(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798162
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ワイヤ成形装置
(51)【国際特許分類】
B21F 1/00 20060101AFI20151001BHJP
B21F 35/00 20060101ALN20151001BHJP
B21F 3/04 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
B21F1/00 Z
!B21F35/00 A
!B21F3/04 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-192338(P2013-192338)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58441(P2015-58441A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2013年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】392020026
【氏名又は名称】株式会社板屋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】板屋 一郎
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−044707(JP,A)
【文献】
特開2009−012074(JP,A)
【文献】
特開2007−030038(JP,A)
【文献】
特開2004−237352(JP,A)
【文献】
特開昭63−207433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21F 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤをワイヤガイド(333)の先端の成形空間に送り出し、放射状に配置されたツール(T1〜T4)を用いて所望の形状に加工するワイヤ成形装置において、
前記ワイヤガイド(333)を支持し、前記ワイヤを前記ワイヤガイド(333)に送り出すワイヤフィーダ(30)と、
前記ツール(T1〜T4)が着脱可能であって、前記ワイヤガイド(333)に対する前記ツール(T1〜T4)の相対的な位置を回転により変更可能なツール回転部材(230)と、前記ツール回転部材(230)に回転自在に支持され、前記ツール回転部材(230)に装着された前記ツール(T1〜T4)に駆動力を付与する共通のツール駆動部材(240)と、を備える回転テーブル(23)と、
前記回転テーブル(23)を回転可能に支持し、ワイヤ軸線に対して垂直な面に沿う2次元方向に移動可能な可動テーブル(210、220)と、
前記ワイヤを所望の形状に加工するために、前記ワイヤフィーダ(30)、前記ツール回転部材(230)、前記ツール駆動部材(240)、および、前記可動テーブル(210、220)の動作を制御する制御部(701)と、を有し、
前記可動テーブルは、
前記ツール回転部材(230)を第1の方向に移動する第1のテーブル(220)と、前記第1の方向と直交する第2の方向に移動する第2のテーブル(210)と、
前記第1のテーブル(220)を駆動する第1のテーブル駆動機構(221)と、
前記第2のテーブル(210)を駆動する第2のテーブル駆動機構(211)と、
前記第1のテーブル(220)、前記第2のテーブル(210)、前記第1のテーブル駆動機構(210)、および、前記第2のテーブル駆動機構(211)を支持するメインテーブルと、を有し、
前記第1のテーブル(220)は、前記ツール回転部材(230)と前記ツール駆動部材(240)とを回転自在に支持し、
前記ツール回転部材(230)は、外周にギヤ(232)が形成され、前面に前記ツール(T1〜T4)のうち駆動源を有さないツール(T3、T4)とツールユニット(50A〜50C)とが着脱可能な中空円盤状の部材であり、
前記ツール駆動部材(240)は、外周にギヤ(242)が形成されたリングギヤであり、
前記ツールユニットは、前記ワイヤを回転する回転ツール(T2)に巻き付ける回転ツールユニット(50B、50C)と、スライドツール(T1)をスライドさせて前記ワイヤを折曲するスライドツールユニット(50A)と、を含み、
前記可動テーブルは、前記ツールユニット(50A〜50E)を前記成形空間において2次元方向に移動させ、
