【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る結像光学系は、
明るさ絞りと、
前記明るさ絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群(LF)と、
前記明るさ絞りよりも像側に配置された正屈折力の後側レンズ群(LR)とからなり、
前記前側レンズ群(LF)は物体側から像側に順に負屈折力の第1副レンズ群(L1)と正屈折力の第2副レンズ群(L2)とからなり、
前記後側レンズ群(LR)は物体側から像側に順に最も像側の面が凸面である第3副レンズ群(L3)と正屈折力の第4副レンズ群(L4)とを有し、
前記第1副レンズ群は位置が固定であることを基本構成としている。
【0014】
以下、このような構成をとった理由と作用を説明する。
【0015】
本発明に係る結像光学系は、このような基本構成とすることで、いわゆるレトロフォーカスタイプと呼ばれるレンズ配置となり、広い画角を確保しつつ射出瞳を像面から離しやすい結像光学系となる。このレンズ配置においては、負の方向のディストーションを許容することでバックフォーカスを適度に短くでき、このレンズ配置のタイプにおける更なる小型化と性能確保が可能になる。
【0016】
そして、上述の基本構成、つまり、前側レンズ群(LF)中の物体側に負屈折力の第1副レンズ群(L1)とその像側に配置された正屈折力の第2副レンズ群(L2)とすることで、主に球面収差の発生を抑えつつ広い画角の確保に有利となる。
【0017】
また、後側レンズ群(LR)の明るさ絞り側の第3副レンズ群(L3)の最も像側の面を凸面として、その後方に正屈折力の第4副レンズ群(L4)を配置することで、バックフォーカスを適度な長さとしつつ、周辺の入射光線角度を像面に向けて徐々に屈折させて結像面へ導くことが可能となる。それにより、結像面への入射角度を小さくできるので周辺光量低下やフィルター類の波長透過率の角度特性の影響を受けにくい結像光学系とすることが可能となる。
【0018】
加えて、この基本構成とすることで、ペッツバール像面の湾曲を前側レンズ群と後側レンズ群とで打ち消しやすくなり、特に広角撮影にて重要となる像面湾曲の補正と非点較差の補正に有利となる。
【0019】
さらに加えて、本発明の基本構成では、前述のように、フォーカシングの際に第1副レンズ群の位置を固定している。
【0020】
第1副レンズ群をフォーカシングレンズ群とした場合、第2副レンズ群(L2)以降のレンズによる急激な収差発生が生じ易くなる。一方、本発明のように、第2副レンズ群かそれよりも像側のレンズ群中の少なくとも何れかのレンズ(単数、複数問わず)の移動によりフォーカシングを行うことで収差発生を抑えることが可能となる。加えて、このようにインナーフォーカス方式やリアフォーカス方式とすることで全長が不変の結像光学系となる。それにより、フォーカシング時に移動するレンズ(単数、複数問わず)の軽量化を図ることが可能になり撮影時の合焦の高速化と静音化に有利となる。更には、例えば動画撮影時など連続的合焦精度の確保が容易となる。
【0021】
このような基本構成において、フォーカシングを行うフォーカシングレンズ群を後側レンズ群中に配置することがより好ましい。
【0022】
また、前記前側レンズ群中の負屈折力の第1副レンズ群(L1)で発散した光束を像面に向けて複数の正レンズ群で徐々に収束させてゆくことが性能確保のために必要であるが、この際にフォーカシングを行うレンズ群を正の屈折力とすることでフォーカシングの機能と光束を収束させる効果を両立でき光学系の構成をより簡略化することに有利となる。
【0023】
また、後側レンズ群(LR)の構成により前述のように適度なバックフォーカスの確保と軸外領域での光学性能の向上に有利となるが、加えて第4副レンズ群(L4)で発生する収差を低減する効果もある。そのため、第4副レンズ群(L4)でフォーカシングを行うことが収差変動および周辺光線の射出角度の変動の低減につながりより好ましい。
【0024】
また、フォーカシングを行うレンズ群は一つのレンズ群のみを一体で移動させるようにすると枠構成の簡略化や低コスト化、可動群の軽量化の点でより好ましい。
【0025】
上述の基本構成にて更に以下のいずれかひとつ、または複数を満足することが好ましい。
【0026】
前記第1副レンズ群は物体側に凸の最も物体側のレンズ面を有し、
前記第3副レンズ群は物体側に凹の最も物体側のレンズ面を有し、
以下の条件式(1)、(2)、(3)を満足することが好ましい。
−140% ≦ DT ≦ −7% (1)
