【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、下記実施例及び調製例において得られた化合物は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR:
1H NMR、
13C NMR)、エレクトロスプレーイオン化法質量分析法(ESI−MS)、高分解能質量分析法(HRMS)にて分析した。なお、
1H−NMRにおける多重度は、s=singlet(一重線)、d=doublet(二重線)、t=triplet(三重線)、q=quintet(四重線)、m=multiplet(多重線)、dd=double doublet(ダブルダブレット)、bs=broad singlet(ブロードシングレット)を示す。また、
Jは結合定数を示す。さらに、NMR( )の括弧内は分析に用いた溶媒を示す。
【0062】
(調製例1)
【0063】
【化7】
【0064】
前記式に示すスキームに記載の通り、セレノールエステル1を合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(225.8mg,0.42mmol,2eq)の無水トルエン(toluene、1mL)懸濁液にプロピオン酸(190μL,2.55mmol,3eq)を加え、2時間加熱還流し、セレノプロピオン酸を調製した。続いて、反応液を0℃に冷却し、エチルエステル体1(240.6mg,0.84mmol)のトルエン(500+250+250μL)溶液を加え、70℃で41時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、15% 酢酸エチル(AcOEt)/ヘキサン(Hexane)溶出部よりセレノールエステル1(114.5mg,32.1%)を得た。以下に得られたセレノールエステル1についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0065】
1H NMR(CDCl
3) δ1.17(3H,t,
J=7.5Hz,SeCOCH
2C
H3),1.26(3H,t,
J=7.1Hz,COOCH
2C
H3),1.3〜1.8(8H,m,C
H2x4),1.44(9H,s,Boc),2.63(3H,m,C
H,SeCOC
H2CH
3),3.08(4H,m,C
H2NHBoc,C
H2Se),4.14(2H,q,
J=7.1Hz,COOC
H2CH
3),4.53(1H,m,N
H).
13C NMR(CDCl
3) δ9.7,14.5,26.3,26.8,26.9,28.6(3carbons),30.1,33.0,40.7,41.7,46.5,60.8,79.3,156.2,174.9,202.6.
ESI−MS
m/
z(%):448(M+Na,20),447(M+Na,20),446(M+Na,100),445(M+Na,10),444(M+Na,50),443(M+Na,18),442(M+Na,18),424(25),423(20),422(75),421(13),420(38),419(10),418(8),392(8),391(6),390(40),389(3),388(6),387(6),386(6),326(13),325(9),324(63),323(5),322(31),321(11),320(11).
HRMS(ESI) calcd for C
18H
33NNaO
580Se 446.14216, found 446.14188。
【0066】
(実施例1)
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、調製例1で得られたセレノールエステル1を脱保護し、化合物Aを得た。すなわち、セレノールエステル1(25.9mg,0.061mmol)に濃塩酸(HCl、1mL)を加え、100℃で2時間撹拌した。次いで、反応液の溶媒を留去し、化合物A(16.5mg,98.3%)を得た。以下に得られた化合物A(化合物DD9)についての、
1H NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0067】
1H NMR(D
2O) δ1.40(8H,m,C
H2x4),1.67(8H,m,C
H2x4),2.84(2H,m,C
Hx2),2.99(4H,t,
J=7.5Hz,C
H2NH
2x2),3.13(4H,dd,
J=7.1,2.4Hz,C
H2Sex2).
ESI−MS
m/
z(%):481(M+H,25),480(M+H,8),479(M+H,35),478(22),477(M+H,100),476(M+H,22),475(M+H,92),474(M+H,35),473(M+H,55),472(M+H,15),471(M+H,22),470(M+H,12),469(M+H,3).
