(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798350
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】有機発光素子及びこれに利用される偏光構造物
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20151001BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20151001BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
G02B5/30
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-69714(P2011-69714)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2011-210724(P2011-210724A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2014年3月27日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0028050
(32)【優先日】2010年3月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】嚴 相容
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ドン▼▲スブ▼
(72)【発明者】
【氏名】許 勳道
【審査官】
大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−103833(JP,A)
【文献】
特開2005−332815(JP,A)
【文献】
特開2002−156920(JP,A)
【文献】
特開2005−038608(JP,A)
【文献】
特開2008−277679(JP,A)
【文献】
特開2007−219527(JP,A)
【文献】
特開2006−259694(JP,A)
【文献】
特開2002−372623(JP,A)
【文献】
特開2001−215476(JP,A)
【文献】
特開平11−183723(JP,A)
【文献】
特開平10−068816(JP,A)
【文献】
特開平09−292948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウと;
前記ウィンドウの下部に配置される偏光構造物と;
前記ウィンドウと前記偏光構造物との間に配置され、前記ウィンドウ及び前記偏光構造物の屈折率と類似の屈折率を持って配置されるレジンと;
前記偏光構造物の下部に配置される自発光層と;を含み、
前記偏光構造物は、
外部から入射される光を偏光する偏光層と;
前記偏光された光の1次位相遅延を発生させる第1波長板と;
前記第1波長板を透過した光に対して2次位相遅延を発生させる第2波長板と;を含み、
前記第1波長板は、可視光線領域のうち第1範囲の波長を集中吸収し、第2範囲の波長を集中透過するように形成され、
前記第2波長板は、第1波長板で集中吸収される又は集中透過するように形成された領域を除いた領域の波長を集中吸収するか、集中透過し、
前記第1波長板及び第2波長板は、前記自発光層により反射された反射光を遮断するように形成されたことを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記第1波長板は、半波長板であり、
前記第2波長板は、1/4波長板であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第1波長板の遅相軸は、前記偏光層の吸収軸に対して15度だけ傾く形状を有し、
前記第2波長板の遅相軸は、前記第1波長板の遅相軸に対して60度だけ傾く形状を有することを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第2波長板は、R、G及びB成分のうちG成分を集中吸収し、R成分及びB成分を集中透過させるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記第1波長板は、前記R成分及びB成分を吸収するように形成されることを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
上層に屈折率が類似なレジンが配置され、下層に自発光層が配置される偏光構造物において、
前記レジンを透過して入射される外部光を偏光する偏光層と;
前記偏光された光の1次位相遅延を発生させる第1波長板と;
前記第1波長板を透過した光に対して2次位相遅延を発生させる第2波長板と;を含み、
前記第1波長板は、可視光線領域のうち第1範囲の波長を集中吸収し、第2範囲の波長を集中透過するように形成され、
前記第2波長板は、第1波長板で集中吸収される又は集中透過するように形成された領域を除いた領域の波長を集中吸収するか、集中透過し、
