(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798246
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】装入装置用の分配シュート
(51)【国際特許分類】
C21B 7/20 20060101AFI20151001BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20151001BHJP
F27B 1/20 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
C21B7/20 302
F27D3/12 Z
F27B1/20
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-516263(P2014-516263)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-522910(P2014-522910A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2012060681
(87)【国際公開番号】WO2012175335
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】91829
(32)【優先日】2011年6月21日
(33)【優先権主張国】LU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】ティレン,ギー
(72)【発明者】
【氏名】シネス,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ロナルディ,エミール
(72)【発明者】
【氏名】デヴィレ,セルジュ
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−292988(JP,A)
【文献】
特表2008−544082(JP,A)
【文献】
特開平2−80504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/20
F27B 1/20
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(A)の周りで回転すると共に旋回軸(B)の周りで旋回するように構成された、装入装置、特に高炉の装入装置、のための分配シュート(100)であって、
上流マウントヘッド(114)と、長手方向軸(L)を伴って長手方向に延びる下流シュート部(116)及び出口(120)を有するシュート本体(112)とを含み、前記下流シュート部は装入原料が滑動することができる滑動面を規定し、作動中に装入原料が前記出口を通して排出され、
分配シュートを前記装入装置の少なくとも2個の対応する支持フランジ(140)に配設するための、少なくとも2個の横方向支持具(130、230、330)が前記マウントヘッド上に設けられており、前記支持フランジ(140)は半径方向最外装入位置に前記出口(120)を上昇せしめる上昇方向(R)及び前記回転軸に対して半径方向最内装入位置に前記出口を降下せしめる反対側の降下方向に前記旋回軸(B)の周りで旋回自在であり、
分配シュートが重心(G)を有すると共に前記支持具(130)が第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(T1,T2)を規定し、分配シュートが前記装入装置に配設される際に、分配シュートの重量が前記装入装置の該支持フランジの周りに妨害トルクを生じる、
分配シュートにおいて、
前記第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(T1,T2)の各々と前記旋回軸(B)との間隔(d)と第一の傾斜地点(T1)と第二の傾斜地点(T2)との間隔(D)との比が0.25以下、好適には0.1乃至0.15であり、
前記支持具は、前記長手方向軸(L)から、前記第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(T1,T2)及び前記重心(G)を通る面(P)までの鋭角(α)が上昇方向において−5度乃至15度の範囲(−5度≦α≦15度)となるように位置せしめられている、
を特徴とする分配シュート。
【請求項2】
前記支持具(130、330)は、シュート交換位置に旋回せしめられる際に分配シュート(100)が前記支持フランジに降下方向のトルクを加えるように位置せしめられ、垂直に対して5度未満の角度(β)において前記長手方向軸(L)が実質的に垂直を向く、ことを特徴とする請求項1に記載の分配シュート。
【請求項3】
前記鋭角(α)は上昇方向に0より大きく、好ましくは0°≦α≦+15°、より好ましくは0°≦α≦+5°、である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分配シュート。
【請求項4】
前記長手方向軸(L)と平行であると共に前記第一の傾斜地点(T1)及び前記第二の傾斜地点(T2)を通る平面からの前記重心(G)の間隔(X)が前記下流シュート部(116)の長さの10%未満、好ましくは5%未満、となるように、前記支持具(130)が分配シュート上に位置されている、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の分配シュート。
【請求項5】
前記マウントヘッド(114)は周方向に閉じた形態である環状構造であり、前記支持具(130)は横方向両側に突出するように前記マウントヘッド(114)と一体に形成、好ましくは相互に一体成形、されている、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の分配シュート。
【請求項6】
少なくとも1対の支持具(130)と対応する支持フランジ(140)は、安全ピン及び協働するピンホールを具備し、前記支持具及び前記支持フランジは、前記安全ピンが取り外された時に前記支持フランジに対して上昇方向(R)に分配シュートが傾斜することを許容する一方、前記支持フランジに対して下降方向に分配シュートが傾斜しないようにする形状であって、前記安全ピンは前記第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(T1,T2)を通過する傾斜軸(T)と合致する軸を有する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の分配シュート。
【請求項7】
支持具(130)の各々は、対応する支持フランジでベアリング突出部(142)と協働する重量荷担面(133)を有する少なくとも1個の横方向突出部(132)と、対応する支持フランジで前記長手方向軸に沿って離隔するのが好ましい少なくとも2個の隣接面(145,147)と協働する前記重量荷担面(133)の横方向にある少なくとも2個の反対方向を向くトルク荷担面(135、137)とを具備する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の分配シュート。
【請求項8】
支持具の各々は単一のコヒーレントマウント突出部(132)を具備し、前記突出部は前記長手方向軸(L)に対して5度未満であるのが好ましい方向に沿って延出している、ことを特徴とする請求項7に記載の分配シュート。
【請求項9】