前記ツール駆動部材(240)のギヤ(242)が、前記ツール回転部材(230)に取り付けられた前記スライドツールユニット(50A)と前記回転ツールユニット(50B、50C)の共通の駆動源となり、前記ツール駆動部材(240)のギヤ(242)の回転力により、少なくとも前記回転ツール(T2)を軸まわりに回転させ、かつ前記スライドツール(T1)を軸方向にスライドさせることを特徴とするワイヤ成形装置。
【請求項2】
前記ツール回転部材(230)を回転駆動する第1の回転駆動機構(233)と、
前記ツール駆動機構(240)を回転駆動する第2の回転駆動機構(243、244)と、をさらに有し、
前記第1の回転駆動機構(233)は、サーボモータの駆動力を前記ギヤ(232)を介して前記ツール回転部材(230)を回転させ、
前記第2の回転駆動機構(243)は、サーボモータの駆動力をギヤ(244)を介して前記ギヤ(242)に伝達することにより前記ツール駆動機構を回転させることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ成形装置。
【請求項3】
前記制御部(701)は、前記ツール回転部材(230)を所定の角度回転させて前記ワイヤガイド(333)と前記ツール(T1〜T4)の相対的な位置関係を制御し、
前記ツール駆動部材(240)のリングギヤを所定の速度で回転させて前記ツールユニット(50A〜50E)の駆動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤ成形装置。
【請求項4】
前記ワイヤフィーダ(30)を、前記ワイヤの送出方向に沿って移動させるフィーダ移動機構(340)をさらに有し、
前記ワイヤフィーダ(30)は、前記ワイヤガイドが前記成形空間に位置する成形位置と、前記ワイヤガイドが前記成形空間から退避した退避位置との間で移動されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワイヤ成形装置。
【請求項5】
前記ワイヤフィーダは、前記ワイヤを供給するワイヤ供給機構(310)と、前記ワイヤ供給機構(310)からワイヤを引き出して前記ワイヤガイドに送り出すワイヤ送出機構(320)とを備え、
前記フィーダ移動機構(340)は、サーボモータの駆動力により前記ワイヤフィーダを移動させることを特徴とする請求項4に記載のワイヤ成形装置。
【請求項6】
前記ワイヤ送出機構(320)は、前記ワイヤ供給機構(310)から引き出されるワイヤの曲げ癖を矯正する曲げ癖矯正機構(322)と、前記曲げ癖が矯正されたワイヤを把持する一対のフィードローラ(323)とを有することを特徴とする請求項5に記載のワイヤ成形装置。
【請求項7】
前記ワイヤフィーダは、前記ツール回転部材(230)に装着された前記駆動源を有さないツール(T3、T4)およびツールユニット(50A〜50E)を交換するときに、前記退避位置に移動されることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載のワイヤ成形装置。
【請求項8】
前記ワイヤは、線径が0.3mm以下であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のワイヤ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを所望の形状に加工するワイヤ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤ成形装置では、ワイヤを最終的な製品形状に加工するために、ワイヤを折曲、湾曲あるいは捲回させる処理の他に、送り出したワイヤを回転させる処理が必要な場合がある。従来のワイヤ成形装置では、ワイヤを回転させる処理は、ワイヤを成形テーブル上にフィードするフィードローラにより行っていた。すなわち、一対のフィードローラでワイヤを挟圧しながらフィードローラをワイヤ軸線まわりに所望の角度だけ回動させることでワイヤを回転させていた。ワイヤを回転させることの利点は、ワイヤを任意の方向に容易に成形できることである。換言すると、ワイヤを回転させない場合は、ツールの取付位置を変えなければならない。
【0003】
材料メーカーから供給される長尺のワイヤはワイヤ供給機構上に巻回された状態で束になって保持されるため、ワイヤは巻き方向に湾曲するような大きな曲率の曲げ癖を持っている。この曲げ癖は、ワイヤを送り出す際に曲げ癖矯正機構によってある程度矯正されるのであるが、完全に取り除くことはできない。このため、曲げ癖が残ったまま、特に線径が約0.3mm以下の細いワイヤを回転させると、回転する度に曲げ癖の方向が上下左右に変化し、最終的な製品形状にバラツキが出るなど加工に影響を及ぼしてしまう。また、上記ワイヤを回転させる処理は、一対のフィードローラでワイヤを挟圧しているものの、長時間にわたって繰り返しワイヤを回転していると、フィードローラとワイヤとの間にわずかな滑りが生じ、それが蓄積されていくと製品形状が不安定になる。さらに、上記ワイヤを回転させる処理によって回転ワイヤ供給機構からフォードローラまでの間でワイヤがねじられることも、製品形状の安定性に影響する。ワイヤ供給機構からフィードローラまでの距離を十分とることによって、ねじりの影響は低減できるが、完全に取り除くことはできず、ワイヤの線径が細くなるほど著しくなる。
