(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記報知器は、モータが駆動されている間、選択された通電角に対応する報知動作を実行し、モータの駆動が中止されたときに、バッテリの残容量に応じた報知動作を実行することを特徴とする請求項16に記載の電動工具。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が、130度以上180度以下の値に固定された通電角によって、三相ブラシレスモータを矩形波駆動することが好ましい。この構成によると、通電角が120度に固定された従来の電動工具と比較して、工具をより高速に駆動することができる。
【0029】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が、通電角を、120度以上180度以下の範囲で、少なくとも二段階に変更することが好ましい。この構成によると、通電角を大きくすることによって、工具を高速に駆動することができ、通電角を小さくすることによって工具を高トルクで駆動することができる。
【0030】
上記の実施形態において、通電角の変更は、ユーザによって手動で行われてもよいし、電動工具によって自動的に行われてもよい。後者の場合、通電角の変更は、工具に加えられる負荷に応じて行われることが好ましい。ここで、工具に加えられる負荷に応じて通電角を変更する場合、概して、下記する二つの方式を好適に採用することができる。
【0031】
第1の方式は、工具に加えられる負荷が小さいときほど、通電角を大きな値に設定するものである。通電角を大きくすると、モータの出力トルクが低下する一方で、モータの回転数は上昇する。従って、電動工具が軽作業に使用され、工具に加えられる負荷が小さいときには、通電角を大きくすることによって、モータの回転数を優先した運転を行うことが好ましい。一方、電動工具が重作業に使用され、工具に加えられる負荷が大きいときは、通電角を小さくすることによって、モータの出力トルクを優先した運転を行うことが好ましい。
【0032】
第2の方式は、上記とは反対に、工具に加えられる負荷が大きいときほど、通電角を大きな値に設定するものである。発明者らの検証によると、工具に加えられる負荷が小さいときには、通電角を大きくした方が電動工具の電力効率が向上し、工具に加えられる負荷が大きいときには、通電角を小さくした方が電動工具の電力効率が向上する。そのことから、この第2の方式によると、電動工具の電力効率を優先した、省エネルギーの運転を行うことができる。
【0033】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が、上記した二つの方式を選択可能とすることもできる。即ち、モータ駆動装置が、「工具に加えられる負荷が小さいときほど通電角を大きな値に設定する高出力モード」と、「工具に加えられる負荷が大きいときほど通電角を大きな値に設定する省エネモード」を、選択可能に構成することもできる。この場合、モータ駆動装置は、モータへ電力を供給するバッテリの充電レベル(残電力)に応じて、上記した二つのモードを選択することもできる。即ち、バッテリが十分に充電されている間は「高出力モード」での運転が行われ、バッテリの充電レベルが所定レベルまで低下した時に「省エネモード」への切り換えが行われることが好ましい。
【0034】
本技術の一実施形態では、電動工具が、工具に加えられる負荷に対応する指標を検出する第1検出器をさらに備えることが好ましい。この場合、モータ駆動装置は、第1検出器による検出値に応じて、通電角の変更を行うことが好ましい。ここで、工具に加えられる負荷に対応する指標としては、例えば、モータ電流、モータ回転数、バッテリ電流、バッテリ電圧が挙げられる。よく知られているように、三相ブラシレスモータでは、モータに加えられる負荷が大きくなるほど、モータ電流が増大するとともに、モータ回転数は低下する。この時、モータ電流に応じてバッテリ電流も増大し、バッテリ電流の増大に伴ってバッテリ電圧が低下する。加えて、工具又は工具に接続する回転軸に生じる歪みも、工具に加えられる負荷に対応する指標として挙げられる。
【0035】
上記した実施形態では、モータ駆動装置が、通電角を少なくとも第1角度と第2角度の間で変更可能であり、前記した指標に関して第1閾値と第2閾値を記憶しており、通電角が第1角度に設定されているときは、第1検出器による検出値と第1閾値との大小に応じて通電角を第2角度へ変更し、通電角が第2角度に設定されているときは、第1検出器による検出値と第2閾値との大小に応じて通電角を第1角度へ変更することが好ましい。即ち、通電角を第1角度から第2角度へ変更する場合と、第2角度から第1角度へ変更する場合では、異なる閾値を用いてその要否を判定することが好ましい。それにより、通電角の変更処理にヒステリシス性が与えられ、検出された指標が閾値の近傍で細かに変動する場合で、通電角の変更が無用に繰り返されることを防止することができる。
【0036】
本技術の一実施形態では、電動工具が、三相ブラシレスモータ又はモータ駆動装置の温度を検出する第2検出器をさらに備えることが好ましい。この場合、モータ駆動装置は、第2検出器による検出値に応じて通電角の変更を行うことが好ましい。通電角を大きくすると、モータへの電流が増大することによって、モータ及びモータ駆動装置の温度が上昇する。従って、モータ又はモータ駆動装置の温度を監視し、当該温度に基づいて通電角を変更すれば、モータ及びモータ駆動装置の過熱を防止することができる。例えば、モータ又はモータ駆動装置の温度が許容範囲から外れた場合に、通電角を小さくするとよい。
