(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る型締装置について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施形態は本発明の型締装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る型締装置の正面図、
図2は本発明の一実施形態に係る型締装置の背面図、
図3は本発明の一実施形態の型締装置の斜視図、
図4は本発明の一実施形態の型締装置の平面図、
図5は本発明の一実施形態の型締装置に適用される圧受盤の要部の断面図、
図6は本発明の一実施形態の型締装置に適用されるトグルピン連結部分の要部の斜視図、
図7は本発明の一実施形態の型締装置に適用されるトグルピン連結部分の要部の断面図、
図8は本発明の一実施形態の型締装置に適用されるトグルピンの斜視図、
図9は本発明の一実施形態の型締装置に適用される可動型の斜視図、
図10は本発明の一実施形態の型締装置に適用される可動型の断面図である。
【0018】
(全体の概略構成)
図1乃至
図4において、射出成形機におけるトグル式の型締装置1は、機台2に位置決め固定された圧受盤10と、圧受盤10のに配置された駆動部20と、圧受盤10に配置されて駆動部20の駆動によって屈伸するトグル機構30と、圧受盤10と対面するように対向して機台2に固定された固定盤40と、固定盤40の四隅付近に位置して圧受盤10と固定盤40との間に架設された四本のタイバー50と、タイバー50に案内されるように貫通して圧受盤10と固定盤40との間で変位する可動盤60と、可動盤60に設けられて射出成形後の製品離型用のエジェクト部70と、を備えている。
【0019】
(圧受盤10の具体的な構成)
圧受盤10は、機台2に設けられたレール3の所定位置で停止されている。なお、圧受盤10の所定位置は、可動型4と固定型5(
図1にのみ仮想線で図示)とからなる金型のサイズ等に応じて決定され、型締め力の変更や金型交換の度にレール3に沿って進退動することで位置調整される。その際の圧受盤10の前進位置又は後退位置の限界は、位置スイッチ6,7を介して検出される。圧受盤10は、その四隅付近でタイバー50の一端51を支持している。本実施の形態においては、
図5に示すように、タイバー50の一端51を圧受盤10に貫通させた後、その一端51に形成されたネジ溝(図示せず)と圧受盤10の外側で螺合する調整ナット12により軸線方向に沿う位置決めがなされている。調整ナット12には、一端51の軸回りを包囲するように圧受盤10と圧接する内端面12aに環状接触部12bが一体に形成されている。なお、調整ナット12は、その外周には圧受盤10にネジ固定されるナット保持部材13が設けられ、その外端面12cには型厚調整装置を構成する小歯車14がネジ固定されている。
【0020】
(駆動部20の具体的な構成)
駆動部20は、圧受盤10の裏面に設けられた電動モータ等の駆動源21と、駆動源21の出力軸22に設けられた駆動プーリ23と、駆動プーリ23に掛け渡された無端状ベルトの回動移動によって回転する従動プーリ(共に図示せず)の回転によって回転するネジ軸24と、を備えている。ネジ軸24は、その先端を可動盤60に向けて突出させている。なお、この駆動部20は公知であるため、その具体的な構成等の説系は省略する。
【0021】
(トグル機構30の具体的な構成)
トグル機構30は、圧受盤10と可動盤60との間に屈伸可能に架設されて駆動部20の駆動にともなって屈伸運動することにより可動盤60を固定盤40に対して接近・離反させる。具体的には、トグル機構30は、ネジ軸24と螺合してネジ軸24の回転に連動して軸線方向に沿って進退動するクロスヘッド31と、クロスヘッド31から上下方向に独立して伸びる上下一対の作動リンク32と、一端が圧受盤10に軸支された上下に各一対(左右)の固定側リンクアーム33と、一端が可動盤60に軸支された上下に各一対(左右)の従動側リンクアーム34と、を備えている。
【0022】
作動リンク32は、その基端がクロスヘッド31に一体に接続され、その先端で固定側リンクアーム33の中途部を軸支している。
【0023】
固定側リンクアーム33は、平面視略Y字状とされ、その各一端は圧受盤10にトグルピン35を介して回動可能に軸支されている。また、固定側リンクアーム33の各他端には従動側リンクアーム34の一端を軸支している。なお、従動側リンクアーム34の一端は固定側リンクアーム33のY字状に分岐された間に位置している。
【0024】
