【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の第1態様では、耐火性合わせガラスを提供する。この耐火性合わせガラスは、少なくとも2枚のガラス板と、これらガラス板間における、少なくとも1つの透明な膨張性中間膜とを備える。前記ガラス板は、スペーサによって間隔をもって別々に設けられる。前記スペーサは、前記ガラス板の周縁の周りに、少なくとも部分的に延在し、中間膜を設けるためのキャビティを画成する。前記スペーサは、ガラス板間における間隔を所定距離に調整するためのシムと、シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分とを有する。更に、中間膜はアルカリ金属ケイ酸塩を含有する。
【0010】
好適には、前記スペーサのゴム部分はブチルゴム及び/又はポリイソブチレンを含有する。前記スペーサのゴム部分は、他の成分を含有することもできる。前記他の成分は、乾燥剤(封止材を通じた又は封止材の周りにおける水分移動を更に減少させ得る点で有利である)、充填剤(例えば、カーボンブラック、水酸化マグネシウム、又は、シリカ)、界面活性剤(例えば、加工助剤として)又は、他の添加剤を含有する。
【0011】
本発明に関連する出願において、前記シムが、金属、プラスチック、又は、一般的に耐圧性を示す他の物質を含有すると好適である。前記スペーサ内における前記シムの横断面は、概して、適当な形状であってもよい。しかしながら、横断面は、環状若しくは楕円状が好ましく、概して、正方形状若しくは矩形状であり、又は、代わりに、シムを波形状とすることもできる。波形状のシムは、好適には、スペーサ内に配置されて、波形がシムの圧縮を低減しつつ、側部における柔軟性を確保する。これにより、シムが組み込まれたスペーサは、ガラス板の周縁の周りで比較的容易に屈曲させてもよい。
【0012】
好適には、中間膜は硬化性樹脂を含有する。
【0013】
シムが組み込まれたスペーサによってガラス板間において設けられた所定距離は、好適には1mm(例えば、1.0mm)〜20mmである。一般的に、合わせガラスに組み込まれる前のスペーサ幅(即ち、高さ)は、所定間隔より大きい。なぜなら、ガラス板を加圧すると、その間に挟み込まれたゴムであるスペーサ外部が、ガラス板表面によって強く圧縮(その結果として変形)されるからである。このゴムによる圧縮性は、スペーサとガラス板表面との間においてより良好な封止を可能にするため有利である。
【0014】
好適には、それぞれのガラス板はガラス製の板(最も好適にはソーダ石灰ガラス)を備える。一般的に、合わせガラス(例えば、PVB中間膜を含むもの)又は強化ガラスを含む、いかなるガラスであってもよい。
【0015】
本発明は、ガラス板が強化ガラス板であると、特に有利である。なぜなら、強化ガラス板は、表面に歪みがあることがあるからである。以前より、これが端縁における気泡の問題に寄与し、これは、特に、事前形成テープ(例えば、表面にアクリル接着剤テープを有するもの)をスペーサとして使用した際に、顕著であった。スペーサにシムを組み込むことによって、スペーサを強化ガラス板に使用した場合であっても、封入空気又は漏洩、及びその結果としての端縁における気泡の問題を低減又は除去できることは、本発明の驚くべき利点である。
【0016】
合わせガラスが、ガラスの周縁(すなわちスペーサの外側)に塗布された二次的な封止材を更に備えると有利である。二次的な封止材の材料は、多硫化物、ポリウレタン、又はシリコーンを好適に含む。
【0017】
一般的に、合わせガラスにおけるガラス板及び中間膜の個数は、ガラスの用途によって決定される。本発明に係る一つの実施形態では、2枚のガラス板と、これらの間に位置する1つの中間膜とが設けられてもよい。別の実施形態では、3枚のガラス板及び2つの中間膜、又は4枚のガラス板及び3つの中間膜を設けることができ、それぞれの中間膜は2枚のガラス板間に位置する。さらに、多数のガラス板(例えば、5, 6, 7又はこれ以上)及び中間膜(例えば、それぞれ、4, 5, 6又はこれ以上)を使用してもよい。
【0018】
好適には、スペーサのゴム部分は、各ガラス板に接着される。ゴムがブチルゴムである場合、接着性を向上させるためにブチルゴムの温度を僅かに上昇させること、及び、各ガラス板を接着性のスペーサゴムに押圧することによって、前記接着を容易に実現することができる。
【0019】
端縁における気泡の問題を更に低減するために、スペーサに事前処理を施し、ゴム部分におけるガス量を減少させることが好適である。スペーサのゴム部分が、実質的にガスを含まないことが好ましい。ゴム部分が完全にガスを含まないことがより好ましい。ゴム部分におけるガス量が、中間膜とスペーサとの接触面、及び、ガラスとスペーサとの接触面において、気泡が発生しない量であることが好ましい。事前処理は、スペーサを合わせガラスへ組み込む前に、スペーサを所定時間にわたって所定温度に加熱する工程を含んでいてもよい。選択的に、加熱を減圧状態下で実施してもよい。
【0020】
