特許第5798197号(P5798197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャメロン ケイ テッビの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798197
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】白血病/リンパ腫の検出および誘導方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20151001BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20151001BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G01N33/53 N
   G01N33/53 Y
   G01N33/543 597
   G01N33/574 A
   G01N33/15 Z
   C12Q1/02
【請求項の数】16
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-544443(P2013-544443)
(86)(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公表番号】特表2014-502720(P2014-502720A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】US2010061299
(87)【国際公開番号】WO2012087278
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】513148303
【氏名又は名称】キャメロン ケイ テッビ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン ケイ テッビ
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−515170(JP,A)
【文献】 特開2010−133880(JP,A)
【文献】 特開平01−124397(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/016513(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0042443(US,A1)
【文献】 大橋 一輝,坂巻 壽,「急性リンパ性白血病」,別冊医学のあゆみ(血液疾患 -state of arts Ver.3),医歯薬出版株式会社,2005年 9月15日,p. 639-642
【文献】 三輪 啓志,「I. 診断, 治療のための基礎事項: 3. 白血病の細胞マーカー」,日本内科学会雑誌,2003年 6月10日,Vol. 92, No. 6,p. 950-955
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
G01N 33/543
G01N 33/574
G01N 33/15
C12Q 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料に対する白血病の指標検出方法であって、前記生体試料は血漿または血液細胞であり、前記検出方法は、
前記血液細胞を白血病について検査する工程、或いは前記血漿を白血病について検査する工程を含み、前記血液細胞を白血病について検査する工程は更に、
前記血液細胞を白血病誘導因子で培養して、白血病を標示する細胞表面マーカの発現を誘導する工程と、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養、またはそれらの組み合わせであり、
前記培養された血液細胞の表面マーカを分析することにより、前記細胞表面マーカについて前記血液細胞を検査する工程とを含み、
前記血漿を白血病について検査する工程は更に
レートで白血病誘導因子を培養する工程と、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス種からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせであり、
前記血漿を前記白血病誘導因子で培養する工程と、
前記血漿に免疫学的測定を行う工程と、
前記血漿においてIgG免疫反応を検出する工程を含み、IgGに対する反応性は白血病の指標である
検出方法。
【請求項2】
フローサイトメトリ用前記細胞表面マーカは、CD34、CD10、CD19、CD45、CD117およびそれらの組み合わせである、請求項1の検出方法。
【請求項3】
フローサイトメトリ用前記細胞表面マーカは、CD10/CD19、CD34/CD19またはCD34/CD117の組み合わせである、請求項2の検出方法。
【請求項4】
前記細胞表面マーカの組み合わせの一つ以上が分析される、請求項3の検出方法。
【請求項5】
細胞表面マーカおよびフローサイトメトリ分析のための前記血液細胞の検出は、前記血液細胞が前記白血病誘導因子で培養されてから少なくとも24時間後に行われる、請求項1の検出方法。
【請求項6】
細胞表面マーカおよびフローサイトメトリ分析のための前記血液細胞の染色は、前記血液細胞が前記白血病誘導因子で培養されてから少なくとも72時間後に行われる、請求項1の検出方法。
【請求項7】
白血病の誘導を含むガンの発生および白血病誘導因子のために、放射線を伴い、或いは伴うことなく、真菌物質単独で、或いはEBVなどのウィル性因子と組み合わせた真菌物質を更に含む、請求項1の検出方法。
【請求項8】
前記アスペルギルス属はアスペルギルス・フラブスである、請求項1の検出方法。
【請求項9】
前記IgG免疫反応は、アルカリホスファターゼ結合抗ヒトIgGを使用して検出される、請求項1の検出方法。
【請求項10】
前記アルカリホスファターゼは、検出のために染色体信号を生成するべく、発色基質と反応する、請求項9の検出方法。
【請求項11】
白血病に対して得られるワクチンのスクリーニング方法であって、
生体試料の白血病の可能性を判定する工程と、前記判定工程は更に、
一定分量の前記生体試料を回収する工程と、
前記一定分量中から白血病指標を検出する工程とを含み、前記検出工程は更に、血液細胞を白血病について検査する工程、或いは血漿を白血病について検査する工程を含み、
前記血液細胞を白血病について検査する工程は、
白血病を表わす細胞表面マーカの発現を誘導するために、前記血液細胞を白血病誘導因子で培養する工程と、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせであり、
染色された前記血液細胞の蛍光分析を行うことにより、前記血液細胞に細胞表面マーカ検査を行う工程とを含み、前記細胞表面マーカのレベルは白血病を示しており、
前記血漿を白血病について検査する工程は、
白血病患者または白血病の可能性がある患者から血漿を得る工程と、
白血病検出因子をプレートで培養する工程と、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせであり、
前記血漿を前記白血病誘導因子で培養する工程と、
前記血漿に免疫反応技術を行う工程と、
前記血液試料からIgG免疫反応を検出する工程とを含み、前記IgGに対する反応性は白血病を示し、
前記生体試料に効果の可能性のあるワクチンを投与する工程と、
前記生体試料において白血病マーカの発現を誘導する工程と、前記誘導工程は更に、
白血病を示す細胞表面マーカの発現を誘導するために、前記血液細胞を白血病誘導因子で培養する工程、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせであり、或いは
前記白血病誘導因子と反応した白血病患者からの血漿を得る工程と、
白血病誘導因子をプレートで培養する工程と、前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせであり、
前記白血病誘導因子を遮断する工程と、
前記遮断された白血病誘導因子で前記血漿を培養する工程と、
蛍光分析を使用して、表面マーカの発現を判定することにより、前記試料における白血病マーカの発現を検出し、或いは前記血液試料のIgG免疫反応を検出する工程とを含み、前記誘導表面マーカの発現或いはIgGに対する反応性は白血病を示す
方法。
【請求項12】
前記アスペルギルス属、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養またはそれらの組み合わせは、放射線照射を伴い、或いは放射線照射を伴わない、請求項1のワクチンのスクリーニング方法。
【請求項13】
患者から得られた単核細胞に白血病誘導因子を投与する方法であって、
前記白血病誘導因子は、アスペルギルス属からの上清、EBV感染CCL87上清、精製EBV培養、またはそれらの組み合わせであり、
前記単核細胞は白血病に罹患した患者、白血病の治療を受けている患者、またはかつて白血病の治療を受けた患者から回収され、
前記白血病誘導因子の投与は、前記単核細胞に芽細胞を形成させる
方法。
【請求項14】
真菌物質を用いて、罹患し易い個体の血液単核細胞に白血病を再誘導する工程を更に含む、請求項1の方法。
【請求項15】
前記真菌物質はアスペルギルス属からの上清である、請求項1の方法。
【請求項16】
前記芽細胞は白血病細胞に類似する表面表現型を有する、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血病やびまん性リンパ腫などの疾患に使用する医療診断方法に関し、また、寛解患者からの単核白血球細胞における白血病のインビトロ再誘導に関する。特に本発明は、単核白血球の白血病性或いは白血病様細胞表面マーカの誘導方法、および白血病/びまん性リンパ腫の疑いがある個体を特定および診断する血漿検査を含む。
【背景技術】
【0002】
白血病は造血臓器の癌の異種群であり、異常な白血球の生成、それらの解放循環、および臓器の浸潤によって特徴付けられる。アメリカ国立癌センターの統計によれば、2010年には4万3050件もの新しい症例が存在しており、2万1840件が白血病に関連する死亡である。白血病はあらゆる年齢で罹患し得るものであり、そのうちの90パーセントの症例が成人で診断されている。これまで、大部分の症例で、白血病の原因は分かっていない(非特許文献1〜3)。示唆される原因の中には、自然および人工の電離放射線(非特許文献4〜7)、エプスタイン・バーウィルスなどのウィルス(非特許文献8)、ヒトT細胞白血病ウィルス(HTVL−1)(非特許文献9〜10)、感染症(非特許文献11〜13)、ベンゼンおよびアルキル化学療法薬などの化学物質(非特許文献14〜16)、家族性疾病素因(非特許文献17〜18)、薬物(非特許文献19)、遺伝性因子、染色体異常および代謝異常(非特許文献20〜26)、免疫異常(非特許文献27)、および環境排出物(非特許文献28〜31)がある。上記の要因のいずれもが、大部分の症例に一貫して適用され得るものではなく、また上記の要因に曝露された全ての個体に予想通りに白血病を誘導することは、明確に立証されていない。
【0003】