前記コヒーレントマウント突出部(132)はその長手方向に対して鏡面対称である多角形状であり、特に四角形、好適には矩形又は台形断面形状である、ことを特徴とする請求項8に記載の分配シュート。
【請求項10】
支持具(230)の各々は少なくとも3個のマウント突出部(232−1,232−2,232−3)を具備し、第一の突出部(232−1)は前記重量荷担面(233)を有し、第二の突出部(232−2)及び第三の突出部(232−3)も同様に対向するトルク伝達荷担面を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の分配シュート。
【請求項11】
前記長手方向軸に対応した屈曲角度で中心軸(H)を有するように前記上流マウントヘッド(114)は屈曲せしめられ、前記屈曲角度は15度乃至45度、より好ましくは20°乃至40度、の範囲である、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の分配シュート。
【請求項12】
シュート交換位置において、前記下流シュート部(116)の前記長手方向軸(L)は垂直に対して上昇方向に0°≦β≦+5°である角度(β)をなす、ことを特徴とする請求項11に記載の分配シュート。
【請求項13】
前記下流シュート部(116)は円錐又は円筒形状であって、周方向に閉じた形態である環状構造であり、前記マウントヘッド(114)に付設されていて、前記マウントヘッド(114)に前記上昇方向で更に半径方向外方の装入位置に分配シュートを旋回せしめることを可能とする溝(134)を具備する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の分配シュート。
【請求項14】
回転軸の周りを回転し且つ旋回軸の周りを旋回する分配シュートを具備する装入装置(180)、特に高炉用の装入装置、であって、
前記回転軸の周りを回転することができると共に、前記分配シュートの少なくとも2個の両側横方向支持具(130)と協働する少なくとも2個の両側支持フランジ(140)を有し、前記支持フランジが半径方向最外装入位置に前記分配シュートの出口を上昇せしめる上昇方向(R)及び前記回転軸に対して半径方向最内装入位置に前記出口を降下せしめる反対の降下方向に前記旋回軸(B)周りに旋回することができるローター(182)、を具備する装入装置において、
前記分配シュートが請求項1乃至13のいずれかに記載の分配シュート(100;200;300)である、ことを特徴とする装入装置。
【請求項15】
前記旋回軸(B)が前記回転軸(A)と垂直に交差し、前記第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(T1,T2)を通過する傾斜軸(T)が前記旋回軸(B)からオフセットしており、前記分配シュートの重量が該傾斜軸(T)周りで前記支持フランジにトルクを加える、ことを特徴とする請求項14に記載の装入装置。
【請求項16】
前記傾斜軸(T)は前記シュート本体(112)の前記滑動面に向かう方向に前記旋回軸(B)からオフセットする、ことを特徴とする請求項15に記載の装入装置。
【請求項17】
回転軸(A)の周りを回転し且つ旋回軸(B)の周りを旋回する請求項1乃至13のいずれかに記載の分配シュートを、前記分配シュートの少なくとも2個の支持具と対応し、前記回転軸に対して直径方向両側に位置する少なくとも2個の支持フランジを備えた装入装置に配設する方法にして、
前記回転軸(A)に沿って前記分配シュートを降下せしめる間、少なくとも2個の支持具を前記支持フランジに整合せしめると共に少なくとも2個の前記支持具を前記支持フランジ上に静止せしめ、
前記分配シュートの重量が前記支持フランジに妨害トルクを生じるように、上昇方向に前記旋回軸(B)周りに前記支持フランジを回転せしめる、ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記少なくとも2個の支持具を前記支持フランジに整合せしめ、前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジよりも上方になるまで前記分配シュートが前記回転軸に沿って上昇される、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分配シュートが上昇されている間は、前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジを通過できるように、前記分配シュートが前記装入装置に対して前記回転軸(A)周りに回転され続ける、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
回転軸(A)の周りを回転し且つ旋回軸(B)の周りを旋回する分配シュートを、前記回転軸に対して相互に直径方向両側位置に配置された少なくとも2個の支持フランジを含む装入装置に配設する方法にして、
前記分配シュートは前記支持フランジに対応する少なくとも2個の横方向支持具を含み、
前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジより高くなるまで前記回転軸に沿って前記分配シュートを上昇せしめ、
前記分配シュートが上昇されている間、前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジを通過することができるように、前記装入装置に対して前記分配シュートは前記回転軸(A)の周りに回転し続け、
前記回転軸(A)に沿って前記分配シュートが降下し前記少なくとも2個の支持具を前記支持フランジに静止させている間、前記少なくとも2個の支持具を前記支持フランジと整合せしめ、
前記支持フランジを前記回転軸(B)周りに、前記分配シュートが上昇する方向に回転せしめ、前記分配シュートの重量が前記支持フランジに妨害トルクを生じさせる、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
回転軸(A)の周りを回転するとともに旋回軸(B)の周りを旋回する請求項1乃至13のいずれかに記載の分配シュートを、前記分配シュートの少なくとも2個の支持具と対応し且つ前記回転軸に対して相互に直径方向両側位置に配置された少なくとも2個の支持フランジを有する装入装置から取り外す方法にして、
前記分配シュートの重量が前記支持フランジに妨害トルクが生じない又は殆ど生じないまで、降下方向に前記旋回軸(B)周りに前記支持フランジを回転せしめ、
前記支持フランジから前記分配シュートを持ち上げるとともに前記分配シュートを前記回転軸(A)に沿って上昇せしめる、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
少なくとも前記支持具が前記支持フランジよりも高くなるまで前記分配シュートが上昇せしめられた後に、前記分配シュートが前記回転軸に沿って降下せしめられ、
前記分配シュートが降下されている間は、前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジを通過することができるように、前記分配シュートが前記装入装置に対して前記回転軸(A)周りに回転され続ける、
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
回転軸(A)の周りを回転し且つ旋回軸(B)の周りを旋回する分配シュートを、前記回転軸に対して相互に直径方向両側位置に配置された少なくとも2個の支持フランジを含む装入装置から取り外す方法にして、