【0037】
上記した実施形態では、モータ駆動装置が、通電角を少なくとも第1角度と第2角度の間で変更可能であり、前記温度に関して第3閾値と第4閾値を記憶しており、通電角が第1角度に設定されているときは、第2検出器による検出値が第3閾値よりも高いときに通電角を第2角度へ変更し、通電角が第2角度に設定されているときは、第2検出器による検出値が第4閾値よりも低いときに通電角を第1角度へ変更することが好ましい。即ち、通電角を第1角度から第2角度へ変更する場合と、第2角度から第1角度へ変更する場合では、異なる閾値を用いてその要否を判定することが好ましい。それにより、通電角の変更処理にヒステリシス性が与えられ、検出された温度が閾値の近傍で細かに変動する場合でも、通電角の変更が無用に繰り返されることを防止することができる。
【0038】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が通電角を大きくする場合に、通電角を維持しながら通電開始タイミングを早め、その後、通電開始タイミングを維持しながら通電角を大きくすることが好ましい。この方式によると、モータ駆動装置が通電角を大きくする際に、モータの回転数が急に変動することを抑制することができる。
【0039】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が通電角を小さくする場合に、通電開始タイミングを維持しながら通電角を小さくし、その後、通電角を維持しながら通電開始タイミングを遅らせることが好ましい。
【0040】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置が、通電角の変更に応じて進角も変更することが好ましい。高効率や高出力を得られる進角は、通電角に応じて異なるためである。なお、各通電角に対する具体的な進角の値は、電動工具の構造、機能、要求特性に応じて、適宜設定することが好ましい。
【0041】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置のスイッチング素子に、III−V族半導体トランジスタを採用することができる。III−V族半導体トランジスタは、高いオフ耐圧と低いオン抵抗と有しているので、モータに大電流が通電される電動工具に適している。
【0042】
本技術の一実施形態では、モータ駆動装置によって設定された通電角に対応する報知動作を選択的に実行する報知器をさらに備えることが好ましい。この構成によると、ユーザは、電動工具がいずれの通電角で三相ブラシレスモータを駆動しているのかを知ることができる。そして、ユーザは、工具に加えられる負荷を調節しながら作業することによって、所望する通電角での駆動を維持しながら、効率的に作業を行うことができる。
【0043】
上記した実施形態では、報知器が、モータ駆動装置が設定する通電角を、実際に設定された通電角にかかわらず、独自に判別することが好ましい。この構成では、通常は、モータ駆動装置によって実際に設定された通電角と、報知器によって報知される通電角が、正しく一致するはずである。一方、モータ駆動装置や報知器に不具合が生じていると、モータ駆動装置によって実際に設定された通電角と、報知器によって報知される通電角が、一致しないことになる。従って、このような不一致が生じた場合に、モータ駆動装置や報知器に不具合が生じていると判断することができる。ユーザは、電動工具の使用を直ちに停止して、その修理を早期に行うことができる。
【0044】
上記した実施形態では、工具に加えられる負荷に対応する指標を検出する第1検出器をさらに備えることが好ましい。この場合、モータ駆動装置は、第1検出器による検出値に応じて通電角の変更を行い、報知器は、第1検出器による検出値に応じて、実行する報知動作を選択することが好ましい。一例ではあるが、モータ駆動装置と報知器は、第1検出器による検出値に関して、少なくとも一つの閾値をそれぞれ記憶しておくことができる。そして、モータ駆動装置は、第1検出器による検出値と記憶している閾値との大小関係に基づいて通電角の変更を行うことができる。この場合、報知器は、第1検出器による検出値と記憶している閾値との大小関係に基づき、モータ駆動装置とは独立して、モータ駆動装置が設定するべき通電角に対応する報知動作を実行することが好ましい。この構成では、共通の検出器による検出結果に基づいて、モータ駆動装置と報知器のそれぞれの動作が互いに独立して決定される。従って、両者の動作が互いに対応しない場合、ユーザはモータ駆動装置と報知器のいずれ不具合が生じていると判断することができる。
【0045】
上述した電動工具が報知器を有する各実施形態では、電動工具が、三相ブラシレスモータに電力を供給するバッテリと、そのバッテリの残容量を検出する第3検出器をさらに備えることが好ましい。この場合、報知器は、第3検出器によって検出されたバッテリの残容量に応じた報知動作をさらに実行可能であることが好ましい。バッテリの残容量を把握することで、ユーザはバッテリが突然に切れてしまうことを避けることができる。
【0046】
本技術の一実施形態では、報知器が、モータが駆動されている間、選択された通電角に対応する報知動作を実行し、モータの駆動が中止された後に、バッテリの残容量に応じた報知動作を実行することが好ましい。この構成によると、ユーザは、報知器が報知している情報を誤って理解することを避けることができる。さらに、報知器は、モータが駆動されている間、工具に加えられている負荷の大きさを示す報知動作をさらに実行することが好ましい。
