特許第5798319号(P5798319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798319
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】円筒状生タイヤの形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B29D30/30
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-288363(P2010-288363)
(22)【出願日】2010年12月24日
(65)【公開番号】特開2012-135898(P2012-135898A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻本 統治
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−159621(JP,U)
【文献】 特開平06−316001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 − 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスコードをカーカスプライ間で交差させたクロスプライタイヤ用の円筒状生タイヤの形成方法であって、
円筒状の成形ドラム上で、カーカスプライ、ブレーカプライを含むタイヤ中間構成部材を重ね合わせて積層することにより円筒状のタイヤ中間体を形成するタイヤ中間体形成工程、
このタイヤ中間体上に、トレッドゴム部とそのタイヤ軸方向両側に配されるサイドウォールゴム部とを一体に具える巾広帯状のタイヤ外皮ゴムを巻付け、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの仮接合体を形成する仮接合体形成工程、
及び前記仮接合体を成形ドラムとともに回転させながら、ステッチローラを、この回転する仮接合体の外周面に押し付けつつタイヤ軸方向外側に向かって横移動させることにより前記仮接合体のタイヤ外皮ゴムとタイヤ中間体とを圧接させて一体に接合させるステッチ工程とを含むとともに、
前記仮接合体形成工程は、
タイヤ外皮ゴムの巻き付けに先駆けて、テーパ角度θが2〜10°の範囲の先細テーパ軸状の回転自在な一対のテーパローラを有する外皮ゴム張設手段の前記テーパローラを、該テーパローラの先端が互いに向かい合いかつタイヤ軸方向に沿ってのびる横向き状態、しかも、前記テーパローラの軸心を、その先端がドラム回転方向と逆方向に向く側に、5〜10°の角度αで傾斜させて、前記タイヤ中間体のタイヤ軸方向両端部分の外周面上に接触或いは近接させるテーパローラ配置ステップと、
その後、前記タイヤ外皮ゴムを巻き付けることにより、前記タイヤ外皮ゴムとタイヤ中間体との間かつタイヤ軸方向両端部分に前記テーパローラを介在させる巻回ステップとを含み、
しかも、前記ステッチ工程では、前記ステッチローラの横移動によりこのステッチローラが前記テーパローラの先端に近づいたとき、該テーパローラが、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの間から取り外されることを特徴とする円筒状生タイヤの形成方法。
【請求項2】
前記巻回ステップにおいて、前記テーパローラの先端の、前記タイヤ外皮ゴムのタイヤ軸方向外端からのタイヤ軸方向距離Lは25〜45mmであることを特徴とする請求項1記載の円筒状生タイヤの形成方法。
【請求項3】
前記テーパローラは、前記横向き状態から、前記先端が下方に向く縦向き状態まで、前記ドラム軸心と直角かつ該ドラム軸心に向かってのびる軸心廻りで旋回可能に保持されるとともに、前記縦向き状態への旋回により、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの間から取り外されることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状生タイヤの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のタイヤ中間体の外側に、巾広帯状のタイヤ外皮ゴムを貼り付けて円筒状生タイヤを形成する際、タイヤ外皮ゴムの貼り付け品質を高め、仕上がりタイヤの品質を向上しうる円筒状生タイヤの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーカスコードをカーカスプライ間で交差させたクロスプライタイヤ(バイアスタイヤを含む。)、特にブレーカコードがタイヤ赤道に対して40°以上の角度で傾斜させたタイヤを製造する場合には、通常、円筒状生タイヤが使用される(例えば非特許文献1参照。)。
