【文献】
J. P. Hadden et al.,Strongly enhanced photon collection from diamond defect centers under microfabricated integrated solid immersion lenses,Appl. Phys. Lett.,2010年,Vol.97/No.24,Page.241901-1〜241901-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの光学検出器は、前記少なくとも1つの出力面を介して放射された蛍光の少なくとも75%を受け取るような、前記少なくとも1つの出力面に対する大きさおよび位置を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出システム。
前記少なくとも1つの光学検出器は、直接的に、または、フィルターを介して間接的に、前記少なくとも1つの出力面に接して位置付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出システム。
少なくとも1つの光学検出器によって受け取られた蛍光に基づいて外部場に関する情報を決定するように構成されるプロセッサをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実例となる実施形態が本出願で議論される。他の実施形態が加えてまたは代わりに使用されてもよい。
【0009】
本発明は記載された特定の実施形態には限定されず、そのようなものとして変更してもよいことが理解されなければならない。さらに、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを記載する目的のものであり、限定的なものであると意図されてはいない。なぜなら、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるからである。
【0010】
広範な範囲の値が与えられる場合、その文脈が別途明らかに記載していない限り、その範囲の上限と下限のあいだの下限の単位の十分の一までのそれぞれの介在する値と、その記載された範囲の他の記載されたまたは介在する値は、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限と下限は、より小さな範囲に単独で含まれてもよく、記載された範囲内の任意のとりわけ除外された限界に従って、本発明の範囲内にも含まれる。記載された範囲が1つまたは両方の限界を含んでいる場合、これらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外した範囲も本発明に含まれている。
【0011】
別段指定されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料に類似するまたは同等の方法および材料は、本発明を実施するまたは試験する際に使用され得るが、限定された数の典型的な方法が本明細書に記載されている。
【0012】
本開示では、ダイヤモンドなどの固体状態のスピンサンプル中の色中心蛍光のための高い光検出効率を実現することができる方法およびシステムが記載されている。これらの方法とシステムは、サンプルの外側の
1又は2以上の検出器に蛍光光子を光学的に導くために、内部反射に依存している。
【0013】
図1は、本出願の
1又は2以上の実施形態に従った蛍光検出システム(100)の概略的なブロック図である。例証されるシステム(100)では、ダイヤモンド材料か
ら形成され、NV蛍光色中心を含むサンプル(150)が使用されている。サンプル(150)は、その周囲の媒体、すなわち、空気よりも実質的に大きな屈折率を有する。したがって、色中心によって放出された蛍光は、全反射または内部反射のいずれかによって、ダイヤモンドの内部表面から内部に反射され、その結果、ダイヤモンドは光導波路として作用することができる。
【0014】
図3Aと3Bからよりはっきりと見えるように、サンプルは少なくとも1つの出力面と、
1又は2以上の蛍光色中心によって放出される蛍光を内部に反映し、放出された蛍光を出力面に光学的に導くようい構成された少なくとも2つの対向する表面を含む。
【0015】
システム(100)は、適用された際に色中心から蛍光の放射を引き起こす励起光を生成するように構成された光源(120)をさらに含んでいる。例証された実施形態では、光源(120)は532nmの励起レーザーである。多くの他の種類の光源を使用することができる。例えば、光源は、637nm未満の波長に調整可能なレーザーまたはLEDであってもよい。
【0016】