前記分配シュートは前記支持フランジに対応する少なくとも2個の横方向支持具を含み、
前記分配シュートの降下方向に前記旋回軸(B)周りに前記支持フランジを回転せしめることで、前記分配シュートの重量が前記支持フランジに妨害トルクを生じない又は殆ど生じず、
前記分配シュートを前記支持フランジから持ち上げるとともに、少なくとも前記支持具が前記支持フランジよりも高くなるまで前記分配シュートを前記回転軸(A)に沿って上昇せしめ、しかる後に、
前記分配シュートを前記回転軸に沿って降下せしめ、前記分配シュートが降下している間は前記少なくとも2個の支持具が前記支持フランジを通過することができるように前記分配シュートを前記装入装置に対して前記回転軸(A)周りに回転し続ける、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に回転軸及び旋回軸の各々の周りで分配シュートを回転及び旋回せしめる形式の装入装置に関する。詳細には、本発明は銑鉄を生成するための溶鉱炉又は任意の類似する高炉或いは冶金炉内に装入原料を分配する装入装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は分配シュートそのもの、及び、装入装置にシュートを配設するための支持装置を改良した装入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
周知である装入装置は、シュートが、支持、回転、旋回するように、設計されている。例えば溶鉱炉内における装入表面上の周方向及び半径方向にバルク材を分配するために、一般的には回転及び旋回は2個の相互に垂直な軸の周りにて行う。広範囲に分配する設計においては、この種の装入装置で使用されるシュートはシュート本体を有し、シュート本体は少なくとも下流シュート部の一部又は全部が細長形状であると共に長手方向軸に沿って延出している。一般的に、シュート本体は少なくともその下流部分において、半円筒形状又は矩形トラフ形状表面のような内側滑動凹面を有しており、かような凹面上を作動時に装入原料が滑動する。シュート本体の下流端には出口が設けられ、かかる出口から装入原料がシュート本体より排出される。その反対、即ち上流端においては、一般的にシュートは2個の支持具を有し、かかる支持具が装入装置にシュートを支持するために用いられている。装入装置はシュートを回転するために、例えば火炉の垂直中心軸の周りに回転することができるローターと、シュートを支持するための2個の対向支持フランジと、を有する。支持フランジはその上流端においてシュートを保持するためにシュート上で2個の横方向支持具と協働する。半径方向へ分配する範囲を定めるために、支持フランジは2方向、即ち、半径方向最外装入位置にシュート出口を上げるための上昇方向、及び、それとは反対方向であり、回転軸に対して、半径方向最内装入位置にシュート出口を下げるための降下方向、で旋回軸の周りを旋回することができる。溶鉱炉に装入する場合においては、最外装入位置は火炉殻に近接する所謂“壁装入”に対応する。最内装入位置は、例えばコークス煙突を作るための、所謂“中央装入”用に使用される。
【0004】
きわめてよく知られたこの形式のシュートは例えば米国特許第5513581号、又は欧州特許第0640539号である。装入装置と対応する支持フランジ上にシュートを設置するために、このシュートは所謂‘カモノハシ形状’である2個の横方向支持具(“支持装置”ともいう)を有する。独逸国特許第3342572号及び英国特許第1487527号特許として既に周知であるカモノハシ形状支持具は、実際とても満足のいくものであり、長年広く使用されてきた。しかしながら、それらはさらに複雑な取り付け及び取り外し工程を要求してきた。かかる工程では、操作装置を配設すること、シュートの出口端を持ち上げること、支持フランジを旋回させること、シュートを傾斜させること、火炉内に低下させること、等を含む。特別な操作装置は例えばルクセンブルク特許第65663号及び国際特許出願第01/18255号に記載されている。かかるバランスウェイト装置は何より必要である。なぜならば、その特徴的な形状をした支持具が支持フランジに固定される前に、シュートが装入装置の下部で保持されていなければならないためである。当然、その間にシュートが落下する危険性を完全に解消しなければならない。
【0005】
これら既知の欠点を改善することを目的とするとともに、新しい種類のシュート支持部が国際特許出願第2010/028894号に記載されている。この種類のシュートは添付した
図2に図示されている。これは隣接面及びカウンター隣接面を伴う一般的なフック形状である支持具を有する。シュートが配設される際に、後者の反作用トルクは装入装置の支持フランジ上に作用する。理解されるとおり、シュートはその出口の反対端にて通常“カンチレバー”形式に近い形式で片側面のみで支持される。その結果、シュートの重量に加えてシュート上を滑動する装入原料が装入装置の支持フランジ上にトルクを生じることとなる。かかるトルクが支持フランジと比較してシュートをより故障させる傾向がある。添付した
図2に示す支持具を伴うシュートには2個の主な利点がある。第一に、取り付け及び取り外しの最終工程及び初期過程において、フック形状支持具が、不注意によりシュートを落下させる危険性を最小限にするということである。第二に、いかなるバランスウェイト装置をも必要としないことである。
【0006】
しかしながら上記記載から理解されるとおり、例えば“カモノハシ形状”又はフック形状の如き共通に使用されるシュート支持具は通常複雑形状であり、かような形状が取り付け及び取り外しに要する作業又は相対的な作業を複雑にする。支持具及び支持フランジの形状の複雑さに加えて、シュート重量が支持フランジに作用する傾斜トルクが取り付け及び取り外しを妨げる。
【0007】
もう一つの簡易化した周知のシュート及びシュート支持具は米国特許第5022806号に開示されており、添付した
図1に図示されている。このシュートは全体的に矩形断面形状であるトラフ形状シュート本体を有する。シュート本体は、滑動面上にてバルク材の流れをシュート出口に向かわせるために、全体的に長手形状であって長手軸に沿って延出している。両側の支持具のように、このシュートは両側支持フランジに対応する溝によって滑動及び保持される2個の横方向ピンを有する。米国特許第5022806号に基くシュートは、その自重によってフランジと係合される支持具を有する。米国特許第5022806号にかかる発明の顕著な特徴としては、支持フランジが要求される交換位置に旋回される際に、シュートの取り付け及び取り外しをシュートの長手軸に沿ってシュートを引っ張る又は押込むことにより簡単にすることができることである。しかしながら米国特許第5022806号に従った簡易支持具であっても、支持フランジ上でのシュートの傾斜トルクが依然として取り付け及び取り外しを妨げることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の第一の目的は、装入装置へのシュートの取り付け及び取り外しをより容易にせしめるシュート形状を提供することである。第二の目的は、作業中におけるシュートの支持構造上への重大なトルク反転を回避することである。
【0009】
この目的は、請求項1で請求される分配シュート及び請求項14で請求される装入装置、によって達成される。
【0010】
本発明は、装入装置に用いられる分配シュートに関するものであり、装入装置において回転軸の周りで回転すると共に旋回軸の周りで旋回するように構成されている分配シュートに関する。かかるシュートは特に溶鉱炉のような高炉の装入装置に適している。
