特許第5798112号(P5798112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798112
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20151001BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C03C27/12 P
   A62C2/00 X
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-511352(P2012-511352)
(86)(22)【出願日】2010年5月18日
(65)【公表番号】特表2012-527393(P2012-527393A)
(43)【公表日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】GB2010050808
(87)【国際公開番号】WO2010133872
(87)【国際公開日】20101125
【審査請求日】2013年5月16日
(31)【優先権主張番号】0908577.0
(32)【優先日】2009年5月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジョン リチャード ホランド
(72)【発明者】
【氏名】デビット ウィリアム ホールデン
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ウィルヘルム ホルシャー
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−115978(JP,A)
【文献】 特開2002−068784(JP,A)
【文献】 特開平06−123191(JP,A)
【文献】 特開平05−186249(JP,A)
【文献】 特開2000−344553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
A62C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性を有する合わせガラスであって、
前記合わせガラスは、少なくとも2枚のガラス板と、該ガラス板間における少なくとも1つの透過な膨張性中間膜とを備え、
前記ガラス板は、前記ガラス板の周縁の周りに、少なくとも部分的に延在するスペーサにより隔離され、前記中間膜を設けるためのキャビティを画成し、
前記スペーサは、前記ガラス板間の間隔を所定距離に調整するためのシムと、該シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分を有し、
前記中間膜がアルカリ金属ケイ酸塩を含有する構成とし、
前記ゴム部分におけるガス量が、前記中間膜と前記スペーサとの接触面、及び、前記ガラス板と前記スペーサとの接触面において、気泡が発生しない量である合わせガラス。
【請求項2】
前記ゴム部分がブチルゴム及び/又はポリイソブチレンを含有する請求項1記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記シムの横断面が、略環状若しくは略楕円状、又は、概して、正方形状若しくは矩形状であり、又は、前記シムが波形状である請求項1又は2記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記所定距離が、1mm〜20mmの範囲内である請求項1〜3のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記合わせガラスに組み込まれる前の前記スペーサの直径が、前記所定距離よりも大きい請求項1〜4のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記合わせガラスが、二次的な封止材を更に備える請求項1〜5のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記合わせガラスが、3枚のガラス板及び2つの中間膜、又は、4枚のガラス板及び3つの中間膜を備え、各中間膜が2枚のガラス板間に位置する請求項1〜6のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記スペーサの前記ゴム部分が、各ガラス板に接着された請求項1〜7のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記スペーサの前記ゴム部分は、実質的にガスを含有しない請求項1〜8のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記スペーサを事前処理して、前記ゴム部分におけるガス量を減少させた請求項1〜9のいずれか一項記載の合わせガラス。
【請求項11】
耐火性合わせガラスを製造するための方法であって、
a)少なくとも2枚のガラス板を用意する工程と、
b)前記2枚のガラス板を、前記ガラス板の周縁の周りに少なくとも部分的に延在するスペーサで隔離して、中間膜を設けるためのキャビティを画成する工程と、
c)前記キャビティを液体前駆体で充填する工程と、