【0004】
例えば、特許文献1では、ワイヤを回転させる処理を加えずに、ツールをワイヤの軸線まわりに回転可能としたワイヤ成形装置が提案されている。この特許文献1には、旋回テーブル10上に放射状に複数のツールスライド16を配置し、旋回テーブル10の周囲の成形テーブル2上にツールスライド16に対応した個数の駆動機構を放射状に配置した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5148759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、旋回テーブル10上に放射状に複数のツールスライド16が配置され、旋回テーブル10の周囲の成形テーブル2上にツールスライド16に対応した個数の駆動機構が放射状に配置されている。
【0007】
ところが、旋回テーブル10の回転位置にかかわらず、常にツールを駆動可能にするためには、ツールスライド16に対応した個数の駆動機構を成形テーブル2上に配置する必要がある。さらに、上記特許文献1では、ツールスライド16が取り付けられた旋回テーブル10を回転させる場合には、成形テーブル2上の駆動機構を後方に退避させる必要がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、駆動機構の個数によって回転位置が制限されず、退避動作なども行わずに、ツールをワイヤの軸線まわりに回転可能としたワイヤ成形装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明のワイヤ成形装置は、ワイヤをワイヤガイド(333)の先端の成形空間に送り出し、放射状に配置されたツール(T1〜T4)を用いて所望の形状に加工するワイヤ成形装置において、前記ワイヤガイド(333)を支持し、前記ワイヤを前記ワイヤガイド(333)に送り出すワイヤフィーダ(30)と、前記ツール(T1〜T4)が着脱可能であって、前記ワイヤガイド(333)に対する前記ツール(T1〜T4)の相対的な位置を回転により変更可能なツール回転部材(230)と、前記ツール回転部材(230)に回転自在に支持され、前記ツール回転部材(230)に装着された前記ツール(T1〜T4)に駆動力を付与する共通のツール駆動
部材(240)と、を備える回転テーブル(23)と、前記回転テーブル(23)を回転可能に支持し、ワイヤ軸線に対して垂直な面に沿う2次元方向に移動可能な可動テーブル(210、220)と、前記ワイヤを所望の形状に加工するために、前記ワイヤフィーダ(30)、前記ツール回転部材(230)、前記ツール駆動
部材(240)、および、前記可動テーブル(210、220)の動作を制御する制御部(701)と、を有
し、前記可動テーブルは、前記ツール回転部材(230)を第1の方向に移動する第1のテーブル(220)と、前記第1の方向と直交する第2の方向に移動する第2のテーブル(210)と、前記第1のテーブル(220)を駆動する第1のテーブル駆動機構(221)と、前記第2のテーブル(210)を駆動する第2のテーブル駆動機構(211)と、前記第1のテーブル(220)、前記第2のテーブル(210)、前記第1のテーブル駆動機構(210)、および、前記第2のテーブル駆動機構(211)を支持するメインテーブルと、を有し、前記第1のテーブル(220)は、前記ツール回転部材(230)と前記ツール駆動部材(240)とを回転自在に支持し、前記ツール回転部材(230)は、外周にギヤ(232)が形成され、前面に前記ツール(T1〜T4)のうち駆動源を有さないツール(T3、T4)とツールユニット(50A〜50E)とが着脱可能な中空円盤状の部材であり、前記ツール駆動部材(240)は、外周にギヤ(242)が形成されたリングギヤであり、前記ツールユニットは、前記ワイヤを回転する回転ツール(T2)に巻き付ける回転ツールユニット(50B、50C)と、スライドツール(T1)をスライドさせて前記ワイヤを折曲するスライドツールユニット(50A)と、を含み、前記可動テーブルは、前記ツールユニット(50A〜50E)を前記成形空間において2次元方向に移動させ、前記ツール駆動部材(240)のギヤ(242)が、前記ツール回転部材(230)に取り付けられた前記スライドツールユニット(50A)と前記回転ツールユニット(50B、50C)の共通の駆動源となり、前記ツール駆動部材(240)のギヤ(242)の回転力により、少なくとも前記回転ツール(T2)を軸まわりに回転させ、かつ前記スライドツール(T1)を軸方向にスライドさせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動機構の個数によって回転位置が制限されず、退避動作なども行わずに、ツールをワイヤの軸線まわりに回転可能としたワイヤ成形装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のスプリング製造装置の成形テーブルにカバーを取り付けた状態の正面図(a)および側面図(b)である。
