【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にて提案されている「液体ならびに気体二酸化塩素の測光器」は、
図6に示すように、例えば次のような方法を採用しているものである。
「(a)透明な窓手段の間に二酸化塩素の流れを導く工程、
(b)4000〜5000オングストローム単位の波長の光を含むビームを前記の窓手段ならびに二酸化塩素の流れの中に指向せしむる工程、
(c)4000〜5000オングストローム単位の波長の光だけを通過させるため前記窓手段の出口で前記の光ビームをフィルターする工程、
(d)光検出手段を前記のフィルターされた光ビームに露光させそれにより前記流れ中の二酸化塩素相対量に比例した起電力を生じせしめる工程、
の結合からなる流体中の二酸化塩素の相対量を測定する」
のがその方法である。なお、「4000〜5000オングストローム単位」は、「400〜500nm(ナノメーター)」と計算される。
【0008】
一方、特許文献2の「二酸化塩素濃度測定装置」は、例えば「変動し得る二酸化塩素濃度を連続的に測定でき、製造現場や燻蒸消毒現場などにおける二酸化塩素濃度をリアルタイムでモニタリングできる二酸化塩素濃度測定装置及び測定方法を提供すること」(段落0006)を目的としてなされたもので、
図7及び当該文献の要約にも示されているように、「二酸化塩素濃度測定装置は、フローセル部20と、フローセル部20に被検体を供給する供給部と、フローセル部20に光を照射する光源部21と、その透過光を電気信号に変換する測光部22とを備える。フローセル部20と測光部22との間には透過光を単色化する波長選択部23が設け」るようにしたものである。
【0009】
この特許文献2には、
・燻蒸消毒現場などにおける二酸化塩素濃度は、0.05〜300ml/m
3(=ppm)ものが好ましいこと(段落0012)
・フローセル(特許文献1では「窓手段」)は、透光性と耐食性を有すれば十分であり、従来公知の硝子製及び石英製などが用いられること(段落0013)
・光源としては、水銀放電ランプ及びタングステンランプを好ましく使用することができること(段落0018)
・二酸化塩素ガスが示す光吸収は約360nmを吸収極大として270nm付近から500nm付近にかけて認められるが、二酸化塩素ガス測定では、ガス状有機物質が少量共存した場合に影響を比較的受け難い波長帯域を選択することが好ましいこと(段落0018)
・入射光の波長を365nmとし、この波長を供給できる水銀放電ランプからの励起光を活用することで最大感度が得られ、これにより、干渉フィルター等の波長選別設備が不要となり、経済性も向上することを見出したこと(段落0018)
・かかる波長に対応する一般的で最も安価な方法が発光ダイオード(LED)を光源とすることやタングステンランプと干渉フイルターとの併用であり、これにより、十分な測定精度を得られることを見出したこと(段落0019)
・二酸化塩素ガスによる輸入食品の薫蒸、食品加工や医薬品製造等のバイオクリーンルームの環境消毒において、薫蒸中の濃度を監視し、警報を発したり、薫蒸後、二酸化塩素ガス除去を監視して人間が安全に立ち入りできるか否かを判断するのに好ましく適用できること(段落0023)
が詳細に記載されている。
【0010】
本発明者等は、以上の特許文献1及び2から得られた技術情報の利用を図るべく、食品加工や医薬品製造等のバイオクリーンルームの二酸化塩素ガスによる環境消毒を目的として、光源が発光ダイオードである市販品の検出装置を使用し、上記クリーンルーム内の二酸化塩素ガス濃度の測定実験を行ったところ、一定時間経過後には、
・あるべき二酸化塩素ガス濃度の測定ができない
・想定以上の異常に高い濃度検出がなされる
・検出不能状態が発生する
・連続したリアルタイムの濃度検出ができない
といった、種々な問題が発生した。
【0011】
これらの種々な問題発生原因が何であるかを、本発明者等が試行錯誤を繰り返して検討したところ、次のような物性や現象が複雑に絡んでいることによるとの知見を得たのである。
(1)発光ダイオードは、発熱が少ないといっても、使用電力の30%程度が発熱に使われていて、発熱するものであること。
(2)発光ダイオードは、熱を持ったり経年変化によって発光特性が変化するものであり、この発光特性の変化が、実際の二酸化塩素ガスの光吸収量に変化を与えてしまうこと。
