特許第5798097号(P5798097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798097
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】旋回式建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/12 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   E02F9/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-187467(P2012-187467)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-43733(P2014-43733A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】京増 泰範
(72)【発明者】
【氏名】中村 正雄
(72)【発明者】
【氏名】生井 喜雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−269925(JP,A)
【文献】 特開2009−202869(JP,A)
【文献】 特開2010−196408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/12
E02F 9/08
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、底板と該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設され前側に前記作業装置が取付けられる左縦板および右縦板とを有する旋回フレームと、該旋回フレームの旋回中心に位置して前記底板上に取付けられ前記下部走行体と前記上部旋回体との間で圧油を流通させるセンタジョイントと、該センタジョイントよりも前側に位置し前記左縦板と前記右縦板との間で前記底板上に取付けられ前記旋回輪を介して前記上部旋回体を旋回するときの駆動源となる旋回装置とを備えてなる旋回式建設機械において、
前記底板のうち前記旋回装置が取付けられる旋回装置取付部は、前記底板のうち前記センタジョイントが取付けられるセンタジョイント取付部よりも板厚方向の厚さ寸法が大きな厚肉部として構成し、
前記厚肉部の左端部は、前記左縦板に固着し、前記厚肉部の右端部は、前記右縦板に固着する構成としたことを特徴とする旋回式建設機械。
【請求項2】
下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、底板と該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設され前側に前記作業装置が取付けられる左縦板および右縦板とを有する旋回フレームと、該旋回フレームの旋回中心に位置して前記底板上に取付けられ前記下部走行体と前記上部旋回体との間で圧油を流通させるセンタジョイントと、該センタジョイントよりも前側に位置し前記左縦板と前記右縦板との間で前記底板上に取付けられ前記旋回輪を介して前記上部旋回体を旋回するときの駆動源となる旋回装置とを備えてなる旋回式建設機械において、
前記底板の上面であって前記旋回装置が取付けられる部位には、前記左縦板と前記右縦板との間に位置して補強板を設け、該補強板の左端部を前記左縦板に固着すると共に右端部を前記右縦板に固着する構成とし、
前記底板と前記補強板とにより板厚方向に形成された厚肉部を前記旋回装置が取付けられる旋回装置取付部としたことを特徴とする旋回式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設作業に用いて好適な旋回式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。また、上部旋回体は、下部走行体上に旋回可能に支持された旋回フレームと、該旋回フレームの前側に設けられたキャブと、前記旋回フレームの後側に搭載されたエンジンと、前記作業装置との重量バランスをとるために該エンジンの後側に位置して旋回フレームの後端部に取付けられたカウンタウエイト等とにより構成されている。
【0003】
さらに、上部旋回体のベースとなる旋回フレームは、平板状の底板と、該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設され、前側に作業装置が取付けられる左縦板と右縦板とを含んで構成されている。