【0003】
そして、この円筒状生タイヤは、従来、下記の方法にて形成される。即ち、図8(A)に示すように、まず円筒状の成形ドラムA上で、カーカスプライb1、ブレーカプライb2を含むタイヤ中間構成部材bを重ね合わせて積層し、これによって円筒状のタイヤ中間体Bを形成する。しかる後、このタイヤ中間体B上に、トレッドゴム部d1とそのタイヤ軸方向両側に配されるサイドウォールゴム部d2とを一体に具える巾広帯状のタイヤ外皮ゴムDを巻付け、前記タイヤ中間体Bとタイヤ外皮ゴムDとの仮接合体Eを形成する。その後、図8(B)に示すように、前記仮接合体Eを成形ドラムAとともに回転させ、かつステッチローラFを、回転する仮接合体Eの外周面に押し付けながらタイヤ軸方向外側に向かって横移動させる。これにより、前記仮接合体Eのタイヤ外皮ゴムDとタイヤ中間体Bとを圧接させ互いに一体接合させた円筒状生タイヤTを形成している。
【0004】
この製造方法では、巾広帯状のタイヤ外皮ゴムDを使用するため、タイヤ中間体Bに、トレッドゴムとサイドウォールゴムとを別々に貼り付ける場合に比して貼り付け工数が少ないため、効率良く生タイヤTを形成しうるという利点がある。
【0005】
しかしその反面、タイヤ外皮ゴムDが幅広であるため、前記ステッチローラFによって圧接させる前に、タイヤ外皮ゴムDのタイヤ軸方向両端部分が、タイヤ中間体Bに先に接触して接合してしまい易い。かかる場合には、ステッチローラFによって圧接する際、サイドウォールゴム部d2に皺などが発生する他、サイドウォールゴム部d2が均一に伸ばされなくなり、サイドウォールゴム部d2の厚さが周方向及びタイヤ軸方向にバラ付くなど厚さの不均一が発生する。又サイドウォールゴム部d2の外端からビード部の外端までの距離であるトリミング高さ(以下トリム高さという。)も不安定となるため、加硫後の仕上がりタイヤに品質不要を発生させるという問題も生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ドライバーのためのタイヤ工学入門」、株式会社グランプリ出版、1989年発行、第39〜42頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、ステッチローラによって圧接させる前に、タイヤ外皮ゴムのタイヤ軸方向両端部分がタイヤ中間体に先に接触して接合するのを抑制でき、ステッチローラによって圧接する際、サイドウォールゴム部への皺より、サイドウォールゴム部の厚さの不均一化、及びトリム高さのバラ付きを抑えて仕上がりタイヤの品質を向上しうる円筒状生タイヤの形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、カーカスコードをカーカスプライ間で交差させたクロスプライタイヤ用の円筒状生タイヤの形成方法であって、
円筒状の成形ドラム上で、カーカスプライ、ブレーカプライを含むタイヤ中間構成部材を重ね合わせて積層することにより円筒状のタイヤ中間体を形成するタイヤ中間体形成工程、
このタイヤ中間体上に、トレッドゴム部とそのタイヤ軸方向両側に配されるサイドウォールゴム部とを一体に具える巾広帯状のタイヤ外皮ゴムを巻付け、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの仮接合体を形成する仮接合体形成工程、
及び前記仮接合体を成形ドラムとともに回転させながら、ステッチローラを、この回転する仮接合体の外周面に押し付けつつタイヤ軸方向外側に向かって横移動させることにより前記仮接合体のタイヤ外皮ゴムとタイヤ中間体とを圧接させて一体に接合させるステッチ工程とを含むとともに、
前記仮接合体形成工程は、
タイヤ外皮ゴムの巻き付けに先駆けて、テーパ角度θが2〜10°の範囲の先細テーパ軸状の回転自在な一対のテーパローラを有する外皮ゴム張設手段の前記テーパローラを、該テーパローラの先端が互いに向かい合いかつタイヤ軸方向に沿ってのびる横向き状態、しかも、前記テーパローラの軸心を、その先端がドラム回転方向と逆方向に向く側に、5〜10°の角度αで傾斜させて、前記タイヤ中間体のタイヤ軸方向両端部分の外周面上に接触或いは近接させるテーパローラ配置ステップと、
その後、前記タイヤ外皮ゴムを巻き付けることにより、前記タイヤ外皮ゴムとタイヤ中間体との間かつタイヤ軸方向両端部分に前記テーパローラを介在させる巻回ステップとを含み、
