(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一体成形合成樹脂製パレットの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、一体成形合成樹脂製パレット10では、矩形格子板状をなす積載デッキ11と、矩形格子板状をなす接地デッキ12とが対向している。積載デッキ11の上面は、例えば、飲料用等の空容器の積み荷の積載される積載面11Sであり、接地デッキ12の下面は、床面等に接する接地面12Sである。積載デッキ11と接地デッキ12とは、筒状をなす複数の桁部13,14によって連結され、これら積載デッキ11、接地デッキ12、及び、複数の桁部は、一体成形されている。
【0013】
詳述すると、積載デッキ11の四隅と接地デッキ12の四隅とは、四つの隅桁部13で連結され、積載デッキ11における四辺の各々の中間と接地デッキ12における四辺の各々の中間とは、四つの中間桁部14で連結されている。相互に隣り合う一対の隅桁部13に挟まれる中間桁部14は、積載デッキ11と接地デッキ12との間の隙間を2つの差込孔Hに区切っている。一体成形合成樹脂製パレット10が積み荷と共に搬送される際には、相互に隣り合う2つの差込孔Hの各々に、フォークリフトやパレットトラックのフォークが差込まれる。すなわち、一体成形合成樹脂製パレット10は、いわゆる四方差しの一体成形合成樹脂製パレットである。なお、積載デッキ11の中央部と接地デッキ12の中央部とは、
図1にて中間桁部14の紙面奥側に配置された中央桁部15で連結されている。
【0014】
次に、積載デッキ11の平面構造について
図2を参照して説明する。なお、積載デッキ11の表面である積載面11Sは、略平板格子状をなし、積載面11Sの長辺に沿って延び積載面11Sの中心を通る直線と、積載面11Sの短辺に沿って延び積載面11Sの中心を通る直線とが、二つの対象軸として設定される。積載面11Sは、これら二つの対称軸の各々に対して線対称である。それゆえに、以下では、積載面11Sのうち上記二つの対象軸で四等分に区切られた一部分について
図2を参照して詳細に説明し、それ以外の部分の説明を省略する。なお、
図2では、説明の便宜上、隅桁部13、中間桁部14、及び、中央桁部15の各々の周壁と桁内の補強壁とが太い破線で示されている。また、
図2では、積載デッキ11が実線で示され、接地デッキ12が破線で示されている。
【0015】
図2に示されるように、隅桁部13は、接地デッキ12まで延びる周壁13WPを有している。周壁13WPのうち、中間桁部14に対向する部分は、差込孔Hを囲う壁である。積載面11Sのうち、隅桁部13の周壁13WPで囲まれる部分には、グロメットの取り付けられる取り付け孔11SG1が形成され、取り付け孔11SG1の内部には、積み荷が積載面11Sで滑ることを抑えるグロメットが適宜取り付けられる。
【0016】
中間桁部14は、隅桁部13と同じく、接地デッキ12まで延びる周壁14WPと接地デッキ12まで延びる桁内の補強壁14WSとから構成されている。
周壁14WPのうち、隅桁部13に対向する部分は、差込孔Hを囲う壁である。積載面11Sのうち、中間桁部14の周壁14WPで囲まれた部分は、積載面11Sの辺に沿って延びる複数の積載桟22aを含む。複数の積載桟22aの各々は、積載桟22aの延在方向から見て、積載面11Sで折り返されたU字状をなす。複数の積載桟22aの各々のうち、積載面11Sを構成する表面部分には、接地デッキ12に向けて貫通する複数の水抜き穴22bが形成されている。複数の水抜き穴22bの各々は、水抜き穴22bが形成されていない構成に比べて、一体成形合成樹脂製パレット10の洗浄性や雨水などの排水性を高め、結果として衛生性を高める。また、複数の積載桟22aの各々の上記表面部分には、グロメットの取り付けられる取り付け孔11SG1が形成され、取り付け孔11SG1の内部にはグロメットが適宜取り付けられる。
【0017】
中央桁部15は、これもまた隅桁部13と同じく、接地デッキ12まで延びる周壁15WPと接地デッキ12まで延びる桁内の補強壁14WSとから構成されている。