HRMS(ESI) calcd for C
16H
33N
2O
480Se
2 477.07780, found 477.07708。
【0068】
(実施例2)
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、調製例1で得られたセレノールエステル1を脱保護し、アミノ体Aを得た。すなわち、0℃に冷却したセレノールエステル1(19.2mg,0.045mmol)にdist H
2O(50μL)とトリフルオロ酢酸(TFA、950μL)を加え、1時間撹拌した。次いで、反応液の溶媒を留去し、アミノ体A(19.9mg)を定量的に得た。以下に得られたアミノ体A(化合物DD10)についての、
1H NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0069】
1H NMR(CD
3OD) δ1.13(3H,t,
J=7.5Hz,SeCOCH
2C
H3),1.24(3H,t,
J=7.1Hz,COOCH
2C
H3),1.40(4H,m,C
H2x2),1.64(4H,m,C
H2x2),2.61(3H,m,C
H,SeCOC
H2CH
3),2.91(2H,t,
J=7.5Hz,C
H2NH
2),3.06(2H,m,C
H2Se),4.13(2H,q,
J=7.1Hz,COOC
H2CH
3).
ESI−MS
m/
z(%):327(M+H,2),326(M+H,21),325(M+H, 17),324(M+H,100),323(M+H,8),322(M+H,53),321(M+H,19),320(M+H,19),280(3),379(2),278(17),277 1),276(8),275 (3),274(3),270(6),269(4),268(32),267(2),266(16),265(6),264(6),224(14),223(14),222(50),221(3),220(37),219(13),218(14),140(27).
HRMS (ESI) calcd for C
13H
26NO
380Se 324.10779, found 324.10839。
【0070】
(実施例3)
【0071】
【化8】
【0072】
前記式に示すスキームに記載の通り、セレノールエステル2を合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(371.1mg,0.70mmol,2eq)の無水トルエン(1mL)懸濁液にプロピオン酸(310μL,4.16mmol,3eq)を加え、2時間加熱還流し、セレノプロピオン酸を調製した。続いて、反応液を0℃に冷却し、エキソメチレン体1(346.3mg,1.35mmol)のトルエン(500+500+250μL)溶液を加え、70℃で18時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、30%AcOEt/Hexane溶出部よりセレノールエステル2(235.3mg,44.3%)を得た。以下に得られたセレノールエステル2についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0073】
1H NMR(CDCl
3) δ1.18(3H,t,
J=7.5Hz,SeCOCH
2C
H3),1.3〜1.8(8H,m,C
H2x4),1.44(9H,s,Boc),2.64(3H,m,C
H,SeCOC
H2CH
3),3.09(4H,m,C
H2NHBoc,C
H2Se),4.60(1H,m,N
H).
13C NMR(CDCl
3) δ9.7,25.9,26.7,26.8,28.6(3 cabons),30.0,32.8,40.6,41.7,46.3,79.4,156.3,179.6,202.6.
ESI−MS
m/
z(%):421(M+Na,1),420(M+Na,20),419(M+Na,18),418(M+Na,100),417(M+Na,9),416(M+Na,50),415(M+Na,18),414(M+Na,17),364(7),363(5),362(40),361(3),360(19),359(6),368(7),298(6),297(3),296(33),295(2),294(15),293(5),292(40),224(7),223(3),222(44),221(3),220(30),219(7),218(11),217(2),216(3).
HRMS(ESI) calcd for C
16H
29NNaO
580Se 418.11086, found 418.11011。
【0074】
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、得られたセレノールエステル2を脱保護し、アミノ体Bを得た。すなわち、0℃に冷却したセレノールエステル2(24.3mg,0.062mmol)にdist H
2O(50μL)とトリフルオロ酢酸(950μL)とを加え、1時間撹拌した。反応液の溶媒を留去し、アミノ体B(25.3mg)を定量的に得た。以下に得られたアミノ体B(化合物DD12)についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0075】
1H NMR(CD
3OD) δ1.14(3H,t,
J=7.5Hz,SeCOCH
2C
H3),1.42(4H,m,C
H2x2),1.66(4H,m,C
H2x2),2.58(1H,m,C
H),2.65(2H,q,
J=7.5Hz,SeCOC
H2CH
3),2.92(2H,t,
J=7.5Hz,C
H2NH
2),3.06(2H,m,C
H2Se).
13C NMR(CD
3OD) δ9.8,26.6,27.1,27.6,28.3,33.4,40.6,42.2,47.4,178.2,203.7.