前記第1波長板及び第2波長板は、前記自発光層により反射された反射光を遮断するように形成されたことを特徴とする有機発光素子に利用される偏光構造物。
【請求項7】
前記第1波長板は、半波長板であり、
前記第2波長板は、1/4波長板であることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子に利用される偏光構造物。
【請求項8】
前記第1波長板の遅相軸は、前記偏光層の吸収軸に対して15度だけ傾く形状を有し、前記第2波長板の遅相軸は、前記第1波長板の遅相軸に対して60度だけ傾く形状であることを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子に利用される偏光構造物。
【請求項9】
前記第2波長板は、R、G及びB成分のうちG成分を集中吸収し、R成分及びB成分を集中透過させるように形成されることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子に利用される偏光構造物。
【請求項10】
前記第1波長板は、前記R成分及びB成分を吸収するように形成されることを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子に利用される偏光構造物。
【請求項11】
前記偏光層は、第1TAC層と第2TAC層との間に配置されるPVA層であり、接着層を介して前記第1波長板に接着されることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子に利用される偏光構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に関し、特にリアルブラック(Real Black)を実現するための偏光構造物を利用する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機発光素子(electro luminescence)においては、入力される映像信号によって透過光を光学的に変調するか、または映像信号による輝度で画素を自発光させることによって、画素ごとに階調を得る。このような透過光や発光輝度を画素ごとに変調する層を変調機能層と言う。液晶表示装置においては、液晶層が変調機能層に該当し、有機発光素子においては、有機EL発光層が変調機能層に該当する。
【0003】
液晶層は、それ自体が完全に光を遮断するライトバルブではないため、液晶表示装置の場合、液晶層の上下方向の両側、すなわちバックライト側及び表示面側の各々に1個の偏光板を配置するようになる。このような偏光板による光損失を考慮して、従来、液晶表示装置は、実用に適した水準に至るまでコントラストを高める必要がある。
【0004】
一方、有機発光素子の発光層は、電圧を印加しない時は、光を照射しない。そのため、有機発光素子は、完全な黒色表示が可能であり、液晶表示装置に比べて相対的に高いコントラストを提供する。したがって、黒色表示過程で発光を遮蔽するという目的で偏光板を表示面側に設置する必要はない。しかし、屋外で使用される有機発光素子は、外光により内部の金属配線による反射が発生し、それによりコントラストが低下する現象が生じやすい。内部の金属反射による光は、画面表示と関係なく、黒色表示である時にも発生するので、コントラスト低下の要因となる。このような反射によって発生するコントラスト低下を防止するために、有機発光素子においても表示面側に偏光板と波長板を組み合わせた偏光構造物を配置する場合がある。
【0005】
しかし、このような構造を利用するとしても、最上層に配置されるガラス基板と偏光構造物との間に屈折率が異なる空気層が形成されるので、ガラス基板の外部からガラス基板の内側方向に入射される光が偏光構造物により反射される問題点は相変らず残るようになる。これにより、外部から入射される光による光反射を最小化することができると共に、自発光された光の透過率を改善することができる方法が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、光反射による反射光処理を行い、視認性を高めることができると共に、光透過率を改善することができる偏光構造物及びこれを含む有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の好ましい実施形態による有機発光素子は、ウィンドウと、前記ウィンドウの下部に配置される偏光構造物と、前記ウィンドウと前記偏光構造物との間に配置され、前記ウィンドウ及び前記偏光構造物の屈折率と類似の屈折率を持って配置されるレジンと、前記偏光構造物の下部に配置される自発光層とを含み、前記偏光構造物は、外部から入射される光を偏光する偏光層と、前記偏光された光の1次位相遅延を発生させる第1波長板と、前記第1波長板を透過した光に対して2次位相遅延を発生させる第2波長板と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の好ましい実施形態による有機発光素子に含まれる偏光構造物は、前記レジンを透過して入射される外部光を偏光する偏光層と、前記偏光された光の1次位相遅延を発生させる第1波長板と、前記第1波長板を透過した光