【0011】
本発明にかかるシュートは、シュートを装入装置に配設するための上流マウントヘッドと、バルク材を流す主シュート本体とを具備する。シュート本体は、長手方向軸に沿って延びると共に装入原料が滑動する滑動面、好ましくは原料が横方向に制限された態様で滑動する凸状滑動表面、を定義する下流シュート部を有する。下流部は更に装入原料がシュート本体から排出、即ち作動中において冶金炉内に落下、される際に通過する出口を定義している。かかるシュートは、少なくとも2個の横方向支持具を具備する。かかる支持具はマウントヘッドの両側に配設されていると共にシュートをそこに配設するために装入装置の対応する2個の支持フランジと協働する。これらの支持フランジは、半径方向最外位置に出口を上昇せしめる上昇方向及び回転軸に対して半径方向最内装入位置に出口を降下せしめる反対方向の降下方向に旋回軸周りを旋回する。
【0012】
シュートは本来的な重心を有している。かかる重心は、シュートが(装入物が積まれていない)即ち空の状態でそれ自身の構造に起因した摩耗していない状態でのことを言う。支持具が第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点(順に旋回軸と一致又は平行である傾斜軸を定義する)を定義し、シュートが装入装置に配設される際に、シュートの重量が装入装置の支持フランジに傾斜地点周りの妨害トルクを生じる。このトルクは重心の半径方向位置に依存する。シュートが上昇方向に旋回すればするほど、横方向支持具はトルクによって支持フランジにより妨害される。第一及び第二傾斜地点によって定義される傾斜軸が実質的に垂直に位置する時、妨害トルクは最小(シュート交換位置)になる。支持具は、傾斜地点の何れかと旋回軸との間隔と第一の傾斜地点と第二の傾斜地点(両支持具の間の距離と少なくとも近似対応している)との間隔との比が0.25以下、好適には0.1乃至0.15であるように構成されている。
【0013】
本発明によると、シュートの支持具は滑動面(最も摩耗される部分)の底に向かって全体的にオフセットして位置又は配置せしめられている。より詳細には、支持具は長手方向軸から、傾斜軸及び重心を通る(垂直)面までの鋭(符号付き又は指向性)角(以後αで示す)が上昇方向において実質的に負でない角度を有する、即ち−5度以上15度以下(より好ましくは10度より小さく、更により好ましくは5度以下)である。これは、αが上昇方向に向いている場合(参照図において正方向)、αの絶対値は15度以下、即ち|α|≦15度、であることを意味する。αが上昇方向と反対を向いている場合、αの絶対値は5度以下、即ち|α|≦5度、である。
【0014】
可能な限りトルク反転を避けるべく、支持具は、シュート交換位置に旋回せしめられる際にシュートが支持フランジに降下方向のトルクが生じるように位置せしめられ、長手方向軸が実質的に垂直、即ち垂直に対して5度未満、を向くのが好ましい。換言すると、シュートの交換位置はシュートが届くことができる最も低い位置であって、所謂装入中心位置を越えた位置と対応する。
【0015】
理解されるとおり、前述の傾斜位置とそれによる装入装置の支持フランジに生ずるトルクの方向は、デザインと、とりわけシュート上の支持具の位置に依存する。交換位置において協働する支持フランジでシュートによって生ずるいかなるトルクの存在も回避するため、提案されたデザインはシュートの取り付け及び取り外しを極めて容易にし、かような交換位置においては―もう一つの注意すべき局面として―シュートが自然的に垂直を向く。交換位置にトルクが僅かでもある場合、支持フランジからシュートを“ブロック解除”するためのいかなる特別な手順も必要とせず、シュートが取り外し及び取り付けるための支持フランジの上方又は下方に容易に持ち上げられる。更なる利点として、作動中における両端旋回位置間での傾斜トルクの反転を避けることができる。シュートが上昇した最外装入位置から降下した最内装入位置に向かって降下方向に降下する際に、周知のデザインと共に、所定の旋回角度で支持フランジに生ずる傾斜トルクの反転がある。一般的には数トン又は数十トンの重量で考えた際に理解されるとおり、かかる反転は旋回機構、支持具、協働する支持フランジ、シュート支持を回転させることができるベアリング等の摩耗を著しく加速する。
【0016】
本明細書においては、“支持具”は、装入装置の支持フランジにシュートを保持するのに適した1個又は複数部の任意の装置又は配置のことを言う。“垂直”という表現は明確に垂直を向いた参照軸であって、例えば垂直軸は装入装置の回転軸と合致してもよい。
【0017】
交換位置において更に傾斜トルクを低減すると共に選択したシュートデザインの依存性を低減するために、上述した仮想平面と長手方向軸との間の鋭角が上昇方向に0より大きく、好ましくは0°から+15°の範囲内、であるのが好適である。
【0018】
好ましくは、重心が長手方向軸と平行であると共に傾斜軸を通る平面から垂直に離隔した位置、即ち、長手方向に延びる下流シュート部の長さの10%未満、好ましくは5%未満、となるように位置されるように、支持具がシュートに位置されている。
【0019】
ロバストなデザインにおいては、マウントヘッドは周方向に閉じた形態である環状構造であり、支持具は横方向両側に中央シュート軸から離隔するようにマウントヘッドと一体成形される。好適実施形態においては、支持具は鋳物(例えば鋳鉄又は鋳鋼)でマウントヘッドと一体成形される。
【0020】
安全性を高めるため、支持具及び支持フランジは少なくとも1個の安全ピンと協働するピンホールを具備してもよい。装入装置の通常動作においては、傾斜軸(即ち傾斜地点を通過する直線)周りで重力により生じるトルクは、支持フランジにシュートを補償し、従ってシュートが冶金炉内に落下することはない。従って、安全ピンは通常環境下では必ずしも必要ではない。しかしながら、シュートにとって想定外の動き、例えば冶金炉内で爆発があった場合、であってかかる動きによってシュート支持具が支持フランジから外れてしまうような動き、を防止するのに有用である。安全ピンはそこにトルクがかかるのを回避するために傾斜軸と合致する軸を有するのが好ましい。
【0021】
例えば最外装入位置において降下方向に確実に反対トルクを静的に定義する、新しい形式の支持具における好ましいデザインでは、対応する支持フランジにベアリング突出部と協働する重量荷担面を有する少なくとも1個の横方向突出部に加えて、支持具の各々は対応する支持フランジで2個の隣接面と協働する重量荷担面の横方向に通常ある2個の反対方向を向くトルク荷担面を具備し、トルク荷担面は実質的に平坦である。この種のデザインにおいては、支持具の各々は単一のコヒーレントマウント突出部を具備し、かかる突出部は長手方向軸に対して5度未満であるのが好ましい方向に沿って延出しており、かかる長手方向軸が交換位置においてシュートの交換をする垂直取り付け/取り外し方向を定義する。更に簡単で確実な形態においては、コヒーレントマウント突出部はその長手方向に対して鏡面対称である多角形状であり、特に通常は四角形、好適には矩形又は台形断面形状である。更に、支持具と支持フランジとの間を反転した部分と共に、支持具の各々は3個のマウント突出部を具備し、第一の突出部は重量荷担面を定義し、第二の突出部及び第三の突出部も同様に対向するトルク伝達荷担面を定義する。
【0022】