【0047】
本技術の一実施形態では、報知器が、少なくとも一つの発光体を備えることが好ましい。それにより、ユーザは報知器の示す情報を視覚的に認知することができる。なお、報知器は、少なくとも一つの発光体に加えて、あるいはそれに代えて、音源、振動源、液晶パネルといった他のデバイスを有してもよい。
【0048】
本技術の一実施形態では、電動工具が、工具を駆動する三相ブラシレスモータと、三相ブラシレスモータを矩形波駆動するモータ駆動装置と、報知器を備えることが好ましい。この場合、モータ駆動装置は、三相ブラシレスモータの回転位置に対して第1の関係を有する矩形波を出力する第1モードと、三相モータの回転位置に対して第2の関係を有する矩形波を出力する第2モードを選択的に実行可能であることが好ましい。そして、報知器は、モータ駆動装置によって選択されたモードに対応する報知動作を選択的に実行することが好ましい。
【実施例1】
【0049】
図面を参照しながら、実施例1のマルノコ10を説明する。
図1に示すように、マルノコ10は、本体12と、鋸刃30と、バッテリパック22を備えている。鋸刃30は、円板状の刃物であり、ワーク(木材)を切断する工具である。バッテリパック22は、本体12へ電力を供給する電源であり、本体12へ着脱可能に構成されている。バッテリパック22は、複数のリチウムイオンセルを内蔵する、公称電圧が18ボルトの直流電源である。なお、バッテリパック22の種類や公称電圧は特に限定されない。
【0050】
本体12は、鋸刃30を駆動するモータ14、モータ14を起動するためのトリガスイッチ16、ユーザが把持するためのグリップ18、鋸刃30を保持している工具軸20を備えている。ユーザがトリガスイッチ16を操作すると、バッテリパック22からモータ14へ電力が供給される。それにより、モータ14は、鋸刃30とともに工具軸20を回転駆動する。
【0051】
図2は、マルノコ10の電気的構成を示す回路図である。
図2に示すように、マルノコ10は、主に、モータ14と、モータ14を制御するモータ駆動装置38を備えている。モータ14は、三相ブラシレスモータであり、永久磁石を有するロータ(図示省略)と、三相コイルを有するステータ(図示省略)を備えている。モータ14のU相端子14U、V相端子14V、W相端子14Wは、モータ駆動装置38を介して、バッテリパック22へ電気的に接続されている。また、モータ14には、ロータの位置を検知する位置センサ15が設けられている。位置センサ15もまた、モータ駆動装置38に接続されている。
【0052】
モータ駆動装置38は、検出されたロータの回転位置に応じて、モータ14の各相端子14U、14V、14Wを、バッテリパック22の正極22a又は負極22bへ選択的に接続する。それにより、各相端子14U、14V、14Wの印加電圧を、ロータの回転位置に応じて制御する。
図3、
図4は、モータ駆動装置38によって制御された各相端子14U、14V、14Wの電圧波形を示している。モータ駆動装置38は、モータ14を矩形波駆動するものである。従って、
図3、
図4に示すように、各相端子14U、14V、14Wの印加電圧はロータの回転位置に応じて矩形波状に変化する。ここで、
図3は通電角が120度に設定されたときの電圧波形を示しており、
図4は通電角が150度に設定されたときの電圧波形を示している。このように、モータ駆動装置38は、モータ14を矩形波駆動する際の通電角を、120度と150度の間で変更することができる。
【0053】
図5に示すように、モータ14の動作特性は、通電角に応じて有意に変化する。特に、通電角を大きくすると、モータ14の出力トルク(C、D)が低下する一方で、モータ14の回転数(A、B)は上昇する。そこで、本実施例のマルノコ10では、鋸刃30に加えられる負荷が小さいときは通電角を150度に設定し、鋸刃30に加えられる負荷が大きいときは通電角を120度に設定する。それにより、薄い板を切断する際には、通電角が150度に設定され、モータ14の回転数を優先した運転が行われる。この場合、鋸刃30が高速で駆動されるので、薄い板の切断を短時間で行うことができる。一方、薄い板を切断する際には、通電角が120度に設定され、モータ14の出力トルクを優先した運転が行われる。この場合、鋸刃30が高トルクで駆動されるので、比較的に厚い板も確実に切断することができる。
【0054】
本実施例では、通電角の変更が120度と150度の間で行われるが、通電角の変更は他の角度間で行われてもよい。また、通電角の変更は、二段階に限られず、三段階以上で変更を行う構成としてもよい。通電角の変更は、120度から180度の間で、少なくとも二段階に行われることが好ましい。
【0055】
図5に示すように、通電角に応じてモータ14の回転数は相違するので、通電角を変更したときにモータ14の回転数にも変化が現れる。通電角を短時間で大きく変化させると、モータ14の回転数も大きく変動することになり、ユーザに強い違和感を与えてしまう。そのことから、通電角を変更する際には、一定の時間を使って徐々に変更していくことが好ましい。
【0056】
上記に関して、
図6を参照しながら、本実施例において通電角の変化させるときの手順を説明する。