システム(100)は、色中心によって放射され、ダイヤモンドのサンプルの表面の対向する表面から内部に反射され、ダイヤモンドのサンプル(150)の
1又は2以上の出力面を通って出る蛍光を受け取るように構成された少なくとも1つの光学検出器(140)をさらに含んでいる。検出器は、直接的に、または、フィルターを介して間接的に、出力面に接して位置付けられてもよい。
【0017】
幾つかの実施形態では、複数の検出器が設けられてもよく、それぞれの検出器は、検出器の関連する出力面から光を受け取るように構成されている。
【0018】
幾つかの実施形態では、検出器は、出力面を介して放射された蛍光の少なくとも75%を受け取るような、出力面に対する大きさおよび位置を有してもよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、システム(100)は、レーザーからの光の焦点をサンプル(150)に合わせる対物レンズ(122)、および、励起ビームからの蛍光を分離する
1又は2以上のダイクロイックミラー(124)、および、正確なタイミングでレーザー(120)をパルス化する、高速スイッチングAOM(音響光学変調器)(130)も含んでもよい。
1又は2以上の実施形態では、光学フィルター(124)の
1又は2以上は、ダイヤモンドのサンプル(150)の出力淵部に接触して置かれてもよい。フィルター(124)は、例えば、650nmのロング・パス・フィルターであってもよく、NVを励起させるために用いられた散乱した532nmの光を反射しつつ、NVの蛍光帯域(〜637−800nm)のほとんどを伝送するように構成されてもよい。
【0020】
フォトダイオード(140)は、フィルターの背部に付けられてもよい。フィルターは、例えばチップ・スタイルSiフォトダイオードであってもよく、約2mmの厚さを有する2mm厚の石英基板に配置されてもよい。検出受光角を最大限にするために、例えば、約6mm×7mmの面積を有する活性領域の大きなフォトダイオードが使用されてもよい。他の実施形態では、薄型の光学フィルターを備えた小型の検出器が使用されてもよい。
【0021】
処理システムは、システム(100)に統合されてもよい。処理システムは、本出願に記載される方法、システム、および、アルゴリズムを実行するように構成される。とりわけ、処理システムは、光学検出器(140)によって受け取られる蛍光に基づいて外部場に関する情報を決定するように構成されてもよい。外部場は、制限なく、電場または磁場を含んでもよい。
【0022】
処理システムは、任意の種類のマイクロプロセッサー、ナノプロセッサー、マイクロチップ、または、ナノチップを含んでもよく、あるいは、これらからなるものであってもよい。処理は、内蔵のコンピュータ・プログラムによって選択的に構成および/または作動してもよい。処理システムは、上に記載された方法とシステムを実現するために、そのようなコンピュータ・プログラムが内蔵されることもある、コンピューターで使用可能な媒体を含んでもよい。コンピューターで使用可能な媒体は、処理システムのために、内蔵されたコンピューターで使用可能な指令を有してもよい。本出願の方法およびシステムは、任意の特定のプログラミング言語に関して記載されていない。したがって、本出願の教示を実行するために、様々なプラットフォームやプログラミング言語が使用されてもよいことが企図されよう。
【0023】
図2は、空格子点(210)に隣接している置換窒素原子NからなるNV中心を例証している。すなわち、NV中心は、ダイヤモンド格子中の欠けている炭素原子に由来する空の位置または空格子点である。1つの炭素原子が窒素原子(220)と取り替えられ、もう一つの空間が空のままであるので、2つの隣接する部位が変わっている場合、NV不純物は、炭素原子(230)の格子に基づいている。
【0024】
幾つかの実施形態では、サンプル(150)は、[100]軸に沿って配向したダイヤモンドチップであってもよく、約4.3mm×4.3mm×0.2mの大きさを有してもよい。サンプル(150)は、およそ10
15cm
−3の高いNV密度でCVD(化学蒸着法)によって成長してもよい。
【0025】
上記の内部反射誘導系の特定の1つの実施は、側方収集と呼ばれる方法である。
図3Aおよび3Bは、本出願の
1または2以上の実施形態に従った光側方収集を例証する。
【0026】
図3Aと3Bで見られるように、側方収集方法では、集光レーザービーム(328)は、サンプル内の特定の比体積の色中心を励起させるために用いられ、結果として生じる蛍光(360)のほとんどは、サンプルの少なくとも2つの対向面(310)からの内部反射を介してサンプルを通って光学的に誘導され、ダイヤモンドの導波路の
1または2以上の出力面(350)から出た後に、検知される。
【0027】