ESI−MS
m/
z(%):299(M+H,1),298(M+H,17),297(M+H,12),296(M+H,88),295(M+H,6),294(M+H,44),293(M+H,16),292(M+H,17),243(1),242(8),241(4),240(40),239(2),238(21),237(7),236(8),225(4),224(34),223(18),222(100),221(9),220(95),219(32),218(36),217(1),216(4).
HRMS(ESI) calcd for C
11H
22NO
380Se 296.07649, found 296.07723。
【0076】
(実施例4)
【0077】
【化9】
【0078】
前記式に示すスキームに記載の通り、セレノールエステル3を合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(240.6mg,0.45mmol,3eq)の無水トルエン(1mL)懸濁液に4−フェニル酪酸(349.3mg,2.13mmol,3.5eq)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、エキソメチレン体1(153.6mg,0.60mmol)の無水トルエン(500+250+250μL)溶液を加え、70℃で18時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、20%AcOEt/Hexane溶出部よりセレノールエステル3(135.7mg,46.9%)を得た。以下に得られたセレノールエステル3についての、
1H NMRを示す。
【0079】
1H NMR (CD
3OD) δ1.2〜1.8(8H,m,C
H2x4),1.42(9H,s,Boc),1.95(2H,m,C
H2CH
2Ph),2.56(1H,m,C
H),2.63(4H,m,C
H2Ph,C
H2CO),3.03(4H,m,C
H2NH,C
H2Se),7.16(3H,m,Ph−
H),7.26(2H,m,Ph−
H)。
【0080】
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、得られたセレノールエステル3を脱保護し、アミノ体Cを得た。すなわち、0℃に冷却したセレノールエステル3(17.2mg,0.036mmol)にdist H
2O(50μL)とトリフルオロ酢酸(950μL)とを加え1時間撹拌した。反応液の溶媒を留去し、アミノ体C(19.3mg)を定量的に得た。以下に得られたアミノ体C(化合物DD19)についての、
1H NMR、
13C NMRを示す。
【0081】
1H NMR (CD
3OD) δ1.42(4H,m,C
H2x2),1.66(4H,m,C
H2x2),1.94(2H,m,C
H2CH
2Ph),2.58(1H,m,C
H),2.64(4H,m,C
H2Ph,C
H2CO),2.91(2H,m,C
H2NH
2),3.07(2H,m,C
H2Se),7.16(3H,m,Ph−
H),7.26(2H,m,Ph−
H).
13C NMR(CD
3OD) δ26.8,27.2,28.3,28.4,33.4,36.7,40.6,47.4,48.0,127.1,129.45(2carbons),129.49(2carbons),142.5,178.1,202.8。
【0082】
(実施例5)
【0083】
【化10】
【0084】
前記式に示すスキームに記載の通り、セレノールエステル4を合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(247.4mg,0.47mmol,3eq)の無水トルエン(1mL)懸濁液に3−フェニルプロピオン酸(327.3mg,2.18mmol,3.5eq)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、エキソメチレン体1(158.1mg,0.61mmol)の無水トルエン(500+250+250μL)溶液を加え、70℃で16時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、25%AcOEt/Hexane溶出部よりセレノールエステル4(108.4mg,37.5%)を得た。以下に得られたセレノールエステル4についての、
1H NMRを示す。
【0085】
1H NMR(CD
3OD) δ1.2〜1.8(8H,m,C
H2x4),1.43(9H,s,Boc),2.56(1H,m,C
H),2.94(4H,m,C
H2Ph,C
H2CO),3.03(4H,m,C
H2NH,C
H2Se),7.17(3H,m,Ph−
H),7.25(2H,m,Ph−
H)。
【0086】
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、得られたセレノールエステル4を脱保護し、アミノ体Dを得た。すなわち、0℃に冷却したセレノールエステル4(27.1mg,0.058mmol)にdist H
2O(50μL)とトリフルオロ酢酸(950μL)とを加え、1時間撹拌した。反応液の溶媒を留去し、アミノ体D(29.4mg)を定量的に得た。以下に得られたアミノ体D(化合物DD20)についての、
1H NMR、
13C NMRを示す。
【0087】
1H NMR(CD
3OD) δ1.39(4H,m,C
H2x2),1.60(4H,m,C
H2x2),2.59(1H,m,C
H),2.92(2H,m,C
H2NH
2),2.95(4H,m,C
H2Ph,C
H2CO),3.06(2H,m,C
H2Se),7.17(3H,m,Ph−H),7.26(2H,m,Ph−H).