白血病は、急性白血病および慢性白血病を含む幾つかのグループに分けることができる。急性白血病では、骨髄で形成される未発達の白血細胞(白血球)の急激な増殖と、正常な血液細胞の生成減少がある。急性白血病には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)と、急性骨髄性白血病(AML)が含まれる。慢性白血病には、慢性リンパ球および骨髄性白血病(CLLおよびCML)が含まれる。急性白血病では、悪性細胞の急速な進行および蓄積に起因して、即時の治療が必要とされる。
【0004】
急性白血病は、最もよく起こる小児ガンの形態である。急性リンパ芽球性白血病(ALL)およびびまん性リンパ腫は、小児ガンの大部分を占める。ALLは、小児人口で最も頻繁に起こる白血病であり(非特許文献32)、小児ガン全体の四分の一になると共に、小児白血病全体の約75パーセントを占めており、2歳から5歳までに最も多く発生している(非特許文献32〜33)。今日まで多くの試みが為されてきたにもかかわらず、散発的な症例を除き、小児白血病の原因は未だ不明である。上記に概要を述べたように、ウィルス性感染、化学物質曝露、薬物、電離放射線、染色体異常/遺伝子要素、免疫異常、環境排出物などの様々な病原が提案されているが、いずれもが確実に立証されておらず、或いは大部分の症例に一貫して適用されるものではない。国際ガン研究機関は、電力線と関連する白血病罹患のレトロスペクティブな研究を行っており、極度に低周波数の高レベル磁場が、幾つかの小児白血病の罹患の危険性を2倍に増加させることを限定的に証明したが、この研究結果には後に異議が唱えられた(非特許文献29〜31)。
【0005】
白血病の診断は通常、全血球計算、光学顕微鏡検査法による骨髄検査、細胞表面表現型のフローサイトメトリ判定、および他の研究に基づく。リンパ腫では診断のために、リンパ節の生体組織検査が、病理学およびフローサイトメトリ、並びに他の検査を使用して行われる。通常、白血病およびリンパ腫では、細胞遺伝学的評価も行われ、予後値が得られる。急性白血病およびびまん性リンパ腫では、脊髄穿刺法は中枢神経系を含まないことが求められる。
【0006】
殆どの形態の白血病は、中枢神経系への放射線治療(放射線療法)を行いつつ、或いは行うことなく、プレドニゾン、Lアスパラギナーゼ、ビンクリスチン、ダウノルビシン、代謝拮抗物質などの複数の薬剤を用いる化学療法で治療される(非特許文献32)。幾つかの症例では、寛解の間、或いは再発後に、骨髄移植が必要とされることもある。一般的な治療の目標は、寛解と呼ばれる正常な骨髄の生成を獲得すると共に、白血病細胞による臓器の系統的な浸潤を排除することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ilakura H, Coutre SE: AcuteLymphoblastic Leukemia in adults. In: Greer JP, et al., editors. Leukemia inadults. Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins. 2009. p. 1821
【非特許文献2】Faderel S, et al., Acute lymphoblastic leukemia. In: HongWK, et al., editors. Holland-Frei cancer medicine. Shelton, Connecticut:People's Medical Publishing House, 2010. p. 1591
【非特許文献3】Mac Arthur AC, et al., Risk of Childhood LeukemiaAssociated with Vaccination, Infection, and Medication Use in Childhood. Am J Epidemiol. 2008; 167(5); 598-606
【非特許文献4】Maloney W. Leukemia in survivors of atomicbombing. N Eng J Med. 1955; 253:88
【非特許文献5】Preston D, Kusumi S, Tomonaga M, et al. Cancer incidence in atomic bombsurvivors. Part III. Leukemia, lymphoma and myeloma, 1950-1987. Radiat Res. 1994; 137:S68-S97
【非特許文献6】Little MP, et al., The statistical power ofepidemiological studies analyzing the relationship between exposure to ionizingradiation and cancer, with special reference to childhood leukemia and naturalbackground radiation. Radiat Res. 2010;174(3):387-402
【非特許文献7】Davies A, Modan B, Djaldetti M, et al. Epidemiological observations onleukemia in Israel.Arch Intern Med. 1961; 108(1): 86-90
【非特許文献8】Tokunaga M, et al., Epstein-Barr virus in adultT-cell leukemia/lymphoma. Am J Pathol. 1993; 143(5):1263-1268
【非特許文献9】Phillips AA, et al., A critical analysis ofprognostic factors in North American patients with human T-cell lymphotropic virus type-1-associated adult T-cellleukemia/lymphoma: a multicenter clinicopathologicexperience and new prognostic score. Cancer. 2010; 116(14): 3438-3446
【非特許文献10】Jeang KT. HTVL-1 and adult T-cell leukemia: insightsinto viral transformation of cells 30 years after virus discovery. J Formos Med Assoc. 2010; 109(10): 688-93
【非特許文献11】Greaves MF, Alexander FE. An infectious etiologyfor common acute lymphobastic leukemia in childhood?Leukemia. 1993; 7:349-360
【非特許文献12】Smith MA, et al., Investigation of leukemia cellsfrom children with common acute lymphoblastic leukemia for genomic sequences ofthe primate polymaviruses, JC virus, BK virus andsimian virus 40. Med Pediatr Oncol.1999; 33: 441-443
【非特許文献13】Smith MA, et al., Evidence that childhood acutelymphoblastic leukemia is associated with an infectious agent linked to hyniene conditions. Cancer Causes Control. 1998; 9:285-298)
【非特許文献14】Wen WQ, et al., Paternal military service and riskfor childhood leukemia in offspring. Am J Epidemiol.2000; 151; 231-240
【非特許文献15】Momota H, et al., Acute lymphoblastic leukemia after temozolomide treatment for anaplasticastrocytoma in a child with a germlineTP53 mutation. Pediatr Blood Cancer. 2010; 55(3):577-9
【非特許文献16】Borgmann A, et al., Secondary malignant neoplasms after intensive treatment of relapsed acutelymphoblastic leukaemia in childhood. ALL-REZ BFMStudy Group. Eur J Cancer. 2008; 44(2): 257-68
【非特許文献17】Karakas Z, Tugcu D, Unuval A, Atay D, Akcay A, Gedik H, Kayserili H, Dogan O, Anak S, Devecioglu O. Li-Fraumeni syndrome in a Turkish family. PediatrHematol Oncol. 2010; (4):197-305
【非特許文献18】Buffer PA, et al., Environmental and genetic riskfactors for childhood leukemia: Appraising the evidence. Cancer Investigation.2005; 23(1): 60-75
【非特許文献19】Tebbi CK, et al., Dexrazoxane-associatedrisk for acute myeloid leukemia/myelodysplasticsyndrome and other secondary malignancies in pediatric Hodgkin's diseases. J Clin Oncol. 2007; 25(5): 493-500
【非特許文献20】Fong CT, Brodeur GM.Down's syndrome and leukemia: epidemiology, genetics, cytogeneticsand mechanisms of leukemogenesis. Cancer Genet Cytogenet. 1987; 28(1):55-76
【非特許文献21】Chao MM, et al., T-cell acute lymphoblasticleukemia in association with Borjeson-Forssman-Lehman syndrome due to a mutation in PHF6. Pediatr Blood Cancer. 2010; 55(4): 722-4
【非特許文献22】Kato K, et al., Late recurrence of precursorB-cell acute lymphoblastic leukemia 9 years and 7 months after allogenic hematopoietic stem cell transplantation. J Pediatr Hematol Oncol. 2010; 32(7): e290-3