に対して2次位相遅延を発生させる第2波長板と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態による有機発光素子及びこれに利用される偏光構造物は、外部から入射される自然光による光反射を除去し、視認性が高い表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による有機発光素子の外観を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1の切断線A−A’を基準にして切断した断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による偏光構造物の階層図を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による偏光構造物の光学特性を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態による偏光構造物を有する有機発光素子の波長帯域別反射特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳しく説明する。下記の説明では、本発明の実施形態による動作を理解するのに必要な部分だけが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を不明瞭にしないように省略される。
【0012】
以下で説明される本明細書及び特許請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解すべきものではなく、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するための用語の概念として適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願の時点においてこれらを代替することができる多様な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。
【0013】
例えば、以下の説明において、自発光層をAMOLED(Active Matrix OLED)を基準にして説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち本発明は、PMOLED(Positive Matrix OLED)などにも適用可能なものであって、自発光素子を基本とする表示素子に適用可能なものと理解すべきである。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による有機発光素子に具現された有機発光素子の外観を概略的に示す図であり、
図2は、
図1の切断線A−A’を基準にして切断した断面を概略的に示す図である。
図1及び
図2を参照すれば、本発明の有機発光素子100は、変調機能層に該当するAMOLED層140、偏光構造物(Polarizer)130、レジン(Resin)120、ウィンドウ(Window)110及び前述した各層を取り囲むケース150を含むことができる。
【0015】
このような構造を有する本発明の有機発光素子100は、前記レジン120をウィンドウ110と偏光構造物130との間に配置し、且つ前記レジン120をウィンドウ110及び偏光構造物130と屈折率が類似の物質で配置する。これにより、前記有機発光素子100は、ウィンドウ110の外部から入射される光がウィンドウ110と偏光構造物130との間に形成された空気層による反射を除去する構造を有することができる。すなわち本発明の有機発光素子100は、ウィンドウ110とレジン120及び偏光構造物130が類似の屈折率を有するようになるので、光が入射される外側を基準にして、ウィンドウ110の下面及び偏光構造物130の上面での反射を除去することができる。
【0016】
一方、前述したような構造の本発明の有機発光素子100は、偏光構造物130の反射特性による光をウィンドウ110の方向に投射するようになる。この時、偏光構造物130を構成する階層の色感が同一であると仮定すれば、位相遅延(Retardation)フィルムの特性は、偏光構造物130の反射色感を左右するようになる。これにより、本発明の偏光構造物130は、2分の1波長板と4分の1波長板を複層で構成し、外部から入射される光による偏光構造物130の光反射を除去し、実際黒色表示を達成することによって、有機発光素子100の視認性を高めることができる。以下、各構成について簡略に説明する。
【0017】