13C NMR(CD
3OD) δ26.8,27.1,27.6,28.3,32.3,33.4,40.6,47.3,50.0,50.3,127.4,129.4(2carbons),129.5(2carbons),141.2,178.1,202.1。
【0088】
(調製例2)
【0089】
【化11】
【0090】
前記式に示すスキームに記載の通り、セレノールエステル5を合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(198.0mg,0.37mmol,3eq)の無水トルエン(1mL)懸濁液にプロピオン酸(130μL,1.74mmol,3.5eq)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、エキソメチレン体2(150.7mg,0.49mmol)の無水トルエン(1000+250+250μL)溶液を加え、70℃で16時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(25g)で精製し、2.5% アンモニア−メタノール(NH
3:MeOH=1:9)/ジクロロメタン(CH
2Cl
2)溶出部よりセレノールエステル5(192.6mg,88.3%)を得た。以下に得られたセレノールエステル5についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0091】
1H NMR(CDCl
3) δ1.16 (3H,t,
J=7.1Hz,COOC
H2CH
3),1.17(3H,t,
J=7.5Hz,COC
H2CH
3),1.53(9H,s,Boc),2.63(2H,q,
J=7.5Hz,COCH
2C
H3),2.80(1H,m,C
H),2.91(2H,m,C
H2CH),3.07(2H,d,
J=6.2Hz,C
H2Se),4.07(2H,q,
J=7.1Hz,COOCH
2C
H3),7.48(1H,dd,
J=8.6,2.3Hz,Py−4),7.88(1H,d,
J=8.6Hz,Py−5),8.02(1H,bs,N
H),8.08(1H,d,
J=2.3Hz,Py−2).
13C NMR(CDCl
3) δ9.7,14.4,26.0,28.6(3carbons),35.5,41.7,48.0,61.1,81.1,112.2,128.4,138.9,148.2,151.1,152.7,173.7,202.0.
ESI−MS
m/
z(%):448(M+H,8),447(M+H,22),446(M+H,23),445(M+H,100),444(M+H,13),443(M+H,53),442(M+H,20),441(M+H,19),392(3),391(15),390(13),389(73),388(7),387(35),386(15),385(15).
HRMS(ESI) calcd for C
19H
29N
2O
580Se
1 445.12417, found 445.12508。
【0092】
(実施例6)
【0093】
【化12】
【0094】
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、調製例2で得られたセレノールエステル5を脱保護し、化合物Bを得た。すなわち、セレノールエステル5(24.3mg,0.055mmol)に濃塩酸(1mL)を加え、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで戻した後、溶媒を留去し、dist H
2Oとエーテルとを加えた。次いで、エーテル層を取り除いた後、溶媒を留去し、化合物B(14.9mg,92.0%)を得た。化合物Bは陽イオン交換カラムOASIS MCXカートリッジにて精製し、1〜2%NH
3/MeOH溶出部の溶媒を留去した。続いて4M HClに溶解し、溶媒を留去して化合物B(10.8mg,66.7%,約1:1の混合物)を得た。以下に得られた化合物B(化合物DD22)についての、
1H NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0095】
1H NMR(CD
3OD) δ2.90(4H,d,
J=6.7Hz,C
H2CHx2),3.13(6H,m,C
Hx2,C
H2Sex2),7.01(2H,d,
J=9.1Hz,Py−4x2),7.71(2H,s,Py−5x2),7.87(2H,d,
J=9.1Hz,Py−2x2).
