(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798159
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】埋め込み可能な薬物送達デバイス、及び当該デバイスを補充するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20151001BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20151001BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61M37/00 560
A61M39/02 100
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-157652(P2013-157652)
(22)【出願日】2013年7月30日
(62)【分割の表示】特願2010-541572(P2010-541572)の分割
【原出願日】2009年1月2日
(65)【公開番号】特開2014-28145(P2014-28145A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年7月30日
(31)【優先権主張番号】61/018,747
(32)【優先日】2008年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509221582
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】メン,エリス
(72)【発明者】
【氏名】ヒュマユン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ロナリー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ポ−イン
(72)【発明者】
【氏名】サーティ,サローメ
【審査官】
倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/106557(WO,A2)
【文献】
特表2005−521433(JP,A)
【文献】
特表2004−535886(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01649884(EP,A1)
【文献】
国際公開第2004/073551(WO,A2)
【文献】
特開平02−191468(JP,A)
【文献】
米国特許第05201715(US,A)
【文献】
国際公開第2006/096686(WO,A1)
【文献】
特表2006−501014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 37/00
A61M 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能な薬物送達デバイスであって、
薬リザーバと、
貫通する補充針を受け入れるためののど部を含む針入口であって、前記のど部が、前記薬リザーバと流体連絡する玄関部に通じている、針入口と、
前記針入口を取り囲む可視化リングであって、前記可視化リングが、前記針入口の位置を視覚的に示すように眼組織を通して見ることができる、可視化リングと、
前記可視化リングの場所を確認する触感を医師に与えるように、前記可視化リングを動かす又は振動させるための電子回路とを含む、埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記玄関部が、(i)前記のど部より幅広く、(ii)前記のど部を通り抜けて前記玄関部への針の進行を停止するための、前記のど部に向かい合った壁上に当たり止めを含む、請求項1に記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記当たり止めは、出口を含む針の進行が、前記出口が前記玄関部と流体連絡する位置で停止するような大きさになっている、請求項2に記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記当たり止めの上面が、カップ形状である、請求項2又は3に記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記当たり止めが生体適合性の材料から構成される、請求項2〜4の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記当たり止めが、金属、プラスチック、又は複合材料の少なくとも1つから構成される、請求項2〜4の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記当たり止めが、PDMS、ポリイミド、ポリプロピレン、PEEK、ポリカーボネート、アセチルフィルム、ポリオキシメチレンプラスチック、金、ステンレス鋼、ニッケル、及びクロムからなるグループから選択された材料から構成される、請求項2〜4の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記玄関部と前記薬リザーバとの間に配置されたチェックバルブを更に含む、請求項1〜7の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記針入口が更に、セルフシール材料からなる、請求項1〜8の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記可視化リングが生体適合性の材料から構成される、請求項1〜9の