積載面11Sのうち、中央桁部15の周壁15WPで囲まれた部分は、積載面11Sの辺に沿って延びる複数の積載桟22aを含む。複数の積載桟22aの各々は、積載桟22aの延在方向から見て、積載面11Sで折り返されたU字状をなし、各積載桟22aの各々の表面部分には、接地デッキ12に向けて貫通する複数の水抜き穴22bが形成されている。
【0018】
ここで、積載面11Sのうち、隅桁部13の周壁13WPで囲まれる部分は、隅部積載面11SE1として設定され、中間桁部14の周壁14WPで囲まれる部分は、中間部積載面11SE2として設定される。また、積載面11Sのうち、中央桁部15の周壁15WPで囲まれる部分は、中央部積載面11SCとして設定される。中央部積載面11SCは、積載面11Sに対向する平面視にて、積載面11Sの全体と相似形である。そして、積載面11Sのうち、隅部積載面11SE1と中間部積載面11SE2とを含む矩形環状の領域は、縁部積載面11SEとして設定される。さらに、積載面11Sのうち、中央部積載面11SCと縁部積載面11SEとが除かれた部分は、環状中間積載面11SMとして設定される。
【0019】
積載面11Sにて、隅部積載面11SE1と中間部積載面11SE2とは、第1積載デッキ構成部材21によって連結されている。第1積載デッキ構成部材21は、複数の積載面横リブ21aと複数の積載面縦リブ21bとから構成されている。複数の積載面横リブ21aの各々は、積載面11Sの長辺に沿って延びる線状をなしている。複数の積載面縦リブ21bの各々は、積載面11Sの短辺に沿って延びる線状をなしている。積載面横リブ21aと積載面縦リブ21bとは、略等しい肉厚を有する。第1積載デッキ構成部材21は、これら積載面横リブ21aと積載面縦リブ21bとが交差する格子状をなす。
【0020】
積載面11Sにて、中間部積載面11SE2と中央部積載面11SCとは、第2積載デッキ構成部材22によって連結されている。第2積載デッキ構成部材22は、U字状をなす複数の積載桟22aによって構成されている。複数の積載桟22aの各々は、中間桁部14の積載桟22aや中央桁部15の積載桟22aに連結され、複数の水抜き穴22bとグロメットの取り付けられる取り付け孔11SG1とを有している。複数の水抜き穴22bの各々は、上述したように一体成形合成樹脂製パレット10の衛生性を高め、グロメットの各々は、差込孔Hに差込まれるフォークが一体成形合成樹脂製パレット10に対して滑ることを抑える。
【0021】
積載面11Sにて、第1積載デッキ構成部材21と第2積載デッキ構成部材22とで囲まれる領域には、格子状をなす第3積載デッキ構成部材23が形成されている。第3積載デッキ構成部材23は、第1積載デッキ構成部材21と同様に、複数の積載面横リブ23aと積載面縦リブ23bとによって構成されている。
【0022】
これら第1積載デッキ構成部材21、第2積載デッキ構成部材22、及び、第3積載デッキ構成部材23が相互に連結する構造が採用されることによって、一体成形合成樹脂製パレット10は、軽量化を図られながらも、積載デッキ11の強度と積載荷重に対する剛性とを高めている。
【0023】
次に、接地デッキ12の平面構造について
図3を参照して説明する。なお、接地デッキ12の接地面12Sは、先に説明した積載面11Sと同様に、略平板格子状をなし、接地面12Sの長辺に沿って延び接地面12Sの中心を通る直線と、接地面12Sの短辺に沿って延び接地面12Sの中心を通る直線とが、二つの対象軸として設定される。接地面12Sは、これら二つの対称軸の各々に対して線対称である。それゆえに、以下では、接地面12Sのうち上記二つの対象軸で四等分に区切られた一部分について
図3を参照して詳細に説明し、それ以外の部分の説明を省略する。なお、
図3では、説明の便宜上、隅桁部13、中間桁部14、及び、中央桁部15の各々の周壁と桁内の補強壁とが太い破線で示されている。また、
図3では、接地デッキ12が実線で示され、積載デッキ11が破線で示されている。
【0024】