−2.2 ≦ R_L3f/f ≦ −0.25 (2)
0.8 ≦ R_L1f/f ≦ 5.5 (3)
ただし、
DT=(IHω−f・tanω)/(f・tanω)×100% であり、
ωは結像光学系の最大半画角、
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
R_L3fは、第3副レンズ群の最も物体側のレンズ面の近軸曲率半径、
R_L1fは、第1副レンズ群の最も物体側のレンズ面の近軸曲率半径、
fLFは、前側レンズ群の焦点距離
である。
【0027】
なお、各条件式は結像光学系が最も遠距離の物点に合焦した状態での条件とする。以降に示す各条件式についても同様に結像光学系が最も遠距離の物点に合焦した状態での条件とする。
【0028】
条件式(1)は、結像光学系の小型化のために上記基本構成の特性を十分に引き出すために好ましい条件である。
【0029】
条件式(1)の下限を下回らないようにすることで、像面湾曲を低減しやすくなり、像面湾曲の補正のための前側レンズ群の構成枚数の増加を抑え小型化につながる。また、撮像面中の最大像高へ入射する光線の入射角度の増大を抑えやすくなる。
【0030】
条件式(1)の上限を上回らないようにして負のディストーションを意図的に発生させることで、バックフォーカスを適度に短くすることに有利となる。
【0031】
条件式(2)は、アス・コマ収差の発生を抑えて軸外光束を効率的に結像面に導くための好ましい条件である。
【0032】
条件式(2)の下限を下回らないようにすることで、後側レンズ群でのアス・コマ収差の補正効果を得やすくなり光学性能の確保に有利となる。加えて、第3副レンズ群の物体側の凹面の曲率を確保してこの面にて軸外光束を光軸から離れるように屈折させ、凹面以降の光線高を高くすることで、凹面以降の収斂作用による射出瞳を像面から離す機能を確保し易くなる。
【0033】
条件式(2)の上限を上回らないようにすることでアス・コマの補正効果の過剰を抑えやすくなる。
【0034】
条件式(3)は、広い画角を確保して主にアスの発生を少なくするために好ましい条件である。
【0035】
条件式(3)の下限を下回らないようにすることで、第1副レンズ群の負屈折力を確保しやすくなりバックフォーカスの確保と広画角化に有利となる。
【0036】
条件式(3)の上限を上回らないようにすることで、アスの発生を低減しやすくなり光学性能の確保に有利となる。
【0037】
また、上述の基本構成において、もしくは、基本構成にて上述の条件式(2)、(3)のいずれか1つまたは複数を満足する結像光学系において、
前記後側レンズ群(LR)はフォーカシング時に移動するフォーカシングレンズ群を有し、
前記第1副レンズ群は少なくとも1つの負レンズを含み、
前記第1副レンズ群中の負レンズで最も物体側に配置された負レンズを第1の負レンズ(n1)としたときに、
前記第1の負レンズは、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、
以下の条件式(1)、(4)を満足することが好ましい。
−140% ≦ DT ≦ −7% (1)
1.1 ≦ SFn1 ≦ 5.0 (4)
ただし、
DT=(IHω−f・tanω)/(f・tanω)×100% であり、
ωは結像光学系の最大半画角、
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
SFn1=(Rn1f+Rn1r)/(Rn1f−Rn1r)であり
Rn1fは、前記第1の負レンズの物体側面の近軸曲率半径、
Rn1rは、前記第1の負レンズの像側面の近軸曲率半径
である。
【0038】
第1の負レンズを像側に凹面を向けた負メニスカスレンズとすることで、このレンズの屈折力を強めて画角を確保した際に発生しやすい軸外諸収差、主に非点較差の低減に有利となる。
【0039】
条件式(4)は、広い画角を確保しつつコマ収差と非点較差を良好に保つためのより好ましい条件である。
【0040】
条件式(4)の下限を下回らないようにすることで、第1の負レンズの屈折力を抑えやすくなりコマ収差の低減に有利となる。加えて、ペッツバール像面がプラス側に曲がる傾向を抑えられ、広画角ながら非点較差を良好に保つことに有利となる。
【0041】
条件式(4)の上限を上回らないようにすることで、収差の補正効果を確保すると共に明るさ絞りよりも物体側のレンズの大型化を抑えやすくなる。
【0042】
また、上述の基本構成において、もしくは、基本構成にて更に上述の条件(1)、(2)、(3)、(4)のいずれか1つまたは複数を満足する結像光学系において、
