(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗工紙は、白色顔料と接着剤を含む顔料塗工層が原紙上に設けられた塗工紙であれば特に制限はなく、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷などに用いられる印刷用塗工紙はもちろん、板紙原紙上に顔料塗工層を有する白板紙であってもよい。
【0012】
本発明の塗工紙は、原紙の上に、顔料を含む顔料塗工層を1層以上設ける。原紙上には、顔料を含まない塗工液(サイズプレス液)を塗工しても塗工しなくてもよい。
【0013】
本発明の塗工紙の紙中灰分は、30重量%以上であることが好ましい。印刷用塗工紙の場合、灰分を多くして不透明度を高くすることが好ましい。
【0014】
澱粉系高分子
本発明においては、顔料塗工層を設けるため、主として顔料、接着剤(バインダー)、水を含む顔料塗工液を用いるが、接着剤(バインダー)として、特定の粘度を有する澱粉由来の高分子化合物を添加する。本発明の澱粉由来の高分子化合物は、蒸煮後の一定時間経過後における粘度が特に低いため、顔料塗工液に配合してもその粘度を大幅に増大させることがなく、顔料塗工液の濃度を高くすることができ、それにより、塗工紙の印刷品質を向上させることができる。すなわち、原紙への塗料のしみこみを抑制し、有効塗工層が増えることから、光沢発現性向上、表面強度向上など、種々の塗工紙品質が向上する。
【0015】
本発明においては、接着剤として、澱粉由来の高分子化合物を用いる。澱粉由来の高分子化合物としては、各種加工澱粉を始めとする澱粉、澱粉を加水分解して得られるデキストリンを好適に使用することができる。澱粉とは、アミロース、アミロペクチンからなる混合物のことをいい、一般に、その混合比は澱粉の原材料である植物によって異なる。
【0016】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、一定条件で蒸煮した後のスラリー粘度が700mPa・s以下である澱粉由来の高分子化合物である。
【0017】
澱粉化合物は、通常、水中に懸濁し加熱すると、デンプン粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的にはデンプン粒が崩壊し、ゲル状に変化する。この現象を糊化(こか)という。このとき、デンプン懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。粒子が最大限吸水した時に粘度が最大となり、粒子の崩壊により粘度は低下する。本発明においては、蒸煮により粘度が最大となった後、温度を下げて静置した時の粘度が一定の範囲のものを用いる。
【0018】
澱粉系高分子化合物を、塗工液に含有させる場合は、高分子化合物を溶解させるための加熱を必要とする。よって、一定条件で蒸煮した後のスラリーの粘度が重要となる。
【0019】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、蒸煮した後のスラリーの粘度が低いため、スラリーを高濃度化することができる。
【0020】
また、例えばα化澱粉などに代表される、冷水可溶澱粉もスラリー粘度は低いが、それらの冷水可溶澱粉は、冷水に溶けるように処理されており、デキストリンなどの方が表面強度の発現性が高く有利である。それ故に本発明の澱粉系高分子化合物としては、20℃への水への溶解度が20%未満であることが好ましい。
【0021】
このような澱粉系高分子の挙動は、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA、型式RVA-4、New Port Scientific社製)という測定機器を用いて測定することができる。本発明においては、濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、以下の蒸煮条件で蒸煮したとき、蒸煮開始から16分後の50℃における粘度が700mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる。本発明の一態様では澱粉系高分子を顔料塗工層の接着剤として使用するが、そのスラリーを蒸煮(クッキング)することによってバインダーとしての接着力が発現する。
【0022】
<RVA粘度測定条件>
以下の条件でパドルを回転させ、攪拌しているパドルにかかるトルクを測定し、粘度を算出する。
攪拌条件
・測定開始後10秒:960rpm
・その後 :160rpm
蒸煮条件
・ 0〜 5分:5分間で98℃まで昇温
・ 5〜 9分:98℃にて保持
・ 9〜12分:3分間で50℃まで降温
・12〜16分:50℃にて保持
【0023】
上記の通り測定した澱粉系高分子化合物の蒸煮後16分後の50℃にて保持する段階における粘度は、700mPa・s以下であり、より好ましくは500mPa・s以下、最も好ましくは300mPa・s以下である。
【0024】
また、本発明の澱粉系高分子は、RVAを用いて上記条件で粘度を測定した際に澱粉の糊化による最大粘度が1500mPa・s以下であることが好ましく、1300mPa・s以下であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。糊化の際の最大粘度がこのような範囲であるとハンドリングが容易であり、塗工液に配合した場合に過度の粘度上昇を生じることがない。