しかも、前記ステッチ工程では、前記ステッチローラの横移動によりこのステッチローラが前記テーパローラの先端に近づいたとき、該テーパローラが、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの間から取り外さ取り外されることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明では、前記巻回ステップにおいて、前記テーパローラの先端の、前記タイヤ外皮ゴムのタイヤ軸方向外端からのタイヤ軸方向距離Lは25〜45mmであることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明では、前記テーパローラは、前記横向き状態から、前記先端が下方に向く縦向き状態まで、前記ドラム軸心と直角かつ該ドラム軸心に向かってのびる軸心廻りで旋回可能に保持されるとともに、前記縦向き状態への旋回により、前記タイヤ中間体とタイヤ外皮ゴムとの間から取り外されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、先細テーパ軸状の回転自在な一対のテーパローラを、その先端が互いに向かい合いかつタイヤ軸方向に沿ってのびる横向き状態にて、タイヤ中間体のタイヤ軸方向両端部分の外周面上に接触或いは近接させ、しかる後、タイヤ外皮ゴムを巻き付けている。
【0013】
このテーパローラは、タイヤ外皮ゴムとタイヤ中間体との間かつタイヤ軸方向両端部分に介在するため、仮接合体が回転する際、タイヤ外皮ゴムのタイヤ軸方向両端部分をタイヤ中間体から引き剥がして離間させることができ、ステッチローラによって圧接させる前に、タイヤ外皮ゴムのタイヤ軸方向両端部分がタイヤ中間体に先に接触して接合するのを抑制できる。
【0014】
しかも前記テーパローラは、タイヤ軸方向外側に向かって拡径する。そのため、前記タイヤ外皮ゴムがテーパローラを乗り越す際、このタイヤ外皮ゴムに、タイヤ軸方向外側に引っ張るテンション力を作用させることができる。従って、ステッチローラによって圧接する際、タイヤ外皮ゴムを左右均等に伸ばすことができ、サイドウォールゴム部に皺が発生するのを防止しうるとともに、厚さの不均一化、トリム高さのバラ付きを抑えることができる。従って、円筒状生タイヤの品質、ひいては加硫後の仕上がりタイヤの品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の形成方法によって形成される円筒状生タイヤを用いて製造されたクロスプライタイヤの一実施例を示す断面図である。
図2】タイヤ中間体形成工程を略示する断面図である。
図3】(A)、(B)は仮接合体形成工程のテーパローラ配置ステップと巻回ステップとを略示する断面図である。
図4】巻回ステップを略示する側面図である。
図5】ステッチ工程を略示する部分拡大断面図である。
図6】(A)は外皮ゴム張設手段を略示する斜視図、(B)は成形ドラムとともに示す側面図である。
図7】テーパローラをドラム半径方向外側から平面視した平面図である。
図8】(A)、(B)は、クロスプライタイヤ用の円筒状生タイヤの、従来の形成方法を略示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は、本発明の形成方法によって形成される円筒状生タイヤを用いて製造されたクロスプライタイヤ1の一実施例を示す断面図であって、該クロスプライタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るクロスプライ構造のカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるブレーカ7とを具える。本例では、前記クロスプライタイヤ1が、ATV(全地形走行車両)用のタイヤである場合が示される。
【0017】
前記カーカス6は、本例では、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば60゜以上90゜未満の角度で傾斜させた2枚以上、本例では2枚のカーカスプライ6A、6Bから形成される。このカーカスプライ6A、6Bは、カーカスコードがカーカスプライ間相互で交差したクロスプライ構造をなすように、カーカスコードの傾斜の向きを違えて重置される。又各カーカスプライ6A、6Bは、前記ビードコア5、5間に跨るトロイド状のプライ本体部6aの両端に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部6bを一連に具えるとともに、このプライ本体部6aとプライ折返し部6bとの間には、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外側に向かって立ち上がるビード補強用のビードエーペックスゴム8が配置される。