図3に示されるように、接地面12Sのうち、中間桁部14の周壁14WPで囲まれる部分は、接地面12Sの接地桟32aを含む。複数の接地桟32aの各々は、接地桟32aの延設方向から見て、接地面12Sで折り返されたU字状をなす。また、複数の接地桟32aの各々は、接地面12Sの平面視方向から見て、相互に隣り合う積載桟22aの間の隙間に配置されている。複数の接地桟32aの各々のうち、接地面12Sを構成する表面部分には、積載面11Sに向けて貫通する複数の水抜き穴32bが形成されている。複数の水抜き穴32bの各々は、上述の水抜き穴22bよりも大きく、こうしたサイズの水抜き穴22bの形成によって、接地桟32aの肉厚は、積載桟22aの肉厚よりも薄く形成されている。
【0025】
なお、複数の水抜き穴22bの各々は、上記水抜き穴22bと同じく、水抜き穴32bが形成されていない構成に比べて、一体成形合成樹脂製パレット10の洗浄性や雨水などの排水性を高め、結果として衛生性を高める。また、複数の接地桟32aの各々の上記表面部分には、グロメットの取り付けられる取り付け孔12SG1が形成され、取り付け孔12SG1の内部にはグロメットが適宜取り付けられる。なお、取り付け孔12SG1に取り付けられるグロメットは、一体成形合成樹脂製パレット10の接地時、または、一体成形合成樹脂製パレット10のライン搬送時などに、一体成形合成樹脂製パレット10の滑り止め用として機能する。
【0026】
接地面12Sのうち、中央桁部15の周壁15WPで囲まれる部分は、接地面12Sの辺に沿って延びる複数の接地桟32aを含む。複数の接地桟32aの各々は、接地桟32aの延設方向から見て、接地面12Sで折り返されたU字状をなす。また、複数の接地桟32aの各々は、接地面12Sの平面視方向から見て、相互に隣り合う積載桟22aの間の隙間に配置されている。複数の接地桟32aの各々のうち、接地面12Sを構成する表面部分には、積載デッキ11に向けて貫通する複数の水抜き穴32bが形成されている。複数の水抜き穴32bの各々は、上述の水抜き穴32bよりも大きく、こうしたサイズの水抜き穴32bの形成によって、接地桟32aの肉厚は、積載桟22aの肉厚よりも薄く形成されている。
【0027】
なお、複数の水抜き穴32bの各々は、これもまた水抜き穴32bが形成されていない構成に比べて、一体成形合成樹脂製パレット10の洗浄性や雨水などの排水性を高め、結果として衛生性を高める。また、複数の接地桟32aの各々の上記表面部分には、グロメットの取り付けられる取り付け孔12SG1が形成され、取り付け孔12SG1の内部にはグロメットが適宜取り付けられる。
【0028】
ここで、接地面12Sのうち、隅桁部13の周壁13WPで囲まれる部分は、隅部接地面12SE1として設定され、中間桁部14の周壁14WPで囲まれる部分は、中間部接地面12SE2として設定される。また、接地面12Sのうち、中央桁部15の周壁15WPで囲まれる部分は、中央部接地面12SCとして設定される。中央部接地面12SCは、接地面12Sに対向する平面視にて、積載面11Sの全体と相似形である。そして、接地面12Sのうち、隅部接地面12SE1と中間部接地面12SE2とを含む矩形環状の領域は、縁部接地面12SEとして設定される。さらに、接地面12Sのうち、中央部接地面12SCと縁部接地面12SEとが除かれた部分は、環状中間接地面12SMとして設定される。
【0029】
接地面12Sにて、隅部接地面12SE1と中間部接地面12SE2とは、第1接地デッキ構成部材31によって連結されている。第1接地デッキ構成部材31は、複数の接地面横リブ31aと複数の接地面縦リブ31bとから構成されている。複数の接地面横リブ31aの各々は、接地面12Sの長辺に沿って延びる線状をなしている。複数の接地面縦リブ31bの各々は、接地面12Sの短辺に沿って延びる線状をなしている。第1接地デッキ構成部材31は、これら接地面横リブ31aと接地面縦リブ31bとが交差する格子状をなす。なお、接地面横リブ31aと接地面縦リブ31bとは、相互に略等しい肉厚を有し、上述の積載面横リブ21aや積載面縦リブ21bよりも薄い肉厚を有する。
【0030】