【非特許文献23】Smith MT, et al., Low NAD(P)H: quinine oxidoreductase 1 activity is associated with increased riskof acute leukemia in adults. Blood. 2001; 97: 1442-1426
【非特許文献24】Hengstler JG, et al., Polymorphisms of N-acetyltransferases, glutathione S-transferases,microsomal epoxide hydrolase and sulfotransferases:influence on cancer susceptibility. Recent Results Cancer Res. 1998; 154: 47-85
【非特許文献25】Schenk TM, et al., Multilineageinvolvement of Philadelphia chromosome positive acute lymphoblastic leukeia. Leukemia. 1998; 12:666-674
【非特許文献26】Felix CA, et al., Immunoglobulin and T cellreceptor gene configuration in aute lymphoblasticleukemia of infancy. Blood. 1987; 70: 536-541
【非特許文献27】Vajdic CM, et al., Are antibody deficiency disordersassociated with a narrower range of cancers than other forms ofimmunodeficiency ? Blood. 2010; 116(8): 1228-34
【非特許文献28】Magnani C, et al., Parental occupation and otherenvironmental factors in the etiology of leukemiasand non-Hodgkin's lymphomas in childhood: a case-control study. Tumori. 1990; 76(5): 413-9
【非特許文献29】Non-Ionizing Radiation, Part 1: Static andExtremely Low-Freqency (ELF) Electric and MagneticFields (IARC Monographs on the Evaluation of the Carcinogenic Risks). Geneva:World Health Organization. pp. 332-333, 338, 2002
【非特許文献30】Kroll ME, et al., Childhood cancer and magneticfields from high-voltage lines in England and Wales: a case-control study. Br JCancer. 2010; 103(7): 1122-7
【非特許文献31】Little, MP, et al., The statistical power ofepidemiological studies analyzing the relationship between exposure to ionizingradiation and cancer, with special reference to childhooldleukemia and natural background radiation. Radiat Res2010; 174(3): 387-402
【非特許文献32】Pui CH. Acute lymphoblastic leukemia in children. Curr opin oncol.2000; 12:3-12
【非特許文献33】Miller R. Acute lymphocytic leukemia. In: CK Tebbi, editor. Major Topics in Pediatric and AdolescentOncology. Boston: GK Hall Medical Publishers; 1982. p.3-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今日、白血病の診断方法には、非常に熟練した人物と、骨髄検査、フローサイトメトリ、および細胞遺伝学を含む様々なパラメータを分析する設備を必要とする。これらの検査には、診断医および技術スタッフの技術的な専門知識に基づく固有量の不確定さがあると共に、実施にかなり多くの時間を要する。白血病の罹患前に素因を予見する確実な実験室検査は、目下の所利用できない。また、幼児および小児を含む人々をスクリーニングを行うために、系統的なスクリーニング手段は存在しない。更に、白血病やリンパ腫に罹患し易い人を予防する方法は知られていない。従って、白血病およびリンパ腫の素因を検出すると共に診断する迅速で確実な方法、および白血病を予防するワクチンおよび合成物のためのスクリーニング方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、白血病の可能性を検出するために、細胞表面マーカおよび酵素結合免疫吸着法(ELISA)を使用する。細胞を特定のたんぱく質に曝露させると、元白血病患者の末梢血単核細胞の細胞表面マーカを再生させることができ、これにより白血病の可能性を検出することができる。また本発明は、元白血病患者の血漿に存在するが「正常な」個体には存在しない抗体を特定することにより、白血病の可能性を検出するものであり、これは疾病の原因に関わりを持つものであるかもしれない。その結果、本明細書に提示する方法は、現在白血病であり、過去に白血病であり、或いは白血病を罹患する危険性がある患者を特定するために使用できる。
【0010】
白血病の可能性の細胞検出は、真菌物質、即ちエプスタイン・バーウィルス(EBV)などのウィルスを伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブスの培養上清または精製たんぱく質に、インビトロで曝露させることにより、急性リンパ芽球性白血病(ALL)が元および寛解白血病患者または治療中の患者に再度誘導され得るものである、という新しい研究結果に基づく。また、アスペルギルス・フラブスおよびEBVの組み合わせは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の長期生存者の単核白血球細胞において、フローサイトメトリにより検出されたALLの細胞表面マーカの特徴の発生を促す新しいたんぱく質を誘導する。このフローサイトメトリ技術により、「疑わしい」個体での白血病マーカの発生傾向を検出することができる。酵素結合免疫吸着法(ELISA)技術で用いられるアスペルギルス・フラブスまたはEBV培養の上精、またはそれらの組み合わせにより、「正常な」個体をALLの長期生存者から区別することができる。この研究結果は、正常な個体を元白血病患者から区別しないアフラトキシンの非区別的作用と異なる。このような研究結果は、白血病やびまん性リンパ腫の原因に関わりを持つ。本発明は、集団検診や白血病の疑いのある個体の検出に使用することが可能である。
【0011】
菌類は、地球上のあらゆるものから取り出されている。アスペルギルス属、例えばアスペルギルス・フラブス、パラシティクス、ノミウスその他が自然界に広く存在しており、また、住居や葉野菜、とうもろこし、ピーナッツ、大豆などの食品を含む様々な環境発生源から取り出されている(Roze, et al., Aspergillus volatiles regulate Aflatoxin synthesis and asexual sporulation in Aspergillus parasiticus. Applied and Environmental Micro. 2007; 73(22) : 7268-7276)。アスペルギルスおよび他の真菌は、多様なペプチドや麦角菌、アルカロイド、アフラトキシンを含む物質を生成することができる(Kosalec I, and Pepeljnjak S. Mycotoxigenicity of clinical and environmental Aspergillus fumigates and Aspergillus flavus isolates. Acta Pharm. 2005; 55(4): 365-375; Roze, LV, et al., Aspergillus volatiles regulate Aflatoxin synthesis and asexual sporulation in Aspergillus parasiticus. Applied and Environmental Micro. 2007; 73(22): 7268-7276; Latge JP. Aspergillus fumigates and aspergillosis. Clin Microbiol Rev. 1999; 12:310-350; Fischer G, and Dott, W. Relevance of airborne fungi and their secondary metabolites for envorinmental, occupational and indoor hygiene. Arch Microbiol. 2003; 179:75-82; Fischer G, et al., Species-specific profiles of mycotoxins produced in cultures and associated with conidia of airborne fungi derived from biowaste. Int J Hyg Environ Health. 2000; 203:105-116; Raper KB, and Fennell DI. The genus Aspergillus. Baltimore: Williams & Wilkins; 1965; Stack D, et al., Nonribosomal peptide synthesis in Aspergillus fumigates and other fungi. Microbiology. 2007; 153:1297-1306;
Yang CV, et al., Inhibition of ebselen on aflatoxin B1-induced hepatocarcinogenesis in Fischer 355 rats. Carcinogenesis. 2000; 21(12):2237-2243; Ito, Y, et al., Aspergillus pseudotamarii, a new aflatoxin producing species in Aspergillus section Flavi. Mycol Res. 2001; 105(2):233-239; Matsumura M, Mori T: Detection of aflatoxins in autopsied materials from a patient infected with Aspergillus flavus. Nippon Ishinkin Gakkai Zasshi. 1998; 39(3): 167-71;