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記可視化リングが、前記補充針による貫入に耐える材料から構成される、請求項1〜9の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記可視化リングが、患者の結膜を通して見ることができる、請求項1〜11の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記可視化リングが蛍光性の色素を含む、請求項1〜12の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記蛍光性の色素が、発光性エーロゲル、ナノ粒子、フタロシアニン色素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、クマリン、シアニン、Alexa Fluor(登録商標)、Dylight Fluor(登録商標)、量子ドット、緑色蛍光タンパク質、及びルシフェリンからなるグループから選択される、請求項13に記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス
【請求項15】
前記可視化リングが発光ダイオードを含む、請求項1〜14の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項16】
発光ダイオード、及び前記可視化リングへ及び前記可視化リングの周りに前記発光ダイオードからの光を伝えるための光ファイバを更に含む、請求項1〜14の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記可視化リングが、表面のエコー輝度および音響陰影を強化する材料からなる、請求項1〜9、及び12〜13の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記可視化リングが磁性材料を含む、請求項1〜9、及び12〜13の何れかに記載の埋め込み可能な薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態において、本発明は、埋め込み可能な薬物送達デバイス、及び係るデバイスを補充するための装置および方法に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2008年1月3日に出願された米国仮特許出願第61/018,747号の優先権を主張し、且つそれらの恩恵を求めており、係る仮特許出願は参照により全体的に本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦支援の研究または開発に関する記述
米国政府は、本発明における一括払いライセンス、及び国立科学財団により授与された交付番号ERC EFC-0310723及びEFC-0547544の条件により提供される場合に、妥当な条件で第三者にライセンスを供与するように特許権者に要求する限られた状況における権利を有する。
【背景技術】
【0004】
背景
薬物治療は、患者の体の特定部分に治療薬(例えば、薬剤、薬など)を投与することが必要な場合が多い。しかしながら、いくつかの疾患は、現在利用可能な治療で治療されることが困難であり、及び/又はアクセスを実現することが困難な解剖学的領域に薬を投与することを必要とする。
【0005】
患者の目(眼球)は、到達することが困難な解剖学的領域の典型的な例であり、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、及び緑内障を含む多くの視力を脅かす疾病は、多くの現在利用可能な治療で治療することが困難である。例えば、経口薬は、全身性副作用を有する可能性があり;局所適用は、ひりひりさせ、患者の薬剤服用順守を不十分にし;注射は概して、医療訪問を必要とし、有痛性であり感染の危険性がある可能性があり;及び持続放出性の挿入管(implant)は一般に、それらの供給物を使い果たした後に取り除かれる必要がある。
【0006】
別の例は、乳癌または髄膜腫のような癌であり、この場合、ラパマイシン、ベバシズマブ(例えば、アバスチン(
登録商標))、又はイリノテカン(CPT−11)のような非常に有毒性の大量の化学療法剤が一般に、患者の静脈内に投与され、それは標的部位の外側で多数の望ましくない副作用という結果になる可能性がある。
【0007】
詰め替え可能な薬リザーバ、カニューレ、及びチェックバルブ等を有することができる埋め込み可能な薬物送達デバイスは概して、特定の標的に対する薬剤溶液の制御された送達を可能にする。薬リザーバ内の薬を使い果たす場合、患者の体内に埋め込まれたデバイスがそのまま残されていると同時に、医師が、例えば注射器でもってリザーバを補充することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0039792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、注射針が、補充中にデバイスの中へ偶発的に余計に挿入される場合、デバイスは損傷を受ける可能性がある。係る損傷は、当該デバイスを取り外して別の物と交換することを必要とする可能性があり、それによりデバイスを使用することに関する幾つかの利点を取り除く。デバイスが損傷を受けていない場合でさえも、デバイスの中へ針を余計に挿入することは、例えば、デバイスのリザーバの底部壁に針の先端部を埋め込む可能性があり、それにより針の管腔が詰まる。更に、針のデバイスの中への不適当な挿入は、不適当な場所への薬の送達につながる可能性がある。
【0010】
