特許第5798311号(P5798311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798311サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798311
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20151001BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B41J2/335 101D
   B41J2/335 101F
   B41J2/345 A
   B41J2/345 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-208722(P2010-208722)
(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公開番号】特開2012-61778(P2012-61778A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(74)【代理人】
【識別番号】100081732
【弁理士】
【氏名又は名称】大胡 典夫
(72)【発明者】
【氏名】大庭 眞人
【審査官】 大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−047652(JP,A)
【文献】 特開昭61−158474(JP,A)
【文献】 特開2008−001062(JP,A)
【文献】 特開平10−076694(JP,A)
【文献】 特開昭60−112462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
副走査方向に延びて互いに主走査方向に間隔を空けて配列された一対の発熱抵抗部と前記一対の発熱抵抗部の一端に形成されて前記一対の発熱抵抗部を互いに直列に接続した折返し導電部とを有し、前記絶縁基板上に形成されて互いに主走査方向に間隔を空けて複数配列された1画素複数素子型の配線パターンと、
絶縁材からなり少なくとも一部が前記折返し導電部上に積層された絶縁層と、
金属材からなり少なくとも一部が前記絶縁層上に形成されて前記折返し導電部の上方から前記発熱抵抗部とは反対側に向かって広がり一部が前記絶縁基板の表面に接触しており、前記折返し導電部から伝わる熱を前記発熱抵抗部から離れる方向に放出する熱拡散部と、
を具備したことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記折返し導電部に対して前記発熱抵抗部とは反対側に広がった前記熱拡散部の一部が前記絶縁基板の表面に接触していることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
樹脂材からなり最表面を形成する保護層を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記絶縁層が前記保護層と同一の樹脂材からなることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
絶縁基板と、
副走査方向に延びて互いに主走査方向に間隔を空けて配列された一対の発熱抵抗部と前記一対の発熱抵抗部の一端に形成されて前記一対の発熱抵抗部を互いに直列に接続した折返し導電部とを有し、前記絶縁基板上に形成されて互いに主走査方向に間隔を空けて複数配列された1画素複数素子型の配線パターンと、
絶縁材からなり少なくとも一部が前記折返し導電部上に積層された絶縁層と、
金属材からなり少なくとも一部が前記絶縁層上に形成されて前記折返し導電部の上方から前記発熱抵抗部とは反対側に向かって広がり一部が前記絶縁基板の表面に接触しており、前記折返し導電部から伝わる熱を前記発熱抵抗部から離れる方向に放出する熱拡散部と、
を備えたサーマルプリントヘッドを具備したことを特徴とするサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッド、および、これを用いたサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、発熱領域に配列された複数の発熱抵抗部を発熱させて、その熱により記録媒体に文字や図形などを印字・印画する出力用デバイスである。このサーマルプリントヘッドは、バーコードプリンタ、デジタル製版機、フォトプリンタ、イメージャー、シールプリンタなどの記録機器に広く利用されている。
【0003】
従来のサーマルプリントヘッドについて、図7を用いて説明する。図7は、従来のサーマルプリントヘッドの発熱体板の表面温度分布を配線パターンとともに示した図である。
【0004】
サーマルプリントヘッドは、放熱板、放熱板の同一表面上に配置された発熱体板、および、回路基板を備えている。発熱体板は、絶縁基板、複数の配線パターン140、および、保護層を有している。
【0005】
配線パターン140は、一対の発熱抵抗部142、折返し導電部144、個別電極146、および、共通電極148を有している。配線パターン140は、絶縁基板上に形成されている。複数の配線パターン140は、互いに主走査方向91に間隔を空けて配列されている。
【0006】