図6に示すように、通電角を120度から150度へ大きくする場合は、モータ14へ印加する電圧波形を(a)から(f)の順で変化させる。即ち、モータ駆動装置38は、先ず、通電角を維持しながら通電開始タイミングを徐々に早め(a→b→c→d)、その後、通電開始タイミングを維持しながら通電角を徐々に大きくしていく(d→e→f)。一方、通電角を150度から120度へ小さくする場合は、モータ14へ印加する電圧波形を逆に(f)から(a)の順で変化させる。即ち、モータ駆動装置38は、先ず通電開始タイミングを維持しながら徐々に通電角を小さくし(f→e→d)、その後、通電角を維持しながら通電開始タイミングを徐々に遅らせていく(d→c→b→a)。この手順によると、モータ14の回転数の急激な変動を抑制することができる。
【0057】
先に説明したように、モータ駆動装置38は、工具に加えられる負荷に応じて通電角の変更を行う。この場合、モータ駆動装置38は、当該負荷に対応する指標を検出し、その検出値に応じて通電角の変更を行うことができる。工具に加えられる負荷に対応する指標としては、例えば、モータ14の電流値やモータ14の回転数が挙げられる。また、モータ14の電流値に応じてバッテリパック22の出力電圧は変化するので、バッテリパック22の出力電圧も、当該負荷に対応する指標として挙げることができる。当然に、工具に加えられる負荷を直接的に測定し、その測定値に基づいて通電角の変更を行うこともできる。後述するように、本実施例では、モータ14の電流値に応じて通電角の変更が行われる。
【0058】
以下、本実施例のモータ駆動装置38について詳細に説明するが、モータ駆動装置38の構造及び動作は下記する具体例に限定されない。
【0059】
モータ駆動装置38は、三相インバータ回路40と、三相インバータ回路40を制御するコントローラ70を備えている。三相インバータ回路40は、第1〜第6スイッチング素子41〜46を有している。第1スイッチング素子41は、バッテリパック22の正極22aとモータ14のU相端子14Uの間に設けられている。第2スイッチング素子42は、バッテリパック22の正極22aとモータ14のV相端子14Vの間に設けられている。第3スイッチング素子43は、バッテリパック22の正極22aとモータ14のW相端子14Wの間に設けられている。第4スイッチング素子44は、PGNDとモータ14のU相端子14Uの間に設けられている。第5スイッチング素子45は、PGNDとモータ14のV相端子14Vの間に設けられている。第6スイッチング素子46は、PGNDとモータ14のW相端子14Wの間に設けられている。
【0060】
各々のスイッチング素子41〜46には、Si半導体又はGaN(窒化ガリウム)半導体トランジスタが採用されている。なお、各々のスイッチング素子41〜46には、他のIII−V族半導体トランジスタを採用することもできる。あるいは、各々のスイッチング素子41〜46には、SiC(炭化シリコン)半導体トランジスタを採用してもよい。各々のスイッチング素子41〜46には、特に限定されることなく、様々な種類の半導体スイッチを採用することができる。
【0061】
三相インバータ回路40のPGNDは、カットオフスイッチ48及びシャント抵抗50を介して、バッテリパック22の負極22bへ接続されている。カットオフスイッチ48は、nチャネル型の電界効果トランジスタ(FET)である。カットオフスイッチ48は、コントローラ70に接続されており、コントローラ70によって制御される。例えば、ユーザがトリガスイッチ16をオフすると、カットオフスイッチ48はターンオフされる。それにより、三相インバータ回路40の状態にかかわらず、モータ14はバッテリパック22から電気的に切断される。この回路構成によると、トリガスイッチ16をモータ電流の通電経路から分離することができるので、トリガスイッチ16の接点抵抗による損失を排除することができる。加えて、本実施例のコントローラ70は、カットオフスイッチ48をターンオフする際に、第1〜第3スイッチング素子41〜43をターンオンし、モータ14のコイルを短絡させることによって、モータ14を制動する。
【0062】
本実施例では、カットオフスイッチ48の故障診断のために、カットオフスイッチ48のドレイン端子48aが、抵抗素子52を介して5ボルトの電圧端子に接続されている。また、当該ドレイン端子48aの電圧は、コントローラ70によって監視されている。コントローラ70は、カットオフスイッチ48をオンオフするとともに、ドレイン端子48aの電圧を検出することによって、カットオフスイッチ48の正常/異常を判断することができる。
【0063】
モータ駆動装置38は、電流検出回路54と、電圧検出回路60を備えている。電流検出回路54は、シャント抵抗50に生じた電圧に基づいて、モータ14に流れる電流(モータ電流)を検出することができる。電圧検出回路60は、バッテリパック22の出力電圧(バッテリ電圧)を検出することができる。電流検出回路54及び電圧検出回路60による検出値は、コントローラ70へ入力される。
【0064】
モータ駆動装置38は、ロータ位置検出回路56とロータ速度演算回路58を備えている。ロータ位置検出回路56は、モータ14の位置センサ15に接続されており、位置センサ15の出力信号に基づいて、モータ14のロータの回転位置を検出する。ロータ位置検出回路56による検出値は、ロータ速度演算回路58及びコントローラ70へ入力される。ロータ速度演算回路58は、ロータ位置検出回路56の検出値に基づいて、モータ14のロータの回転速度を算出する。ロータ速度演算回路58による演算値は、コントローラ70へ入力される。
【0065】