従って、改善された埋め込み可能な薬物送達デバイス、及び係るデバイスを補充するための装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の概要
種々の実施形態において、本発明は、患者の体内に埋め込まれた薬物送達デバイスをそのままで補充するための装置と方法を特徴とする。当該装置は概して、当該デバイスへの損傷の危険性を最小限にし、それによりその有効寿命を最大にするように補充を行うことを可能にする特徴部分を含み、当該方法は一般に、そのような補充を行うことを可能にするステップを含む。例えば、本明細書で説明される補充針の実施形態は、補充の工程中に、当該針が薬物送達デバイスを貫入する度合いを制限するために、針の深さゲージを利用する。別の例として、薬物送達デバイス自体が、針の内部への貫入の範囲を制限するための当たり止めを含むことができる。更に、薬物送達デバイスの針入口の場所を見つける際に医師を助けるために、及び針による偶発的な針刺しから患者を保護するために、本発明の実施形態は、針入口を特定する可視化リングを利用する。これらの特徴は、他の特徴と共に、薬物送達デバイスの迅速な補充を容易にすると同時に、当該デバイスへの損傷および患者への損傷の危険性を最小限にする。従って、薬物送達デバイスを補充する際に医師により費やされる時間が低減され(コスト削減をもたらすことができる)、薬物送達デバイスの有用寿命を長くすることができ、薬物送達デバイスを補充しようとする過程において損傷された薬物送達デバイスを交換する必要性が低減される。
【0012】
一般に、一態様において、本発明の実施形態は、埋め込み可能な薬物送達デバイスを補充するための針を特徴とする。薬物送達デバイスは、針入口を有し、その針入口はのど部を含み、のど部はのど部を貫通する針を受け入れる。一方、針は、先端部において末端をなす中空のシャフトと、先端部に近接して当該シャフトに沿った流体出口と、 針入口の中への針の進入の範囲を制限するための手段とを含むことができる。一実施形態において、針の先端部は円錐状である。針の流体出口は、先端部と制限の手段の中間に配置され得る。
【0013】
様々な実施形態において、制限の手段は、当該シャフト上の当たり止めを含む。例えば、当たり止めは、当該シャフトを取り囲み、且つ当該シャフトに固定的に装着されたリングとすることができる。当該リングは当該入口ののど部の幅より大きい外径を有することができる。代案として、当該当たり止めは、球状、円筒状、長方形、又はピラミッド形とすることができる。特定の実施形態において、制限の手段は、金属、プラスチック、及び/又は複合材料から構成される。例えば、制限の手段は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような、生体適合性の材料から構成され得る(次の説明は主としてPDMSに言及するが、これは便宜上であり、PDMSへの言及は、ポリジオルガノシロキサン(即ち、シリコーン)ポリマーの任意の適切な生体適合性形態を暗示することが意図されている。)。制限の手段が構成され得る他の例示的な材料は、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、アセチルフィルム、ポリオキシメチレンプラスチック、金、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、及びそれらの組み合わせを含む。
【0014】
一般に、別の態様において、本発明の実施形態は、埋め込み可能な薬物送達デバイスを特徴とする。その薬物送達デバイスは、薬リザーバ、針入口、及び玄関部を含む。針入口は、のど部を含むことができ、のど部はのど部を貫通する補充針を受け入れる。 のど部は玄関部に通じており、その玄関部は、(i)のど部より幅広く、(ii)のど部を通り抜けて玄関部への針の進行を停止するための、のど部に向かい合った壁上に当たり止めを含み、(iii)薬リザーバと流体連絡している。
【0015】
様々な実施形態において、薬物送達デバイスは、玄関部と薬リザーバとの間に配置されたチェックバルブも含む。一方、針入口は、セルフシール材料も含むことができる(例えば、その上面に)。一実施形態において、玄関部内の当たり止めは、出口を含む針の進行が、その出口が玄関部と流体連絡する位置で停止するような大きさになっている。当たり止めの上面はカップ形状とすることができる。特定の実施形態において、当たり止めは、金属、プラスチック、及び/又は複合材料から構成される。例えば、当たり止めは、PDMSのような生体適合性材料から構成され得る。当たり止めが構成され得る他の例示的な材料は、ポリイミド、ポリプロピレン、PEEK、ポリカーボネート、アセチルフィルム、ポリオキシメチレンプラスチック、金、ステンレス鋼、ニッケル、クロム、及びそれらの組み合わせを含む。
【0016】
一般に、更に別の態様において、本発明の実施形態は、埋め込み可能な薬物送達デバイスを特徴とし、その埋め込み可能な薬物送達デバイスは、薬リザーバ、針入口、及び当該針入口を取り囲む可視化リングを含む。針入口は、のど部を含み、のど部はのど部を貫通する補充針を受け入れる。のど部は、薬リザーバと流体連絡する玄関部に通じることができる。一方、可視化リングは、針入口の位置を視覚的に示すように眼組織(例えば、患者の結膜)を通して見ることができる。
【0017】
様々な実施形態において、可視化リングは、生体適合性の材料、及び/又は補充針による貫入に耐える材料から構成される。可視化リングは、発光性エーロゲル、ナノ粒子、フタロシアニン(PC)色素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、クマリン、シアニン、Alexa Fluor(
登録商標)、Dylight Fluor(