前記後側レンズ群(LR)がフォーカシング時に移動する正屈折力のフォーカシングレンズ群を有し、
前記第1副レンズ群は少なくとも負レンズを含み、
前記第1副レンズ群中の負レンズで最も物体側に配置された負レンズを第1の負レンズ(n1)としたとき、
前記第1の負レンズは、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、
以下の条件式(5)、(6)、(7)を満足することが好ましい。
−3 ≦ fn1/fLR ≦ −0.5 (5)
−2 ≦ fn11/fLR ≦ −0.1 (6)
Tmax/IHω30 ≦ 1.2 (7)
ただし、
fn1は、前記第1の負レンズの焦点距離、
fn11は、前記第1の負レンズとその負レンズの像側直後に配置されたレンズとの合成焦点距離、
fLRは、前記後側レンズ群の焦点距離、
Tmaxは、前記第1の負レンズに接する像側の空間を除く結像光学系中の複数のレンズに挟まれる空間の距離のうちの最大値、
IHω30は、半画角30度の主光線が像面と交わる点の光軸からの距離
である。
【0043】
条件式(5)は、適度なバックフォーカスの確保と光学性能の確保と小型化、光学全長の短縮化を両立させ前側レンズ群(LF)と正屈折力の第4副レンズ群(L4)の構成をより簡単にしやすくするために好ましい条件である。
【0044】
条件式(5)の下限を下回らないように第1の負レンズの屈折力を確保することで、広画角化した際のバックフォーカスを確保しやすくなると共にペッツバール像面がマイナス側に強まる傾向を低減でき像面湾曲の補正に有利となる。加えて、バックフォーカスの確保の機能を第1の負レンズが負担することで、前側レンズ群(LF)のレンズ枚数を少なく構成することが可能となり、光学系の全長の低減や前側レンズ群のサイズの小型化につながる。
【0045】
条件式(5)の上限を上回らないようにすることで、ペッツバール像面がプラス側に強まる傾向を低減でき、像面湾曲の補正に有利となる。加えて、第4レンズ群、特に第4副レンズ群の構成レンズ枚数を少なくしつつ、バックフォーカスの増大を抑えやすくなる。そして、後側レンズ群中の正屈折力のレンズ群でフォーカシングする際、フォーカシングレンズ群の構成を簡単にでき、フォーカシングレンズ群の軽量化を図ることが可能になり、フォーカシング動作の高速化と静音化、動画撮影時など連続的合焦精度の確保に有利となる。
【0046】
条件式(6)は、広画角化をしながらもバックフォーカスの確保と小型化、光学系全長の短縮化を両立させ前側レンズ群(LF)と第4副レンズ群(L4)の構成をより簡単にしやすくするための好ましい条件である。
【0047】
条件式(6)の下限を下回らないようにすることで、 広画角化時のバックフォーカスを確保しやすくなり、バックフォーカスの確保の機能を2つのレンズが負担することで、前側レンズ群(LF)のレンズ枚数を少なく構成することが可能となり、光学系の全長の低減や前側レンズ群のサイズの小型化につながる。また、ペッツバール像面がマイナス傾向に強まる傾向を抑制し非点較差の補正につながる。
【0048】
条件式(6)の上限を上回らないようにすることで、ペッツバール像面がプラス側に強まる傾向を低減でき、像面湾曲の補正に有利となる。加えて、後側レンズ群、特に第4副レンズ群の構成レンズ枚数を少なくしつつ、バックフォーカスの増大を抑えやすくなる。そして、後側レンズ群中の正屈折力のレンズ群でフォーカシングする際、フォーカシングレンズ群の構成を簡単にでき、フォーカシングレンズ群の軽量化を図ることが可能になり、フォーカシング動作の高速化と静音化、動画撮影時など連続的合焦精度の確保に有利となる。
【0049】
条件式(7)は、結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)の短縮化と光学系の外径の小径化に有利とするための好ましい条件である。
【0050】
第1の負レンズ(n1)は、広画角の確保と性能の確保のため、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズとし、上述の条件を満足して負の屈折力を十分に確保することが好ましい。そのため、収差を抑えるためには像側の面が凹面のメニスカス形状とすることが効果的であるので、第1の負レンズ(n1)の像側直後の空気間隔を確保することでこの負レンズの機能の確保に有利となる。一方、この空気間隔よりも像側の各空気間隔についてみると各レンズに挟まれる空気間隔を短くすることでレンズ外径の小型化や結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)を小さくできる。
