(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、仕上槽には、仕上げ槽中の第2の洗浄剤組成物の量を検出するセンサが設けられ、センサにより第2の洗浄剤組成物の量が所定量以下になったときに、水分離器から仕上槽へと第1の成分が供給される、請求項4に記載の洗浄システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の洗浄システムにおいて用いられている、グリコールエーテル類及びフッ素系溶剤を含有する洗浄用溶媒組成物は共沸組成物であることから、蒸気成分はグリコールエーテル類及びフッ素系溶剤の両方を含有する組成である。このような組成を煮沸洗浄の溶剤として用い、リンス液として再利用するためには、共沸組成である混合溶媒からリンス液成分のみを分離しなければならないという問題があった。また、特許文献2における、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは構造の中に塩素を含んでいることから、環境への影響などが懸念される問題がある。
【0008】
よって、本発明は、煮沸洗浄を含む洗浄システムにおいて、共沸しない混合溶剤を用いた簡便な洗浄システム及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、相溶するが、共沸しない混合溶剤を用いた洗浄システムであって、混合溶剤を入れる煮沸槽と、煮沸槽から発生する蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して、煮沸槽から発生する蒸気成分を抽出して、溶剤として再利用する水分離器とを有し、該蒸気が、混合溶剤のうちの沸点が低い溶剤である洗浄システムが、前記の問題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0010】
本発明は以下の構成を有する。
[1]第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムであって、
第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、
水分離器により抽出された第1の成分は煮沸槽に供給されることを特徴とする、洗浄システム。
[2]第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、第1の成分を含み、かつ第2の成分は含まないリンス液を収容し、被洗浄物が浸漬されてリンスされるリンス槽と、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムであって、
第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、
水分離器により抽出された第1の成分はリンス槽に供給されることを特徴とする、洗浄システム。
[3]第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、第1の成分を含み、かつ第2の成分は含まないリンス液を収容し、被洗浄物が浸漬されてリンスされるリンス槽と、第1の成分を含む第2の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物に接触させる第1の成分の蒸気を発生させる仕上槽と、煮沸槽または仕上槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムであって、
第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、
水分離器により抽出された第1の成分はリンス槽に供給されることを特徴とする、洗浄システム。
[4]さらに、煮沸槽から回収した汚れた洗浄剤組成物を加熱して第1の成分の蒸気を発生させる蒸留再生装置を備え、蒸留再生装置には、発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部が設けられ、回収部により回収された回収液が水分離器に供給されることを特徴とする、[3]の洗浄システム。
[5]さらに、仕上槽には、仕上げ槽中の第2の洗浄剤組成物の量を検出するセンサが設けられ、センサにより第2の洗浄剤組成物の量が所定量以下になったときに、水分離器から仕上槽へと第1の成分が供給される、[4]の洗浄システム。
[6]水分離器は、比重分離により第1の成分を抽出することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかの洗浄システム。
[7][1]の洗浄システムを用いた洗浄方法であって、
(1A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、
(1B)被洗浄物を第1の成分の蒸気に接触させて、蒸気洗浄する工程と
を含む、洗浄方法。
[8]工程(1A)の後で、(1A’)第1の成分でシャワー洗浄する工程
を含む、[7]の洗浄方法。
[9][2]の洗浄システムを用いた洗浄方法であって、
(2A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、
(2B)被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程と、
(2C)被洗浄物を第1の成分の蒸気に接触させて、蒸気洗浄する工程と
を含む、洗浄方法。
[10][3]〜[5]のいずれかの洗浄システムを用いた洗浄方法であって、
(3A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、
(3B)被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程と、
(3C)被洗浄物を仕上槽の上部に置いて、第1の成分の蒸気に接触させて、蒸気洗浄する工程と
を含む、洗浄方法。
[11]第1の成分が、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロエーテルからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤であり、
第2の成分が、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル、パラフィン系炭化水素、又は単環式モノテルペンである、[1]〜[6]のいずれかの洗浄システム。
[12]第1の成分が、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロエーテルからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤であり、
第2の成分が、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル、パラフィン系炭化水素、又は単環式モノテルペンである、[7]〜[10]のいずれかの洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、煮沸洗浄を含む洗浄システムにおいて、共沸しない混合溶剤を用いた簡便な洗浄システム及び洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.洗浄剤組成物
本発明における洗浄システムである、洗浄システム1、洗浄システム2及び洗浄システム3(以下、これらをまとめて「洗浄システム」という場合がある。)で用いられる、第1の洗浄剤組成物、第2の洗浄剤組成物及びリンス液について説明する。
【0014】
第1の洗浄剤組成物は、第1の成分と第2の成分とを含み、第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸しない。「相溶」とは、2種類または多種類の物質が相互に親和性を有し、溶液または混和物を形成する状態をいい、純物質の2つ以上の相から出発し、拡散混合して一様な液体になることをいう。第1の洗浄剤組成物は、後述する洗浄システム1〜3において、煮沸槽に収容される洗浄液である。第1の洗浄剤組成物は、第1の成分及び第2の成分からなるのが好ましい。