(3)発光ダイオードと受光部との間には、透光性と耐食性とを有するガラス窓(特許文献1では「窓手段」、特許文献2では「フローセル」)が、試料収納空間を形成するために配置されるが、これらのガラス窓間に供給される試料気体内に湿気が含まれていると、これがガラス窓内面に結露すること。一般に、二酸化塩素は水溶液として製造されて、燻蒸用の気体として使用する場合は、この水溶液から分離される。水溶液から分離された二酸化塩素ガスは、必然的に結露の原因となる水分を多く含むことになるのである。
(4)両ガラス窓内面に結露が生ずると、当然のことながら、これらのガラス窓間の光透過率が変化し、実際の二酸化塩素ガスの光吸収量に変化を与えてしまうこと。
(5)二酸化塩素ガスを使用する実際の燻蒸消毒では、現実の発光ダイオードや受光器の誤差範囲が2〜3%ある中で、300ppmの薄い濃度で5〜6時間程度の長い時間を要する極めて限定された濃度制御を行わなければならないこと。
【0012】
そこで、本発明者等は、上記(1)〜(5)の物性や現象を簡単に回避し修正して、二酸化塩素ガス濃度の測定を連続的かつリアルタイムで行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0013】
すなわち、本発明の第一目的とするところは、発光ダイオードの熱変化や経年変化による発光率変化の修正を、受光部での二酸化塩素ガスの光吸収率に常に加えることにより、正確な二酸化塩素ガス濃度の連続した測定を行うことのできる二酸化塩素ガス濃度検出装置を提供することにある。
【0014】
また、本発明の第二目的とするところは、試料気体が湿気を含んでいても、これによる結露が発生しないようにすることができて、正確な二酸化塩素ガス濃度の連続した測定を行うことのできる二酸化塩素ガス濃度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「
密閉空間R内複数個所からの試料気体を管路50から選択的に取り込んでその中の二酸化塩素ガスの濃度を、発光ダイオードからの紫外線域光量の変化によって測定
すべく、密閉空間R内の複数の試料気体吸収管から個別吸収した前記試料気体、及び密閉空間R外から吸収した新鮮空気を使用する装置100であって、
光の通過を許容する一対の透明体13に囲まれて、密閉空間R内外
の前記試料気体または新鮮空気が給送されてから排出される測定通路11と、その近傍に配置されて密閉空間R外の前記新鮮空気のみが入れられる比較通路12とを有する本体10と、
測定通路11及び比較通路12の一端部にそれぞれ取り付けられて、同一特性で紫外線域の光を発光させる第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22と、
これらの第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22からの光をそれぞれ受けて、その光量を検出する第1受光器31及び第2受光器32と、
管路50を、前記各試料気体吸収管の個別選択を行う選択バルブ52と、これらの選択バルブ52の全てが閉状態にあるときに開状態となって、密閉空間R外の前記新鮮空気の吸引を可能にする空気バルブ53bと、これらの空気バルブ53bまたは選択バルブ52が開状態にあるときに、本体10への前記試料気体または新鮮空気の吸引を可能にするポンプ51と、を備えたものとして、
ポンプ51の吸引作用及び各選択バルブ52の選択作用により、密閉空間R内の各試料気体を所定時間を置いて選択的に吸引するにあたって、検査バルブ53a及び1つの選択バルブ52を一旦閉状態にしてから空気バルブ53bを開状態にすることにより、前記新鮮空気を吸引して検査した前記試料気体を全て排出させ、その後に空気バルブ53bを閉じるとともに検査バルブ53a及び他の選択バルブ52を開いて次の選択バルブ52による試料気体の吸引を行うようにして、
比較通路12内を通過した第2発光ダイオード22からの光を受けた第2受光器32の信号値で、前記試料気体が測定通路11内に給送されたときの第1受光器31の信号値に補正を加えて、この補正後の信号値によって、密閉空間R内の二酸化塩素ガスの濃度を測定する濃度測定装置100」
である。
【0016】
以上のように構成した本発明に係る濃度測定装置100は、
図1に示すようにして使用される。
図1は、薬品や食品の製造工場内の一部を示したもので、当該濃度測定装置100は、実際に薬品等を製造している密閉空間Rの外側廊下に設置してある。そして、この濃度測定装置100は、密閉空間R内複数個所からの試料気体を、
図2に示す管路50から選択的に取り込んでその中の二酸化塩素ガスの濃度を測定するのである。なお、測定し終わった試料気体は、