【
図2】本実施形態のスプリング製造装置の成形テーブルからカバーを取り除いた状態の外観斜視図(a)および正面図(b)である。
【
図3】
図1の成形テーブルの正面図(a)および(a)のi−i断面図(b)である。
【
図4】
図1の可動テーブルおよび回転テーブルの正面図(a)、側面図(b)および背面図(c)である。
【
図5】
図1のワイヤフィーダの上面図(a)および側面図(b)である。
【
図6】ワイヤ成形時における可動テーブルおよび回転テーブルの動作例を示す図である。
【
図7】本実施形態のスプリング製造装置の制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、本発明のワイヤ成形装置を、ワイヤを所望の形状のスプリングに成形するスプリング製造装置に適用した例を説明するが、スプリング以外の部品を成形する装置にも適用可能である。
【0013】
[装置構成]まず、
図1ないし
図4を参照して、本実施形態のスプリング製造装置の構成および機能について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のスプリング製造装置は、箱体状のベース10と、このベース10の上部に取り付けられる成形テーブル20と、この成形テーブル20の背面に配置されたワイヤフィーダ30と、を備える。
【0015】
成形テーブル20は、外枠を構成する矩形状のテーブルフレーム21と、このテーブルフレーム21の内側に配置される可動テーブル22と、この可動テーブル22の中央部に配置される回転テーブル23と、を備える。
【0016】
可動テーブル22は、テーブルフレーム21に支持されたXテーブル210と、Xテーブル210に支持されたYテーブル220とを備える。なお、可動テーブル22がYテーブル220を兼ね備えている。
【0017】
Xテーブル210は、テーブルフレーム21のX方向に上下一対で設けられたXレール213を介して支持されており、テーブルフレーム21の側部に設けられたXテーブル駆動機構211の駆動力によりX方向に移動可能である。Xテーブル駆動機構211は、
図7で後述するコントローラからの制御指令に従って、サーボモータの回転をボールスクリュー機構などを介してXテーブル210に伝達することで、Xテーブル210をX方向に予め設定した距離だけ移動できる。
【0018】
また、Yテーブル220は、Xテーブル210のY方向に左右一対で設けられたYレール223を介して支持されており、テーブルフレーム21の上部に設けられたYテーブル駆動機構221によりY方向に移動可能である。Yテーブル駆動機構221は、
図7で後述するコントローラからの制御指令に従って、サーボモータの回転をボールスクリュー機構222を介してYテーブル220に伝達することで、Yテーブル220をY方向に予め設定した距離だけ移動できる。
【0019】
回転テーブル23は、可動テーブル22の中央部に形成された円形の中空部24に回転自在に設けられた中空円盤状のツール回転部材230と、リング状のツール駆動部材240とを備える。
【0020】
ツール回転部材230は、中空部24の内周縁部24aに設けられたベアリング231を介して回転自在に軸支されており、その外周縁部には全周にわたってギヤ232が形成されている。ツール回転部材230は、その前面に1つまたは複数のツールユニット(本例では、5つのツールユニット50A〜50E)が取り付け/取り外し可能である。ツール回転部材230は、可動テーブル22の背面に設けられたツール回転駆動機構233の駆動力によりギヤ232を介して回転可能である。ツール回転駆動機構233は、
図7で後述するコントローラからの制御指令に従って、サーボモータの回転をギヤ232などを介してツール回転部材230に伝達することで、ツール回転部材230を予め設定した角度に回動できる。
【0021】
また、ツール駆動部材240は、ツール回転部材230に設けられたベアリング241を介して回転自在に軸支されており、その外周縁部の全周にギヤ242が形成されたリングギヤを構成している。ツール駆動部材240は、可動テーブル22の背面に設けられたツール駆動機構243の駆動力によりギヤ242を介して回転可能である。ツール駆動機構243は、