登録商標)、量子ドット、緑色蛍光タンパク質、及び/又はルシフェリンのような、1つ又は複数の蛍光性の色素を含むことができる。別の実施形態において、可視化リングは発光ダイオードを含む。代案として、薬物送達デバイスに存在する発光ダイオードは、可視化リングから離れて位置することができ、光ファイバを用いて当該可視化リングへ及び当該可視化リングの周りに発光ダイオードからの光を伝えることができる。また、可視化リングは、表面のエコー輝度および音響陰影を強化する材料も含むことができる。また、可視化リングを動かす又は振動させるために、電子回路が薬物送達デバイスに存在することもできる。更に別の実施形態において、可視化リングは磁性材料を含む。
【0018】
一般に、更に別の態様において、本発明の実施形態は、患者の内部に埋め込まれた薬物送達デバイスを補充するための方法を特徴とする。その方法は、中空シャフト及びそのシャフト上の当たり止めを含む針の遠位先端部を、薬物送達デバイスの針入口へ挿入することを含む。針は、当たり止めが当該入口の中への針の更なる進入を制限するまで、当該針入口の中へ進められ得る。薬は、針の中空シャフトの中を通って、先端部に近接して針のシャフトに沿って配置された流体出口を出て、薬物送達デバイスの中へ供給され得る。この方法によれば、当たり止めは、針のシャフトを取り囲み、且つ当該入口の幅より大きい外径を有するリングとすることができる。
【0019】
一般に、更なる態様において、本発明の実施形態は、患者の内部に埋め込まれた薬物送達デバイスを補充するための別の方法を特徴とする。その方法は、針の遠位先端部を、薬物送達デバイスの針入口へ挿入することを含む。針は、針入口に向かい合った玄関部の壁に配置された当たり止めが針の更なる進入を止めるまで、薬物送達デバイスの玄関部の中へ針入口を介して進められ得る。薬は、針の中空シャフトの中を通って、当該先端部に近接して針の前記シャフトに沿って配置された流体出口を出て、玄関部の中へ供給され得る。当たり止めは、針の出口が玄関部と流体連絡する位置で針の更なる進入を停止することができる。
【0020】
様々な実施形態において、これらの方法は、針の遠位先端部を針入口の中へ挿入する前に、針入口の位置を視覚的に示す可視化リングの場所を見つけることを含む。可視化リングは、針入口を取り囲むことができ、患者の結膜を通して見ることができる。
【0021】
本明細書で開示された本発明の実施形態の利点および特徴と共に、これらの及び他の目的は、以下の説明、添付図面、及び特許請求の範囲に対する参照を通じてより明らかになるであろう。更に、理解されるべきは、本明細書で説明された様々な実施形態の特徴は、互いに排他的ではなく、様々な組み合わせ及び置き換えで存在することができる。
【0022】
図面において、様々な図面の全体にわたって、同じ参照符号は概して、同じ部品を指す。また、図面は必ずしも一律の縮尺に従っておらず、むしろ概して本発明の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明の様々な実施形態は、以下の図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による、埋め込み可能な薬物送達デバイスの上面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、針入口と薬リザーバとの間の内部構造の略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、補充針の立面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、補充針の略図であり、補充針がそれに固定的に取り付けられた当たり止めを有し、薬物送達デバイスの一部内に挿入された状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、玄関部の1つの壁に固定的に取り付けられた当たり止めを有する薬物送達デバイスの一部内に挿入された補充針の略図である。
【
図6】本発明の一実施形態による、薬物送達デバイスの、患者の目の内部への埋め込みを示す患者の目の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明
一般に、本発明の実施形態は、例えば患者の目の中のような、患者の体内に埋め込み可能な薬物送達デバイス、及びそれらのデバイスを補充するための装置と方法に関する。特定の実施形態において、埋め込み可能な薬物送達デバイスは、小さいサイズと詰め替え可能なリザーバを兼ねる。小さいサイズは、デバイスから患者への不快感を最小限にすると同時に、詰め替え可能なリザーバにより、デバイスは、交換される代わりにそのままで詰め替えられる(補充される)ことが可能になる。そのようなものだから、単一薬剤の溶液のような流体は、長期間にわたって患者に供給され得る。
【0025】
図1は、例示的な埋め込み可能な薬物送達デバイス100を概略的に示す。例示的なデバイス100は、基部104、詰め替え可能な薬リザーバ108、詰め替え可能な薬リザーバ108と流体連絡する薬物送達カニューレ112、及び更に後述されるような、詰め替え可能な薬リザーバ108と流体連絡する針入口116を含む。一般に、詰め替え可能な薬リザーバ108は、送達されるべき治療液を収容する一方で、カニューレ112は当該治療液を標的部位に送る。カニューレ112は、例えば、患者の目への挿入を容易にするために先細にされ得る。一般に、薬リザーバ108は、補充針120を針入口116の中へ且つそれを貫いて挿入することにより補充され得る。例えば、「MEMS Device and Method for Delivery of Therapeutic Agents」と題する