Louria DB, et al., Aflatoxin-induced tumors in mice. Medical Mycology. 1974; 12(3): 371-375; Cole RJ, et al., Mycotoxins produced by Aspergillus fumigates species isolated from molded silage. J Agric Food Chem. 1977; 25:826-830)。アフラトキシンは強力で自然界に発生するマイコトキシンであり、アスペルギルス・フラブスを含む多くのアスペルギルス種によって生成される。少なくとも13の亜類型のアフラトキシンが特定されており、B1が最も毒性が強い。アフラトキシンB1およびB2の両方ともが、アスペルギルス・フラブスによって生成される。人間は、環境に広く存在するアスペルギルス属に曝露されることが頻繁にある。アフラトキシンは肝臓で代謝されることが知られている。様々なアスペルギルス株によって誘導される発がんおよび感染症はよく認識されている(Louria DB, et al., Aflatoxin-induced tumors in mice. Medical Mycology. 1974; 12(3): 371-375; Yarborough, A, e al., Immunoperoxidase detection of 8-hydroxydeoxyguanosine in Aflatoxin B1-treated rat liver and human oral mucosal cells. Cancer Research. 1996; 56:683-688)。
【0012】
エプスタイン・バーウィルス(ヒトヘルペスウィルス4型,HHV−4またはEBV)はヘルペス科の一つであり、人々が感染する最もよく見られるウィルス性物質の一つである。このウィルスの様々な株は世界中で発生している。EBVはBリンパ球に感染する。インビトロで、感染はリンパ球の形質転換を生じさせ、さらに新しいたんぱく質を発現させる。EBNA−2,EBNA−3CおよびLMP−1は形質転換に必須であり、一方、EBNA−LPやEBERsなどの他のものは、この過程に含まれない。EBNA−1たんぱく質は、ウィルスのゲノムを維持するのに必要とされる。このウィルスの特徴である急性感染がよく知られている一方、周期的な再開および再活性化を伴う慢性的な「非活性的」持続性が生じかねない。EBV核たんぱく質はゲノムの左端において、CpまたはWpいずれかのプロモータ遺伝子で始まる転写産物の代替スプライシングによって生成される。遺伝子は、ゲノム内のEBNA−LP/EBNA−2/EBNA−3A/EBNA−3B/EBNA−3C/EBNA−1である。
【0013】
EBVは発がん現象 (Tokunaga M, Imai S, Uemura T Tokudome, Osato T, and Sato E. Epstein-Barr virus in adult T-cell leukemia/lymphoma. Am J Pathol. 1993; 143(5): 1263-1268)、自己免疫疾患、感染症、また糖尿病とさえも関連している。殆どの個体は、成人するまでにこのウィルスに感染する。米国では、35歳を超えた成人において、この物質に対する先行曝露の割合は95%である。この疾病が青年および成人に起こると、感染者のわずか50%で、感染性単核球症の症状を起こす(CDCデータ2010)。
【0014】
人がアスペルギルス・フラブスおよびエプスタイン・バーウィルスに同時に曝露されるときの作用、並びに各々の物質およびそれらの組み合わせに関する遺伝子と環境の相互作用について、これまで記載されていない。
【0015】
本明細書に記載される研究によれば、ALLを罹患した患者の末梢血から得られた単核細胞は、アスペルギルス・フラブス培養物またはEBV源、或いはそれら2つの組み合わせの上清に曝露された時に、芽細胞を形成することにより反応し、芽細胞は細胞表面の表面型検査によって、白血病細胞と区別できない。この現象は目下治療中の患者や、この研究前に長年治療を受けてきた患者等、治療を終えた患者に見られる。曝露された細胞は、急性リンパ芽球性白血病の特徴である細胞表面の表現型(CD10/19,CD34/CD19,CD34/CD117)を示す。このような反応は、エプスタイン・バーウィルス(EBV)を含むICL87の培養上清を加えることにより、または精製された培養または非培養EBVウィルスを加えることにより高められる。正常な個体や鎌状赤血球(SC)病患者からの単核白血細胞を含むコントロールは、同様の反応を示さなかった。ELISA技術により、ALL患者の血漿は、アスペルギルス・フラブス培養上清と反応することが分かった。同様の結果は、「正常な」人(コントロール)、例えば正常なドナーや鎌状赤血球(SC)病患者、或いは固形腫瘍患者からの細胞が、インビトロで同一ベースで治療された時には得られなかった。白血病と「正常な」コントールが統計的に明確に区別された。EBVを伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブスを含む培養物の放射線照射により、記載される効果が高められた。アスペルギルス・フラブス培養上清をマイコクラジュス・コリムビフェラ種(SB)または市販の精製アフラトキシンB1(AT)と置換し、またEBVをトリ白血病ウィルス(cV)と置き換えることにより、寛解白血病患者からの細胞および正常な個体の細胞に、同様な特徴的な変化は得られなかった。血漿(pl)またはヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)(OM)の上清との置換は、ALL表面マーカの発生を誘導しなかった。更なる実験によれば、白血病細胞表面表現型の発生は徐々におこり、エスプタイン・バーウィルスを伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブスでの培養2時間後に始まり、培養から24時間後に完了した。正常なコントロールでは変化は見られなかった。
【0016】
高速たんぱく質液体クロマトグラフィ(FPLC)で分析すると、アスペルギルス・フラブス(X)の上清は3つのたんぱく質ピークを含む。EBVは1つのたんぱく質ピークを生じさせる。EBVを短期(4時間未満)または長期(7日)の培養に加えることにより、アスペルギルス・フラブスたんぱく質の第1ピークを高めるとともに、追加の新しいピークの発生を誘導する。また、アスペルギルス・フラブス単独、或いはEBVと組み合わせたものに放射線照射することにより、元白血病患者では、アスペルギルス・フラブス第1ピーク画分の誘導的な可能性を更に高めるように誘導するが、コントロールではしない。照射後、ピーク2および3からの画分の作用は変化しないままである。アスペルギルス・フラブスピーク、EBVピーク、およびそれらの組み合わせの比較を、図1から図3に示す。第1ピークからの画分は最も有効であるが、他の2つもまた、感受性細胞に白血病細胞マーカを誘導し、またELISA技術により検出するのに有効である。これらの物質は、元白血病患者に白血病マーカを誘導することができるが、コントロールにはしない。これらピークの検査によれば、ピークはまた、最も高く活性化する第1ピークによる白血病に罹りやすい患者の血清学的な検出に有用であることを示している。
【0017】
前述の実験は、長期寛解患者或いはそれらの疾病を治癒した患者に、アスペルギルス・フラブスまたはEBVまたはそれらの組み合わせの培養上清を曝露させた時の、急性リンパ芽球性白血病またはびまん性リンパ腫に特有の細胞表面の表現型の誘導を説明する。後者の作用は、細胞が両方の物質の組み合わせに曝露された時に、或いは物質の組み合わせが寛解患者または白血病やリンパ腫「治癒」者からの単核細胞での培養に先立ち放射線に当てられた時に高められる。これらの作用は、正常なコントロールや固形腫瘍患者では再現されなかった。これらの物質でみられる特徴的な作用は、精製アフラトキシンB、トリ白血病ウィルス、またはコントロールとして使用される他の物質では観察されなかった。また研究によれば、急性リンパ芽球性白血病およびびまん性リンパ腫患者の血漿では、アスペルギルス・フラブス、EBV、およびそれらの組み合わせに対する抗体を検出するが、固形腫瘍患者またはコントロールでは検出されない。これらの研究結果によれば、急性リンパ芽球性白血病またはびまん性リンパ腫患者ははっきりと異なる遺伝子型を有しており、白血病マーカが一定の曝露に際して再誘導させられる。ウィルス性物質を伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブスとの遺伝子と環境の相互作用は、これらの疾病に特有の表現型或いはその再発を生じさせるために計画される。研究結果は、一般的ながん、特に白血病/びまん性リンパ腫の原因に関わりを持つ。
【0018】
本明細書で見られる作用は、アスペルギルス・フラブスまたはEBVに特有であり、白血病患者、白血病を治癒した人、および白血病に罹患する可能性がある人の細胞表面の白血病マーカの発現を区別的に誘導する。他の組成物は、白血病患者または白血病であった人と、罹患する可能性のある人を区別しない。例えば、アフラトキシンは、細胞表面に白血病マーカの発現を誘導するが、全ての試料にそうであるとは限らず、一方、ヨザルウィルスのような他のウィルスは、マーカ発現を誘導しない。そのため、本明細書で用いられる試験は、細胞表面マーカの誘導をもたらすアスペルギルス・フラブスおよび/またはEBVの新規の能力に頼るものである。
【0019】
本発明をより完全に理解するために、以下の詳細な説明を、添付の図面と合わせて参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)〜(D)は画分分離株のFPLC分析図であり、(A)はアスペルギルス・フラブス培養単独の上清(X)、(B)は精製エプスタイン・バーウィルス(EBV)、(C)は培養されたアスペルギルス・フラブスとEBV上清の組み合わせ(X+EBV)から得られ、(D)は全てのグラフの重ね合わせ。
図2】(A)〜(D)はFPLC画分を示す図であり、(A)はアスペルギルス・フラブス(X)、(B)は培養された精製エプスタイン・バーウィルス(EBV)、(C)は7日間培養されたアスペルギルス・フラブスおよびエプスタイン・バーウィルスの組み合わせ(X+EBV)の培養上清であり、(D)はアスペルギルス・フラブス(X)またはエプスタイン・バーウィルス(EBV)の単独培養では存在しない新しいピークの発生を示すグラフの重ね合わせ。
図3】(A)〜(C)はFPLC画分を示し、(A)はアスペウギルス・フラブス(X)、(B)は50センチグレイ(cGY)の放射線照射後のアスペルギルス・フラブスおよびエプスタイン・バーウィルスの組み合わせ(X+EBV)の上清から得られ、(C)は両グラフの重ね合わせ。