モータ駆動装置38は、温度センサ62と、温度検出回路64を備えている。温度センサ62は、カットオフスイッチ48の近傍に配置されており、カットオフスイッチ48の温度に応じた信号を温度検出回路64へ出力する。温度検出回路64は、温度センサ62の出力信号に基づいて、カットオフスイッチ48の温度を検出する。検出されたカットオフスイッチ48の温度は、コントローラ70へ教示される。なお、温度センサ62は、三相インバータ回路40、コントローラ70、モータ14のいずれかの近傍に配置してもよい。
【0066】
コントローラ70は、ゲート駆動回路72とPWM信号生成部74と過電流検出部76を備えている。ゲート駆動回路72は、スイッチング素子41〜46のゲートにそれぞれ接続されている。ゲート駆動回路72は、検出されたロータの回転位置に応じて、スイッチング素子41〜46へ選択的にオン信号を出力する。それにより、モータ14の各相端子14U、14V、14Wが、バッテリパック22の正極22a又は負極22bへ選択的に接続される。PWM信号生成部74は、トリガスイッチ16の操作量に応じて、PWM(パルス幅変調)信号を生成する。ゲート駆動回路72は、PWM信号生成部74からのPWM信号に応じて、スイッチング素子41〜46をPWM制御する。その結果、トリガスイッチ16の操作量に応じて、モータ14へ印加される実質的な電圧値が調整される。
【0067】
過電流検出部76は、モータ14の電流に関する制限値を記憶している。一例ではあるが、本実施例では当該制限値が60アンペアに設定されている。過電流検出部76は、検出されたモータ14の電流値を、制限値と比較することによって、モータ14の過電流を検出する。過電流検出部76による検出結果は、ゲート駆動回路72へ入力される。ゲート駆動回路72は、モータ14の過電流が検出された場合に、モータ14のデューティ比を低下させる。それにより、モータ14のロックが防止され、モータ14の焼損が防止される。
【0068】
コントローラ70はさらに、進角・通電角決定部78と記憶部80を有している。進角・通電角決定部78は、電流検出回路54による検出値に基づいて、通電角と進角を決定する。先に説明したように、通電角は120度と150度のいずれかに決定され、その通電角に応じて進角も決定される。一例ではあるが、本実施例では、120度の通電角に対しては22.5度の進角が設定されており、150度の通電角に対しては30度の進角が設定されている。通電角の選択肢(本実施例では120度と150度)、各通電角に対する進角の値、後述する第1閾値及び第2閾値といったデータは、記憶部80に予め記憶されている。進角・通電角決定部78は、記憶部80に記憶された当該データに基づいて、通電角及び進角を決定する処理を実行する。記憶部80に記憶させる当該データは、電動工具(ここではマルノコ10)の構成、用途、機能に応じて適宜設定するとよい。
【0069】
図7は、通電角を決定する処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、主に、コントローラ70の進角・通電角決定部78によって実行される。
図7に示すように、先ず、電流検出回路54による検出値に基づいて、モータ14の電流値が検出される(ステップS112)。現時点の通電角が120度の場合(ステップS114でYES)、検出された電流値は第1閾値と比較される(ステップS116)。この場合、検出された電流値が第1閾値を超えていれば(ステップS116でYES)、通電角は120度のままに維持される(ステップS120)。一方、検出された電流値が第1閾値以下であれば(ステップS116でNO)、通電角は150度に変更される(ステップS122)。このとき、進角も22.5度から30度へ同時に変更される。
【0070】
一方、現時点の通電角が150度の場合(ステップS114でNO)、検出された電流値は第2閾値と比較される(ステップS118)。この場合、検出された電流値が第2閾値を超えていれば(ステップS118でYES)、通電角は120度に変更される(ステップS120)。このとき、進角も30度から22.5度へ同時に変更される。一方、検出された電流値が第2閾値以下であれば(ステップS118でNO)、通電角は150度のままに維持される(ステップS122)。
【0071】
上記のように、通電角を120度から150度へ変更する場合と、150度から120度へ変更する場合では、その変更の要否の判定に異なる閾値が用いられている。ここで、モータ14の電流値に関する閾値では、第1閾値を第2閾値よりも小さい値に設定する必要がある。それにより、通電角の変更処理にヒステリシス性が与えられ、検出された電流値が閾値の近傍で細かに変動する場合でも、通電角の変更が無用に繰り返されることが防止される。第1閾値と第2閾値の値は特に限定されないが、本実施例では第1閾値が10アンペアに設定されており、第2閾値が15アンペアに設定されている。
【0072】
先にも説明したように、通電角を変更する処理では、鋸刃30への負荷に対応する他の指標を用いることもできる。
図8は、モータ14の電流値に代えて、モータ14の回転数を用いた例を示す。
図8に示す処理では、先ず、ロータ速度演算回路58による演算結果に基づいて、モータ14の回転数が検出される(ステップS212)。現時点の通電角が120度の場合(ステップS214でYES)、検出された回転数は第1閾値と比較される(ステップS216)。この場合、検出された回転数が第1閾値よりも低ければ(ステップS216でYES)、通電角は120度のままに維持される(ステップS220)。検出された回転数が第1閾値以上であれば(ステップS216でNO)、通電角は150度に変更される(ステップS222)。このとき、進角も22.5度から30度へ同時に変更される。