接地面12Sにて、中間部接地面12SE2と中央部接地面12SCとは、第2接地デッキ構成部材32によって連結されている。第2接地デッキ構成部材32は、U字状をなす複数の接地桟32aと、各接地桟32aに設けられた複数の水抜き穴32bとによって構成されている。複数の水抜き穴32bの各々は、上述したように一体成形合成樹脂製パレット10の衛生性を高める。
【0031】
接地面12Sにて、第1接地デッキ構成部材31と第2接地デッキ構成部材32とに囲まれた領域には、格子状をなす第3接地デッキ構成部材33が形成されている。第3接地デッキ構成部材33も、第1接地デッキ構成部材31と同様に、複数の接地面横リブ33aと接地面縦リブ33bとによって構成されている。
【0032】
これら第1接地デッキ構成部材31、第2接地デッキ構成部材32、及び、第3接地デッキ構成部材33が相互に連結する構造を採用することによって、一体成形合成樹脂製パレット10は、軽量化を図られながらも、接地デッキ12の強度と積載荷重に対する剛性とを高めている。
【0033】
なお、第1接地デッキ構成部材31、第2接地デッキ構成部材32、第3接地デッキ構成部材33などの一部は、例えば、片面使用のスキッドタイプや二方差しの一体成形合成樹脂製パレットのように省略されてもよい。この場合には、中間部接地面12SE2や縁部接地面12SEの一部は、仮想接地面として設定される。
[積載面11S及び接地面12Sの構成]
次に、上記積載面11Sの断面形状と接地面12Sの断面形状とについて説明する。まず、上記一体成形合成樹脂製パレット10に先駆けて、一般的な合成樹脂製パレットにおける積載面と接地面とについて
図4を参照して説明する。次いで、上記一体成形合成樹脂製パレット10の積載面11Sと接地面12Sとについて
図5から
図7を参照して説明する。
【0034】
なお、
図5は、
図2のA−A線断面を示す断面図であって、説明の便宜上、水抜き穴の一部が割愛された図である。また、
図4は、従来の合成樹脂製パレットにおける
図5に相当する断面図であって、説明の便宜上、上記積載デッキ11、積載面11S、接地デッキ12、及び、接地面12Sの各々に対応する構成が、積載デッキ51、積載面51S、接地デッキ52、及び、接地面12Sとして設定されている。また、上記縁部積載面11SE、環状中間積載面11SM、中央部積載面11SCに対応する構成が、縁部積載面51SE、環状中間積載面51SM、中央部積載面51SCとして設定されている。また、上記縁部接地面12SE、環状中間接地面12SM、中央部接地面12SCの各々に対応する構成が、縁部接地面52SE、環状中間接地面52SM、中央部接地面52SCとして設定されている。
【0035】
図4に示されるように、積載デッキ51や接地デッキ52が複雑な形状を有する合成樹脂製パレット50では、これらの形状や樹脂量に起因する成形時の収縮によって、積載面51Sと接地面52Sとの形状が定められる。
【0036】
詳述すると、積載デッキ51の積載面51Sのうち、縁部積載面51SEにおける成形後の熱収縮は、中間桁部14の周壁14WPや中間桁部14の補強壁14WSの機械的な剛性によって抑えられる。また、中央部積載面51SCにおける成形後の熱収縮も、縁部積載面51SEと同じく、中央桁部15の周壁15WPや中央桁部15の補強壁15WSの機械的な剛性によって抑えられる。一方で、環状中間積載面51SMにおける成形後の熱収縮は、縁部積載面51SEや中央部積載面51SCに比べて抑えられ難い。結果として、一般的な合成樹脂製パレット50の積載面51Sは、環状中間積載面51SMが接地デッキ52に向けて窪んだ形状をなす。
【0037】
また、接地デッキ52の接地面52Sのうち、縁部接地面52SEにおける成形後の熱収縮は、中間桁部14の周壁14WPや中間桁部14の補強壁14WSの機械的な剛性によって抑えられる。また、中央部接地面52SCにおける成形後の熱収縮も、縁部接地面52SEと同じく、中央桁部15の周壁15WPや中央桁部15の補強壁15WSの機械的な剛性によって抑えられる。一方で、環状中間接地面52SMにおける成形後の熱収縮は、縁部接地面52SEや中央部接地面52SCに比べて抑えられ難い。結果として、一般的な合成樹脂製パレット50の接地面52Sは、環状中間接地面52SMが積載デッキ51に向けて窪んだ形状をなす。
【0038】