【0025】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、上記粘度を有していれば特に制限されず、変性方法、原料の品種なども自由である。澱粉を変性、修飾、加工などしたものとしては、例えば、酸化澱粉、ヒドロキシエステル化澱粉(HES)、燐酸エステル澱粉、エステル化澱粉、デキストリンなどが挙げられる。なかでも塗料に配合した際、流動性がさらに良好(低粘度)となることから、デキストリンが好ましい。また、本発明で使用する澱粉系高分子の好ましい原料としては、トウモロコシ、ポテト、タピオカなどを挙げることができ、ワキシー種のトウモロコシ(ワキシーコーン)やタピオカが特に好ましい。
【0026】
本発明の粘度を満足する澱粉系高分子としては、例えば、低粘度のヒドロキシエチル澱粉(HES)、酸化アセチル化タピオカ澱粉、デキストリンなどがある。これらの澱粉系高分子は、低粘度で粘度安定性があり、強度も優れている。
【0027】
本発明においては、粘度が低く、かつ粘度安定性が高いため、接着剤としてデキストリン、特に焙焼デキストリンが好ましい。デキストリンとは、澱粉を加水分解して得られる澱粉系高分子の総称であり、α-グルコースがグリコシド結合によって重合しており、糊精(こせい)とも呼ばれる。通常の澱粉は分子量が大きいが、デキストリンは澱粉の加水分解の工程で生ずる中間性生物であり、オリゴマー(グルコースが数個〜20個程度が結合したもの)程度の分子量しかないとされている。焙焼デキストリンは、酸を加えて乾熱で焼いて生成したデキストリンであり、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガムなどの種類がある。本発明においては、特に白色デキストリンを使用することが好ましい。白色デキストリンをさらに加水分解するといわゆる黄色デキストリンとなるが、黄色デキストリンだと安定性が低く、顔料塗工層が着色するおそれがあるため、本発明においては白色デキストリンの使用が好ましい。
【0028】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、塗工液に配合した際に流動性が良好となる。流動性が向上すると、塗工液の高濃度化が可能となり、塗工液のしみこみを抑制し、有効塗工層が増えることから、光沢発現性向上、白色度向上、表面強度向上など、種々の塗工紙品質が向上する。
【0029】
本発明の澱粉由来の高分子化合物の配合量は、好ましい態様において、これらの接着剤は顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部程度の範囲で使用される。
【0030】
本発明においては、接着剤として、上記の澱粉由来の高分子化合物のみを用いることもできるが、上記の澱粉由来の高分子化合物以外にも塗工紙用に従来から用いられている接着剤を併用することもできる。上記の澱粉由来の高分子化合物以外の接着剤の例には、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、およびアクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;上記の澱粉由来の高分子化合物以外の酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤が含まれる。接着剤は、1種類以上を適宜選択して使用できる。本発明では、澱粉系高分子化合物とは特性の異なるラテックスを接着剤として併用することが好ましく、その場合、ラテックスの使用量よりも澱粉系高分子化合物の使用より多くすることが好ましい。併用により澱粉系化合物とラテックスの利点を両方得られるが、本発明の効果を大きく発揮させるには澱粉系高分子化合物の使用量を多くすることが好ましい。接着剤として澱粉系高分子化合物とラテックスを併用する場合は、接着剤全体のラテックスの配合率は50重量%未満が好ましい。
【0031】
また、顔料塗工層に用いる接着剤として共重合体ラテックスが知られているが、本発明の好ましい態様において、接着剤として共重合体ラテックスを使用しないか、または、共重合体ラテックスの使用量を顔料100重量部に対して4重量部以下とする。また、共重合体ラテックスの使用量を2.5重量部以下とすると好ましい。共重合体ラテックスを使用しないか、その使用量を少なくすることによって、バッキングロール汚れの防止、耐ブリスター性の向上、さらには、高価な共重合体ラテックスの使用削減によるコストダウンという利点が得られる。
【0032】
本発明において塗工液中の接着剤合計の配合量は特に制限されないが、顔料100重量部あたり5〜50重量部が好ましく、5〜30重量部程度がより好ましく、さらには5〜12重量部が好ましい。接着剤として、澱粉由来の上記高分子化合物とそれ以外の接着剤とを併用する場合は、その合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液の粘度は、JIS K 7117−1 のB型粘度計で、500〜3500mPa・sが好ましく、よりこのましくは1000〜3000mPa・sである。
【0034】
本発明においては、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【0035】
塗工顔料