図2に示す除去器54によって二酸化塩素ガスが除去され、ポンプ51によって
図1に示す排出管55から、例えば廊下や外部に排出される。
【0017】
そして、この濃度測定装置100は、密閉空間R内複数個所からの試料気体を、図2に示す管路50から選択的に取り込んでその中の二酸化塩素ガスの濃度を測定するのである。なお、測定し終わった試料気体は、図2に示す除去器54によって二酸化塩素ガスが除去され、ポンプ51によって図1に示す排出管55から、例えば廊下や外部に排出される。
【0018】
管路50は、図2に示したように、最終端にある排出管55の直前に設けたポンプ51の吸引作用によって、密閉空間R内の複数個所(図2では5箇所を代表させている)の試料気体吸収管からの試料気体を当該濃度測定装置100内に送り込むためのものであり、それぞれの吸収管には選択バルブ52が個別に設けてある。各選択バルブ52は、5本の吸引管の何れかからの試料気体のみを濃度測定装置100に送るべく開閉制御されていて、「開」となった選択バルブ52からの試料気体のみが「開」となった検査バルブ53aを介して濃度測定装置100側に吸引される。
【0019】
また、以下で説明する実施形態の濃度測定装置100では、所定時間を置いて密閉空間R内の二酸化塩素ガスの濃度を検出する場合に、検査バルブ53aや各選択バルブ52を一旦「閉」状態にするとともに、図2中に示した空気バルブ53bを「開」状態にして、二酸化塩素ガスのない外部空気等を取り込んで濃度測定装置100内に残留している前に検査した試料気体を全て排出するようにしている。排出が完了すれば、本実施形態の濃度測定装置100は、空気バルブ53bを閉じて検査バルブ53aや選択された選択バルブ52を開いて新たな試料気体を濃度測定装置100内に取り込み、次の必要な濃度測定を行うのである。
【0020】
さて、当該濃度測定装置100は、
図2に示した二酸化塩素ガスの発生器200から二酸化塩素ガスを密閉空間R内に順次供給して、密閉空間R内の燻蒸殺菌を行う際、あるいは殺菌作業が終了した後に使用されるのであるが、その使用の際には、
図3に示すように、密閉空間R内の試料気体を当該濃度測定装置100の本体10に形成した測定通路11内に取り込んで流すのである。勿論、各第1発光ダイオード21、第2発光ダイオード22、第1受光器31、及び第2受光器32等を作動状態にして、試料気体中の二酸化塩素ガスの濃度を連続的に測定していくのである。
【0021】
まず、測定通路11の一方側に設置した第1発光ダイオード21と、これからの光を受ける他方側の第1受光器31との作動について説明すると、第1発光ダイオード21は、波長が360nm(ナノメートル)近辺の、二酸化塩素ガスに最も良く吸収される紫外線域の光を発するものである。第1発光ダイオード21から発せられた光は、直線状の測定通路11内を第1受光器31に向けて進むが、この測定通路11内に存在している二酸化塩素ガスの量によって、この二酸化塩素ガスによる光の吸収量が異なることは、特許文献1や2に示されている通りである。この光の進行先に第1受光器31が待ち構えていて、受けた光の量を電気的に変換して、光量信号Pnとして発信している。
【0022】
このとき、比較通路12内にても、第2発光ダイオード22から発せられた光が第2受光器32が受けて、その光の量を電気的に変換して、光量信号Pmとして発信している。この比較通路12内には二酸化塩素ガスが入ってこないのであるが、その中の第2発光ダイオード22や、測定通路11内の第1発光ダイオード21が室温状態にある場合(つまり、これらの第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22が発熱していない状態)の光量信号PmをP
0とする。また、このP
0が得られたときの第1発光ダイオード21に印加されている電流値をE
0とする。
【0023】
以上のP
0、Pn、Pm、及びE
0を定義し直すと、次の通りである。
P
0=室温の第2発光ダイオード22(自身は発熱していないから、発光量変化はない)からの光を受けた第2受光器32が発する光量信号(当然、二酸化塩素ガスが常に0(ゼロ)の場合である)
Pn=ある温度になったときの第1発光ダイオード21からの光を、ある濃度の二酸化塩素ガスの存在下で受けた第1受光器31が発する光量信号
Pm=ある温度になったときの第2発光ダイオード22からの光を受けた第2受光器32が発する光量信号(二酸化塩素ガスは全く存在しない)
E
0=P
0が得られたときの第1発光ダイオード21に印加されている電流値