従動側リンクアーム34の他端は可動盤60にトグルピン35を介して回動可能に軸支されている。本実施の形態においては、トグル機構30は、固定側リンクアーム33と従動側リンクアーム34とが屈曲状態から伸長状態へと変化したときに、上下に位置する各従動側リンクアーム34の先端は可動盤60の中心方向に向くように傾斜させ、その荷重を集中させるようにしている。
【0025】
トグルピン35は、圧受盤10と固定側リンクアーム33との連結、可動盤60と従動側リンクアーム34との連結、において実質的に同一の連結構造が採用されている。以下、トグルピン35による圧受盤10と固定側リンクアーム33との連結構造を説明する。
【0026】
図6及び
図7に示すように、圧受盤10の内側
(図示の如く可動盤60側)には、可動盤60に向かって突出する連結台部15が一体に上下一対で形成されている。連結台部15の突出端部には、トグルピン35が貫通する貫通穴15aが形成されている。連結台部15の突出端部には、その端面に開放して固定側リンクアーム33の各一端が挿入される一対の凹部15bが形成されている。連結台部15の突出端部には、その側面に段差部15cが形成されている。この段差部15cの側面側には雌ネジ穴15dが形成されている。
【0027】
トグルピン35は、
図8に示すように、その中央部35aの直径に対して、その両端部35bの径を切削加工等により小径としている。また、両端部35bには、その端面と周面とに跨って切り欠いた切欠部35cが形成されている。また、中央部35aの両端寄りの凹部15bに露出している部分では、固定側リンクアーム33の一端を軸支している。なお、固定側リンクアーム33の一端とトグルピン35との間には、例えば、カーボンブッシュ36が介在されている。また、トグルピン35は、固定プレート37をボルト38で連結台部15に固定することで抜け止め及び回り止め状態で連結台部15に固定される。本実施の形態では、トグルピン35は、貫通穴15aを貫通させ、
図6に示すように、その切欠部35cを段差部15cに一致させる。この状態で、切欠部35cと段差部15cとに固定プレート37と跨らせ、ボルト38を雌ネジ穴15dに螺合する。これにより、抜け止め及び回り止め状態で連結台部15にトグルピン35を固定することができる。
【0028】
中央部35aの直径は貫通穴15aの内径と同じとされている。したがって、両端部35bと貫通穴15aとの間には、
図7に示すように、その半径差分の隙間Pが発生する。ここで、両端部35bにおける小径部分の軸線方向の長さは、凹部15bよりも外側の連結台部15の軸線方向の長さ以上とされている。これにより、トグルピン35と圧受盤10とは、トグルピン35の中央部35aのうち、小径部とされた両端部35bよりもさらに中央寄り部分、即ち、左右一対の固定側リンクアーム33で挟まれた部分の連結台部15でのみ接している。
【0029】
(固定盤40の具体的な構成)
固定盤40は、機台2に固定されており、その位置は型締装置1の基準となるように調整不可となっている。固定盤40は、金型支持部41の表面で固定型5を支持する。また、固定盤40の中心には、射出ノズル8の先端が臨むノズル挿入穴42(
図3参照)が貫通されており、射出ノズル8を固定盤40の裏面側から挿入することで固定型5にノズルタッチする。
【0030】
上述した可動型4と固定型5とは、金型キャビティを有する金型を構成する。射出ノズル8は、固定盤40に対して進退動可能とされ、固定盤40にまで前進して固定型5にノズルタッチすることで金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填する。
【0031】
(タイバー50の具体的な構成)
タイバー50は、一端51は上述したうように圧受盤10に調整可能に支持され、他端52は可動盤60を貫通した状態で固定盤40に固定されている。この際、他端52の先端は、固定盤40を貫通した状態でナット43により固定されている。
【0032】
また、各タイバー50には、その一部の径を他の径よりも小径としたくびれ部53が形成されている。くびれ部53は、圧受盤10と可動盤60との間に位置しており、本実施の形態では、可動盤60の可動範囲よりも圧受盤10に寄った範囲に形成されている。
【0033】
圧受盤10と可動盤60との間には、タイバー50と平行に安全棒54が設けられている。
【0034】
安全棒54は、開扉時で可動盤60の型閉移動を阻止するもので、可動盤60が固定盤40に接近する方向(トグル機構30が伸張)を前方、可動盤60が固定盤40から離反する方向(トグル機構30が屈曲)を後方、としたとき、前後両方が軸線と直交した段差面を備えた両端閉凹部54aと、前方側が前方に向けて拡開するように傾斜した段差面を備えかつ後方側が軸線と直交した段差面を備えた片側閉凹部54bと、が形成されている。