d)前記液体前駆体を硬化して、透明な膨張性中間膜を形成する工程とを含み、
前記スペーサが、前記ガラス板の間隔を所定距離に調整するためのシムと、前記シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分とを備え、前記中間膜がアルカリ金属ケイ酸塩を含有し、
前記方法は、前記工程b)に先立って、前記スペーサを所定時間にわたって少なくとも100℃まで加熱する、及び/又は、前記スペーサを減圧下で所定時間にわたって少なくとも60℃まで加熱する事前処理を更に含む方法。
【請求項12】
前記所定時間が少なくとも2時間である請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記減圧した圧力が20ミリバール以下である請求項11又は12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2枚のガラス板と、これらガラス板間における少なくとも1つの中間膜とを備える耐火性合わせガラスに関する。本発明は、更に、このような耐火性合わせガラスを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
キャストインプレース(CIP)合わせガラスの製造は、少なくとも2枚のガラス板を貼り合わせることによって、ガラス板間に中空のキャビティを有する封止セルを形成することを特徴とする。その後、このキャビティを液体樹脂によって充填する。この液体樹脂は、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を含有してもよい。その後、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を、熱、UV又は化学反応で硬化させることによって、中間膜を形成する。
【0003】
このタイプのガラスセルを形成するために用いられるスペーサ材は、種々の異なる形態であってもよい。前記形態は、例えば、接着面に事前形成されたソリッドテープ若しくはフォームテープ、事前押出された自己接着剤(例えば、アクリルゴム若しくはブチルゴムの封止テープ)、又は、熱可塑性スペーサ(TPS)、すなわち比較的高温で直接ガラス基板上に押出される液状ポリマーがある。TPSとしては、ポリイソブチレン、カーボンブラック及び他の添加材と共にブチルゴムポリマーを使用してもよい。
【0004】
現在の商業用耐火性キャストインプレースガラスの利用において、標準的な製造技術としては、有機樹脂による中間膜積層体を形成するために、例えば、アクリル接着剤を表面に塗布した事前形成テープを用い、また、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液含有中間膜積層体のためのTPS技術を用いる。
【0005】
TPSシステムの代替としてアルカリ金属ケイ酸塩水溶液が使用される場合、高温炉による硬化後、中間膜とテープとの接触面及びガラスとテープとの接触面に沿って、しばしば気泡が生じる。
このことは、光学的欠陥を引き起こし、従来のスペーサ材がこの応用に不適であることを意味する。この端縁における気泡の問題の原因は、空気又は低分子量有機ガスに由来するものである。低分子量有機ガスは、テープ又は接着剤への封入後に放出される。また、漏洩も含まれ得る。
【0006】
この問題は、強化ガラスが積層された場合においてより顕著である。なぜなら、強化ガラスは、一般的なフロートガラスよりも大きい表面歪みを有することがある。このような歪みは、ガラス上における接着剤の接着不良を招いて、空気の封入を導き、これにより、熱硬化後に、端縁における気泡の問題が顕在化する。
【0007】
TPS技術の利用が、比較的歪みのある強化ガラスの使用を可能にするだけでなく、硬化後の端縁における気泡発生を最小限に抑えることが可能になる。これは、TPSを熱した状態で第1ガラス基板に貼り付け、TPS材が依然として熱く且つ粘着性を有する状態で、第2ガラス基板をTPSに押圧し、良好な密封を生じさせることができるからである。ガラス板を互いにアセンブリする際の加圧力は、正確に制御することによって、ガラス板間の均一な間隔を確保することができる。また、TPS材は、高温、即ち、130℃〜160℃で押出される。よって、このような高温下では、液状TPS組成物中への空気の溶解性が低いので、空気がほとんど封入されることはない。この工程により、低分子量の揮発性ガスもまた除去される。それにもかかわらず、TPS技術を用いた場合であっても、炉による硬化直後に、少量の気泡を、依然として観察することができる。更に、TPS技術は大型設備に対して巨額の投資が必要になり、このような大型設備は多数の応用に対して不適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に関する問題を軽減しつつ、TPS技術の必要性を回避し、しかも端縁における気泡の問題が軽減又は解消される合わせガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の第1態様では、耐火性合わせガラスを提供する。この耐火性合わせガラスは、少なくとも2枚のガラス板と、これらガラス板間における、少なくとも1つの透明な膨張性中間膜とを備える。前記ガラス板は、スペーサによって間隔をもって別々に設けられる。前記スペーサは、前記ガラス板の周縁の周りに、少なくとも部分的に延在し、中間膜を設けるためのキャビティを画成する。前記スペーサは、ガラス板間における間隔を所定距離に調整するためのシムと、シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分とを有する。更に、中間膜はアルカリ金属ケイ酸塩を含有する。
