(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のプロトン伝導性ポリマー又は前記繊維材料の少なくとも一方が、Mn及びCeからなる群から選択される元素を含む安定化添加剤を更に含む、請求項1に記載の電解質膜。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示で教示する強化電解質膜は、高温での苛酷な環境における燃料電池の動作中に熱的及び化学的に堅固でありかつ優れた寸法安定性を呈するように設計されたプロトン交換膜(PEM)の燃料電池電極の製造のような燃料電池用途に使用することができる。
【0032】
本開示で教示する強化電解質膜は、燃料電池MEAなどの膜電極接合体(MEA)に使用することができる。MEAは、水素燃料電池のようなプロトン交換膜燃料電池の中心要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤との触媒された混合物によって使用可能な電気を生み出す電気化学電池である。典型的なMEAは、固体電解質として機能するポリマー電解質膜(PEM)(イオン導電膜(ICM)としても既知である)を含む。PEMの一方の面はアノード電極層と接触し、反対側の面はカソード電極層と接触する。典型的な使用では、プロトンが、水素酸化を介してアノードにおいて形成され、PEMをわたってカソードに輸送されて酸素と反応し、電極を接続する外部回路内に電流を流す。各電極層は、典型的には白金金属を含む電気化学触媒を含む。PEMは、反応ガス間に、耐久性のある無孔の非導電性機械的障壁を形成するが、それでもやはりH
+イオンを容易に通過させる。ガス拡散層(GDL)が、アノード及びカソード電極材料の間を行き来するガス輸送を促進して、電流を伝導する。GDLは、多孔質及び導電性の両方であり、典型的には炭素繊維から構成される。またGDLは、流体輸送層(FTL)又はディフューザ/集電体(DCC)と呼ばれる場合もある。いくつかの実施形態では、アノード及びカソード電極層をGDLに適用し、結果として生じる触媒コーティングされたGDLでPEMを挟んで、5層MEAを形成する。5層MEAの5層は、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、及びカソードGDLの順である。他の実施形態では、アノード及びカソード電極層をPEMのいずれの側にも適用し、結果として生じる触媒コーティングされた膜(CCM)を2つのGDL間に挟んで、5層MEAを形成する。
【0033】
幾つかの実施形態では、MEAは本開示で教示する強化電解質膜を1つ以上備える。幾つかの実施形態では、PEMは本開示で教示する強化電解質膜を1つ以上備える。幾つかの実施形態では、MEAは本開示で教示する強化電解質膜を1つ以上備えるPEMを備える。
【0034】
図1は、外部電気回路12とともに使用されるMEA 10の図であり、図中、MEA 10は本明細書の電解質膜14を含む。MEA 10はPEM燃料電池のような電気化学的電池での使用に好適であり、アノード部分16、カソード部分18、触媒層20及び22、並びにガス拡散層24及び26を更に含む。アノード部分16及びカソード部分18は概して、MEA 10のアノード側及びカソード側を指す。
【0035】
電解質膜14は触媒層20と22との間に置かれ、電解質膜14及び触媒層20、22は触媒でコーティングされた膜であってもよい。電解質膜14は熱に対して安定しており、自動車用途又はリフォーメート(reformate)系での高温(例えば最高150℃)及び低い相対湿度でも良好なプロトン伝導度を呈しながら動作することができる。本開示では、電解質膜14は補強効果のあるナノファイバーマット(以下に説明)を有する。
【0036】
触媒層20は電解質膜14とガス拡散層24との間に置かれ、ガス拡散層24はMEA 10のアノード部分16に位置づけられる。同様に、触媒層22は電解質膜14とガス拡散層26との間に置かれ、ガス拡散層26はMEA 10のカソード部分18に位置づけられる。ガス拡散層24及び26はそれぞれ、例えば炭素繊維構成体(例えば織布及び不織布炭素繊維構成体)のような好適な任意の導電性多孔質基材であってよい。疎水性を増すため又は付与するために、ガス拡散層24及び26を処理してもよい。
【0037】
MEA 10の動作中、水素燃料H
2は、アノード部分16においてガス拡散層24に導入される。MEA 10は、代替的にメタノール、エタノール、ギ酸、及び改質ガスなど、他の燃料源を使用してもよい。燃料はガス拡散層24を貫通し、触媒層20の上を通る。触媒層20の表面にて、燃料は水素イオン(H
+)と電子(e
−)とに分けられる。電解質膜14は、水素イオンだけを通過させて、触媒層22及びガス拡散層26に到達させる。電子は電解質膜14を貫通できない。そのため、電子は電流形態で外部電気回路12を通って流れる。この流れは、電動モータなどの電気負荷に給電すること、又は充電式電池などのエネルギー蓄積装置に向けることもできる。酸素(O
2)は、カソード部分18でガス拡散層26に導入される。酸素はガス拡散層26を貫通し、触媒層22の上を通る。触媒層22にて、酸素、水素イオン、及び電子が組み合わされて、水及び熱を生成する。
【0038】
図2Aは電解質膜14の図であり、ここでは中央層区域40と、中央層区域40のそれぞれの側の外層区域30及び50とを有する切れ目なく連続した電解質膜として示されている。
図2Aでは、30、40、50は別々の層区域として示されているが、これらの区域の材料は典型的には全て同じタイプであってよく、強化されていない比較実施例を提供するために3つの区域全てにわたって連続していてもよい。
【0039】
図2Bは、ナノファイバーマット100で強化された本開示の電解質膜14の図である。
図3には、ナノファイバーマット100によってほとんど占められた中央層区域40が示されており、中央層区域40は外層区域30及び50の厚さと同様の厚さを有するものとしても示されている。本明細書のその他の実施形態では、多様な層区域30、40、50は異なる厚さを有してもよい。例えば、
図3は中央層区域45のほとんどを占めるナノファイバーマット110で強化された切れ目なく連続した電解質膜として図示されている電解質膜14の別の実施形態の略図であり、中央層区域45は外層区域35と55との間にあり、中央層区域45は、
図2Bの30、40、50の相対的割合と比較して、外層区域35及び55いずれがよりも比例的に大きい厚さを有することができる。例えば、本開示の幾つかの実施形態では、ナノファイバーマット100の平均厚さは、電解質膜14の平均厚さの約20%〜約60%の範囲であり得る。ナノファイバーマットからのプロトン伝導性材料の分離に関係する問題を避けるために、外層区域のそれぞれの厚さは、電解質膜14の平均厚さの少なくとも10%であることが望ましい場合がある。しかしながら、図示した実施形態は、個々の層区域の厚さ又はその割合の選択を制限することを意図せず、その選択は、所望の全体的な電解質膜の厚さ、材料の特性、及び製造の簡便性を含む因子の組み合わせに依存する場合がある。
【0040】
本開示の幾つかの実施形態では、電解質膜14の層区域30、40、50はプロトン伝導性ポリマーを含有し、層区域40に位置づけられたナノファイバーマット100を有するだけでなくプロトン伝導性ポリマーで実質的に満たされている。プロトン伝導性材料は各層区域で同じであってもよく、任意の2つの層区域で同じあり第3の層区域で異なっていてもよく、層区域のそれぞれで異なっていてもよい。
【0041】
本開示の別の実施形態では、
図2Dは、境界面で互いに接触しており、ナノファイバーマット100が両層区域に埋め込まれ層区域32及び38の境界面にわたって延在している、層区域32及び38を有する電解質膜14の略図を示す。
図2Cは、
図2Dの2つの層区域を、より明瞭に示すためにナノファイバーマットなしで図示している。層区域32及び38はプロトン伝導性ポリマーを含有し、層区域40に位置づけられたナノファイバーマット100を有するだけでなくプロトン伝導性ポリマーで実質的に満たされている。プロトン伝導性材料は各層区域で同じであってもよく、任意の2つの層区域で同じあり第3の層区域で異なっていてもよく、層区域のそれぞれで異なっていてもよい。