【0051】
上述の本発明の構成においては、大きい空気間隔を用いずとも性能の確保に有利となる。そのため、条件式(7)を満足して結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)の短縮化とレンズ外径の小径化を図ることが好ましい。
【0052】
もちろん、前記条件式(1)「−140% ≦ DT ≦ −7%」を満足する構成とすると、小型化と性能確保等の点でより好ましい。
【0053】
また、上述の基本構成において、もしくは、基本構成にて更に上述の条件式(2)、(4)、(5)、(6)、(7)のいずれか1つまたは複数を満足する結像光学系において、
前記後側レンズ群(LR)はフォーカシング時に移動するフォーカシングレンズ群を有し、
以下の条件式(1)、(3)を満足することが好ましい。
−140% ≦ DT ≦ −7% (1)
0.8 ≦ R_L1f/f ≦ 5.5 (3)
ただし、
DT=(IHω−f・tanω)/(f・tanω)×100% であり、
ωは結像光学系の最大半画角、
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
R_L1fは、第1副レンズ群の最も物体側のレンズ面の近軸曲率半径、
である。
【0054】
各構成要件にて前述した機能を得られ好ましい。
【0055】
また、上述の基本構成において、もしくは、基本構成にて更に上述の条件式(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)のいずれか1つまたは複数を満足する結像光学系において、
前記後側レンズ群(LR)がフォーカシング時に移動する正屈折力のフォーカシングレンズ群を有し、以下の条件式(8)を満足することが好ましい。
−140% < DT < −40% (8)
ただし、
DT=(IHω−f・tanω)/(f・tanω)×100% であり、
ωは結像光学系の最大半画角、
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
R_L1fは、第1副レンズ群の最も物体側のレンズ面の近軸曲率半径、
である。
【0056】
条件式(8)は、特に最大入射角(=最大半画角)が40度を上回る様な広画角の結像光学系の小型化に好ましい条件であり、上記基本構成の作用効果を十分に引き出すことに有利となる。
【0057】
条件式(8)の下限を下回らないようにすることで、像面湾曲を低減しやすくなり、像面湾曲の補正のための前側レンズ群の構成枚数の増加を抑え小型化につながる。また、撮像面中の最大像高へ入射する光線の入射角度の増大を抑えやすくなる。
【0058】
条件式(8)の上限を上回らないようにして負のディストーションを意図的に発生させることで、広画角化と小型化の両立に有利となる。
【0059】
また、上述のいずれかの発明において、以下のいずれかの構成を満足することがより好ましい。
【0060】
以下の条件式(9)を満足することが好ましい。
0.8 ≦ fb/f ≦ 2.7 (9)
ただし、
fbは、結像光学系の最も像側のレンズ面から像面までの空気換算距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
である。
【0061】
条件式(9)は、上述の各発明による機能をより確実にするための条件であり、特に光学系の全長の短縮と小径化に有利となる。
【0062】
条件式(9)の下限を下回らないように最終レンズが結像面に近づきすぎないようにすることで、最終レンズのサイズの小型化に有利となる。
【0063】
条件式(9)の上限を上回らないようにして後側レンズ群を無理なく配置することで、光学系の全長の短縮化と撮像面への入射角の緩和の両立に有利となる。
【0064】
以下の条件式(10)を満足することが好ましい。
0.8 ≦ fb/IHω ≦ 2.4 (10)
ただし、
fbは、結像光学系の最も像側のレンズ面から像面までの空気換算距離
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
である。
【0065】
条件式(10)は、条件式(9)と同様に、各発明による機能をより確実にするための条件であり、特に光学系の全長の短縮化と小径化に有利となる。
【0066】
条件式(10)の下限を下回らないように最終レンズが結像面に近づきすぎないようにすることで、最終レンズのサイズの小型化に有利となる。