装入半径が減少することなく垂直方向に沿って交換するのに特に適したシュートデザインにおいては、長手方向軸に対応した屈曲角度で中心軸を有するように上流マウントヘッドは屈曲せしめられ、屈曲角度は15度乃至45度、より好ましくは20°乃至40度、の範囲である。この種のデザインでは、シュート交換位置において、下流長手方向軸は上昇方向で0度から+5度の範囲内で垂直であるのが好ましい。延出した下流シュート部は円錐又は円筒形状であって、周方向に閉じた形態である環状構造であり、マウントヘッドに付設されているのが好ましい。シュートが上昇方向に更に半径方向外側装入位置に旋回できるように、マウントヘッドは溝であって、かかる溝が半径方向最外装入位置で装入装置に衝撃が及ぶのを避けるような溝、を具備するのが好ましい。
【0023】
本発明は、本発明にかかるシュートを含むと共に、協働する支持フランジと対応する、装入装置にも関する。
【0024】
新規のシュート形状によって、旋回機構で改良するのを回避するために、傾斜軸周りにシュートの重量が支持フランジ上でトルクを生ずるように傾斜軸が旋回軸からオフセットしてもよい。水平平面で見ると、上に設計されているシュートと共に、傾斜軸は旋回軸からオフセット、即ちシュート本体の主滑動面に向かってオフセットしている。
【0025】
本発明の局面は更に分配シュートの取り付け及び取り外しにも関連する。好ましくは、取り付けられた又は取り外された分配シュートは上述した形態である。
【0026】
分配シュートを装入装置に取り付ける方法は、
○回転軸に沿って分配シュートを降下せしめる間少なくとも2個の支持具を支持フランジに整合せしめると共に少なくとも2個の支持具を支持フランジ上に静止せしめ、
○シュートの重量が支持フランジに妨害トルクを生じるように、上昇方向に旋回軸周りに支持フランジを回転せしめる、
ことを含む。
【0027】
好ましくは、少なくとも2個の支持具を支持フランジに整合せしめることに先立ち、少なくとも2個の支持具が支持フランジよりも上方になるまで分配シュートが回転軸に沿って上昇される。分配シュートが上昇されている間は、少なくとも2個の支持具が支持フランジを通過できるように、分配シュートが装入装置に対して回転軸周りに回転され続けることが好ましい。(例えば、少なくとも15度から25度、好適には20度)。設置されている間、従って分配シュートは装入装置に対する動きであって、雌部に対する差し込みコネクタの雄部の動きと類似する動きをうける。即ち、内側は挿入軸周りを回転し、外側は一方が他方に隣接するまで動く。しかしながら挿入装置の支持フランジは相互に鏡面対称であって、差し込みコネクタの雌部は挿入軸周りに別々の回転対称であることを特徴的に示している点に注意すべきである。このことから導かれる結論は、相互に重畳されている分配シュートの場合であっては、挿入軸周りの回転と外側へ向かう動きとは異なる、ということである。だから、差し込みコネクタへの比喩は完璧ではないが、かかる比喩は装入装置に対する分配シュートの動きについて良好なイメージを得ることができる。分配シュートと装入装置の間の相対的な動きが重要であることは価値があることである。実際には、確かに、分配シュートの方向が静的参照フレーム内で維持し続ける間、装入装置を回転することが容易になる。
【0028】
装入装置から分配シュートを取り外す方法においては、取り付け工程を逆順することで実質的に行われる。特に、かかる方法は、
○シュートの重量が支持フランジに妨害トルクを生じない又は殆ど生じないまで、降下方向に旋回軸周りに支持フランジを回転せしめ、
○支持フランジから分配シュートを持ち上げるとともに分配シュートを回転軸に沿って上昇せしめる、(好ましくは平進運動)
ことを含む。
【0029】
好ましくは、分配シュートが上昇せしめられた後、少なくとも2個の支持具が支持フランジを通過することができるように、分配シュートが装入装置に対して回転軸周りに回転され続ける間(例えば少なくとも15度から25度、より好ましくは20度)、分配シュートは回転軸に沿って降下せしめられる。
【0030】
従来技術より明らかなとおり、本発明にかかる方法は分配シュートの取り付け及び取り外しを容易にするものである。特に、取り付け及び取り外しはシュートが支持されるケーブル又はロープを使用して行われる。所望ならば取り付けアームを使用してもよい。
【0031】
取り付け及び取り外し両方法において、装入装置は静的参照フレームと相対する回転軸周りに回転されるが、回転軸周りの分配シュートの方向はかかる参照フレームにおいては不変である。これは特に、シュートがケーブル又はロープを使用して取り付け又は取り外しする際に利点となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の更なる詳細及び利点は以下の詳述より明らかになるが、添付した図面にかかる実施態様に限定されるものではない。
【
図1】米国特許第5022806号より周知である従来の分配シュートについての長手方向側面図であって、本発明ではない。
【
図2】WO2010/028894号より周知である従来の分配シュートについての長手方向断面図であって、本発明ではない。
【
図3】本発明に従って構成された分配シュートの第一の実施形態についての長手方向側面図。
【
図4】本発明に従って構成された分配シュートの第二の実施形態についての部分長手方向側面図。
【
図5】本発明に従って構成された分配シュートの第三の実施形態についての部分長手方向側面図。
【
図6】本発明に従って構成された分配シュートを備えた装入装置の第一の実施態様の部分断面平面図。
【
図7】本発明に従って構成された分配シュートを備えた装入装置の第二の実施態様の部分断面平面図。
【
図8】
図4に記載された分配シュートのマウンティングヘッドの長手方向側面図。
【
図9】
図4に記載された分配シュートを取り付ける際の図。
【
図10】
図4に記載された分配シュートを取り外す際の図。
【0033】
これらの図面において同一又は機能的に対応する要素には、単に図番の100の位に番号を付すことによって示される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1には、米国特許第5022806号に従って全体を番号10で示される分配シュートが図示されている。かかる分配シュートは、その全体を参照することによって理解されるとおり、装入装置に組み込まれている。このシュート10はトラフ型シュート本体12を具備する。バルク材をシュート出口に向かわせるために、
図1に図示するシュート本体12は紙面に対して垂直な略矩形断面であるとともに長手形状である。断面形状は例えば半円又は楕円形状である他の形状であってもよい。シュート本体12全体は長手方向軸Lに沿って延出している。シュート10を分配装置(図示せず)に設置するために、分配シュート10は本体12の両側面に横方向支持具13を具備する支持装置を備えたマウントヘッド14を有する。周知のごとく、支持具はシュートの一般平面即ち
図1と平行である面に対して鏡面対称である。
【0035】
図1の支持具13の各々は2個の横方向ピンを具備する。かかるピンは、
図1において番号40で図示される破線で示される支持フランジと協働する2個の支持具の各々において対応する溝内で滑動自在である。取り付け時においては、シュート10は2個の横方向支持具13によって保持されると共に略カンチレバー形式で保たれる。
図1のシュートは長手軸Lに沿ってシュート10を引っ張る又は押込むことによって簡単に取り付け又は取り外すことができるように設計されている。この過程は、支持フランジ40が要求された交換位置(米国特許第5022806号の最初の2つの図画に図示されている)に旋回せしめられると、ロッキングボルト(図示せず)が支持具13のピンとの間から取り外される、ことで達成される。