本発明の塗工層に用いる顔料(白色顔料)は特に制限されず、塗工紙用に従来から用いられているものを使用することができ、例えば、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを必要に応じて単独または2種類以上混合して使用することができる。また、顔料の種類としては、バインダー要求量が少なく少量の接着剤で表面強度を向上できることと、高い白色度の観点から、重質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウムが好ましく、また不透明度をも向上させる観点から、粒子径や形状が揃った軽質炭酸カルシウムが特に好ましい。嵩高な塗工層構造は光を効率的に散乱するためである。
【0036】
塗工液に炭酸カルシウムを配合する場合、軽質炭酸カルシウムもしくは重質炭酸カルシウム、またはその両方をあわせた含有量は、顔料100重量部あたり50重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましく、80重量以上がさらに好ましい。また、原紙上に均一な塗工層を形成させる観点の点から平均粒子径は、Malvern社製Mastersizer Sなどのレーザー回折式粒度分布測定機で測定した値で0.2〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。
【0037】
塗工
本発明においては、通常用いられるコータであればいずれを用いても良い。オンマシンコータでもオフマシンコータでも良く、オンマシンコータであれば、サイズプレスコータ、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレスコーターなどのロールコータ、ビルブレイドコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータ、ショートドゥエルブレードコーター、ジェットファウンテンブレードコーターなどのコータを使用できる。塗工速度は、特に限定されないが、現在の技術ではブレードコータでは500〜1800m/分、サイズプレスコータでは500〜2000m/分が好ましい。
【0038】
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0039】
本発明における塗工液の塗工量は、用途に応じて適宜選定できるが、一般的には、片面あたり固形分で2〜13g/m
2である。
【0040】
本発明の塗工液の濃度は、特に限定されないが、印刷品質を考慮すると、60重量%〜75重量%程度が好ましい。また、本発明の塗工液の粘度は、操業性などの点から、2000mPa・s〜3000mPa・s程度が好ましい。
【0041】
原紙
本発明の塗工紙は少なくとも原紙層を有する。原紙は公知の方法により製造することができ、例えば、抄紙原料(紙料)をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して原紙を製造することができる。本発明に用いる原紙は、単層抄きであっても多層抄きであってもよいが、白板紙を製造する場合は多層抄き原紙を用いることが好ましい。本発明の原紙の製法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。本発明で使用される原紙は特に制限されず、一般に使用される上質紙、中質紙、更紙、マシンコート紙、アート紙、キャストコート紙、合成紙、レジンコーテッド紙、プラスチックフィルム等を例外なく使用できる。
【0042】
本発明の原紙の坪量は特に限定されず、用途に応じて適宜選定できるが、例えば、35〜150g/m
2とすることができ、40〜100g/m
2としてもよい。
【0043】
原料パルプ
本発明の原紙に用いるパルプ原料としては、化学パルプを使用することができる。化学パルプ以外にも、用途に応じて各種パルプを使用することができ、例えば、脱墨パルプ(DIP)、砕木パルプ(GP)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)などが挙げられる。脱墨パルプとしては、上質紙、中質紙、下級紙、新聞紙、チラシ、雑誌などの選別古紙やこれらが混合している無選別古紙を原料とする脱墨パルプなどを使用することができる。
【0044】
填料
本発明においては、原紙の填料として公知の填料を任意に使用でき、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱産による中和で製造される非晶質シリカ等の無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂などの有機填料を単用又は併用できる。この中でも、中性抄紙やアルカリ抄紙における代表的な填料である重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムが不透明度向上のためにも好ましく使用される。紙中填料率は特に制限されないが、1〜40固形分重量%が好ましく、10〜35固形分重量%がさらに好ましい。
【0045】
