(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記の詳細な説明は本質的に模範例を示すものであり、本発明の範囲、適用性、又は形態を限定することは意図されていない。むしろ、下記説明は、本発明の模範的な実施態様を実施するためのいくつかの実際的な例を提供する。構造、材料、寸法、及び製造プロセスの例が、選択された要素のために提供され、他の全ての要素は本発明の分野における当業者に公知のものを採用する。記載の例の多くが種々様々な好適な代替物を有することは当業者に明らかである。
【0017】
本発明の実施態様は、概して、1つ以上のタイプの蛍光光度計を較正する多数の方法を提供する。いくつかの実施態様の場合、1つ以上の異なる現場位置における水処理生成物の濃度の現場測定値を較正することができるので有利である。それぞれの場所で、特定の測定時間における蛍光測定値に影響を及ぼす場所特有のファクタを補正するように、蛍光光度計を較正することができる。本明細書中のいくつかの実施態様が手持ち式蛍光光度計を較正することに関して記載されているが、言うまでもなく、本発明の実施態様は特定タイプの蛍光光度計の較正に限定されるものではなく、種々様々な蛍光光度計タイプを較正するのに有用であり得る。
【0018】
図1は、本発明のいくつかの実施態様に従って較正され得る手持ち式蛍光光度計100の形態を成す光学測定装置を示す斜視図である。蛍光光度計100は一般に、手持ち式コントローラ・モジュール104に結合された浸漬可能なセンサ・ヘッド102を含んでいる。コントローラ・モジュール104はまた、センサの読み値及び計算値をユーザに表示するための電子ディスプレイ110と、キーバッド112の形態を成す入力インターフェイスとを含んでいる。キーパッド112は、ユーザが蛍光光度計100と対話するのを可能にする(例えば変数の入力、パラメータの設計、メニューアイテムへのアクセスなど)。
【0019】
いくつかの実施態様によれば、コントローラ・モジュール104は一般に細長いハウジング106を有している。このハウジングは、蛍光光度計100を手によって容易に把持又は保持するためにハンドル又は棒状部材と同様の好都合な形態を提供している。センサ・ヘッド102は好ましくは水密ハウジングを含んでいる。水密ハウジングは、関心事の液体試料内に部分的又は全体的に浸漬されたときに、センサ・ヘッドが測定及びその他の機能を果たすのを可能にする。従って、いくつかの事例では、センサ・ヘッド102は、浸漬可能なディップ・プローブと同様のいくつかの要素及び/又は特徴を有している。例えば、本発明のいくつかの実施態様の場合、浸漬可能なセンサ・ヘッド102は米国特許第7,550,746号明細書及び米国特許出願公開第2009/0212236号明細書(それぞれの明細書の内容全体は参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されたものと同様の1つ以上の要素及び/又は構成部分を有している。浸漬可能なセンサ・ヘッド102の形態は、関心事の試料を含有する光学セルの外部にセンサ及び他の構成部分を位置決めする蛍光光度計及び他の光学機器といくつかの点で対比されることもできる。
【0020】
いくつかの事例において、センサ・ヘッド102は、コントローラ・ハウジング106の、ディスプレイ110とは反対側の底面108に結合(例えば付着又は一体化)され、コントローラ・ハウジングの遠位端120に隣接して位置決めされている。典型的には、ユーザはコントローラ・ハウジングの近位端122の近くでコントローラ・ハウジング106を把持することにより、試料からの測定を行い、ディスプレイ110を読み、且つ/又はキーパッド112を操作することができる。例えば、センサ・ヘッド102を試料中に部分的又は完全に浸した状態で、(現場のリザーバ/容器内、実験室内のビーカー内などの)液体試料の表面の上方にコントローラ・モジュール104を保持することによって、ユーザはセンサ・ヘッド102を試料中に浸すことができる。いくつかの実施態様において、ユーザは、試料で満たされた試料カップを浸漬可能なセンサ・ヘッド102の周りに繋止しつつ、コントローラ・モジュール104の第2の端部を把持してもよい。もちろん、コントローラ・モジュール及びセンサ・ヘッドの他の形態が可能であり、本発明は特定の物理的形態に限定されない。
【0021】
一般に、手持ち式蛍光光度計100は最小限でも、関心事の物質(例えば化学溶液、例えば抗菌生成物又は清浄化生成物)を含む試料からの蛍光発光を測定し、試料中の物質の濃度を計算し、且つ割り出された濃度をユーザに表示する。ユーザは次いで任意には、割り出された濃度に基づいて所期の処置を施すことができ、例えば、物質をより多く産業用システムに添加することによって物質濃度を高めることができる。このように、蛍光光度計は手動フィードバック・ループの一部であり得る。濃度が閾値濃度よりも低い又は高いことを蛍光光度計が割り出す場合、ユーザは、その差異を見て、生成物のディスペンシング量をより多く又はより少なくすることによって、生成物のディスペンシング量を適宜に調節することができる。加えて、蛍光光度計は生成物切れアラームの一部として機能することもできる。生成物が切れると、(生成物濃度を反映する)蛍光が所定の閾値レベル未満に低下する。この時点で、センサはディスペンサが生成物切れであることをユーザに警告することができる。信号は視覚的又は聴覚的な信号又は振動信号であり得る。従って、このようなフィードバックは、所期効果(清潔、微生物の低減、潤滑など)を達成するのに十分なクリーナー、抗菌剤、又はその他の組成物が存在することを保証する。
【0022】
蛍光光度計の基本作業はよく知られているため、様々な詳細は便宜上ここでは省かれる。一般に、蛍光光度計100は物質の蛍光特性に基づいて、液体試料中の特定物質の濃度を計算する。本明細書中により詳細に説明するように、蛍光光度計100は光源を含む。光源は、選択された波長範囲内の光を発する。センサ・ヘッド102が液体試料中に浸漬されると、光は関心事の物質の粒子に衝突する。光は、物質の特定分子における電子を励起して、電子が別の波長範囲内のより低いエネルギーの光を発する(すなわち蛍光を発する)ようにする。センサ・ヘッド102は光学センサ、例えば光検出器を含む。この光学センサは、蛍光発光を検出し、且つ蛍光発光強度を示す相応の電気信号を生成する。蛍光光度計100は、光学センサとカップリングされたコントローラを含んでいる。コントローラは蛍光発光強度と物質濃度との既知の関係に基づいて物質濃度を計算することができる。