2つの対向する面(310)は、10°以内で平行であってもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、サンプルは、主要な面が放射された蛍光を光学的に導くために対向する面を形成した、プレートの
形態であってもよい。プレートは、出力面を形成する
1又は2以上の側面(350)を含んでもかまわない。
【0029】
幾つかの実施形態では、複数の検出器が設けられてもよく、それぞれの検出器は、検出器の関連する側面から光を受け取るように構成される。したがって、
図3Aで例証された実施形態では、4つの光子検出器は、ダイヤモンドチップの4つの主要な側のまわりに配置されてもよい。他の実施形態では、例えば、サンプルの
1又は2以上の外表面が磨かれ、鏡で覆われる場合、検出器の数は少なくなることもある。
【0030】
幾つかの実施形態では、サンプル(310)は、ほぼ平面の、および、互いにほぼ平行な対向する内表面を含む、長方形の固体構造を有してもよい。
【0031】
従来では、大量のダイヤモンド基板中のNVから放射された光子は、大きなNA(開口数)の顕微鏡対物レンズを用いて集められる。しかしながら、水平なダイヤモンド界面での屈折は、ダイヤモンドの屈折率(n
d=2.4)と等しい因子だけ対物レンズの効率を低下させ、最大の対物レンズのNAを1.49と仮定すると、約10%の光子収集効率η
cをもたらす。検出器の連結と量子効率を考慮に入れると、光子検出効率η
d<2%が一般的である。
【0032】
NV蛍光の約91%が臨界角(25°)を超える角度に放射され、以下に皿に記載されるように、完全に内部反射されることが分かっている。50%が、側面に到達した後、長方形の固体サンプルの側端を出る。多重散乱の後は、もっと多くのものが側面からでる。ダイヤモンドの側端に
1又は2以上の検出器を置くことによって、収集効率は、以下に皿に記載されるように、50%<η<90%の範囲になるとと予想される。ダイヤモンドの内部のいかなる場所からも光を効率的に検知することができるので、側方収集方法は大量のアンサンブルNV測定にとって理想的である。
【0033】
上に記載された側方収集方法の予想される効率は、平均的なNV放射パターンの理論モデル、および、ダイヤモンドチップの幾何学的形状の現実的な近似値、および、検出器の受光角を用いて、推定することができる。ダイヤモンドチップの磨き上げた(100)平面間のTIRによって、NV蛍光の〜91%が限定され、〜29%がダイヤモンドチップの側端による光子の第1の入射で検出器に達することが分かった。光のほとんどが側面からTIRを経験するが、ダイヤモンド内での多くの反射後、検出器に達することもある。したがって、我々は、側方収集技術について29%<η
c<91%と予想する。実験の形状およびダイヤモンドチップ表面性質の詳細などの基準に依存して、収集効率η
cはゆえに、約29%から約91%の間にあると予想される。
【0034】
図4は、顕微鏡の対物レンズを用いて検知されたNV蛍光信号と比較して、側収集方法によって検知されたNV蛍光信号(検知された光子の数)を比較する。特に、
図4は、様々なレーザー出力で、532nmの励起レーザー光の300−ns持続時間のパルス化の間に、2つのそれぞれの収集様式、すなわち、側方収集と顕微鏡の対物レンズを用いて検知された蛍光光子を合わせた数を比較する。
図4では、電荷に感受性の高い増幅器を2本の収集経路のフォトダイオードに交互に接続し、平均信号振幅を記録することによって、合わせた光子数を測定した。
図4で示されるように、側方収集信号は、理想的な実験条件下では、顕微鏡の対物レンズの信号よりも、100±5倍多くの光子数を有することが分かった。
【0035】
幾つかの実施形態では、上記の方法とシステムは、静磁場および周期磁場、すなわち、DCおよびAC磁力計、例えば、ダイヤモンドチップ中のNVスピンのアンサンブルを使用する高感度な磁力計の測定にも適用可能である。
【0036】
一例として、1つの実施形態では、標準スピンエコー技術が、〜10
−4mm
3のレーザー励起体積の磁力計信号に貢献する約〜108NVを含むサンプル上で使用されてもよい。概観では、この実施形態では、光ポンプパルスをNVスピンに適用して、|m
s=0>状態のNVスピンを準備することができる。その後のマイクロ波スピンエコーシーケンスにより、NVスピンが適用された20kHzの磁場を調査することを可能にする。光学の読み出しパルスにより、当初の状態と比較して、NVスピンに依存した蛍光性の変化の測定を可能にする。
【0037】
典型的な実施形態では、37.5Gの静磁場が[111]軸(
