(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0017】
(第1実施形態)
<廃水処理システムの構成>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る廃水処理システム1のブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る廃水処理システム1は、洗浄集じん装置(スクラバー)31から排出されるスクラバー廃水を処理するシステムであって、加熱装置2と、廃水処理装置32と、を備えている。以下、洗浄集じん装置31、加熱装置2、及び廃水処理装置32について順に説明する。
【0018】
洗浄集じん装置31は、排気に含まれるカーボンなどの浮遊粒子状物質を当該排気から除去する装置である。洗浄集じん装置31の洗浄対象となる排気には、例えば低質な燃料を用いる燃焼機関から排出される排気や、ごみなどを焼却する焼却炉から排出される排気などがある。洗浄集じん装置31では、排気から浮遊粒子状物質を取り除くために洗浄水を用いる。排気から浮遊粒子状物質を取り除く方法として、洗浄水中に排気を通過させる方式、排気に洗浄水を噴射する方式、洗浄水をしみこませた部材の間に排気を通過させる方式などがあるが、いずれの方式を採用してもよい。なお、洗浄集じん装置31で使用された洗浄水は、スクラバー廃水として廃水処理システム1に排出される。
【0019】
加熱装置2は、スクラバー廃水を所定温度以上に加熱する装置である。加熱装置2では、スクラバー廃水を例えば75゜C以上に加熱する。加熱装置2の熱源は特に限定されず、電熱器を用いて加熱してもよく、高温の蒸気を用いて加熱してもよく、排気の熱を利用して加熱してもよい。また、本実施形態では、加熱装置2は洗浄集じん装置31の下流に配置されているが、洗浄集じん装置31の上流に配置されていてもよく、洗浄集じん装置31内に配置されていても良い。つまり、加熱装置2は、ばいじんを含有する前のスクラバー廃水(すなわち使用前の洗浄水)を加熱してもよく、ばいじんを含有する際のスクラバー廃水を加熱してもよく、ばいじんを含有した後のスクラバー廃水を加熱してもよい。このように、スクラバー廃水は、少なくとも上記のいずれかのタイミングで加熱されればよい。そして、加熱装置2で加熱されたスクラバー廃水は、廃水処理装置32へ供給される。
【0020】
廃水処理装置32は、スクラバー廃水からばいじんを分離して除去する装置である。本実施形態の廃水処理装置32は、沈殿分離部40と、沈殿分離部40の下流に位置する遠心分離部60と、を有している。
【0021】
沈殿分離部40は、ばいじんを沈殿させることでスクラバー廃水からばいじんを分離して除去する部分である。ここで、
図2は、本実施形態に係る沈殿分離部40の概略図である。便宜上、
図2の紙面の上下左右をそれぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」と称して説明する。なお、
図2の紙面上下方向は、鉛直方向(重力がかかる方向)に一致する。
図2に示すように、沈殿分離部40は、水槽41と、仕切板42と、傾斜管群43と、装置保温部51と、によって主に構成されている。
【0022】
水槽41の内部は、スクラバー廃水によって満たされている。水槽41の左右方向中央付近であって水槽41の底面44よりも上方に、仕切板42が配置されている。また、この仕切板42と水槽41の右側壁との間には、傾斜管群43が配置されている。そして、傾斜管群43の下端部分は、水槽41の底面44よりも上方に位置している。以下では、水槽41の内部のうち、傾斜管群43よりも左側の領域と傾斜管群43よりも下方の領域を合わせた領域45を「第1領域」と呼び、仕切板42、傾斜管群43、及び水槽41の右側壁で囲まれた領域(水槽41の右上の領域)46を「第2領域」と呼ぶこととする。
【0023】
そうすると、傾斜管群43は、第1領域45と第2領域46の境界に位置していることになる。傾斜管群43は、水平方向の断面が矩形である多数の傾斜管47が一体となって構成されている。なお、
図2では左右方向に複数並ぶ傾斜管47を図示しているが、傾斜管47は左右方向のみならず
