特許第5798235号(P5798235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798235
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】硬化性フルオロエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20151001BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08K5/24
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-502888(P2014-502888)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-509689(P2014-509689A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012031726
(87)【国際公開番号】WO2012135785
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/469,856
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジョン ビッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エー.モルケン
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−536260(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077583(WO,A1)
【文献】 特表2014−509690(JP,A)
【文献】 特表2014−509688(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0072636(US,A1)
【文献】 特開2007−119371(JP,A)
【文献】 特開2000−017101(JP,A)
【文献】 特開2008−231315(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0234416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ニトリル基含有硬化部位モノマーの共重合単位を含むフルオロエラストマーと;
B) 一般式R1C(O)NHNHR2のヒドラジド(式中R1はアルキル、アリール、ベンジル、複素環、フルオロアルキルまたはHであり;R2はH、アルキル、アリール、複素環、CO23、C(O)HまたはCH24であり;R3はアルキル、CH24、アリール、ベンジルまたは複素環であり;R4はフルオロアルキル基であると;
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物から製造される硬化物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性フルオロエラストマー組成物、そしてより詳細には、硬化剤として特定のヒドラジドを含むフルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロエラストマーは、商業的に傑出した成功を収めてきており、厳しい環境に遭遇するさまざまな利用分野で、特に高温および攻撃的化学物質に対する曝露が発生する最終的用途において使用される。例えば、これらのポリマーは航空機エンジン用シール、石油採掘装置および高温で作動する工業設備向けの封止用要素において使用されることが多い。
【0003】
フルオロエラストマーの傑出した特性は、これらの組成物中のポリマー主鎖の大部分を構成する共重合されたフッ素化モノマー単位の安定性および不活性に負うところが大きい。このようなモノマーには、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよびペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれる。エラストマー特性を充分に発達させるため、フルオロエラストマーは典型的に架橋、すなわち加硫される。このために、フッ素化モノマー単位と少ない割合の硬化部位モノマーが共重合される。少なくとも1つのニトリル基を含む硬化部位モノマー、例えばペルフルオロ−8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテンが特に好ましい。このような組成物は、米国特許第4,281,092号明細書、同第4,394,489号明細書、同第5,789,489号明細書、同第5,789,509号明細書および国際公開第2011084404号パンフレット中に記載されている。
【0004】
ニトリル基硬化部位を有するフルオロエラストマーのための加硫剤としては、ビスアミドキシム(米国特許第5,668,221号明細書)およびビスアミドラゾン(米国特許第5,605,973号明細書、同第5,637,648号明細書)が使用されてきた。これらの硬化は、スコーチ性であり得る。すなわち、組成物の最終的整形の前に架橋が始まってよい。同様に、硬化剤は、高価な出発材料からの複雑な多段階合成を必要とする。
