、器具取付体11の短辺方向に沿った第2フランジ部31の外側端部間の長さL4は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっている。さらに、取付体本体12の内側に変位させる前の案内部32間の長さL5は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2と同一となっている。したがって、壁孔Waに対して器具取付体11を挿入しただけでは、器具取付体11の略前半分が壁孔Wa内を通過せず、案内部32が壁孔Waの内面(内壁Wb)に当接した状態となる。なお、第1ケーブル挿通孔16にケーブルCを挿通させたことで、ケーブルCに器具取付体11が支持されている。
【0035】
次に、
図6に示すように、作業者Pは、器具取付体11を、壁孔Waの奥側に向けて押圧する。すると、器具取付体11が壁孔Waの奥側に押されるのに伴い、案内部32が壁孔Waの内壁Wbに摺接することで、案内部32と一体の右側壁14c及び左側壁14dが取付体本体12の内部に向けて弾性変形していく。この右側壁14c及び左側壁14dの弾性変形に伴い、第2フランジ部31も取付体本体12の内側に変位していく。
【0036】
その後、さらに作業者Pが器具取付体11を壁孔Waの奥側に向けて押圧すると、第2フランジ部31を含め、取付体本体12全体が壁孔Waを通過する。ただし、第1フランジ部22は、壁孔Waを通過せず、壁Wの表面に当接する。このとき、案内部32に対する壁孔Waの内壁Wbの摺接が解除され、右側壁14c及び左側壁14dが原形状(原位置)に復帰する。すると、この右側壁14c及び左側壁14dに一体の第2フランジ部31も変位する前の形状に復帰する。すなわち、第2フランジ部31は、壁W裏で取付体本体12の外方に突出する。作業者Pが器具取付体11の押圧作業として、底壁13を押圧していたとすると、押圧作業をやめることで、伸縮体20が原位置(
図2(a)の位置)に戻るように伸縮する。これにより、第1フランジ部22の第1当接面22aが壁Wの表面に当接するとともに、第2フランジ部31の第2当接面31aが壁Wの裏面に当接する。つまり、第1,第2フランジ部22,31によって、壁Wが挟持される。
【0037】
また、器具取付体11の短辺方向に沿った第2フランジ部31の外側端部間の長さL4は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっている。よって、器具取付体11を前面に引き寄せたとしても、第2フランジ部31の第2当接面31aが壁Wの裏面に当接するため、挿入した取付体本体12が、壁孔Waを介して、再度、壁W表に引き出されることがない。
【0038】
また、器具取付体11の短辺方向に沿った第1フランジ部22の外側端部間の長さL3は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっているとともに、第1フランジ部22は、第2フランジ部31のように弾性変形可能に構成されていない。よって、右側壁14c及び左側壁14dを取付体本体12の内側に向かって弾性変形させたとしても、第1フランジ部22を壁孔Wa内に挿通することは不可能である。
【0039】
次に、配線器具Hを器具保持枠40の器具保持孔41に保持させるとともに、配線器具HにケーブルCを接続する。その後、器具保持枠40の上側の挿通孔42にビス43を挿通する。そして、このビス43を、器具取付体11の上下両側のボス部17に挿入するとともに、ナットに螺入し、器具取付体11と器具保持枠40を仮固定する。
【0040】
図8に示すように、壁Wの裏側で、突出リング18を壁孔Wa内に挿入する。すると、突出リング18が、壁孔Waの内壁Wbに当接し、器具取付体11の開口Kが壁孔Waに臨むように壁Wに位置決めされる。この位置決め状態では、第1フランジ部22の第1当接面22aが、壁Wの表面において、壁孔Waの左右両縁部に当接している。さらに、第2フランジ部31の第2当接面31aが、壁Wの裏面において、壁孔Waの左右両縁部に当接している。また、ボス部17も壁孔Waから壁Wの表側に臨んでいる。
【0041】
続いて、器具取付体11に対し、上下両側のナットに螺入されたビス43をさらに螺入する。そして、両ビス43を増締めすると、ビス43のナットへの螺進に伴い取付体本体12が壁Wに引寄せられる。その結果、第1フランジ部22と、第2フランジ部31と、器具保持枠40とで壁Wが挟持される。そして、ビス43のナットへの螺入により、配線器具Hが壁Wの表側に設置されることで、器具保持枠40とともに壁Wを挟んで取付体本体12が壁Wの裏側に設置される。