【0018】
又前記ブレーカ7は、ブレーカコードをタイヤ周方向に対して例えば40〜60゜の角度で配列した2枚以上、本例では2枚のブレーカプライ7A、7Bから形成される。前記ブレーカ7のコード角度が一般のラジアルタイヤのブレーカのコード角度よりも大であることにより、トレッド剛性が適度に減じられ、不整地での接地性や路面追従性が高められる。なおATV用タイヤの場合、前記ブレーカ7を除去することもできる。
【0019】
なお図中の符号4Gはビード部4の表面をなすクリンチゴム部、9Gはタイヤ内腔面をなすインナーライナゴム部であり、これらは前記カーカスプライ6A、6B、ブレーカプライ7A、7B、ビードコア5、ビードエーペックスゴム8とともにタイヤ中間構成部材を構成している。又符号2Gは、トレッド部2の外表面をなすトレッドゴム部、3Gはサイドウォール部3の外表面をなすサイドウォールゴム部でありこれらはタイヤ外皮構成部材を構成する。
【0020】
次に、前記クロスプライタイヤ1用の円筒状生タイヤTの形成方法を説明する。この形成方法は、タイヤ中間体形成工程S1と、仮接合体形成工程S2と、ステッチ工程S3とを含んで構成される。
【0021】
前記タイヤ中間体形成工程S1では、図2に示すように、円筒状の成形ドラムA上で、カーカスプライ6A、6B、ブレーカプライ7A、7Bを含む前記タイヤ中間構成部材を順次重ね合わせて積層することにより、円筒状のタイヤ中間体Bを形成する。なおATV用タイヤの場合、前記ブレーカプライ7A、7Bを除去することもできる。このタイヤ中間体形成工程は、従来のバイアスタイヤにおけるタイヤ中間体形成工程と実質的に同工程であって、成形ドラムAの両端からはみ出すカーカスプライ6A、6Bのはみ出し部分6Eをビードコア5の廻りで折り返す折り返しステップなども含まれる。なお同図には、便宜上、タイヤ中間構成部材のうちのクリンチゴム4G、インナーライナゴム9Gなどが省略して描かれている。又前記成形ドラムAとして、拡縮径可能な周知構造の従来の成形ドラムが好適に採用できる。
【0022】
次に、前記仮接合体形成工程S2では、図3、4に示すように、前記タイヤ中間体B上に、トレッドゴム部2Gとそのタイヤ軸方向両側に配されるサイドウォールゴム部3Gとを一体に具える巾広帯状のタイヤ外皮ゴムDを巻付け、前記タイヤ中間体Bとタイヤ外皮ゴムDとの仮接合体Eを形成する。
【0023】
この仮接合体形成工程S2は、本発明では、
(ア) 先細テーパ軸状の回転自在な一対のテーパローラ10を有する外皮ゴム張設手段11の前記テーパローラ10を、該テーパローラ10の先端10eが互いに向かい合いかつタイヤ軸方向に沿ってのびる横向き状態Yxにて、前記タイヤ中間体Bのタイヤ軸方向両端部分の外周面上に接触、或いは近接させるテーパローラ配置ステップS2a(図3(A)に示す。)と、
(イ) その後、前記タイヤ外皮ゴムDを巻き付けることにより、前記タイヤ外皮ゴムDとタイヤ中間体Bとの間かつタイヤ軸方向両端部分に前記テーパローラ10を介在させる巻回ステップS2b(図3(B)、4に示す。)とを含む。
【0024】
前記外皮ゴム張設手段11は、図6(A)、(B)に示すように、本例では、タイヤ軸方向に横移動可能な横移動台12と、この横移動台12に支持されかつ前記成形ドラムAに向かってドラム軸心iと直角方向に進退しうるロッド13aを有するシリンダ13と、このシリンダ13のロッド端に、例えば板状の取付け部材14を介して取り付くテーパローラ10とを具える。なお前記横移動台12は、本例では周知のボールネジ機構15によって横移動しうる。なお符号15aは前記ボールネジ機構15のネジ軸、符号15bはガイド軸である。又横移動台12は、前後に位置調整可能な調整台12Aを具え、この調整台12Aを介して前記シリンダ13を固定している。又シリンダ13としては、本例ではガイド軸13b内蔵のシリンダが例示される。
【0025】
又前記テーパローラ10は、先細のテーパ軸状をなし、テーパ角度θ(図5に示す。)が2〜10°の範囲のものが好適に使用される。又先端10eでの太さ(直径)は、3〜8mmが好適である。又本例では、前記テーパローラ10の後端部は、前記取付け部材14に取り付く例えばステップモータなどの回転具17に、ローラホルダ16を介して支持される。これによりテーパローラ10は、先端10eがタイヤ軸方向内側に向く前記横向き状態Yxから、前記先端10eが下方に向く縦向き状態Yyまで、前記ドラム軸心iと直角かつ該ドラム軸心iに向かってのびる軸心J廻りで旋回しうるとともに、前記縦向き状態Yyへの旋回により、前記タイヤ中間体Bとタイヤ外皮ゴムDとの間から取り外される。又前記横向き状態Yxにて、前記シリンダ13のロッド13aが伸張することにより、テーパローラ10を、タイヤ中間体Bのタイヤ軸方向両端部分の外周面と接触、或いは近接させうる。なお図7に示すように、前記テーパローラ10をドラム半径方向外側から平面視したとき、テーパローラ10の軸心mは、ドラム軸心i方向に対して5〜10°の角度αで傾斜するのが好ましい。このときその傾斜方向は、ローラ10の先端10eがドラム回転方向fと逆方向に向く側に傾斜する。