【0042】
本明細書のプロトン伝導性ポリマーは、結合されたアニオン官能基の対イオンがプロトンであるときに、得られる酸性ポリマーが約5未満のpKaを有するように、熱に対して安定であり且つ結合されたアニオン性官能基を含む酸性ポリマー材料を含んでもよい。電解質膜14に使用するのに好適な酸性ポリマーの例としては、酸性基で終端するペンダント基を有するフルオロポリマーが挙げられる。そのフルオロポリマーの好適なペンダント基としては、式−R
1−SO
3Yを有するスルホン酸基が挙げられ、式中、R
1は分枝状又は非分枝状のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロエーテル基であってよく、1〜15個の炭素原子及び0〜4個の酸素原子を含有し、式中、Yは水素イオン、カチオン、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、好適なペンダント基の例には、−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2SO
3Y、−O(CF
2)
4SO
3Y、及びその組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態では、好適なペンダント基の例には、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/325,062号に記載の−CF
2SO
2N(Z)SO
2(CF
2)
3SO
3Yが挙げられ、式中、Zは好適なカウンターカチオンである。
【0043】
フルオロポリマーは、式−SO
3Yを有するスルホニル末端基のような1つ以上の酸性末端基も含み得る。酸性ポリマーの骨格鎖は、部分的に又は完全にフッ素化されてもよい。骨格鎖における好適なフッ素濃度としては、骨格鎖の全重量を基準とした約40重量%以上が挙げられる。本明細書の一実施態様では、フルオロポリマーの骨格鎖は、過フッ素化されている。
【0044】
幾つかの実施形態では完全にフッ素化されたアイオノマーを用いてPEM燃料電池を調製することができ、このアイオノマーは、膜の実質的な部分、好ましくは膜の少なくとも50体積%(幾つかの実施形態では50体積%〜95体積%の範囲であり、幾つかの実施形態では70体積%〜90体積%の範囲である)をなし、残りの体積はナノファイバーマットが占めるものと理解される。
【0045】
一実施形態では、本明細書のプロトン伝導性材料は、炭化水素アイオノマーを含み得る。本明細書で使用するとき、「炭化水素アイオノマー」は、水素及び炭素を含有する主鎖を有するアイオノマーを集合的に指し、この主鎖は酸素、窒素、硫黄、及び/又はリンのようなヘテロ原子の小さいモル分率もまた含有し得る。これらの炭化水素アイオノマーは、主に芳香族及び脂肪族のアイオノマーを含む。好適な芳香族アイオノマーの例としては、スルホン化ポリイミド、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホフェノキシベンジル基で置換されたポリ(β−フェニレン)、及びポリベンズイミダゾールアイオノマーが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂肪族アイオノマーの非限定的な例はビニルポリマー系のアイオノマーであり、例えば架橋されたポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)及びそれらのコポリマーである。PEM燃料電池用の膜は、異なるアイオノマー材料の配合物を使って調製されてもよく、膜が異なるアイオノマーを含有するときは、炭化水素膜は、上で定義される炭化水素アイオノマーを含む膜であるとみなされ、炭化水素アイオノマーは、少なくとも膜の体積の実質的な部分、好ましくは膜の少なくとも約50体積%を成すものと理解される。
【0046】
本開示による強化電解質膜又はMEAの作製に有用なプロトン伝導性材料は、典型的には1200以下の当量(EW)を有し、より典型的には1100以下、より典型的には1050以下、より典型的には1000以下の当量を有し、幾つかの実施形態では950以下、900以下、850以下、800以下、又は更には700以下の当量を有する。
【0047】
強化電解質膜の形成においては、プロトン伝導性材料を任意の好適な方法でナノファイバーマット上にコーティングすることができる。ポリマーは懸濁液からキャスティングしてもよい。任意の好適なキャスティング法を使用してよく、それにはバーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、ブラシコーティング等が挙げられる。あるいは、膜は、純粋なポリマーから押出成形のような溶融プロセスにより形成してもよい。形成後、膜は典型的には120℃以上、より典型的には130℃以上、最も典型的には150℃以上の温度でアニールされてよい。強化電解質膜は、典型的には50マイクロメートル未満の厚さを有し、より典型的には40マイクロメートル未満、より典型的には30マイクロメートル未満、より典型的には25マイクロメートル未満、最も典型的には約20マイクロメートル未満の厚さを有する。
【0048】
本開示の一実施形態では、ポリマー電解質は、その記述が参照により本明細書に組み込まれる米国公開特許出願第2009/0208809号に記載のポリオキソメタレート又はヘテロポリ酸添加剤を1つ以上含有する又は含む場合がある。
【0049】
本開示の一実施形態では、安定化添加剤をプロトン伝導性ポリマーに加えてもよい。本開示の一実施形態では、マンガン又はセリウムの塩又は酸化物、より典型的には塩、より典型的にはマンガンが、膜の形成前に酸形態のポリマー電解質に添加される。典型的には、この塩をポリマー電解質に十分に混合するか、又はポリマー電解質に溶解して、実質的に均一な分布を達成する。この塩は、塩化物、臭化物、硝酸塩、炭酸塩などを含む任意の適切なアニオンを含んでよい。遷移金属塩と酸形態ポリマーとの間でカチオン交換が起こるときには、遊離したプロトンと元の塩アニオンとの結合により形成される酸を取り除くことが望ましい場合がある。したがって、揮発性又は可溶性酸を生成するアニオン、例えばクロリド又はニトレートを使用することが好ましい場合がある。マンガンカチオンは、Mn
2+、Mn
3+及びMn
4+などの任意の適切な酸化状態であってよいが、最も典型的にはMn
2+である。典型的には、塩の添加量はポリマー電解質中に存在する酸官能基のモル量の0.001〜0.5電荷当量、より典型的には0.005〜0.2電荷当量、より典型的には0.01〜0.15電荷当量、より典型的には0.02〜0.1電荷当量である。好適な添加剤の追加的な例は米国特許第7,572,534号(Mn塩を含む)、米国公開特許出願第2010/0062314号(Mn酸化物を含む)、同第2007/0099053号(Ce塩を含む)、同第2007/0099052号(Ce酸化物を含む)、同第2009/0208809号(ヘテロポリ酸を含む)、及び同第2009/0169959号(Mn塩とCe酸化物との組み合わせを含む)に記載されており、それらの記述は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本開示の一実施形態では、ナノファイバーマット100は、ナノファイバーの不織布ウェブであり得る。これらのナノファイバーは、80〜1000ナノメートル、より典型的には約80〜700ナノメートルの範囲の平均直径を有し得る。ナノファイバーマットとして有用な厚さは、5〜25マイクロメートル、より典型的には約5〜15マイクロメートルである。ナノファイバーマットが約30%〜90%、典型的には約50%〜80%、又はより典型的には約60%〜70%の範囲の多孔性値を有することは有用である(「多孔性」は、実施例の項に説明されているように半経験的に決定される)。
【0051】
幾つかの実施形態では、ナノファイバーマットは、4.5g/m
2〜6.5g/m
2、又は更には3.2g/m
2〜6.5g/m
2の範囲の平均坪量(実施例の項を参照)を有することができる。2g/m
2〜10g/m
2の範囲の平均坪量もまた有用であるとみなされる。
【0052】