【0015】
第1の洗浄剤組成物は相溶することから、混合された1液の状態で取り扱えるため、複数の液を利用する手間がない点で好ましい。また、第1の成分及び第2の成分は相溶するため、煮沸洗浄における洗浄効果が、第1の成分の単独の場合及び第2の成分の単独の場合と比較して相乗的に向上する。また、第1の洗浄剤組成物は共沸しないため、発生する蒸気の成分は第1の成分のみであることができる。そのため、後述する洗浄システム1において、第1の成分の蒸気は回収部及び水分離器を介して、第1の成分の液体として煮沸槽に戻されるため、蒸気になった第1の成分の再利用が可能である。また、後述する洗浄システム2及び洗浄システム3において、第1の成分の蒸気は回収部及び水分離器を介して、第1の成分の液体としてリンス槽又は仕上げ槽に戻されるため、蒸気成分となった第1の成分の再利用が可能である。また、蒸気となった第1の成分を再利用できることから、煮沸洗浄及び蒸気洗浄を、長い時間及び良好な状態で、同一の装置で行うことができる。
【0016】
第2の洗浄剤組成物は、第1の成分を含む。第2の洗浄剤組成物は、後述する洗浄システム3において、仕上槽に収容される洗浄剤である。第2の洗浄剤組成物は、第2の成分を含んでいてもよい。すなわち、第2の洗浄剤組成物は、前記第1の洗浄剤組成物であってもよい。第2の洗浄剤組成物は、第1の成分からなるのが好ましい。
【0017】
リンス液は、第1の成分を含み、かつ第2の成分は含まない。リンス液は、後述する洗浄システム2及び洗浄システム3において、リンス槽に収容される洗浄液である。第2の洗浄剤組成物は、第1の成分を含む限り特に限定されず、第2の成分を含んでいてもよい。より精密洗浄に適していることから、第2の洗浄剤組成物は、第1の成分を含み、かつ第2の成分を含まない、すなわち、第1の成分からなるのが好ましい。
【0018】
(1)第1の成分
第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きい。
【0019】
第1の成分は、煮沸洗浄、蒸気洗浄及びリンス洗浄の洗浄成分である。第1の成分の沸点は、好ましくは40℃〜79℃であり、より好ましくは40〜65℃である。第1の成分の沸点が、40〜79℃の範囲であれば、耐熱性に劣る樹脂及び高温で変色する銅に対する、蒸気洗浄や蒸気リンスのために有効である。
【0020】
第1の成分は、蒸気比重が空気よりも大きい。第1の成分は、蒸気比重が空気以下であると、第1の成分の蒸気が洗浄システムの系外へより放出されてしまう。第1の成分の蒸気比重は、空気の蒸気比重を1とした場合、好ましくは4〜7であり、より好ましくは5〜6である。第1の成分の蒸気比重が4〜7であれば、第1の成分の蒸気が洗浄システムの系外へ放出されてしまうことがより低減される傾向がある。
【0021】
21℃での水に対する第1の成分の溶解度は、特に限定されず、3g/L以下であることが好ましく、2g/L以下であるのがより好ましい。21℃での水に対する第1の成分の溶解度の下限は、0g/Lであることができ、0.1g/Lであるのが好ましい。21℃での水に対する第1の成分の溶解度が、3g/L以下である場合、水分離器による第1の成分の再利用効率がより高くなる傾向がある。
【0022】
第1の成分は、上記した特性を有し、洗浄剤に用いられている成分であれば特に限定されないが、HFC及びHFEからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤が好ましい。これらは、単独で使用しても、1以上のHFC及び1以上のHFEの混合物を使用してもよい。
【0023】
HFCは、炭素原子、フッ素原子及び水素原子からなる化合物である。HFCは、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(C
4H
5F
5、地球温暖化係数700、沸点40℃)、ヘプタフルオロシクロペンタン(C
5H
3F
7、地球温暖化係数250、沸点82.5℃)等が挙げられ、比較的地球温暖化係数が低い点で、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンが好ましい。1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンの市販品は、日本ソルベイ社製のソルカン(登録商標)365mfc、アルケマ社製のフォラン(登録商標)365mfc、フォラン(登録商標)365mfc/227ea等が挙げられる。また、ヘプタフルオロシクロペンタンの市販品は、日本ゼオン社製のゼオローラ(登録商標)H等が挙げられる。
【0024】
HFEは、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(−O−)からなる化合物である。HFEは、メチルノナフルオロn−ブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物である住友スリーエム社製ノベックHFE7100(沸点61℃、地球温暖化係数297)、エチルノナフルオロn−ブチルエーテルとエチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物であるノベックHFE7200(沸点76℃、地球温暖化係数59)、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンである旭硝子製AE3000(HFE−347pcf)(沸点56℃、地球温暖化係数530)、主成分を1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンとするノベックHFE7300(沸点98℃、地球温暖化係数210)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタン等が挙げられる。HFEは、メチルノナフルオロn−ブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロn−ブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロn−ブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物、及び、エチルノナフルオロn−ブチルエーテルとエチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物が好ましく、メチルノナフルオロイソブチルエーテルとメチルノナフルオロn−ブチルエーテルとの混合物がより好ましい。
【0025】
以上より、第1の成分は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、及び、メチルノナフルオロイソブチルエーテルとメチルノナフルオロn−ブチルエーテルとの混合物が特に好ましい。
【0026】
第1の成分は、単独で用いても、複数の組合せを用いてもよい。
【0027】
(2)第2の成分
第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有する成分である。
第2の成分は、洗浄システムにおいて、煮沸洗浄における洗浄成分である。
【0028】
第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50〜80℃高い沸点を有する成分であるのが好ましい。第2の成分の沸点と第1の成分の沸点との差が、50℃未満である場合、煮沸洗浄や蒸気洗浄の際に、第1の成分の蒸気のみを効率よく発生させることができない。第2の成分の沸点は、80〜250℃であるのがより好ましく、150〜200℃であるのが更に好ましい。
なお、前記した第2の成分について、ある第1の成分の沸点よりも50℃高い沸点を有する成分ではない場合、当該第1の成分の沸点よりも50℃高い沸点を有する成分ではない成分と、当該第1の成分の沸点よりも50℃以上高い成分との混合物とすることで、第2の成分としてもよい。