【0073】
一方、現時点の通電角が150度の場合(ステップS214でNO)、検出された回転数は第2閾値と比較される(ステップS218)。この場合、検出された回転数が第2閾値よりも低ければ(ステップS218でYES)、通電角は120度に変更される(ステップS220)。このとき、進角も30度から22.5度へ同時に変更される。一方、検出された回転数が第2閾値以上であれば(ステップS218でNO)、通電角は150度のままに維持される(ステップS222)。このように、モータ14の回転数を用いる場合でも、通電角を120度から150度へ変更する場合と、150度から120度へ変更する場合では、その変更の要否の判定において異なる閾値を用いることができる。ここで、モータ14の回転数に関する閾値では、第1閾値を第2閾値以上の値に設定する必要がある。
【0074】
図9は、モータ14の電流値及び回転数に代えて、バッテリパック22の電圧値を用いた例を示す。
図9に示す処理では、先ず、電圧検出回路60による検出値に基づいて、バッテリパック22の電圧値が検出される(ステップS312)。現時点の通電角が120度の場合(ステップS314でYES)、検出された電圧値は第1閾値と比較される(ステップS316)。この場合、検出された電圧値が第1閾値よりも低ければ(ステップS316でYES)、通電角は120度のままに維持される(ステップS320)。検出された電圧値が第1閾値以上であれば(ステップS316でNO)、通電角は150度に変更される(ステップS322)。このとき、進角も22.5度から30度へ同時に変更される。
【0075】
一方、現時点の通電角が150度の場合(ステップS314でNO)、検出された電圧値は第2閾値と比較される(ステップS318)。この場合、検出された電圧値が第2閾値よりも低ければ(ステップS318でYES)、通電角は120度に変更される(ステップS320)。このとき、進角も30度から22.5度へ同時に変更される。一方、検出された電圧値が第2閾値以上であれば(ステップS318でNO)、通電角は150度のままに維持される(ステップS322)。このように、バッテリパック22の電圧値を用いる場合でも、通電角を120度から150度へ変更する場合と、150度から120度へ変更する場合では、その変更の要否の判定において異なる閾値を用いることができる。ここで、バッテリパック22の電圧値に関する閾値では、第1閾値を第2閾値よりも大きな値に設定する必要がある。
【0076】
上記に加え、本実施例のマルノコ10では、温度センサ62による検出温度に応じて、通電角の変更も行われる。
図5に示すように、通電角を120度としてマルノコ10を無負荷運転(空運転)した場合、モータ14の回転数は21,200回転となり、モータ14の電流値は1.51Aとなる。それに対して、通電角を150度としてマルノコ10を無負荷運転(空運転)すると、モータ14の回転数は34,800回転に達し、モータ14の電流値も7.0Aまで上昇する。このように、通電角を大きくすると、無負荷運転時の電流値が大幅に上昇し、モータ14やモータ駆動装置38の過熱が起こり得る。そこで、本実施例のマルノコ10では、モータ14又はモータ駆動装置38の温度が上昇したときに、通電角を150度から120度へ変更するようになっている。
【0077】
図10は、上記の処理、即ち、温度センサ62による検出温度に応じて通電角を変更する処理のフローチャートである。
図10に示す処理では、先ず、温度センサ62及び温度検出回路64により、カットオフスイッチ48の温度が検出される(ステップS412)。現時点の通電角が120度の場合(ステップS414でYES)、検出された温度は第1閾値と比較される(ステップS416)。この場合、検出された温度が第1閾値よりも高ければ(ステップS416でYES)、通電角は120度のままに維持される(ステップS420)。検出された温度が第1閾値以下であれば(ステップS416でNO)、通電角は150度に変更される(ステップS422)。このとき、進角も22.5度から30度へ同時に変更される。
【0078】
一方、現時点の通電角が150度の場合(ステップS414でNO)、検出された温度は第2閾値と比較される(ステップS418)。この場合、検出された温度が第2閾値よりも高ければ(ステップS418でYES)、通電角は120度に変更される(ステップS420)。このとき、進角も30度から22.5度へ同時に変更される。一方、検出された温度が第2閾値以上であれば(ステップS418でNO)、通電角は150度のままに維持される(ステップS422)。このように、カットオフスイッチ48の温度が異常に上昇したときは、モータ14の電流値が低下するように、通電角が150度から120に変更される。この処理においても、通電角を120度から150度へ変更する場合と、150度から120度へ変更する場合では、その変更の要否の判定において異なる閾値を用いることができる。ここで、温度に関する閾値では、第1閾値を第2閾値よりも小さな値に設定する必要がある。
【0079】
本実施例では、通電角を変更することによって、電動工具の出力向上を図っている。それに対して、他の実施形態では、通電角を変更することによって、電動工具の電気効率向上を図ることもできる。
図11は、通電角と電気効率を示すグラフである。