前記AMOLED層140は、外部から供給される信号によって光を発生し、且つマトリックス構造で形成され、出力するデータの色特性によってマトリックスを構成する各セルの光を調節する自発光層である。このようなAMOLED層140は、前述した自発光層と、自発光層の光の発散及び明るさを調節する駆動部とで構成されることができる。また、前記AMOLED層140は、色相を表現するためにカラーフィルタ層が自発光層の上部に配置されることができる。また、本発明のAMOLED層140は、自発光層を構成する各セル上にTSP(Touch Screen Panel)が配置されることができる。このようなAMOLED層140は、ウィンドウ110の外部から偏光構造物130を経て入射される光を反射することができる。これをさらに詳しく説明すれば、前記AMOLED層140は、マトリックスセル構造を形成するために多数の金属性信号ラインを有するようになり、このような金属性信号ラインは、入射される光を反射するようになる。また、前記AMOLED層140に存在するその他の金属性物質も前記金属性信号ラインと一緒に入射される光を反射することができる。一方、ウィンドウ110を経て偏光構造物130を通過する光は、偏光構造物130で円偏光され、この時、前記円偏光された光は、AMOLED層140で光反射を有するようになる。
【0018】
前記偏光構造物130は、前記ウィンドウ110の外部から入射される光を直線偏光する構造物と、直線偏光された光の偏光角度を調整し、円偏光に変換する構造物とを含み、変換された円偏光を前記AMOLED層140に投射する。また、前記偏光構造物130は、AMOLED層140から反射される光を無反射処理することができる。このような前記偏光構造物130は、AMOLED層140から反射された光の特定帯域可視光線を除去する構造をさらに有することができる。また、前記偏光構造物130は、AMOLED層140から生成されて照射される光の位相遅延のみを有するように調節すると共に、特定帯域の波長のみを吸収及び偏光するように支援することによって、AMOLED層140から照射された光の透過効率を高めることができる。前記偏光構造物130の詳細構造については、
図3及び
図4を参照してさらに詳しく後述する。
【0019】
前記レジン120は、前記ウィンドウ110と前記偏光構造物130との間に配置され、前記ウィンドウ110と前記偏光構造物130との間に発生しうる空気層を除去する役目を行う。この時、前記レジン120は、前記ウィンドウ110及び前記偏光構造物130の屈折率と類似の屈折率を有する物質で形成され、ウィンドウ110の外部から入射される光が前記ウィンドウ110の表面及び前記偏光構造物130の表面で発生しうる光反射を除去する役目を行うことができる。このようなレジン120は、製作過程で前記ウィンドウ110と一体形に製作された後、前記偏光構造物130の上部に配置されることができる。
【0020】
前記ウィンドウ110は、前記ケース150によって縁部が固定され、レジン120を介して前記偏光構造物130及び前記AMOLED層140の上部に配置されるようになる。このようなウィンドウ110は、強化ガラスや透明な強化プラスチック材質で形成されることができる。本発明の構造では、前記AMOLED層140の各セルの上部にTSPが配置される構造で説明するので、前記ウィンドウ110の上部または下部にTSPが配置されない構造で説明する。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、本発明の有機発光素子100は、前記AMOLED層140に形成されるTSPが前記ウィンドウ110の上部または下部に配置される構造を利用することもできる。
【0021】
前記ケース150は、前記AMOLED層140、偏光構造物130、レジン120及びウィンドウ110を取り囲む構造物である。このようなケース150は、前述したAMOLED層140、偏光構造物130、レジン120及びウィンドウ110が実装された後、各構成が遊動しないように、各構造物に適切な圧力を加える構造で形成されることができる。また、前記ケース150の一側には、前述した圧力を提供するために、一定の結合構造物、例えばフックなどが追加に形成されるか、または結合構造物、例えば、ねじ結合構造物などが付加されることができる。
【0022】
前述したように、本発明の有機発光素子100は、ウィンドウ110とレジン120及び偏光構造物130を配置し、外部から入射される光が偏光構造物130の反射特性を除いて他の位置で反射されないようにする構造を支援する。また、前記偏光構造物130は、入射される光を各々円偏光に変換し、且つ一定の角度だけずつ位相遅延させて、反射される光が透過されずに相殺されるように形成される。以下、本発明の実施形態による偏光構造物130の階層と、偏光特性及び光反射除去に関する説明を図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態による偏光構造物130の階層をさらに詳しく示す図であり、
図4は、第1波長板135、第2波長板136及びAMOLED層140の間で発生する光学的特性を説明するための図である。説明に先立って、以下、偏光構造物130の光変化を理解するために偏光について説明すれば、偏光の種類は、大きく、直線偏光と、円偏光及び楕円偏光を含むことができ、実質的に直線偏光と円偏光は、楕円偏光の特定の形態に該当することができる。
【0024】