【0029】
第2の成分として、上記した特性を有し、洗浄剤に用いられている成分であれば特に限定されないが、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル、パラフィン系炭化水素又は単環式モノテルペンが好ましい。
【0030】
C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステルは、炭素数12〜20の不飽和脂肪酸の炭素数1〜8のアルキルエステルが挙げられる。炭素数12〜20の不飽和脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びエレオステアリン酸等が挙げられる。炭素数12〜20の不飽和脂肪酸は、炭素数12〜18の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜18の不飽和脂肪酸が特に好ましい。炭素数1〜8のアルキルエステルのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル等が挙げられ、メチルが好ましい。
【0031】
C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステルの具体例は、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸アリル、オレイン酸イソアミル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸−2−エチルヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸アリル、リノール酸プロピル、リノール酸イソプロピル、リノール酸ブチル、リノール酸イソブチル、リノレン酸メチル、リノレン酸エチル、リノレン酸ブチル、リノレン酸イソブチル、リノレン酸−tert−ブチル等が挙げられる。
【0032】
本発明において、C
12〜C
18不飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物が好ましく、C
12〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルの混合物がより好ましく、C
14〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステル及びC
16〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルが更に好ましい。C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物は、市販品として、カネダ株式会社製の植物油ベースソルベント「ベジソル(登録商標)MT」、「ベジソル(登録商標)CM」、「ベジソル(登録商標)MM」、「ベジソル(登録商標)MB」、及び「ベジソル(登録商標)PR」が挙げられる。
【0033】
パラフィン系炭化水素は、直鎖状の脂肪族炭化水素であり、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−テトラデカン、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−テトラコサン、及びn−ヘキサコサン等が挙げられる。パラフィン系炭化水素は、市販品として、NSクリーン100JX(日鉱日石エネルギー株式会社)が挙げられる。
【0034】
単環式モノテルペンとして、メンタン(C
10H
20)、d−リモネン(C
10H
16)、l−リモネン(C
10H
16)、フェランドレン(C
10H
16)、テルピノレン(C
10H
16)、テルピネン(C
10H
16)、α−ピネン(C
10H
16)、β−ピネン(C
10H
16)、シメン(C
10H
14)等が挙げられ、d−リモネンが好ましい。これらは、単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。
【0035】
第2の成分として、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステルの混合物がより好ましく、C
14〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルとC
16〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルとの混合物が特に好ましい。
【0036】
第2の成分は、単独で用いても、複数の組合せを用いてもよい。
【0037】
したがって、第1の洗浄剤組成物の好ましい組合せは、以下のとおりである。
(1)第1の成分が、HFC及びHFEからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤であり、第2の成分が、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル、パラフィン系炭化水素、又は単環式モノテルペンである。
(2)第1の成分が、HFC及びHFEからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤であり、第2の成分が、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステルである。
(3)第1の成分が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、又は、メチルノナフルオロn−ブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物であり、第2の成分が、C
14〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルとC
16〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルの混合物である。
【0038】
また、第2の洗浄剤組成物及びリンス液における第1の成分として、HFC及びHFEからなる群より選択される1種以上のフッ素系溶剤が好ましく、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、又は、メチルノナフルオロn−ブチルエーテルとメチルノナフルオロイソブチルエーテルとの混合物が好ましい。なお、第2の洗浄剤組成物が第2の成分を含む場合、第2の洗浄剤組成物は、好ましいものも含め、第1の洗浄剤組成物において前記したとおりである。
【0039】
第1の洗浄剤組成物において、第1の成分及び第2の成分の重量比(第1の成分:第2の成分)は、特に限定されず、15:85〜99:1であるのが好ましく、20:80〜99:1であるのがより好ましく、50:50〜70:30であるのがさらに好ましい。このような範囲であれば、共沸はしないが、相溶する組成であり、かつ煮沸洗浄において、油汚れを十分に洗浄除去できる。例えば、第1の成分がフッ素系溶剤であり、第2の成分がC
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル類である場合、フッ素溶剤のみでは、油汚れに対する洗浄力が不足するため、油汚れの洗浄除去ができない。また、C
12〜C
20不飽和脂肪酸アルキルエステル類のみでは、油汚れに対する洗浄力はあるものの、沸点が高くかつ油を除去した被洗浄物の表面に残留してしまい、新たな汚れとなってしまうという欠点がある。
【0040】
(3)更なる成分