特許文献1(参照によりその開示内容が全体的に本明細書に組み込まれる)で説明されるように、薬物送達デバイス100は、治療液を標的部位に送達するように機械的に(例えば、手で)又は電気分解的に付勢され得る。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態による、針入口116と薬リザーバ108との間の薬物送達デバイス100の内部構造を概略的に示す。図示されるように、針入口116は、補充針120を、貫通して受け入れるための表面124及びのど部128を含む。のど部128は、薬リザーバ108と流体連絡する(例えば、チェックバルブ136を介して)玄関部132へ通じている。図示されたように、補充針120は、針入口116の表面124を刺し通し、そののど部128を通って進み、それにより玄関部132にアクセスする。一実施形態において、針120から玄関部132への治療液の注入は、チェックバルブ136を介して流体をリザーバ108内へ押し込み、これによりリザーバ108が補充される。
【0027】
また、
図1及び
図2に示されているように、可視化リング140は、埋め込み可能な薬物送達デバイス100の針入口116を取り囲むことができる。一実施形態において、可視化リング140は、デバイス100が患者の目の中に埋め込まれた場合に、デバイス100のユーザ(例えば、医師)に針入口116の位置を視覚的に示すように、眼組織を介して(例えば、患者の結膜を介して)目に見える材料または色素から作成される。更に、可視化リング140を形成する材料または色素は、生体適合性とすることができ、及び/又は補充針120が偶発的に当該可視化リングと接触して配置される場合に、補充針120による貫入に耐えることができる。可視化リング140が構成され得る例示的な材料は、以下に限定されないが、PDMS、ポリイミド、PEEK、金、ステンレス鋼、及びチタニウムを含む。可視化リング140を形成する材料または色素は、紫外線(UV)光のような特定のタイプの光にさらされた場合に任意に蛍光を発することができる。日中に、蛍光性の色素は白または昼光色を有し、従って、一般に外見上見えない。しかしながら、UV放射による励起の下で、蛍光性色素は一般に、強い蛍光色を放射する。可視化リング140又はその一部を形成することができる例示的な色素は、以下に限定されないが、発光性エーロゲル、ナノ粒子(例えば、シリコンのナノ粒子)、フタロシアニン(PC)色素、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン(TRITC)、クマリン、シアニン、Alexa Fluor(
登録商標)、Dylight Fluor(
登録商標)、量子ドット、緑色蛍光タンパク質、及び/又はルシフェリンを含む。係る色素を使用することにより、可視化リング140及びその基板は一般に、医師がリング140をUV光にさらすような係る時間まで外見上見えなくすることができる。その時点で、医師は、視覚的に、又は例えば、蛍光立体顕微鏡を用いて、リング140を容易に視覚化することができる。
【0028】
また、可視化リング140は、医師が特定の画像装置を使用した場合に針入口116をより良く視覚化することができるように、表面のエコー輝度および音響陰影を強化する材料で作成され得る。係る材料は、医師が超音波スキャナ、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の可視化ツール、又は皮下にあるリング140を視覚化するための他のコヒーレンススキャナを使用する際の間に、(視覚化されることが望まれていない薬物送達デバイス100の非リング部分の他の材料とは対照的に)可視化リング140が超音波または赤外線に対して、より反射性または吸収性になるようにする金属、半導体、及び先進複合材料を含む。例えば、薬物送達デバイス100の外側シェルがポリイミド(より小さい反射率の材料)から作成されて、可視化リング140が金(より大きい反射率の材料)で囲まれている場合、可視化リング140は、OCTスキャナ又は超音波スキャナを用いた際に、光、レーザ、又は音波が金により異なって反射されるので、医師によってより容易に視覚化される。
【0029】
別の実施形態において、可視化リング140は、補充の所望の時間中に点灯する1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を含む。例えば、薬物送達デバイス100は、内部電源(例えば、バッテリー)及びLEDに電力を供給するための他の電子回路を含むことができる。次いで、医師は、当該電源および電子回路をワイヤレスで(例えば、無線周波数(RF)信号を放出する装置を用いて)付勢して、薬物送達デバイス100を補充する直前にLEDをオンにすることができる。代案として、薬物送達デバイス100内に電子デバイス(LEDを含む)を密封包装することが望ましい場合、LEDは薬物送達デバイス100の異なる部分(例えば、可視化リング140から離れた)に配置されることができ、光ファイバのバンドルのような導管を用いて、LEDからの光を可視化リング140へ、及び可視化リング140の周囲にも伝えることができる。
【0030】
更に別の実施形態において、可視化リング140及び/又は針入口116は、可視化リング140及び/又は針入口116の場所を確認する触感を医師に与えるように、上下に動く又は振動する。この場合も、係る動き及び/又は振動は、薬物送達デバイス100の内部の電子回路の使用を通じて、可視化リング140及び/又は針入口116に与えられ得る。これらの電子回路は、例えば、RF信号を放出する手持ち式の装置を用いて遠隔的に付勢され得る。
【0031】