【0067】
条件式(10)の上限を上回らないようにして後側レンズ群を無理なく配置することで、光学系の全長の短縮化と撮像面への入射角の緩和の両立に有利となる。
【0068】
前記結像光学系は単焦点レンズであり、前記結像光学系中の移動可能なレンズ群は、1つのフォーカシングレンズ群のみであることが好ましい。
【0069】
それにより、枠構成をより簡略化でき小型化と低コスト化を達成できる。加えて、ズームレンズとしてではなく本構成上有効な広角域に特化した単焦点レンズとすることで本構成はより高性能で小型の光学系とすることが可能となる。
【0070】
更に好ましい構成として、フォーカシングレンズ群中のレンズの総数を2枚以下とすることで駆動部の軽量化に有利となりいっそう好ましい。
【0071】
前記第4副レンズ群(L4)がフォーカシング時に移動する唯一のレンズ群であり、且つ前記第4副レンズ群に含まれるレンズの総数が2枚以下であることが好ましい。
【0072】
フォーカシング時に移動するレンズ群を一つのみとすることで枠構成をより簡略化でき軽量化・小型化・低コスト化に有利となる。
【0073】
加えて、本発明は適度なバックフォーカスの確保と撮像面の入射光線角度を像面に向けて徐々に緩めることによる高性能化の両立を行い易く、結像面に近い第4副レンズ群(L4)で発生する収差を少なくしやすい。
【0074】
そのため、第4副レンズ群(L4)をフォーカシングレンズ群とすることで、収差変動および周辺光線の射出角度変動を少なくすることができ入射角のフォーカシング時の変動も少なくすることができる。
【0075】
収差変動を抑えやすいこの第4副レンズ群を2枚以下のレンズ構成とすることで、より軽量化を図ることが可能になり撮影時の合焦の高速化と静音化に有利となる。更には、動画撮影時などの連続的合焦精度の確保に有利となる。
【0076】
以下の条件式(11)を満足することが好ましい。
−1 ≦ R_L3f/fLR ≦ −0.2 (11)
ただし、
R_L3fは、第3副レンズ群の最も物体側のレンズ面の近軸曲率半径、
fLRは、前記後側レンズ群の焦点距離、
である。
【0077】
条件式(11)は、アスとコマ収差の発生を抑えて軸外光束を効率的に結像面に向けて緩める条件である。
【0078】
条件式(11)の下限を下回らないように第3副レンズ群の物体側レンズ面の曲率を確保して、この面にて後側レンズ群のアスとコマ収差をキャンセルする機能を十分確保することが好ましい。
【0079】
条件式(11)の上限を上回らないようにすることで、アスとコマ収差の補正過剰を抑えやすくなる。
【0080】
前記第4副レンズ群が最も像側に配置されたレンズ群であることが好ましい。
【0081】
本発明は小型化や性能確保に有利となり、第4副レンズ群を最も像側に配置することで本発明の機能を得ながらも結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)を短くすることにいっそう有利となる。
【0082】
更には、以下の条件式(12)を満足することが好ましい。
−1.1 ≦ SF_L4 ≦ 4.0 (12)
ただし、
SF_L4=(RL4f+RL4r)/(RL4f−RL4r)であり
RL4fは、前記第4副レンズ群の物体側面の近軸曲率半径、
RL4rは、前記第4副レンズ群の像側面の近軸曲率半径
である。
【0083】
条件式(12)は、広い画角を確保した際に有効性を発揮する条件式である。特に結像光学系の最大半画角(ω)が40度を越える時に上記条件式(12)を満足することがより好ましい。
【0084】
条件式(12)の下限を下回らないようにすることで、第4副レンズ群(L4)でのペッツバール像面のマイナス側への湾曲を抑えやすくなり像面湾曲や非点較差を良好に保つことに有利となる。収差を抑えやすくなることで、他のレンズ群のレンズ枚数や非球面の多用を低減でき、低コスト化あるいは結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)の短縮化に有利となる。
【0085】
条件式(12)の上限を上回らないようにすることで、第4副レンズ群(L4)での収差補正効果と効率的に周辺光線角度を像面に向けて緩める機能の確保に有利となる。それにより、レンズ枚数や非球面の多用を低減でき、低コスト化あるいは結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)の短縮化に有利となる。
【0086】
以下の条件式(13)を満足することが好ましい。