直線偏光は、電場ベクトルが入射平面内で特定方向の直線を描く形態を有し、この直線の方向は、2つの成分のベクトルの和によって決定されることができる。円偏光は、電場ベクトルが入射平面で2つの成分のベクトルの和が円形に続いて変化する場合、2つの成分の振幅が正確に同一であり、位相差が90度である場合に発生する光変化である。この時、y成分の位相がx成分より90度進んでいる場合、偏光状態は、時計方向に回転し、これを左円偏光と言い、反対にx成分の位相がy成分より90度進んでいる場合、偏光状態は、反時計方向に回転し、これを右円偏光と言う。楕円偏光は、直線偏光及び円偏光ではない、他のすべての場合に該当し、合成された電場ベクトルが回転しながらサイズも変わる場合、楕円を描くようになるが、このような光の変化を意味する。
【0025】
一方、
図3及び
図4を参照すれば、本発明の偏光構造物130は、上側から第1TAC層(Tri−Acetyl Cellulose)131、偏光層に該当するPVA層(Poly−Vinyl Acetate)132、第2TAC層133、第1接着層134、第1波長板(Retardation)135、第2波長板136及び第2接着層137を含む。
【0026】
このような構成を有する本発明の偏光構造物130は、ウィンドウ110とレジン120を通過した外部光が前記PVA層132を通じて直線偏光に変更され、変更された直線偏光がさらに第1波長板135と第2波長板136を経て前記AMOLED層140に投射される構造を有する。また、前記AMOLED層140に形成された信号ラインなどによって光反射された光のうち全体の可視光線領域または特定の可視光線帯域の光は、さらに前記第2波長板136、第1波長板135に吸収され、全体的に前記PVA層132を通じて外部に透過される光を除去することができる。これにより、本発明の偏光構造物130は、外部から透過される光のうち特定帯域の光を段階別に位相遅延させると共に、吸収する構造を有することによって、光反射を除去することができる。また、本発明の偏光構造物130は、AMOLED層140で生成され、前記第2波長板136、第1波長板135、PVA層132を透過する光のうち特定帯域の光を段階的に除去することによって、光の透過効率を改善することができる。以下、各階層についてさらに詳しく説明する。
【0027】
前記第1TAC層131及び第2TAC層133は、セルロース原料に無水酢酸を反応させて得たTAC樹脂をメチレンクロライドなどの溶媒でドープした後、キャスティング法で膜を形成することができる。このような第1TAC層131及び第2TAC層133は、前記PVA層132の保護フィルムとして利用され、光学的に等方であり、且つ透明性と機械的強度に優れていて、温度及び湿度変化に対する寸法安定性を提供することができる。前記第1TAC層131及び第2TAC層133は、前記PVA層132を上下でラミネートし、PVA層132を保護するようになる。前記第1TAC層131及び第2TAC層133は、防幻(AntiGlare)、低反射(Low Reflection)、または前記両機能を同時に付与したAG/LR(Anti Glare/Low Reflection)フィルム形態で製作されることができる。
【0028】
前記PVA層132は、様々な方向に振動しながら入射される自然光を一方の方向だけに振動する光、すなわち偏光になるようにする機能を提供する。このようなPVA層132は、PVAのフィルムを延伸させて、ヨードI2と二色性染料の溶液に浸漬し、ヨード分子と染料分子を延伸方向に並んで配列させることによって獲得されることができる。しかし、前記PVA層132は、それ自体は透過軸の方向に対する機械的強度が弱く、熱や水分によって収縮するか、または偏光機能が低下するので、上下面に前述した第1TAC層131及び第2TAC層133が配置され、強度と収縮から保護されることができる。
【0029】
前記第1接着層134は、前記第1TAC層131及び第2TAC層133がラミネートされたPVA層132を後述する第1波長板135及び第2波長板136に接着させるように支援する。また、前記第2接着層137は、完成された偏光構造物130をAMOLED層140に接着されることができるように支援する。
【0030】
前記第1波長板135及び第2波長板136は、通過する光の偏光状態を変更する光学素子である。電磁気波が前記第1波長板135または第2波長板136を通過すれば、偏光方向(電場ベクトル方向)が光軸に平行するか、または垂直である2つの成分、例えば、正常光線と異常光線の和になり、波長板の複屈折と厚さによって2つの成分のベクトルの和が変わるようになるので、通過した後の偏光方向が変わる。特に本発明の第1波長板135は、偏光方向を180度変化させるλ/2波長板(半波長板)であり、第2波長板136は、偏光方向を90度変化させるλ/4波長板である。前記第2波長板136がλ/4波長板の場合、波の強さが一定であると仮定する時、前記第2波長板136を透過した偏光は、90度位相差遅延によって円の方程式による偏光変化を有するようになる。すなわち透過された光のx−y座標がサイン(Sine)、コサイン(Cosine)関数形態で現われる。これにより、前記第2波長板136を透過した光は、円偏光になる。また、第1波長板136は、λ/2波長板で形成されることによって、入射される光を180度位相遅延させる。すなわち第1波長板136は、入射される水平偏光を垂直偏光に、または垂直偏光を水平偏光に変換させる。
【0031】
一方、