発熱抵抗部142は、絶縁基板上に形成されている。一対の発熱抵抗部142は、副走査方向92に延びていて、互いに主走査方向91に間隔を空けて配列されている。複数の配線パターン140の発熱抵抗部142は、発熱素子としての役割を果たす。図7に示したように、複数の発熱抵抗部142が配列された帯状の領域が、発熱領域132となる。
【0007】
一対の発熱抵抗部142の記録媒体の排出側(副走査方向92の下流側)の端部には、折返し導電部144が形成されていて、一対の発熱抵抗部142を直列に接続している。一対の発熱抵抗部142の記録媒体の供給側(副走査方向92の上流側)の端部には、それぞれ、個別電極146および共通電極148が形成されている。個別電極146と共通電極148との間に電圧が印加されることにより、一対の発熱抵抗部142が同時に発熱して、記録媒体に1画素を出力する(1画素2素子型)。
【0008】
保護層は、絶縁基板および配線パターン140の露出面上に積層されて、発熱体板の最表面を形成している。保護層は、サーマルプリンタの使用時における記録媒体との摩擦から、配線パターン140を保護する役割を果たす。
【0009】
一方、回路基板には、配線パターン140に電力を供給する駆動回路となる駆動用ICなどの電気部品が実装されている。
【0010】
上述のサーマルプリントヘッドを用いたサーマルプリンタについて説明する。サーマルプリンタは、一般的にプラテンローラを備えている。プラテンローラは、主走査方向91を回転軸として、その側面が発熱体板の表面上(保護層の表面上)の発熱領域132に接するように回転可能に設けられている。
【0011】
例えば、感熱型サーマルプリンタは、プラテンローラを回転させることによって、プラテンローラと発熱領域132との間に挿入された感熱紙などの記録媒体を発熱領域132に押し付けつつ、記録媒体を副走査方向92に移動させる。記録媒体の移動に伴って、発熱領域132の発熱パターンを変化させることによって、記録媒体に印字・印画する。
【0012】
上述した1画素2素子型のサーマルプリントヘッドでは、1画素1素子型のサーマルプリントヘッドに比べて、図7に示したように、発熱体板の主走査方向91の表面温度分布(保護層の主走査方向91の表面温度分布)185が平坦化される。そのため、発熱体板の主走査方向91の表面温度分布185のピークを抑えることができ、過熱による記録媒体へのダメージを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−205520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここで、1画素1素子型のサーマルプリントヘッドでは、発熱抵抗部の記録媒体の供給側の端部には、個別電極が形成され、発熱抵抗部の記録媒体の排出側の端部には、共通電極が接続されている。そのため、発熱抵抗部からの熱が、個別電極および共通電極を伝わって、外部に放出されやすい。
【0015】
これに対して、1画素2素子型のサーマルプリントヘッドでは、一対の発熱抵抗部142の記録媒体の供給側の端部には、それぞれ、個別電極146および共通電極148が接続されているが、一対の発熱抵抗部142の記録媒体の排出側の端部には、折返し導電部144が接続されている。折返し導電部144は、個別電極146および共通電極148に比べて表面積が小さく、両端に一対の発熱抵抗部142が接続されているため、放熱性が低く、熱溜まりになってしまう。
【0016】
したがって、1画素2素子型のサーマルプリントヘッドは、1画素1素子型のサーマルプリントヘッドに比べて、熱応答性が悪く、印画速度を上げると、いわゆる尾引き現象による印画品質の低下が顕著になる。
【0017】
また、1画素2素子型のサーマルプリントヘッドでは、折返し導電部144は、個別電極146および共通電極148に比べて、放熱性が低い。そのため、図7に示したように、発熱体板の副走査方向92の表面温度分布181のピークは、発熱領域132の副走査方向92の中央183より折返し導電部144側(記録媒体の排出側)にずれて、表面温度分布181は、折返し導電部144側(記録媒体の排出側)に偏ってしまう。
【0018】
このように、発熱体板の表面温度分布181に偏りがあると、印画を形成する各ドットの濃度分布も偏り、印画品質が低下してしまう。
【0019】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、複数素子で1画素を形成するサーマルプリントヘッドの熱応答性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明に係るサーマルプリントヘッドは、絶縁基板と、副走査方向に延びて互いに主走査方向に間隔を空けて配列された一対の発熱抵抗部と前記一対の発熱抵抗部の一端に形成されて前記一対の発熱抵抗部を互いに直列に接続した折返し導電部とを有し、前記絶縁基板上に形成されて互いに主走査方向に間隔を空けて複数配列された1画素複数素子型の配線パターンと、絶縁材からなり少なくとも一部が前記折返し導電部上に積層された絶縁層と、金属材からなり少なくとも一部が前記絶縁層上に形成されて前記折返し導電部の上方から前記発熱抵抗部とは反対側に向かって広がり一部が前記絶縁基板の表面に接触しており、前記折返し導電部から伝わる熱を前記発熱抵抗部から離れる方向に放出する熱拡散部とを具備したことを特徴とする。