こうした形状をなす合成樹脂製パレット50に対し、段ボールやコンテナ等のように、積載面51Sの殆どを占める大きな底面を有する積み荷が積まれる場合、上述した積載面51Sの形状に関わらず、概ね積み荷の位置は積載面51Sに対して安定する。しかしながら、上述した飲料用の容器等のように、積載面11Sに敷き詰められる小さい底面を有する積み荷では、上述した積載面11Sの形状によって、積み荷が積み重ねられる際や合成樹脂製パレットが移送される際に、積み荷の荷崩れや積み荷の落下の可能性が高くなる。
【0039】
また、積み荷が積載される積載デッキ51の肉厚は、接地デッキ52の肉厚よりも厚いことが少なくない。こうした構成では、縁部接地面52SEが中央部接地面52SCよりも積載デッキ51に近くなるように、合成樹脂製パレット50は熱収縮しやすくなる。結果として、接地面52Sは、中央部接地面52SCが凸となる凸曲面形状に形成されるため、飲料用等の空容器の段積み作業中には、中央部接地面52SCのみが床面等と接触し、中央部接地面52SCを中心として、合成樹脂製パレット50が回転してしまうおそれがある。さらに、合成樹脂製パレット50に空容器が積み重ねられた状態で、さらに合成樹脂製パレット50が空容器の上に積み重ねられると、上段の接地デッキ52における中央部接地面52SCのみが下段にある空容器の上部と接触する。結果として、上段の合成樹脂製パレット50からの加重が集中することで空容器を変形させるおそれもある。
【0040】
この点で、
図5に示されるように、上述した一体成形合成樹脂製パレット10では、接地デッキ12から積載デッキ11に向く方向が高さ方向として設定されると、中央部積載面11SCの高さは、縁部積載面11SEよりも低く、また、積載面11Sのなかで最も低い。
【0041】
詳述すると、縁部積載面11SEは、相互に高さが異なる第1積載面11S1、第2積載面11S2、第3積載面11S3から構成されている。第1積載面11S1の高さは、第2積載面11S2の高さよりも高く、また、第2積載面11S2の高さは、第3積載面11S3の高さよりも高い。そして、第1積載面11S1の高さと第2積載面11S2の高さとの違いによって、積載面11Sの周方向に沿う第1段差11aが形成されている。また、第2積載面11S2の高さと第3積載面11S3の高さとの違いによって、これもまた積載面11Sの周方向に沿う第2段差11bが形成されている。
【0042】
環状中間積載面11SMは、相互に高さが異なる第3積載面11S3と第4積載面11S4とから構成されている。第3積載面11S3は、縁部積載面11SEと環状中間積載面11SMとに跨り、第4積載面11S4よりも高い。そして、第3積載面11S3の高さと第4積載面11S4の高さとの違いによって、積載面11Sの周方向に沿う第3段差11cが形成されている。中央部積載面11SCは、環状中間積載面11SMと中央部積載面11SCとに跨る第4積載面11S4から構成されている。
【0043】
なお、中央部積載面11SCと縁部積載面11SEとは、上記3つの段差11a,11b,11cによって接続される構成に限らず、1または2の段差によって接続されてもよく、あるいは、4以上の段差によって接続されてもよい。また、積載面11Sは、積載面11Sの縁から中央部積載面11SCに向けて順に低くなる構成に限らず、環状中間積載面11SMの一部が中央部積載面11SCよりも高くてもよい。要するに、中央部積載面11SCの高さが縁部積載面11SEの高さよりも低い構成であればよい。
【0044】
また、中央部積載面11SCは、縁部積載面11SEから漸次傾斜するかたちで縁部積載面11SEに接続されてもよく、あるいは、中央部積載面11SCは、縁部積載面11SEに対して漸次傾斜する傾斜面であってもよい。さらには、縁部積載面11SEは、中央部積載面11SCに対して漸次傾斜する傾斜面であってもよい。いずれの場合も、上記したのと同様に、環状中間積載面11SMは、積載面11Sの全体の平面視形状と相似形であることが好ましい。
【0045】
以下では、中央部積載面11SCの高さと縁部積載面11SEの高さとの差が高低差St1として設定される。また、フォークの差込まれる方向であるフォーク差込方向と直交する方向であって縁部積載面11SEの縁部11Eからの幅が縁部幅WEとして設定される。