【0024】
なお、以上の、また以下で説明する、「室温」、「ある温度」、単なる「温度」は、全て第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22自体のそのときの温度を言うものである。
【0025】
一方、比較通路12の一方側に設置した第2発光ダイオード22と、これからの光を受ける他方側の第2受光器32との作動について説明すると、第2発光ダイオード22は上記の第1発光ダイオード21と全く同じ特性のものであり、波長が360nm近辺の、二酸化塩素ガスに最も良く吸収される紫外線域の光を発するものである。第2発光ダイオード22の特性を第1発光ダイオード21のそれと全く同じにしたのは、同じ電流を流した時の機能が第1発光ダイオード21と異なっていては、第1発光ダイオード21との比較の対象とはなり得ないからである。簡単に言えば、第2発光ダイオード22は、第1発光ダイオード21と製造会社及び品番が同一のものを採用するのである。
【0026】
ところで、これらの第2発光ダイオード22及び第2受光器32が設置されている比較通路12には、二酸化塩素ガスは入ってこず、当該濃度測定装置100の設置箇所での空気しか入らない。つまり、これらの第2発光ダイオード22及び第2受光器32は、単なる空気中を進行する光の測定しか行っていない。しかし、これらの第2発光ダイオード22及び第2受光器32は、この第2発光ダイオード22と同一特性の上記第1発光ダイオード21の温度変化による「発光量変化」を測定しているものともなっているのである。
【0027】
一般に、発光ダイオードは、前述した通り、光を発するとともに自身が発熱するものであり、自身の温度上昇に伴って「発光量」も異なってくるものである。この「発光量」が異なってくる現象は、同一特性である第2発光ダイオード22及び第1発光ダイオード21に同時かつ同様に発現するものであり、温度の高い状態の第1発光ダイオード21を使用して第1受光器31で測定した二酸化塩素ガスの光量信号Pnは、二酸化塩素ガスの実際の濃度を現していないことになる。以上のことは、「経年変化」についても同様に言える。
【0028】
ところで、比較通路12に設けた第2発光ダイオード22からの光を受けた第2受光器32は、常に二酸化塩素ガスが存在しない状態を測定していて、室温時の光量信号をP
0と定義したが、この第2発光ダイオード22と同じ特性を有する第1発光ダイオード21が発する光量Pnは、室温時であって測定通路11内に二酸化塩素ガスが存在しない場合には、P
0となる。従って、このP
0は、
P
0=室温の第1発光ダイオード21からの光を、測定通路11内に二酸化塩素ガスが存在しないで受けたときの、第1受光器31が発する光量信号
と再定義することができる。
【0029】
以上の、
P
0=室温の第2発光ダイオード22(自身は発熱していないから、発光量変化はない)からの光を受けた第2受光器32が発する光量信号(当然、二酸化塩素ガスが常に0(ゼロ)の場合である)
=室温の第1発光ダイオード21からの光を、測定通路11内に二酸化塩素ガスが存在しないで受けたときの、第1受光器31が発する光量信号
という関係を利用すると、
X=ある温度の第2発光ダイオード22が温度変化によって減少する光量部分
Y=第1受光器31が発する光量信号の内で、純粋に二酸化塩素ガス存在によって減少する光量部分
とした場合に、次の関係及び式が成り立つ。
・第2受光器32について
Pmは、P
0からの、第2発光ダイオード22の温度変化による減少分Xを測定しているから、
Pm=P
0−X 従って
X=P
0−Pm
・第1受光器31について
Pnは、P
0からの、第1発光ダイオード21の温度変化による減少分(=Xである)と、二酸化塩素ガス存在による純粋な減少分Yとを測定しているから、
Pn=P
0−(X+Y)
=P
0−(P
0−Pm+Y) 従って
Y=Pn−Pm
となるのである。
【0030】
以上のように、当該濃度測定装置100によって、P
0、E
0、Pn、及びPmが得られるのであるが、これらの値によって、ある温度において密閉空間R内に二酸化塩素ガスが存在しているときに、第1発光ダイオード21(従って第2発光ダイオード22)の温度補正後に第1受光器31が示すべき光量信号Pと、密閉空間R内の二酸化塩素ガスの濃度Dとが、次の「第一計算方法」及び「第二計算方法」によって濃度算出がなされる。これらの「第一計算方法」及び「第二計算方法」は、それぞれ以下に説明する考え方に基づいている。
【0031】