【0010】
好適には、前記スペーサのゴム部分はブチルゴム及び/又はポリイソブチレンを含有する。前記スペーサのゴム部分は、他の成分を含有することもできる。前記他の成分は、乾燥剤(封止材を通じた又は封止材の周りにおける水分移動を更に減少させ得る点で有利である)、充填剤(例えば、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、又は、シリカ)、界面活性剤(例えば、加工助剤として)又は、他の添加剤を含有する。
【0011】
本発明に関連する出願において、前記シムが、金属、プラスチック、又は、一般的に耐圧性を示す他の物質を含有すると好適である。前記スペーサ内における前記シムの横断面は、概して、適当な形状であってもよい。しかしながら、横断面は、環状若しくは楕円状が好ましく、概して、正方形状若しくは矩形状であり、又は、代わりに、シムを波形状とすることもできる。波形状のシムは、好適には、スペーサ内に配置されて、波形がシムの圧縮を低減しつつ、側部における柔軟性を確保する。これにより、シムが組み込まれたスペーサは、ガラス板の周縁の周りで比較的容易に屈曲させてもよい。
【0012】
好適には、中間膜は硬化性樹脂を含有する。
【0013】
シムが組み込まれたスペーサによってガラス板間において設けられた所定距離は、好適には1mm(例えば、1.0mm)〜20mmである。一般的に、合わせガラスに組み込まれる前のスペーサ幅(即ち、高さ)は、所定間隔より大きい。なぜなら、ガラス板を加圧すると、その間に挟み込まれたゴムであるスペーサ外部が、ガラス板表面によって強く圧縮(その結果として変形)されるからである。このゴムによる圧縮性は、スペーサとガラス板表面との間においてより良好な封止を可能にするため有利である。
【0014】
好適には、それぞれのガラス板はガラス製の板(最も好適にはソーダ石灰ガラス)を備える。一般的に、合わせガラス(例えば、PVB中間膜を含むもの)又は強化ガラスを含む、いかなるガラスであってもよい。
【0015】
本発明は、ガラス板が強化ガラス板であると、特に有利である。なぜなら、強化ガラス板は、表面に歪みがあることがあるからである。以前より、これが端縁における気泡の問題に寄与し、これは、特に、事前形成テープ(例えば、表面にアクリル接着剤テープを有するもの)をスペーサとして使用した際に、顕著であった。スペーサにシムを組み込むことによって、スペーサを強化ガラス板に使用した場合であっても、封入空気又は漏洩、及びその結果としての端縁における気泡の問題を低減又は除去できることは、本発明の驚くべき利点である。
【0016】
合わせガラスが、ガラスの周縁(すなわちスペーサの外側)に塗布された二次的な封止材を更に備えると有利である。二次的な封止材の材料は、多硫化物、ポリウレタン、又はシリコーンを好適に含む。
【0017】
一般的に、合わせガラスにおけるガラス板及び中間膜の個数は、ガラスの用途によって決定される。本発明に係る一つの実施形態では、2枚のガラス板と、これらの間に位置する1つの中間膜とが設けられてもよい。別の実施形態では、3枚のガラス板及び2つの中間膜、又は4枚のガラス板及び3つの中間膜を設けることができ、それぞれの中間膜は2枚のガラス板間に位置する。さらに、多数のガラス板(例えば、5, 6, 7又はこれ以上)及び中間膜(例えば、それぞれ、4, 5, 6又はこれ以上)を使用してもよい。
【0018】
好適には、スペーサのゴム部分は、各ガラス板に接着される。ゴムがブチルゴムである場合、接着性を向上させるためにブチルゴムの温度を僅かに上昇させること、及び、各ガラス板を接着性のスペーサゴムに押圧することによって、前記接着を容易に実現することができる。
【0019】
端縁における気泡の問題を更に低減するために、スペーサに事前処理を施し、ゴム部分におけるガス量を減少させることが好適である。スペーサのゴム部分が、実質的にガスを含まないことが好ましい。ゴム部分が完全にガスを含まないことがより好ましい。ゴム部分におけるガス量が、中間膜とスペーサとの接触面、及び、ガラスとスペーサとの接触面において、気泡が発生しない量であることが好ましい。事前処理は、スペーサを合わせガラスへ組み込む前に、スペーサを所定時間にわたって所定温度に加熱する工程を含んでいてもよい。選択的に、加熱を減圧状態下で実施してもよい。
【0020】
所定温度は、少なくとも60℃であってもよく、好適には少なくとも65℃、より好適には少なくとも70℃、更に好適には少なくとも75℃、更に好適には80℃〜200℃、更に好適には90℃〜175℃、更に好適には100℃〜150℃、更に好適には100℃〜130℃、更に好適には100℃〜120℃、更に好適には100℃〜115℃、最も好適には100℃〜110℃である。ゴム部分が過度に軟質化し、変形が生ずるのを回避するために、200℃以下の温度が好ましい。