図4に示されたように、前記第1波長板135及び第2波長板136が各々λ/2波長板及びλ/4波長板として配置されれば、第1波長板135を透過した光は、180度位相遅延が発生した後、さらに第2波長板136を透過するようになり、この時、第2波長板136で90度の位相遅延が発生することができる。第2波長板136を透過した光は、前述したように、前記AMOLED層140に配置された多様な素子、例えば、信号ラインによって反射され、反射された光は、さらに第2波長板136に入射されることができる。この時、第2波長板136を透過した光は、90度位相遅延が発生するようになるので、第2波長板136の下面に再入射される反射光は、第2波長板136により閉鎖され、放出されないようになる。結果的に、前記第2波長板136は、透過した光を無反射処理するようになる。この時、第2波長板136は、可視光線全体波長領域に対して一定の透過率を有するように形成されることができ、このような全体可視光線波長領域に対して一定の透過率を有するように形成された第2波長板136は、特性上、透過効率が多少低い割合で形成されることができる。このような透過効率を補強するために、前記第2波長板136は、特定の波長領域に集中的な透過率を有すると共に、特定の波長領域に集中的な吸収率を有するように形成されることができる。例えば、前記第2波長板136は、白色光を構成するR(red)、G(green)、B(blue)の要素のうちGの波長領域を集中的に吸収することができるように形成されることができ、残りの要素、例えば、R及びBの要素に対しては透過率が高いように染料培養または特定の方式によって蒸着された構造を有することができる。
【0032】
これをさらに詳しく説明すれば、R、G及びBの光効率は、一般的にGの効率が最も高く現われる。これにより、前記第2波長板136において、Gの吸収率を高く形成し、RとBの透過率を高く形成する場合、前記第2波長板136は、全体的に白色光の透過率を以前より高く維持することができる。しかし、このような第2波長板136の特定領域帯の吸収率増加による透過率改善方式は、実質的にR及びBの光量を増大させ、その結果として、ウィンドウ110に表現される色が青みがかった(Bluish)色を帯びるようにする。
【0033】
これにより、本発明の偏光構造物130は、第2波長板136の上層に配置された第1波長板135を用いて前述した青みがかった現象を除去するようにしている。また、前記第1波長板135は、第2波長板136を透過する光に対する180度位相遅延を発生させることができ、このような特性は、反射光に対しては第1波長板135を透過しないように無反射処理することができる。
【0034】
これをさらに詳しく説明すれば、反射光の場合、前述したPVA層132を通過しながら偏光され、偏光された光が第1波長板135を透過しながら180度位相遅延、例えば、水平偏光が垂直偏光に変更される。そして、変更された偏光は、さらに第2波長板136を経由しながら90度位相遅延を発生させ、前記位相遅延された光がAMOLED層140で反射される場合、反射光として第2波長板136に入射されることによって、第2波長板136で正確な90度位相遅延が発生した光は、第2波長板136を透過することができないので、無反射が発生するようになる。
【0035】
ところが、前述したように、前記第2波長板136が特定の波長、例えばG波長領域を集中的に吸収するように形成された場合、R及びBの要素は、第2波長板136に対して正確な90度位相遅延が発生せず、90度より小さいかまたは大きい位相遅延が発生するので、AMOLED層140を通じて反射されたR及びBの反射光は、第2波長板136を透過し、第1波長板135に伝達されることができる。この時、第1波長板135に伝達される第2波長板136を透過した光は、第1波長板135を透過しながら偏光されるので、第1波長板135によってさらに反射されて遮断されることができる。すなわち最初に第1波長板135を透過した偏光は、180度位相遅延が発生し、第2波長板136でさらに90度位相遅延が発生し、AMOLED層140で光反射され、さらに第2波長板136を透過しながら90度位相遅延が発生するので、実質的に第1波長板135の下面に入射される反射光は、第1波長板135を透過する光に比べて180度反転された波長を有するようになる。これにより、第1波長板135の下面から第2波長板136を経て第1波長板135を透過する反射光は、第1波長板135によって反射されて除去されることができる。これにより、本発明の偏光構造物130は、反射光の抑制をさらに改善し、高い明暗比を提供することができ、リアルブラックを支援することができる。ここで、前記第1波長板135及び第2波長板136は、有機発光素子100上に形成されるとき、構造的に上下層に配置されるので、垂直を基準にして第1波長板135及び第2波長板136は、0度を持って配置されることが好ましい。すなわち前記第1波長板135及び第2波長板136は、傾斜を有しないように配置される場合、透過される反射光を適切に除去することができる。これにより、第1波長板135及び第2波長板136を透過した光が反射され、前記第1波長板135及び第2波長板136をさらに透過するとき、光が反射−反射され、相殺されることができる。