【0026】
次に、前記ステッチ工程S3では、前記仮接合体Eを成形ドラムAとともに回転させながら、前記図5に示すように、ステッチローラFを、この回転する仮接合体Eの外周面に押し付けつつタイヤ軸方向外側に向かって横移動させることにより、前記タイヤ外皮ゴムDとタイヤ中間体Bとを圧接させて互いに一体接合させる。
【0027】
ここで、前記仮接合体Eが回転する際、ステッチローラFは、前記タイヤ外皮ゴムDのタイヤ軸方向両端部分Deをタイヤ中間体Bから順次引き剥がして離間させることができ、ステッチローラFによって圧接させる前に、タイヤ外皮ゴムDのタイヤ軸方向両端部分Deがタイヤ中間体Bに先に接触して接合してしまうのを抑制することができる。
【0028】
又テーパローラ10はタイヤ軸方向外側に向かって拡径する。そのため、前記タイヤ外皮ゴムDがテーパローラ10を乗り越す際、タイヤ外皮ゴムDに、タイヤ軸方向外側に引っ張るテンション力Kを作用させることができる。従って、ステッチローラFによって圧接する際、タイヤ外皮ゴムDを左右均等に伸ばすことができ、サイドウォールゴム部3Gに皺が発生するのを防止しうるとともに、厚さの不均一化、及びトリム高さのバラ付きを抑制できる。これらの効果を、本発明の効果という場合がある。
【0029】
なお、テーパローラ10の前記テーパ角度θが2°未満では、本発明の効果を有効に発揮するのが難しく、逆に10°を越えると、タイヤ外皮ゴムDに局部的な伸びが発生して生タイヤTの品質低下を招く恐れが生じる。又前記巻回ステップS2bにおいて、前記テーパローラ10の先端10eの、前記タイヤ外皮ゴムDのタイヤ軸方向外端からのタイヤ軸方向距離L(以下、タイヤ外皮ゴムDとの重複巾Lという場合がある。)が短すぎても、本発明の効果が有効に発揮され難くなり、逆に距離L(タイヤ外皮ゴムDとの重複巾L)が長すぎても、ステッチ工程S3の邪魔となる。このような観点から前記距離L(タイヤ外皮ゴムDとの重複巾L)は25〜45mmが好適である。
【0030】
なおステッチ工程S3では、前記ステッチローラFの横移動によりこのステッチローラFが、前記テーパローラ10の先端10eに近づいたとき、該テーパローラ10を、前記タイヤ中間体Bとタイヤ外皮ゴムDとの間から取り外される。これにより、ステッチ不良を防止できる。なおステッチ不良防止のために、前記ステッチローラFとテーパローラ10の先端10eとの間のタイヤ軸方向距離L2が60mm以下となったとき、前記テーパローラ10を取り外すのが好ましい。
【0031】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0032】
本発明の効果を確認するため、ATV用クロスプライタイヤ(タイヤサイズ25×10−12)用の円筒状生タイヤを、テーパローラを使用した本発明の形成方法に基づき30本試作した。そして、試作の生タイヤにおける、トリム高さの左右差の平均、トリム高さの周方向のバラ付きR(最大値と最小値の差)、及び生タイヤを加硫成型した時の成形不良の発生本数について調査した。又テーパローラを使用しない従来方法に基づき生タイヤを30本試作し、同様に調査し、互いに比較した。
【0033】
なおテーパローラとして、テーパ角度θが4°、先端での太さ(直径)が5mmのものを使用するとともに、テーパローラのタイヤ外皮ゴムDとの重複巾Lを50mmとしている。
【0034】
【表1】
【0035】
表に示すように、実施例は、タイヤ中間体にタイヤ外皮ゴムを貼り付けて円筒状生タイヤを形成する際のトリム高さのバラ付きなどを抑制でき、タイヤの形成不良を抑えてタイヤ品質を向上させうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0036】
6A、6B カーカスプライ
7A、7B ブレーカプライ
10 テーパローラ
10e 先端
11 外皮ゴム張設手段
A 成形ドラム
B タイヤ中間体
D タイヤ外皮ゴム
E 仮接合体
F ステッチローラ
T 円筒状生タイヤ
S1 タイヤ中間体形成工程
S2 仮接合体形成工程
S2a テーパローラ配置ステップ
S2b 巻回ステップ
S3 ステッチ工程
Yx 横向き状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8