図7で後述するコントローラからの制御指令に従って、サーボモータの回転をギヤ244などを介してツール駆動部材240に伝達することで、ツール駆動部材240をツール回転部材230とは独立して所定の速度で回転できる。
【0022】
ツール回転部材230に取り付けられた各ツールユニット50A〜50Eは、ツールT1をワイヤに向けてスライドさせるスライドツールユニット50Aと、ツールT2をその中心軸まわりに回転させる回転ツールユニット50B〜50C、ワイヤに当接して強制的に湾曲、捲回させるコイリングツール50D、ワイヤを切断する切断ツール50Eを含む。
【0023】
スライドツールユニット50Aには、ワイヤを強制的に折曲する1つまたは複数の協働するツールT1が取り付けられる。スライドツールユニット50Aは、ツールT1をスライドさせるための偏心カムとスライダを備え、偏心カムがギヤを介してツール駆動部材240のギヤ242に噛み合うことで回転駆動され、ツールT1をスライドさせる。
【0024】
回転ツールユニット50B〜50Cには、ワイヤを強制的に捲回するツールT2が回転可能に取り付けられる。ツールT2はスピナと呼ばれる。回転ツールユニット50B〜50Cは、ツールT2を回転させるための傘ギヤ対51やシャフト52を備え、傘ギヤ対51の一方がツール駆動部材240のギヤ242に噛み合うことでツールT2を回転駆動させる。
【0025】
コイリングツールユニット50Dには、ワイヤに当接して強制的に湾曲、捲回させるコイリングツールT3、切断ツールユニット50Eにはワイヤをワイヤガイド333と協働してせん断力により切断する切断ツールT4がそれぞれ取り付けられる。
【0026】
図5に示すように、ワイヤフィーダ30は、ワイヤが巻き回された状態で保持されるワイヤ供給機構310と、ワイヤ供給機構310からワイヤを引き出して成形テーブル20に送り出すワイヤ送出機構320とを備える。ワイヤ供給機構310はワイヤ送出機構320に支持されており、ワイヤ送出機構320と一体的に構成される。
【0027】
ワイヤ送出機構320は、下部のベースプレート321a上に左右一対のサイドプレート321bが所定の距離をおいて複数の連結部321cにより連結された本体部321を有し、その本体部321の後方に、ワイヤ供給機構310が取り付けられる。
【0028】
また、ワイヤ供給機構310が取り付けられた本体部321の側面にはワイヤの曲げ癖を矯正する機構322と、上下一対のフィードローラ323とが設けられ、本体部321の前面にはワイヤガイド333が設けられる。
【0029】
ワイヤ送出機構320は、上下一対のフィードローラ323によりワイヤを挟持しつつ回転することで、ワイヤ供給機構310からワイヤを引き出し、ワイヤガイド333まで案内する。フィードローラ323がワイヤを挟持する押圧力は本体部321の上部に設けられたハンドル324により調整可能である。
【0030】
ワイヤガイド333は、フィードローラ323により送り出されるワイヤを、その先端部のスプリング成形空間に向けて送り出す。スプリング成形空間として機能するのは、ワイヤガイド333と、上記各ツールT1〜T4とで囲まれたスペースである。フィードローラ323は、フィードローラ駆動機構325によりワイヤの送出方向に回転駆動される。
【0031】
上記構成によれば、ワイヤガイド333を回動させない代わりに、ツール回転部材230によりツールT1〜T4をワイヤガイド333に対して相対的に回転させている。これにより、ワイヤガイド333を回動させる場合と同様に、ワイヤガイド333の傾斜面側の空間を変化させることでスプリング成形空間を変化させ、ツールの位置に関係無く所望形状のスプリングを成形できるようになる。また、可動テーブル22によりツール回転部材230を2次元方向に移動させることができるので、例えば、駆動源を有さないコイリングツールT3や切断ツールT4を2次元方向に駆動することもできる。
【0032】
ワイヤフィーダ30は、ベース10上に設けられたフィーダ移動機構340によりワイヤの送出方向(Z方向)に沿って移動可能であり、ワイヤガイド333がスプリング成形空間に位置する成形位置と、ワイヤガイド333がスプリング成形空間から退避した退避位置との間で移動される。
【0033】
ワイヤ送出機構320は、フィーダ駆動機構340によりZ方向に所定のストローク範囲(120mm程度)で移動可能である。ワイヤ送出機構320は、本体部321の下部のベースプレート321aが、フィーダ駆動機構340に設けられた左右一対のレール341に沿ってZ方向に移動可能に設けられている。フィーダ駆動機構340は、