【0004】
そして、底板には、上部旋回体を旋回するときの駆動源となる旋回装置が設けられ、該旋回装置を駆動することにより、上部旋回体は、旋回輪を介して下部走行体上で旋回する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−158252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、作業装置によって掘削作業等を行った場合、その掘削作業での反力が大きな荷重となって左縦板および右縦板を伝播して底板に作用する。また、作業装置を持ち上げた状態で作業を行った場合にも、作業装置が揺れることによって各縦板を捻るように荷重が作用し、その荷重が底板に伝播する。そのため、底板は、このような掘削反力等に充分に耐え得る厚み(板厚)を有している。
【0007】
ここで、旋回中心からカウンタウエイトの後面までの距離を小さくした小旋回型油圧ショベルでは、旋回フレームの後部側にエンジン、油圧ポンプ等の種々の機器が搭載されており、旋回フレームの後部側には充分な機器収容スペースがない。このため、旋回装置を、センタジョイントよりも前側に位置し左縦板と右縦板との間で底板上に取付ける構成としている。
【0008】
ところで、近年では、油圧ショベルに搭載されるエンジンの排気ガス規制対応のために種々の機器が追加されることにより、全体としてエンジンが大型化する傾向にある。このため、旋回フレーム上に充分な機器収容スペースが確保できない小旋回型油圧ショベルでは、旋回装置の取付位置を底板の前部側に移動させる必要がある。
【0009】
しかし、底板のうち旋回装置が取付けられる旋回装置取付部を従来よりも前部側に移動させた場合には、旋回装置取付部が、左,右の縦板とブームとの連結部、および左,右の縦板とブームシリンダとの連結部に接近するため、作業装置が掘削作業を行うときの掘削反力が、左,右の縦板を通じて底板の旋回装置取付部に伝わりやすくなる。しかも、エンジンが大型化して掘削力が大きくなるため、底板の旋回装置取付部に伝わる掘削反力そのものも大きくなる。
【0010】
この結果、掘削作業時には、底板の旋回装置取付部に対して常に大きな掘削反力が作用するようになり、旋回装置取付部が歪みを生じることにより、旋回装置の安定した作動が損なわれるという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、底板の旋回装置取付部が歪むのを抑え、旋回装置を安定的に作動させることができるようにした旋回式建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため本発明は、下部走行体と、該下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、底板と該底板上に前,後方向に延びると共に左,右方向に間隔をもって立設され前側に前記作業装置が取付けられる左縦板および右縦板とを有する旋回フレームと、該旋回フレームの旋回中心に位置して前記底板上に取付けられ前記下部走行体と前記上部旋回体との間で圧油を流通させるセンタジョイントと、該センタジョイントよりも前側に位置し前記左縦板と前記右縦板との間で前記底板上に取付けられ前記旋回輪を介して前記上部旋回体を旋回するときの駆動源となる旋回装置とを備えてなる旋回式建設機械に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記底板のうち前記旋回装置が取付けられる旋回装置取付部は、前記底板のうち前記センタジョイントが取付けられるセンタジョイント取付部よりも板厚方向の厚さ寸法が大きな厚肉部として構成し、前記厚肉部の左端部は、前記左縦板に固着し、前記厚肉部の右端部は、前記右縦板に固着する構成としたことにある。
【0014】
一方、請求項2の発明が採用する構成の特徴は、前記底板の上面であって前記旋回装置が取付けられる部位には、前記左縦板と前記右縦板との間に位置して補強板を設け、該補強板の左端部を前記左縦板に固着すると共に右端部を前記右縦板に固着する構成とし、前記底板と前記補強板とにより板厚方向に形成された厚肉部を前記旋回装置が取付けられる旋回装置取付部とする構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、旋回フレームの底板のうち、旋回装置が取付けられる旋回装置取付部の厚さ寸法を他の部位よりも厚肉に形成し、左,右方向の両端側をそれぞれ左縦板と右縦板とに接続する構成としていることから、底板の旋回装置取付部は、掘削反力に充分耐え得る剛性を保持することができる。従って、底板の前部側に大きな掘削反力が作用したとしても、旋回装置取付部が歪みを生じるのを抑え、旋回装置を常に安定して作動させることができるので、建設機械の安定性、信頼性を向上させることができる。