13C NMR(CD
3OD) δ31.5 and 31.6(1:1,2carbons),34.5and34.6(1:1,2carbons),48.8and48.9(1:1,2carbons),114.9(2carbons),125.0(2carbons),135.1(2carbons),147.0(2carbons),154.7(2carbons),176.2(2carbons).
ESI−MS
m/
z(%):523(M+H,3),522(M+H,5),521(M+H,19),520(M+H,13),519(M+H,57),518(M+H,15),517(M+H,52),516(M+H,20),515(M+H,30),514(M+H,8),513(M+H,10),512(M+H,3),511(M+H,2),276(9),275(30),274(80),273(78),272(43),271(18),270(5),269(5),268(5),267(8),266(6),265(5),262(8),261(5),260(100),259(75),258(54),257(20),256(8),208(13),207(35),180(30),179(75).
HRMS(ESI) calcd for C
18H
23N
4O
480Se
2 519.00497, found 519.00600。
【0096】
(実施例7)
【0097】
【化13】
【0098】
次に、前記式に示すスキームに記載の通り、調製例2で得られたセレノールエステル5を脱保護し、化合物Cを得た。すなわち、0℃に冷却したセレノールエステル5(21.6mg,0.049mmol)にdist H
2O(50μL)とトリフルオロ酢酸(950μL)とを加え、1時間撹拌した。次いで、反応液の溶媒を留去し、dist H
2Oとヘキサンとを加え、ヘキサン層を取り除いた後、溶媒を留去し、化合物C(12.5mg,56.1%)を得た。以下に得られた化合物C(化合物DD23)についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0099】
1H NMR(CD
3OD) δ1.14(3H,t,
J=7.4Hz,COC
H2CH
3),1.19(3H,t,
J=7.1Hz,COOC
H2CH
3),2.66(2H,q,
J=7.4Hz,COCH
2C
H3),2.79(1H,m,C
H),2.85(1H,m,C
H2CH),2.97(1H,m,C
H2CH),3.10(2H,m,C
H2Se),4.09(2H,q,
J=7.1Hz,COOCH
2C
H3),6.98(1H,d,
J=9.1Hz,Py−5),7.67(1H,d,
J=2.1Hz,Py−2),7.84(1H,dd,
J=9.1,2.1Hz,Py−4).
13C NMR(CD
3OD) δ9.7,14.5,26.1,34.7,42.2,48.2,62.1,114.8,124.8,135.3,147.0,154.9,175.6,203.1.
ESI−MS
m/
z(%):349(M+H,3),348(M+H,10),347(M+H,60),346(M+H,53),345(M+H,100),344(M+H,28),343(M+H,95),342(M+H,57),341(M+H,59),340(M+H,1),339(M+H,6).
HRMS(ESI) calcd for C
14H
21N
2O
380Se 345.07174, found 345.08189。
【0100】
(実施例8)
【0101】
【化14】
【0102】
前記式に示すスキームに記載の通り、アミノ体Eを合成した。すなわち、先ず、Woolins’試薬(208.2mg,0.39mmol,6eq)の無水トルエン(1mL)懸濁液にプロピオン酸(130μL,1.74mmol,6.5eq)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温に戻し、エキソメチレン体3(88.4mg,0.26mmol)の無水トルエン(1000+250+250μL)溶液を加え、70℃で20時間撹拌し、マイケル付加反応を生じさせた。次いで、反応液を室温まで戻した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(15g,40g,30g)で精製し、1%AcOEt/Hexane溶出部よりアミノ体E(84.9mg,86.5%)を得た。以下に得られたアミノ体E(化合物DD29)についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0103】
1H NMR(CDCl
3) δ1.18(3H,t,
J=7.5Hz,COC
H2CH
3),1.19(3H,t,
J=7.1Hz,COOC
H2CH
3),2.65(2H,q,
J=7.5Hz,COCH
2C
H3),2.78(1H,m,C
H),2.86(2H,m,C
H2),3.07(2H,d,
J=6.1Hz,C
H2Se),4.09(2H,q,
J=7.1Hz,COOCH
2C
H3),4.78(2H,bs,N
H),7.35(1H,d,
J=2.0Hz,Py−4),7.79(1H,d,
J=2.0Hz,Py−2).