本開示のナノファイバーは、電界紡糸に好適なポリマーを含む、ポリマー又はポリマー配合物を含む繊維材料で作ることができる。電界紡糸に好適なポリマーの例としては、Arkema Inc.(ペンシルベニア州Philadelphia)から入手可能なKYNAR 761及びKYNAR 2801(PVDFコポリマー)のような二フッ化ポリビニリデン(PVDF)材料を含むフッ素化ポリマーを挙げることができる。ナノファイバーを製造するための電界紡糸に好適なフッ素化されていないポリマーとしては、市販されているポリエーテルスルホン(PES)材料が挙げられ、その例としては、BASF(ニュージャージー州Florham Park)から入手可能なULTRASON E6020P及びSolvay(テキサス州Houston)から入手可能なVERADEL PESを挙げることができる。本開示のマットを製造するための電界紡糸に好適なその他のフッ素化されていない材料としては、炭化水素芳香族ポリマーが挙げられ、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンエーテルスルホン(PPES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾールオキシド(PBIO)、並びにこれらの配合物及び組み合わせを挙げることができる。
【0053】
本開示のナノファイバーの幾つかの実施形態では、繊維材料は180℃を超えるガラス転移温度(「T
g」)及び180℃を超える融点(「T
m」)からなる群から適切に選択されるバルク特性を有する。
【0054】
本開示のナノファイバーの幾つかの実施形態では、プロトン伝導性の材料を電界紡糸の前に繊維材料に加えてある程度のプロトン伝導度を有し得る繊維をもたらしてもよく、一方、プロトン伝導性材料が加えられない場合は、実質的に非伝導性の繊維となり得る。典型的には、プロトン伝導性ポリマー添加剤を有する繊維の伝導度は、プロトン伝導性材料単独のプロトン伝導度より低い。プロトン伝導性材料を繊維材料に含めることが望ましい場合がある別の理由は、ナノファイバーマットに適用されるプロトン伝導性ポリマーコーティングへの粘着力が高められた繊維を製造することである。電界紡糸の前に繊維材料に加えることができるプロトン伝導性材料のタイプとしては、本開示に記載されている高フッ素化プロトン伝導性ポリマー、過フッ素化プロトン伝導性ポリマー、及び炭化水素プロトン伝導性ポリマーを挙げることができる。電界紡糸の前に繊維材料に加えることが可能なプロトン伝導性材料の量は、約1重量%〜約50重量%の範囲、約1重量%〜約15重量%の範囲、又はより典型的には約1重量%〜約5重量%の範囲であってよい。
【0055】
ナノファイバー及びナノファイバーマットを作製するためにポリマー及びポリマー配合物を電界紡糸するための方法は当該技術分野で公知であり、例えばPolym.Int.,Vol.56,pp.1361〜1366(2007)又はJournal of Applied Polymer Science,Vol.115,756〜776(2010)に記載されている方法及び装置のタイプを用いる。
図5は、電界紡糸に好適なポリマー又はポリマー配合物が充填された注射器510と、注射器510の針515と整列した標的550と、注射器針515と標的550との間の、電圧を約1〜20kVの範囲(より典型的には約8.5kV)に維持するための電圧供給源560と、を有する電界紡糸装置500を図示している。
図5aに示される標的550は、回転円筒であるが、代替手段として標的は静止した又は移動する実質的に平らな表面であってもよい。
【0056】
電界紡糸プロセスで製造されるナノファイバーマットの厚さは、カレンダーローラー又は他の押圧装置でマットを押圧することによって調整しなくてはならない場合があり、使用する材料によってはこの押圧動作は接触点において繊維の幾らかの融合をもたらし得る温度で実行することができる。例えば、ナノファイバー材料がPVDF、PES又はそれらの配合物であると、カレンダー工法の温度として140℃を用いることができ、接触点での繊維の幾らかの融合をもたらし得る。典型的には、温度は繊維材料の融点未満に維持される。
【0057】
本開示のナノファイバーは直径と比較して長く、>6,000のアスペクト比を有する場合があるし得る。したがって、接触点は繊維内部か繊維同士のいずれかであり得、ともに融合されれば電解質膜の強化をある程度提供することが可能である。
【0058】
強化電解質膜14は、ナノファイバーマット100を本明細書のプロトン伝導性ポリマーでコーティングすることによって調製することができる。コーティングは、キャスティング、ノッチバーコーティング、又はラミネーションを含む当該技術分野で既知の標準的手法によって行ってよい。
【0059】
電解質膜14の高い生産量のために、コーティングを連続ロール式に行うことができるが、そこでナノファイバーマットは、巻解され、プロトン伝導性ポリマーでコーティングされ、乾燥され、巻き取りロールに巻かれる。
【0060】
幾つかの実施形態では、プラズマ処理又はコロナ処理を含み得る周知の手法を用いて、コーティングの前にナノファイバーマット100の表面を活性化することが望ましい場合がある。
【0061】
繊維上に追加的な表面電荷を提供するために、ナノファイバーマット100の表面を例えばスルホン化のような化学処理によって活性化してもよく、これはナノファイバーにプロトン伝導性ポリマーを付着させるために有益である場合がある。
【0062】
幾つかの実施形態では、電解質膜の耐久性を高めるために、プロトン伝導性ポリマーでコーティングする前にナノファイバーマット100にサイジング、結合剤、又は高分子処理を適用してもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、ナノファイバーマット100は2つの主表面を有し、各主表面のコーティングに同じプロトン伝導性ポリマーを用いて各主表面をプロトン伝導性ポリマーでコーティングしてもよい。幾つかの実施形態では、異なるプロトン伝導性ポリマーをナノファイバーマット100のそれぞれの主表面にコーティングしてもよく、
図2Dを参照して表されるように、幾つかの実施形態では、層区域32は第1のプロトン伝導性ポリマーを有する場合があり、層区域38は第1のプロトン伝導性ポリマーと異なる第2のプロトン伝導性ポリマーを有する場合がある。
【0064】
幾つかの実施形態では、電解質膜は、約10マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲の乾燥後の全体の厚さを有する。
【0065】
本開示は、2008年12月23日付で出願された米国特許出願連番第12/342,370号、2007年10月23日付で発行された米国特許第7,285,349号、2008年3月25日付で発行された米国特許第7,348,088号、2004年4月27日付で発行された米国特許第6,727,386号、2005年3月8日付で発行された米国特許第6,863,838号、及び2000年7月18日付で発行された米国特許第6,090,895号の開示を参照により組み込む。
【0066】
本開示によるポリマーは、2007年2月20日付で発行された米国特許第7,179,847号、2009年4月7日付で発行された米国特許第7,514,481号、2007年9月4日付で発行された米国特許第7,265,162号、2006年7月11日付で発行された米国特許第7,074,841号、2008年10月14日付で発行された米国特許第7,435,498号、2007年8月21日付で発行された米国特許第7,259,208号、2008年8月12日付で発行された米国特許第7,411,022号、2006年7月13日付で発行された米国特許第7,060,756号、2006年9月26日付けで発行された米国特許第7,112,614号、2006年7月13日付で発行された米国特許第7,060,738号、2007年2月6日付で発行された米国特許第7,173,067号、及び2008年2月5日付で発行された米国特許第7,326,737号に開示されている方法が含まれ得る任意の好適な方法によって架橋していてもよく、これらの開示は参考として本明細書に組み込まれる。
【0067】