【0016】
しかも、底板のうち旋回装置取付部を厚肉部とすることにより、底板の重量が大きく増大することなく、底板のうち補強が必要な部位のみを効率的に強化することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、左縦板と右縦板との間で底板の上面に補強板を固着し、この補強板の左端部を左縦板に固着すると共に、右端部を右縦板に固着するだけで、簡単かつ効率的に旋回フレーム(底板)の旋回装置取付部を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
図2】旋回フレーム、下部走行体を示す平面図である。
図3】左,右の縦板から前板を取り除いた状態で、底板、補強板、旋回装置取付部、センタジョイント取付部を示す部分拡大図である。
図4】底板、左,右の縦板、前板、補強板等を図2中の矢示IV−IV方向からみた左側面図である。
図5】底板、補強板、右縦板、前板、旋回装置、センタジョイント等を図2中の矢示V−V方向からみた断面図である。
図6】底板、補強板、右縦板、前板、旋回装置取付部、センタジョイント取付部等を斜め後側からみた拡大斜視図である。
図7】本発明の第2の実施の形態による底板、左,右の縦板、前板等を示す図4と同様の左側面図である。
図8】底板、右縦板、前板、旋回装置、センタジョイント等を示す図5と同様の断面図である。
図9】底板、右縦板、前板を斜め後側からみた図6と同様の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る旋回式建設機械の実施の形態を、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示し、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた後述する作業装置8とにより大略構成され、作業装置8を用いて土砂の掘削作業等を行うものである。
【0021】
ここで、下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム2Aを有し、該トラックフレーム2Aの上端側には円筒状の支持筒体2Bが設けられている。そして、下部走行体2の支持筒体2Bには、後述する旋回輪3の内輪3Aが取付けられる構成となっている。
【0022】
3は下部走行体2と後述する上部旋回体4との間に設けられた旋回輪を示し、該旋回輪3は、下部走行体2の支持筒体2B上に固定された内輪3Aと、後述する旋回フレーム11の下面側に固定された外輪3Bと、内輪3Aと外輪3Bとの間に設けられた多数の鋼球3C(1個のみ図示)とにより構成されている。また、内輪3Aの内周側には、全周に亘って内歯3Dが形成されている。そして、後述の旋回装置28が作動して旋回フレーム11に固定された外輪3Bが内輪3Aの周囲を回転することにより、上部旋回体4が下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
【0023】
一方、上部旋回体4は、図1および図2に示すように、ベースとなる後述の旋回フレーム11と、該旋回フレーム11の前側に設けられた後述する旋回装置28と、旋回フレーム11の旋回中心に設けられた後述のセンタジョイント27と、旋回フレーム11の前部左側に設けられ、運転室を画成するキャブ5と、旋回フレーム11の後端部に取付けられ、作業装置8との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、該カウンタウエイト6の前側に配設され、内部にエンジン、油圧ポンプ、熱交換装置等の機器類(いずれも図示せず)を収容する建屋カバー7とにより大略構成されている。
【0024】
8は上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置を示し、該作業装置8は、後述する旋回フレーム11に回動可能に取付けられたブーム8Aと、該ブーム8Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム8Bと、該アーム8Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット8Cと、ブーム8Aを駆動する2本のブームシリンダ8Dと、アーム8Bを駆動するアームシリンダ8Eと、バケット8Cを駆動するバケットシリンダ8Fとにより構成されている。