【0021】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係るサーマルプリンタは、絶縁基板と、副走査方向に延びて互いに主走査方向に間隔を空けて配列された一対の発熱抵抗部と前記一対の発熱抵抗部の一端に形成されて前記一対の発熱抵抗部を互いに直列に接続した折返し導電部とを有し、前記絶縁基板上に形成されて互いに主走査方向に間隔を空けて複数配列された1画素複数素子型の配線パターンと、絶縁材からなり少なくとも一部が前記折返し導電部上に積層された絶縁層と、金属材からなり少なくとも一部が前記絶縁層上に形成されて前記折返し導電部の上方から前記発熱抵抗部とは反対側に向かって広がり一部が前記絶縁基板の表面に接触しており、前記折返し導電部から伝わる熱を前記発熱抵抗部から離れる方向に放出する熱拡散部とを備えたサーマルプリントヘッドを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数素子で1画素を形成するサーマルプリントヘッドの熱応答性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリンタの部分断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの絶縁層および保護層を省略して模式的に示した発熱体板の部分平面図である。
図4図3のIV−IV矢視断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの発熱体板の表面温度分布を配線パターンとともに示した図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドの副走査方向の一部断面図である。
図7】従来のサーマルプリントヘッドの発熱体板の表面温度分布を配線パターンとともに示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタについて説明する。
【0025】
まず、第1の実施形態に係るサーマルプリントヘッド10およびサーマルプリンタの概要について、図1および図2を用いて説明する。図1は、サーマルプリントヘッドの斜視図である。図2は、サーマルプリンタの部分断面図である。
【0026】
サーマルプリントヘッド10は、放熱板20、発熱体板30、および、回路基板60を有している。発熱体板30および回路基板60は、放熱板20の同一表面上に載置されている。発熱体板30は、記録媒体72の進行方向である記録媒体72の排出側(副走査方向92の下流側)に配置されている。回路基板60は、発熱体板30と隣接して、記録媒体72の供給側(副走査方向92の上流側)に配置されている。
【0027】
放熱板20は、例えばAlなどの金属からなり、副走査方向92に直交する主走査方向91に延びている。放熱板20は、発熱体板30からの熱をサーマルプリントヘッド10の外部に放つ役割を果たす。
【0028】
発熱体板30は、放熱板20上に載置されていて、主走査方向91に延びている。発熱体板30には、主走査方向91に延びた発熱領域32が形成されている。
【0029】
回路基板60は、放熱板20上に載置されていて、発熱体板30と並行して主走査方向91に延びている。回路基板60には、駆動用IC62およびコネクタ64などが実装されている。駆動用IC62は、発熱領域32を発熱させる駆動回路としての役割を果たす。発熱領域32に所定の発熱パターンを形成するための制御信号や駆動電力は、コネクタ64を介して入力される。
【0030】
発熱体板30に形成された配線パターン40と駆動用IC62とは、例えばボンディングワイヤ66aによって電気的に接続されている。回路基板60に形成された配線パターン40と駆動用IC62とは、例えばボンディングワイヤ66bによって電気的に接続されている。駆動用IC62およびボンディングワイヤ66a,66bは、樹脂からなる封止材68によって封刺され、保護されている。
【0031】
サーマルプリンタは、プラテンローラ70を備えている。プラテンローラ70は、所定の弾性を持つ材料からなり、円筒状に形成されている。プラテンローラ70は、主走査方向91に延びた軸70aを有し、軸中心に回転可能に設置されている。プラテンローラ70は、外周面70bが発熱領域32に接するように設置されている。
【0032】
サーマルプリンタの使用時には、プラテンローラ70と発熱領域32との間に、熱印刷温度以上に加熱されると発色する感熱紙などの記録媒体72が挿入される。サーマルプリンタは、プラテンローラ70を回転させることによって、記録媒体72を発熱領域32に押し付けつつ、記録媒体72を副走査方向92に移動させる。加えて、サーマルプリンタは、記録媒体72の移動に伴って、発熱領域32の発熱パターンを変化させることによって、所望の画像を記録媒体72上に形成する。
【0033】
次に、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10の発熱体板30の詳細について、図3および図4を用いて説明する。図3は、絶縁層および保護層を省略して模式的に示した発熱体板の部分平面図である。図4は、図3のIV−IV矢視断面図である。
【0034】
発熱体板30は、絶縁基板、抵抗体層41と導電体層とから形成された配線パターン40、熱拡散部50、絶縁層52、および、保護層54を備えている。
【0035】