本開示の実用においては、任意の好適な触媒を用いて電極層及びMEAを作製することができる。典型的には、炭素担持触媒粒子が使用される。典型的な炭素担持触媒粒子は、50〜90重量%の炭素及び10〜50重量%の触媒金属であり、触媒金属は、典型的には、カソード用にPt、並びにアノード用にPt及びRuを2:1の重量比で含む。典型的には、触媒は、触媒インクの形態でPEM又はGDLに適用される。あるいは、触媒インクを転写基材に適用し、乾燥させ、その後にPEMに又はGDLに、デカールとして適用してもよい。触媒インクは、典型的には、PEMを構成するポリマー電解質材料と同じであっても同じでなくてもよいポリマー電解質材料を含む。触媒インクは、典型的には、ポリマー電解質の分散液中に触媒粒子の分散液を含む。本開示のいくつかの実施形態では、典型的にはマンガン又はセリウムの塩又は酸化物(より典型的には酸化物、より典型的にはセリウム)である安定化添加剤が、膜の形成前にポリマー電解質に添加される。このインクは、典型的には5〜30%の固体(すなわちポリマー及び触媒)、より典型的には10〜20%の固体を含有する。電解質分散液は、典型的には水性分散液であり、これは、アルコール、並びにグリセリン及びエチレングリコールのような多価アルコールを更に含有してもよい。水、アルコール、及び多価アルコールの含有量は、インクのレオロジー特性を変えるように調整してもよい。インクは、典型的には、0〜50%のアルコール及び0〜20%の多価アルコールを含有する。加えて、インクは0〜2%の好適な分散剤を含有してもよい。インクは、典型的には、熱と共に撹拌し、その後、コーティング可能な稠度に希釈して製造される。
【0068】
他の実施形態では、触媒は、全て参照により本明細書に組み込まれる米国公開特許出願第2007/082814号、米国特許第7,622,217号、及び米国公開特許出願第2010/047668号に記載されているタイプのナノ構造薄膜(NSTF)触媒であってもよい。これらのNSTF触媒は、上記の炭素担持触媒の代替物を提供する。
【0069】
MEA又はCCMを製造するために、任意の好適な手段によって触媒をPEMに適用してもよく、これには手動方法及び機械方法の両方が含まれ、例えばハンドブラッシング、ノッチバーコーティング、流体ベアリングダイコーティング、巻線ロッドコーティング、流体ベアリングコーティング、スロット供給ナイフコーティング、3ロールコーティング、又はデカール転写が含まれる。コーティングは、1回の付着作業又は複数回の付着作業で行うことができる。
【0070】
MEAを製造するために、GDLを任意の好適な手段により、CCMのいずれかの側に適用してもよい。任意の好適なGDLを本開示の実施に使用してもよい。典型的には、GDLは、炭素繊維を含むシート材料から構成される。典型的には、GDLは、織布及び不織布炭素繊維構造から選択される炭素繊維構造である。本開示の実施に有用であり得る炭素繊維構造としては、Toray(商標)Carbon Paper、SpectraCarb(商標)Carbon Paper、AFN(商標)不織カーボンクロス、Zoltek(商標)Carbon Cloth等を挙げることができる。GDLには、様々な材料をコーティング又は含浸させてもよく、炭素粒子コーティング、親水性化処理、及び疎水化処理、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、触媒はGDLに適用されて触媒コーティングされた支持体(CCB)を形成してよく、その後、CCBはPEMと組み合わされてMEAを形成してよい。このような実施形態では、触媒はGDLに任意の好適な手段によって適用されてよく、これには手動方法及び機械方法の両方が含まれ、例えばハンドブラッシング、ノッチバーコーティング、流体ベアリングダイコーティング、巻線ロッドコーティング、流体ベアリングコーティング、スロット供給ナイフコーティング、3ロールコーティング、又はデカール転写が含まれる。コーティングは、1回の付着作業又は複数回の付着作業で行うことができる。
【0072】
使用する際、本発明によるMEAは、典型的には、分配プレートとして既知の、またバイポーラプレート(BPP)又はモノポーラプレートとしても既知の2枚の剛性プレートの間に挟む。GDLと同様に、分配プレートは導電性でなければならない。分配プレートは、典型的には、炭素複合材料、金属、又はめっきした金属材料から作製される。分配プレートは、反応物質又は製品流体を、典型的には、MEAに面する表面に刻まれたか、フライス処理されたか、成型されたか、又は型打ちされた1つ以上の流体伝達チャネルを介してMEA電極表面に、又はMEA電極表面から分配する。これらのチャネルは、流動フィールド(flow field)と呼ばれることもある。分配プレートは、積み重ね体中の2つの連続的なMEAに、またそこから流体を分配することができ、1つの面は燃料を第1のMEAのアノードに導き、もう1つの面は酸化剤を次のMEAのカソードに導き(及び生成水を取り除き)、そのため「バイポーラプレート」と称される。あるいは、バイポーラプレートは燃料又は酸化剤をMEAに導く1つの面を有してもよく、もう1つの面は冷却剤を伝導するチャネルを含む。あるいは、分配プレートは1つの側面上にのみチャネルを有して、その側面上においてのみ流体をMEAに又はそれから分配することができ、これは「モノポーラプレート」と称されることがある。当該技術分野において使用されるとき、用語バイポーラプレートは、典型的にはモノポーラプレートも包含する。典型的な燃料電池用積み重ね体は、分配プレートと交互に積み重ねられた多くのMEAを含む。
【0073】
実施形態
項目1.ナノファイバーマットで強化された第1のプロトン伝導性ポリマーを備える電解質膜であって、
ナノファイバーマットは、ポリマー及びポリマー配合物から選択される繊維材料を含むナノファイバーから作製され、
繊維材料は、繊維材料プロトン伝導度を有し、
第1のプロトン伝導性ポリマーは、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度を有し、
繊維材料プロトン伝導度は、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度より低い、電解質膜。
【0074】
項目2.繊維材料が、高フッ化ポリマー、過フッ化ポリマー、炭化水素ポリマー、及びこれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される、項目1に記載の電解質膜。
【0075】
項目3.繊維材料が、PVDF、PES、PEI、PBI、PPO、PEEK、PPES、PEK、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される電界紡糸に好適なポリマーを含む、項目1に記載の電解質膜。
【0076】
項目4.ナノファイバーマットが、PES、及びPVDFと配合されたPESから選択される電界紡糸に好適な繊維材料を含むナノファイバーから作られ、繊維材料は実質的に非伝導性である、項目1に記載の電解質膜。
【0077】
項目5.ナノファイバーが、電界紡糸ナノファイバーである、項目1〜4のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0078】
項目6.ナノファイバーマットが、ナノファイバーの不織布ウェブを含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0079】
項目7.ナノファイバーが、プロトン伝導性ポリマーを更に含む、項目1に記載の電解質膜。
【0080】
項目8.第1のプロトン伝導性ポリマーが、高フッ化アイオノマー、過フッ化アイオノマー、炭化水素アイオノマー、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される、項目1〜7のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0081】
項目9.繊維材料が架橋している、項目1〜8のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0082】
項目10.第1のプロトン伝導性ポリマーが架橋している、項目1〜9のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0083】