【0025】
ここで、ブーム8Aのフート部(基端部)は、後述する左縦板14のブーム取付部14Cと、右縦板15のブーム取付部15Cと、前板16の左,右のブーム取付ブラケット17とにピン結合されることにより、旋回フレーム11を構成する左縦板14、右縦板15と、前板16とによって支持されている。
【0026】
次に、11は本実施の形態による油圧ショベル1の旋回フレームを示している。この旋回フレーム11は、図2および図3に示すように、左,右方向の中央部に位置し前,後方向に延びる後述のセンタフレーム12と、センタフレーム12の左側に配置され前,後方向に延びる後述の左サイドフレーム23と、センタフレーム12の右側に配置され前,後方向に延びる後述の右サイドフレーム25とにより大略構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0027】
12は旋回フレーム11の中央部分を構成するセンタフレームで、該センタフレーム12は、前,後方向に延びる底板13と、該底板13上に前,後方向に延びると共に左,右方向に一定の間隔をもって立設された左縦板14、右縦板15と、底板13の前側に位置して左縦板14と右縦板15との間を連結する前板16と、後述する補強板21とにより大略構成されている。
【0028】
13はセンタフレーム12のベースとなる底板を示し、該底板13は、上面13Aと下面13Bとに直交する方向(板厚方向)の厚さ寸法(板厚)Aをもった厚肉な鋼板等を用いて平板状に形成されている。そして、底板13には、旋回フレーム11の旋回中心O上に後述のセンタジョイント27を取付けるためのセンタジョイント取付部13Cが設けられ、該センタジョイント取付部13Cには、上,下方向に貫通する取付孔13Dが設けられている。また、センタジョイント取付部13Cよりも前側で左縦板14と右縦板15との間には、後述する補強板21が設けられている。
【0029】
14は底板13の左端側に位置する左縦板を示し、該左縦板14は、例えば鋼板等を用いて前,後方向に延びる平板状に形成され、底板13の上面13Aにほぼ垂直に立設されている。そして、左縦板14は、前,後方向の中央部が上側に突出した山形状をなし、左縦板14の上端側には、左縦板14の内側面14Aから外側面14Bに向けて貫通する貫通孔を有し、ブーム8Aのフート部が取付けられるブーム取付部14Cが設けられている。また、これらブーム取付部14Cよりも下側に位置して前側に突出した左縦板14の前端側には、左縦板14の内側面14Aから外側面14Bに向けて貫通する貫通孔を有し、ブームシリンダ8Dの一端側(ボトム側)が取付けられるブームシリンダ取付部14Dが設けられている。
【0030】
一方、15は左縦板14と左,右方向に一定の間隔を保った状態で対面する右縦板を示し、該右縦板15も左縦板14と同様に、例えば鋼板等を用いて前,後方向に延びる平板状に形成され、底板13の右端側に位置して該底板13の上面13Aにほぼ垂直に立設されている。そして、右縦板15は、前,後方向の中央部が上側に突出した山形状をなし、右縦板15の上端側には、右縦板15の内側面15Aから外側面15Bに向けて貫通する貫通孔を有し、ブーム8Aのフート部が取付けられるブーム取付部15Cが設けられている。また、これらブーム取付部15Cよりも下側に位置して前側に突出した右縦板15の前端側には、右縦板15の内側面15Aから外側面15Bに向けて貫通する貫通孔を有し、ブームシリンダ8Dの一端側(ボトム側)が取付けられるブームシリンダ取付部15Dが設けられている。そして、左縦板14と右縦板15との後端側には、カウンタウエイト6が取付けられ、該カウンタウエイト6よりも前側には、エンジン、油圧ポンプ(いずれも図示せず)が搭載される構成となっている。
【0031】
16は底板13の前側に位置して左縦板14と右縦板15との間を連結する前板を示し、該前板16は、例えば鋼板等を用いて強度部材として形成され、左縦板14および右縦板15と共に作業装置8を支持するものである。ここで、前板16は、例えば鋼板材に曲げ加工を施すことにより、前,後方向の複数個所で折曲げられた多角多面板として形成され、後述する底板13上に固着された補強板21から後斜め上向きに延びる前面部16Aと、該前面部16Aの頂部(上端部)から後斜め下向きに延びる後面部16Bとにより、全体として山形状に形成されている。
【0032】