図4】培養2日目に、白血病(ALL)細胞表面マーカCD10/CD19の一つに対して染色された細胞の相対割合の一例を示すグラフ。Xはアスペルギルス・フラブス真菌培養上清;EはEBV感染CCL−87培養上清;plはヒト血漿、eVは単独で使用されるエプスタイン・バーウィルス(2×10PFU);cVは2×10PFU/mlのトリ白血病ウィルス;ATはアフラトキシン;OMはヨザル細胞培養上清。単核白血球は急性リンパ芽球性白血病(ALL)の長期生存者のグループから得られ、「正常な」コントロールと比較された。コントロールは所定部分交換輸血(廃棄血液)が行われた鎌状赤血球症患者グループからの単核細胞であった。細胞表面表現型(CD10/19,CD34/19,CD34/CD117)は、フローサイトメータ(BD FACS Canto I、Becton, Dickinson,& Co.,、ニュージャージー州フランクリン・レイク)を用いて、4日間毎日検査された。全ての細胞表面マーカの結果は同様であることから、CD10/19の結果を示す。これらの結果は、コントロールの割合として表わされる(より詳細な標準偏差は図15を参照)。
図5】(A)〜(C)は、アスペルギルス・フラブス培養上清またはEBVに曝露された際の単核白血球の細胞表面表現型を示すグラフ。長期白血病生存患者(ALL)および「正常な」/鎌状赤血球症患者(SC)(コントロール)からの細胞は、アスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)、或いはEBV感染CCL−87培養上清(E)のいずれかで培養され、培養後1〜4日目に検出された。
図6】(A)〜(C)は、細胞表面表現型を示すグラフ。元白血病患者(ALL)および「正常な」/鎌状赤血球症患者(SC)(コントロール)からの細胞は、2.5μmフィルタ(Corning Inc,、ニューヨーク州コーニング)でろ過されたアスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)、或いはヨザル細胞培養上清(CRL−2312)(om)のいずれかで培養され、細胞表面表現型は培養後1〜4日目に検査された。急性リンパ芽球性白血病(ALL)の細胞表面表現型の特徴は、フローサイトメータ(BD FACS Canto II、Becton, Dickinson,& Co.,、ニュージャージー州フランクリン・レイク)を用いて、培養後4日間毎日評価された。結果はコントロールの割合として表わされる。
図7】(A)〜(C)は細胞表面表現型を示すグラフ。長期白血病生存者(ALL)および「正常な」/鎌状赤血球症試料(SC)(コントロール)からの単核細胞は、アスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)、或いは10μg/mlのアフラトキシンB1(AT)のいずれかで培養され、且つ「正常な」コントロールと比較された。培養物は、培養後1〜4日間評価および検出された。
図8】(A)〜(C)は、「正常な」コントロールと比較して、精製エプスタイン・バーウィルス(eV)と対照的にアスペルギルス・フラブス培養上清(X)に曝露された白血病の長期生存者個体からの細胞の細胞表面表現型を示すグラフ。研究は、培養後1〜4日目から毎日繰り返された。
図9】(A)〜(C)は、トリ白血病ウィルス(cV)と比較して、アスペルギルス・フラブス培養上清(X)に曝露された白血病長期生存者からの細胞の細胞表面表現型を示すグラフ。培養物は、培養後1〜4日目から毎日評価された。コントロールは、「正常な」/鎌状赤血球症患者からの単核細胞である。
図10】(A)〜(C)は、自己血漿(pl)と比較して、アスペルギルス・フラブス培養上清(X)に曝露された白血病長期生存者からの細胞の細胞表現型を示すグラフ。培養物は、培養後1〜4日目から毎日評価された。
図11】(A)〜(C)は、アスペルギルス・フラブス(X)および(CCL87細胞培養物から放出された)エプスタイン・バーウィルス(E)の組み合わせ(X+E)と比較して、アスペルギルス・フラブス培養上清(X)に曝露された白血病長期生存者からの細胞の細胞表現型を示すグラフ。培養物は、培養後1〜4日目から毎日評価された。コントロールは、「正常な」/鎌状赤血球症患者からの単核細胞である。
図12】(A)〜(C)は、トリ白血病ウィルス(cV)と比較して、CCL−87細胞培養(E)から得られたエプスタイン・バーウィルス(E)に曝露された白血病(ALL)長期生存者からの細胞の細胞表面表現型を示すグラフ。培養物は、培養後1〜4日目から毎日評価された。コントロールは、「正常な」/鎌状赤血球症患者からの単核細胞である。
図13】(A)〜(C)は、白血病患者(ALL)および「正常な」/鎌状赤血球症試料(SC)(コントロール)からの細胞の細胞表面表現型を示すグラフ。細胞は、2×10PFU/mlの精製エプスタイン・バーウィルス(eV)或いは2×10PFU/mlのトリ白血病ウィルス(cV)のいずれかで培養され、培養1〜4日後に検出された。
図14】(A)〜(C)は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の長期寛解患者の単核白血球においてALLに特有の細胞表面表現型の発生でのアスペルギルス・フラブス(X)と、別の真菌物質であるマイコクラジュス・コリムビフェラ(MC)と、アフラトキシン(AT)の培養上清の作用を、「正常な」/鎌状赤血球症患者(「正常なコントロール」)と比較するグラフ。結果は、標準偏差とともに列方向に示される。
図15】(A)〜(C)は、媒体、血漿(pl)、トリ白血病ウィルス(cV)、マイコクラジュス・コリムビフェラ(SB)、アフラトキシン(AT)、ヨザル細胞(CRL−2312培養)(OM)、アスペルギルス・フラブス(X)、CCL87(E)、アスペルギルス・フラブス+CCL87(X+E)、および精製EBV(eV)で培養された白血病長期生存者の単核白血球の(A)CD10/CD19、(B)CD34/CD19、および(C)CD34/CD117の細胞表面表現型検査のまとめを示すグラフ。培養物は、培養後1〜4日間毎日評価された。コントロールは、「正常な」/鎌状赤血球症患者からの単核細胞である。
図16】(A)〜(C)は、非白血病試料と比較した長期白血病生存者の差を表わすELISA検出を示すグラフ。(A)アスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)は、SC(「正常な」コントロール)と比較してALL白血病患者の血漿で培養された;(B)アスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)は、SC(「正常な」コントロール)と比較して非ALLがん患者(固形腫瘍)で培養された;(C)アスペルギルス・フラブス真菌培養上清(X)は、正常な血液提供者(血液バンクからの廃棄血液)からの正常なヒト試料で培養され、且つ鎌状赤血球症患者(SC)の血漿と比較された。
図17】(A)〜(C)は、非白血病試料と比較した白血病患者の差を表わすELISA検出を示すグラフ。(A)EBV感染CCL−87培養上清(E)は、寛解急性リンパ芽球性白血病長期生存者の血漿で培養され、SC(「正常な」コントロール)と比較された。(B)EBV感染CCL−87培養上清(E)は、非がん患者(固形腫瘍)で培養され、SC(「正常な」コントロール)と比較された。(C)EBV感染CCL−87培養上清(E)は、正常な血液提供者の血漿(血液バンクからの廃棄血漿)で培養され、SC(「正常な」コントロール)と比較された。
図18】(A)〜(F)は、ヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)細胞培養上清(OM)を使用するELISA技術が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)からの血漿を、「正常な」/鎌状赤血球症患者(A)、固形腫瘍患者(B)、或いは血液バンクすなわち「正常な」提供者から廃棄された正常な血漿(C)と区別できないことを示すグラフ。 EBV(CCL87)を含むCCL−87の培養物に加えられたアスペルギルス・フラブス培養上清(X)の組み合わせは、正常なコントロール/鎌状赤血球症患者から長期寛解急性リンパ芽球性白血病患者を検出できる(D)。固形腫瘍患者(非ALL)と正常なコントロールからの血漿は、このX+CCL87の組み合わせによって区別できない(E)。X+CCL‐87を使用して、鎌状赤血球症患者の血漿は、無作為の健康な血液提供者の血漿と区別されない(F)。
図19】(A)〜(C)は、アスペルギルス・フラブス単独、エプスタイン・バーウィルス、および培養されたそれらの組み合わせの上清のたんぱく質分析からのピークを使用するELISA検出を示すグラフ。
図20】(A)〜(C)は、50cGyの放射線照射を伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブス単独、或いはエプスタイン・バーウィルス(EBV)と組み合わせた上清のピーク1,2,3の、元白血病患者およびコントロール(SC)の急性リンパ芽球性白血病の細胞表面マーカの特徴の発生への作用を示すグラフ。全てのデータはコントロールの割合で示される。
図21】(A)〜(C)は、血液単核細胞の細胞表面表現型を示すグラフ。細胞は、EBV感染CCL−87培養物(CCL87)、精製EBV、またはトリ白血病ウィルス(cV)と比較して、アスペルギルス・フラブス培養上清(X)に曝露された白血病長期生存者から得られた。培養物は、培養後1〜4日から毎日評価された。コントロールは「正常な」/鎌状赤血球症患者からの単核細胞である。
図22】(A)〜(B)は、コントロール(媒体のみ)と比較して、アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(eV)、XおよびeVの組み合わせ(X+eV)での培養1、2、3、4、5、6および24時間後における、白血病細胞表面表現型CD10/CD19の段階的な発生を表わす。細胞表面マーカCD10/CD19または(B)CD19/CD34は、白血病(ALL)の長期寛解患者(A)対「正常な」/鎌状赤血球症コントロール(SC)(B)で評価された。全てのデータは、標準偏差を伴いコントロールの割合として示される。
図23】(A)〜(B)は、コントロール(媒体のみ)と比較して、アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(eV)、XおよびeVの組み合わせ(X+eV)での培養後1、2、3、4、5、6および24時間後における、白血病細胞表面表現型CD19/CD34の段階的な発生を表わす。細胞表面マーカCD19/CD34は白血病(ALL)の長期寛解患者(A)対「正常な」鎌状赤血球症コントロール(SC)(B)で評価された。全てのデータは、コントロールの割合として示される。
図24】(A)〜(B)は、コントロール(媒体のみ)と比較して、アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(eV)、XおよびeVの組み合わせ(X+eV)での培養1、2、3、4、5、6および24時間後における、白血病細胞表面表現型CD34/CD117の段階的な発生を表わす。細胞表面マーカCD34/CD117は白血病(ALL)の長期寛解患者(A)対「正常な」鎌状赤血球症コントロール(SC)(B)で評価された。全てのデータは、標準偏差を伴いコントロールの割合として示される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この研究では、アスペルギルス・フラブスおよびEBVの上清単独、或いは組み合わせに曝露されると、インビトロで、ALLの長期寛解患者の単核白血球で白血病の表現型を再誘導するが、固形腫瘍患者を含むコントロールではしないことを示唆している。