【0036】
図1のシュート10における重心Gの概略位置から理解されるとおり、シュートの交換位置においては支持フランジ40に少なからぬトルクが生ずる。かようなトルクはシュートの両側でシュート10を第一傾斜地点及び第二傾斜地点を中心に傾斜せしめる傾向がある。これらの傾斜地点は傾斜軸Tと定義する。支持フランジ40に対するかような好ましくない傾斜は好ましい回転と区別される。支持フランジ40は半径方向外方に向かって旋回軸周りに回転することとなる。交換すべくシュート本体12を垂直にせしめるためにデザインを変更しても−これは従来技術では開示されていない−、依然として多少のトルクは残留する。これは、
図1で図示されるデザインからも理解されるとおり、シュート10が垂直、即ちその長手軸Lが垂直になるように向く時に、重心Gが軸Tを通過する垂直面から所定の水平距離離れて位置することによるためである。
図1において、長手軸Lと、傾斜軸T及び重心Gを通過する仮想平面Pと、の間である鋭角α(「鋭」は90度より小さい角度を意味する)は例えば10度より大きい所定の角度である。理解されるとおり、傾斜トルクの大きさはシュートが交換位置にある際のこの臨界鋭角の絶対値に何より依存する。交換する際において、残留するいかなる傾斜トルクも好ましくないことは明らかである。なぜならば、かような傾斜トルクは、支持フランジ40において支持具13を妨げる傾向があると共に、支持フランジ40から支持具13の各々を係合解除せしめるための力を増加させるためである。
【0037】
理解されるとおり、傾斜軸T及び旋回軸Bは相互に近接している。(
図5に図示されるとおり、これらは合致してもよい)特に、傾斜軸Tと旋回軸Bとの間の距離と、分配シュートの両側面における第一の傾斜地点及び第二の傾斜地点との間の距離と、の比が最大でも0.25、好ましくは0.1乃至0.15、になる。高炉用の分配シュートの場合であっては、傾斜地点は一般的に1.5m及び1.8m部分に位置し、取付フランジの半径(傾斜軸Tと旋回軸Bとの間の最大距離に相当する)が一般的に0.3m(好ましくは0.18m乃至0.24m)より小さい。
【0038】
更に、
図1を参照して説明を続けると、旋回を上昇方向R、即ち最外装入位置(
図1乃至
図5の側面図において時計方向)に向かうという意味、で測る際には、鋭角αは負(又は
図1乃至
図5の場合であっては反時計方向)であり、例えばα<−10度である。その結果、シュート10が最外位置から中央装入位置、例えば長手方向軸Lが垂直または略垂直、まで旋回する際には、支持フランジに作用する如き軸T周りに前述の傾斜トルクの反力がかかる。このトルクは、長手方向軸Lの所定の傾斜で、降下方向におけるトルクから上昇方向Rにおけるトルクに変化又は“反転”する。空のシュートと共にトルクが反転又は逆位する地点は、傾斜軸T及びシュートの重心が垂直になるときに、整合せしめられる。これはおおよそ軸Lが角度αによって垂直に傾斜せしめられた時と対応する。実際、トルクが反転する旋回位置はシュート上に運ばれる装入原料の量による。かような反転は好ましくない。なぜならば、装入装置の旋回機構及び高価なベアリングを含む重要な構成要素の摩耗を促進せしめる衝撃を引き起こす傾向があるためである。
【0039】
国際特許出願第2010/028894号で開示されている他の従来技術にかかる分配シュート10が
図2に図示されている。上記形式のシュートとの主な相違点は、マウントヘッド14の横方向支持具13が構造上の理由により各々のアームに配設されていることである。実際、このシュートは中型又は小型の反応炉用に設計されている。
図3を参照して説明をすると、更なる主な相違点は支持具13の形状が“タツノオトシゴ”型又はフック型であることである。かかる形状は、シュート10が配設される時に軸T周りの上述した傾斜トルクを補償する、隣接面及びカウンター隣接面を備える。更に、フック状支持具はシュート10が落下する危険性を最小限にする。
図1を参照して述べた傾斜効果に関しては、
図2のシュートは同様の特徴を有する。なぜならば、長手方向軸Lから平面Pに上昇方向Rで測定される鋭角αが−10度より小さい負であるためである。
【0040】
傾斜トルクによる望ましくない結果は
図3乃至
図7を参照することによって詳述される本発明の実施態様により回避される。
【0041】
図3に図示するシュート100の第一の実施態様は、上流マウントヘッド114を備えたシュート本体112を有する。シュート本体112は下流に長手方向に延びるシュート部116を有し、シュート部116は長手軸Lに沿って延出する。作動中にあっては、シュート部116が滑動表面を提供し、かかる滑動表面上を装入原料が下流出口120に向かって滑動し、かかる滑動表面から挿入原料(例えば、コークス、鉱石、ペレット、シンター等)が排出され、装入原料がシュート本体112から無くなる。かような下流シュート部116は円錐又は円筒管形状であり、好適には軸Lの周方向において完全に閉じた外殻をともなう。
【0042】
図3は実際の交換位置におけるシュート100を図示する。シュート100は、この位置において主シュート部116の長手方向軸Lが鉛直に対して角度βであるように設計されている。角度βは上昇方向Rにおいて比較的小さい角度である、即ち0度≦β≦+5度、例えばβ=1,5−2,5度である。交換位置は必ずしも垂直である必要はないが、通常は垂直である。小さな角度βはマウントヘッド114の屈曲形状によるものである。
図3より理解されるとおり、マウントヘッドの中心軸Hが主シュート部116の軸Lに対応するように、マウントヘッド114は上昇方向Rにおいてカーブを有しており、かかるカーブが最外装入位置における主シュート部116の旋回角度を増加せしめる。軸Hと軸Lとの間の鋭角は15度から45度での範囲であって、20度から40度の範囲であるのが好ましい。旋回到達度を増加させるのと同様の効果を得るためには、マウントヘッド114が溝134を具備し、かかる溝が、シュートを支持するローターをシュートと隣接させることなく、装入位置よりもはるかに半径方向外方に到達できるようにする。重量を減らした際の機械的安定性を向上せしめる観点から、主部116と同様にマウントヘッド114は軸Hの周方向で閉じた形態である環状構造を有する。
【0043】
(主に
図3の対称である長手平面に対する)マウントヘッド114の両側では、シュート100は夫々横方向支持具130を有する。2個の支持具130は、略直径方向反対位置に配設されていると共に、
図3の平面に対して鏡面対称であり、装入装置(
図3には図示されておらず、
図6及び
図7を参照のこと)の2個の対応する支持フランジ140でシュート100を確実に支持することが要求される。支持具130は保持要素としても機能し、シュート100を位置せしめるための支持具130を介した旋回トルクは、出口120を半径方向外方の装入位置に向かって上昇せしめるべく支持フランジ140が上昇方向Rに旋回軸B周りにシュート100を旋回する時に伝達される。勿論、出口120を装入装置の半径方向内方に降下せしめる際に、支持具130は共に降下方向にフランジ140と合致して旋回をもする。しかしながら、以下により明らかになるが、支持具130は上昇方向Rにおいてシュート出口120が持ち上げられることを確実に妨げることを必要としない。
【0044】
図3は空であって摩耗していない状態におけるシュートの重心Gの固有の通常の位置を示している。シュートの重心Gは十字と丸記号によって図示されている。任意のカンチレバー型シュートデザインのように、支持具130は傾斜軸Tを定義し、シュート100が配設される時に、シュート100の重量が装入装置の支持フランジ140上で軸T周りのトルクを生じる。