【0023】
この一般的なプロセスの数多くの変更形及び具体的な詳細が、蛍光光度計に関する本発明の実施態様に対して考えられる。例えば関心事の物質は、蛍光特性を有する所期の化学溶液であってよい。その一例としては、殺生物剤、例えば殺虫生成物及び抗菌生成物、防食生成物、スケール防止生成物、ファウリング防止生成物、殺菌生成物、及び他の清浄化生成物、洗剤、及び添加剤などが挙げられる。便宜上、これらの、そしてその他のこのような物質は代わりに単に「生成物」、「化学溶液」、及び「処理溶液」などと呼ばれる。さらに、種々の産業用システム内に使用される冷却水の試料(例えば水試料)における水処理生成物又は溶液の濃度を割り出すことに関する例が本明細書中に提供されてはいるものの、手持ち式蛍光光度計100が、水及び他の液体を処理するための数多くの環境内で使用される生成物の濃度を割り出す上で有用であることは言うまでもない。ほんの数例を挙げるならば、手持ち式蛍光光度計100は、洗濯、自動食器洗浄、手動食器洗浄、サード・シンク(3
rd sink)用途、パワーシンク(power sink)用途、自動車の手入れ、現場のクリーニング作業、健康管理用途、硬質面用途などにおける1つ以上の物質の濃度を割り出すのに有用である。
【0024】
センサ・ヘッド102から放射する光の存在下で、多くの生成物が蛍光を発する。なぜならば、生成物を形成する化合物の多くは蛍光特性を有しているからである。例えば、ベンゼン成分を有する化合物又は分子は、1つ以上の置換電子供与基、例えば−OH、−NH
2、及び−OCH
3と、蛍光特性を呈する多環式化合物とを取り込むことができる。上記用途で使用される多くの化合物は、これらと同様の化学構造、例えば界面活性剤、潤滑剤、抗菌剤、溶剤、ヒドロトロープ、再付着防止剤、色素、腐食防止剤、及び漂白添加剤を含む。これらの化合物は、食器洗浄用洗剤、濯ぎ剤、洗濯用洗剤、現場クリーニング用クリーナー、抗菌剤、床コーティング剤、食肉、家禽及び魚介の屠体処理剤、農薬、自動車手入れ用組成物、水管理組成物、プール及び温泉のための組成物、無菌パッケージング組成物、及び瓶洗浄組成物などのような生成物中に組み入れられることができる。これらの化合物及び対応する用途のうちのいくつかの例を米国特許第7,550,746号明細書に見いだすことができる。この内容全体は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0025】
これに加えて、又はこれとは別に、蛍光トレーサ(ここでは「蛍光マーカー」とも呼ばれる)を、自然に蛍光を発する化合物を既に含む又は含まない生成物中に組み入れることができる。トレーサのいくつかの非限定的な例は、ナフタレンジスルホネート(NDSA)、2−ナフタレンスルホン酸、アシッド・イエロー7,1,3,6,8−ピレンテトラスルホン酸ナトリウム塩、及びフルオレセインを含む。いくつかの実施態様の場合、蛍光トレーサは生成物に周知の比率で添加され、ひいては一旦トレーサの濃度が割り出されると、生成物濃度を評価することが可能になる。例えば、いくつかの事例において、蛍光トレーサの濃度は、現在の蛍光信号と、較正手順中に測定された既知のトレーサ濃度からの蛍光信号とを比較することにより割り出すことができる。次いで、蛍光トレーサの既知の公称比率と、測定された蛍光濃度とから化学生成物の濃度を評価することができる。いくつかの事例において、液体試料中の現在の生成物濃度C
cを以下の式によって割り出すことができる。
【0027】
ここで、C
m=K
m×(S
x−Z
0)である。
【0028】
ここで、C
mは現在の蛍光マーカー濃度であり、K
mは勾配補正係数であり、S
xは現在の蛍光測定値であり、Z
0はゼロシフトであり、C
0は生成物の公称濃度であり、そしてC
fは蛍光トレーサの公称濃度である。
【0029】
図2を参照すると、本発明のいくつかの実施態様に基づく励起スペクトル強度202及び発光スペクトル強度204のプロット200が示されている。この例では、紫外線(UV)発光ダイオード(LED)の形態を成す光源を有する蛍光光度計は、約280nm〜約310nmの励起光を、蛍光トレーサが添加された生成物を有する冷却塔水の試料中に発する。添加されたNDSAはこのUV線を吸収して約310nm〜約400nmの蛍光を生成する。蛍光光度計の発光検出器は、この発光放射線を検出し、蛍光光度計はNDSAトレーサの濃度を割り出し、そして最終的には冷却塔水試料中の生成物濃度を割り出す。
【0030】
図3は、
図1に示された手持ち式蛍光光度計と同様の手持ち式蛍光光度計300の分解図である。蛍光光度計300は一般に、コントローラ・モジュール部分303に結合された浸漬可能なセンサ・ヘッド301を含んでいる。コントローラ・モジュール部分303は、ハウジングと、ハウジング内部のいくつかの構成部分とを含んでいる。ハウジングは上側部分302と下側部分304とから形成されていて、コントローラ・ハウジングの下側部分304は下側部分の外側の底面305を画定している。センサ・ヘッド301はセンサ・ヘッド・ハウジング316を含んでいる。センサ・ヘッド・ハウジング316は、コントローラ・ハウジングの底面305に固定的に取り付けられるように形成されている。いくつかの実施態様において、センサ・ヘッド・ハウジング316は、コントローラ・ハウジングの1つ以上の部分と一体的に形成されていてよい。
【0031】
いくつかの実施態様において、コントローラ・モジュール303は一般に、センサ・ヘッド301から受信された信号に基づいて生成物濃度を割り出すのに必要な構成部分を含む。
図3に示されているように、コントローラ・モジュール303は制御ボード306を含んでいる。制御ボードは、ディスプレイボードケーブル312を介してディスプレイボード308とカップリングしている。ディスプレイボード308は電子ディスプレイ309(例えばLCDスクリーン)を含んでいる。電子ディスプレイ309は情報をユーザに表示する。コントローラ・モジュール303はまた、メンブレン・キーパッド・オーバーレイ(membrane keypad overlay)310の形態を成す入力インターフェイスを含んでいる。メンブレン・キーパッド・オーバーレイは、ユーザがコントローラ・モジュール303によって種々様々な情報を入力するのを可能にする。コントローラ・モジュール303は、ポータブル電源、例えば蛍光光度計300内の回路に給電するためのバッテリ314も含んでいる。