【0022】
この研究により、遺伝子的に罹患し易い患者において、急性リンパ芽球性白血病の罹患に、これらの物質が作用することが明らかになった。
【0023】
本明細書で使用される急性リンパ芽球性白血病の「診断」とは、症状を分類し、兆候に基づく治療後に、特定の異常な症状が発生或いは再発するか否かを予測または推測し、個体に疾病が発症しているのを検出し、その疾患の重症度を判定し、且つ疾病の進行を監視することを言う。
【0024】
本明細書で使用される「個体」とは、哺乳類種の一つを表わすとともに、ヒト、霊長類、ネズミ、ウシやヒツジ等の家畜を含む。
【0025】
本明細書で使用される「白血病患者」とは、急性リンパ芽球性白血病/びまん性リンパ腫であると診断され或いは以前に診断されたことがある任意の個体を意味する。これには、急性リンパ芽球性白血病/びまん性リンパ腫の治療をこれまでに受けており、且つ白血病の長期寛解を見せる個体を含む。
【0026】
本明細書で使用される非白血病患者とは、白血病/びまん性リンパ腫以外の固形腫瘍を有すると診断され或いはこれまでに診断された任意の個体を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「検出」とは、単核白血球でのELISA技術により検出可能な抗体の存在、或いは急性リンパ芽球性白血病の細胞表面表現型特性の誘導を判定または特定することを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「抗体」または「複数の抗体」は、広義で使用されるとともに、記載されるたんぱく質、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、および抗体フラグメントを含む。
【0029】
全ての培養物、技術、ELISA、フローサイトメトリ、FPLC、ゲル電気泳動、およびたんぱく質判定に対して、標準的な方法論が使用された。
【実施例1】
【0030】
アスペルギルス・フラブスの4個の分離株が、45年間にわたりALLと診断された患者の夫々の家庭から回収された。4個の分離株全てが同一の特性を有すると共に、細胞形質転換に同様の作用を有することが判明した。従って、高い発生率を特徴とする1個の分離株(UGB)のみのろ過上清が、記載される研究全体に利用された。「UGB」分離株は、3.5%のチャペック・ドックス培養液(Difco、Becton Dickenson、メリーランド州スパークス)の上層を含み、水に1%の固形アガロース(Aneresco、オハイオ州ソロン)の下層を入れたガラス瓶で培養された。培養物は、37℃の外気中で培養された。培養上清は、アスペルギルス・フラブスの密集発生が得られた時、通常は二週間ごとをベースに採取された。上清は0.25μmフィルタ(Corning Inc,、ニューヨーク州コーニング)でろ過され、使用されるまで4℃の冷蔵室で保管された。
【0031】
EBVタイプ2バーキットリンパ腫Jijoye細胞株(CCL−87)およびヨザルBリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)クローン13C(EBV形質転換)は、アメリカン・タイプ・カルチャ・コレクション(ATCC、バージニア州マナッサ)から入手されるとともに、標準的な組織培養プロトコルおよび滅菌技術に従って培養された。CCL−87およびCRL−2312細胞は、10%のウシ胎仔血清(Atralta Biologicals)、10mMのHEPES(GIBCO Laboratories)および1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich)が補われたRPMI1640媒体(GIBCO Laboratories)で培養された。混ざり合うように発生させられたこれらの細胞株からの上清が、実験に用いられた。CRL−2312細胞株上清は、ネガティブコントロールとして使用された。
【0032】
マイコクラジュス・コリムビフェラ種は、通常の環境発生源(イチゴ)から無作為に培養され、アスペルギルス・フラブスで説明したのと同様に培養され、採取され、且つ上清がろ過されて同一の状態で保存された。
【0033】
アフラトキシンB1は、商業的供給源(Sigma Chemicals、ミズーリ州セントルイス)から入手されるとともに、コントロールとして使用された。
【0034】
一定分量のアスペルギルス・フラブス、EBV感染CCL−87培養上清、および精製エプスタイン・バーウィルスが、高速たんぱく質液体クロマトグラフィ(FPLC)によって分析された。アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(EBV,eV)およびそれらの組み合わせの上清のたんぱく質画分は、BioScale(商標名) Macro−Prep Column High Q カートリッジを備えたFPLCシステム(Bio−Red Laboratories, Inc.,、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して得られた。BioLogic(商標名) LP システムは、以下の装備品と共に作動させられた:BioLogic(商標名) LP Controller Gradient Mixer、 MV−6 Manual Inject Valve、Conductivity HolderのBiologic(商標名) LP Optics Module Conductivity Flow Cell、 Diverter/Bypass Valves SV−5 buffer−select valve、 Model EP−1 Econo gradient pump、 Econo UV モニタ、 Model 2110画分回収機、およびLP Data View Software。各ピークの精製は、Sephadexカラムおよび標準的なたんぱく質精製技術を用いて行われた。
【0035】
2週間の培養後、アスペルギルス・フラブス(X)培養上清は、図1(A)に示すように、3個の顕著なピークを示すが、EBVは同時期に、図1(B)に示すように、1個の幅広いピークを示す。アスペルギルス・フラブス(X)をEBVと合わせて培養すると、図1(C)に示すように、培養4時間後に始まる新しいピークを生じさせる。図1(D)に示すようにグラフを重ね合わせると、(黒色の四角で示される)このピークの発生がより良好に現される。このピークによって示されるたんぱく質画分は、感受性細胞の白血病表現型細胞への形質転換において活性している。この技術は、白血病寛解/長期生存者の個体を検出することができる。図1(A)、(C)および(D)から示されるように、第1ピーク画分が、エプスタイン・バーウィルスと同じ領域即ち50〜75KDに含まれることは興味深いことである。培養の効果は、図2(A)〜(D)に示すように、4時間および7日間で得られた結果が同様であることによって証明されるように、少なくとも7日間続いた。しかしながら、アスペルギルス・フラブス培養上清の第1ピークでの画分によって生じる信号は、図2(A)に示すように、ずっと大きく且つ幅広いと共に、図2(C)に示すように、EBVと混合培養された抽出物に引き継がれる。従って、アスペルギルス・フラブスおよびEBV培養上清の培養は、アスペルギルス・フラブス培養上清またはEBV単独培養にはこれまで存在しなかった新しいピークをもたらす。
【0036】
アスペルギルス・フラブス上清の画分の放射線照射(50cGy)は、図3(A)に示すように、画分溶出点のわずかな移動を生じさせると共に、ピーク2および3の信号を減少させた。この作用は、図3(B)に示すように、X+EBVでは観察されなかった。アスペルギルス・フラブス培養上清での移動は、EBVに重ね合わせられた時に特に明らかであり、また、更なる研究において、感受性細胞の白血病表面マーカ細胞への形質転換および白血病の病歴がある個体の検出において一層活性している明白な新しいピークを明らかにしている。
【0037】
異なる白血病誘導物質の組み合わせの培養を含む研究では、ろ過されていないアスペルギルス・フラブス培養上清が利用された。25ミリリットルのこの上清は、2×10PFUのウィルスを含む分離EBVまたはCCL87培養上清いずれかを2mlを入れた100mlの培養フラスコ(Sarsted, Inc.,、ノースカロライナ州ニュートン)で混合培養された。培養物は、5%のCOで、7日間37℃で培養された。培養物は、培養の間に毎日撹拌されると共に、2.5μmフィルタ(Corning Inc, ニューヨーク州コーニング)でろ過され、さらに、使用されるまで4℃の冷蔵室で保存された。
【実施例2】
【0038】
親/患者の同意を得て、約15mlの血液が、白血病の寛解患者、白血病長期生存者および正常なボランティアから得られた。付加的な「正常」コントロール試料は、手動式部分交換輸血を行い鎌状赤血球症患者の血液の第1採血から、或いは血液バンクによって廃棄された正常なドナーからの血液試料から回収された。患者の血液は、ヘパリン(1000USP μ/ml)に置かれた。末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll Paque Plus(GE Healthcare、 Amersham Biosciences、 スウェーデン国ウプサラ)を用いて、密度勾配遠心法(400×g、 18℃で40分)によって分離され、続いてリン酸緩衝生理食塩水で洗浄された。血漿も同時に回収されると共に、使用されるまで−80℃で保存された。密度勾配分離されたPBMCは、10%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む10細胞/mlのよく冷えたウシ胎仔血清内において再懸濁された。一定分量の細胞懸濁液(1.0ml)はクライオバイアルで作製され、すぐに予め冷却された(4℃)Nalgene Cryo 1℃ 凍結コンテナ(Nalge Nunc International、 ニューヨーク州ロチェスタ)に移動されて、−70℃の冷凍庫に一晩置かれた。凍結された試料は、24時間以内に液体窒素フリーザに移送された。試料は解凍して分析されるまで、液体窒素内に保持された。
【0039】
凍結された試料は、37℃の水槽内で連続撹拌しつつ解凍された。解凍された細胞懸濁液各1mlは、10%のウシ胎仔血清(Altanta Biolgicals、ジョージア州ノークロス)、10mlのHEPES(Gibco Laboratories)および1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)が加えられたRPMI1640媒体(Gibco Laboratories、ニューヨーク州グランドアイランド)でゆっくりと室温で希釈された。細胞は遠心分離機にかけられ、10mlの媒体で2度洗浄された。これらの細胞(凍結/解凍PBMC)は次に、トリパンブルー色素排除によって有効性が評価され、計数され、且つ分析用媒体に再懸濁された。
【0040】