(第一計算方法の考え方、及び濃度算出方法)
ある温度において密閉空間R内に二酸化塩素ガスが存在しているときに、これを試料気体として測定通路11内に取り込んで測定した結果、第1受光器31で得られたPnは、第1発光ダイオード21(従って第2発光ダイオード22)の温度変化に基づく光量変化を含んでいるものである。この第1発光ダイオード21の光量変化は、服を着たまま体重測定したときの「風袋」に該当するものであり、この「風袋」は比較通路12において「Pm」として得られているのであるから、このPmでPnの補正を行えばよい。
【0032】
以上の考え方に基づけば、ある温度において密閉空間R内に二酸化塩素ガスが存在しているときに、第1発光ダイオード21(従って第2発光ダイオード22)の温度補正後に第1受光器31が示すべき光量信号Pは、
P=Y
=第1受光器31が発する光量信号の内で、純粋に二酸化塩素ガス存在によって減少する光量部分
=Pn−Pm
となるから、これが密閉空間R内に存在している二酸化塩素ガスの濃度を実際に計算できるデータとなるのである。つまり、密閉空間R内に存在している二酸化塩素ガスの、ある温度における濃度Dは、
D=k
1・(Pn−Pm) k
1=濃度換算定数
となるのである。
【0033】
(第二計算方法」の考え方、及び濃度算出方法)
ある温度、例えば室温から高くなった第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22は、印加電圧が室温の場合と、これより高くなった場合とで同じであれば、その発光量は、高くなった場合の方が減少することが知られている。また、印加電圧を高くすれば、これに比例させながら第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の発光量を増加させることができることも知られている。つまり、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の温度上昇による発光量の減少は、これらの第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22に加えられる印加電圧を高くすれば「0」(ゼロ)に補正できるのであり、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の温度変化に応じた印加電圧の補正を行えばよいことになる。この考え方は、
図5に示す本発明の実施形態において適用しているものである。
【0034】
そして、上述したように、
P
0=室温の第2発光ダイオード22からの光を受けた第2受光器32が発する光量信号
Pn=ある温度になったときの第1発光ダイオード21からの光を、ある濃度の二酸化塩素ガスの存在下で受けた第1受光器31が発する光量信号
E
0=P
0が得られたときの第1発光ダイオード21に印加されている電流値
Pm=ある温度になったときの第2発光ダイオード22からの光を受けた第2受光器32が発する光量信号
としているのであるから、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の温度変化に応じて印加すべき電圧Eは、
E=E
0・(P
0/Pm)
となる。
【0035】
以上の結果、
Pn=ある温度になったときの第1発光ダイオード21からの光を、ある濃度の二酸化塩素ガスの存在下で受けた第1受光器31が発する光量信号
は、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の温度変化に応じて電圧Eが印加されたのであれば、二酸化塩素ガスの実際の濃度Dを示すデータとして使用でき、
D=k
2・Pm k
2=濃度換算定数
となるのである。
【0036】
以上の通り、この請求項1に係る濃度測定装置100は、その本体10内に、測定通路11とは別の比較通路12を形成し、この比較通路12に対して第2発光ダイオード22及び第2受光器32を設けたのであるから、第一計算方法で重要な「Pm」、及び第二計算方法で重要な「E」の算出が行え、第一計算方法も第二計算方法も採用できるものとなっているのである。なお、特許文献1の技術も、特許文献2の技術も、上記「Pn」だけの測定を行っているものと考えられる。
【0037】
従って、この請求項1に係る濃度測定装置100は、発光ダイオードの熱変化や経年変化による発光率変化の修正を、受光部での二酸化塩素ガスの光吸収率に常に加えることにより、正確な二酸化塩素ガス濃度の連続した測定を行うことができるものとなっているのである。