【0032】
いくつかの実施態様において、浸漬可能なセンサ・ヘッド301は、共通の譲受人を持つ米国特許第7,550,746号明細書及び米国特許出願公開第2009/0212236号明細書(それぞれの明細書の内容全体は参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されたものと同様の1つ以上の要素及び/又は構成部分を有している。
図3に戻ると、いくつかの実施態様の場合、センサ・ヘッド301はハウジング316を含んでいる。このハウジングは、光源ボード320と発光検出器ボード322とを収納している。第1のOリング318が、センサ・ヘッド・ハウジング316とコントローラ・ハウジングの下側部分304との間にシールを形成する。光源ボード320及び発光検出器ボード322上の構成部分は黄銅管326によって遮蔽されている。黄銅管326はそれぞれのボードを実質的に取り囲んでいる。それぞれの管326は管の遠位端に切欠きを含んでおり、センサ・ヘッド・ハウジング316は、ハウジングを通って延びる窓330を含んでいる。これらの切欠き及び窓330は、光源ボード320上に位置決めされた光源(例えばLED)と、発光検出器ボード322上に位置決めされた発光検出器(例えば光検出器)とがセンサ・ヘッド・ハウジング316の外側の分析領域と連通するのを可能にする。電気ケーブル324が光源ボード320及び発光検出器ボード322を制御ボード306にカップリングする。制御ボード306は、ボード306上のコントローラが光源を制御し且つ発光検出器から戻った信号を受信するのを可能にする。いくつかの実施態様の場合、センサ・ヘッド301は1つ以上の温度センサも含んでいる。これらの温度センサは水試料の温度を測定することができる。例えば光源ボード320及び/又は発光検出器ボード322は、センサ・ヘッド・ハウジング316内に延びる1つ以上の温度センサを含んでいてもよい。付加的なOリング334とともに、センサ・ハウジング316の遠位面内に位置決めされたカバー332が、温度センサの周りにシールを形成する。
【0033】
図4は、本発明のいくつかの実施態様に基づく手持ち式蛍光光度計のための制御ボード400の概略図である。制御ボード400は、プリント回路板401上に位置決め(例えばはんだ付け)されて一緒にカップリングされた(接続は図示されていない)数多くの別個の構成部分を含むことができる。
図4は、1つの模範的な制御ボード400の基礎構成部分の単純化された概略図を示しており、当業者には明らかなように、構成部分間の種々の接続及び/又は構成部分に関する細部は変化しうる。制御ボード400はコントローラ402を含んでいる。コントローラ402は、発光検出器からの強度信号に基づいて水試料中の生成物濃度を計算する。コントローラ402は種々様々な他の機能を提供し得る。これらの機能の一例としては、較正ルーティンを実施すること、入力インターフェイスで入力された指示を受け入れて実行すること、及び/又は蛍光光度計のディスプレイ上の表示のためのデータをフォーマットすることが挙げられる。コントローラ402は、任意の好適な形態、例えばソフトウェア駆動型マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、又は固定ハードウェア・デザイン、例えば特定用途向け集積回路などの形態で具体化されることができる。加えて、コントローラ402は内蔵メモリを有していてよく、或いは、制御ボードは、コントローラ402による実行のための指示を保存するメモリ(図示せず)を有していてよい。
【0034】
制御ボードは、制御ボード400を電源、例えば
図3に示されたバッテリ314に接続するためのコネクタ410を備えた電力ケーブルも含んでいる。制御ボード400はまた、コントローラ給電部412と、アナログ給電部414と、センサ・ヘッド内の光源に給電するための光源給電部416とを含む。いくつかの実施態様の場合、制御ボード400は、リアルタイム・クロック・バッテリ418と、ロックイン増幅器420と、基準フォトダイオード増幅器422と、ディスプレイボード424と光源ボード404と発光検出器ボード406とのためのコネクタとを含んでいる。いくつかの場合、制御ボード400は、音響器426と、USB又はその他のタイプのデータ・コネクタ428と、他のコンピューティング・デバイスと交信するための無線手段430と、任意のアナログ出力部432及び論理出力部434とを有していてもよい。
【0035】
図5は、本発明のいくつかの実施態様に基づく光源ボード500の斜視図である。光源ボード500(
図3には符号320としても示されている)は一般にプリント回路板502を含み、プリント回路板502は、前置増幅器508と、光源ボード500を制御ボードにカップリングするためのコネクタ510とともに、光源504と、基準フォトダイオード506とを有するプリント回路板502を含んでいる。励起フィルタ512が、光源504からの光を、光が浸漬可能なセンサ・ヘッドから出る前にフィルタリングすべく、フィルタ・ホルダ514によって光源504の上に位置決めされる。光源504は、考えられ得る種々様々な要素を含むことができる。例えば光源504はガス放電ランプ、水銀ランプ、重水素ランプ、金属蒸気ランプ、発光ダイオード(LED)、又は複数のLEDであってよい。加えて、光源504は、選択された要素及び所望のスペクトルに応じて、考えられ得る数多くのスペクトルの励起放射線を発することができる。いくつかの実施態様では、光源は波長約280nm〜約310nmの光を発することができる紫外LEDである。
【0036】
図6は、本発明のいくつかの実施態様に基づく発光検出器ボード600を示す斜視図である。検出器ボード600は一般に、プリント回路板602上に位置決めされた発光検出器604を含む数多くの構成部分を含んでいる。本発明のいくつかの実施態様の場合、発光検出器604はUV感光性フォトダイオードを含む。例えば、検出器604は、センサ・ヘッドの外側の分析領域から検出された約310nm〜約400nmの光に基づいて強度信号を生成することができる。検出器ボード600はまた、前置増幅器606と温度センサ608とを含んでいる。発光検出器604の周りに位置決めされた発光フィルタ・ホルダ610が、放射エネルギーをスクリーニングし、所期波長を通過させて検出器604に送るための1つ以上のフィルタを支持している。