この場合、前板16の前面部16Aは、左縦板14に設けられたブームシリンダ取付部14Dおよび右縦板15に設けられたブームシリンダ取付部15Dの後側に位置し、後述する補強板21の上面21Aから鉛直方向に立上った短尺な立上り部16A1と、該立上り部16A1の上端から後側に傾斜しつつ斜め上方に延びた下側傾斜部16A2と、該下側傾斜部16A2の上端からさらに後側に傾斜しつつ斜め上方に延びた上側傾斜部16A3とにより形成されている。一方、前板16の後面部16Bは、前面部16A(上側傾斜部16A3)の頂部から後方に向けて斜め下向きに延びている。
【0033】
そして、前板16は、前面部16A(立上り部16A1)の下端縁部が後述する補強板21の上面21Aに溶接等の手段を用いて固着され、前面部16Aと後面部16Bの左側端縁部が左縦板14の内側面14Aに溶接手段を用いて固着され、前面部16Aと後面部16Bの右側端縁部が右縦板15の内側面15Aに溶接手段を用いて固着されることにより、後述する補強板21と左縦板14および右縦板15とに接合されている。
【0034】
17は前板16の前面部16Aに設けられた左,右のブーム取付ブラケットで、該各ブーム取付ブラケット17は、前面部16Aの上側傾斜部16A3に溶接等の手段を用いて固着されている。そして、左側のブーム取付ブラケット17は、左縦板14に設けられたブーム取付部14Cに隣接して配置され、右側のブーム取付ブラケット17は、右縦板15に設けられたブーム取付部15Cに隣接して配置されている。これにより、左,右の縦板14,15のブーム取付部14C,15Cと、前板16に設けられた左,右のブーム取付ブラケット17とにより作業装置8のブーム8Aを支持する構成となっている。
【0035】
18はブーム取付ブラケット17よりも下側に位置して前板16に設けられた左,右のシリンダ取付ブラケットを示している。ここで、左側のシリンダ取付ブラケット18は、左縦板14に設けられたブームシリンダ取付部14Dと一定の間隔をもって対面した状態で、前面部16Aの立上り部16A1と下側傾斜部16A2、および後述する補強板21の上面21Aに溶接されている。一方、右側のシリンダ取付ブラケット18は、右縦板15に設けられたブームシリンダ取付部15Dと一定の間隔をもって対面した状態で、前面部16Aの立上り部16A1と下側傾斜部16A2、および後述する補強板21の上面21Aに溶接されている。そして、左,右の縦板14,15にそれぞれ設けられたブームシリンダ取付部14D,15Dと、前板16に設けられた左,右のシリンダ取付ブラケット18とにより作業装置8のブームシリンダ8Dを支持する構成となっている。
【0036】
19は前板16の前面部16Aに設けられた機器挿通孔を示し、該機器挿通孔19は、前板16の前面部16Aのうち、下側傾斜部16A2と上側傾斜部16A3とに亘る範囲に設けられている。そして、機器挿通孔19の下側には、後述する旋回装置28が配置される構成となっており、機器挿通孔19を通じて底板13に対する旋回装置28の取付け作業および取外し作業をすることができる。また、機器挿通孔19は、旋回装置28に対するメンテナンス作業を行うときの作業スペースを確保することができるものとなっている。
【0037】
20は機器挿通孔19よりも下側に位置して前板16の前面部16Aに設けられた開口部を示し、該開口部20は、前板16の前面部16Aのうち、立上り部16A1と下側傾斜部16A2とに亘る範囲に設けられている。そして、開口部20は、作業装置8を構成するブームシリンダ8D、アームシリンダ8E、バケットシリンダ8F等に圧油を供給する複数の油圧ホース(図示せず)が挿通されるものである。
【0038】
次に、21は左縦板14と右縦板15との間に位置して底板13上に設けられた補強板を示している。該補強板21は、鋼板等を用いて四角形な平板として形成されている。即ち、補強板21は、上面21Aと下面21Bとに直交する方向(板厚方向)の厚さ寸法(板厚)Bを有すると共に、前端部21C、後端部21D、左端部21E、右端部21Fをもった平板状に形成されている。そして、補強板21の前端部21Cは、底板13の前端側で左縦板14の内側面14Aから右縦板15の内側面15Aに亘って溶接された前端溶接部21Gによって底板13に固着され、後端部21Dは、底板13のセンタジョイント取付部13Cの前側で左縦板14の内側面14Aから右縦板15の内側面15Aに亘って溶接された後端溶接部21Hによって底板13に固着されている。一方、補強板21の左端部21Eは、左縦板14の内側面14Aに前,後方向に亘って溶接された左端溶接部21Jによって左縦板14に固着されると共に、右端部21Fは、右縦板15の内側面15Aに前,後方向に亘って溶接された右端溶接部21Kによって右縦板15に固着されている。即ち、図3に示すように、平面視において補強板21の四辺は、それぞれ底板13または左,右の縦板14,15に隙間なく溶接されている。