図2に例証する)の方向にかけられてもよく、その結果、適用されたマイクロ波場は、[111]に配向したNVの|ms=0>⇔|ms=1>のスピン転移を合理的に選択するために使用され得る。このように、NVの配向が4つの結晶軸に沿って等しく分布するため、NVスピンの総数の4分の1は共鳴的に操作される(resonantly manipulated)。スピンエコー持続時間(τ)をスイープすることによって、
13C核の歳差運動持続時間の倍の再生でも、T
2コヒーレンス曲線は生成され得る。上記の高NV密度ダイヤモンドのサンプルについては、T
2の抽出された値は35μsであった。磁力計の曲線は、τ=50μsの20kHzのAC磁場の振幅を変動させることによって、生じうる。
【0038】
図5は、蛍光側方収集を使用する上記磁力計の用途で生じたAC磁力計曲線を例証する。上に説明されるように、
図5に示されるNVダイヤモンドのAC磁力計曲線は、生成される際に、τ=50でB
ackを変えることによって生成される。
図5では、B
ack=0に近接する曲線の拡大した領域は、それぞれが57μs続く大量のAC磁力計による測定の平均偏差と標準偏差を描いている。信号中の±0.071%不確実性(垂直のエラーバー)は、一度の測定に関して、B
ackにおける±13の非不確実性(水平のエラーバー)に対応する。
図5に示される曲線は、このように、約100pT(picotesla)/√Hzの磁力計感度ηをもたらす。この実施形態では、感度はレーザーと電気ノイズによって制限された。予想されたショット雑音によって制限された感度は、4pT/√Hzであった。
【0039】
AC磁力計感度における、約1pt./√Hzまでのさらなる改善が達成されてもよい。ショット雑音によって制限される測定が行われるものと予想される。同様に、より大きなNVアンサンブルを使用することによって、すなわち、10
5μm
3の現在測定されている体積と比較して、レーザーによって調査されるサンプル体積を増やすことによって、より高い感度が達成されてもよい。高感度は大きなNVアンサンブルで可能でなければならない。同様に、より優れたダイヤモンドサンプル、例えば、同位体で操作された
12Cサンプル、および/または、高N→NV変換のサンプルは、環境デカップリング技術とともに、sub−pT/√Hz磁気測定を可能にしてもよい。AC磁力測定感度が
図5に連動して記載されてきた一方で、本出願に記載された蛍光検出方法およびシステムは、DC磁力測定、すなわち、静磁場またはDC磁場の検知に適用可能である。
【0040】
要約すると、サンプルの外縁付近に置かれた検出器に色中心蛍光を導くために、スピンサンプルの大きな屈折率と結果として生じた全内部反射とを用いることによって、ダイヤモンドなどのスピンサンプル中の色中心蛍光の効率的な光検出を達成する方法とシステムが記載されてきた。本出願に記載された方法とシステムは、一度のアンサンブルの色中心蛍光測定と空間分解測定とに適用可能である。
【0041】
上記の方法とシステムに由来する光子検出の強化は、多くの他の潜在的な用途を有している。一例として、磁力測定は、時間分解側方収集蛍光測定を行いつつ、レーザー焦点をスキャンすることによって、ダイヤモンドチップ表面の近くのNVの薄層を使用することによって、磁場撮像にまで拡張されてもよい。側方収集によって与えられる高いSNRは、デコヒーレンスプロセスを研究するために、および、磁力測定および量子情報に関するNVスピン操作プロトコルを開発するために使用されることもあるNVアンサンブル測定の速度も著しく増加させる。
【0042】
議論されてきた構成要素、工程、特徴、対象、利益、および、利点は、単なる例に過ぎない。それらのいずれも、関連する議論も、いかなる方法でも保護の範囲を制限することを意図していない。より少ない、追加の、および/または、異なる構成要素、工程、特徴、対象、利益、および、利点を含む多くの他の実施形態も企図される。構成要素と工程は異なるように準備されても、命じられてもよい。
【0043】
記載または例証されたものは何も、任意の構成要素、工程、特徴、対象、利益、利点、あるいは、公共のものとの同等物のいずれかの専用を引き起こすことを意図していない。明細書は本開示の特定の実施形態を記載しているが、当業者は本開示で開示された発明の概念から逸脱することなく、本開示の変更形態を考案することができる。
【0044】
特定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態における暗黙の概念は他の実施形態でも同様に使用されてもよいことが理解されよう。本開示では、単数形の要素への言及は、特段指定のない限りは「1および1のみ」を意味することを意図しておらず、むしろ、「
1または2以上」を意味するように意図している。当業者に知られている、または、知られるようになる、本開示の全体にわたって記載された様々な実施形態の要素に対する構造的かつ機能的な同等物は、引用により本明細書に明らかに組み込まれる。