本発明においては、公知の製紙用添加剤を使用することができる。例えば、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、各種紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。乾燥紙力向上剤としてはポリアクリルアミド、カチオン化澱粉が挙げられ、湿潤紙力向上剤としてはポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬品は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としてはアルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。更に、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0046】
本発明における原紙の抄紙方法は特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマ、丸網抄紙機、長網抄紙機と丸網抄紙機を併用した板紙抄紙機、ヤンキードライヤーマシン等を用いて行うことができる。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよいが、中性またはアルカリ性が好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0047】
クリア塗工
本発明の塗工紙は、上述した原紙の片面または両面にクリア(透明)塗工層を有していてもよい。原紙上にクリア塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。本発明においては、クリア塗工層にバインダーとして、本発明の澱粉由来の高分子化合物を含有してもよい。クリア塗工の量は、片面あたり固形分で0.1〜4.0g/m
2が好ましく、0.5〜2.5g/m
2がより好ましい。
【0048】
本発明においてクリア塗工とは、例えば、サイズプレス、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、澱粉、酸化澱粉などの各種澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を主成分とする塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
【0049】
プレカレンダー処理
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくことが、塗工後の塗工層を均一化する上で好ましい。この場合、処理線圧は、好ましくは30〜100kN/m、より好ましくは50〜100kN/mである。また、プレカレンダー処理する際の原紙の水分率も重要であり、水分率は3〜5%が好ましい。
【0050】
表面処理
本発明においては、以上のように製造した紙を必要に応じて表面処理する。平滑化処理には、通常のスーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ、熱キャレンダ、シューキャレンダ等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。好ましい態様において、本発明の塗工紙は、スーパーカレンダーや高温ソフトニップカレンダー等のカレンダーで表面処理を行うことができる。表面処理により、塗工紙の平滑度や光沢性を向上させることができる。本発明においては、ソフトニップカレンダ処理が好ましい。ソフトニップカレンダ処理をすることにより、白色度、不透明度共に向上する。ソフトニップカレンダ処理において、金属ロールの表面温度が20℃〜60℃の線圧は、30〜60kN/m、より好ましくは、40〜60kN/mである。また、金属ロールの表面温度が40℃〜250℃の高温ソフトニップカレンダ処理であれば、線圧は60〜400kN/m、好ましくは、150〜300kN/m、より好ましくは100〜350kN/mである。温度を上げると、塗工紙の表面の光沢、平滑度が向上する。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されない。本明細書において、%、部などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0052】
[評価方法]
(1)表面強度
RI−I型印刷機(明製作所製)を用い、印刷用インキ(東洋インキ製ハイユニティM)を使用して印刷後、ゴムロールについて印刷跡を転写紙に手動で転写してピッキングの程度を目視で相対評価した。評価基準は以下の通りである。
◎=全く発生しない、○=ほとんど発生しない、△=発生する、×=発生が著しい
(2)白紙光沢度
JIS P−8142に従い、角度75度で測定した。
(3)印刷光沢度
ローランド平判印刷機(4色)にて、印刷用インキ(東洋インキ製ハイユニティM)を用いて墨→藍→紅→黄の順に印刷速度8000枚/分で印刷し、得られた印刷物の3色(藍、紅、黄)ベタ印刷部を、JIS P−8142に従い、角度75度で測定した。
(4)PPS粗さ
JIS P−8151に従い、測定した。クランプ圧は1MPa、ハードバッキングとした。
(5)バッキングロール汚れ
72時間連続操業した後、ロールの汚れ状態を目視評価した。
◎=バッキングロール汚れが発生しない、○=バッキングロール汚れが若干発生する、△=バッキングロール汚れがかなり発生する、×=バッキングロール汚れが著しく発生する
(6)耐ブリスター性