【0035】
安全棒54の先端54cはねじ軸構造となっており、可動盤60に係合している。安全棒54の後端54dは、圧受盤10に設けられた係止装置55に支持されている。なお、この安全棒54と係止装置55の具体的な構成及び作用は公知(例えば、特許第4315446号等)の技術を適用しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0036】
(可動盤60の具体的な構成)
可動盤60は、機台2にスライド変位可能に設けられており、本実施の形態では、レール3に沿って変位するスライダ9を介して機台2に支持されている。可動盤60は、固定盤40の金型支持部41と対向する金型支持部61で可動型4を支持する。可動盤60には、
図9及び
図10に示すように、金型支持部61に開口するエジェクト貫通穴62が形成されている。可動盤60には、その四隅にタイバー50の貫通穴63が形成されている。可動盤60の裏面側
(圧受盤10側)には、後述するエジェクト部70の作動ユニット77が挿入される挿入穴64と、挿入穴64の側方に位置して作動ユニット77が固定される取付座部65と、エジェクト貫通穴62と挿入穴64との間に作動ユニット77の収納空間66を形成する上壁部67及び下壁部68と、圧受盤10に向かって突出するように上壁部67及び下壁部68と一体に形成された連結台部69と、を備えている。なお、スライダ9には、レール3の敷設方向に沿う可動盤60の位置調整及び高さ調整が可能な公知の構成のものが用いられている。
【0037】
取付座部65は、挿入穴64の両側を包囲する基部65aと、基部65aの上下から圧受盤10に向かって突出する座部65bと、を一体に備え、正面視略コ字形状とされている。基部65aと座部65bとは、可動盤60の裏面(挿入穴64の圧受盤10側の開口端面と面一)よりも突き出すように一体に形成されている。この際、トグル機構30の他端支持部としての連結台部69と取付座部65とは、可動盤60としては一体に形成されているが、機能的には接続されないように
図9と図10に示すように非連続状態にして独立した突出構造により配置形成されている。これにより、トグル機構30が伸張した際の加圧力
(伸長するトグル機構から可動盤側へ加える荷重)による連結台部69の開きを抑制する補強構造を兼用している。
【0038】
上壁部67及び下壁部68は、金型支持部61から裏面側に向かって連結台部69と連続する部分において外側に向かって厚肉となるように傾斜する厚肉傾斜部67a,68aが形成されている
(図10に示すように、厚肉傾斜部67aにあっては、上壁部67での連結台部69と連結する部分において上側に向かって厚肉となるように傾斜しており、厚肉傾斜部68aにあっては、下壁部68での連結台部69と連結する部分において下側に向かって厚肉となるように傾斜している)。上壁部67及び下壁部68の上面67b及び下面68bは、金型支持部61の外周よりも内側に位置した凹陥部67c,68cの底面となっている。その底面(上面67b及び下面68b)は、トグルピン35が貫通する貫通穴69aの軸心Qを含む同一平面上(
図10の二点鎖線参照)に位置している。また、上壁部67及び下壁部68の各内側と金型支持部61の内面との間には、金型支持部61の中心側から拡開方向に傾斜した厚肉傾斜部67d,68dが形成されている。
【0039】
連結台部69の突出端部には、トグルピン35が貫通する貫通穴69aが形成されている。連結台部69の突出端部には、その端面に開放して固定側リンクアーム33の各一端が挿入される一対の凹部69bが形成されている。連結台部69の突出端部には、その側面に段差部69cが形成されている。この段差部69cの側面側には雌ネジ穴69dが形成されている。なお、連結台部69におけるトグルピン35の支持構造は連結台部15と基本的に同一である。
【0040】
(エジェクト部70の具体的な構成)
エジェクト部70は、可動盤60の裏面
(圧受盤側)に設けたエジェクトモータ71と、エジェクトモータ71の出力軸72に設けられた駆動プーリ73と、この駆動プーリ73と可動盤60の中央に設けられた従動プーリ74とに掛け渡された無端ベルト7
4と、従動プーリ74の回転により進退動するエジェクトピン76を有する作動ユニット77と、を備えている。
【0041】
エジェクト工程では、エジェクト部70が駆動制御され、エジェクトモータ71の作動によりエジェクトピン76が進出し、金型キャビティ内の成形品に対する突き出しが行われる。