0.895 ≦ IHω30/(f・tan30°) ≦ 0.99 (13)
ただし、
IHω30は、半画角30度の主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
である。
【0087】
本発明の構成においては、負のディストーションを発生させることで、小型化と高性能化に有利な構成となる。光学的に発生させたディストーションを活用することで広い画角を得ることができる。
【0088】
一方、撮像素子の撮像面上に形成された光学的に発生したディストーションを含む像の信号を電気的な画像処理により補正し、記録、表示等を行うことも可能である。
【0089】
これにより光学系は負のディストーションを積極的に発生させて小型化と高性能化を達成し撮影した画像の歪みを低減することで小型化と高性能化の双方のメリットをいっそう活かすことが可能となる。
【0090】
条件式(13)の下限を下回らないようにすることで、電気的な補正をした際のディストーションの補正量の過剰を抑え、軸外領域の解像の低減を防ぎやすくなる。
【0091】
条件式(13)の上限を上回らないようにすることで、歪曲収差の積極的な使用による画角の確保等に有利となる。
【0092】
以下の条件式(14)を満足することが好ましい。
1.5≦ Σd/IHω ≦ 6.0 (14)
ただし、
Σdは、結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ、
IHωは、最大半画角ωの主光線が像面と交わる点の光軸からの距離、
である。
【0093】
条件式(14)は、結像光学系の光軸上での好ましい厚さを特定するものである。
【0094】
条件式(14)の下限を下回らないようにして、レンズ枚数の確保しやすくし光学性能の確保に有利とすることが好ましい。
【0095】
条件式(14)の上限を上回らないようにして、結像光学系を小型化することが好ましい。
【0096】
フォーカシングの際に移動するレンズ群を1枚の正レンズとすることが好ましい。
【0097】
フォーカシングレンズ群を1枚の正レンズで構成することでフォーカシングの作用と光束の収束効果を両立でき結像光学系をより簡略化することが可能になる。また、フォーカシングレンズ群をレンズ1枚のみで構成することでフォーカシングレンズ群の大幅な軽量化を果たすことが可能となり、撮影時の合焦の高速化と静音化に有利となる。更には、動画撮影時などの連続的合焦精度の確保が容易な構造が可能になる。
【0098】
さらに、フォーカシングの際に移動する前記1枚の正レンズの比重が以下の条件式(15)を満足することが好ましい。
0.8 ≦ Dfo ≦ 1.5 (15)
ただし、
Dfoは、フォーカシングの際に移動する前記1枚の正レンズの比重であり、単位はg/cm
3
である。
【0099】
条件式(15)の上限を上回らないようにすることで、フォーカシングレンズ群のいっそうの軽量化に有利となる。
【0100】
条件式(15)の下限を下回らないようにすることで、十分な屈折率の材料にてレンズを構成でき、性能の確保に有利となる。
【0101】
また、フォーカシングの際に少なくとも1枚の正レンズが移動し、
以下の条件式(16)を満足することが好ましい。
νd_fo > 50 (16)
ただし、
νd_foは、フォーカシングの際に移動する正レンズのアッベ数の内の最大値
である。
【0102】
条件式(16)を満足することでフォーカスシングによる色収差の変動を抑え至近においても良好な性能を得る事ができる。特に、フォーカシングの際に移動するレンズを1枚のみの正レンズとした際に目立ちやすくなる色収差の発生を抑えられる。
【0103】
前記第1副レンズ群(L1)は物体側から順に、負屈折力の第1の負レンズとその像側に配置された第2のレンズの2枚のみのレンズからなり、
前記第1の負レンズは像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、
前記第2のレンズは物体側の面よりも曲率の絶対値が大きい凹面の像側面をもち、
以下の条件式(17)を満足することが好ましい。
0.4 ≦SF2≦6.0 (17)
ただし、
SF2=(R2f+R2r)/(R2f−R2r)であり
R2fは、前記第2のレンズの物体側面の近軸曲率半径、
R2rは、前記第2のレンズの像側面の近軸曲率半径
である。
【0104】
第1の負レンズのすぐ像側に第2のレンズを配置し、条件式(17)を満足することでより広画角化と光学性能の確保に有利となる。
【0105】