【0021】
好適な所定時間は、加熱が実施される所定温度及び圧力に、ある程度依存する。所定時間は、少なくとも1時間であってもよく、好適には少なくとも2時間、より好適には少なくとも3時間、更に好適には少なくとも4時間、更に好適には少なくとも6時間、更に好適には少なくとも8時間、最も好適には少なくとも14時間である。
【0022】
減圧する場合の圧力は、好適には100ミリバール以下、より好適には50ミリバール以下、更に好適には20ミリバール以下、更に好適には10ミリバール以下、最も好適には5ミリバール以下である。
【0023】
一般的に、所定温度が少なくとも100℃である場合、加熱は大気圧下で行ってもよい。所定温度がこれより低い、及び/又は、所定時間が短い場合、減圧下での加熱が有利である。
【0024】
スペーサを合わせガラスに組み込む前に、以下の事前処理を行うことができる。
すなわち、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも8時間にわたって少なくとも65℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも7時間にわたって少なくとも70℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも6時間、好適には少なくとも7時間にわたって少なくとも75℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも5時間、好適には少なくとも6時間にわたって少なくとも90℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも4時間にわたって少なくとも95℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも2時間、好適には少なくとも3時間、より好適には少なくとも4時間にわたって少なくとも100℃まで加熱する、又は、
スペーサを少なくとも6時間にわたって少なくとも100℃まで加熱する。
【0025】
第二態様では、本発明は、耐火性を有する合わせガラスを製造するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。
すなわち、
a)少なくとも2枚のガラス板を用意する工程と、
b)2枚のガラス板を、前記ガラス板の周縁の周りに少なくとも部分的に延在するスペーサで隔離して、中間膜を設けるためのキャビティを画成する工程と、
c)前記キャビティを液体前駆体で充填する工程と、
d)前記液体前駆体を硬化して、透明な膨張性中間膜を形成する工程を含み、
前記スペーサが、前記ガラス板の間隔を所定距離に調整するためのシムと、前記シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分とを備え、
前記中間膜がアルカリ金属ケイ酸塩を含有する。
【0026】
第1態様に関連して記載したとおり、好適には、上述の方法は、工程b)に先立って、スペーサの事前処理を更に含む。この事前処理は、スペーサを所定時間にわたって少なくとも100℃で加熱する、及び/又は、スペーサを減圧下で所定時間にわたって少なくとも60℃まで加熱することを含む。
【0027】
スペーサは、少なくとも1枚のガラス板に、手動、又は、ロボット若しくは他の機械装置によって、自動で配置されることもある。
【0028】
本発明に係る好適な実施形態において、中間膜は、スペーサにおける開口を通して、キャビティに液体前駆体(これは、通常、分散液又は溶液)を充填した後、この液体前駆体を硬化させることによって成型され、その結果、中間膜が形成される。液体前駆体は、加熱又はUV照射によって硬化されてもよい。この方式による液体充填により中間膜が形成される場合、スペーサに第2開口を設けることによって、キャビティに液体前駆体を充填する際に空気を逃がすようにすると好適である。
【0029】
本明細書に記載の耐火性合わせガラスは、ガラス使用の広範な分野で使用してもよい。特に、耐火性合わせガラスは、建造物(外窓又は内窓の構成要素としての使用を含む)、又は複層ガラスユニットの構成要素として使用してもよい。
【0030】
当然のことながら、本発明に係る一態様に適用可能な任意の特徴は、いかなる組み合わせ、及び、いかなる数でも使用され得る。また、これらの特徴は、本発明に係る別の態様で、いかなる組み合わせ、及び、いかなる数でも使用され得る。これは、限定されるものではなく、本願の請求項内における他の請求項の従属請求項として使用されるいかなる請求項からの従属請求項を含む。例えば、本発明の第1態様に係る方法は、本発明の第2態様に適宜変更を加えて使用されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明において使用可能な異なるタイプのシムを示すのに適したスペーサの例を説明する図である。
図2】耐火性ガラス用のキャストインプレース積層用シムを含むスペーサを用いた合わせガラスの貼り合せを説明する図である。
図3】未処理スペーサ表面の光学画像を示す図である。
図4】10ミリバールの圧力下において、18時間にわたって90℃で加熱したスペーサ表面の光学画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0033】