項目11.ナノファイバーマットが、約5マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲の厚さを有する、項目1〜10のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0084】
項目12.電解質膜が、約10マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲の厚さを有する、項目1〜11のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0085】
項目13.ナノファイバーが、1000nm以下の平均直径を有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0086】
項目14.ナノファイバーが、約80nm〜700nmの範囲の平均繊維直径を有する、項目1〜13のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0087】
項目15.ナノファイバーマットが、約30%〜約90%の範囲の多孔性を有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0088】
項目16.第1のプロトン伝導性ポリマーが、安定化添加剤を更に含む、項目1〜15のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0089】
項目17.繊維材料が、安定化添加剤を更に含む、項目1〜16のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0090】
項目18.安定化添加剤が、Mn及びCeからなる群から選択される元素を含む、項目16又は項目17のいずれか一項に記載の電解質膜。
【0091】
項目19.項目1〜18のいずれか一項に記載の電解質膜を備える、膜電極接合体。
【0092】
項目20.多層電解質膜であって、
項目1〜19のいずれか一項に記載の電解質膜を備え、電解質膜の主表面に付着された少なくとも1層の第2のプロトン伝導性ポリマーを更に備え、第2のプロトン伝導性ポリマーが、高フッ化アイオノマー、過フッ化アイオノマー、炭化水素アイオノマー、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択され、第2のプロトン伝導性ポリマーが、第1のプロトン伝導性ポリマーと異なる、多層電解質膜。
【0093】
項目21.ナノファイバーマットの平均厚さが、電解質膜の平均厚さの約20%〜60%の範囲である、項目20に記載の多層電解質膜。
【0094】
項目22.項目20又は項目21のいずれか一項に記載の多層電解質膜を備える、膜電極接合体。
【0095】
項目23.電解質膜を作製する方法であって、
(a)ナノファイバーを含むナノファイバーマットを提供する工程において、繊維材料が繊維材料プロトン伝導度を有し、ナノファイバーが、PVDF、PES、PEI、PBI、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、工程と、
(b)ナノファイバーマットを第1のプロトン伝導性ポリマーで少なくとも部分的に満たす工程において、第1のプロトン伝導性ポリマーが第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度を有し、繊維材料プロトン伝導度が第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度より低い、工程と、を含む、方法。
【0096】
項目24.第2のプロトン伝導性ポリマーの層をナノファイバーマットに加える工程を更に含む、項目23に記載の方法。
【0097】
項目25.第1のプロトン伝導性ポリマーが、工程(b)の前に溶媒中に溶解され、その方法が(c)第1のプロトン伝導性ポリマーから溶媒を乾燥する工程(c)を更に含む、項目23に記載の方法。
【0098】
項目26.少なくとも部分的に満たす工程(b)が、ナノファイバーマットを第1のプロトン伝導性ポリマーの溶解物と接触させる工程を含む、項目23に記載の方法。
【0099】
項目27.少なくとも部分的に満たす工程(b)が、ナノファイバーマットをプロトン伝導性ポリマーの層と積層する工程を含む、項目23に記載の方法。
【0100】
項目28.繊維材料を工程(a)の後に架橋する工程を更に含む、項目23に記載の方法。
【0101】
項目29.第1のプロトン伝導性ポリマーを架橋する工程を更に含む、項目23に記載の方法。
【0102】
項目30.その第2のプロトン伝導性ポリマーを架橋する工程を更に含む、項目24に記載の方法。
【0103】
項目31.架橋する工程が、熱による架橋、光化学的架橋、及び電子ビーム照射による架橋からなる群から選択される、項目28〜30のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
項目32.工程(b)の前に、サイジング、結合剤、又は高分子処理のいずれか1つをナノファイバーマットに適用する工程を更に含む、項目23に記載の方法。
【0105】
項目33.第1のプロトン伝導性ポリマーが、−OCF
2CF
2CF
2CF
2SO
3Yの構造を有するペンダント基を含み、式中、Yは水素イオン又はカチオンである、項目1に記載の電解質膜。
【0106】
項目34.第2のプロトン伝導性ポリマーが、
−OCF
2CF
2CF
2CF
2SO
3Yの構造を有するペンダント基を含み、式中、Yは水素イオン又はカチオンである、項目20に記載の多層電解質膜。
【実施例】
【0107】
試験方法
ナノファイバーの直径はJeol JSM−6701F走査電子顕微鏡を用いて電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)によって測定した(3〜5kV、倍率5,000x〜10,000x)。表1の平均繊維直径値は、100本の繊維の試料に基づいて算出した。
【0108】
10cm×10cmのナノファイバーマットのシートを切り取り、天秤で重量を測定して、ナノファイバーマットの坪量を測定した。表1の平均坪量値は5〜6枚のシートの試料に基づいて算出した。
【0109】
ナノファイバーマットの有孔率は、測定誤差を減らすために最低限の押圧によって折り畳まれた試料を用いて、既知の領域の部分を切り取り、その部分の厚さ及び重量を測定し、材料固有の密度を用いて、以下の等式により半経験的に予測した。
【0110】
有孔率(%)=(1−(重量/(固有の密度×面積×厚さ)))×100
ナノファイバーマット及び強化電解質膜の厚さは、Testing Machines Inc.(ニューヨーク州Ronkonkoma)のTMI 49−16−01 Precision Micrometerを用いて、50kPa(7.3psi)の死重圧力及び0.63インチ(1.6cm)の基準アンビル直径で測定した。典型的には、5〜10枚のシートの平均値を算出した。
【0111】
温水での線状膨張は、膜の試料から1cm×7cmの片を3枚切り取り、脱イオン水中で30分間煮沸した後に、冷却中にそれらの片を水中に保持しながら片及び水をともに室温まで冷却することによって決定した。次いで、片を水中に留めたまま「膨張時の長さ」すなわち膨張した各膜片の長さを定規又は他の測定装置で測定した。膨張率(%)は以下の式で算出した。
【0112】
膨張率(%)=100×(膨張時の長さ−乾燥時の長さ)/(乾燥時の長さ)
材料
KYNAR 761−Arkema Inc.(ペンシルベニア州Philadelphia)から入手可能な二フッ化ポリビニリデン(PVDF)。
【0113】
KYNAR 2801−Arkema Inc.(ペンシルベニア州Philadelphia)から入手可能な二フッ化ポリビニリデン(PVDF)コポリマー。
【0114】
PES−BASF(ニュージャージー州Florham Park)から入手可能なポリエーテルスルホン、ULTRASON E6020P
調製実施例1:PVDFナノファイバーマット