条件式(17)の下限を下回らないようにすることで、第2のレンズが強い負の屈折力のレンズにならないようにし、コマ収差とペッツバール像面のプラス側の湾曲を抑制できる。
【0106】
条件式(17)の上限を上回らないようにすることで第2のレンズでの収差補正効果を確保し、第1の負レンズの屈折力を抑えやすくなり、アスの低減と前側レンズ群の小型化に有利となる。
【0107】
前記第1副レンズ群は少なくとも負レンズを含み、
前記第1副レンズ群中の負レンズで最も物体側に配置された負レンズを第1の負レンズ(n1)としたとき、
前記第1の負レンズは、像側に凹面を向けた負レンズであり、
以下の条件(18)を満足することが好ましい。
Tmax/Σd ≦ 0.27 (18)
ただし、
Tmaxは、前記第1の負レンズに接する像側の空間を除く結像光学系中の複数のレンズに挟まれる空間の距離うちの最大値、
Σdは、結像光学系の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの長さ、
である。
【0108】
条件式(18)は、性能を確保し全長の短縮化と結像光学系の外径の小径化に有利となる好ましい条件である。
【0109】
第1の負レンズ(n1)は広画角の確保と性能の確保のため、像側に凹面を向けた負レンズとし、負の屈折力を十分に確保することが好ましい。このとき、第1の負レンズ(n1)の像側直後の空気間隔を確保することでこの負レンズの機能の確保に有利となる。一方、この空気間隔よりも像側の各空気間隔についてみると各レンズに挟まれる空気間隔を短くすることでレンズ外径の小型化や結像光学系の最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの長さ(Σd)を小さくできる。
上述の本発明の構成においては、大きい空気間隔を用いずとも性能の確保に有利となる。
そのため、条件式(18)を満足して結像光学系の最も物体側レンズ面から最も像側レンズ面までの長さ(Σd)の短縮化とレンズ外径の小径化を図ることが好ましい。
【0110】
前記第1副レンズ群は少なくとも負レンズを含み、
前記第1副レンズ群中の負レンズで最も物体側に配置された負レンズを第1の負レンズ(n1)としたとき、
前記第1の負レンズは、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、
前記第1の負レンズは、前記第1副レンズ群中で最も物体側に配置されたレンズであることが好ましい。
【0111】
第1副レンズ群(L1)中の最も物体側のレンズを像側に凹面を向けた負メニスカスレンズ(n1)とすることで、第1副レンズ群(L1)の負の屈折力を十分に確保でき、広い画角の確保を容易にし、小径化や、広画角化の際に発生しやすい軸外諸収差、特に非点較差の補正に有利となる。
【0112】
また、以下の条件式(19)を満足することが好ましい。
−1 ≦f/fLF ≦ 1.5 (19)
ただし、
fは、結像光学系の全系の焦点距離、
fLFは、前側レンズ群の焦点距離
である。
【0113】
条件式(19)の下限を下回らないように前側レンズ群の屈折力が強い負屈折力にならないようにすることで、小型化等のためにバックフォーカスを適度に短くしても、後側レンズ群(LR)の正屈折力を弱められ、ペッツバール像面のマイナス側への湾曲を抑えられ像面湾曲や非点較差の補正を行い易くなる。
【0114】
条件式(19)の上限を上回らないように前側レンズ群の屈折力が強い正屈折力にならないようにすることで、後側レンズ群(LR)の正の屈折力を確保しやすくなりバックフォーカスの確保が容易となる。それにより、周辺光線の射出角を小さくする機能を確保しやすくなる。
【0115】
前記第1副レンズ群が像側に凹面を向けた2つの負レンズ成分からなり、
前記2つの負レンズ成分の像側面の近軸曲率の絶対値は物体側面の近軸曲率の絶対値よりも小さく、
前記第2副レンズ群が正レンズを含む2枚から4枚のレンズからなり、
前記第3副レンズ群が1枚の負レンズと該1枚の負レンズの像側に配置された2枚以下の正レンズからなり、
前記第4副レンズ群が1つの正レンズ成分からなることがより好ましい。
ここで、レンズ成分は入射側の屈折面と像側の屈折面の2つのみの屈折面が光軸上にて空気に接するレンズ体を意味する。
【0116】
このように構成することで、結像光学系の画角の確保、射出角の調整、光学性能の確保を行いつつ全長の短縮化に有利となり好ましい。
【0117】
上述の各構成要件や条件式は、任意に満足するようにしてもよい。
【0118】
例えば、上述の各発明にて、以下の条件式(5)を満足するようにしてもよい。