【0042】
なお、器具保持枠40の長辺方向に沿った長さM1は、壁孔Waの長辺方向に沿った長さN1より長くなっている。これにより、
図7に示すように、器具取付体11において第2フランジ部31は壁孔Waを通過して壁Wの裏側に配置される一方で、器具取付体11の第1フランジ部22及び器具保持枠40が壁Wの表側に配置される。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)取付体本体12において対向する右側壁14c及び左側壁14dに、右側壁14c及び左側壁14dより外方に突出し、かつ壁W裏に当接する第2フランジ部31を、取付体本体12の内側に変位可能に形成した。また、取付体本体12の前方に、第2フランジ部31よりも前方に位置し、かつ壁W表に当接する第1フランジ部22を形成した。より詳しくは、第1フランジ部22を、該第1フランジ部22の後面と第2フランジ部31の前面との距離を調整可能となるように、伸縮体20を介して取付体本体12に連結した。そして、取付体本体12を後面側から壁孔Waに挿入することで、第2フランジ部31を内側に変位させ、第1フランジ部22を除く取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に挿入可能とした。このため、取付体本体12全体を、傾けることなく壁孔Wa及び壁W裏に簡単に挿入することができる。また、取付体本体12を傾けずに済むことで、壁W裏には、傾けていない取付体本体12を収容可能なだけの空間が形成されていれば良いことになるので、余計なスペースを設ける必要もなくなる。
【0044】
(2)器具取付体11の右側壁14c及び左側壁14dを取付体本体12の外側及び内側に向けて弾性変形可能としたことで、右側壁14c及び左側壁14dと一体形成されている第2フランジ部31も、取付体本体12の外側及び内側に変位させることが可能となる。そして、この第2フランジ部31の変位によって、第1フランジ部22を除く取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に配置することが可能となる。よって、特許文献2に記載の配線ボックスBのように、様々な壁厚に対応するために複数の当接部を設ける必要がないため、第2フランジ部31を大きく形成することができる。また、第2フランジ部31を大きく形成することで、壁孔Waへの取付強度を高めることが可能となる。
【0045】
(3)伸縮体20は、側壁14a〜14dの立設方向と同一方向に伸縮可能となっている。よって、伸縮体20を伸縮させることで、第1フランジ部22の後面と第2フランジ部31の前面との距離が変化するため、どのような厚みの壁材であっても、伸縮体20を伸縮させることで、第1フランジ部22の裏面と第2フランジ部31の前面とによって壁材を挟むことができる。
【0046】
(4)器具取付体11の短辺方向に沿った第1フランジ部22の外側端部間の長さL3は、壁孔Waの短辺方向に沿った長さN2よりも長くなっているとともに、弾性変形不能に構成されている。よって、器具取付体11を、後面側から壁孔Waに向かって挿入した場合であっても、第2フランジ部31は壁孔Waを通過する一方で、第1フランジ部22は壁孔Waを通過せず、壁孔Waの前面において壁孔Waの周縁に当接することになる。また、第1フランジ部22は、壁孔Waの表面に係止可能な長さで形成されているため、取付体本体12が壁W側に引き寄せられたとしても、第1フランジ部22が、壁孔Wa内を通過せずに壁孔Waの周縁に当接することができるため、第1フランジ部22の壁孔Waへの係止が外れ難い。
【0047】
(5)ビス43の増締めによって取付体本体12が壁W側に引き寄せられたとき、突出リング18が器具保持枠40の後面に当接し、突出リング18がストッパの機能を果たす。よって、ビス43の増締めの際、取付体本体12が壁孔Wa内にまで引き寄せられることを防止して、取付体本体12の変形を防止することができる。
【0048】
(6)ビス締めを行った場合、ビス締めが行われるボス部17近傍が壁W側に最も引き寄せられることになる。そして、このボス部17よりも前面に位置するように突出リング18を設けたため、突出リング18により、ビス締めの際にボス部17が変形することを防止できる。そして、器具保持枠40の後面に突出リング18の端部が当接した際には、その当接を反映して、器具保持枠40の位置を適宜変更することができるため、取付体本体12及び器具保持枠40が傾いた状態で取着されることを抑止することができる。