更に別の実施形態において、可視化リング140は、磁性材料を含む。例えば、可視化リング140は、少なくとも部分的に強磁性材料だけから作成され得るか、又はセラミックで包み込まれた強磁性材料を含むことができる。係る可視化リング140と組み合わせて使用される補充針120は同様に、例えば、その先端部208及び/又はシャフト212に、及び/又はそれに接続された当たり止め224(
図3を参照)に磁性材料を含むことができる。このように、可視化リング140の磁性材料は、補充針120の磁性材料を引き付けることができ、それにより針入口116の場所を見つける際に医師を助ける。更に、可視化リング140及び補充針120の磁性材料は、補充針120のシャフト212をのど部128及び玄関部132の細長い軸と一直線にそろえる際の助けとなることができ、それにより針120が玄関部132の側壁144と接触(場合によっては、穴を開ける)することが防止される。
【0032】
針入口116は非常に小さくすることができ、医師が侵襲的に薬を注入することができるので、可視化リング140及び針入口116の場所に関する二次的な又は三次的な確認信号(視覚、音、触感、磁気相互作用など)を追加するのに有用である場合が多い。
【0033】
一実施形態において、
図2に示されるように、可視化リング140は、針入口116の表面124を形成する材料内へ埋め込まれる(ひいては当該材料により完全に取り囲まれる)。このように、可視化リング140は、患者の体と、又は補充針120によりデバイス100に供給される任意の薬剤と接触しない。特定の実施形態において、これは重要である。例えば、ローダミン色素のような、可視化リング140における何らかの材料の使用は、患者の体に有毒であるか、又は表面124を形成する材料で適切にシールされていない場合に、時間と共に劣化する可能性がある。
【0034】
可視化リング140は、
図2に示されるように、環体とすることができ、その内径は、補充針120が針入口116の中へ挿入される際に補充針120が通過するのど部128の幅w1を画定することができる。更に、一実施形態において、玄関部132の幅w2は、のど部128の幅w1より大きい。このように、のど部128のより小さい幅w1は、補充針120が玄関部132へ進む際に補充針120の動きを制限し、針120が玄関部132の側壁144に接触(場合によっては、穴を開ける)することを防止するのに役立つ。
【0035】
可視化リング140に加えて、挿入ガイド装置(図示せず)が、針入口116の上面または針入口116内に配置されて、玄関部132の(側壁144内にではなく)細長い軸に沿って補充針120を案内するのに役立つことができる。挿入ガイド装置は円筒形の形状とすることができ、又は別の形状を有することができる。更に、挿入ガイド装置は、着脱可能とすることができ、補充プロセスの直前に、針入口116の上部に配置されて、針入口116に機械的に又は磁気的に固定され得る。
【0036】
前述のように、医師は、補充針120を薬物送達デバイス100の玄関部132内へ進める際に、補充針120で針入口116の表面124を刺し通すことができる。一実施形態において、表面124の材料はセルフシール(自己封止)である。より具体的には、表面124は、針120で刺されることができ、且つ針120を取り外す際にそれ自体で再シールする柔軟なプラスチック材料から形成され得る。一実施形態において、セルフシール材料は、針120による多数の針刺しに耐えることができ、生体適合性である。セルフシール材料に利用され得る材料の例は、以下に限定されないが、PDMS、パリレンC、パリレンHT、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニルの共重合体、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、フッ化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、セルロース、ゼラチン、シリコーンゴム、及び多孔質ゴムを含む。セルフシール材料は、それと接触する薬を侵出または吸収することができるプラスチック(例えば、シリコーン)を含み、薬が当該プラスチックにさらされないように、パリレンが当該プラスチックの上にコーティングされ得る。
【0037】
図3は、補充針120の一実施形態を示す。図示されるように、補充針120は、近接端部200(即ち、補充針120の操作者に最も近い端部)、及び反対側の遠位端部204を含む。一実施形態において、針120の遠位端部204は、円錐状の先端部のような先端部208で末端をなす。当然のことながら、先端部208は、針入口116の表面124を刺し通すに適した別の形状を有してもよい。例えば、
図2に示されるように、補充針120の遠位端部204は、斜めの先端部208を形成するための斜角で切断(又は形成)され得る。
【0038】
中空シャフト212(即ち、シャフトを貫通して延在する管腔を有するシャフト)が、補充針120の近接端部200から先端部208の近接端部216まで延びている。更に、図示されるように、補充針120は、シャフト212に沿って(例えば、先端部208の近くに)配置された少なくとも1つの流体出口を含むことができる。例えば、補充針120は、先端部208の近接端部216の近くに、シャフト212の円周の周りに約180°離れて配置された2つの流体出口220を含むことができる。代案として、流体出口(単数または複数)220は、シャフト212に沿った他の場所に配置されてもよい。流体出口(単数または複数)220は、中空シャフト212の管腔と流体連絡する。このように、補充針120が、更に後述されるようにデバイス100の玄関部132内に配置される場合、治療液が針120の中空シャフト212を通過して、その流体出口(単数または複数)220を出て、玄関部132へ入る。更に、流体出口(単数または複数)220は概して、補充針120の長軸に対して直角に配向されている。このように、補充針120は、のど部128の壁から切り取られた材料で出口(単数または複数)220を塞ぐ危険性を低減した状態で、デバイス100の針入口116の中へ挿入され得る。