図1は、本発明に係る多数のスペーサを示す。スペーサAは、周囲をブチルで被覆した、コアを内部に含むブチル、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)のコードである(a cored butyl, EPDM(ethylene propylene diene monomer) cord with butyl outer)。スペーサBは、波形アルミニウム製又はプラスチック製のシムを設けた押出ブチルストリップである。スペーサCは、金属製又はプラスチック製シム/厚み調整可能なスペーサーに押出したブチルである。
【0034】
図2は、合わせガラスの貼り合わせを説明するものであり、この場合、スペーサが第1ガラス板1及び上端上に載置された第2ガラス板に接着される。スペーサは端縁から3mmの位置に貼り付けることにより、二次的な封止が可能になる。
【0035】
スペーサを構成する材料は、好適には十分に軟質なものとすることにより、2枚のガラス面における良好な接触特性を確保することを許容する一方、ガラスセルの形成工程において、均一なキャビティを形成することも可能になる。再形成可能且つ均一な厚みを有するキャビティは、スペーサ材に中実の厚み調整コア(シム)を設けることによって実現することができる。スペーサ材の全厚は、所望の最終的な厚みよりも厚くする必要がある。これは強化ガラスにおける不均一性を考慮し、ガラス板を貼り合わせる際に、スペーサ材が最終的な厚みまで圧縮されるからである。
【0036】
ガラスに対するスペーサ材の接着力を向上させて、硬化前にセルから溶液が漏出し、また貼り合わせ後にセル内への漏入が生じることを確実に防止する。このことは、(ブチル)ゴム封止材を用いることによって実現することができ、前記封止材は、ガラスに対して大きな接着力、及び極めて良好な防湿特性を有する。多硫化物又はポリウレタン等の二次的な封止材の使用もまた、封止したユニットに更なる構造的安定性を付与するのに好適である。
【0037】
スペーサは、ゴム(好適にはブチルゴム)製の外装、及び中実の中心コアすなわちシムを備える。このコアすなわちシムは、ユニットを組み立てて、ガラス板を一定の間隔で離間させた際に、スペーサの圧縮度を限定する。この間隔としては、強化コア(すなわちシム)の厚みに応じて1mm〜20mmが好ましい。この間隔としては、2mm〜8mmの範囲内がより好ましく、3mm〜6mmの範囲内が更に好ましい。中実コアすなわちシムは、金属若しくはプラスチック材料のいずれかで製造してもよい。
【0038】
スペーサに、ガラスセルの製造に先立って、加熱及び減圧事前処理の組合せが施して、これにより空気及び揮発性ガスを除去してもよい。
【0039】
正確な調製条件は、用いられた端縁スペーサテープの組成、厚み及び量に応じて変化する。これにより、特別に調製されたスペーサをアルカリ金属ケイ酸塩による中間膜を備える耐火性ガラス用に使用することができる。熱硬化工程後、中間膜とスペーサとの接触面、及び、ガラスとスペーサとの接触面に形成される気泡は、皆無又は僅かである。
【0040】
完全に脱気した強化スペーサは手動又は自動でガラスに貼り付けることができ、その後、商業用技術を利用して手動又は自動でガラスセルを組立ててもよい。二次的な封止をセルの周縁に適用して、これにより機械的安定性を向上させてもよい。封止材は、市販されているもの、例えば、多硫化物、ポリウレタン、及びシリコーン、から選択することができる。
【0041】
ガラスセルの組立て後、このユニットの一隅に開口を設け、ユニットをアルカリ金属ケイ酸塩溶液で充填するためにノズルを挿通する。ユニットの反対側にはエアー流出口を設け、充填工程時においてエアーを脱気するのを許容する。調製した溶液は、特殊装置を使用してユニット内に分注し、充填完了後にユニットを最終的に封止することによって溶液の漏洩を確実に防止する。その後、充填したガラスユニットを熱硬化用の炉内に搬入し、適切な硬化サイクルを経ることで液体溶液から固体の中間膜に変質させる。
【0042】
上述の製造技術を利用した耐火性ガラスは、最大3.5m×2.5mのサイズで製造することができ、欠損又は端縁における気泡がなく、良好な光学特性を有する。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の実施例に基づいて更に詳述する。
【0044】
実施例1
複数のセルを形成し、この形成において2枚の焼きなましガラス板(300mm×150mm)と、4.8mmの高さを有し、かつ波形アルミニウム型シムを含む押出ブチルストリップ備えるスペーサ(Truseal Technologies Inc. Solon, Ohio, USA製のMicroseal(商標))とを使用した。それぞれのセルを形成するためのサンプルテープには異なる処理を施し、以下の表1に示す。
図2に示すとおり、スペーサテープは第1ガラス板1に貼り付け、また第2ガラス板2をその上端上に載置した。その後、アセンブリ全体を40℃まで加熱し、押圧し、金属製シムを両方のガラス板に接触させた。その後、キャビティの厚みは、シムの高さに正確に対応した。