【0036】
一方、前記第1波長板135は、AMOLED層140で生成されて照射された光のうちR及びBの吸収率増大を支援し、Gの透過率を支援することによって、さらに改善された光学特性を支援することができる。これをさらに詳しく説明すれば、前述したように、第2波長板136が透過率改善のために特定波長帯域の光を集中吸収する代わりに、他の波長帯域の光の透過率を改善するように形成されるので、第1波長板135に伝達される光には、R及びBの要素が増大されることができる。これにより、本発明の第1波長板135は、特定波長λ、すなわち前述したR及びBの波長に対する吸収率を高め、Gの透過率を改善するように、染料系(dye system)を形成するか、または当該波長帯域の吸収率増大のためのナノ斜方蒸着構造(nano oblique angle deposition)の設計方式で生成されることができる。ナノ斜方蒸着構造の設計方式の場合、第1波長板135上に構造物を蒸着させ、且つ一定の速度を有しながら回転するようにして、構造物が生成する多数の柱が一定の傾斜を有するように形成することができ、これにより、第1波長板135を透過する光は、円偏光されることができる。前記一定の傾斜は、吸収しようとする波長帯域及び透過しようとする波長帯域によって決定されることができる。また、本発明の第1波長板135は、前述したように、特定波長帯域の吸収率改善及び特定波長帯域の透過率改善のための染料系を形成することによって製作可能である。このように生成された第1波長板135は、R及びBの波長帯域を吸収することによって、青みがかった色を帯びる現象を除去することができる。一方、前述した説明において、前記第1波長板135及び第2波長板136の厚さは、当該波長板の位相遅延が各々180度及び90度に決定されるので、当該波長板を構成する物質の複屈折率程度と波長によって決定されることができる。
【0037】
前述したように、本発明の第1波長板135及び第2波長板136の複層構造を有する本発明の偏光構造物130は、外部から入射される光によって発生する反射光は、第1波長板135及び第2波長板136内で位相遅延を通じて除去することができる。また、本発明の偏光構造物130は、AMOLED層140で生成されて照射された光の特定帯域の透過率を改善した第1波長板135及び第2波長板136を通じて高い光透過率を維持することができる。一方、前記偏光構造物130の吸収軸は、前記PVA層132、第1波長板135及び第2波長板136の遅相軸に対して各々一定の角度だけ傾く形状を有することによって、全波長帯に対して均一な色感を有するように支援することができる。これをさらに詳しく説明すれば、前記第1波長板135及び第2波長板136は、直線偏光を円偏光に変換しながら波長分散が最小となるように一定の角度を持って配置されることができ、例えば、前記第1波長板135は、フィルムの遅相軸(Slow Axis)が前記PVA層132に対して15度だけ傾いた角度を持って形成され、前記第2波長板136の遅相軸は、前記第1波長板135の遅相軸に対して60度だけ傾いた角度を持って形成されることができる。このような配置により、前記偏光構造物130は、透過する光に対して最小の波長分散を有するようにして、全波長帯にわたって同一の色感を有するように支援することができる。
【0038】
前述した本発明の偏光構造物130が適用された光特性を下記の表1に示す。
【0040】
表1から明らかなように、本発明は、白色光の透過率を改善することによって“White”輝度が改善され、結果的にコントラストが改善されたことが分かる。前記色座標は、CIE(Commission Internationale de I’Eclairage)色座標を基準にしたものである。表1から明らかなように、各々R、G及びBのX軸及びY軸座標が当該R、G及びBの色座標に少しずつ移動することによって、当該色感がさらに明瞭に示されることが分かる。すなわち、CIE色座標の白色光を構成する成分を基準にしてR成分は、従来と比べてX軸右側に、Y軸下側に移動した座標を示し、さらに赤色の色感が投影されたことを意味し、G成分は、X軸に右側、Y軸に下側に移動することによって、G成分が減衰されたことを示す。実質的にG成分は、第2波長板136で集中吸収された後、第1波長板135に少量吸収されることによって減衰されるものと判断され、本発明は、このようなG成分の減衰によって他の光に比べて効率が高いG成分の適正減衰程度を支援することができる。B成分は、Y軸に若干移動することによって、さらに青色の色感が投影されたことを意味することができる。全体的に表1から明らかなように、従来と比べて色透過率が改善され、反射光の除去によりコントラストが改善されたことが分かる。
【0041】
図5は、本発明の実施形態による偏光構造物130が適用された有機発光素子100において各可視光線波長帯域での反射率を示すグラフである。
【0042】
図5に示されたように、従来に比べて本発明の可視光線波長帯域は、全体的にR、G、B成分に対する反射光をほぼ無反射に近く維持するように支援することが分かる。これにより、本発明の偏光構造物130を利用した有機発光素子100は、反射光のうちR、G、B成分を均一に除去することによって、青みがかった特性を除去することができることが分かる。