第1の洗浄剤組成物、第2の洗浄剤組成物及びリンス液は、本発明の効果を損なわない限り、更なる成分を含んでいてもよい。このような成分として、安定剤、酸化防止剤、防錆剤が挙げられる。更なる成分は、第1の成分とは共沸しないが、第2の成分とは共沸してもよい。第1の洗浄剤組成物、第2の洗浄剤組成物及びリンス液が更なる成分を含む場合、更なる成分の含有量は、第1の成分及び第2の成分の合計100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましく、1〜5重量部が特に好ましい。これらの成分は、洗浄剤分野で通常用いられている成分が挙げられる。なお、リンス液が更なる成分を含む場合、前記の更なる成分含有量は、第1の成分の100重量に対する量である。
【0041】
第1の洗浄剤組成物、第2の洗浄剤組成物及びリンス液は、第1の成分、第2の成分及び更なる成分を混合することにより製造することができる。
【0042】
2.洗浄システム
洗浄システムについて説明する。
(1)洗浄システム1
洗浄システム1は、第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムであって、第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、水分離器により抽出された第1の成分は煮沸槽に供給されることを特徴とする、洗浄システムである。
【0043】
洗浄システム1の概略を
図1に示す。洗浄システム1は、好ましくは、第1の洗浄剤組成物(
図1中、1)が収容される煮沸槽(
図1中、11)と、煮沸槽から発生する蒸気(
図1中、2)を液化して回収する回収部(例えば、
図1中、23及び24)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して第1の成分を抽出して、抽出された第1の成分を煮沸槽に供給する水分離器(
図1中、21)を備えている。
図1中、実線矢印は第1の成分の流れを示す。
【0044】
煮沸槽は被洗浄物を煮沸洗浄するための槽である。煮沸槽は、洗浄剤組成物の温度を第1の成分の沸点以上に維持するためのヒーター(
図1中、22)を備えている。煮沸槽は、洗浄液に超音波振動を与える超音波発振機を有していてもよい。
【0045】
第1の洗浄剤組成物を煮沸槽に投入すると、煮沸槽内の液相である第1の洗浄剤組成物に含まれる第1の成分及び第2の成分は相溶している。煮沸槽から発生する蒸気は、第1の成分の蒸気である。よって、煮沸槽に備えられているヒーターにより、煮沸槽から第1の成分の蒸気が発生する温度、例えば、第1の成分の沸点以上第2の成分の沸点未満の温度に調整される。煮沸槽に投入する洗浄剤組成物の量は、煮沸槽から蒸気を発生させ、かつ被洗浄物を煮沸洗浄可能な量であれば特に限定されない。なお、洗浄システム1において、煮沸槽にポンプ及びフィルター回路を敷設することができる。洗浄システム1がポンプ及びフィルター回路を備えることにより、被洗浄物から除去される汚れが固形物である場合、煮沸槽に汚れが蓄積することが回避される傾向がある。
【0046】
煮沸槽の上部には、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部が設けられている。回収部は、第1の成分の蒸気を液化する手段及び水分離器に液化した成分を供給する手段を備えていれば特に限定されない。
【0047】
第1の成分の蒸気を液化する手段は、特に限定されないが、冷却パイプ(
図1中、23)が好ましい。冷却パイプは、第1の成分の蒸気の温度を下げて、液化する手段である。洗浄システムが冷却パイプを備えることにより、第1の成分が洗浄システムから外部へ放出することがより低減される。
水分離器に液化した第1の成分を供給する手段は、特に限定されないが、樋(
図1中、24)が好ましい。樋は、冷却パイプ等に露滴する水が洗浄システムの各槽に混入することを目的として、冷却パイプ等により液化された第1の成分を、水分離器に供給するために設けられる。ここで、第1の成分の蒸気を液化する手段により液化され、水分離器に供給される第1の成分の液体を回収液という。
そして、第1の成分は、後述する水分離器により抽出されて、再生液として再利用される。
【0048】
水分離器は、回収液から水を分離して第1の成分を抽出して煮沸槽に戻すために設けられる。水分離器による水分離の手段は、回収液から水を分離して、第1の成分を抽出できるものであれば特に限定されず、比重分離、膜分離等が挙げられる。水分離器は、比重分離により第1の成分を抽出するのが好ましい。
【0049】
回収部が冷却パイプ及び樋を含み、水分離器による水分離の手段が比重分離である場合の水分離器の構造の例を
図2に示す。水分離器には、樋から回収液が導入される。水分離器において、回収液は、水の相である上層液(
図2中、5)と、第1の成分の相である下層液(
図2中、6)とに比重分離され、第1の成分が抽出される。そして、上層液は廃棄され、下層液は第1の成分の液体として煮沸槽に供給される。通常、第1の成分の比重は水の比重よりも大きいことから、第1の成分が水に微量溶解するものであっても、水分離器により水と第1の成分とを比重分離することが可能である。なお、この水分離器には、第1の成分の蒸気が水分離器の外に放出されることを防止する目的で、冷却パイプが設置されていてもよい。
【0050】
洗浄システム1には、図示していないが、第1の成分によるシャワー洗浄のための供給手段を有していてもよい。被洗浄物を煮沸洗浄及び蒸気洗浄した後に、第1の成分でシャワー洗浄して被洗浄物表面に第1の成分を衝突させることで、洗浄効果がより向上する傾向がある。
【0051】
<洗浄システム1を用いた洗浄方法>
洗浄システム1を用いた洗浄方法は、以下の工程:(1A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、(1B)被洗浄物を蒸気相に置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
【0052】
工程(1A)は、被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程である。
図1では、被洗浄物(
図1中、S)を洗浄開始のS1の位置から、S2の位置に移動して、第1の洗浄剤組成物1に浸漬する。工程(1A)において、被洗浄物は、第1の成分の蒸気と、第1の成分及び第2の成分が相溶している第1の洗浄剤組成物と接触する。煮沸槽において、第1の洗浄剤組成物は、第1の成分が沸騰状態となり、かつ第2の成分が沸騰状態とならないように加熱される。すなわち、煮沸洗浄において、洗浄剤組成物の温度が、第1の成分の沸点以上第2の成分の沸点未満の範囲の温度になるように、ヒーターなどの加熱手段によって加熱される。
【0053】
煮沸洗浄において、洗浄効果を高めるために、浸漬と同時に、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましく、超音波振動による手段を組み合わせることがより好ましい。
【0054】
第1の洗浄剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する煮沸洗浄時間は、被洗浄物に付着した油汚れを洗浄除去できる時間であれば特に制限されない。例えば、超音波振動を組み合わせた浸漬による方法における、油汚れが付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄時間は、特に限定されないが、5秒間〜5分間であるのが好ましく、10秒間〜1分間であるのがより好ましい。浸漬による方法における、油汚れが付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄時間は、特に限定されないが、10分〜5時間であるのが好ましく、30分〜2時間であるのがより好ましい。前記の洗浄時間の範囲内であれば、洗浄効果が十分であり、付着した油を被洗浄物から十分に除去できる。工程(1A)により、被洗浄物から油汚れが除去される。
【0055】
工程(1A)の後、被洗浄物の表面に付着する第1の洗浄剤組成物の除去をさらに促進するために、被洗浄物を上下左右に揺動するか、第1の成分でシャワー洗浄して被洗浄物表面に第1の成分を衝突させる等の手段を併用してもよい。洗浄システム1を用いた洗浄方法は、工程(1A)の後で、(1A’)第1の成分で被洗浄物をシャワー洗浄する工程を含むのが好ましい。