【0005】
ニトリル基硬化部位を有するフルオロエラストマーを架橋する目的で、他の窒素含有求核性化合物が使用されてきた(米国特許第6,638,999B2号明細書)。これらの硬化剤の一部は、スコーチ性であり、一方他のものは、ゴム圧延温度で揮発性である。
【0006】
ペンダントアミドラゾンまたはアミドキシム基を有するフルオロポリマーも同様に公知である(米国特許第7,300,985B2号明細書)。これらのポリマーは、架橋を形成するために追加のポリマー改質ステップを必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ニトリル基硬化部位を有するフルオロエラストマーと硬化剤としての特定のヒドラジドとを含む硬化性フルオロエラストマー組成物に関する。より詳細には、本発明は、
A) ニトリル基含有硬化部位モノマーの共重合単位を含むフルオロエラストマーと;
B) 一般式RC(O)NHNHRのヒドラジド(式中Rはアルキル、アリール、ベンジル、複素環、フルオロアルキルまたはHであり;RはH、アルキル、アリール、複素環、CO、C(O)HまたはCHであり;Rはアルキル、CH、アリール、ベンジルまたは複素環であり;Rはフルオロアルキル基である)と;
を含む硬化性組成物に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、上述の組成物から形成された硬化物品にある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物中に使用されてよいフルオロエラストマーは、部分的にフッ素化または過フッ素化されていてよい。フルオロエラストマーは好ましくは、フルオロエラストマーの総重量に基づいて25〜70重量パーセントの、フッ化ビニリデン(VF)またはテトラフルオロエチレン(TFE)であり得る第1のモノマーの共重合単位を含む。フルオロエラストマー中の残りの単位は、フルオロモノマー、炭化水素オレフィンおよびその混合物からなる群から選択される、前記第1のモノマーとは異なる1つ以上の追加の共重合モノマーで構成されている。フルオロモノマーには、フッ素含有オレフィンおよびフッ素含有ビニルエーテルが含まれる。
【0010】
フルオロエラストマーを製造するために使用されてよいフッ素含有オレフィンとしては、フッ化ビニリデン(VF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(1−HPFP)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(2−HPFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびフッ化ビニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
フルオロエラストマーを製造するために利用してよいフッ素含有ビニルエーテルとしては、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルが含まれるが、これに限定されない。モノマーとしての使用に好適であるペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)には、下記式
CF=CFO(Rf’O)(Rf’’O) (I)
のものが含まれ、式中、Rf’およびRf’’は、2〜6個の炭素原子の異なる直鎖または分岐ペルフルオロアルキレン基であり、mとnは独立して0〜10であり、Rは1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。
【0012】
ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルの好ましい一部類としては、下記式
CF=CFO(CFCFXO) (II)
の組成物が含まれ、式中XはFまたはCFであり、nは0〜5、Rは1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である。
【0013】
ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルの最も好ましい部類には、nが0または1であり、Rが1〜3個の炭素原子を含むエーテルが含まれる。このような過フッ素化エーテルの例としては、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が含まれる。他の有用なモノマーには、下記式
CF=CFO[(CFCFCFZO] (III)
のものが含まれ、式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、m=0または1であり、n=0〜5であり、Z=FまたはCFである。この部類の好ましい成員は、RがCであり、m=0、n=1のものである。
【0014】
追加のペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルモノマーとしては、下記式、
CF=CFO[(CFCF{CF}O)(CFCFCFO)(CF]CxF2x+1 (IV)