エプスタイン・バーウィルス、アフラトキシンおよびCCL−87培養物は、商業的供給源から入手されると共に、上記の方法で維持された。アスペルギルス・フラブスでの説明と同様に、正常な環境発生源(イチゴ)から無作為に培養され且つろ過されたマイコクラジュス・コリムビフェラ種培養上清を含む幾つかのコントロールが利用された。他のコントロールには、トリ白血病ウィルス、アフラトキシンおよびヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)の上清を含むものであった。全ての培養物、フローサイトメトリ、ELISA技術、FPLC、ゲル電気泳動およびたんぱく質判定には、標準的な方法論が用いられた。放射線量は、使用された時、50センチグレイであった。
【0041】
コントロールおよび密度勾配によって分離された患者の検査細胞は、インビトロで様々な処理を受けた。約1×10個の細胞が、アスペルギルス・フラブス培養上清、CCL−87上清(EBVゲノムを含む)または(細胞が抽出される)患者の血漿で、或いは1対1の比率のCCL−87上清+血漿、X+CCL−87上清、アスペルギルス・フラブス培養上清+血漿またはマイコクラジュス・コリムビフェラ培養上清、CCL−87上清+血漿の様々な組み合わせで培養され、且つ25cmの組織培養フラスコ内のRPMI1640完全培地で10ml作製された。細胞試料はまた、アフラトキシンまたはトリ白血病ウィルスに、或いはポジティブまたはネガティブコントロールとして作用するCRL−2312上清に曝露された。異なる処理フラスコは、37℃で5%のCOを伴い、4日間培養された。
【0042】
24、48、72および96時間の時間間隔で、細胞表面表現型検査がフローサイトメトリにより行われた。簡潔には、各処理からの細胞懸濁液は遠心分離機にかけられ、且つ細胞ペレットは抗CD34−FITC(クローン581、BD Biosciences、イギリス国オックスフォード)、抗CD10−PE(クローンHI10A、BD Biosciences)、抗CD19−APC(クローンHIB19、BD Biosciences)、抗CD45−APC−Cy7(クローン2D1、BD Biosciences)および抗CD117−PerCP−Cy5.5(クローン104D2、BD Biosciences)で45分間、4℃で培養された。細胞は洗浄され、染色バッファ(BSA、BD Biosceiences)で再懸濁された。蛍光活性化細胞分類(FACS)BD FACS Canto IIで、FACSDiva v6.1.2 Samplesを用いて、収集および分析が行われた。試料は前方および側方散乱に基づいてゲートが設定された。死滅細胞は、適当な閾値を設定することにより除外された。CD10CD19、CD34CD19およびCD34CD117にポジティブな細胞の割合が記録された。
【0043】
正常な被験者、鎌状赤血球症患者などの「正常な」コントロール、急性リンパ芽球性白血病(ALL細胞、白血病患者と呼ぶ)の長期非疾病生存者、および非白血病がん患者(ガン患者)からの血液単核細胞の培養の結果は、細胞表面マーカについて検査されることにより、図4に示すように、細胞の白血病の状態が示された。コントロールとして使用された媒体単独と比較して、化学療法寛解白血病患者または白血病長期生存者からの細胞は、アスペルギルス・フラブス培養上清、EBVまたは精製EBV培養物を含むCCL−87に曝露された時、図4および図15に示すように、細胞表面マーカに顕著な増加があった。その結果、アスペルギルス・フラブスの上清、EBV/培養物を含むEBV、およびアスペルギルス・フラブスとEBVの組み合わせは、白血病患者において白血病細胞表面マーカを選択的に誘導するが、コントロールではしない。使用される他の物質では、はっきりとした作用はなかった。アフラトキシンは、白血病およびコントロールにおいて、細胞表面マーカを無差別的に活性化させる。
【0044】
アスペルギルス・フラブス上清およびEBVなどの物質誘導の白血病患者からの単核白血球への作用は、図21〜23に示すように、培養4時間後に始まり、一日後に完全に明らかになり、更にその日を過ぎても続いた。アスペルギルス・フラブスの作用は、CD10/CD19、CD34/CD19およびCD34/CD117の組み合わせで検出された試料で明らかであった。図11(A)〜(C)に示すように、アスペルギルス・フラブス、またはアスペルギルス・フラブスとCCL−87を含むエプスタイン・バーウィルスを加えることにより、或いは、図8(A)〜(C)に示すように、精製エプスタイン・バーウィルスを伴うことにより、元白血病患者では急性リンパ芽球性白血病の細胞表面表現型特性の発生を促しており、コントロールでは促さない。アスペルギルス・フラブスおよびエプスタイン・バーウィルス(eV)の培養上清は、白血病に罹患し易い個体について、細胞表面表現型の発生に等しく影響することを示しており、また、鎌状赤血球症患者(正常コントロール)からの細胞では作用は示さなかった。白血病患者に見られるような同様な反応は、図5(A)〜(C)に示すように、「正常な」コントロールでは観察されなかった。また、白血病長期生存者から得られた細胞は、図11(A)〜(C)に示すように、エプスタイン・バーウィルスを伴い或いは伴わないアスペルギルス・フラブスの上清では、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の細胞表面マーカ特性の発生が誘導される。この作用は、図15(A)〜(C)に示すように、アスペルギルス・フラブス培養上清およびEBVを含むアスペルギルス・フラブス培養上清のいずれもが、コントロールに作用しなかったので、白血病に罹患し易い個体に特有のものであった。
【0045】
特に、細胞表面マーカへのこの選択的作用は、白血病細胞表面表現型の誘導により、元白血病患者の試料に特有であった。このような白血病細胞表面マーカの再誘導における区別的な作用は、これまで発生することが知られておらず、また報告もされていない。更に、図6(A)〜(C)に示すようにヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)細胞培養上清、図9(A)〜(C)および図12(A)〜(C)に示すようにトリ白血病ウィルス、および図10(A)〜(C)に示すようにヒト血漿などの他の複合物での細胞培養は、いずれの試料においても、細胞表面マーカを増加させなかった。アスペルギルス・フラブス培養上清またはEBVとは対照的に、精製アフラトキシン(AT)での細胞培養は、図7(A)〜(C)に示すように、正常細胞および白血病細胞の両方において、CD10/CD19、CD34/CD19およびCD34/CD117の大きな発生を区別なく誘導した。図10(A)〜(C)および図15(A)〜(C)に示すように、混合物への血漿の付加は、この作用を低減させたが、排除しなかった。
【0046】
また、CCL−87またはEBVにアスペルギルス・フラブス上清を組み合わせると、図15(A)〜(C)に示すように、細胞がCCL−87/アスペルギルス・フラブスまたは精製EBV/アスペルギルス・フラブスのいずれで培養されたかに拘わらず、コントロールの割合として、上記細胞表面表現型の発生が結果的に生じた。作用は、全ての急性リンパ芽球性白血病患者およびびまん性リンパ腫患者に一貫していた。しかし、CCL−87/アスペルギルス・フラブスまたはEBV/アスペルギルス・フラブスの組み合わせは、「正常な」コントロールまたは固形腫瘍患者の細胞表面表現型には作用しておらず、これは、「正常な」細胞をEBVまたはアスペルギルス・フラブス上清単独に曝露させた時の結果と似ている。マイコクラジュス・コリムビフェラは、全ての真菌物質が、前述の白血病の集団に同様の作用を誘導し得るかを立証するために、アスペルギルス・フラブス培養上清と比較され、アフラトキシン(AT)が無差別なポジティブコントロールとして使用された。この研究に使用されたアスペルギルス・フラブス(X)上清は、細胞表面表現型検査の発生により元白血病患者とコントロールを区別しており、元白血病患者を精確に特定している。それと比較して、マイコクラジュス・コリムビフェラ(MC)は、元白血病患者と「正常な」/鎌状赤血球症患者を特定し、或いは区別しておらず、この作用は、我々の実験では、図14(A)〜(C)に示すように、アスペルギルス・フラブス培養上清に特有である。
【0047】
結果のまとめを図15(A)〜(C)に示しており、アスペルギルス・フラブス、EBV感染CCL−87培養上清、精製エプスタイン・バーウィルス、およびアスペルギルス・フラブスとEBV感染CCL−87培養上清またはアスペルギルス・フラブスと精製エプスタイン・バーウィルスの組み合わせの培養は、元白血病患者において、細胞表面マーカを選択的に増加させることが示されている。精製アフラトキシンがアスペルギルス・フラブス上清のいずれかに加えられた時、図15(A)〜(C)に示すように、白血病個体および正常な個体の両方からの細胞は、白血病細胞表面表現型を提示しており、アフラトキシンは非特異的であった。ヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)培養上清は、非特異的ネガティブコントロールとして使用されており、またヒト血漿は図15(A)〜(C)に示すように、白血病細胞または「正常な」コントロール細胞の細胞表面表現型に顕著に作用することがなかった。従って、我々の実験では、アスペルギルス・フラブス(X)培養およびEBV含有培養(EおよびeV)の上清のみが、元白血病患者に急性リンパ芽球性白血病(ALL)の細胞表面表現型特性の発生を促しており、コントロールでは促さない。その他例えばトリ白血病ウィルスといったウィルス性物質、血漿、またはマイコクラジュス・コリムビフェラ(cV,pl,(MC)夫々)のような真菌物質は、白血病患者およびコントロールにおいて、任意の細胞表面表現型の発生を促さず、また、ATは元白血病患者およびコントロールからの細胞を含む全ての細胞において、この表面マーカの発生を無差別的に促す。
【0048】
放射線の作用:上述したように、アスペルギルス・フラブス単独、またはEBVで培養されたものの培養物に、50センチグレイの放射線が照射された時、後者の培養上清は、フローサイトメトリによって判定されたように、寛解白血病患者からの細胞において、白血病表現型の誘導活性が高まることを示したが、正常なコントロールでは、任意の白血病表現型を誘導しなかった。即ち、放射線は、白血病誘導たんぱく質の誘導をこれらの有機体によって生じさせるのである。
【0049】
データは、算術平均プラスマイナス標準偏差(SD)として提示される。結果は、統計的優位性を評価するために、両側スチューデントt検定を使用して分析された。統計的差異は、p<0.05の確率水準で提示される。
【実施例3】
【0050】
ELISA研究では、親/患者の同意を得て、約15mlの血液が寛解白血病患者、白血病長期生存者、および正常なボランティアから得られた。付加的な「正常な」コントロール試料は、鎌状赤血球症患者の同意を得て、手動による部分交換輸血を行い血液の第1採血から回収された。更に、血液バンクからの廃棄血液が、コントロールとして使用された。患者の血液は、ヘパリン(1000USP u/ml)に置かれた。血漿も同時に回収され、使用されるまで−80℃で保存された。
【0051】