【0039】
依然として
図3を参照すると、補充針120は、針120の針入口116の中への進入範囲を制限するための手段も含むことができる。例えば、制限手段は、針のシャフト212に固定的に装着された当たり止め224とすることができる。図示されるように、当たり止め224は、流体出口(単数または複数)220が針の先端部208と当たり止め224の中間に配置されるように、流体出口(単数または複数)220に近い箇所でシャフト212に装着され得る。
図4に示されるように、流体出口(単数または複数)220及び補充針120の遠位端部204の双方から適切に離れて当たり止め224を配置することにより、流体出口(単数または複数)220は、当たり止め224が針入口116の表面124に当接する際にデバイス100の玄関部132内に正確に配置され、針120の遠位端部204の先端部208は玄関部132の底壁148に接触しない(又は穴を開けない)。一実施形態において、この所望の効果を達成するために、当たり止め224は、流体出口(単数または複数)220から、針入口116ののど部128の高さh1より大きい距離だけ離れて配置され、且つのど部128及び玄関部132の合計の高さh2より小さい距離だけ補充針120の遠位端部204から離れて配置される。このように、当たり止め224は、補充針220が薬物送達デバイス100の全体を貫通して、例えば患者の目に入る可能性を低減する。また、当たり止め224は、補充針120の先端部208が玄関部132の底壁148に埋め込まれる(この場合、針120の流体出口(単数または複数)220及び管腔が塞がれる可能性がある)ことも防止し、それにより、治療液が玄関部132へ入れられることが防止される。
【0040】
一実施形態において、
図3に示されるように、当たり止め224は、補充針120のシャフト212を取り囲むリングである。一実施形態において、当たり止め224が補充針120の、デバイス100の玄関部132への進行を停止させるように(即ち補充針120が玄関部132の中へ挿入され得る深さを制限する)、当該リングは、のど部128の幅w1より大きい外径d1を有する。このように、当たり止め224及び当たり止め224に近接する補充針120の部分は、針入口116に入ることが阻止される。当たり止め224の外径は、リングの形をとる必要はない。例えば、当たり止め224は、概して球状、円筒状、長方形、又はピラミッド形の外形を有することができ、或いは本明細書で説明された当たり止め224の機能を実現するのに適した別の態様で形作られてもよい。
【0041】
当たり止め224は、金属、プラスチック、複合材料、又はそれらの組み合わせから構成され得る。金属、プラスチック、及び/又は複合材料は生体適合性とすることができるか、又はそうでなくてもよい。一実施形態において、当たり止め224は、PDMSから構成される。代案として、当たり止め224は、本明細書で説明された当たり止め224の機能を達成するのに必須の機械的強度を有する他の材料、又は材料の組み合わせから構成され得る。例えば、当たり止め224は、ポリイミド、ポリプロピレン、PEEK、ポリカーボネート、アセチルフィルム(例えば、アセチル共重合体)、ポリオキシメチレンプラスチック(例えば、Delrin(
登録商標))、金、ステンレス鋼、ニッケル、及び/又はクロムからも構成され得る。また、当たり止め224は、針のシャフトの製造中にもたらされる針のシャフト212からの(及び針のシャフト212の周りに延びる)一体型のディスク状突出部の形を取ることもできる。
【0042】
実際には、例示的な補充針120は、中空の30ゲージの針を挟んで閉じ、約254μmの高さの円錐形の先端部208を残すようにその閉鎖部分をデバリングすることにより準備され得る。2つの出口220は、それぞれ約101μmの直径の寸法があり、円錐形の先端部208の近接端部216の上で約127μmの場所で補充針120にドリル開けされ得る。次いで、当たり止め224は、薄いPDMS膜を適切なサイズのリング形状へレーザカットすることにより製作され得る。当業者には理解されるように、リング形状の当たり止め224の内径は、補充針120の外径のサイズ(即ち、30ゲージの針の場合、約305μm)により決定される。次いで、PDMSのリング形状の当たり止め224は、針120のシャフト212に嵌め込まれ、例えば、接着剤により固定され得る。リング形状の当たり止め224が固定されるシャフト212の場所は、上述したように選択される。
【0043】
別の実施形態において、補充針120のシャフト212の外側に当たり止め224を固定的に装着するのではなく、又はそれに加えて、当たり止めは、薬物送達デバイス100自体の玄関部132内に配置され得る。例えば、
図5に示されるように、当たり止め152は、例えば、玄関部132の底壁148(即ち、のど部128に向かい合った、玄関部132の壁)に当たり止め152を接着することにより、当該底壁148に固定され得るか、又は当該底壁148から延在するようにされ得る。このように、針120の先端部208が当たり止め152に接触する場合、のど部128を貫いて玄関部132への補充針120の進行が停止する。やはり、この実施形態において、流体出口(単数または複数)220が玄関部132と流体連絡する地点で針120の玄関部132への進行が停止されるように、当たり止め152は所定の大きさ(即ち、高さ)に作られることができ、流体出口(単数または複数)220が補充針120のシャフト212に配置され得る。