【0046】
中央部接地面12SCの高さは、縁部接地面12SEよりも
低く、また、接地面12Sのなかで最も
低い。縁部接地面12SEは、中央部接地面12SCに向けて漸次傾斜した環状中間接地面12SMによって連結されている。
【0047】
なお、こうした接地面12Sの成形は、積載デッキ11の中央部積載面11SCや縁部積載面11SEの成形と同様の方法で実現できる。また、環状中間接地面12SMは、縁部接地面12SEから中央部接地面12SCに向けて漸次高さが高くなる傾斜面であるが、環状中間積載面11SMと同様に、段差を有する段差面であってもよい。なお、こうした場合も、積載面11Sと中央部積載面11SCとの関係と同様に、中央部接地面12SCは、接地面12Sの全体の平面視形状と相似形とするようにすることも好ましい。以下では、中央部接地面12SCの高さと縁部接地面12SEの高さとの差が高低差St2として設定される。
[一体成形合成樹脂製パレット10の作用]
上述したように、従来の合成樹脂製パレットは、各デッキの形状や各デッキの樹脂量に起因する成形時の収縮により、
図4にて説明された形状をなす。一方で、本実施形態の一体成形合成樹脂製パレット10のように、積載面11Sにおける中央部積載面11SCの高さが縁部積載面11SEの高さよりも低くい構成であれば、飲料用の容器等を段積みした場合に、縁部積載面11SEに積み重ねられた積み荷は、中央部積載面11SCに向けて倒れ込みやすくなる。
【0048】
例えば、
図6に示されるように、一体成形合成樹脂製パレット10が静置状態であると、縁部積載面11SEに積み重ねられた積み荷は、縁部積載面11SEから中央部積載面11SCに向けて倒れ込み、結果として、積載面11Sの外側への荷崩れや落下が抑えられる。
【0049】
また、
図7に示されるように、積み荷が積み重ねられた後に、一体成形合成樹脂製パレット10がフォークFでリフトアップされる場合には、一体成形合成樹脂製パレット10と積み荷との重さによって、縁部積載面11SEが下方に向けて撓む。この際に、縁部積載面11SEに積み重ねられた積み荷の上部面と、中央部積載面11SCに積み重ねられた積み荷の上部面とが略面一になるから、結果として、積載面11Sの外側への荷崩れや落下は抑えられる。
【0050】
ここで、上記一体成形合成樹脂製パレット10では、縁部積載面11SEから中央部積載面11SCに向けて積載面11Sの高さが順次低くなる。それゆえに、飲料用の容器を20段程度に段積みした場合であっても、積載面11Sの全体にわたり、縁部積載面11SEから中央部積載面11SCに向けて各容器が倒れ込む状態を形成できる。
【0051】
また、縁部接地面12SEから中央部接地面12SCに向けて接地面12Sの高さが漸次高くなるため、積み荷が積み重ねられる作業中に、一体成形合成樹脂製パレット10が回転することが抑えられ、静置状態を維持することが可能にもなる。すなわち、接地面12Sでは、積み荷の荷重を特に受ける可能性の高い部分が、予め他の部分よりも積載デッキ11側に窪んでいる。それゆえに、中央部接地面12SCが縁部接地面12SEよりも低くなる永久歪みが効果的に軽減されるから、一体成形合成樹脂製パレット10の接地状態を長期間にわたって安定させることが可能になる。さらに、積み重ねられた積み荷の上に一体成形合成樹脂製パレット10が積み重ねられる状態であっても、上段にある一体成形合成樹脂製パレット10の接地デッキ12とその下段にある積み荷との接触する面積は、従来の合成樹脂製パレットに比べて大きくなる。それゆえに、積み荷の単位面積あたり加わる加重が抑えられ、上段の加重によって積み荷が変形することも抑制できる。
【0052】
なお、高低差St1は、0<St1≦15mmの範囲を満たすことが好ましい。