図6に示された実施態様の場合、フィルタは干渉フィルタ612とUG−11ガラス・フィルタ614とを含む。いくつかの実施態様の場合、付加的なポリエステル膜フィルタ616も発光検出器604の前に位置決めされている。いくつかの事例において、ポリエステル膜フィルタ616の厚さは約0.5±0.2mmである。いくつかの事例では、光学設計が光学効率の増大をもたらすことができる(例えばボール・レンズ、高発散ビームなどの使用)が、高い効率及びコリメート・ビームに対する高い拒絶値を有する干渉フィルタの性能が犠牲になることもある。このようなポリエステル膜を組み入れると、いくつかの事例では、散乱光レベルを最小化することにより、100ネフェロメトリック濁度単位(NTU)という高い濁度の試料中のNDSA蛍光の測定を可能にすることができる。
【0037】
図7A〜7Cは、前述のような手持ち式蛍光光度計のコントローラ・モジュールに取り付けられることができる、本発明のいくつかの実施態様に基づく別々の浸漬可能なセンサ・ヘッド700を示す種々の図面を示す。
図7Aはセンサ・ヘッド700の頂面斜視図である。
図7Bはセンサ・ヘッド700の底部斜視図である。
図7Cは
図7Aのセンサ・ヘッド700の斜視断面図である。センサ・ヘッド700は、プラスチックから形成されることができ、且つ所望の形状及び特徴を得るように成形且つ/又はミリングされることができる。
【0038】
一般に、センサ・ヘッド700は、第1の鉛直方向のキャビティ又はチャンバ712を含むハウジング702を含んでいる。第1の鉛直方向のキャビティ又はチャンバ712は、光源回路ボード(例えば
図3の符号320又は
図5の符号500の光源ボード)を受容するように形成されている。いくつかの事例において、光源チャンバ712は円筒形態を有するように形成されている。円筒形態は、
図3に示された円筒形黄銅シールド326のための滑り嵌めを提供することができる。いくつかの実施態様の場合、光源チャンバ712は、チャンバ712の1つの側面に沿って平面状の壁726を含む部分円筒形態を有している。
図7A〜7Cに戻ると、センサ・ヘッド・ハウジング702は、光源チャンバ712と同様に、発光検出器回路ボード(例えば
図3の符号322又は
図6の符号600)の発光検出器ボードを受容するための第2の鉛直方向のキャビティ又はチャンバ714を含んでいる。いくつかの事例において、光源チャンバ712及び発光検出器チャンバ714は、センサ・ヘッド700の長手方向軸線708を中心として対称に形成して位置決めされることができるが、このことは全ての実施態様において必要とされるわけではない。
【0039】
センサ・ヘッド・ハウジング702はさらに、ハウジング702の外面内に所定の角度を成すアングル状切欠き752を含んでいる。いくつかの実施態様の場合、切欠き752の角度はほぼ90度であるが、言うまでもなく本発明は切欠きのための特定の角度に限定されることはない。切欠き752は、センサ・ヘッド700の長手方向軸線で第2壁756と交差する第1壁754によって仕切られている。第1壁754は光源窓720を画定する。光源窓720は、光源によって発せられた励起エネルギーのための、第1壁754を貫通する通路を提供する。第2壁756も同様に発光検出器窓722を画定し、この発光検出器窓722は、蛍光発光がセンサ・ヘッド・ハウジング702内部に配置された発光検出器に達するように、第2壁756を貫通する通路を提供する。いくつかの実施態様では、光源窓720及び/又は発光検出器窓722はセンサ・ヘッド・ハウジング702を通って延びるチャネルを含んでいる。いくつかの実施態様の場合、窓720,722は、レンズ、プリズム、又は光源放射線及び/若しくは蛍光発光に対して光学的に透明な他の材料を含んでいる。例えばいくつかの実施態様の場合、それぞれのチャネル内部にはガラス又はサファイヤのボール・レンズが位置決めされている。当業者に知られた他の好適な材料を使用してもよい。ボール・レンズは、光源/検出器窓を提供し、さらに、光源/検出器と、センサ・ヘッド700のハウジング702の外側の分析領域750との間で光を導くための集束手段も提供する。
【0040】
図示のように、光源窓720及び発光検出器窓722を含むアングル状切欠き752は、アングル状切欠き及び窓がコントローラ・モジュールの遠位端に面するように、コントローラ・モジュールに対して配向されている。本明細書中にさらに論じるように、アングル状切欠き及び窓はいくつかの実施態様において、異なる方向に配向されていてよい。例えば、いくつかの実施態様において、アングル状切欠き及び窓は、コントローラ・モジュールの近位端に向いている。
【0041】
いくつかの実施態様の場合、センサ・ヘッド700は近位端704と遠位端706とを含んでいる。これらの間には、長手方向軸線708とセンサ・ヘッド700の長さ部分とが延びている。
図1及び3に示されているように、いくつかの実施態様では、センサ・ヘッド700は、センサ・ヘッド700の近位端704又はその近くで、コントローラ・モジュール・ハウジングの底面に結合されている。いくつかの事例では、センサ・ヘッド700はコントローラ・ハウジングにファスナによって固定的に取り付けられている。ファスナは例えばねじ、ボルト及び/若しくはピン、又は接着剤又は溶接(図示せず)を含むことができる。いくつかの実施態様において、センサ・ヘッド700は4つのねじで固定されている。これらのねじは、センサ・ヘッド700とコントローラ・モジュールとの間の溝710内に位置決めされたOリングを圧縮する。いくつかの実施態様において、センサ・ヘッド・ハウジング702はコントローラ・モジュールと一体的に形成されて、センサ・ヘッドの近位端704とコントローラ・モジュールの底面とが継ぎ目なしに移行するようになっていてもよい。
【0042】
いくつかの実施態様の場合、センサ・ヘッド700はファスナの一部又は全ても含んでいる。ファスナはセンサ・ヘッド700の周りに試料カップを取り外し可能に固定する。ただ1つの例として、ファスナは、センサ・ヘッド・ハウジング702の周りに位置決めされた1つ以上のピン740と、試料カップ上の対応スロットとを含んでいてよい。いくつかの実施態様の場合、ピン740とスロットとはバヨネット式ファスナを形成する。バヨネット式ファスナは、試料カップをセンサ・ヘッドの周りに固定し、且つ試料カップをセンサ・ヘッド700の周りに好ましい配向に方向付ける(例えば回転)。他のファスナ(例えばねじ山、対向する加圧要素など)を含むこともできる。