【0043】
一方、前述した説明では、第2波長板136がR、G及びB成分のうちG成分に対して集中吸収し、他の成分を集中透過するように形成されることを例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、前記第2波長板136がR成分またはB成分のうちいずれか1つを集中吸収し、他の成分を集中透過するように形成される場合、前記第1波長板135が第2波長板136で処理されない光成分に対する吸収または透過処理を行うように形成することができる。このような形成は、前述したように、波長板の厚さや複屈折率を調節することによって行われることができる。
【0044】
前述したように、本発明の有機発光素子100は、ウィンドウ110と偏光構造物130との間にレジン120が配置された構造において偏光構造物130の特性によって発生し得る青みがかった問題を偏光構造物130内で処理するようにして、さらに黒色に近いリアルブラックを実現することによって、有機発光素子100の明暗比の改善によるユーザの視認性を改善することができる。特に本発明の有機発光素子100は、第1波長板135及び第2波長板136が各々1/2波長板及び1/4波長板を垂直を基準にして0度を有するように配置し、外部から入射される光が反射される場合、反射光を無反射処理するようにすることができる構造を提供している。また、本発明の有機発光素子100は、AMOLED層140で発生した光の透過効率を改善するために、第2波長板136を特定の可視光線波長領域を集中的に透過するかまたは吸収するように形成した場合、第1波長板135を第2波長板136で除外された可視光線波長領域を集中的に透過するかまたは吸収することができるように形成することによって、AMOLED層140で発生した光の透過効率を改善することができるように支援することができる。ここで、前記第1波長板135及び第2波長板136に対する特定波長領域に対する吸収率または透過率改善のための設計方式は、前述したように、染料系特性を適用するか、または斜方蒸着方式を用いて達成することができる。
【0045】
以上、前述した有機発光素子100は、偏光構造物130を中心に光学的な観点でその構造を説明したが、本発明が前述した単純構造の有機発光素子に限定されるものではなく、その提供形態として、近距離通信のための近距離通信モジュール、被写体の停止画/動画を撮影するためのカメラモジュール、前記携帯有機発光素子100の有線通信方式または無線通信方式によるデータ送受信のためのインターフェース、インターネットネットワークと通信してインターネット機能を行うインターネット通信モジュール及びデジタル放送受信と再生機能を行うデジタル放送モジュールなどのように、上記で言及しないか、簡略に言及した構成をさらに含むこともできる。このような構成要素は、デジタル機器の収束する方向(convergence trend)によって変形が非常に多様なので、すべて列挙することはできないが、前記言及された構成要素と同等な水準の構成要素が前記デバイスに追加にさらに含まれて構成されることができる。また、本発明の有機発光素子100は、その提供形態によって前述した構成から特定の構成が除外されるか、または他の構成に代替されることもできることは勿論である。これは、本技術分野における通常の知識を有する者に容易に理解されることができる。
【0046】
また、本発明の実施形態による偏光構造物を含む有機発光素子100は、多様な通信方式による通信サービスを提供することができる。例えば、前記有機発光素子100は、多様な通信システムに対応する通信プロトコル(communication protocols)に基づいて動作するすべての移動通信有機発光素子(mobile communicationterminals)を含めて、PMP(Portable Multimedia Player)、デジタル放送プレーヤー、PDA(Personal Digital Assistant)、音楽再生機(例えば、MP3プレーヤー)、携帯ゲーム端末、スマートフォン(Smart Phone)及びハンドヘルドパソコンなどすべての情報通信機器とマルチメディア機器及びそれに対する応用機器を含むことができる。
【0047】
以上、本発明をいくつかの好ましい実施形態を使用して説明したが、これらの実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではない。このように、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者なら本発明の思想と特許請求範囲に提示された権利範囲から脱しない範囲で均等論によって多様な変化と修正を加えることができることを理解することができる。
【符号の説明】
【0048】
100 有機発光素子
110 ウィンドウ
120 レジン
130 偏光構造物
140 AMOLED層
150 ケース
131 第1TAC層
132 PVA層
133 第2TAC層
134 第1接着層
135 第1波長板
136 第2波長板
137 第2接着層