電界防糸法によってPVDFナノファイバーを調製した。固形分約20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド中PVDFコポリマー(KYNAR 2801)の溶液を、25℃で、注射器のノズルとコレクターとの間に8.5kVの電位差を保ちながら注射器でコレクターロールに送達した。乾燥したナノファイバーをナノファイバーウェブとしてコレクター上に蓄積した。ナノファイバーウェブを140℃でカレンダー加工して、ウェブを平坦にした。ナノファイバー及びナノファイバーマットのいくつかの特性を表1(PE−1)に示す。
【0115】
調製実施例2:PVDFナノファイバーマット
電界防糸法によってPVDFナノファイバーを調製した。固形分約20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド中PVDF(KYNAR 761)の溶液を、25℃で、注射器のノズルとコレクターとの間に8.5kVの電位差を保ちながら注射器でコレクターロールに送達した。乾燥したナノファイバーをナノファイバーウェブとしてコレクター上に蓄積した。ナノファイバーウェブを140℃でカレンダー加工して、ウェブを平坦にした。そのようにして製造された電界紡糸PVDFナノファイバーマットのSEM画像を
図4Aに示し、それらのナノファイバー及びナノファイバーマットのいくつかの特性を表1(PE−2)に示す。
【0116】
調製実施例3:PESナノファイバーマット
電界紡糸法によってPESナノファイバーを調製した。固形分約20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド/アセトン混合物中PESの溶液を、25℃で、注射器のノズルとコレクターとの間に8.5kVの電位差を保ちながら注射器でコレクターロールに送達した。乾燥したナノファイバーをナノファイバーウェブとしてコレクター上に蓄積した。ナノファイバーウェブを140℃でカレンダー加工して、ウェブを平坦にした。そのようにして製造された電界紡糸PVDFナノファイバーマットのSEM画像を
図4Cに示し、それらのナノファイバー及びナノファイバーマットのいくつかの特性を表1(PE−3)に示す。
【0117】
調製実施例4:PES/PVDF配合物ナノファイバーマット
電界紡糸法によりPES/PVDF(9:1)ナノファイバーを調製した。固形分約20重量%のN,N−ジメチルアセトアミド/アセトン混合物中PES/PVDFの溶液を、25℃で、注射器のノズルとコレクターとの間に8.5kVの電位差を保ちながら注射器でコレクターロールに送達した。乾燥したナノファイバーをナノファイバーウェブとしてコレクター上に蓄積した。ナノファイバーウェブを140℃でカレンダー加工して、ウェブを平坦にした。そのようにして製造された電界紡糸PES/PVDF(9:1)ナノファイバーマットのSEM画像を
図4Bに示し、それらのナノファイバー及びナノファイバーマットのいくつかの特性を表1(PE−4)に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1において、直径値はカレンダー処理したナノファイバーマットのナノファイバーのものであり、坪量、有孔率、及び厚さの値はカレンダー処理したナノファイバーマットのものである。
【0120】
実施例1:PVDFナノファイバーマットで強化された電解質膜。
【0121】
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマーの試料を重量で固形分約20%にてn−プロパノール/水混合液(重量で50/50)に溶解した。乾燥時の厚さが8マイクロメートルになるように、それぞれ50℃、100℃、120℃、及び145℃に設定され、ウェブ下方方向に順に配列された4つの乾燥ゾーンを有するHirano Entec Ltd.(日本、奈良県)製のパイロット規模のコーティング機を用いて、コーティングダイ及び約2メートル/分のライン速度を用いてこのアイオノマー溶液を一定の流量でポリエステル(PET)ライナーにコーティングした。ポリエステルライナーにアイオノマー溶液をコーティングした直後に、またそれが第1の乾燥ゾーンに入る前に、PE−1のPVDFナノファイバーマットの小さいシート(20cm×20cm)を手作業でそのコーティングした溶液の上に載せ、次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー溶液の別の層を同じ流量及び乾燥条件でPVDFナノファイバーマットにコーティングした。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(Ex−1)に記載する。
【0122】
実施例2:安定化添加剤を有する、PVDFナノファイバーマットで強化された電解質膜。
【0123】
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー(マンガンカチオンで中和された酸基を約3.5%有する)の試料を固形分約15重量%にてn−プロパノール/水混合液(重量で50/50)に溶解した。50℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された3つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、乾燥時の厚さが8マイクロメートルになるように、毎分約6フィート(1.8メートル)のライン速度で約0.008インチ(200マイクロメートル)のギャップを有するノッチバーを用いてアイオノマー溶液をポリイミドライナー(DuPont(デラウェア州Wilmington)より入手可能なKAPTON)にコーティングした。ポリイミドライナーにアイオノマー溶液をコーティングした直後かつそれが第1の乾燥ゾーンに入る前に、PE−2の幅25cmのPVDFナノファイバーマット(ウェブ)のウェブ先端縁を、コーティングされた溶液の上に手作業で導入した。ポリイミドウェブと同じ速度でPVDFナノファイバーウェブを連続的に巻解き、ポリイミドフィルムに新しいコーティング液が適用される際にそれら2つのウェブが連続的にともに接合された。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。約0.006インチ(150マイクロメートル)のノッチバーギャップ及び同じ乾燥条件を用いて、825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー溶液の別の層をPVDFナノファイバーマットにコーティングした。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(Ex−2)に記載する。
【0124】
実施例3:安定化添加剤を有する、PESナノファイバーマットで強化された電解質膜。
【0125】
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー(マンガンカチオンで中和された酸基を約3.5%有する)の試料を固形分約15重量%にてn−プロパノール/水混合液(重量で50/50)に溶解した。50℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された3つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、乾燥時の厚さが8マイクロメートルになるように、毎分約6フィート(1.8メートル)のライン速度で約0.008インチ(200マイクロメートル)のギャップを有するノッチバーを用いてアイオノマー溶液をポリエステル(PET)ライナーにコーティングした。ポリエステルライナーにアイオノマー溶液をコーティングした直後かつそれが第1の乾燥ゾーンに入る前に、PE−3の幅25cmのPESナノファイバーマット(ウェブ)のウェブ先端縁を、コーティングされた溶液の上に手作業で導入した。ポリエステルウェブと同じ速度でPESナノファイバーウェブを連続的に巻解き、ポリエステルフィルムに新しいコーティング液が適用される際にそれら2つのウェブが連続的にともに接合された。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー溶液の別の層を同じノッチバーギャップ及び乾燥条件でPESナノファイバーマットにコーティングした。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(Ex−3)に記載する。