図2の紙面奥行き方向にも多数並んでいる。各傾斜管47は下方部分が第1領域45に開口し、上方部分が第2領域46に開口している。つまり、第1領域45は、各傾斜管47を介して第2領域46と連通している。また、各傾斜管47は、水平方向に対して所定の傾斜角度(例えば60度)だけ傾斜している。そのため、各傾斜管47は傾斜面48を有しており、この傾斜面48は水平方向に対して所定の傾斜角度だけ傾斜して斜め上方(左上)に向いている(面している)。
【0024】
水槽41の左側壁には、第1領域45に開口する流入ポート49が形成されている。また、水槽41の右側壁には、第2領域46に開口する流出ポート50が形成されている。
図1に示すように、沈殿分離部40には、洗浄集じん装置31から加熱装置2を介してスクラバー廃水が流入するが、このスクラバー廃水は上記の流入ポート49から水槽41に流入する。そして、水槽41に流入したスクラバー廃水は、
図2の矢印で示すように、水槽41の第1領域45に入ると、水槽41の底面44の方向(下方)に向い、その後各傾斜管47を下から上へと抜けて第2領域46に流入し、最終的に流出ポート50から排出される。
【0025】
上記のように、水槽41に入ったスクラバー廃水は、必ずいずれかの傾斜管47を通過する。そして、スクラバー廃水が傾斜管47を通過する際、スクラバー廃水内のばいじんが各傾斜管47の傾斜面48に沈殿する。仮に、ばいじんが水槽41の底面44に沈殿するとすれば、ばいじんは底面44に定着して沈殿が完了するためには、比較的長い距離を沈降し続けなければならない。これに対し、本実施形態では、傾斜管47の傾斜面48にばいじんが沈殿するため、ばいじんは短い距離の沈降で沈殿が完了する。また、本実施形態では、多数の傾斜管47、すなわち多数の傾斜面48を並べて配置しているため、ばいじんが沈殿する面の面積が非常に大きい。これにより、本実施形態では、多量のばいじんの沈殿を短い時間で完了させることができる。なお、各傾斜管47の傾斜面48に沈殿したばいじんは、ある程度堆積すると自重によって水槽41の底面44に落下する。スクラバー廃水は、このようにしてばいじんが分離(除去)された後、流出ポート50から遠心分離部60へと排出される。
【0026】
装置保温部51は、廃水処理装置32内のスクラバー廃水を保温する部材であり、ここでは沈殿分離部40内のスクラバー廃水を保温する。
図2に示すように、装置保温部51は、水槽41の外表面を覆うように配置されている。装置保温部51は、公知の断熱材料によって形成されている。ただし、装置保温部51は、水槽41の外側に配置された外壁を有し、その外壁と水槽41の間を真空にして、水槽41内の熱が外部に伝わりにくくなるように構成してもよい。また、装置保温部51は、水槽41内のスクラバー廃水の温度を維持するために(又は上昇させるために)、発熱するなど水槽41内のスクラバー廃水に熱を加えることができるよう構成してもよい。このような装置保温部51を備えることで、加熱装置2で加熱されたスクラバー廃水を所望の温度に維持したまま沈殿分離部40で廃水処理を行うことができる。
【0027】
以上が本実施形態の沈殿分離部40である。上記のように沈殿分離部40は、重力を利用してスクラバー廃水からばいじんを分離するものである。そのため、稼働のために大きな動力は必要ない。さらに、スクラバー廃水は狭い隙間を通ることはないため、スクラバー廃水に粒径の大きなばいじんが多く含まれていても詰まりにくい。そのため、本実施形態の沈殿分離部40は、小さなエネルギで稼動でき、メンテナンスも非常に容易である。なお、同じ量のスクラバー廃水を処理する場合、沈殿分離部40は後述する遠心分離部60よりも全体を小さく構成することができる。
【0028】
引き続いて本実施形態の遠心分離部60について説明する。遠心分離部60は、遠心分離処理によりスクラバー廃水からばいじんを分離して除去する部分である。ここで、
図3は、本実施形態に係る遠心分離部60の概略図である。
図3に示すように、遠心分離部60は、収容容器61と、軸管62と、多数の回転板63と、装置保温部51と、を有している。
【0029】
収容容器61は、軸管62及び回転板63を収容する容器である。収容容器61は、円筒状に形成された円筒部64と、円筒部64の上方に配置された上面部65とを有している。上面部65の中央には上面部65を貫通する流出管66が設けられている。さらに、この流出管66には、流出管66を貫通する流入管67が設けられている。