【0056】
工程(1B)は、被洗浄物を蒸気相に置いて、蒸気洗浄する工程である。
図1では、被洗浄物をS2の位置から、煮沸槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気相に置く。蒸気相は、第1の成分の蒸気からなる。工程(1B)では、被洗浄物を煮沸槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄が行われる。蒸気洗浄の時間は、特に限定されないが1〜60分とすることができる。これにより、被洗浄物に付着した第1の洗浄剤組成物及び汚れ成分と、蒸気相の成分とが交換される。また、被洗浄物が単純形状(直方体、立方体、球状等)である場合は、工程(1B)において、被洗浄物と第1の成分とが接触することから、蒸気洗浄する工程によってリンス(蒸気リンス)が行われる。そののち、被洗浄物を洗浄終了のS5の位置に移動して、洗浄を終了する。
【0057】
(2)洗浄システム2
洗浄システム2は、第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、第1の成分を含み、かつ第2の成分は含まないリンス液を収容し、被洗浄物が浸漬されてリンスされるリンス槽と、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器と、を備える洗浄システムであって、第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、水分離器により抽出された第1の成分はリンス槽に供給されることを特徴とする、洗浄システムである。
【0058】
洗浄システム2の概略を
図3に示す。洗浄システム2は、好ましくは、第1の洗浄剤組成物(
図3中、1)が収容される煮沸槽(
図3中、11)と、リンス液(
図3中、3)が収容されるリンス槽(
図3中、12)と、煮沸槽から発生する蒸気(
図3中、2)を回収液化して回収部(例えば、
図3中、23及び24)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して第1の成分を抽出して、抽出された第1の成分をリンス槽に供給する水分離器(
図3中、21)を備えている。洗浄システム2は、水分離器から第1の成分がリンス槽に戻されることを除き、更にリンス槽を備える洗浄システム1に相当する。
図3中、実線矢印は第1の成分の流れを示す。
【0059】
洗浄システム2における煮沸槽については、好ましいものも含め、洗浄システム1で前記したとおりである。
リンス槽に収容される液体は、リンス液である。リンス液は、第1の成分を含み、かつ第2の成分を含まない。リンス槽は、リンス液に超音波振動を与える超音波発振機(
図3中、25)を備えていてもよい。また、図示していないが、リンス槽は、リンス液の温度を調節するためのヒーターを備えていてもよい。なお、第1の成分の蒸気の発生によるリンス液の減少を防ぐ観点から、リンス槽中のリンス液の温度は、リンス液の沸点未満であるのが好ましい。具体的には、リンス槽中のリンス液の温度は、100℃未満であるのがより好ましく、61℃未満であるのがさらに好ましく、40℃未満であるのが特に好ましい。洗浄システム2において、被洗浄物から除去される汚れが固形物である場合、汚れの蓄積を回避する目的で、リンス槽にポンプ及びフィルター回路を敷設してもよい。
【0060】
煮沸槽から発生する蒸気は、第1の成分である。また、煮沸槽の上部には、前記洗浄システム1で前記した回収部及び水分離器が設けられている。回収部は、冷却パイプ(
図3中、23)及び樋(
図3中、24)を備えるのが好ましい。洗浄システム2において、水分離器により抽出された第1の成分はリンス槽に供給される。洗浄システム2において、蒸気の成分は第1の成分であるから、蒸気の成分を液化して再利用する際に、リンス槽にリンス液の主成分である第1の成分のみが供給される。また、リンス槽の液面は、煮沸槽の液面よりも高く、リンス槽からオーバーフローしたリンス液が、煮沸槽に流入するようになっている。なお、リンス槽に投入するリンス液の量は、リンス槽に流入する再生液の量及びオーバーフローするリンス液の量を考慮して、被洗浄物をリンス可能な量であれば特に限定されない。
【0061】
<洗浄システム2を用いた洗浄方法>
洗浄システム2を用いた洗浄方法は、以下の工程:(2A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、(2B)被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程と、(2C)被洗浄物を蒸気相に置いて、蒸気洗浄する工程とを含む。
【0062】
工程(2A)は、被洗浄物(
図2中、S)を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程である。工程(2A)における条件は、好ましいものも含め、工程(1A)で前記したとおりである。
【0063】
工程(2B)は、被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程である。
図3では、被洗浄物をS2の位置から、S3の位置に移動して、リンス液2に浸漬する。リンス槽に浸漬する時間、すなわちリンス液及び被洗浄物の接触時間に相当するリンス時間は、特に制限されず、1秒間〜60分間であるのが好ましく、10秒〜30分間であるのがより好ましい。工程(2B)により、被洗浄物にわずかに付着した第1の洗浄剤組成物及び汚れ成分と、リンス液とが交換される。
【0064】
工程(2C)は、被洗浄物を蒸気相に置いて、蒸気洗浄する工程である。
図3では、被洗浄物をS3の位置から、リンス槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気相に置く。そして、被洗浄物を、煮沸槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄を行う。工程(2C)における条件は、好ましいものも含め、工程(1B)で前記したとおりである。
【0065】
(3)洗浄システム3
洗浄システム3は、第1の成分と第2の成分とを含む第1の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽と、第1の成分を含み、かつ第2の成分は含まないリンス液を収容し、被洗浄物が浸漬されてリンスされるリンス槽と、第1の成分を含む第2の洗浄剤組成物を収容し、被洗浄物に接触させる第1の成分の蒸気を発生させる仕上槽と、煮沸槽または仕上槽により発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出して煮沸槽に戻す水分離器と、を備える洗浄システムであって、第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、水分離器により抽出された第1の成分はリンス槽に供給されることを特徴とする、洗浄システムである。
【0066】
洗浄システム3の概略を
図4に示す。洗浄システム3は、好ましくは、第1の洗浄剤組成物(
図4中、1)が収容される煮沸槽(
図4中、11)と、リンス液(
図4中、3)が収容されるリンス槽(
図4中、12)と、第2の洗浄剤組成物(
図4中、4)が収容される仕上槽(
図4中、13)と、煮沸槽及び仕上槽からから発生する蒸気(
図4中、2)を液化して、回収する回収部(例えば、
図4中、23及び24)と、回収部により回収された回収液から、水を分離して第1の成分を抽出して、抽出された第1の成分をリンス槽に供給する水分離器(
図4中、21)を備えている。洗浄システム3は、更に仕上槽を備える洗浄システム2に相当する。
図4中、実線矢印は第1の成分の流れを示す。
【0067】
洗浄システム3における煮沸槽及びリンス槽については、洗浄システム1及び洗浄システム2で前記したとおりである。仕上槽は被洗浄物を蒸気洗浄するための槽である。仕上槽は、第2の洗浄剤組成物の温度を第1の成分の沸点以上に維持するためのヒーター(