13C NMR(CDCl
3) δ9.7,14.4,25.9,34.9,41.7,48.1,61.1,115.0,125.1,137.7,146.6,153.7,173.7,202.0.
ESI−MS
m/
z(%):383(M+H,5),382(M+H,6),381(M+H,45),380(M+H,18),379(M+H,100),378(M+H,13),377(M+H,50),376(M+H,15),375(M+H,17).
HRMS(ESI) calcd for C
14H
20 ClN
2O
380Se 379.03277, found 379.03314。
【0104】
(実施例9)
【0105】
【化15】
【0106】
前記式に示すスキームに記載の通り、化合物Dを合成した。すなわち、アミノ体E(32.6mg,0.086mmol)に濃塩酸(1mL)を加え、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで戻した後、溶媒を留去した。得られた残渣を陽イオン交換カラムSHISEIDO PCXカートリッジで精製し、5%NH
3/MeOH溶出部の溶媒を留去した後4M HClに溶解し、溶媒を留去した後、化合物D(30.0mg,1:1の混合物)を定量的に得た。以下に得られた化合物D(化合物DD28)についての、
1H NMR、
13C NMR、ESI−MS、HRMSを示す。
【0107】
1H NMR(CD
3OD) δ2.94(4H,d,
J=7.0Hz,C
H2CHx2),3.07(2H,m,C
Hx2),3.20(4H,m,C
H2Sex2),7.81(2H,s,Py−4x2),8.14(2H,d,
J=1.7Hz,Py−2x2).
13C NMR(CD
3OD) δ31.6,31.7(1:1,2carbons),34.37,34.41(1:1,2carbons),48.71,48.74(1:1,2carbons),119.8(2carbons),125.8(2carbons),134.6(2carbons),145.9(2carbons),152.0(2carbons),176.06,176.08(1:1,2carbons).
ESI−MS
m/
z(%):591(M+H,10),590(M+H,5),589(M+H,30),588(M+H,12),587(M+H,48),586(M+H,13),585(M+H,37),584(M+H,13),583(M+H,20),582(M+H,5),581(M+H,8),580(M+H,1),579(M+H,1).
HRMS(ESI) calcd for C
18H
20 Cl
2N
4O
478Se
80Se 583.91999, found 583.92394。
【0108】
<TAFIaに対する阻害活性の評価>
実施例1〜9にて得られた各化合物について、TAFIa阻害作用の測定を、Suzuki K.ら、J Pharmacol Exp Ther.、2004年、309巻、607〜615ページに記載の方法に準じて下記のように行った。
【0109】
(a)ヒト新鮮血漿からのTAFIの精製
先ず、クエン酸採血したヒト血漿中に80mMの塩化バリウムを加え、4℃で30分間処理した。10000rpmで20分間遠心した上清を0.15M塩化ナトリウム含有20mM HEPES緩衝液(pH7.4)で透析した。さらに、35〜70%の硫安画分のタンパクをQ−セファロース、ヘパリン−セファロース、セファクリルS−300及びプラスミノーゲン−セファロースの各種カラムを用いたクロマトグラフィーにより精製した。
【0110】
(b)TAFIの活性化
次に、得られたTAFI20μLにトロンボモジュリン液(トロンボモジュリン(ウサギ肺由来、American Diagnostia
inc社製、製品番号#237)を緩衝液A(0.1%ルブロール(Lubrol)、0.1%BSA、0.15M塩化ナトリウム含有50mMトリス−塩酸緩衝液
(pH7.4))に300ng/mLの濃度で溶解して得られた液)20μLを加え、25℃で3分間処理した後、トロンビン液(トロンビン(ヒト血漿由来、Sigma社製、
製品番号T8885)を緩衝液B(0.1% BSA、0.15M NaCl、10mM塩化カルシウム含有50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4))に3u/mLの濃度で溶解した液)20μLを加え、更に25℃で20分間処理することにより、TAFIを活性化し、TAFIa溶液を得た。
【0111】
(c)TAFIa阻害活性測定法