【0126】
実施例4:PES/PVDF配合物ナノファイバーマットで強化された電解質膜。
【0127】
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホンアイオノマーの試料を固形分約25重量%にてメタノール/水混合液(重量で80/20)に溶解した。50℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された3つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、乾燥時の厚さが8マイクロメートルになるように、毎分約6フィート(1.8メートル)のライン速度で約0.004インチ(100マイクロメートル)のギャップを有するノッチバーを用いてアイオノマー溶液をポリエステル(PET)ライナーにコーティングした。ポリエステルライナーにアイオノマー溶液をコーティングした直後かつそれが第1の乾燥ゾーンに入る前に、PE−4の幅25cmのPES/PVDF(9:1)ナノファイバーマット(ウェブ)のウェブ先端縁を、コーティングされた溶液の上に手作業で導入した。PETウェブと同じ速度でPES/PVDF(9:1)ナノファイバーウェブを連続的に巻解き、ポリエステルフィルムに新しいコーティング液が適用される際にそれら2つのウェブが連続的にともに接合された。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(Ex−4)に記載する。
【0128】
実施例5〜8:
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマーの試料を固形分約41重量%にてメタノール/水混合液(重量で80/20)に溶解した。50℃、65℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された4つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、乾燥時の厚さが約9マイクロメートルになるように、毎分約2メートルのライン速度で、厚さを制御するために固定されたギャップを用いて、アイオノマー溶液をポリイミド(DuPontより入手可能なKAPTON)ライナーにコーティングした。ポリエステルライナーにアイオノマー溶液をコーティングした直後かつそれが第1の乾燥ゾーンに入る前に、PE−5の幅10cmのPES/PVDF(7:3)ナノファイバーマット(ウェブ)のウェブ先端縁を、コーティングされた溶液の上に手作業で導入した。PETウェブと同じ速度でPES/PVDF(7:3)ナノファイバーウェブを連続的に巻解き、乾燥時に約5マイクロメートルになるように第2のスロットダイステーションを用いて、コーティングされたポリエステルフィルムに固形分30%を有する同じアイオノマーの新しいコーティング液が適用される際にそれら2つのウェブが連続的にともに接合された。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。この膜を160℃の第2の熱処理に約3分間曝した。同じプロセスをPE−6、PE−7、PE−8にも用いて、Ex−6、Ex−7、Ex−8の膜を作製した。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(EX−5〜8)に記載する。
【0129】
実施例9:
米国仮特許出願第61/325,062号に記載されているタイプの620EWの過フッ化スルホンイミド酸(PFIA)アイオノマーの試料を固形分約17重量%にてメタノール/水混合液(重量で80/20)に溶解した。50℃、65℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された4つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、PE−5(PES/PVDF(7:3))のファイバーマットをメタノールで予め濡らしてからポリイミド(DuPontより商標KAPTONで入手可能)ライナーに適用した。次いで、スロットダイを用いてPFIAアイオノマー溶液をファイバーマットの上にコーティングした。ライン速度は毎分約2メートルとし、複合膜の乾燥時の厚さが約15マイクロメートルになるようにした。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。この膜を160℃の第2の熱処理に約3分間曝した。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(Ex−9)に記載する。
【0130】
比較実施例(CE)−ナノファイバーマットを用いない電解質膜。
【0131】
米国公開特許出願第2006/0014887号に記載されているタイプの825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー(マンガンカチオンで中和された酸基を約3.5%有する)の試料を固形分約20重量%にてn−プロパノール/水(重量で50/50)混合液に溶解した。50℃、100℃、120℃、145℃にそれぞれ設定されたウェブ下方方向に順に配列された3つの乾燥ゾーンを有するパイロット規模のコーティング機を用い、乾燥時の厚さが8マイクロメートルになるように、毎分約6フィート(1.8メートル)のライン速度で約0.004インチ(100マイクロメートル)のギャップを有するノッチバーを用いてアイオノマー溶液をポリエステルライナーにコーティングした。次いで、試料を乾燥炉に通し、収集した。825EWの過フッ化スルホン酸アイオノマー溶液の別の層を同じノッチバーギャップ及び乾燥条件でPESナノファイバーマットにコーティングした。そのようにして生産された電解質膜の特性を表2(CE)に記載する。
【0132】
【表2】
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[44]に記載する。
[1]
ナノファイバーマットで強化された第1のプロトン伝導性ポリマーを備える電解質膜であって、
前記ナノファイバーマットは、ポリマー及びポリマー配合物から選択される繊維材料を含むナノファイバーから作製され、
前記繊維材料は、繊維材料プロトン伝導度を有し、
前記第1のプロトン伝導性ポリマーは、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度を有し、
前記繊維材料プロトン伝導度は、第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度より低い、電解質膜。
[2]
前記繊維材料が、高フッ化ポリマー、過フッ化ポリマー、炭化水素ポリマー、及びこれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される、項目1に記載の電解質膜。
[3]
前記繊維材料が、PVDF、PES、PEI、PBI、PPO、PEEK、PPES、PEK、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される電界紡糸に好適なポリマーを含む、項目1に記載の電解質膜。
[4]
前記ナノファイバーマットが、PES、及びPVDFと配合されたPESから選択される電界紡糸に好適な繊維材料を含むナノファイバーから作られ、前記繊維材料は実質的に非伝導性である、項目1に記載の電解質膜。
[5]
前記繊維材料が、180℃を超えるTg及び180℃を超えるTmからなる群から選択されるバルク特性を有する、項目1に記載の電解質膜。
[6]
前記ナノファイバーが、電界紡糸ナノファイバーである、項目1〜5のいずれか一項に記載の電解質膜。
[7]
前記ナノファイバーマットが、前記ナノファイバーの不織布ウェブを含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の電解質膜。
[8]
前記ナノファイバーが、プロトン伝導性ポリマーを更に含む、項目1に記載の電解質膜。