図11に示すように、モータ電流が比較的に小さい時は、通電角を120度に設定したときの方が電気効率が良く、モータ電流が比較的に大きい時は、通電角を150度に設定したときの方が電気効率が良くなる。そのことから、モータ電流が比較的に小さい時は通電角を120度に設定し、モータ電流が比較的に大きい時は通電角を150度に設定すると、電動工具を常に高い電気効率で運転することができる。ここで、モータ電流は工具に加えられる負荷に対応する。よって、電気効率を向上させる場合は、工具に加えられる負荷が大きいときほど通電角を大きな値に設定することになり、これは
図7、8、9に示す出力向上を図る場合と正反対の処理を行うことを意味する。
【0080】
上記に関して、他の一実施形態では、モータ駆動装置38が、「工具に加えられる負荷が小さいときほど通電角を大きな値に設定する高出力モード」と、「工具に加えられる負荷が大きいときほど通電角を大きな値に設定する省エネモード」を、選択可能に構成することも有効である。この場合、モータ駆動装置38は、バッテリパック22の充電レベルに応じて、上記した二つのモードを選択することが有効である。即ち、バッテリパック22が十分に充電されている間は「高出力モード」での運転が行われ、バッテリパック22の充電レベルが所定レベルまで低下した時は、「省エネモード」への切り換えが行われることが好ましい。ここで、バッテリパック22の充電レベルは、例えば、電圧検出回路60によるバッテリパック22の検出電圧に基づいて推定することができる。従って、モータ駆動装置38は、電圧検出回路60による検出値に応じて、上記した二つのモードを適切に選択することができる。
【実施例2】
【0081】
図面を参照して、実施例2の電動工具110について説明する。
図12に示すように、本実施例の電動工具110は、実施例1の電動工具10と比較して、本体112に設けられた表示部132をさらに備えている。その他の構成については、実施例1の電動工具10と同じである。実施例1の説明を援用することによって、重複する説明は避けることとする。
【0082】
表示部132は、報知器の一例であり、各種の情報をユーザに報知することができる。表示部132は、モード表示LED134及びゲージ表示LED136を含む、複数のLEDを備えている。表示部132は、一又は複数のLED134、136を選択的に点灯することによって、ユーザに報知すべき各種の情報を表示する。なお、表示部132は、これらのLEDに代えて、あるいは加えて、他の発光体や液晶表示パネルを有することもできる。表示部132の構成は、特に限定されない。
【0083】
図14に示すように、本実施例の電動工具110は、表示部132のLED134、136を駆動する第2コントローラ140を備えている。第2コントローラ140は、マイクロプロセッサ(又はマイクロコンピュータ)を用いて構成されている。第2コントローラ140は、実施例1で説明したコントローラ70(以下、第1コントローラ70とする)と同様に(
図2参照)、温度検出回路64、ロータ速度演算回路58、電圧検出回路60、電流検出回路54及びトリガスイッチ16とそれぞれ電気的に接続されている。なお、第1及び第2コントローラ70、140は、共通のマイクロプロセッサ(又はマイクロコンピュータ)を用いて構成することができる。
【0084】
第2コントローラ140は、モード判定部142と、残容量判断部144と、負荷判断部146と、表示情報選択部148と、LED駆動部150を備えている。モード判定部142は、電流検出回路54による検出値に基づいて、第1コントローラ70で設定された通電角を判別する。先に説明したように、第1コントローラ70では、電流検出回路54による検出値に関して第1閾値及び第2閾値を記憶しており、当該検出値と二つの閾値との大小関係に基づいて、通電角を150度と120度のいずれかに設定する(
図7参照)。従って、モード判定部142も同一の第1閾値及び第2閾値を記憶しており、電流検出回路54による検出値と記憶している二つの閾値との大小関係に基づいて、第1コントローラ70が設定するべき通電角を判断する。このように、第2コントローラ140は、第1コントローラ70が設定する通電角を、実際に設定された通電角にかかわらず、独自に判別する。第2コントローラ140の判別結果は、表示情報選択部148へ送られる。
【0085】
上述のように、モード判定部142は、モータ14の電流値に応じて、第1コントローラ70で設定された通電角を判別する。ここで、モータ14の電流値は、工具である鋸刃30に加えられている負荷に対応する指標である。従って、モード判定部142は、第1コントローラ70で設定された通電角を判別する際に、モータ14の電流値に代えて、鋸刃30への負荷に対応する他の指標を利用してもよい。利用できる他の指標としては、モータ14の回転数、バッテリパック22の電圧値、モータ14やモータ駆動装置38の温度等が挙げられる。
【0086】
残容量判断部144は、電圧検出回路60による検出値(即ち、バッテリパック22の電圧値)に基づいて、バッテリパック22の残容量(充電レベル)を判断する。残容量判断部144の判断結果は、表示情報選択部148へ送られる。なお、残容量判断部144は、バッテリパック22の電圧値に代えて、他の指標に基づいてバッテリパック22の残容量を判断してもよい。
【0087】
負荷判断部146は、電流検出回路54による検出値(即ち、モータ14の電流値)に基づいて、工具負荷(鋸刃30に加えられている負荷)を判断する。負荷判断部146の判断結果は、表示情報選択部148へ送られる。なお、負荷判断部146は、モータ14の電流値に代えて、他の指標に基づいて工具負荷を判断してもよい。
【0088】