図4中、26)を備えている。仕上槽に収容される液体は、第2の洗浄剤組成物である。
【0068】
仕上槽から発生する蒸気は、第1の成分である。そのため、洗浄システム3では、煮沸槽及び仕上槽から発生する蒸気の成分は、いずれも第1の成分であるが、煮沸槽及び仕上槽に収容される洗浄剤組成物は、同一であっても、互いに異なっていてもよい。洗浄システム3における各槽(煮沸槽、リンス槽、仕上槽)の上部には、洗浄システム1で挙げられた回収部及び水分離器が設けられている。洗浄システム3において、水分離器によって抽出される第1の成分は、リンス槽に流入する。また、リンス槽の液面は、煮沸槽の液面よりも高く、リンス液槽からオーバーフローしたリンス液が、煮沸槽に流入するようになっている。さらに、煮沸槽の液面は、仕上槽の液面よりも高く、煮沸槽からオーバーフローした洗浄剤組成物が、仕上槽に流入するようになっている。なお、仕上槽に投入する液体の量は、煮沸槽からオーバーフローする液体の量を考慮して、蒸気を発生させ、かつ被洗浄物を蒸気洗浄することが可能な量であれば特に限定されない。
【0069】
<蒸留再生装置>
洗浄システム3において、煮沸槽に含まれる第1の成分の清浄を目的して、蒸留再生装置を備えることが好ましい。よって、洗浄システム3が、さらに、煮沸槽から回収した汚れた洗浄剤組成物を加熱して第1の成分の蒸気を発生させる蒸留再生装置を備え、蒸留再生装置には、発生した第1の成分の蒸気を液化して回収する回収部が設けられ、回収部により回収された回収液が水分離器に供給される、洗浄システムであるのが好ましい。
【0070】
洗浄システム3が蒸留再生装置を備えることにより、汚れが大量に付着した被洗浄物を大量に洗浄する場合及び長時間の洗浄を行う場合であっても、煮沸槽の洗浄剤組成物を清浄に保ち、清浄な第1の成分の蒸気を得ることができる傾向がある。よって、精密洗浄が要求される物品(例えば、電気・電子部品)を洗浄した場合であっても、洗浄後の物品において、不具合が発生する可能性は極めて低減される傾向がある。
【0071】
また、洗浄システム3が蒸留再生装置を備える場合、さらに水分離器が仕上槽に自動開閉弁を通じて接続されているのが好ましい。すなわち、洗浄システム3が蒸留再生装置を備える場合、洗浄システム3は、さらに、仕上槽には、仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の量を検出するセンサが設けられ、センサにより第2の洗浄剤組成物の量が所定量以下になったときに、水分離器から仕上槽へと第1の成分が供給されるのが好ましい。これにより、仕上槽の液面に応じて、再利用される第1の成分が供給され、仕上槽に収容される洗浄剤が存在しない、いわゆる空焚きの発生を抑えることができ、継続して清浄な第1の成分の蒸気を仕上槽から発生させることができる。
【0072】
仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の量を検出するセンサは、仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の液面を検出するための液面検出スイッチ等が挙げられる。また、水分離器により抽出された第1の成分を、リンス槽又は仕上槽に供給することは、自動開閉弁によって制御することができる。
【0073】
さらに蒸留再生装置及び液面検出スイッチを備える好ましい洗浄システム3の概略を
図5に示す。好ましい洗浄システム3は、前記洗浄システム3に加えて、煮沸槽から汚れを含む第1の洗浄剤組成物から、第1の成分と汚れ及び第2の成分とを分離して、水分離器に第1の成分を供給するための蒸留再生装置(
図5中、14)と、自動開閉弁(
図5中、27)と、仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の液面を検出するための液面検出スイッチ(
図5中、28)とを備える。なお、
図5中、煮沸槽(
図5中、11)から蒸留再生装置(
図5中、14)への実線矢印は第1の洗浄剤組成物の流れを示す。また、
図5中、蒸留再生装置(
図5中、14)から、水分離器(
図5中、21)及び自動開閉弁(
図5中、27)を経由する仕上槽(
図5中、13)への実線矢印は第1の成分の流れを示す。
【0074】
蒸留再生装置は、煮沸槽(
図5中、11)から汚れを含む第1の洗浄剤組成物が供給され、汚れを含む第1の洗浄剤組成物から、第1の成分と汚れ及び第2の成分とを分離する装置である。蒸留再生装置は汚れを含んだ第1の洗浄剤組成物を加熱するためのヒーター(
図5中、22)と、蒸留再生装置の上部に回収部を有する。そして、第2の成分、第1の成分、及び汚れの沸点差を利用して、汚れを含んだ第1の洗浄剤組成物から第1の成分の蒸気のみを発生させ、回収部により、第1の成分の蒸気が液化され、回収される。回収部により、回収された回収液は水分離器(
図5中、21)に導入される。回収部は、好ましいものを含み、洗浄システム1で前記したとおりである。
【0075】
液面検知スイッチは、仕上槽における第2の洗浄剤組成物の液面が所定の位置にあるか否かを検出するスイッチであり、これにより仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の量が所定量以下であるか否かが検出される。仕上槽から発生した第1の成分の蒸気は、回収部により回収され、水分離器で第1の成分が抽出され、リンス槽に供給される。しかし、第1の成分の蒸気の一部は洗浄システムの系外に放出される。よって、仕上槽の第1の成分は、洗浄システム3の稼動により減少する。なお、仕上槽における第2の洗浄剤組成物の液面(すなわち、仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の量)を検出することにより、蒸気として減少した第1の成分の量を測定することができる。
【0076】
自動開閉弁は、水分離器により抽出された第1の成分を、リンス槽又は仕上槽に供給することを制御するための弁である。仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の量が所定量以下になった場合、水分離器と仕上槽との間の自動開閉弁が開かれる。これにより、水分離器から仕上槽へと第1の成分が供給される。また、自動開閉弁が閉じているときは、水分離器からリンス槽へと第1の成分が供給される。自動開閉弁を開くための仕上槽中の第2の洗浄剤組成物の所定量とは、仕上槽の液相の量が少なくなり、仕上槽の下部に備えられたヒーターでの加熱が空焚きにならない量を維持する量である。なお、自動開閉弁の位置は特に限定されず、水分離器と仕上槽を接続するパイプが自動開閉弁を備えていてもよく、水分離器又は仕上槽が自動開閉弁を備えていてもよい。
【0077】
<洗浄システム3を用いた洗浄方法>
本発明の洗浄システム3を用いた洗浄方法は、以下の工程:(3A)被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程と、(3B)被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程と、(3C)被洗浄物を仕上槽の上部において、蒸気洗浄する工程とを含む。
【0078】
工程(3A)は、被洗浄物を煮沸槽に浸漬して、煮沸洗浄する工程である。工程(3A)における条件は、好ましいものも含め、洗浄システム1で記載したとおりである。
工程(3B)は、被洗浄物をリンス槽に浸漬して、リンスする工程である。工程(3B)における条件は、好ましいものも含め、洗浄システム2で記載したとおりである。
工程(3C)は、被洗浄物を仕上槽の上部に置いて、蒸気洗浄する工程である。
図4では、被洗浄物をS3の位置から、仕上槽の上部であるS4の位置に移動して、蒸気相に置く。そして、被洗浄物を、仕上槽及び煮沸槽から発生する蒸気と接触させることにより、蒸気洗浄を行う。仕上槽に備えられているヒーターは、仕上槽から第1の成分の蒸気が発生する温度、例えば、第1の成分の沸点以上第2の成分の沸点未満の温度に調整される。ここで、蒸気相は、仕上槽から発生する蒸気及び煮沸槽から発生する蒸気からなるが、いずれも第1の成分の蒸気である。蒸気洗浄の条件は、工程(1B)で記載したとおりである。