RI−I型印刷機(明製作所)を用い、オフセット印刷用インキ(東洋インキ製造(株)製:TKマークV617)を使用し、インキ量0.8cc一定で両面印刷して一昼夜調湿度した後、この試験片を温度140℃に設定した恒温オイルバスに浸し、ブリスターの発生状況を目視判定した。
◎=全く発生しない、○=ほとんど発生しない、△=発生する、×=発生が著しい
【0053】
実施例1
古紙パルプ60部とNBKP30部、LBKP10部とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が13%になるように添加し、内添紙力剤としてカチオン化澱粉を3部添加して紙料を調整した。
【0054】
この紙料を用いて、抄紙速度1500m/分にてロールアンドブレードフォーマ形式のギャップフォーマ型抄紙機で抄紙し、プレスパートに2基のタンデムシュープレス(プレス線圧1000kN/m、2基目の紙のワイヤー面側にトランスファーベルトが接触)を用いて湿紙を搾水して乾燥し、45.6g/m
2の中質塗工原紙を得た。
【0055】
次に、顔料として、重質炭酸カルシウムを用い、接着剤として、白色デキストリン(Stabilys A030、Roquette社:蒸煮後、すなわち蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度が374mPa・s)とカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを配合して固形分濃度68.5%の塗工液を調製した。重質炭酸カルシウム100部に対して、白色デキストリンを6.0部、共重合ラテックスを4.0部配合した。
【0056】
この塗工液を用いて、塗工量が原紙片面当たり7.0g/m
2となるようにジェットファウンテン方式のブレードコータで両面に上記塗工液を連続して塗工し、乾燥した。
【0057】
引き続き、仕上げ工程にてショア硬度がD94°の弾性ロールを有する2ロール・6スタックのソフトカレンダーを使用し、各金属ロール表面温度130℃、各ニップ線圧を250kN/mとして塗工紙の表面処理を行った。
【0058】
抄紙、塗工、カレンダー処理を連続して行ったため、塗工速度、カレンダー速度も1500m/分であった。
【0059】
実施例2
白色デキストリンの配合量を8重量部とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0060】
実施例3
澱粉系高分子として、白色デキストリン(Stabilys A040、Roquette社:蒸煮後、すなわち蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度が97mPa・s)を7重量部使用した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0061】
実施例4
白色デキストリンの配合量を10重量部とした以外は、実施例3と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0062】
実施例5
顔料塗工液に用いる接着剤として、実施例1に記載のカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを併用した以外は、実施例3と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0063】
実施例6
顔料塗工液に用いる接着剤として、白色デキストリン(Stabilys A040、Roquette社:蒸煮後、すなわち蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度が97mPa・s)を6重量部、カルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスを2重量部とした以外は、実施例5と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0064】
比較例1
澱粉系高分子として、ヒドロキシエチル化澱粉(Ethylex 2005、Tate&Lyle社:蒸煮後、すなわち蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度が1486mPa・s)を6重量部使用した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0065】
比較例2
ヒドロキシエチル化澱粉の配合量を9重量部とした以外は、比較例1と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0066】
比較例3
顔料塗工液に用いる接着剤としてカルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合ラテックスのみを10重量部使用した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を製造した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に結果を示す。表1から明らかなように、蒸煮16分後の粘度が700mPa・sの澱粉系高分子を接着剤として使用すると、比較例と比較して白紙光沢、印刷光沢が格段に向上し、表面平滑性(PPS粗さ)および表面強度も向上した。