絶縁基板は、支持基板34およびグレーズ層36を有している。支持基板34は、例えば、アルミナなどの絶縁材からなり、厚さが1mmに設計されている。グレーズ層36は、支持基板34上に積層されている。グレーズ層36は、ガラスからなり、例えば、厚さが40μmに設計されている。
【0036】
絶縁基板上(グレーズ層36上)には、抵抗体層41が積層され、さらに、抵抗体層41上には、導電体層が積層されている。抵抗体層41および導電体層は、絶縁基板上に複数の配線パターン40を形成している。抵抗体層41は、例えば、TaなどがドープされたSiOからなり、厚さが1.0μmに設計されている。導電体層は、例えば、Alからなり、厚さが1.0μmに設計されている。
【0037】
配線パターン40は、一対の発熱抵抗部42、折返し導電部44、個別電極46、および、共通電極48を有している。
【0038】
抵抗体層41上に導電体層が積層されていない部分が、発熱抵抗部42となる。発熱抵抗部42は、副走査方向92に直線的に延びている。一対の発熱抵抗部42は、互いに主走査方向91に間隔を空けて配置されている。例えば、解像度300dpiの場合には、発熱抵抗部42の長さ(副走査方向92の長さ)が100μm、発熱抵抗部42の幅(主走査方向91の長さ)が34μmに設計されている。隣接する発熱抵抗部42間の間隔は、8μmに設計されている。
【0039】
折返し導電部44は、導電体層により形成されている。折返し導電部44は、一対の発熱抵抗部42の記録媒体72の排出側に形成されている。折返し導電部44は、一対の発熱抵抗部42の記録媒体72の排出側の端部同士を直列に接続している。
【0040】
個別電極46および共通電極48は、導電体層により形成されている。個別電極46および共通電極48は、それぞれ、一対の発熱抵抗部42の記録媒体72の供給側の端部に接続されていて、記録媒体72の供給側に直線的に延びている。個別電極46および共通電極48の記録媒体72の供給側の端部には、ボンディングワイヤ66aが接続されている。
【0041】
複数の配線パターン40は、絶縁基板上(グレーズ層36上)で互いに主走査方向91に間隔を空けて配列されている。複数の発熱抵抗部42同士、および、複数の折返し導電部44同士は、主走査方向91に間隔を空けて配列されている。発熱領域32とは、複数の発熱抵抗部42が配列された帯状の領域を指す。
【0042】
駆動用IC62によって個別電極46と共通電極48との間に電圧が印加されると、折返し導電部44を介して直列に接続された一対の発熱抵抗部42は、同時に発熱して、記録媒体72に1画素を出力する。すなわち、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10は、1画素2素子型の配線パターン40を備えている。
【0043】
本実施形態では、絶縁基板の記録媒体72の排出側の端部には、配線パターン40が形成されていない余白部38が設計されている。余白部38は、主走査方向91に沿って延びている。余白部38の幅(副走査方向92の長さ)は、例えば500μmに設計されている。
【0044】
絶縁層52は、配線パターン40と後述する熱拡散部50とを絶縁する役割を果たす。絶縁層52は、絶縁基板(グレーズ層36)および配線パターン40上に積層されていて、絶縁基板および配線パターン40の露出面を覆っている。絶縁層52は、例えば、SiO、SiAlON、あるいは、SiONを主成分とした材料からなる。絶縁層52の厚さは、例えば3.0μmに設計されている。
【0045】
本実施形態では、熱拡散部50は、複数の折返し導電部44および余白部38の上方に広がっていて、絶縁層52上に形成されている。すなわち、熱拡散部50は、複数の折返し導電部44および余白部38の上方をまたがって主走査方向91に延びている。熱拡散部50は、複数の発熱抵抗部42の上方には配置されずに、複数の折返し導電部44の上方から発熱抵抗部42とは反対側(記録媒体72の排出側)に向かって広がっている。
【0046】
熱拡散部50は、例えば、金属(例えばAlやCu)あるいは合金などの高熱伝導材料からなる。熱拡散部50は、例えば、厚さが2.0μm、幅(副走査方向92の長さ)が800μmに設計されている。
【0047】
保護層54は、絶縁層52および熱拡散部50上に積層されていて、絶縁層52および熱拡散部50の露出面を覆っている。保護層54は、発熱体板30の最表面を形成している。保護層54は、例えば、絶縁層52と同一の材料からなり、厚さが5.0μmに設計されている。保護層54は、サーマルプリンタの使用時における記録媒体72との摩擦などから、配線パターン40および熱拡散部50を保護する役割を果たす。
【0048】
次に、発熱体板30の形成方法の一例について説明する。
【0049】
まず、セラミックスからなる支持基板34を形成し、支持基板34上にガラスからなるグレーズ層36を融着させて、絶縁基板を得る。
【0050】
次に、絶縁基板上(グレーズ層36上)に、スパッタ装置などの薄膜形成装置を用いて、抵抗体層41および導電体層を順に積層する。そして、フォトエングレービングプロセスによって、導電体層を折返し導電部44、個別電極46および共通電極48の形状に形成した後、抵抗体層41を発熱抵抗部42の形状に形成する。
【0051】
次に、配線パターン40および絶縁基板上(グレーズ層36上)に絶縁層52を形成する。そして、薄膜形成装置を用いて、熱拡散層を積層する。続いて、フォトエングレービングプロセスによって、熱拡散層を熱拡散部50の形状に形成した後、絶縁層52および熱拡散部50上に保護層54を形成する。