【0045】
本発明の重要な特徴として、支持具130は滑動面の底付近に位置され、かような滑動面は従来のシュートと比較した際にシュート本体112によって定義される。
図3に図示される如く、
図3において傾斜軸Tと合致する支持具130の形状中心は、間隔Xによって長手方向軸Lからシュート本体112の底に移動している(即ちシュート100の側面が装入表面に近接している)。旋回軸B(
図6参照)に対する支持具130の偏心を最小にすると共に支持フランジ140の大きさを最小にすべく、この間隔は軸Lに沿った下流シュート部116の長さに対して小さく、例えば10%、好適には5%、より小さくするのが好ましい。
【0046】
より詳細には、両支持具130は、長手方向軸Lから傾斜地点(従って軸Tを通過する)及び重心Gを通過する仮想平面Pまでの間の鋭角αが正(
図3において時計方向)例えば上昇方向Rで表現した際に値が
図3において0以上である様に配設される。鋭角αの値は少なくとも−5度未満ではない。換言すると、αは負の時は小さい絶対尺度である。好適には、鋭角αは上昇方向Rにおいて0以上の指示値或いは測定値、即ち幾分小さく、好ましくは0度≦α≦+15度、より好ましくは0度≦α≦+5度、である。従って、垂直である交換位置と組み合わせて、支持フランジ140に支持具130を係合又は係合解除する際に、角度αが小さいと軸T周りの傾斜トルクが大きく減少する。これは、交換位置において重心Gを軸Tの下部に略垂直に位置せしめたことによるためである。
【0047】
図3及び
図5の実施態様において、シュートが軸T周り、より詳細にはシュート交換位置において降下方向(
図3乃至
図5において反時計方向)、に殆どトルクが作用しないように、支持具130、330が更に配設されている。従って、これらの実施態様では、通常最下端位置である交換位置と最外装入位置との間でシュート100、300を旋回せしめる際にいかなる反転トルクをも生じさせない。交換位置は必ずしも完全な垂直である必要はないが、長手方向軸Lが略垂直即ち垂直に対して10度より小さい角度β、好適には垂直に対して5度より小さい正又は負である位置を含むこと、特に屈曲マウントヘッド114を含むこと、に注目すべきである。
【0048】
交換の際の傾斜トルクを最小限にすることで得られる有益な結果として、支持具130が、例えば
図3の断面図(
図3の平面と平行である)に図示される矩形形状のような細長い多角形形状のような、比較的単純な幾何学的形状でよいということである。構造に関しては、
図3の支持具130は単純な横方向突出部を形成していて、それは略直径方向反対側(
図3の平面に対して垂直、
図6を参照のこと)に突出していると共に、軸Lと略平行である軸に沿った長手形状である。特に一体成形(好ましくは鋳鋼)であるマウントヘッド114の場合、支持具130は一体で形成されるのが好ましい。即ち、マウントヘッド114と一体で形成される。
【0049】
図3を参照して説明を続けると、矩形支持具130の各々は対応する支持フランジ140のベアリング突出部142と協働する重量荷担面133を定義する。更に、シュート100の最外旋回位置において生じるトルクで要求される反力を提供するために、支持具130の各々はトルク荷担面135、137を向いていて、かかる面は通常重量荷担面133に対して垂直である。面135、137は支持フランジ140上の2個の隣接面145、147と協働する。隣接面145、147は対応する支持フランジ140から突出するベアリング突出部142と類似するピン形状突出部の形状で配設されているが、同じ効果を有する他の形態も包含される。ベアリング突出部142と隣接面145、147は、例えば機械加工によって、支持フランジと一体で形成されることが好ましい。隣接面145、147は、傾斜トルクの伝達比率を最小限にすべく、矩形支持具130の軸又は長手軸方向Lに沿って離隔して位置している。隣接面145、147の間隔を考慮することで理解されるとおり、支持具130が完全に細長形状であることがトルクの伝達に関する制約を減らすために好ましい。他の形状が可能であるのに対して、
図3のデザインは簡単であり、支持具130の各々は単一のコヒーレントマウント突出部132を具備しており、それは重量荷担ホルダーとトルク荷担ホルダーの目的を合わせたものを提供する。好適には、突出部132の各々は、長手方向軸Lに対して平行又は例えば5度未満の小さい角度の方向に沿って長手形状である。これにより、シュート100の交換時における上流及び/又は下流での垂直方向の取り付け/取り外しが容易になる。
【0050】
理解されるとおり、
図3のデザインは理論的に支持フランジ140に対して上昇方向Rにシュート100が傾斜することができる。しかしながら、かような傾斜は作動中には生じない。なぜならば、上記に示したように重力は自然的に下方を向くことにより、かかるトルクが生じないためである。それにもかかわらず、この付加的な自由度が交換を容易化せしめる。なぜならば、それは支持フランジ140上で支持具130がブロックされる、即ち狭められる又は押込まれる、危険性を低減せしめるためである。更に、支持具130の係合を解除すると、単にシュートが
図3に図示する位置を超えて降下方向に小さく旋回することができるようになる。
【0051】
爆発又はその他の衝撃波が炉内で生じた時に起こりうるような、支持されたシュート100が“自由に”落下又は降下する危険性を排除すべく、支持具130は支持フランジ140に配設された安全ピン又はボルトを受けるためのピンホールを有していてよい。ピンが外された際には、支持具130は上述した“自由支持”を形成する。即ち、支持フランジに対する上昇方向Rでの傾斜は例えば持ち上がることにより効果的に取り除くことが可能となる。かような安全装置(
図3乃至
図5には詳細に図示せず)の摩耗を軽減すべく、安全ピン及びこれと協働するピンホールが傾斜軸Tと同軸上に配設されているのが好ましい。
【0052】
図4はシュート200における第二の実施形態の上流領域を示しており、本図に関しては前態様との相違部分についてのみ詳細に述べる。
図4において同一又は機能的に同一である部分には100の位の数が付けられている。特筆すべき差異については、
図4の鋭角αは僅かに負である、即ち0度>α≧−5度を満たす、ということである。従って、トルク反転は生じるが、αの絶対値が小さいことによって、作動の際の反転は概して起きない。シュート200が交換位置に旋回される時だけ、
図4に図示される位置に到達する直前に、反転が生じる様にシュートは設計される。従って、自己解除機能がこの設計で達成され、シュート100がより簡単に交換できるようになる。これは、支持具が“自由支持具”のように設計されているためである。即ち、(安全ピンが係合されているにもかかわらず)上昇方向Rで傾斜することができる。
【0053】
図4における他の相違は、支持具230と支持フランジ240の配置が
図3と比較して反転していることである。換言すると、単一のコヒーレント突出部に代えて、支持具230は3個のマウント突出部232−1、232−2、232−3を有する。第一の突出部232−1は重量荷担面233を備える。他の2個の突出部232−2、232−3は軸Lに沿って離隔していると共に、降下方向において傾斜軸T周りに反転トルクが生じるためにトルク伝達面と反対側を向いて配設されている。従って、
図4のシュートと協働する支持フランジ240は以下の点で異なる。即ち、支持フランジ240が、表面233及び、支持具230の突出部232−2、232−3と協働する2個の隣接面245、247と協働する重量荷担面242を有する、2個の異なる突出部を含むことである。最後に、