【0049】
(7)また、突出リング18が器具保持枠40に当接するということは、これ以上ビス締めを行ってもビス43が螺入し難い状況であることを認識することができるため、過剰なビス締めが行われることを抑止することができる。
【0050】
(8)ボス部17の対向方向と直交する方向で対向する右側壁14c及び左側壁14dに第2フランジ部31をそれぞれ形成した。これによれば、第2フランジ部31の形成位置とボス部17の形成位置が重複しないため、第2フランジ部31を大きく形成することができる。そして、第2フランジ部31を大きく形成することで、弾性変形力も大きくなるので、壁孔Waへの取付体本体12の係止力を低下させてしまうことがない。また、第2フランジ部31を大きく形成することで、壁W裏に対する第2フランジ部31の当接面積を大きくして、第1フランジ部22と、第2フランジ部31と、器具保持枠40とで壁材を強く挟持することができる。また、第2フランジ部31を大きく形成することで、壁孔Waを取付体本体12の大きさに合わせて正確に穿設しなくても、変位前の第2フランジ部31が壁孔Waの前面に当接することができるため、穿設の正確性が求められないことで、作業効率の向上が見込める。
【0051】
(9)ボス部17と同じ周壁に第2フランジ部31を形成した場合、第2フランジ部31の変位とともにボス部17も変位してしまい、正しい位置でビス締めができなくなる虞がある。ところが、第2フランジ部31をボス部17の対向方向と直交する方向で対向する右側壁14c及び左側壁14dに形成したことで、ビス締めの際にボス部17が変位してしまうことがない。
【0052】
(10)器具取付体11を、取付体本体12の後面側から壁孔Waに挿入したときに、壁孔Waの内壁Wbに摺接し、第2フランジ部31を取付体本体12の内側に変位させる案内部32を設けた。このため、器具取付体11を壁孔Waに挿入するのと同時に案内部32によって第2フランジ部31を円滑に変位させることができ、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏にスムーズに挿入することができる。
【0053】
(11)案内部32を突条によって形成した。このため、案内部32が壁孔Waの内壁Wbに摺接したとしても、摺接する箇所を少なくすることができる。
(12)また、器具取付体11を後面側から壁孔Waに真っ直ぐ挿入し、第2フランジ部31を壁孔Waの内壁Wbに摺接させることによって第2フランジ部31を取付体本体12の内側に変位させることで、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に挿入させた。そして、取付体本体12が壁孔Waを通過した後、第2フランジ部31は、内壁Wbに摺接しないため、第2フランジ部31が壁W裏で変位する前の状態(原位置)に復帰することになる。その第2フランジ部31を壁W裏に当接させ、第1フランジ部22と、第2フランジ部31と、器具保持枠40とで壁材を挟持することで、器具取付体11を壁W裏に設置するようにした。このような方法によれば、右側壁14c及び左側壁14dの弾性変形する力を利用して、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に簡単に挿入することができるとともに、器具取付体11を壁Wに簡単に設置することができる。
【0054】
(13)右側壁14c及び左側壁14dの基端側に、孔Qを形成した。これにより、右側壁14c及び左側壁14dは、孔Qが形成されていない残りの側壁によって底壁13に連結されることになるので、孔Qが形成されていない場合に比べて右側壁14c及び左側壁14dを弾性変形させ易くすることができる。その結果として、右側壁14c及び左側壁14dと一体の第2フランジ部31を変位させ易くなる。
【0055】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
○ 実施形態では、右側壁14c及び左側壁14dに孔Qを形成しなくても良い。
○ 案内部32の数を変更しても良い。例えば、壁孔Wa内への挿入を案内するのであれば、1個形成されていれば良い。また、案内部32を形成しなくても良い。
【0056】
○ 実施形態において、案内部32が形成されているか否かを問わず、作業者P自身が右側壁14c及び左側壁14dを取付体本体12の内側に弾性変形させることで、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に挿入させても良い。