高低差St1が15mm以下であれば、飲料用の空容器が20段程度に積み重ねられる場合に、空容器の倒れ込む圧力によって他の空容器が変形することを抑えられる。また、合成樹脂製パレットに積載された荷物が保管される際には、例えば、自動倉庫ではスタッカークレーンが用いられ、合成樹脂製パレットを格納及び搬出するこうした機器と合成樹脂製パレットとの機械的な干渉を抑えることが容易にもなる。なお、高低差St1が0mmよりも大きい範囲であるから、一体成形合成樹脂製パレット10がフォークFでリフトアップされる場合に、積み重ねられた空容器の上部の面が略面一にすることが可能でもある。
【0053】
また、高低差St1は、0<St1≦5mmの範囲を満たすことが好ましく、1≦St1≦4mmの範囲を満たすことがより好ましく、2≦St1≦3mmの範囲とすることが特に好ましい。
【0054】
高低差St1がこうした範囲を満たす場合には、積み荷が段ボールなどの場合に、積み荷の自重による段差の圧痕を抑えることが可能にもなる。また、一体成形合成樹脂製パレット10が使用に伴い変形するとしても、高低差St1が15mmを超え難くなるため、上述した空容器の変形の抑制や合成樹脂製パレットと機器との干渉の抑制が長期間にわたり継続される。
【0055】
なお、縁部幅WEは、0<WE≦150mmの範囲を満たすことが好ましい。
例えば、積み荷が250mlの飲料缶である場合、飲料缶の底面の直径は約φ50mmである。ここで、縁部積載面11SEの最外周に配置される飲料缶が1周目の飲料缶と設定され、積載面11Sの内側に進むに従って、2周目の飲料缶、3周目の飲料缶、…、と設定される。縁部幅WEが150mm以下であれば、1周目から3周目までの飲料缶は正立状態であって、4周目以降の飲料缶は内側に倒れ込む状態となる。それゆえに、250mlの飲料缶が20段程度に積み重ねられる場合であっても、飲料缶の荷崩れを抑えることが可能となる。また、縁部幅WEがWE≒0mmの場合には、4周目以降の飲料缶と同じく、最外周に配置される250ml飲料缶も縁部積載面11SEにて内側に倒れ込む状態となる。それゆえに、最外周に配置される飲料缶の荷崩れをより抑えることが可能にもなる。なお、この場合も、上記したのと同様に、積載面11Sの全体の平面視形状と相似形であって、中央部積載面11SCが含まれる面の高さを縁部積載面11SEの高さよりも低くすることが好ましい。また、縁部幅WEが150mmを超える場合であっても、少なくともN周目(Nは1以上の整数であって、積載面11Sにおける飲料缶の周回数以下の整数)の飲料缶が内側に倒れ込む以上、飲料缶の荷崩れを抑える効果は得られる。
【0056】
ちなみに、積み荷が350mlや500mlの飲料缶である場合、あるいは、積み荷が500mlのペットボトルである場合には、飲料缶の底面の直径は約φ65mmである。この際に、縁部幅WEが50mmである場合には、最外周に位置する飲料缶の底面の一部が縁部積載面11SEに配置された状態であって、底面の残部は環状中間積載面11SMに配置される状態となる。それゆえに、これらの積み荷が20段程度に積み重ねられる場合であっても、最外周に配置された積み荷が内側に倒れ込む状態になるため、荷崩れは抑えられる。したがって、縁部幅WEが0<WE≦150mmの範囲を満たすことによって、250ml、350ml、500mlの飲料缶又はペットボトルのいずれの場合にも、20段程度に積み重ねられた積み荷が荷崩れすることを抑制できる。
【0057】
なお、高低差St2は、0<St2≦5mmの範囲を満たすことが好ましく、0<St2≦3mmの範囲を満たすことがより好ましい。
高低差St2が5mm以下であれば、積み荷が積み重ねられる作業中に一体成形合成樹脂製パレット10の静置状態を維持することが可能である。また、合成樹脂製パレットにおける桁部の高さは、通常、100mm以上150mm以下の高さであるため、高低差St2が3mm以下であれば、桁部における剛性や強度を確保することが容易にもなる。
なお、図5より明らかなように、中央部積載面11SCと縁部積載面11SEとの高低差St1は、中央部接地面12SCと縁部接地面12SEとの高低差St2より大きい。
【0058】
次に、上記中間桁部14の側面構造について
図8を参照して説明する。