【0030】
軸管62は、収容容器61の内部に収容された円管状の部材である。軸管62は、流入管67に連通しており、収容容器61(円筒部64)の中心軸に沿って延びている。さらに、軸管62は、電動モータ(図示せず)を駆動源として高速(例えば、10,000rpm)で回転する。
図1に示すように、遠心分離部60には沈殿分離部40から排出されたスクラバー廃水が流入するが、具体的にはスクラバー廃水は流入管67を介してこの軸管62へと流入する。さらに、軸管62に流入したスクラバー廃水は、下端に形成された流出孔68を介して収容容器61内に流入する。
【0031】
回転板63は、軸管62とともに回転する部材である。回転板63は、軸管62の軸方向に沿って並べられており、運転中は軸管62に直接固定されている。回転板63は、傘状(円錐状)の形状を有しており、周方向に等間隔で並ぶ流通孔69が形成されている。また、各回転板63の軸方向の間隔は、
図3では広く図示しているが、実際には非常に狭く、その間隔は例えば0.5mmである。なお、この間隔を維持するために、本実施形態では各回転板63の間に例えば厚さ0.5mmのスペーサ(図示せず)が挿入されている。
【0032】
装置保温部51は、廃水処理装置32内のスクラバー廃水を保温する部材であり、ここでは遠心分離部60内のスクラバー廃水を保温する。
図3に示すように、装置保温部51は、収容容器61の外表面を覆うように配置されている。装置保温部51は、沈殿分離部40で用いたものと同様であり、公知の断熱部材によって形成されている。なお、装置保温部51は、二重構造となるように構成されていてもよく、スクラバー廃水に熱を加えることができるよう構成されていてもよい。このような装置保温部51を備えることで、加熱装置2で加熱されたスクラバー廃水を所望の温度に維持したまま廃水処理を行うことができる。
【0033】
遠心分離部60は以上のように構成されているため、軸管62の内部を通って収容容器61内へ流出したスクラバー廃水は、各回転板63の流通孔69を通り、流出管66から外部へと排出される。そして、スクラバー廃水が回転板63を通過する際、スクラバー廃水には遠心力が加わり、比重の大きいばいじんがスクラバー廃水から分離される。なお、分離されたばいじんは、円筒部64の内壁に堆積する。このように、遠心分離部60に流入したスクラバー廃水は、強制的にばいじん粒子が分離された後、遠心分離部60(収容容器61)から排出される。
【0034】
なお、遠心分離部60を構成する各回転板63は、互いの間隔が非常に狭いため、仮に流入するスクラバー廃水に粒径の大きいばいじんが多く含まれていると、すぐにばいじんが回転板63の間に詰まってしまう。その一方で、遠心分離部60は、遠心力を利用して強制的にばいじんを分離するため、粒径の小さなばいじんを精度良く分離することができる。つまり、遠心分離部60は、粒径の大きなばいじんの除去は苦手であるが、粒径の小さなばいじんの除去には非常に有効である。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る廃水処理装置32では、粒径の大きなばいじんの除去に有効な沈殿分離部40を上流側に配置している。そして、沈殿分離部40は、小さなエネルギで稼動でき、メンテナンスも容易であり、遠心分離部60よりも小さく構成することができる。また、粒径の小さな粒子のばいじんの除去に有効な遠心分離部60が下流側に配置されている。なお、遠心分離部60の上流に沈殿分離部40が配置されているため、遠心分離部60には粒径の大きなばいじんはほとんど流入しない。このように、本実施形態に係る廃水処理装置32は、互いに補完しあう分離部40、60が最適な配置で組み合わせられており、全体として小さなエネルギで稼動でき、メンテナンスが容易で、設置スペースを小さくでき、しかもスクラバー廃水からばいじんを精度よく除去することができる。
【0036】
なお、以上では、装置保温部51が廃水処理装置32内のスクラバー廃水を保温する例として、沈殿分離部40内のスクラバー廃水を保温する場合、及び遠心分離部60内のスクラバー廃水を保温する場合について説明した。ただし、装置保温部51は、廃水処理装置32内の沈殿分離部40及び遠心分離部60以外の配管等内のスクラバー廃水も保温する。例えば、