【0044】
当たり止め152は、直角プリズム、円柱、又は本明細書で説明された当たり止め152の機能を達成するのに適した任意の他の形状とすることができる。
図5に示されるように、当たり止め152の上面160は平坦とすることができる。代案として、当たり止め152は、カップのように形作られ得る(例えば、当たり止め152の上面160がカップ形状または凹形とすることができる)。このように、当たり止め152は、補充針120が玄関部132の側壁144に接触、及び場合によっては入り込むことを防止することにも役立つことができる。
【0045】
更に、補充針120の当たり止め224と同様に、当たり止め152は、金属、硬質(例えば、完全架橋または強化)プラスチック、複合材料、又はそれらの組み合わせから構成され得る。例えば、当たり止め152は、PDMSの厚い層(即ち、針入口116の針刺し可能な表面124に使用されるものよりも厚い層)、ポリイミド、ポリプロピレン、PEEK、ポリカーボネート、アセチルフィルム(例えば、アセチル共重合体)、ポリオキシメチレンプラスチック(例えば、Delrin(
登録商標))、金、ステンレス鋼、ニッケル、及び/又はクロムから構成され得る。当たり止め152は生体適合性とすることができるか、又はそうでなくてもよい。一般に、当たり止め152は、本明細書で説明された当たり止め152の機能を達成するための必須の機械的強度を有する、任意の比較的剛性で機械的に堅固な材料、又は材料の組み合わせから構成され得る。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態に従って、患者の目に埋め込まれた例示的な薬物送達デバイス100を概略的に示す。図示されるように、デバイス100は、目の結膜上に配置され、カニューレ112がそれを貫通して目の後眼房へ挿入される。薬物送達デバイス100は、カニューレ112及びチェックバルブ156を介して目の後眼房へ治療液を投与し、当該チェックバルブは当該治療液の送達を制御し且つ逆流を防止することができる。他の実施形態において、デバイス100は、レンズにより後眼房から分離されている目の前房に流体を投与するために使用される。
【0047】
薬物送達デバイス100の操作者(例えば、医師)は、当該デバイス100をそのままで補充することができる(即ち、デバイス100を患者の目から取り外す必要なしに)。そのようにするために、一実施形態において、操作者は最初に、デバイス100の可視化リング140の場所を見つける。前述したように、可視化リング140は患者の結膜を通して見ることができる材料から構成されるので、操作者は、簡単な目視検査により可視化リング140の場所を見つけることができる。更に、可視化リング140は針入口116を取り囲んでいるので、それは、その針入口116の位置を操作者に視覚的に示す。
【0048】
可視化リング140及び針入口116の場所が見つけられるやいなや、操作者は補充針120の遠位先端部208を薬物送達デバイス100の針入口116の中へ挿入する。より具体的には、操作者は、針入口116の表面124を補充針120の遠位先端部208と接触させ、当該針120を進めることにより当該表面124を刺し通すことができ、更に当該針120をのど部128の中へ進めて、薬物送達デバイス100の玄関部132の中へ進めることができる。補充針120がそのシャフト212に固定的に装着された(又はシャフト212と一体化している)当たり止め224を含む一実施形態において、操作者は、当たり止め224が針入口116の表面124に接触するまで、針120を針入口116の中へ進め続けることができ、それにより針入口116の中への更なる針120の進入が制限される。代案として、玄関部132がその底壁148に固定的に装着された当たり止め152を含む一実施形態において、操作者は、補充針120の遠位先端部208が当たり止め152に接触して玄関部132の中への針120の更なる進入を停止されるまで、補充針120を針入口116の中へ進め続けることができる。
【0049】
当たり止め224及び/又は当たり止め152が玄関部132の中への針120の更なる進入を制限するように働く場所で、上述したように、操作者は、補充針120の出口(単数または複数)220が適切に玄関部132内に配置されて、それと流体連絡することを確信する。次いで、操作者により、治療液(例えば、液体形態の薬)が補充針120の中空シャフト212を通って、流体出口(単数または複数)220を出て、薬物送達デバイス100の玄関部132へと供給され得る。針120から玄関部132への治療液の注入により、チェックバルブ136を介してリザーバ108へと治療液が送り込まれ、それによりリザーバ108が補充される。
【0050】
従って、本明細書で説明されたように、操作者は、薬物送達デバイス100をそのままで迅速に補充することができると同時に、当該デバイス100への損傷および患者への損傷の危険性も最小限にされる。
【0051】
本発明の特定の実施形態が説明されたが、当業者には明らかなように、本明細書で開示された概念を採用する他の実施形態が、本発明の思想および範囲から逸脱せずに使用され得る。例えば、薬物送達デバイス100は、化学療法を行うために、或いは脳の別のタイプの治療を行うために脳のクモ膜下腔に、化学療法を行うために患者の体の任意の部分における腫瘍の近くに、又はインスリン放出を引き起こす作動薬(例えば、タンパク質、ウイルスベクター等)を提供するためにグルコースに十分に反応しない膵臓になどのように、患者の体の他の部分にも埋め込まれ得る。従って、説明された実施形態は、あらゆる点で単なる例示と考えられるべきであり、制限しないと考えられるべきである。