図8に示されるように、一体成形合成樹脂製パレット10では、複数の桁部のうち中間桁部14が指標桁部として設定される。指標桁部である中間桁部14は、一体成形合成樹脂製パレット10の外周壁を構成する周壁14WPを含み、周壁14WPには、中間桁部14の外側と内側との間を貫通する指標孔SIDが形成されている。指標孔SIDは、側面視にて相互に形状が異なる2種類の孔から構成されている。指標孔SIDを構成する1つの孔は、積載デッキ11を指す矢印「△」を象った三角形孔であり、指標孔SIDを構成する他の孔は、矢印の指す方向の意味を示す「上」を象った孔である。
【0059】
中間桁部14の周壁14WPを視認する利用者は、指標孔SIDの象る形状に基づき、矢印の指す方向を一体成形合成樹脂製パレット10の上面として認識する。すなわち、中間桁部14の周壁14WPに形成された指標によって、一対のデッキ11,12のうち、いずれのデッキが積載デッキ11であるかが利用者に認知される。結果として、一体成形合成樹脂製パレット10の積載デッキ11が誤って接地デッキ12として使用されることが少なくなるから、一体成形合成樹脂製パレット10の利用に際して、次回の使用機会で積み荷が汚れることが抑えられる。なお、指標孔SIDは、中間桁部14の周壁14WPに限らず、隅桁部13の周壁13WPに形成されてもよく、複数の桁部の外側壁のうち、一体成形合成樹脂製パレット10の外周壁を構成する部分であればよい。
【0060】
中間桁部14の周壁14WPには、印刷領域Pが区画され、印刷領域Pには、一体成形合成樹脂製パレット10の所有者や一体成形合成樹脂製パレット10の使用用途等が印刷されている。周壁14WPに対する印刷には、通常、スクリーン法等が用いられるため、印刷時に支障を来すことの無い平坦性が、周壁14WPの表面には求められる。上述の指標は、周壁14WPを貫通する貫通孔の他に、例えば、矢印や文字を象る凸部であってもよい。
【0061】
ただし、周壁14WPの表面に凸部が形成される場合には、上述の印刷に際して、印刷領域Pの位置が制約を受けることのみならず、印刷そのものに支障を来す。この点で、上述の指標が指標孔SIDのように貫通孔であれば、こうした印刷に伴う支障を抑えることが可能である。また、上述の指標は、周壁14WPを貫通する貫通孔の他に、例えば、矢印や文字を象る凹部であってもよい。ただし、周壁14WPの表面に凹部が形成される場合には、凹部の内部に塵や埃が堆積して積み荷を汚す場合がある。この点でも、上述の指標が指標孔SIDのように貫通孔であれば、指標が単なる凹部である場合に比べて、塵や埃等が周壁14WPに堆積することを抑えることが可能でもある。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・中央部接地面12SCと縁部接地面12SEとは、相互に同じ高さであってもよい。あるいは、接地面12Sの全体が同じ高さであってもよい。要するに、積載デッキ11の表面である積載面11Sにおける中央部である中央部積載面11SCの高さが、積載面11Sにおける縁部である縁部積載面11SEの高さよりも低くければよい。
【0063】
・積載デッキ11の樹脂量は接地デッキ12の樹脂量と同じであってもよく、また、積載デッキ11の樹脂量は接地デッキ12の樹脂量より少なくてもよい。
・指標孔SIDが割愛される構成であってもよい。
【0064】
・積載面11Sの高低差St1と接地面12Sの高低差St2とは、相互に異なる大きさであってもよい。こうした構成であれば、高低差St1,St2の違いによって、積載デッキ11と接地デッキ12とを利用者に識別させることが可能になる。結果として、積載デッキ11が誤って接地デッキ12として使用される機会が低減され、次回の使用機会で積み荷が汚れることが抑えられる。
【0065】
・一体成形合成樹脂製パレットは、スキッドパレットと二方差しのパレットのいずれのタイプのパレットにも適用することが可能である。
例えば、1組の隅桁部と中央桁部のみからなる二方差しのパレットの場合では、この中央桁部の中央部積載面の高さを隅部積載面の高さよりも低くすることで上述した荷崩れや落下を抑えることが可能である。さらに、積載面11Sの全体の平面視形状と相似形であって、中央部積載面を含む面の高さを縁部積載面の高さよりも低くするように設定することで、荷崩れや落下を防止することができる。