図1に示すように、装置保温部51は、加熱装置2から沈殿分離部40へとつながる配管、及び沈殿分離部40から遠心分離部60へとつながる配管の外表面を覆うように配置されており、これらの配管を流れるスクラバー廃水も保温する。
【0037】
<加熱による効果>
上記のように、本実施形態に係る廃水処理システム1では、廃水処理を行う前にスクラバー廃水を加熱するが、以下ではこの加熱による効果について説明する。なお、この効果を説明する前に、一般に知られているDLVO理論による粒子の凝集及び分散と温度との関係について説明する。このDLVO理論とは、水に溶けない粒子の水中における凝集及び分散は、粒子間斥力エネルギE
1と粒子間引力エネルギE
2の差(総和)によって決定されるというものである。例えば、粒子間斥力エネルギE
1が粒子間引力エネルギE
2よりも大きい場合には粒子は分散し、粒子間斥力エネルギE
1が粒子間引力エネルギE
2よりも小さい場合には粒子は凝集する。
【0038】
ここで、粒子間斥力エネルギE
1は、以下の第1式(及び第2式)で表すことができる。また、粒子間引力エネルギE
2は、以下の第3式で表すことができる。第1式及び第2式によれば、水の絶対温度Tが上昇すれば、粒子間斥力エネルギE
1は上昇する。一方、粒子間引力エネルギE
2は水の絶対温度Tに影響されない。そのため、DLVO理論によれば、液体の絶対温度Tが大きくなると、粒子の凝集性は悪くなる。
【0040】
そして、上述した沈殿分離部40及び遠心分離部60では、粒子(ばいじん)の凝集性が悪くなれば処理能力が低下し、逆に凝集性が良くなれば処理能力が向上する。これは、粒径の2乗に比例して粒子の沈降速度が大きくなるからである。沈殿分離部40は重力で、遠心分離部60は遠心力で粒子(ばいじん)を沈降させるものであるため、ばいじんの沈降速度が廃水処理の能力に影響する。つまり、沈殿分離部40及び遠心分離部60は、ばいじんの凝集性が悪化することで、ばいじんが沈降しにくくなる結果、処理能力が低下するのである。
【0041】
上記のように、DLVO理論によれば、スクラバー廃水の絶対温度Tが大きくなると、廃水処理装置の能力は低下するはずであるが、発明者らの試験ではこれとは異なる結果が得られた。当該試験では、水平に対して60度傾斜させた単一の傾斜管を用いて、スクラバー廃水の温度と沈殿分離部40の処理能力との関係を検証した。この試験により下記の表1に示す結果が得られた。つまり、濁度が658NTU(Nephelometric Turbidity Units)であるスクラバー廃水を常温の25゜Cで廃水処理したところ80〜90NTUとなった。一方、同じく濁度が658NTUであるスクラバー廃水を80〜90゜Cにまで加熱し、その後廃水処理を行ったところ、20〜30NTUにまで低減した。
【0043】
さらに、遠心分離機を用いて試験を行い、スクラバー廃水の温度と遠心分離部の処理能力との関係についても検証した。なお、当該試験では、ウェストファリアセパレータジャパン製のOSD2型連続式ディスク型遠心分離機を用い、流量100L/Hrで3分間この遠心分離機を稼働させた。かかる試験により下記の表2に示す結果が得られた。つまり、濁度が1875NTUであるスクラバー廃水を6゜C、30゜C、50゜C、及び75゜Cの各温度に加熱して廃水処理を行ったところ、処理後の濁度がそれぞれ81NTU、51NTU、36NTU、及び20NTUとなった。
【0045】
以上のとおり、重力を用いた廃水処理及び遠心力を用いた廃水処理のいずれにおいても、スクラバー廃水の温度が高くなるに従って、処理能力が向上することが確認できた。よって、本実施形態に係る廃水処理システム1によれば、加熱装置2によってスクラバー廃水を加熱し、その温度を装置保温部51によって維持したまま廃水処理装置32で廃水処理を行うため、非常に効率よくばいじんを除去することができる。
【0046】
このように、DLVO理論に反し、スクラバー廃水の温度が上昇すると廃水処理の能力が向上するという結果が得られたが、これは粒子のブラウン運動が関与しているのではないかと発明者らは推測する。つまり、粒子の運動エネルギE
3は下記の第4式で表されるが、水の絶対温度Tが上昇すると、粒子の運動エネルギE