の化合物が含まれ、式中mとnは独立して0〜10であり、p=0〜3、x=1〜5である。この部類の好ましい成員としては、n=0〜1、m=0〜1そしてx=1である化合物がある。
【0015】
有用なペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の他の例としては、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFO)2n+1 (V)
が含まれ、式中n=1〜5、m=1〜3であり、好ましくはn=1である。
【0016】
本発明で使用されるフルオロエラストマー中にPAVEの共重合単位が存在する場合、PAVE含有量は一般に、フルオロエラストマーの総重量に基づき25〜75重量パーセントの範囲内にある。ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)が使用される場合には、フルオロエラストマーは好ましくは30〜65wt%の共重合PMVE単位を含む。
【0017】
本発明で使用されるフルオロエラストマー中で有用な炭化水素オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが含まれるがこれらに限定されない。フルオロエラストマー中に炭化水素オレフィンの共重合単位が存在する場合、炭化水素オレフィン含有量は、一般に4〜30重量パーセントである。
【0018】
フルオロエラストマーはさらに、一般に0.1〜5モルパーセントの量で、少なくとも1つの硬化部位モノマーの共重合単位を含む。この範囲は、好ましくは0.3〜1.5モルパーセントである。2つ以上のタイプの硬化部位モノマーが存在していてよいが、最も一般的には、1つの硬化部位モノマーが使用され、それは少なくとも1つのニトリル置換基を含んでいる。好適な硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フッ素化オレフィンおよびニトリル含有フッ素化ビニルエーテルが含まれる。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、以下に示す式のものが含まれる:
CF=CF−O(CF−CN (VI)
(式中、n=2〜12、好ましくは2〜6である);
CF=CF−O[CF−CFCF−O]−CF−CFCF−CN (VII)
(式中、n=0〜4、好ましくは0〜2である);
CF=CF−[OCFCFCF−O−(CF−CN (VIII)
(式中、x=1〜2であり、n=1〜4である);
CF=CF−O−(CF−O−CF(CF)CN (IX)
(式中、n=2〜4である)。
【0019】
式(VIII)のものが好ましい。特に好ましい硬化部位モノマーは、ニトリル基およびトリフルオロビニルエーテル基を有する過フッ素化ポリエーテルである。最も好ましい硬化部位モノマーは、
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN (X)
すなわち、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン)または8−CNVEである。
【0020】
本発明の第1の態様は、A)ニトリル含有フッ素化オレフィンとニトリル含有フッ素化ビニルエーテルからなる群から選択されるニトリル基含有硬化部位モノマーの共重合単位を含むフルオロエラストマーと;B)特定のヒドラジドと、を含む硬化性組成物である。ヒドロジドは、モノ、ジ、またはポリヒドラジドであってよい。ヒドラジドは、一般式RC(O)NHNHRのものであり、式中Rはアルキル、アリール、ベンジル、複素環、フルオロアルキルまたはHであり;RはH、アルキル、アリール、複素環、CO、C(O)HまたはCHであり;Rはアルキル、CH、アリール、ベンジルまたは複素環であり;Rはフルオロアルキル基である。アルキル、アリール、ベンジルまたは複素環基は、ハロゲン、エーテルまたはアミド基など(ただしこれらに限定されない)の追加の官能基を含んでいてよい。フルオロアルキル基は、水素原子のうち少なくとも1つがフッ素により置換されており、任意には、鎖内に1つ以上の酸素原子を含んでいてよい。R、R、RまたはRは、モノ、ジ−またはポリ−ヒドラジドを提供するためヒドラジドに対する1つ、2つまたはそれ以上の付着点を有していてよい。分解してこれらのヒドラジドのうちの1つを形成する化合物も同様に、本発明の組成物中で使用してよい。ヒドラジドは、塩、例えば塩酸ベンゾイルヒドラジンであってもよい。最後に、酸素原子を硫黄で置換してもよい。
【0021】
好ましいヒドラジドには、Rがアルキルであり、RがHであるもの;Rがアルキルであり、RがCOであるもの;Rがアリールであり、RがHであるもの;Rがアリールであり、RがCOであるもの;Rが複素環であり、RがHであるもの;RがHであり、RがCOであるもの;Rがベンジルであり、RがHであるかまたはCOであるもの;そしてRがフルオロアルキル、RがHまたはCOであるものが含まれる。
【0022】