【0079】
なお、本発明の洗浄システムを用いた洗浄方法は、被洗浄物を順次移動させるための搬送機構によって達成してもよい。
図1、
図3、
図4及び
図5中、点線は、本発明の洗浄システムにおける被洗浄物の移動経路を示す。洗浄システム1の場合は、搬送機構により、被洗浄物が、
図1中S1(洗浄開始前)、S2(煮沸槽内)、S4(蒸気相内)、S5(洗浄終了)の位置を順次移動するようになっている。また、洗浄システム2の場合は、被洗浄物が、
図3中S1(洗浄開始前)、S2(煮沸槽内)、S3(リンス槽内)S4(蒸気相内)、S5(洗浄終了)の位置を順次移動するようになっている。洗浄システム3の場合は、被洗浄物が、
図4及び
図5中S1(洗浄開始前)、S2(煮沸槽内)、S3(リンス槽内)S4(蒸気相内)、S5(洗浄終了)の位置を順次移動するようになっている。
【0080】
また、本発明の洗浄システム及び洗浄方法では、蒸気洗浄の後に、蒸気ラインを通過させることにより乾燥処理され、最終の仕上げを行うこともできる。
【0081】
3.被洗浄物及び洗浄除去対象物
本発明の洗浄システム及び洗浄方法は、油が付着した被洗浄物を洗浄するために用いることができる。本発明において、洗浄とは、油が付着した被洗浄物から、油を除去することをいう。本発明において、油としては、常温、例えば20℃において液体であり、水に溶解せず、粘性を感じるものであれば特に限定されないが、例えば鉱物油、フッ素オイル、及びシリコーンオイルが挙げられる。よって、第1の洗浄剤組成物の用途として、例えば、油により汚染された被洗浄物用の洗浄剤、例えば切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油、金属加工油、グリース、フラックス、樹脂、及びワックスにより汚染された被洗浄物用の洗浄剤(具体的には、フラックス洗浄剤や脱脂洗浄剤等)が挙げられる。
【0082】
鉱物油とは、天然の石油由来の油分で、精製蒸留されて得られる液状及びグリース状の化学物質である。鉱物油に含まれる成分として、例えばパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、並びにパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素及び芳香族系炭化水素からなる群より選択される2以上の炭化水素の混合物が挙げられる。これら炭化水素の具体例は上記の炭化水素系溶剤の具体例として挙げられた炭化水素が挙げられる。このような鉱物油は、市販品として、ユシロ化学工業株式会社製のユシロンオイルCX、出光興産株式会社製のアリソールエース、アイソールソフト、及びアイソール;ジャパンエナジー社製のニッコーホワイトN−10;エクソン化学社製エクソンD−40、及びエクソンナフサNo−5等が挙げられる。
【0083】
本発明において、フッ素オイルとは、ポリアルキルエーテル化合物における水素原子の一部又は全部をフッ素で置換した物質であり、塩素及び臭素等のハロゲン、リン、硫黄、及び窒素などの更なる原子を含んでいてもよい。フッ素オイルは、常温で液状又はグリース状である。本発明において、フッ素オイルは、例えば一般式(1):
CF
3CF
2CF
2O−(CF(CF
3)CF
2O)
x−CF
2CF
3 (1)
(式中、xは、1以上の整数である)、
一般式(2):
HOCH
2CF
2O−(CF
2CF
2O)
p−(CF
2O)
q−CF
2CH
2OH (2)
(式中、p及びqは、互いに独立して、1以上の整数である)、
又は、一般式(3):
F−(CF
2CF
2CF
2O)
y−CF
2CF
2O−CH
2OH (3)
(式中、yは、1以上の整数である)
で示される構造を有する。
【0084】
上記のフッ素オイルは、市販品として、例えばソルベイソレクシス社製のフォンブリン Y−LVAC、Y−HVAC、Y04、及びYR;NOKクリューバー社製のバリエルタ(BARRIERTA)J100フルード、バリエルタJ25フルード、バリエルタJ400フルード、バリエルタJ25V、バリエルタSJ07、バリエルタSJ15、及びバリエルタSJ30;デュポン株式会社製のクライトックス1506、クライトックス1514、及びクライトックス1525;ダイキン工業株式会社製のデムナムS−20等が挙げられる。第1の洗浄剤組成物は、フッ素オイルのなかで、一般式(1)及び(2)で示されるパーフルオロアルキルエーテルオイルに対して特に優れた洗浄効果を有する。
【0085】
本発明において、シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルであり、主にジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルの側鎖又は末端に、カルボキシル基、アミノ基、又はエポキシ基などの他の有機基を導入したものであってもよい。さらに、シリコーンオイルに増ちょう剤などの添加剤を加えたグリース状であってもよい。このようなシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン−メチルポリシロキサンなどが挙げられる。このようなシリコーンオイルとしては、市販品として、信越化学社製KF−96L−2CS、東レ・ダウコーニング社のDOW CORNING TORAY SH33M GREASEが挙げられる。
【0086】
第1の洗浄剤組成物を用いて洗浄される被洗浄物は、油が付着した、すなわち油により汚染された各種部品が挙げられる。このような部品として、金属加工物、電気・電子部品、光学部品、自動車部品、機械部品、半導体部品及び表示体部品等が挙げられ、これらは、いずれも精密洗浄が要求される部品である。なお、本発明の被洗浄物は、日常的なメンテナンス用、1日に1回〜2回洗浄される被洗浄物であるか、オーバーホール用、例えば6か月〜1年に1回洗浄される被洗浄物であってもよい。
【0087】
例えば、電気・電子部品としては、プリント基板、及びセラミック基板などの配線基板が挙げられる。光学部品としては、光学レンズ(例えばカメラ用のレンズ)及び光学レンズのための部品(例えばカメラ筐体)が挙げられる。自動車部品としては、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品が挙げられる。機械部品としては、真空ポンプ、半導体製造装置、洗浄装置、モーター、ファンなどの軸受、時計などの精密機械用部品などの軸受、並びに印刷機のローラー等の部品が挙げられる。これらの部品は、金属製又は樹脂製であり、その形状は板状部材に限らず、断面円形状や矩形状のパイプ状部材や長尺部材であったり、その他、複雑な形状を有する部材であったりする。なお、第1の洗浄剤組成物は、洗浄後の乾燥性に優れるため、プリント基板や各種樹脂製部品に付着した塵や埃もあわせて除去することができる。本発明において、被洗浄物は、金属加工物、光学レンズ、プリント基板、半導体部品及び表示体部品であるのが好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0089】
第1の洗浄剤組成物、第2の洗浄剤組成物及びリンス液のための成分として以下の成分を用いた。
(1)第1の成分
(1−1)HFC:1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(沸点40℃、蒸気密度比5.11)
(1−2)HFE:メチルノナフルオロイソブチルエーテル及びメチルノナフルオロn−ブチルエーテルの混合物(ノベックHFE7100、住友スリーエム社製、沸点61℃、蒸気密度比5〜6)
(2)第2の成分
(2−1)植物系脂肪酸エステル:C
14〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステル及びC
16〜C