様々な条件の媒体において、抗原に対する血漿試料の抗体を検出するために、質的サンドイッチELISAが行われた。簡潔には、96ウェルマイクロメータプレートには、媒体、XRT、CCL−87上清またはCRL−2312上清またはXRTおよびCCL−87上清の組み合わせいずれか100μlが塗布され、一晩4℃で培養された。プレートは次に、2%のBSAを含むPBSで、2時間37℃で遮断された。血清試料(100μm)は3倍に薄められると共に、室温で2時間培養された。最後に、アルカリホスファターゼ(Promega、ウィスコンシン州マジソン)と結合したヤギ抗ヒトlgGは、ブロッキングバッファ内で1対5000に希釈され、且つ、各ウェルに(100μlが)加えられた。プレートは室温で更に2時間培養され、30分間50μlの発色基質(PNPP、Thermo Fisher Scientific、コロラド州ラファイエット)を加えることにより反応が視覚化された。反応は100μlのHSOを用いて停止させられ、且つ、450nmの吸収度が、ELISAプレートリーダを用いて、630nmへの減少を伴い測定された。プレートは洗浄バッファ(PBS、pH7.4、0.1%(v/v)のTween20を含む)で5回洗浄された。
【0052】
質的ELISA試験において、アスペルギルス・フラブス上清は、ALL患者、正常なコントロール、または非白血病がん患者(固形腫瘍)の血漿に対して検査された時に、著しい違いが生じた。ELISA技術では、アスペルギルス・フラブス培養物、EBVを含むCCL−87培養物、またはそれらの組み合わせの上清を用いて、図16(A)、17(A)および19(A)に示すように、白血病/びまん性リンパ腫患者からの血漿を、「正常な」コントロールの血漿と区別することが可能であった。
【0053】
アスペルギルス・フラブス真菌培養での培養後、白血病患者のlgG免疫反応は著しく高まり、「正常な」試料と異なる集団を形成した。これにより、図16(A)に示すように、元白血病患者からの血漿は、鎌状赤血球症(SC)および正常な血液提供者(血液バンクからの廃棄血液)を含むコントロールの血漿と容易に区別できる。この白血病患者のグループは、正常な試料と重なることがない。また、図19(D)〜(F)に示すように、白血病患者の試料をEBV感染CCL−87培養物またはアスペルギルス・フラブス真菌培養およびCCL−87(X+CCL−87)からの上清で培養すると、図17(A)および図19(A)に示すように、白血病患者対「正常な」試料の2つの異なる集団に同じようにグループ化される。アスペルギルス・フラブスまたはEBVを含むCCL−87培養上清は、図16(B)および図17(B)に示すように、他のガン(即ち固形腫瘍)に罹患した患者からの血漿を認識或いは区別しない。図18(A)〜(C)に示すように、ヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)細胞培養上清は、試料のlgG免疫反応を増大させないので、白血病患者試料を非白血病試料から層別化するのは、使用される誘導因子によって決まる。従って、アスペルギルス・フラブスまたはEBVまたはそれらの組み合わせの上清を利用する本発明のELISA検査は、正常の個体からの血漿を、白血病患者の血漿から区別することができる。同様の結果は、図17(A)〜(C)および図18(D)〜(F)に示すように、CCL−87上清を含むエプスタイン・バーウィルス単独で、或いはアスペルギルス・フラブス上清を加えたものが正常な個体、ALL患者または固形腫瘍患者の血漿に対して検査された時に得られた。FPLAによって分離されたアスペルギルス・フラブスの第1ピークを表わす画分は、図20(A)および(B)に示すように、コントロールと比較して、元白血病患者からの血漿を分離する際に最も有効であることが分かった。図19(A)に示すように、ピーク2はかなり低活性性であり、またコントロールと重なって現れる一方、ピーク3は元白血病患者対コントロールの検出について、活性性が低い。図19(B)および(C)に示すように、アスペルギルス・フラブスピーク1画分のEBVでの培養は、層状化の増大展を示しており、ピーク2画分では活性性が僅かに増加し、ピーク3画分では変化がなかった。いずれのピークでも、固形腫瘍患者を鎌状赤血球症患者または正常な個体から区別しなかった。
【0054】
EBV源は、図21(A)〜(C)に示すように、元白血病患者におけるALLの細胞表面表現型特性の誘導を大きく変化させなかった。両方のEBV源は、明確に白血病細胞を予測すると共に、正常な個体または固形腫瘍患者から区別する。
【0055】
データは、算術平均プラスマイナス標準偏差(SD)として提示された。結果は、統計的優位性を評価するために、両側スチューデントt検定を使用して分析された。統計的差異は、p<0.05の確率水準で提示される。
【実施例4】
【0056】
本明細書に記載される研究によれば、本研究に先立ち長年治療されている者を含み、目下治療中および治療休止中のALLまたはびまん性リンパ腫患者の末梢血から得られた精製単核白血球は、アスペルギルス・フラブス培養上清またはEBV源または2つの組み合わせに曝露された時に、細胞表面表現型が白血病細胞と区別できない芽細胞を形成することにより、反応する。曝露された細胞は、急性リンパ芽球性白血病およびびまん性リンパ腫の特徴である細胞表面表現型を示した。このような反応は、エプスタイン・バーウィルス(EBV)を含むCCL−87培養上清の付加、または精製EBVの付加により高められる。また、アスペルギルス・フラブスを50センチグレイの放射線に照射させると、一層促される。アスペルギルス・フラブスおよびEBVの組み合わせ培養物によれば、図1(C)および図2(C)に示すように、付加的なたんぱく質ピークが生じた。このたんぱく質は、ELISA技術を用いた急性リンパ芽球性白血病/びまん性リンパ腫の病歴をもつ個体の検出に極めて有効であり、正常な試料では有効ではなかった。この物質はまた、元白血病患者の単核末梢血細胞において、ALL白血病表現型を誘導するが、コントロールでは誘導しなかった。
【0057】
ELISA技術により、ALLまたはびまん性リンパ腫患者の血漿は、アスペルギルス・フラブス培養上清と反応した。白血病患者と「正常な」コントロールを明確に区別することができた。同一の方法によりインビトロで処理された正常なコントロールまたは固形腫瘍個体からの血漿が使用された時には、同様な結果は得られなかった。
【0058】
EBVを伴い、或いは伴わないアスペルギルス・フラブス含有培養物の放射線照射は、図1(A)〜(C)対図3(A)〜(C)に示すように、たんぱく質ピークの形成を増大させた。また、放射線照射に拘わらず、培養され或いは培養されていないピーク1画分は、図20(A)〜(C)に示すように、元白血病患者の白血病細胞の特徴であるCD10/CD19、CD34/CD19およびCD34/CD117細胞表面表現型の発生において、最も活性化していた。放射線照射を伴い、或いは伴わないアスペルギルス・フラブス(X)とエプスタイン・バーウィルス(EBV)の組み合わせは、著しく活性化していたが、ヨザル1C3Bリンパ芽球様細胞株(CRL−2312)(OM)の上清は、元白血病患者またはコントロールの細胞表面表現型に作用を及ぼさなかった。
【0059】
時間分析により、コントロール(媒体のみ)と比較して、アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(eV)またはXおよびeVの組み合わせで1、2、3,4,5、6および24時間培養した後、元白血病患者に白血病細胞表面表現型の緩やかな発生が現れた。また、分析によれば、図22(A)、図23(A)、および図24(A)に示すように、アスペルギルス・フラブス(X)、エプスタイン・バーウィルス(eV)またはXおよびeVの組み合わせで培養した最初の3時間以内に、細胞が細胞表面マーカの発現を減少させることを示している。4時間で、細胞は媒体処理細胞とほぼ同じシグナル伝達を現し、次に、少なくとも24時間表面マーカを連続的に増加させ始める。この作用は、図22(B)、23(B)および24(B)に示すように、「正常な」/鎌状赤血球症コントロールからの細胞では観察されない。いかなる理論に拘束されるものではないが、これらの結果は、白血病状態に戻る細胞の初期抵抗を示し、続いて元白血病患者に白血病マーカが再誘導されると考えられる。
【0060】
アスペルギルス・フラブス培養上清をマイコクラジュス・コリムビフェラ種または精製された市販のアフラトキシンに置換し、またEBVをトリ白血病ウィルスと置き換えると、正常な試料と白血病/びまん性リンパ腫試料において、同様の区別的変化が生じない。つまり、アスペルギルス・フラブスおよびEBV上清の作用は、一般的な種に非特異的な有機体に起因する可能性が低いことを示している。
【0061】
EBVおよびアスペルギルス・フラブス上清の両方が、ALLおよびびまん性リンパ腫患者からの細胞に、ALL/びまん性リンパ腫表現型の変化を再誘導すると共に、固形腫瘍患者を含む「コントロール」では再誘導しないという研究結果は、これらの個体の潜在的な遺伝的素因を示している。また、ALLおよびびまん性リンパ腫患者からの細胞は同様に反応するという事実は重要である。臨床的に、これら2つのグループは、びまん性リンパ腫が白血病に変換することがあるので、明らかに関連している。細胞表面表現型検査またはELISA技術のいずれかを使用して同様の結果が得られたことは意義がある。これらの研究は、遺伝子学的に罹患し易い患者の白血病発症において、EBVおよびアスペルギルスの作用を明らかにするものである。また、放射線が、アスペルギルス・フラブス単独で、またはEBVでの培養後に、たんぱく質生成パターンを変えるという事実は、放射線による発がん現象のメカニズムを明らかにするものである。
【0062】
元白血病患者の細胞表面表現型を制御するゲノムの再活性については、これまで知られていなかった。上記の研究により、一見したところ完全な形態学的寛解にも拘わらず、急性リンパ芽球性白血病患者からの細胞は、特定の条件に曝露されると、急性リンパ芽球性白血病と同様に細胞表面表現型を形質転換させる。同様な曝露は、正常な個体或いは固形腫瘍患者では、表現型変化を誘導しない。ELISA検査は、白血病の病歴を持つ患者を遡及的に検出し、正常な個体および固形腫瘍患者から識別するための手段として使用することができる。検査は、白血病に罹患する恐れを検出するために、正常な個体の集団検診に利用することも可能である。このような試行には、大規模な集団が必要である。上記の実験の結果は、白血病の原因を示唆するものであるかもしれない。
【0063】
開示される先の明細書、全ての文献、行為、または情報は、それらの任意に組み合わせられた文献、行為又は情報が、公的に利用可能であり、周知であり、当該技術分野における一般的な知識の一部であり、または優先時点において任意の問題を解決するのに関連することが知られていることを容認するものではない。
【0064】
上記に引用される全ての出版物の開示は、個々に参照されることにより各々が援用される範囲で、各々の全体が、参照により明らかに本明細書に援用される。
【0065】
白血病に対して個体を診断すると共にワクチン接種を行う方法の特定の実施形態について説明および例証してきたが、当該技術分野に属する者には当然のことながら、本発明の主旨および原則から逸脱することなく、変形および変更が可能である。また当然のことながら、以下の請求の範囲は、本明細書に記載される本発明の一般的特徴および特定の特徴全て、および言語上の問題として含まれるといえる発明の範囲の告知全てを含むものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23
図24