これらのヒドラジド硬化剤の具体的例としては、ギ酸ヒドラジド;ジホルミルヒドラジン;ベンズヒドラジド;イソ酪酸、ヒドラジド;マロン酸ジヒドラジド;コハク酸ジヒドラジド;アジピン酸ジヒドラジド;1,3−イミダゾリジンジプロパン酸、4−(1−メチルエチル)−2,5−ジオキソ−、1,3−ジヒドラジド;テトラデカン二酸、1,14−ジヒドラジド;イソニアジド;2−ヒドロキシベンズヒドラジド;ヘキサン二酸、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−、1,6−ジヒドラジド;およびイソフタル酸ジヒドラジドが含まれるが、これらに限定されない。より好ましいヒドラジドとしては、ギ酸ヒドラジド;ベンズヒドラジド;イソ酪酸、ヒドラジド;およびイソニアジドがある。
【0023】
これらのヒドラジドは、ポリマー鎖結合ニトリル基のダイマー化をひき起こして1,2,4−トリアゾール環を形成し、こうしてフルオロエラストマーを架橋することによって、硬化剤として作用する、ということが理論化されている。ヒドラジドは、ヒドラジンまたはt−ブチルカルバゼートなどの硬化剤よりも揮発性が低く、混合および整形プロセス中にヒドラジド硬化剤が逸散する確率を低くする。
【0024】
これらのフルオロエラストマーのための主要な硬化剤としてかまたは唯一の硬化剤として有用であるためには、ヒドラジドのレベルは、フルオロエラストマー100部分あたり約0.05〜7部分のヒドラジド、好ましくはフルオロエラストマー100部分あたり約0.1〜3部分のヒドラジド、最も好ましくは約0.5〜2部分のヒドラジドでなければならない。本明細書中で使用される「部分」とは、別段の指示のないかぎり重量部を意味する。
【0025】
適切なヒドラジドレベルは、硬化特性、例えば硬化性組成物のムーニースコーチの最小値および移動式ダイレオメータ(MDR)トルクの最大値を発生させる時間を考慮することによって選択可能である。最適レベルは、フルオロエラストマーとヒドラジドの特定の組合せによって左右される。
【0026】
任意には、硬化促進剤、例えば硬化温度でアンモニアを放出する化合物をヒドラジド硬化剤と組合せて使用してよい。硬化温度で分解してアンモニアを放出する化合物の例としては、米国特許第6,281,296B1号明細書および米国特許出願公開第2011/00095969号明細書中で開示されている。
【0027】
任意には、ヒドラジドに加えて、ニトリル基硬化部位を有するフルオロエラストマーを架橋するために一般的に使用される別の硬化剤を使用してもよい。このような他の硬化剤の例としては、ジアミノビスフェノールAF、2,2−ビス(3−アミノ−4−アニリノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、モノ−またはビス−アミジン、モノ−またはビス−アミドラゾン、モノ−またはビス−アミドキシムまたは有機過酸化物に助剤を加えたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
フルオロエラストマーの配合において典型的に使用されるカーボンブラック、フルオロポリマー微粉末、安定剤、可塑化剤、潤滑剤、充填剤、および加工助剤は、それらが、意図された使用条件について適切な安定性を有することを条件として、本発明の組成物中に取込むことができる。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、標準的なゴム配合手順を用いてフルオロエラストマー、ヒドラジドおよび他の構成成分を混合することによって調製されてよい。例えば、構成成分をゴム用2本ロール機上、内部ミキサー(例えばBanbury(登録商標)内部ミキサー)内または押出し機内で混合してよい。このとき硬化性組成物は、熱および/または圧力を加えることで架橋(すなわち硬化)され得る。圧縮成形が用いられる場合、プレス硬化サイクルの後に後硬化サイクルが続き、プレス硬化済みの組成物は、このサイクル中に300℃を超える高温で数時間加熱される。
【0030】
本発明の硬化性組成物は、ガスケット、管類およびシールの生産において有用である。このような硬化物品は一般に加圧下でさまざまな添加物を伴う硬化性組成物の配合調合物を成形し、部品を硬化させ、次にそれを後硬化サイクルに付すことによって生産される。硬化した組成物は、優れた熱安定性、蒸気および化学耐性を有する。少なくとも168時間、好ましくは少なくとも336時間225℃の水に曝露した後の体積膨潤度(ASTM D1414)は、5%未満である。同様に、300℃、70時間、15%圧縮での圧縮永久歪(ASTM D395)は70%未満である。硬化した組成物は、半導体デバイスを製造するためのシールおよびガスケットなどの利用分野において、そして高温自動車用途向けのシールにおいて、特に有用である。
【0031】
フルオロプラスチックなどのニトリル硬化部位を含む他のフルオロポリマーを、本発明の組成物中でフルオロエラストマーに代わって使用してもよい。
【0032】
ここで、いくつかの実施形態によって本発明を例証するが、ここで全ての部分は、別段の規定のないかぎり重量部である。
【実施例】
【0033】
試験方法
硬化特性
硬化特性は、以下の条件下でモンサントMDR2000計器を用いて測定された:
移動ダイ周波数:1.66Hz
振幅:±0.5度
温度:別段の指摘のないかぎり190℃
試料サイズ:直径1.5インチ(38mm)のディスク
試験持続時間:30分
【0034】
以下の硬化パラメータを記録した:
:dN・m単位で表わした最大トルクレベル、
:dN・m単位で表わした最小トルクレベル、
90:最大トルクの90%に至る時間、分単位、
【0035】
以下の実施例中で列挙されている調合中に記載の、適切な添加剤と配合されたエラストマーから、供試体を調製した。配合は、ゴム用ロール機上で実施された。圧延された組成物をシート状に成形し、10gの試料をディスク状にカットして供試体を形成した。
【0036】
Oリング試料の圧縮永久歪を、ASTM D395にしたがって決定した。平均値が報告されている。
【0037】
表中に記されている時間中、ASTM D1414にしたがって、225℃で水中体積膨潤度を測定した。
【0038】
以下のフルオロエラストマーポリマーを実施例中で使用した:
FFKM1− 61.8モルパーセント単位のTFE、37.4モルパーセント単位のPMVEおよび0.80モルパーセント単位の8−CNVEを含むターポリマーを、米国特許第5,789,489号明細書中に記載の一般的プロセスにしたがって調製した。
FFKM2− これはFFKM1と同じプロセスにより製造されたが、74.7モルパーセント単位のTFE、24.6モルパーセント単位のPMVEおよび0.70モルパーセント単位の8−CNVEを含んでいた。
【0039】
実施例1
本発明の硬化性組成物を、表Iに示された割合でゴム用2本ロール機上で配合した。配合組成物は、表I中で、実施例1(Sigma−Aldrichから入手可能なギ酸ヒドラジド)と標識されている。配合組成物の硬化特性も表Iに示されている。
【0040】
Tc90プラス5分の間190℃の温度で硬化性組成物をプレス硬化させることによってOリングを製造し、その後、室温からの緩慢な温度上昇の後26時間305℃の温度で窒素雰囲気中で後硬化させた。圧縮永久歪値と体積膨潤度が、表Iに報告されている。
【0041】
先行技術の組成物と本発明の組成物の体積膨潤度を比較するために、類似の、ただしギ酸ヒドラジドではなく0.25phrの尿素を硬化剤として含む化合物からOリングを製造した。225℃の水に対するわずか168時間の曝露の後、尿素で硬化されたOリングは、15.7%の体積膨潤度を示した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2〜4
本発明の硬化性組成物を、表IIに示された割合でゴム用2本ロール機上で配合した。配合組成物は、表II中で、実施例2(Alfa−Aesarから入手可能なベンズヒドラジド)、実施例3(Oakwood Product Inc.から入手可能なイソ酪酸ヒドラジド)および実施例4(イソニアジド、Alfa−Aesar)と標識されている。配合組成物の硬化特性も表IIに示されている。実施例1について開示されたものと同じプロセスによりOリングを製造した。圧縮永久歪および体積膨潤度も同様に、表IIに示されている。
本発明は以下の実施の態様を含むものである。
1.A) ニトリル基含有硬化部位モノマーの共重合単位を含むフルオロエラストマーと;
B) 一般式R1C(O)NHNHR2のヒドラジド(式中R1はアルキル、アリール、ベンジル、複素環、フルオロアルキルまたはHであり;R2はH、アルキル、アリール、複素環、CO23、C(O)HまたはCH24であり;R3はアルキル、CH24、アリール、ベンジルまたは複素環であり;R4はフルオロアルキル基であると;
を含む硬化性組成物。
2.R1がアルキルであり;R1がHである、前記1.に記載の硬化性組成物。
3.前記ヒドラジドが、イソ酪酸、ヒドラジド;マロン酸ジヒドラジド;コハク酸ジヒドラジド;アジピン酸ジヒドラジド;およびテトラデカン二酸、1,14−ジヒドラジドからなる群から選択される、前記2.に記載の硬化性組成物。
4.R1がアルキルであり、R2がCO23である、前記1.に記載の硬化性組成物。
5.R1がアリールであり、R2がHである、前記1.に記載の硬化性組成物。
6.前記ヒドラジドが、ベンズヒドラジド;2−ヒドロキシベンズヒドラジド;およびイソフタル酸ジヒドラジドからなる群から選択される、前記5.に記載の硬化性組成物。
7.R1がアリールであり、R2がCO23である、前記1.に記載の硬化性組成物。
8.R1が複素環であり、R2がHである、前記1.に記載の硬化性組成物。
9.前記ヒドラジドがイソニアジドである、前記8.に記載の硬化性組成物。
10.R1がHであり、R2がHまたはCO23である、前記1.に記載の硬化性組成物。
11.前記ヒドラジドがギ酸ヒドラジドである、前記10.に記載の硬化性組成物。
12.R1がベンジルであり、R2がHまたはCO23である、前記1.に記載の硬化性組成物。
13.R1がフルオロアルキルであり、R2がHまたはCO23である、前記1.に記載の硬化性組成物。
14.前記ヒドラジドの少なくとも1つの酸素原子が硫黄原子で置換されている、前記1.に記載の硬化性組成物。
15.さらに硬化促進剤を含む、前記1.に記載の硬化性組成物。
16.前記1.に記載の組成物から製造される硬化物品。
17.少なくとも168時間225℃の水に曝露した後ASTM D1414にしたがって測定した体積膨潤度が5%未満であり、ASTM D395にしたがって測定した300℃、70時間、15%圧縮での圧縮永久歪が70%未満である、前記16.に記載の硬化物品。
【0044】
【表2】