表示情報選択部148は、モード判定部142、残容量判断部144及び負荷判断部146から送られる情報のなかから、表示部132に表示すべき情報を選択する。表示情報選択部148は、トリガスイッチ16と電気的に接続されており、トリガスイッチ16に加えられた操作に応じて、表示すべき情報を選択する。この点については、後に
図18を参照して説明する。選択された情報は、LED駆動部150に送られる。LED駆動部150は、受信した情報に基づいて、表示部132のLED134、136を選択的に点灯する。それにより、表示部132には、通電角についての情報(即ち、運転モードの情報)と、バッテリパック22の残容量についての情報と、工具負荷についての情報が、選択的に表示される。
【0089】
図15は、通電角についての表示例を示す。
図15(A)に示すように、通電角が150度であるときは、モード表示LED134が点灯する。一方、
図15(B)に示すように、通電角が120度であるときは、モード表示LED134が消灯する。ユーザは、モード表示LED134が点灯しているのか否かに基づいて、現在の通電角が150度であるのか120度であるのかを知ることができる。
【0090】
図16は、バッテリパック22の残容量についての表示例を示す。
図16(A)〜(C)に示すように、バッテリパック22の残容量は、ゲージ表示LED136によって表示される。
図16(A)は、バッテリパック22の残容量が少ないときを示す。
図16(B)は、バッテリパック22の残容量がおよそ半分であるときを示す。
図16(C)は、バッテリパック22の残容量が多いときを示す。このように、多くのゲージ表示LED136が点灯するときほど、バッテリパック22の残容量が多いことを示す。
【0091】
図17は、工具負荷についての表示例である。
図17(A)〜(C)に示すように、工具負荷は、ゲージ表示LED136によって表示される。
図17(A)は、工具負荷が小さいときを示す。
図17(B)は、工具負荷が中程度であるときを示す。
図17(C)は、工具負荷が大きいときを示す。このように、多くのゲージ表示LED136が点灯するときほど、工具負荷が大きいことを示す。
【0092】
図18は、表示部132の動作を示すフローチャートである。
図18を参照して、表示部132の動作について説明する。先ず、ユーザがトリガスイッチ16をオン操作すると(ステップS512でYES)、ゲージ表示LED514が消灯される(ステップS514)。次いで、第1コントローラ70によってモータ14の駆動が開始される。第2コントローラ140は、通電角の判別を行い(ステップS518)、通電角が150度であればモード表示LEDを点灯させ(ステップS520)、通電角が120度であればモード表示LEDを消灯する(ステップS522)。さらに、モータ14の電流値が検出され(ステップS526)、第2コントローラ140は工具負荷を判断し、ゲージ表示LEDに工具負荷が表示される(ステップS526)。これらの動作は、トリガスイッチ16がオフ操作されるまで、繰り返し実行される(ステップS528)。
【0093】
トリガスイッチ16がオフ操作されると(ステップS528でYES)、ゲージ表示LED136が消灯され(ステップS530)、モータ14の駆動が停止される(ステップS532)。その後、第2コントローラ140は、バッテリパック22の残容量を判断し(ステップS534)、ゲージ表示LED136によって当該残容量を表示する(ステップS536)。このように、トリガスイッチ16がオン操作されている間は、表示部132が、設定された通電角(即ち、運転モード)と、工具に加えられている負荷を表示する。そして、トリガスイッチ16がオフ操作されると、表示部132が、バッテリパック22の残容量を表示する。
【0094】
表示部132による表示方式は、上述の具体例に限定されない。例えば、
図19(A)から
図19(H)は、工具負荷についての他の表示例を示す。
図19(A)から
図19(D)に示すように、工具負荷が中間値よりも小さいときは、モード表示LED134を点灯させる。そして、その範囲において、三つのゲージ表示LED136により、工具負荷の大きさを段階的に表示する。
図19(E)から
図19(G)に示すように、工具負荷が中間値よりも大きいときは、モード表示LED134を消灯させる。そして、その範囲において、三つのゲージ表示LED136により、工具負荷の大きさを段階的に表示する。
図19(H)に示すように、工具負荷が過大であるときは、三つのゲージ表示LED136を点滅させてもよい。なお、
図19、20において、半分にのみハッチングが付されたLED134、136は、点滅していることを示す。
【0095】
図20(A)から
図20(H)は、工具負荷についての他の表示例を示す。この表示例では、各ゲージ表示LED136について、消灯、点滅、点灯の三つの状態を利用する。それにより、
図20(A)から
図20(H)に示すように、三つのゲージ表示LEDのみを用いて、工具負荷の大きさを八段階(あるいはより多段階)に表示することができる。
【0096】
以上、具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、それらの具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。特に、本実施例で説明した技術は、マルノコ10に限定されず、他の種類の電動工具にも広く採用することができる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的な有用性を持つものである。