【0039】
これにより、底板13のうち補強板21が固着された部位は、底板13の上,下方向の厚さ寸法Aと補強板21の上,下方向の厚さ寸法Bとを合算した厚さ寸法(板厚)を有する厚肉部となり、後述する旋回装置28が取付けられる旋回装置取付部22として形成されている。ここで、旋回装置取付部22の中央部には、底板13と補強板21とを上,下方向に貫通する貫通孔22Aが設けられている。そして、貫通孔22Aの上面側には、後述の旋回装置28が取付けられ旋回装置28の出力軸28Aが貫通孔22Aを通じて旋回輪3側に突出する構成となっている。即ち、補強板21は、底板13上でセンタジョイント取付部13Cよりも前側に位置して左,右の縦板14,15間に固着されることにより、後述する旋回装置28が取付けられる旋回装置取付部22を構成している。
【0040】
このように、底板13に補強板21を固着することにより、底板13の前端側に設けられる旋回装置取付部22を厚肉部として形成し、かつ補強板21の左端部21Eを左縦板14に固着すると共に、補強板21の右端部21Fを右縦板15に固着することにより、作業装置8を用いた掘削作業時に底板13の前側に大きな掘削反力が作用したとしても、旋回装置取付部22が歪みを生じるのを抑えることができる構成となっている。
【0041】
23はセンタフレーム12の左側に配置された左サイドフレームを示し、該左サイドフレーム23は、例えば断面D字状をなすD型フレームを用いて形成され、センタフレーム12に沿って前,後方向に延びている。そして、左サイドフレーム23は、底板13および左縦板14から左,右方向に張出す複数の左張出しビーム24に接合されることにより、センタフレーム12に固着されている。
【0042】
25はセンタフレーム12の右側に配置された右サイドフレームを示し、該右サイドフレーム25は、左サイドフレーム23と同様のD型フレームを用いて形成され、センタフレーム12に沿って前,後方向に延びている。そして、右サイドフレーム25は、底板13および右縦板15から左,右方向に張出す複数の右張出しビーム26に接合されることにより、センタフレーム12に固着されている。
【0043】
27は旋回フレーム11の旋回中心O上に設けられたセンタジョイントを示し、該センタジョイント27は、下部走行体2と上部旋回体4との間で圧油を流通させるものである。このセンタジョイント27は、底板13に設けられたセンタジョイント取付部13Cの取付孔13D内に配置され、ボルト等を用いて底板13上に取付けられている。そして、センタジョイント27の下部走行体2側には、下部走行体2に設けられた走行モータ(図示せず)に圧油を給排する油圧ホース等(図示せず)が接続され、センタジョイント27の上部旋回体4側には、油圧ホース(図示せず)を介して油圧源(図示せず)に接続されている。
【0044】
28はセンタジョイント27よりも前側に位置して左縦板14と右縦板15との間に設けられた旋回装置を示し、該旋回装置28は、底板13の旋回装置取付部22に配置され、上部旋回体4を旋回するときの駆動源となるものである。そして、旋回装置28は、複数のボルト29により補強板21の上面21Aに取付けられ、旋回装置28の出力軸28Aは、旋回装置取付部22の貫通孔22Aを通じて旋回輪3側に突出している。また、出力軸28Aの下端側に設けられたピニオン30は、旋回輪3の内歯3Dに噛合している。
【0045】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き旋回フレーム11を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって所望の作業場所まで自走する。そして、油圧ショベル1は、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回させつつ作業装置8を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0046】
ここで、作業装置8を用いて土砂の掘削作業等を行っているときには、旋回フレーム11のうち作業装置8を支持する左縦板14、右縦板15等が設けられた底板13の前側に対し、掘削反力によって大きな荷重が作用する。
【0047】