【0043】
いくつかの実施態様の場合、センサ・ヘッド700はまた、
図3に示されているような、1つ以上の温度センサ・カバーを挿入するための穴730を含んでいる。
図7A〜7Cに戻ると、穴730は、ねじ山を有しているか、或いは温度センサ・カバーを受容して固定するように他の形で形成されていてよい。(
図7A〜7Cには示されていない)温度センサは、現在の水試料温度を検知し、そして対応信号を生成するように適合されている。対応信号は、例えば許容範囲外の温度に起因するエラーに基づいて濃度計算を補正するために使用されることができる。
【0044】
加えて、センサ・ヘッド700は好ましくは浸漬可能なセンサ・ヘッドである。浸漬可能なセンサ・ヘッドは、蛍光発光を測定するときにこれが水試料表面よりも下方に部分的又は全体的に浸漬されることを意味する。従って、センサ・ヘッド・ハウジング702、すなわちコントローラ・ハウジングへの結合部、及びハウジング702内の窓又はその他の潜在的な空所(void)は、浸漬前に事実上シールされる。例えばいくつかの場合、ハウジング702は、センサ・ヘッドの近位端704に第1のOリング溝710を含み、且つ温度センサ穴730の周りに第2のOリング溝732を含んでいる。試料カップを含むいくつかの実施態様において、センサ・ヘッドの近位端704の近くでセンサ・ヘッド700の周囲に第3のOリング溝742を形成することにより、試料カップとセンサ・ヘッド700との間に実質的に不透過性のシールを提供する。加えて、光源窓720及び発光検出器窓722はOリングなどでシールされてもよい。いくつかの実施態様では、光源窓720及び発光検出器窓722は、窓チャネルとチャネル内部に配置されたボール・レンズとの間の圧力嵌めに基づいてシールされている。
【0045】
図8は、本発明のいくつかの実施態様に基づく、水試料中の物質の濃度を割り出す方法を示すフローチャートである。一般に、蛍光光度計は生成物内の活性分子の蛍光発光を測定する。蛍光発光は水試料中の実際の生成物濃度に対して比例する。コントローラ・モジュールと、コントローラ・モジュールに結合されたセンサ・ヘッドとを有する手持ち式蛍光光度計を提供した(802)後、関心事の生成物を含有する水試料を提供する。センサ・ヘッドを水試料中に浸漬し(804)、水試料はセンサの分析領域を占有する。次に第1UV波長を有する紫外(UV)励起光を、センサ・ヘッド内の光源によって発生させて、これを水試料及び分析領域内へ導く(806)。次いでセンサ・ヘッドが第2UV波長で試料の蛍光発光を検出して測定する(808)。センサ・ヘッドはコントローラを含む(例えば
図4の符号402)。コントローラが、測定された蛍光発光に基づいて試料中の生成物濃度を計算する(810)。第1波長は280〜310nmであってよい。第2UV波長は310nm〜400nmであってよい。センサは第1波長で試料の基準蛍光発光を測定してもよい。センサは、化学物質濃度がゼロであるゼロ溶液の蛍光発光を測定してもよい。この場合、試料中の化学物質濃度は、化学物質を含有する試料の測定された蛍光発光と、ゼロ溶液の測定された蛍光発光との計算された差に基づいて計算されることができる。試料濃度は、較正試料中の既知の生成物濃度に対して割り出された較正定数に基づいて計算されてもよい。
【0046】
一例として、いくつかの場合、2つのUV検出器からの信号に基づいて試料濃度を評価することができる。基準検出器が、光源によって発生せしめられたUC励起の強度を測定するのに対して、蛍光発光検出器が、生成物によって発せられた蛍光発光の強度を測定する。計算は下記の式を使用する。
【数5】
【0047】
ここで、Ccは試料溶液中の生成物X(例えば界面活性剤、抗菌剤など)の実際の現在の濃度である。
【0049】
【数6】
は、試料溶液に対応する発光検出器からの出力信号である。
【0050】
【数7】
は、試料溶液に対応する基準検出器からの出力信号である。
【0051】
【数8】
は、ゼロ溶液(すなわち、生成物濃度がゼロである溶液)に対応する発光検出器からの出力信号である。
【0052】
【数9】
は、ゼロ溶液に対応する基準検出器からの出力信号である。
【数10】
【0053】
ここで、C
CALIBRは、較正溶液中の生成物の濃度である。
【0054】
【数11】
は、較正溶液に対応する発光検出器からの出力信号である。
【0055】
【数12】
は、較正溶液に対応する基準検出器からの出力信号である。
【0056】
図4を参照して上述したように、手持ち式蛍光光度計内部のコントローラ402は、発光検出器からの強度信号に基づいて試料中の生成物濃度を計算することができる。いくつかの実施態様では、コントローラ402は、上記関係を用いて、較正定数、ゼロシフト、及び/又は励起基準信号に基づいて生成物濃度を計算してもよい。コントローラのための動作指示はボード上に又は別個のメモリ内に保存されることができる。この点において、メモリは、プログラム指示を含むコンピュータ可読媒体であってよい。これらのプログラム指示によって、コントローラは、指示に帰する機能のうちのいずれかを提供し、そしてここに記載した方法のうちのいずれかを実施するようになる。コントローラは、発光検出器及び/又は基準検出器から得られた生の蛍光データと、他の関連データとをメモリ内に保存してもよい。コントローラは任意の計算された蛍光値及び/又は濃度データをメモリ内に保存してもよい。
【0057】
上記のように、本発明のいくつかの実施態様において、蛍光光度計は水試料から蛍光発光を測定して生成物濃度の較正された計算値を提供する。この較正された計算値は、蛍光測定値に影響を及ぼし得る試料水の1つ以上の特性を考慮する。
図9は、本発明のいくつかの実施態様に基づく、予想蛍光測定値に及ぼす現場の水特性のいくつかの影響を示すプロット900である。プロット900は概ね、生じ得る蛍光光度読み値を任意単位(例えば蛍光、濃度などの点で)で水試料中の蛍光トレーサNDSA濃度に対しておおまかに示している。初期測定値902が連続測定値に対する基準点を提供する。いくつかの実施態様の場合、水試料の体積は、蛍光光度計で蛍光光度を読むために必要な最小体積よりも少なくとも2倍以上大きい。
【0058】
いくつかの事例において、初期測定値902は、(