【0038】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に係る濃度測定装置100について、
「第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22を、熱の良導体材料からなる台座23に組み込んだこと」
である。
【0039】
そもそも本願発明がなされたのは、第1発光ダイオード21や第2発光ダイオード22が有する特質として、自己発熱によってその発光量が変化するということを認めた上で、温度変化に応じた補正を二酸化塩素ガスの濃度判定に用いられる各種データに加えるということから出発している。そして、比較のために、同一特性の第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22を用いるのであるが、これらの第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の温度変化は、周囲条件による変化を含んでいてはならない。
【0040】
換言すれば、同一特性である筈の第1発光ダイオード21又は第2発光ダイオード22のいずれか一方が、熱伝導で他より早く加熱または冷却されたり、その加熱または冷却速度が他とは異なっていたりすると、他との比較対象にはなり得ない。
【0041】
そこで、この請求項2に係る濃度測定装置100では、同一特性のものである筈の第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22の、熱に対する同一性をより確実にするために、これらの第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22を、
図3の(a)に示すように、熱の良導体材料からなる台座23に組み込んだのである。後述する実施形態の台座23は、アルミニウム製のブロックであるが、このようにすることによって、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22は、室温状態にあっても、作動によって自己発熱した場合でも、お互に他との熱的条件における比較対象となり得るのである。
【0042】
従って、この請求項2に係る濃度測定装置100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮することは当然として、台座23によって、第1発光ダイオード21及び第2発光ダイオード22における温度条件が、常に一定に保たれているのである。
【0043】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に係る濃度測定装置100について、
「各透明体13の近傍に設けたヒーター40によって、各透明体13に結露した水分の除去が行えるようにしたこと」
である。
【0044】
一般に、二酸化塩素は水溶液として製造されて、燻蒸用の気体として使用する場合は、この水溶液から分離されるため、水溶液から分離された二酸化塩素ガスは、必然的に結露の原因となる水分を多く含むことになるのは上述した通りである。
【0045】
一方で、人体に害を及ぼすことのある二酸化塩素ガスについて、その濃度を紫外線域近傍の光で測定するためには、二酸化塩素ガスが送り込まれてくる本体10の測定通路11の両側に透明体13を設けておいて、これらの透明体13の外側に第1発光ダイオード21及び第1受光器31等を配置して置かなければならない。そうすると、測定通路11内に送り込まれてきた
試料気体中に結露の原因となる水分が含まれていれば、これによる各透明体13内面への結露が、当該濃度測定装置100の計測中に発生する可能性がある。この可能性は、上述したように、二酸化塩素ガスの生成条件からすると、十分あり得ることである。
【0046】
このような各透明体13内面への結露を防止するための最も簡便な方法は、測定通路11及び/または透明体13を温めておいて、これらに結露が生じにくくしておくことである。そのために、この請求項3に係る濃度測定装置100では、各透明体13の近傍に設けたヒーター40によって、各透明体13に結露した水分の除去が行えるようにしたのである。
【0047】
従って、この請求項3に係る濃度測定装置100は、上記請求項1または2のそれと同様な機能を発揮する他、試料気体が湿気を含んでいても、これによる結露が発生しないようにすることができて、正確な二酸化塩素ガス濃度の連続した測定が行えるものとなっているのである。