3も上昇する。これにより粒子のブラウン運動が活発になると、粒子同士の衝突回数が増加して凝集しやすくなると考えられる。つまり、粒子間斥力エネルギE
1による影響よりも、粒子の運動エネルギE
3による影響が勝り、粒子の凝集性が向上したと考えられる。その結果、スクラバー廃水の温度が上昇すると廃水処理の能力が向上したと推測する。
【0048】
(第2実施形態)
<エンジンシステム>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るエンジンシステム101について説明する。
図4は、エンジンシステム101のブロック図である。
図4のうち太い実線は掃気(2サイクルエンジンでは「掃気」であり、4サイクルエンジンでは「給気」であるが、以下では両者をまとめて「掃気」と称する)の流れを示しており、太い破線は排気の流れを示している。本実施形態に係るエンジンシステム101は、船舶100に搭載された船舶用のエンジンシステム101である。
図4に示すように、エンジンシステム101は、ディーゼルエンジン10と、過給機20と、排気再循環ユニット30と、を備えている。
【0049】
ディーゼルエンジン10は、エンジンシステム101の中心となる構成要素である。ディーゼルエンジン10は推進用のプロペラ(図示せず)に連結されており、このプロペラを回転させる。本実施形態のディーゼルエンジン10は、大型の船舶用であり、いわゆる重油を燃料とするため、その排気にはSOxだけでなく多量のすすが含まれる。
【0050】
過給機20は、ディーゼルエンジン10に圧縮空気を供給するための装置である。過給機20は、タービン部21と、コンプレッサ部22とを有している。タービン部21にはディーゼルエンジン10から排気が供給され、排気の速度エネルギによりタービン部21が回転する。タービン部21とコンプレッサ部22はシャフト部23により連結されており、タービン部21が回転することによりコンプレッサ部22も回転する。コンプレッサ部22が回転すると、外部から取り込んだ大気が圧縮され、圧縮された大気は掃気としてディーゼルエンジン10へ供給される。
【0051】
排気再循環ユニット30は、ディーゼルエンジン10へ排気を戻すユニットである。ディーゼルエンジン10から排出された排気は、過給機20のみならず排気再循環ユニット30にも供給される。詳しくは後述するが、排気再循環ユニット30に供給された排気は、浮遊粒子状物質が取り除かれてディーゼルエンジン10へ戻される。ディーゼルエンジン10から排出される排気は、酸素の濃度が低いことからこれをディーゼルエンジン10に戻すことで燃焼温度が下がる。その結果、ディーゼルエンジン10から排出されるNOxの排出量を低減することができる。
【0052】
<排気再循環ユニット>
次に、本実施形態に係る排気再循環ユニット30について説明する。上述したように、排気再循環ユニット30は、ディーゼルエンジン10に排気を戻すユニットである。
図4に示すように、排気再循環ユニット30は、洗浄集じん装置(スクラバー)31と、廃水処理装置32と、EGRブロワ33と、調整バルブ36と、連結部37と、を有している。
【0053】
洗浄集じん装置31は、ディーゼルエンジン10の排気から浮遊粒子状物質を取り除く装置である。上述したように、大型船舶用のディーゼルエンジンの排気には、多量の浮遊粒子状物質が含まれるため、大型船舶に用いられる排気再循環ユニットには洗浄集じん装置が必要となる。洗浄集じん装置31は、排気から浮遊粒子状物質を取り除くために洗浄水を用いる。洗浄集じん装置31で使用された洗浄水は、スクラバー廃水として廃水処理装置32に排出される。
【0054】
廃水処理装置32は、洗浄集じん装置31から排出されたスクラバー廃水を処理する装置である。スクラバー廃水は、浮遊粒子状物質が固まった大量のばいじんが含まれるため、そのままでは船外に排水することができない。スクラバー廃水を船外に排水するのであれば、廃水処理装置32によってスクラバー廃水の濁度を所定の値以下に低下させる必要がある。なお、洗浄集じん装置31から排出されたスクラバー廃水には、粒径の小さなものから大きなものまで様々な粒径のばいじんが含まれる。また、廃水処理装置32は沈殿分離部40及び遠心分離部60を有しており、具体的な構成は第1実施形態で説明した通りである。