図9の破断された濃度の軸線で示されるように)蛍光トレーサの実際の濃度に関する限定された情報を提供し、生成物トレーサ濃度と蛍光光度計読み値との関係をさらに特徴づけるために、付加的な較正が必要である。較正された計算値は、1つ以上の較正ファクタ、例えば較正定数(例えば較正勾配係数)、ゼロシフト及び/又は励起基準信号に部分的に基づいていてよい。例えば、いくつかの事例において、現在の蛍光マーカー濃度C
mは、K
m×(S
x−Z
0)にほぼ等しい。ここで、S
xは現在の蛍光測定値であり、K
mは較正勾配補正係数であり、Z
0はゼロシフトである。いくつかの事例において、次いで、現在の生成物濃度C
cをC
m×(C
0/C
f)にほぼ等しいものとして割り出すことができる。ここで、C
0は公称生成物濃度であり、C
fは公称蛍光トレーサ濃度である。本発明のいくつかの実施態様の場合、公称NDSA濃度は約0.1ppm〜約3ppmである。いくつかの実施態様の場合、公称NDSA濃度は約0.5ppmである。
【0059】
いくつかの事例の場合、蛍光光度計読み値に対する蛍光マーカー(及び生成物)の濃度の較正関係を、ゼロシフト及び較正勾配の観点から説明することができる。ゼロシフトを使用することにより、バックグラウンド蛍光によってもたらされる影響に対して読み値を補正し、基本的には測定されたバックグラウンド蛍光を差し引くので、読み値はトレーサ/生成物によって発せられた蛍光だけに相当する。較正勾配は、試料内部のトレーサの濃度における所与の増大について予想されうる、蛍光光度計の読み値における予想される増大を示す。
【0060】
図9に戻ると、NDSAの濃度が、矢印904によって示されるように、初期測定値902から高められると、次の測定値906が予想曲線910に沿った読み値に相当することが予想される。予想曲線910は、既知のトレーサ濃度の増大に対応する既知の蛍光読み値の増大に基づいている。例えば、蛍光読み値の増大はしばしば、ゼロ試料中のトレーサ濃度を既知量だけ増大させた後、ゼロ試料の蛍光を測定することによって、濃度増分に関して割り出される。しかしながら、
図9に関して発明者は、意外にも、現場の試料中のトレーサ濃度を既知量だけ増大させた後、次の測定値908が、ゼロ試料による較正中に予想し得るものとは異なる曲線912に沿った異なる読み値をもたらすことを発見した。特定の理論に縛られることなしに発明者は、この差異が、実際の水試料中の吸収度、散乱、色、及び濁りなどによって引き起こされるトレーサ蛍光に対する影響によってもたらされるものと考える。本発明のいくつかの実施態様では、バックグラウンド蛍光の影響に加えてトレーサの蛍光に及ぼされる実際の水試料の光学特性の影響も考慮に入れる蛍光光度計較正方法が提供される。このように、実際の較正曲線912は、実際の勾配及びゼロオフセットを用いて割り出すことができる。ゼロオフセットは、曲線と読み値の軸線との交点に相当し、濃度の軸線からオフセットしている。
【0061】
いくつかの実施態様において、実際の較正曲線912の勾配は、被験産業用水システムからの水試料と、試料に添加される既知量の蛍光トレーサとを有する較正溶液を形成することによって割り出されることができる。
図10に関して、いくつかの実施態様において、蛍光光度計を較正するための方法1000は、較正勾配と較正オフセットとを割り出すステップを含む。方法1000は、蛍光光度計、例えば上記のもののうちの1つ又は別のものを提供すること(1002)と、水試料を取り出すこと(1004)と、水試料から第1蛍光信号S
1を測定し(1006)、ひいては将来の測定のためのベースライン又は基準点を提供することとを含む。第1較正溶液を調製する(1008)ことによって、実際の較正勾配を割り出すのを助け、そして第1較正溶液から第2蛍光信号S
2を測定する(1010)。次いで、第1信号S
1及び第2信号S
2に基づいて較正勾配係数を割り出すことができる(1012)。
【0062】
いくつかの事例において、第1較正溶液は、水試料の一部において蛍光トレーサ濃度を既知量だけ高くすることにより調製される。例えばいくつかの実施態様では、第1較正溶液の調製は、水試料中の公称生成物濃度C
0の約P倍の濃度で水処理生成物を含有するスパイク溶液を調製することを含む。いくつかの事例では、水処理生成物はまた、水試料中のトレーサの公称濃度C
fの約P倍の濃度で蛍光マーカーを含む。いくつかの実施態様では、約N部の水試料に対して約1部のスパイク溶液の比率でスパイク溶液を水試料で混合することにより第1較正溶液を作成する。第1較正溶液から第2信号S
2を測定した後、第1信号S
1及び第2信号S
2に基づいて較正勾配係数K
mを割り出す。いくつかの実施態様では、スパイク溶液は、濃度P×C
fの蛍光トレーサを含有し、且つ約1:Nの比で水試料と混合され、勾配係数K
mは
【数13】
にほぼ等しいものとして計算される。
【0063】
言うまでもなく、第1較正溶液について様々な混合比が可能である。いくつかの実施態様では、Nは約10〜約500であり、一方、いくつかの事例ではNは約90〜約110である。いくつかの事例ではNは約5〜約40である。いくつかの実施態様ではNは99である。いくつかの実施態様ではP=N+1である。いくつかの実施態様ではPは、P=N+1であり且つNが99である場合のように100である。もちろん、N及びPの他の値も可能であり、本発明はここに記載された範囲及び/又は例に限定されるものではない。
【0064】
図10に戻ると、較正勾配係数K
mを計算すること(1012)に加えて、いくつかの事例では、この方法1000は、生成物によって発せられるあらゆる蛍光が除かれた水試料中のバックグラウンド蛍光量を表す較正曲線のゼロシフトZ
0を割り出すことも含む。いくつかの実施態様の場合、ゼロシフトは、水処理生成物及び/又は蛍光マーカーの濃度がゼロであるゼロ水試料から割り出される。例えば、いくつかの事例において、ゼロ水試料は蒸留水又は水道水であってよい。いくつかの事例では、ゼロ水試料は、蛍光測定が行われる現場で取得された水道水であってよい。いくつかの事例では、ゼロ水試料は水源から取得されてよい。この水は通常、産業用水システム内で使用するためのキャリアとして生成物と混合される。
【0065】
ゼロ水試料の調製(1014)後、方法1000は、ゼロ水試料から第3蛍光信号S
3を測定すること(1016)と、第3蛍光信号S
3に等しいゼロシフトを設定すること(1018)とを含む。次いで、蛍光光度計を勾配係数K