図7で後述するコントローラからの制御指令に従って、サーボモータ342の回転をボールスクリュー機構343などを介して本体部321に伝達することで、ワイヤ送出機構320をZ方向に予め設定した距離だけ移動できる。
【0034】
曲げ癖矯正機構322は、上下に千鳥状に配置された小径の複数のローラにより構成され、ワイヤ供給機構310から引き出されるワイヤの曲げ癖を矯正した上で、フィードローラ323に送り出す。
【0035】
上記構成によれば、ワイヤ送出機構320をワイヤの送出方向に移動可能にしたことで、ワイヤガイド333をスプリング成形空間から十分に後退させてツールの交換作業が容易になる。
【0036】
[動作説明]
次に、
図6を参照して、本実施形態のスプリング製造装置のツール回転移動動作について説明する。
【0037】
図6(a)に示すワイヤガイド333と各ツールT1〜T4の位置関係を基準として、Xテーブル210により可動テーブル22(Yテーブル220)を−X方向に移動すると、
図6(b)の状態となる。
【0038】
また、
図6(a)の状態から、Yテーブル220により可動テーブル22を+Y方向に移動すると、
図6(c)の状態となる。
【0039】
さらに、
図6(a)の状態から、可動テーブル22をXテーブル210により−X方向とYテーブル220により−Y方向に移動し、かつツール回転部材230を反時計方向に45°回転させると、
図6(d)の状態となる。
【0040】
なお、
図6(a)から
図6(d)への状態変化において、ツール駆動部材240は、ツール回転部材230とは独立してギヤ244により回転可能であり、ツール回転部材230がいかなる位置にあってもツールユニット50A、50Bに駆動力を伝達し、ツールT1、T2の駆動を確保できる。
【0041】
上記構成によれば、複数のツールの共通の駆動源を可動テーブル22に設け、ツール駆動部材240により各ツールが駆動可能な状態で、可動テーブル22をワイヤ軸線に対して垂直な面に沿う2次元方向、および/または、回転テーブル23を任意の角度に回動させることができる。これにより、ツールの駆動源をツールユニットと同数設ける必要がなく、また、駆動源の位置によってツールの回転位置が制限されず、退避動作なども行わずに、ツールをワイヤガイドに対して相対的に回転/移動させることができる。
【0042】
[コントローラの構成]
次に、
図7を参照して、本実施形態のスプリング製造装置のコントローラの構成について説明する。
【0043】
図7に示すように、CPU701はコントローラの全体を統括制御する。ROM702はCPU701の動作処理内容(プログラム)及び各種フォントデータを記憶している。RAM703はCPU701のワークエリアとして使用される。表示部704は各種設定を行ったり、その内容の表示、更には製造の過程等をグラフ表示するために設けられる。外部記憶装置705はメモリカード等であり、外部からプログラムを供給したり、或いはワイヤ成形加工のための各種設定内容を保存するために使用される。この結果、例えば、ある成形加工(例えばスプリングであればその自由長やコイル径等)のためのパラメータを記憶しておくことで、いつでもそのメモリカードをセットして実行することで、同じ形状のスプリングを製造することが可能になる。
【0044】
キーボード706は各種パラメータを設定するために設けられ、センサ群707はワイヤの送り出し量や、スプリングの自由長等を検知するために設けられる。
【0045】
各モータ708−1〜708−nは、Xテーブル駆動機構211のサーボモータ、Yテーブル駆動機構221のサーボモータ、ツール回転駆動機構233のサーボモータ、ツール駆動機構243のサーボモータ、フィードローラ駆動機構325のサーボモータ、フィーダ駆動機構340のサーボモータ342に相当し、各モータ708−1〜708−nは、夫々に対応するモータドライバ709−1〜709−nにより駆動される。
【0046】
なお、本例では、CPU701は、キーボード706から入力された指示に従い、例えば、各種モータをそれぞれ独立して駆動したり、外部記憶装置705との入出力、更には表示部704を制御することになる。
【0047】
なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。例えば、本実施形態のワイヤ成形装置を、線径が0.3mmを超えるワイヤを加工するために用いることも可能であり、ワイヤの線径や製品形状に応じてツールの種類も任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ベース
20 成形テーブル
22 可動テーブル
23 回転テーブル
30 ワイヤフィーダ
50A〜50E ツールユニット
210 Xテーブル
220 Yテーブル
310 ワイヤ供給機構
320 ワイヤ送出機構
333 ワイヤガイド
T1〜T4 ツール