[9]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが、高フッ化アイオノマー、過フッ化アイオノマー、炭化水素アイオノマー、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択される、項目1〜8のいずれか一項に記載の電解質膜。
[10]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが、炭化水素アイオノマーを含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の電解質膜。
[11]
前記繊維材料が架橋している、項目1〜10のいずれか一項に記載の電解質膜。
[12]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが架橋している、項目1〜11のいずれか一項に記載の電解質膜。
[13]
前記ナノファイバーマットが、約5マイクロメートル〜約15マイクロメートルの範囲の厚さを有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の電解質膜。
[14]
前記ナノファイバーマットが、3.2g/m2〜6.5g/m2の範囲の平均坪量を有する、項目1〜13のいずれか一項に記載の電解質膜。
[15]
前記ナノファイバーマットが、4.5g/m2〜6.5g/m2の範囲の平均坪量を有する、項目1〜14のいずれか一項に記載の電解質膜。
[16]
前記電解質膜が、約10マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲の厚さを有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の電解質膜。
[17]
前記電解質膜が、約10マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲の厚さを有する、項目1〜12のいずれか一項に記載の電解質膜。
[18]
前記ナノファイバーが、1000nm以下の平均直径を有する、項目1〜17のいずれか一項に記載の電解質膜。
[19]
前記ナノファイバーが、約80nm〜700nmの範囲の平均繊維直径を有する、項目1〜18のいずれか一項に記載の電解質膜。
[20]
前記ナノファイバーマットが、約30%〜約90%の範囲の多孔性を有する、項目1〜19のいずれか一項に記載の電解質膜。
[21]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが、安定化添加剤を更に含む、項目1〜20のいずれか一項に記載の電解質膜。
[22]
前記繊維材料が、安定化添加剤を更に含む、項目1〜21のいずれか一項に記載の電解質膜。
[23]
前記安定化添加剤が、Mn及びCeからなる群から選択される元素を含む、項目21又は項目22のいずれか一項に記載の電解質膜。
[24]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが、
−OCF2CF2CF2CF2SO3Y、
−OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3Y、及び
−CF2SO2N(Z)SO2(CF2)3SO3Y
からなる群から選択される構造を有するペンダント基を含み、式中、Yは水素イオン又はカチオンであり、Zは好適なカウンターカチオンである、項目1〜23のいずれか一項に記載の電解質膜。
[25]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが900以下の当量を有する、項目1〜24のいずれか一項に記載の電解質膜。
[26]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが850以下の当量を有する、項目1〜25のいずれか一項に記載の電解質膜。
[27]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが800以下の当量を有する、項目1〜26のいずれか一項に記載の電解質膜。
[28]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが700以下の当量を有する、項目1〜27のいずれか一項に記載の電解質膜。
[29]
項目1〜28のいずれか一項に記載の電解質膜を備える、膜電極接合体。
[30]
多層電解質膜であって、
項目1〜27のいずれか一項に記載の電解質膜を備え、前記電解質膜の主表面に付着された少なくとも1層の第2のプロトン伝導性ポリマーを更に備え、前記第2のプロトン伝導性ポリマーが、高フッ化アイオノマー、過フッ化アイオノマー、炭化水素アイオノマー、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択され、前記第2のプロトン伝導性ポリマーが、前記第1のプロトン伝導性ポリマーと異なる、多層電解質膜。
[31]
前記ナノファイバーマットの平均厚さが、前記電解質膜の平均厚さの約20%〜60%の範囲である、項目30に記載の多層電解質膜。
[32]
前記第2のプロトン伝導性ポリマーが、
−OCF2CF2CF2CF2SO3Y、
−OCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3Y、及び
−CF2SO2N(Z)SO2(CF2)3SO3Y
からなる群から選択される構造を有するペンダント基を含み、式中、Yは水素イオン又はカチオンであり、Zは好適なカウンターカチオンである、項目30〜31のいずれか一項に記載の多層電解質膜。
[33]
項目30〜32のいずれか一項に記載の多層電解質膜を備える、膜電極接合体。
[34]
電解質膜を作製する方法であって、
(a)ナノファイバーを含むナノファイバーマットを提供する工程において、前記繊維材料が繊維材料プロトン伝導度を有し、前記ナノファイバーが、PVDF、PES、PEI、PBI、及びそれらの配合物並びに組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む、工程と、
(b)前記ナノファイバーマットを第1のプロトン伝導性ポリマーで少なくとも部分的に満たす工程において、前記第1のプロトン伝導性ポリマーが第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度を有し、前記繊維材料プロトン伝導度が前記第1のプロトン伝導性ポリマー伝導度より低い、工程と、
を含む、方法。
[35]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーが、工程(b)の前に溶媒中に溶解される、項目34に記載の方法。
[36]
前記方法が、前記第1のプロトン伝導性ポリマーから前記溶媒を乾燥する工程(c)を更に含む、項目34に記載の方法。
[37]
前記少なくとも部分的に満たす工程(b)が、前記ナノファイバーマットを前記第1のプロトン伝導性ポリマーの溶解物と接触させる工程を含む、項目34に記載の方法。
[38]
前記少なくとも部分的に満たす工程(b)が、前記ナノファイバーマットを前記プロトン伝導性ポリマーの層と積層する工程を含む、項目34に記載の方法。
[39]
前記繊維材料を工程(a)の後に架橋する工程を更に含む、項目34に記載の方法。
[40]
前記第1のプロトン伝導性ポリマーを架橋する工程を更に含む、項目34に記載の方法。
[41]
第2のプロトン伝導性ポリマーの層を前記ナノファイバーマットに加える工程を更に含み、前記第2のプロトン伝導性ポリマーが、高フッ化アイオノマー、過フッ化アイオノマー、炭化水素アイオノマー、及びそれらの配合物及び組み合わせからなる群から選択され、前記第2のプロトン伝導性ポリマーが、前記第1のプロトン伝導性ポリマーと異なる、項目34〜40のいずれか一項に記載の方法。
[42]
前記第2のプロトン伝導性ポリマーを架橋する工程を更に含む、項目41に記載の方法。
[43]
架橋する工程が、熱による架橋、光化学的架橋、及び電子ビーム照射による架橋からなる群から選択される、項目39〜42のいずれか一項に記載の方法。
[44]
工程(b)の前に、サイジング、結合剤、又は高分子処理のいずれか1つを前記ナノファイバーマットに適用する工程を更に含む、項目34に記載の方法。