m及びゼロシフトZ
0を用いて較正すること(1020)ができる。例えば、いくつかの実施態様の場合、本明細書中に前述したような、C
m=K
m×(S
x−Z
0)及びC
c=C
m×(C
0/C
f)の関係に従って、水試料中の生成物Ccの現在の濃度を割り出すことができる。
【0066】
図11は、本発明のいくつかの実施態様に基づく、別の蛍光光度計較正方法1100を示すフローチャートである。この方法1100は、
図10の方法1000におけるものと共通するいくつかのステップを含んでいる。例えば方法1100は、蛍光光度計を提供すること(1102)と、水試料を取り出すこと(1104)と、水試料から第1蛍光信号S
1を測定すること(1106)とを含む。次いで、第1較正溶液を調製し(1108)、第1較正溶液から第2蛍光測定値S
2を測定し(1110)、S
1及びS
2に基づいて較正勾配係数を計算することができる。いくつかの実施態様では、第1較正溶液は、
図10に関連して説明したのと同様に調製されうるが、このことが必要というわけではない。
【0067】
図11に示された方法1100はさらに、第2較正溶液を調製することと(1114)、第2較正溶液から第3蛍光信号S
3を測定すること(1116)と、S
1及びS
2に基づいてゼロシフトを計算すること(1118)とを含む。いくつかの実施態様において、第2較正溶液は、産業用水システムから抽出された水試料の一部から調製され、このため、ゼロシフトは、ゼロ水試料ではなく、産業用水システム中の実際の水に基づいて計算されることができる。従って、こうして取得された勾配係数及びゼロシフトを用いて蛍光光度計を較正すること(1120)により、特有の現場環境における水の光学特性をより正確に考慮することができる。
【0068】
図12A及び12Bは、本発明のいくつかの実施態様に基づいて、
図11に示された方法1100において使用される第2較正溶液を調製する(1114)2つの方法を示すフローチャートである。
図12A及び12Bに示されているように、いくつかの実施態様の場合、第2較正溶液は、予め捕集された水試料の一部を使用して、又は較正勾配係数K
mを割り出すために最初に使用された第1較正溶液の一部を使用して調製されることができる。もちろん、第2較正溶液の他の調製方法も可能である。
【0069】
図12Aを参照すると、いくつかの実施態様の場合、第2較正溶液の調製方法1214Aは、酸溶液を調製すること(1202)と、酸溶液と水試料の一部とを混合すること(1204)とを含む。いくつかの実施態様において、酸溶液は塩酸を含むが、本発明は特定の酸の使用に限定されるものではない。いくつかの実施態様において、約M部の水試料に約1部の酸溶液を添加すること(1204)により第2較正溶液を形成し、第3蛍光信号S
3を測定し(
図11の符号1116)、ゼロシフトZ
0を、
【数14】
にほぼ等しいものとして計算する(
図11の符号1118)。いくつかの実施態様によれば、Mは約9〜約21である。いくつかの事例では、
【数15】
であり、一方、いくつかの実施態様ではQ=M+1である。もちろん、M及びQの他の値も可能であり、本発明は本明細書に記載された範囲及び/又は例に限定されるものではない。
【0070】
図12Bは、水試料から予め調製された第1較正溶液(例えば
図11の符号1108)に基づいて第2較正溶液を調製する方法1214Bを示している。方法1214Bは、酸溶液を調製すること(1222)と、酸溶液と第1較正溶液の一部とを混合すること(1224)とを含む。いくつかの事例では、酸溶液は約5%〜約30%の酸を含有している。いくつかの実施態様において、酸溶液は塩酸を含む。いくつかの事例において、酸溶液は約10%の塩酸の濃度を有している。
【0071】
図12Bに戻って、いくつかの実施態様の場合、約1部の酸溶液を約9部の第1較正溶液に添加すること(1224)により第2較正溶液を作成する。次いで第3蛍光信号S
3を測定し(例えば
図11の符号1116)、ゼロシフトZ
0をS
2−(S
3×1.1)にほぼ等しいものとして計算すること(例えば
図11の符号1118)ができる。もちろん酸濃度及び酸溶液と第1較正溶液との比に対応する他の値も可能であり、本発明は、本明細書に記載された範囲及び/又は例に限定されるものではない。一旦ゼロシフトZ
0を割り出したら、蛍光光度計は、前述のようにゼロシフトZ
0及び/又は較正勾配係数K
mを使用して較正されることができる。
【0072】
図13Aは、
図11及び
図12Aの較正方法を行いながら測られた一連の仮想蛍光測定値を示すプロット1300Aである。水試料を取り出した後、水試料の第1蛍光信号S
11302を蛍光光度計で測定する。次いで第1較正溶液及び第2較正溶液を調製し、連続した測定値を測ることにより、較正勾配係数K
m及びゼロシフトZ
0を割り出す。
図11及び12Aに示されているように、いくつかの実施態様の場合、水試料の一部から直接的に第1較正溶液及び第2較正溶液のそれぞれを調製することができ、調製順序は変化してもよい。
図13Aに示されているように、NDSA濃度を高くしたスパイク溶液を調製することによって、NDSA濃度を高くすることができる(矢印1304によって示される)。次いで、これを使用して水試料の一部を「スパイク」し、第1較正溶液を作成する。第1較正溶液から第2蛍光測定値S
21306を測り、第1測定値S
11302及び第2測定値S
21306を使用して較正勾配係数K
mを割り出すことにより曲線1308を特徴づける。例えば、いくつかの事例では、勾配係数K
mを
【数16】
にほぼ等しいものとして計算する。
【0073】
引き続き
図13Aを参照すると、次いで酸溶液を水試料の一部に添加することによってバックグラウンド蛍光を低減又は排除し(矢印1310によって示す)、ひいては第2の較正溶液を作成することができる。次いで第2較正溶液から第3蛍光測定値S
31312を測定することができ、次いで第1測定値S
11302及び第3測定値S
31312を使用して、バックグラウンド蛍光の影響を補正するのに必要とされるゼロシフト1316を割り出すことができる。例えば、ゼロシフトZ
0は、いくつかの事例において、
【数17】
にほぼ等しいものとして計算することができる。次いで、較正勾配係数K
m及びゼロシフトZ
0を使用して将来の蛍光光度計の読み値を較正することができる。
【0074】
図13Bは、
図11及び