【0055】
EGRブロワ33は、洗浄集じん装置31を経た排気を昇圧して、昇圧した排気を掃気としてディーゼルエンジン10に戻す装置である。EGRブロワ33は、ブロワ34と、電動モータ35とを有している。ブロワ34は、電動モータ35により駆動される。洗浄集じん装置31によって浮遊粒子状物質が取り除かれた排気は、この駆動したブロワ34によって昇圧される。そして、EGRブロワ33(ブロワ34)によって昇圧された排気は、過給機20で圧縮された大気と混合されて、ディーゼルエンジン10へ供給される。
【0056】
調整バルブ36は、洗浄集じん装置31に供給された洗浄水の流量を調整し、ひいてはスクラバー廃水の温度を調整するバルブである。上述したように、洗浄集じん装置31では洗浄水により排気が洗浄されるが、その際に排水と洗浄水(スクラバー廃水)との間で熱交換が行われる。つまり、洗浄集じん装置31内において、洗浄水(スクラバー廃水)が、排気が有する熱によって加熱される。このとき、調整バルブ36により、洗浄水の流量を増やせばスクラバー廃水の上昇温度は小さくなり、洗浄水の流量を減らせばスクラバー廃水の上昇温度は大きくなる。このように、調整バルブ36を調整することで、加熱後のスクラバー廃水の温度を任意に設定することができる。なお、温度センサー(不図示)を例えば洗浄集じん装置31の下流に設置し、この温度センサーから取得したスクラバー廃水の温度に基づいて、調整バルブ36の開度が調整されるように構成してもよい。
【0057】
スクラバー廃水の温度が高ければ、廃水処理の能力が向上する傾向にあるが、表2等に示すように、少なくとも75゜C程度にまで加熱すれば、廃水処理装置32は十分高い能力を発揮することができる。よって、スクラバー廃水は75゜C以上に加熱するのが好ましい。なお、スクラバー廃水が蒸発してしまっては排気再循環ユニット30が成り立たなくなるため、実質的にスクラバー廃水の温度は100゜C未満に抑える必要がある。
【0058】
連結部37は、洗浄集じん装置31と廃水処理装置32を連結する部分である。連結部37は、配管のみで構成されていてもよいが、スクラバー廃水へ凝集剤を添加するためや、バッファの役割を果たすためのタンクを有していても良い。また、連結部37の外表面には連結部保温部52が取り付けられている。連結部37にタンクが含まれている場合は、このタンクにも連結部保温部52が取り付けられる。連結部保温部52は、装置保温部51と同様に、公知の断熱部材によって形成され、連結部37内のスクラバー廃水を保温することができる。なお、連結部保温部52は、二重構造となるように構成されていてもよく、スクラバー廃水に熱を加えることができるよう構成されていてもよい。このように、連結部37に連結部保温部52を取り付けることで、加熱装置2で加熱されたスクラバー廃水を所望の温度に維持したまま廃水処理装置32に供給することができる。
【0059】
以上が本実施形態に係る排気再循環ユニット30の説明である。第1実施形態で説明したように、スクラバー廃水からばいじんを分離して取り除く廃水処理装置を利用する場合、スクラバー廃水を加熱することで、その処理能力を向上させることができる。そして、本実施形態では、洗浄集じん装置31においてスクラバー廃水を所定温度以上に加熱し、加熱したスクラバー廃水を連結部保温部52によって保温しながら廃水処理装置32に供給し、高い温度を維持したまま廃水処理装置32でスクラバー廃水を処理している。そのため、非常に効率よくスクラバー廃水からばいじんを除去することができる。
【0060】
また、本実施形態の洗浄集じん装置31は、スクラバー廃水を加熱するものであるから、第1実施形態の加熱装置2に相当する。このように、洗浄集じん装置31が加熱装置2に相当するから、本実施形態に係る排気再循環ユニット30は、第1実施形態に係る廃水処理システム1を含んでいるといえる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、以上では廃水処理装置32が、沈殿分離部40と遠心分離部60を含む場合について説明したが、これに代えてフィルタを用いた分離部を用いても良い。スクラバー廃水の温度が上昇すると、ばいじんの凝集が促されるため、フィルタを用いた分離部であっても廃水処理の能力は向上する。