【0057】
○ 実施形態において、第2フランジ部31を右側壁14c又は左側壁14dのどちらか一方に形成するだけでも良い。また、上側壁14a及び下側壁14bのうち少なくともいずれか一方に形成しても良い。このとき、第2当接面31aとボス部17の前面は、同一平面上に位置するものとする。
【0058】
○ 実施形態では、一対の第2フランジ部31のうちいずれか一方の第2フランジ部31を取付体本体12の外側及び内側に変位可能とし、他方の第2フランジ部31は弾性変形不能としても良い。ちなみに、このような構成とする器具取付体11を用いる場合、まず、弾性変形しない方の第2フランジ部31の第2当接面31aを壁W裏にひっかけ、ひっかけた第2フランジ部31を回動中心として、器具取付体11を回動させる。その後、器具取付体11を、壁孔Waの奥側に向けて押圧し、取付体本体12を壁孔Waに挿入するとともに、弾性変形する方の第2フランジ部31を取付体本体12の内側に弾性変形させ、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に挿入することになる。このような構成によれば、弾性変形可能である第2フランジ部31が一体化されている側壁を取付体本体12の内側に向けて作業者Pが押圧するだけで、第2フランジ部31を取付体本体12の内側に変位させ、取付体本体12全体を壁孔Wa及び壁W裏に挿入することができる。つまり、両側壁が弾性変形可能に形成されている場合に比して、少ない力で取付体本体12を変形させることができる。もちろん、案内部32を利用し、壁孔Wa及び壁W裏に挿入させることもできる。また、両側壁が弾性変形不能に形成されている場合に比して、取付体本体12を傾ける量が少なくて済む。よって、両側壁が弾性変形不能に形成されている場合には収容できない程度の空間しか、壁W裏に形成されていなかったとしても、いずれか一方の側壁が弾性変形可能に形成された器具取付体であれば、このような空間しか形成されていなかったとしても、壁W裏に収容することも可能となる。
【0059】
○ 実施形態において、第2フランジ部31は、ボス部17の近傍まで延設されても良い。
○ 実施形態において、突出リング18を形成せず、第1フランジ部22が形成される位置だけ、開口Kの開口端部よりも突出するように突片を形成し、該突片の開口端部に第1フランジ部22を形成するようにしても良い。
【0060】
○ 実施形態において、突出リング18を形成せず、断片的に突片を形成する場合、第1フランジ部22の形成位置の他にも突片を形成しても良い。つまり、壁孔Waの内部に位置し、器具保持枠40の後面に当接すれば良いので、突片の数は、2個に限られない。ただし、傾いた状態で器具取付体11及び器具保持枠40が取着されることを防ぐため、複数個が望ましい。
【0061】
○ 実施形態では、器具取付体11を、取着部としてのボス部17及びナットを上下一対備えるタイプに具体化したが、取付体本体12の短辺方向に取着部を上下二対以上備えるタイプに変更しても良い。また、ボス部17の形成位置は、上側壁14a及び下側壁14bに限られず、右側壁14c及び左側壁14dに形成しても良い。
【0062】
○ 実施形態の伸縮体は、第1フランジ部22の後面と取付体本体12の前面との距離を調節可能となるように弾性変形可能に形成されていれば、如何なる形状であっても良い。
【0063】
○ 実施形態の伸縮体は、取付体本体12と一体成形されていなくても良い。
○ 実施形態において、伸縮体として、弾性変形力の強い弾性部材を用いても良い(例えば、スプリングバネなど)。これによれば、第1フランジ部22が弾性部材によって壁W側に引き寄せられることになるので、器具保持枠40を用いなくても、第1フランジ部22と第2フランジ部31とによって、壁材を挟持することができる。また、器具保持枠40の短辺方向に沿った長さM2は、器具保持枠40を器具取付体11に取り付けた際、器具保持枠40が第1フランジ部22と接触するような長さにしても良い。すなわち、器具保持枠40が壁Wに接触しなくても良い。
【0064】
○ 実施形態における第2フランジ部31は、弾性変形可能に形成されるのであれば、上側壁14a及び下側壁14bに形成されていても良い。この場合、第1フランジ部22は、上側壁14a及び下側壁14bに形成されていても良いし、右側壁14c及び左側壁14dに形成されていても良い。
【0065】
○ 実施形態における配線器具取付体は、底壁が形成されない枠状としても良い。