図12Bの較正方法を行いながら測られた一連の仮想蛍光測定値を示すプロット1300Bである。水試料を取り出した後、蛍光光度計で水試料の第1蛍光信号S
11352を測定する。次いで第1較正溶液及び第2較正溶液を調製し、連続した測定値を測ることにより較正勾配係数K
m及びゼロシフトZ
0を割り出す。
図11及び12Bに示されているように、いくつかの実施態様の場合、水試料の一部から直接的に第1較正溶液を調製することができ、第1較正溶液の一部から第2較正溶液を調製する。
図13Bに示されているように、NDSA濃度を高くしたスパイク溶液を調製することによってNDSA濃度を高くすることができる(矢印1354によって示される)。次いで、これを使用して水試料の一部を「スパイク」し、第1較正溶液を作成する。第1較正溶液から第2蛍光測定値S
21356を測り、第1測定値S
11352及び第2測定値S
21356を使用して較正勾配係数K
mを割り出すことにより曲線1358を特徴づける。例えば、いくつかの事例では、勾配係数K
mをC
f/(S
2−S
1×0.99)にほぼ等しいものとして計算する。
【0075】
引き続き
図13Bを参照すると、次いで第1較正溶液の一部に酸溶液を添加することによってバックグラウンド蛍光を低減又は排除し(矢印1310によって示される)、ひいては第2の較正溶液を作成することができる。次いで第2較正溶液から第3蛍光測定値S
31312を測定することができ、次いで第1測定値S
11302及び第3測定値S
31312を使用して、バックグラウンド蛍光の影響を補正するのに必要とされるゼロシフト1316を割り出すことができる。例えば、ゼロシフトZ
0は、いくつかの事例において、S
2−(S
3×1.1)にほぼ等しいものとして計算されることができる。次いで、較正勾配係数K
m及びゼロシフトZ
0を使用して将来の蛍光光度計の読み値を較正することができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施態様によれば、蛍光光度計の較正方法は少なくとも3つの点を利用して、特に従来の2点較正のスキームと比較して較正精度を高めるので有利である。例えば上述のように、或る特定の実施態様は少なくとも2つの測定点を利用して、較正曲線の勾配を特徴づける。最初の2つの測定点のうちの一方と一緒に第3の点を用いることにより、較正曲線のゼロオフセットを割り出すことができる。
【0077】
図14及び15を参照すると、本発明のいくつかの実施態様が、4点較正方法1400を提供する。
図14は、方法1400を示すフローチャートであり、一方、
図15は、
図14の較正方法を行いながら測られた仮想蛍光測定値を示すプロットである。方法1400は、蛍光光度計、例えば本明細書中に記載されたもののうちの1つ、又は蛍光マーカーからの蛍光信号を測定して水試料中の生成物濃度を割り出すように形成された別のものを提供すること(1402)を含む。水試料を取り出した(1404)後、蛍光光度計を使用して水試料の第1蛍光信号S
11502を測定する(1406)。第1較正溶液を調製すること(1408)により、試料水中のNDSA濃度を高める(矢印1504によって示される)。いくつかの実施態様の場合、約100×C
0の濃度の生成物と約100×C
fの濃度の蛍光マーカーとを有する第1スパイク溶液を水試料の一部と合体させることによって第1較正溶液を調製する。いくつかの事例において、約1部の第1スパイク溶液を約99部の水試料に添加することにより第1較正溶液を調製する。
図14及び15に示されているように、いくつかの事例において、第1較正溶液から第2蛍光信号S
21506を測定する。いくつかの実施態様において、曲線1508を特徴づける勾配係数K
mをC
f/(S
2−S
1×0.99)にほぼ等しいものとして計算するが、他の変更形も可能である。
【0078】
いくつかの実施態様の場合、水試料中のバックグラウンド蛍光を低減又は排除する(矢印1510によって示される)ために、酸溶液を水試料の一部に添加することにより第2の較正溶液を調製する(1414)。例えば、いくつかの事例の場合、先ず約5%〜約30%の酸を含有する酸溶液を調製し、次いで約1部の酸溶液を約9部の水試料に添加することにより第2較正溶液を調製することができる。第2較正溶液から第3蛍光信号S
31512を測定する(1416)。
【0079】
いくつかの事例において、約100×C
0の濃度の生成物と約100×C
fの濃度の蛍光マーカーとを含有する第2スパイク溶液を第2較正溶液の一部と合体させることにより第3較正溶液を調製する(1418)。いくつかの事例において、約1部のスパイク溶液を約99部の第2較正溶液に添加することによって第3較正溶液を調製する。いくつかの実施態様の場合、第2スパイク溶液は第1スパイク溶液と同じである。第3較正溶液を調製した(1418)後、第3較正溶液から第4蛍光信号S
41516を測定する。いくつかの実施態様の場合、次いで、4つの蛍光測定値及びバックグラウンド補正係数B
zに基づいてゼロシフトZ
01520を計算することができる。いくつかの実施態様の場合、ゼロシフトZ
0は、
【数18】
にほぼ等しいものとして計算される(1422)。
【0080】
図15に示されているように、いくつかの事例では、較正曲線1508の勾配は較正曲線1518とは僅かに異なる勾配を有している。このことは、第3較正溶液を調製して第4蛍光測定値S
41516を測定する前のバックグラウンド蛍光の消失1510に少なくとも部分的に起因するものと考えられる。従って、4点較正方法1400は、従来の較正方法よりも高精度の改善された較正方法を提供することができる。例えば上述のように、ゼロシフトは、4つの全ての信号測定値S1、S2、S3及びS4に基づいている。いくつかの実施態様の場合、ゼロシフトはバックグラウンド補正係数にも基づいている。いくつかの事例では、B
zは約0.005〜約0.05である。いくつかの実施態様の場合、B
zは約0.0135である。
【0081】
このように本発明の実施態様が開示された。開示された実施態様を参照しながらかなり詳細に本発明を説明してきたが、開示された実施態様は一例として提示されたに過ぎず、本発明の他の実施態様も可能である。当業者には明らかなように、本発明の思想及び添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の変更、適応、及び改変を加えることができる。