次に、得られたTAFIa溶液25μLに、27μMジチオスレイトールを含む50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.6)で段階希釈した各種阻害剤(実施例1〜9にて得られた各化合物を、これらの終濃度が1pM〜1mMとなるように10倍の希釈系列として調整した液)30μLを加えて良く混ぜ、25℃、10分間処理した。さらに、基質溶液(Hip−Arg(Sigma社製、H2508)を50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)に3.2mMの濃度になるように溶解した液)25μLを加えて良く混ぜ25℃、30分間反応させた。次いで、12.5%Tween含有0.2M PIPES緩衝液(pH7.5)を100μLを加え、反応を停止させた。そして、その5分後に発色液(1%塩化シアヌル含有2−メトキシエタノール)100μLを加えて室温にて15分間放置した後、405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Bio Rad社製、Model3550)で測定した。これらの測定結果から、阻害率が50%となる濃度をIC
50値として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0112】
<カルボキシペプチダーゼB(CPB)に対する阻害活性の評価>
実施例1〜9にて得られた各化合物について、CPB阻害作用の測定を下記のように行った。
【0113】
(d)CPB阻害活性測定法
ブタ膵臓由来カルボキシペプチダーゼB(CPB)(Worthington Biochemical Corporation社製)を50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)に32U/Lで溶解した液25μLに、27μMジチオスレイトールを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)で段階希釈した各種阻害剤(実施例1〜9にて得られた各化合物を、これらの終濃度が1pM〜1mMとなるように10倍の希釈系列として調整した液)30μLを加えて良く混ぜ25℃、10分間処理した。さらに、基質溶液(Hip−Arg(Sigma社製、H2508)を50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)に3.2mMの濃度になるように溶解した液)25μLを加えて良く混ぜ、25℃、30分間反応させた。次に、12.5%Tween含有0.2M PIPES緩衝液(pH7.5)を100μLを加え、反応を停止させた。5分後に発色液(1%塩化シアヌル含有2−メトキシエタノール)100μlを加え、室温にて15分間放置した後、405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Bio Rad社製、Model3550)で測定した。これらの測定結果から、阻害率が50%となる濃度をIC
50値として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0114】
<カルボキシペプチダーゼN(CPN)に対する阻害活性の評価>
実施例1〜9にて得られた各化合物について、CPN阻害作用の測定を下記のように行った。
【0115】
(e)CPN阻害活性測定法
ヒト血漿由来カルボキシペプチダーゼN(CPN)(ELASTIN PRODUCTS COMPANY、INC社製)を50mMトリス−塩酸緩衝液
(pH7.6)に2μg/mlで溶解した液25μLに、27μMジチオスレイトールを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)で段階希釈した各種阻害剤(実施例1〜9にて得られた各化合物を、これらの終濃度が1pM〜1mMとなるように10倍の希釈系列として調整した液)30μLを加えて良く混ぜ37℃、10分間処理した。さらに、基質溶液(Hip−Lys(Sigma社製、H6750)を50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)に10mMの濃度になるように溶解した液)25μLを加えて良く混ぜ、37℃、40分間反応させた。次に、12.5%Tween含有0.2M PIPES緩衝液(pH7.5)を100μLを加え、反応を停止する。5分後に発色液(1%塩化シアヌル含有2−メトキ
シエタノール)100μLを加え、室温にて15分間放置した後、405nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(BioRad社製、Model3550)で測定した。これらの測定結果から、阻害率が50%となる濃度をIC
50値として求めた。得られた結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の化合物(実施例1〜9)は、いずれもTAFIaに対する阻害活性は高く、優れたものであった。特に、本発明の化合物(実施例6及び9、化合物DD22及びDD28)は、IC
50値が10
−12〜10
−11M台とTAFIaに対する阻害活性は極めて高いものであった。また、本発明の化合物(実施例9、化合物DD28)は、CPNに対する阻害活性は極めて低く、TAFIaに対する特異性の点においても優れたものであった。