スペーサにおける対向する二隅に2つの開口を設け、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液を注入した。2つの開口のうちの1つはベントとして機能した。セルの充填完了後、ブチルプラグを挿入することによって、開口を封止した。6時間にわたって90℃で加熱することによって、熱硬化を行った。表1は、異なる処理の各々についての結果を示すものであり、ブチルとケイ酸塩との間、及び、ブチルとガラスとの間において気泡が生じた箇所を示す。
【0045】
【表1】
注:減圧処理サンプルは5ミリバールに減圧した。
【0046】
実施例2
3つの同一セルを調製し、この調製において、焼きなましガラス(300mm×150mm)と、スペーサとしての、コアを内部に含むブチル(Tremco Illbruck Ltd., Wigin, UK製のPolyshim(商標))とを使用した。このスペーサは、直径4.8mmのEPDMコード周りに押出によるブチルを備える。組立てられたセルを50℃まで加熱し、スペーサはコードの厚みまで圧縮した。セルのうち2つを14時間にわたって90℃で加熱し、その際、一方は大気圧下で、他方は5ミリバールの減圧下で加熱した。3つのセルをアルカリ金属ケイ酸塩水溶液で充填し、6時間にわたって90℃で硬化した。この結果を以下の表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例3
ガラスセルを形成し、この形成において、2枚の5mm強化ガラス板(2.3m×1.2m)と、4.8mmのシムを内包したMicrosealのブチルストリップとを使用し、この場合、シムには予め熱処理及び脱気を施した。実施例1で説明したとおりセルを組立てた。その後〜40℃に加熱したローラを通過させることでテープを圧縮し、これにより最終的にガラス間に4.8mmの間隔を設けた。その後、約3mm幅の多硫化物による封止材を塗布し、硬化した。
ガラス面とブチルスペーサとの間における接触は均一であり、気泡の発生は確認されなかった。これはガラス歪みに対するテープの順応性によるものである。
セルをアルカリ金属ケイ酸塩水溶液で充填し、6時間にわたって90℃で硬化した。ブチルとケイ酸塩との接触面に沿った気泡の発生はなく、また中間膜内への空気流入は確認されなかった。この中間膜内への空気流入は、ブチルとガラスとの結合面において不均一な箇所がある場合に発生する。
【0049】
Microsealテープに対する光学顕微鏡検査
中間膜と接触するMicrosealテープにおける表面構造の分析を実施し、表面トポグラフィーが事前処理によって変化するかを検査した。Microsealは、2つの状態、すなわち、未処理状態、及び10ミリバール下において18時間にわたって90℃で加熱した状態で、オリジナルのバッキングテープ上に付与された。
【0050】
観察によって、付与された検査サンプルの表面構造に視覚的差異が存在することが明らかになった。よって、光学顕微鏡検査(Wild社製の同軸入射反射光照明式)を実施することで、上述した差異を記録した。
【0051】
図3(未処理)及び図4(脱気下において90℃で熱処理)は光学画像を示す。未処理サンプルは比較的平滑的であるが、90℃で処理したサンプルは、破裂した大気泡、及び、開孔かつ拡張した孔であると想定される領域を示しており、これは脱気された揮発性ガスと対応するものである。ゴム表面におけるこの物理的変化は、ガラス板を熱硬化する際にスペーサからガスが放出されるために気泡が発生するという仮説にも対応する。
【0052】
Microsealテープの接触角
Microsealテープの複数のサンプルにおける表面の接触角を分析し、事前処理によってゴム表面の化学的性質に変化が生じるかを検査した。表3は、水のサンプルに対する接触角の検査結果を示すものであり、サンプルとして未処理のもの、10ミリバール下で18時間にわたって55℃、75℃並びに90℃で処理したもの、また大気圧下で18時間にわたって55℃及び75℃で処理したものをそれぞれ使用した。検査結果は、これら事前処理によってゴム表面における接触角に変化が生じないことを示している。このことは、表面における化学的特性が、少なくとも疎水性物質に関しては、水を使用した事前処理の影響を受けないことを示唆するものである。このことは、事前処理によりゴム表面における物理的変化が生じることを示す光学顕微鏡検査とも矛盾しない。
【0053】
【表3】
【0054】
本発明は、熱硬化ガラス板、耐火性ガラス板、及び水性アルカリ金属ケイ酸塩による難燃性ガラス板の商業生産を可能にすると共に、キャストインプレース製造技術によって、良好な外観性、及び、端縁の気泡発生の完全抑制又は端縁の気泡発生の僅かな程度への抑制を可能にする。現在、このタイプの代替品として市販されているガラス板には、熱可塑性スペーサ技術(TPS)が利用されており、設備投資が高額になってしまう欠点を有する。本発明は、費用効率が高く、かつ柔軟な製造工程に基づいて耐火性ガラス板を手動又は自動で製造することを可能にする。TPSシステムの使用は製造工程を完全に自動化した工程に限定し、また設備投資が高額であるため、高い製造量によって商業的採算性を確保しなくてはならない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4