所定温度は、少なくとも60℃であってもよく、好適には少なくとも65℃、より好適には少なくとも70℃、更に好適には少なくとも75℃、更に好適には80℃〜200℃、更に好適には90℃〜175℃、更に好適には100℃〜150℃、更に好適には100℃〜130℃、更に好適には100℃〜120℃、更に好適には100℃〜115℃、最も好適には100℃〜110℃である。ゴム部分が過度に軟質化し、変形が生ずるのを回避するために、200℃以下の温度が好ましい。
【0021】
好適な所定時間は、加熱が実施される所定温度及び圧力に、ある程度依存する。所定時間は、少なくとも1時間であってもよく、好適には少なくとも2時間、より好適には少なくとも3時間、更に好適には少なくとも4時間、更に好適には少なくとも6時間、更に好適には少なくとも8時間、最も好適には少なくとも14時間である。
【0022】
減圧する場合の圧力は、好適には100ミリバール以下、より好適には50ミリバール以下、更に好適には20ミリバール以下、更に好適には10ミリバール以下、最も好適には5ミリバール以下である。
【0023】
一般的に、所定温度が少なくとも100℃である場合、加熱は大気圧下で行ってもよい。所定温度がこれより低い、及び/又は、所定時間が短い場合、減圧下での加熱が有利である。
【0024】
スペーサを合わせガラスに組み込む前に、以下の事前処理を行うことができる。
すなわち、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも8時間にわたって少なくとも65℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも7時間にわたって少なくとも70℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも6時間、好適には少なくとも7時間にわたって少なくとも75℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも5時間、好適には少なくとも6時間にわたって少なくとも90℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大10ミリバール、好適には最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも4時間にわたって少なくとも95℃まで加熱する、又は、
スペーサを最大5ミリバールまでの減圧下において、少なくとも2時間、好適には少なくとも3時間、より好適には少なくとも4時間にわたって少なくとも100℃まで加熱する、又は、
スペーサを少なくとも6時間にわたって少なくとも100℃まで加熱する。
【0025】
第二態様では、本発明は、耐火性を有する合わせガラスを製造するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む。
すなわち、
a)少なくとも2枚のガラス板を用意する工程と、
b)2枚のガラス板を、前記ガラス板の周縁の周りに少なくとも部分的に延在するスペーサで隔離して、中間膜を設けるためのキャビティを画成する工程と、
c)前記キャビティを液体前駆体で充填する工程と、
d)前記液体前駆体を硬化して、透明な膨張性中間膜を形成する工程を含み、
前記スペーサが、前記ガラス板の間隔を所定距離に調整するためのシムと、前記シムを少なくとも部分的に被覆するゴム部分とを備え、
前記中間膜が
アルカリ金属ケイ酸塩を含有する。
【0026】
第1態様に関連して記載したとおり、好適には、上述の方法は、工程b)に先立って、スペーサの事前処理を更に含む。この事前処理は、スペーサを所定時間にわたって少なくとも100℃で加熱する、及び/又は、スペーサを減圧下で所定時間にわたって少なくとも60℃まで加熱することを含む。
【0027】
スペーサは、少なくとも1枚のガラス板に、手動、又は、ロボット若しくは他の機械装置によって、自動で配置されることもある。
【0028】
本発明に係る好適な実施形態において、中間膜は、スペーサにおける開口を通して、キャビティに液体前駆体(これは、通常、分散液又は溶液)を充填した後、この液体前駆体を硬化させることによって成型され、その結果、中間膜が形成される。液体前駆体は、加熱又はUV照射によって硬化されてもよい。この方式による液体充填により中間膜が形成される場合、スペーサに第2開口を設けることによって、キャビティに液体前駆体を充填する際に空気を逃がすようにすると好適である。
【0029】
本明細書に記載の耐火性合わせガラスは、ガラス使用の広範な分野で使用してもよい。特に、耐火性合わせガラスは、建造物(外窓又は内窓の構成要素としての使用を含む)、又は複層ガラスユニットの構成要素として使用してもよい。
【0030】
当然のことながら、本発明に係る一態様に適用可能な任意の特徴は、いかなる組み合わせ、及び、いかなる数でも使用され得る。また、これらの特徴は、本発明に係る別の態様で、いかなる組み合わせ、及び、いかなる数でも使用され得る。これは、限定されるものではなく、本願の請求項内における他の請求項の従属請求項として使用されるいかなる請求項からの従属請求項を含む。例えば、本発明の第1態様に係る方法は、本発明の第2態様に適宜変更を加えて使用されたものであってもよい。