−3 ≦ fn1/fLR ≦ −0.5 (5)
【0119】
例えば、上述の各発明にて、以下の条件式(6)を満足するようにしてもよい。
−2 ≦ fn11/fLR ≦ −0.1 (6)
【0120】
例えば、上述の各発明にて、以下の条件式(7)を満足するようにしてもよい。
Tmax/IHω30 ≦ 1.2 (7)
【0121】
これらの結像光学系は、射出瞳を像面から離しやすく高性能化しやすいのでデジタルカメラなどの撮像装置に用いることが効果的である。
【0122】
結像光学系及び結像光学系の像側に配置され光学像を電気信号に変換する撮像面を持つ撮像素子とを有する撮像装置において、その撮像装置の結像光学系は、上記いずれかの結像光学系とすることが好ましい。
【0123】
また、上述の各発明は任意に複数を同時に満足することがより好ましい。
【0124】
また、各条件式について、上限値もしくは下限値を以下のように限定することで、その効果をより確実にでき好ましい。
【0125】
条件式(1)について
下限値を−120%、更には−100%とすることがより好ましい、ディストーションを電気的に補正することを前提とすれば更に下限値を−15%とするとよい。画像補正時の画像の流れを抑えやすくなる。
上限値を−13%、更には−12%とすることがより好ましい。歪みを生かした撮影を行いたい場合は更に上限値を−40%とするとよい。
【0126】
条件式(2)について
下限値を−1.6、更には−1.4とすることがより好ましい。
上限値を−0.4、更には−0.55とすることがより好ましい。
【0127】
条件式(3)について
下限値を1.1、更には1.5とすることがより好ましい。
上限値を4.5、更には4.0とすることがより好ましい。
【0128】
条件式(4)について
下限値を1.4、更には1.6とすることがより好ましい。
上限値を3.5、更には3.0とすることがより好ましい。
【0129】
条件式(5)について
下限値を−2.3、更には−1.8とすることがより好ましい。
上限値を−0.6、更には−0.7とすることがより好ましい。
【0130】
条件式(6)について
下限値を−1、更には−0.85とすることがより好ましい。
上限値を−0.15、更には−0.19とすることがより好ましい。
【0131】
条件式(7)について
上限値を1.0、更には0.6とすることがより好ましい。
下限値を設け、0.1更には0.2を下回らないようにすることが好ましい。可変絞りなどを配置するスペースの確保に有利となる。
【0132】
条件式(8)について
下限値を−120%、更には−110%とすることがより好ましい。
上限値を−60%、更には−80%とすることがより好ましい。
【0133】
条件式(9)について
下限値を1.0、更には1.2とすることがより好ましい。
上限値を2.5、更には2.3とすることがより好ましい。
【0134】
条件式(10)について
下限値を1.0、更には1.2とすることがより好ましい。
上限値を1.75、更には1.6とすることがより好ましい。
【0135】
条件式(11)について
下限値を−0.85、更には−0.7とすることがより好ましい。
上限値を−0.3、更には−0.35とすることがより好ましい。
【0136】
条件式(12)について
下限値を−0.9、−0.7、更には−0.3とすることがより好ましい。
上限値を3.5、更には3.3とすることがより好ましい。
【0137】
条件式(13)について
ディストーションを電気的に補正することを前提とすれば、
下限値を0.9、更には0.93とすることがより好ましい。
ディストーションを生かした撮影に有利とするためには、
上限値を0.95、更には0.93とすることがより好ましい。
【0138】
条件式(14)について
下限値を2.0、更には2.3とすることがより好ましい。
上限値を5.0、更には4.5とすることがより好ましい。
【0139】
条件式(16)について
上限値を55、更には60とすることがより好ましい。
【0140】
条件式(17)について
下限値を0.55、更には0.7とすることがより好ましい。
上限値を4.5、更には2.5とすることがより好ましい。
【0141】
条件式(18)について
上限値を0.18、更には0.15とすることがより好ましい。
下限値0.04、更には0.06を設け、これを上回らないようにすることで可変絞りなどを配置するスペースの確保に有利となる。
【0142】
条件式(19)について
下限値を−0.45、更には−0.30とすることがより好ましい。
上限値を1.0、更には0.8とすることがより好ましい。