これに対し、本実施の形態による油圧ショベル1は、旋回フレーム11を構成する底板13の前端側で左縦板14と右縦板15との間に補強板21を固着することにより、底板13の板厚Aと補強板21の板厚Bとを重畳した厚肉部からなる旋回装置取付部22を形成し、かつ補強板21の左端部21Eを左縦板14の内側面14Aに固着すると共に、補強板21の右端部21Fを右縦板15の内側面15Aに固着する構成としている。これにより、底板13の前端側の板厚が増大することに加え、底板13と左縦板14との接合強度、底板13と右縦板15との接合強度を高めることができる。この結果、底板13の前側に大きな掘削反力が作用した場合でも、旋回装置取付部22およびその近傍に歪みが生じるのを防止することができる。従って、旋回装置取付部22に取付けられる旋回装置28の作動を長期に亘って安定させることができ、油圧ショベル1の信頼性を高めることができる。
【0048】
しかも、底板13のうち補強板21を固着した旋回装置取付部22のみを厚肉部としたので、底板13の重量が大きく増大することがなく、補強が必要な旋回装置取付部22の強度を効果的に高めることができる。
【0049】
次に、図7ないし図9は、本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、厚肉部を底板と補強板とによる二重構造とせず、底板を薄肉部と厚肉部とにより一体形成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0050】
31はセンタフレーム12のベースとなる底板を示し、該底板31は、上述した第1の実施の形態による底板13に代えて本実施の形態に用いたものである。ここで、底板31は、後述する薄肉部32と旋回装置取付部33とにより段差状に構成され、旋回装置取付部33の上,下方向の厚さ寸法Cと等しい板厚を有する平板状の鋼板材にフライス加工等を施すことにより形成されている。
【0051】
32は底板31を構成する薄肉部を示し、該薄肉部32は、底板31のうち後述の旋回装置取付部33を除いた部位をフライス加工等の手段を用いて肉削ぎすることにより、上,下方向の厚さ寸法Dを有する薄肉な部位として形成されている。ここで、薄肉部32の後端側には、センタジョイント取付部32Aが設けられ、該センタジョイント取付部32Aには、センタジョイント27を取付けるための取付孔32Bが上,下方向に穿設されている。また、薄肉部32の左端側には、左縦板14が前,後方向に延びるように立設して設けられ、右端側には、左縦板14と所定の間隔をもって対面する右縦板15が前,後方向に延びるように立設して設けられている。
【0052】
33はセンタジョイント取付部32Aよりも前側に位置して左縦板14と右縦板15との間に設けられた旋回装置取付部を示し、該旋回装置取付部33は、底板31のうちフライス加工等による肉削ぎを行わない厚肉部として形成されている。従って、旋回装置取付部33の上,下方向の厚さ寸法Cは、薄肉部32の上,下方向の厚さ寸法Dよりも大きくなっている。
【0053】
そして、旋回装置取付部33の中央部には、旋回装置28の出力軸28Aが挿通される貫通孔33Aが形成されている。また、旋回装置取付部33の左端部33Bは、左縦板14の内側面14Aで前,後方向に亘って溶接された左端溶接部33Cによって左縦板14に固着され、旋回装置取付部33の右端部33Dは、右縦板15の内側面15Aで前,後方向に亘って溶接された右端溶接部33Eによって右縦板15に固着されている。
【0054】
このように、底板31を薄肉部32と旋回装置取付部33とにより一体形成した場合においても、第1の実施の形態と同様に、底板31の前端側の板厚が増大することに加え、底板31と左縦板14との接合強度、底板31と右縦板15との接合強度を高めることができる。この結果、底板31の前側に大きな掘削反力が作用した場合でも、旋回装置取付部33およびその近傍に歪みが生じるのを防止することができる。従って、旋回装置取付部33に取付けられる旋回装置28の作動を長期に亘って安定させることができ、油圧ショベル1の信頼性を高めることができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の上部旋回体を備えた他の建設機械の旋回フレームにも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回輪
4 上部旋回体
8 作業装置
11 旋回フレーム
13,31 底板
13A 上面
13C,32A センタジョイント取付部
14 左縦板
15 右縦板
21 補強板
21E 左端部
21F 右端部
22,33 旋回装置取付部
33B 左端部
33D 右端部
27 センタジョイント
28 旋回装置
O 旋回中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9