【0042】
(具体的な作用)
上記の構成において、駆動源21が駆動すると、ネジ軸24のネジ溝に案内されてクロスヘッド31が進出すると同時にクロスヘッド31と一体に作動リンク32が進出する。作動リンク32が進出すると、固定側リンクアーム33と従動側リンクアーム34とが屈曲状態から伸張状態へと変化する。
【0043】
固定側リンクアーム33と従動側リンクアーム34とが伸張すると、可動盤60がタイバー50に案内されて固定盤40に向かって変位し、可動型4と固定型5とが型締めされる。
【0044】
ところで、トグル機構30を伸長作動させた際の型締力は、圧受盤10のトグルピン35の両端部35b及び可動盤60のトグルピン35の両端部35bの何れにおいても、隙間Pの存在により、この部分(両端部35b)での荷重伝達は行われず、トグルピン35の中央部35aでのみ集中的に荷重伝達を行うことができる。
【0045】
したがって、トグル機構30の伸張時の型締力は、例えば、従動側リンクアーム34からの荷重を可動盤60のトグルピン35の両端部35bから中央部35aに集中させた状態で可動盤60へと接続(伝達)させるとともに、トグルピン35の両端部35bのバランスが崩れていても隙間Pの存在によりトグルピン35の両端部35bでの経年劣化を発生し難くすることができ、トグル機構30の耐久性をも向上することができる。
【0046】
この際、トグル機構30は、固定側リンクアーム33と従動側リンクアーム34とが屈曲状態から伸長状態へと変化したときに、上下に位置する各従動側リンクアーム34の先端が可動盤60の中心方向に向くように傾斜していることから、連結台部69の先端側には、互いに押し広がる方向に荷重が加わる。
【0047】
上述したように、連結台部69の背面側
(固定盤側)には、金型支持部61
の裏面側
(圧受盤側)に向かって連結台部69と連続する部分において外側に向かって厚肉となるように傾斜する厚肉傾斜部67a,68aが形成され
て、凹陥部67c,68cを形成して
おり、これにより可動盤60の軽量化に貢献しつつ、上述し
た荷重を厚肉傾斜部67a,68aで受けることができ、耐荷重性を確保することができる。
【0048】
また、トグルピン35の両端部35bは、固定プレート37によって回り止め及び抜け止め状態で圧受盤10並びに可動盤60に支持されていることから、トグルピン35のしなり(湾曲)を許容できる隙間Pを確保することができる。
【0049】
また、トグル機構30を伸長作動させた際の型締力は、タイバー50の一端51を調整ナット12で、タイバー50の他端52をナット43で、それぞれ固定したことにより、四本のタイバー50のバランスを容易に確保することができる。
【0050】
この際、タイバー50の一端51を調整ナット12で固定すると共に、その内端面12aにタイバー50の軸回りを包囲するように設けた環状接触部12bを圧受盤10に圧接させることにより、タイバー50の一端51側の面圧を確保して緩み止め効果を向上することができ、タイバー50の他端52側のテンションを固定盤40の四隅全体で均一化することができる。
【0051】
さらに、タイバー50には、可動盤60の可動範囲よりも圧受盤10に寄った範囲にくびれ部53が形成されている。タイバー50は、その一端51は圧受盤10に支持され、その他端52は固定盤40に固定されている。このため、トグル機構30を伸張させて可動盤60を固定盤40に向けて加圧した型締め状態では、固定盤40からの反力がタイバー50に発生する。
【0052】
ここで、外乱(例えば、温度が1℃上昇)に対するタイバー50の伸びを0.01mmとし、くびれ部53が存在しない同一直径のタイバー50(シャフト径40Φ)を用いて15tの型締力を発生させた場合のタイバー50の伸びは0.146mmであった。
【0053】
したがって、型締力が受ける外乱の感度は、
(0.01/0.146)*100≒7%
となる。
【0054】
一方、同じシャフト径40Φの一部にシャフト径30Φのくびれ部53を形成したタイバー50を用いて15tの型締力を発生させた場合のタイバー50の伸びは0.183mmであった。
【0055】
したがって、型締力が受ける外乱の感度は、
(0.01/0.183)*100≒5%
となり、同一径のタイバー50よりも感度を鈍感にすることができる。これは、15tクラス(20t以下)の比較的小型な型締装置1では、外乱の影響を受け易い(大きい)とされていたが、くびれ部53を形成することによって外乱に対する感度を鈍感とすることで影響を受け難くすることができた。