【0052】
さらに、個別電極46および共通電極48の記録媒体72の供給側の端部にボンディングワイヤ66aを接続するために、フォトエングレービングプロセスによって、絶縁層52および保護層54に開口を形成する。
【0053】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10およびサーマルプリンタの効果について、図5を用いて説明する。図5は、サーマルプリントヘッドの発熱体板の表面温度分布を配線パターンとともに示した図である。
【0054】
本実施形態では、熱拡散部50が、複数の折返し導電部44の上方に配置されている。そのため、発熱抵抗部42から折返し導電部44に伝わった熱が、絶縁層52を介して熱拡散部50に移るので、折返し導電部44に熱が溜まりにくい。さらに、熱拡散部50が、折返し導電部44の上方から発熱抵抗部42とは反対側(記録媒体72の排出側)に向かって広がっている。そのため、熱拡散部50に伝わった熱が、発熱領域32から離れる方向に移り放出される。したがって、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10によれば、熱拡散部50のない従来のサーマルプリントヘッドに比べて、熱応答性を向上させることができる。その結果、印画速度を上げても、いわゆる尾引き現象が生じにくく、印画品質が低下しにくい。
【0055】
さらに、本実施形態では、熱拡散部50が、複数の折返し導電部44および余白部38の上方をまたがって主走査方向91に延びている。そのため、熱拡散部50に伝わった熱が拡散しやすく、放熱性が高まる。
【0056】
また、本実施形態によれば、上述のとおり、折返し導電部44に熱が溜まりにくい。そのため、本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10によれば、図5に示したように、発熱体板30の副走査方向92の表面温度分布81のピークが、従来のサーマルプリントヘッドの表面温度分布181のピークに比べて、発熱領域32の副走査方向92の中央83に近づく。その結果、表面温度分布81の偏りが是正され、印画を形成する各ドットの濃度分布の偏りも小さくなり、印画品質が向上する。
【0057】
なお、熱を折返し導電部44から熱拡散部50に移すために、折返し導電部44と熱拡散部50とは、副走査方向92に0.2mm以上オーバーラップしていることが好ましい。
【0058】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るサーマルプリントヘッドについて、図6を用いて説明する。図6は、サーマルプリントヘッドの副走査方向の一部断面図である。なお、本実施形態は、第1の実施形態の変形例であって、第1の実施形態と同一部分または類似部分には、同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0059】
第1の実施形態では、絶縁層52が絶縁基板の余白部38上の全面に積層されている。そして、余白部38と熱拡散部50との間には、絶縁層52が配置されている。一方、本実施形態では、絶縁層52が絶縁基板の余白部38上の一部分には積層されていない。そして、熱拡散部50の一部が余白部38に接触している。
【0060】
本実施形態によれば、折返し導電部44から熱拡散部50に伝わった熱が、絶縁層52を介することなく、絶縁基板に直接的に移すことができる。そのため、放熱性が向上され、サーマルプリントヘッド10の熱応答性が向上する。
【0061】
[他の実施形態]
上記の実施形態は、単なる例示であって、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、第1および第2の実施形態では、平坦なグレーズ層36を採用したが、発熱領域32に沿って盛り上がった、凸状のグレーズ層を採用しても良い。
【0062】
また、第2の実施形態では、熱拡散部50の一部を余白部38のグレーズ層36の面に接触させているが、余白部38のグレーズ層36を取り除いて、熱拡散部50の一部を支持基板34に接触させても良い。さらに、余白部38を取り除いて、熱拡散部50の一部を放熱板20に接触させても良い。
【0063】
また、第1および第2の実施形態では、絶縁層52が発熱抵抗部42、個別電極46および共通電極48上に積層されているが、折返し導電部44と熱拡散部50との絶縁を確保できれば良く、絶縁層52は、少なくとも折返し導電部44上に積層されていれば足りる。
【符号の説明】
【0064】
10…サーマルプリントヘッド、20…放熱板、30…発熱体板、32…発熱領域、34…支持基板、36…グレーズ層、38…絶縁基板の余白部、40…配線パターン、41…抵抗体層、42…発熱抵抗部、44…折返し導電部、46…個別電極、48…共通電極、50…熱拡散部、52…絶縁層、54…保護層、60…回路基板、62…駆動用IC、64…コネクタ、66a,66b…ボンディングワイヤ、68…封止材、70…プラテンローラ、70a…プラテンローラの軸、70b…プラテンローラの外周面、72…記録媒体、91…主走査方向、92…副走査方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7