図4のマウントヘッド214は、シュート200が交換位置(β=0)において垂直になるように、屈曲を減らしている。
【0054】
図5は分配シュート300における第三の実施形態を図示している。ここで、再び主な差異点のみを記述する。なぜならば、シュート300は
図3に図示されるシュートと類似するデザイン(特に支持具330の位置に関しては単に旋回軸と合致する一般的な中央支持具と比較した間隔Xによってシュート本体316の底により近接した位置)であるためである。
【0055】
シュート300は支持具330を具備する。支持具330は単一のコヒーレント突出部322から形成され、かかる突出部は、シュート300の出口に向かってテーパーであると共にその長手方向軸に対して対称な台形形状である。この形状がシュート300を支持フランジに設置する最終段階において自己配置機能を提供する。従って、更なる利点として、対応する支持フランジ(図示せず)は2個の下方突出部343、345を有し、かかる突出部が台形突出部332において横方向面335、337を係合せしめることでシュートの重量を支持する。トルク対向機能はこれら2個の突出部、即ち突出部345と共に第三の突出部又は支持フランジの隣接面347、の1つにより認められる。従って、台形突出部332のテーパー状斜辺はトルク伝達面335、337として機能する。また、突出部332の他の形状は支持具330を形成すると共に協働するフランジ上の突出部/隣接面と対応し、
図5の実施態様は
図3のそれと同一である。
【0056】
図6及び
図7は対称である装入装置の水平方向半断面を図示している。
図6には、支持フランジ140を支持及び作動せしめる傾斜軸によって定義される旋回軸B(傾斜軸Tと同一であってもなくてもよい)が従来的に配設されている実施態様が図示されている。これはBが回転軸Aに垂直に交わるためである。
図7には、旋回軸B(傾斜軸Tと同一であってもなくてもよい)が従来とは相違して回転軸Aからオフセットしている、他の実施態様が図示されている。
【0057】
図8乃至
図10は、
図4の分配シュート200の例において、装入装置からの分配シュートの取り外しを図示している。図の明確化のため、
図4の参照番号の全てが
図8乃至
図10で繰り返されているわけではない。
図8は傾斜軸Tと旋回軸Bとの間の間隔dを示しており、
図9は第一の傾斜地点T1と第二の傾斜地点T2との間の間隔Dを示している。
【0058】
図8はシュート交換位置における分配シュートの上部(マウントヘッド214)を図示しており、かかる上部における重心(
図8には図示せず)と傾斜軸Tは同一の垂直面にある。従って、交換位置においては、分配シュート200の重量は、装入装置のシュート支持具230と支持フランジ240との間で妨害トルクを生じない又は殆ど生じない。加えて、マウント突出部(
図4における232−1、232−2、232−3)は、マウント突出部が支持フランジ240の対応する隣接面を妨害することなく、分配シュートが垂直方向への直線的な移動により支持フランジ240から持ち上げられるように配設されている。
【0059】
分配シュートが通常の作動位置にあると仮定すると、取り外しは、シュートが交換位置(
図8に示すとおり)になるまで支持フランジを旋回軸周りに下方に回転することで開始する。かくして分配シュートは、回転軸に沿った垂直方向への直線的な動きで支持フランジから上昇される。支持具230が支持フランジ240よりも少なくとも高い位置まで分配シュートが上昇したとき、それは支持フランジ240に対して、例えば支持フランジ240を支持具の軌道を外れて下降又は上昇する角度まで、回転する。実際のところは、分配シュートの向きが固定された参照フレーム内で固定され続けている間は装入装置が回転しやすい、ということに注意すべきである。相対的な回転角度は少なくとも15度乃至25度であるのが好ましい。
図9及び
図10は持ち上げられて回転された位置での分配シュート200を図示している。最終的に、分配シュートは回転軸に沿って下方に直線的に移動せしめられる。一旦それが支持フランジから持ち上げられると分配シュートは横方向への移動のみ可能であるので、ケーブル又はロープ(図示せず)を使用してシュートを取り外すことが一層簡単になる。
【0060】
取り付け工程は上述した取り外し工程と逆順に対応する。従って本明細書での詳細な説明については省略する。
【0061】
分配シュートを冶金炉から取り外す又は装入装置の上部を介して冶金炉に取り付ける場合には、垂直軸周りにシュートと支持フランジの間で回転する必要はない。しかしながら、一般的には、分配シュートの取り外し又は取り付けは冶金炉の上部におけるドアを介して行われるが、装入装置の下部ではない。
【0062】
実施形態の詳細について詳述してきたが、当業者であれば、本発明の多様な実施形態について理解されると共に、周知技術を考慮することで本発明について実施することができる。従って本発明の特徴部分について図面を用いて詳述したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の特徴部分を含む他の実施形態についても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
図1−2
10 分配シュート
12 シュート本体
13 支持部
14 マウントヘッド
16 下流シュート部
40 支持フランジ
G 重心
L 長手方向軸
P 垂直面
R 上方
T 傾斜軸
α LからPへの鋭角
図3
100 分配シュート
112 シュート本体
114 マウントヘッド
116 下流シュート部
120 出口
130 支持部
132 コヒーレント突出部
134 溝
133 重量/130表面のトルク荷担
135 重量/130表面のトルク荷担
137 重量/130表面のトルク荷担
140 支持フランジ
142 ベアリング突出部
145 トルク荷担隣接部
147 トルク荷担隣接部
G 重心
H マウントヘッドの中心軸
L 長手方向軸
P 垂直面
R 上方
T 傾斜軸
α LからPへの鋭角
β 垂直からLへの鋭角
X 間隔
図4、
図8−9
200 分配シュート
214 マウントヘッド
216 下流シュート部
230 支持具
232−1 マウント突出部
232−2 マウント突出部
232−3 マウント突出部
233 重量/230表面のトルク荷担
235 重量/230表面のトルク荷担
237 重量/230表面のトルク荷担
240 支持フランジ
242 240表面の重量荷担
245 240表面のトルク荷担隣接面
247 240表面のトルク荷担隣接面
B 旋回軸
d 傾斜軸Tと旋回軸Bとの間隔
D 第一の傾斜地点T1と第二の傾斜地点T2との間隔
G 重心
H マウントヘッドの中心軸
L 長手方向軸
P 垂直面
R 上方
T 傾斜軸
T
1、T
2 第1、第2の傾斜地点
α 鋭角
X 間隔
図5
300 分配シュート
314 マウントヘッド
316 下流シュート部
330 支持具
332 コヒーレント溶出部
334 溝
335 トルク/重量荷担面
337 332の表面
343 ベアリング突出部
345 重量及びトルク荷担隣接面/突出部
347 トルク伝達隣接部
G 重心
L 長手方向軸
P 垂直面
R 上方
T 傾斜軸
α LからPへの鋭角
β 垂直からLの鋭角
X 間隔
図6−7
A 回転軸
B 旋回軸
100 分配シュート
200 分配シュート
130 支持具
230 支持具
140 支持フランジ
240 支持フランジ