18不飽和脂肪酸メチルエステルの混合物(カネダ化学社製植物油ベースソルベント ベジソル(登録商標)CM、沸点186℃、蒸気密度比1.0以下)
【0090】
洗浄剤1〜5を、表1で示される重量比で各成分を混合することにより調製した。なお、洗浄剤1及び2は相溶した。
【表1】
【0091】
被洗浄物は、以下の試験片1及び2を用いた。なお、金属加工油の試験片への付着量は2gであった。
試験片1:金属加工油として、ユシロンオイルCX(ユシロ化学製)に浸漬させたSUS板(50mm×50mm×2mmt)
試験片2:金属加工油として、東レ・ダウコーニング社のDOW CORNING TORAY SH33M GREASE(シリコーングリース)を塗布したSUS板(35mm×40mm×2mmt)
【0092】
試験例1 洗浄システム1を用いた洗浄試験
(1−1)実施例1
図1の洗浄システムと同等の煮沸槽及び水分離器を備えた洗浄システムにおいて、第1の洗浄剤組成物として洗浄剤1を用い、被洗浄物として試験片1を用いて、洗浄試験を行った。煮沸槽に第1の洗浄剤組成物を収容した。煮沸槽の第1の洗浄剤組成物を、加熱ヒーターで蒸気相が形成されるまで加熱した。ここで、蒸気相の成分は、冷却パイプによって液化し、液化した成分は、樋を通って回収され、回収液は水分離器に流入した。次いで、水分離器よって、蒸気相の成分が抽出され、抽出された蒸気相の成分は、煮沸槽に流入した。被洗浄物を煮沸槽に3分間浸漬させた。次いで、被洗浄物を引き上げて、蒸気相に置いて3分間蒸気洗浄を行った。試験後の被洗浄物の表面について、残留物の有無を目視により判定した。試験後の被洗浄物において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0093】
(1−2)比較例1
図1の洗浄システムと同等の煮沸槽及び水分離器を備えた洗浄システムにおいて、第1の洗浄剤組成物として洗浄剤3を用い、被洗浄物として試験片1を用いて、洗浄試験を行った。なお、洗浄剤3は、蒸気比重が空気よりも小さいので、加熱ヒーターで加熱しても、蒸気相が形成されなかった。よって、比較例1では、煮沸槽の第1の洗浄剤組成物の温度を100℃に加熱して試験を行った。煮沸槽に第1の洗浄剤組成物を収容した。加熱ヒーターで煮沸槽の第1の洗浄剤組成物の温度を100℃に加熱した。被洗浄物を煮沸槽に3分間浸漬させた。次いで、被洗浄物を引き上げて、3分間放置した。試験後の被洗浄物の表面について、残留物の有無を目視により判定した。試験後の被洗浄物の表面には、金属加工油の残留物が見られた。
【0094】
(1−3)比較例2
洗浄剤組成物として、洗浄剤4を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油の残留物が見られた。
【0095】
試験例2 洗浄システム2を用いた洗浄試験
(2−1)実施例2
図3の洗浄システムと同等の煮沸槽、リンス槽及び水分離器を備えた洗浄システムにおいて、第1の洗浄剤組成物として洗浄剤1を用い、被洗浄物として試験片1を用いて、洗浄試験を行った。煮沸槽に第1の洗浄剤組成物を収容した。リンス槽に洗浄剤1の第1の成分のみを収容した。煮沸槽の第1の洗浄剤組成物を、加熱ヒーターで蒸気相が形成されるまで加熱した。蒸気相の成分は、冷却パイプによって液化し、液化した成分は、樋を通って回収され、回収液は水分離器に流入した。次いで、水分離器よって、蒸気相の成分が抽出され、抽出された蒸気相の成分は、リンス槽に流入した。被洗浄物を煮沸槽に3分間浸漬させた。次いで、被洗浄物をリンス槽で3分間すすぎ、続いて、被洗浄物を引き上げて、リンス槽上部の蒸気相に置いて3分間蒸気洗浄を行った。試験後の被洗浄物の表面について、残留物の有無を目視により判定した。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0096】
(2−2)実施例3
被洗浄物として試験片2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0097】
(2−3)実施例4
第1の洗浄剤組成物として洗浄剤2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0098】
(2−4)実施例5
第1の洗浄剤組成物として洗浄剤2を用い、被洗浄物として試験片2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0099】
(2−5)比較例3
図3の洗浄システムと同等の煮沸槽、リンス槽及び水分離器を備えた洗浄システムにおいて、第1の洗浄組成物として洗浄剤3を用い、被洗浄物として試験片2を用いて、洗浄試験を行った。なお、洗浄剤3は、蒸気比重が空気よりも小さいので、加熱ヒーターで加熱しても、蒸気相が形成されなかった。よって、比較例3では、煮沸槽の第1の洗浄剤組成物の温度を100℃に加熱して試験を行った。煮沸槽に第1の洗浄剤組成物を収容した。リンス槽に洗浄剤3を収容した。加熱ヒーターで煮沸槽の第1の洗浄剤組成物の温度を100℃に加熱した。被洗浄物を煮沸槽に3分間浸漬させた。次いで、被洗浄物をリンス槽で3分間すすぎ、続いて、被洗浄物を引き上げて、リンス槽上部に置いて3分間放置した。試験後の被洗浄物の表面について、金属加工油の残渣、及び洗浄剤組成物の成分の残渣の有無を目視により判定した。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物が見られた。
【0100】
(2−6)比較例4
第1の洗浄剤組成物として洗浄剤4を用い、被洗浄物として試験片2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油の残留物が見られた。
【0101】
(2−7)比較例5
第1の洗浄組成物として洗浄剤5を用い、被洗浄物として試験片2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油の残留物が見られた。
【0102】
試験例3 洗浄システム3を用いた洗浄試験
(3−1)実施例6
図4の洗浄システムと同等の煮沸槽、リンス槽、仕上槽及び水分離器を備えた洗浄システムにおいて、第1の洗浄剤組成物及び第2の洗浄剤組成物として洗浄剤1を用い、被洗浄物として試験片1を用いて、洗浄試験を行った。煮沸槽に第1の洗浄剤組成物を収容した。仕上槽に、第2の洗浄剤組成物を収容した。リンス槽に、洗浄剤1の第1の成分のみを収容した。煮沸槽の第1の洗浄剤組成物及び仕上槽の第2の洗浄剤組成物を、加熱ヒーターで蒸気相が形成されるまで加熱した。蒸気相の成分は、冷却パイプによって液化し、液化した成分は、樋を通って回収され、回収液は水分離器に流入した。次いで、水分離器によって蒸気相の成分が抽出され、抽出された蒸気相の成分は、リンス槽に流入した。被洗浄物を煮沸槽に3分間浸漬させた。次いで、被洗浄物をリンス槽で3分間すすぎ、続いて、被洗浄物を仕上槽上部の蒸気相に置いて3分間蒸気洗浄を行った。試験後の被洗浄物の表面について、金属加工油の残渣又は洗浄剤組成物の成分の残留物の有無を目視により判定した。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【0103】
(3−2)実施例7
被洗浄物として試験片2を用いたこと以外は、実施例6と同様に行った。試験後の被洗浄物の表面において、金属加工油及び洗浄剤組成物の残留物は見られなかった。
【解決手段】第1の成分と第2の成分とを含む洗浄剤組成物1を収容し、被洗浄物が浸漬され、かつ第1の成分の蒸気を発生させる煮沸槽11と、煮沸槽により発生した第1の成分の蒸気2を液化して回収する回収部23,24と、回収部により回収された回収液から水を分離して第1の成分を抽出する水分離器21と、を備える洗浄システムであって、第1の成分は、沸点が30〜100℃でありかつ蒸気比重が空気よりも大きく、第2の成分は、第1の成分の沸点に対して、50℃以上高い沸点を有し、第1の成分と第2の成分とは、相溶するが共沸せず、水分離器により抽出された第1の成分は煮沸槽に供給されることを特徴とする、洗浄システム。