(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引戸の開閉方向に移動可能に設けられ係合部を有し装置本体から突出するストップ部材と該ストップ部材方向に突出する衝突部を一端に有し他端に横方向に延びる作用アーム部を有し上記衝突部がストップ部材の係合部に係合するよう回動方向に付勢された回動部材を設けた装置本体と、該装置本体のストップ部材が当接するキッカー及び上記ストップ部材がキッカー方向に移動するときには通過を許容し該キッカーから離れる方向に移動するときには該ストップ部材の移動を一時的に制動したのち移動を許容する復帰機構を含む停止復帰装置を具備し、上記装置本体と停止復帰装置のうちのいずれか一方の装置を枠体側に設け、他方の装置を引戸側に設け、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記キッカーとストップ部材が当接して上記回動部材の衝突部とストップ部材の係合部が衝突したときこの係合状態をロックして引戸の移動を停止させ、上記引戸を移動する力を緩めたとき上記衝突部が係合部から外れる方向に回動部材が回動してロック状態を解除し上記ストップ部材をキッカーに当接した状態で相対的に戸尻側若しくは戸先側に移動させつつ引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動でき、該引戸を開放方向若しくは閉鎖方向に移動するとき上記ストップ部材の移動を停止復帰装置により一時的に制動して引戸の戸先側若しくは戸尻側に移動するようにした引戸用指詰防止装置。
上記回動部材は、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部とストップ部材の係合部が係合したとき相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動するよう引戸の開閉方向に移動可能に設けられるとともに、引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に付勢され、該回動部材が相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動して回動部材の衝突部とストップ部材の係合部がロックした状態となり、引戸を閉鎖若しくは開放する力を緩めるか消失するとき、回動部材の衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れる方向に回動部材が回動するよう上記回動部材の作用アーム部と本体のホルダーには上記回動部材を回動方向に付勢する付勢力より大きな反発力を生じさせる磁石が設けられ、上記衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れて引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動したとき上記回動部材を戸先方向若しくは戸尻方向に付勢する付勢力で回動部材を相対的に引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に移動すると共に回動方向に付勢する付勢力で回動部材を回動して衝突部がストップ部材側に突出した状態に復帰するようにした請求項1に記載の引戸用指詰防止装置。
上記ホルダーには、上記回動部材の衝突部がストップ部材方向に突出しているとき磁力により上記作用アーム部に設けた磁石と吸引する吸着板が設けられている請求項2に記載の引戸用指詰防止装置。
上記復帰機構は、上記キッカー方向に傾斜する傾斜面を先端に有し該キッカー方向に回動するドッグと、該ドッグを上記装置本体方向に向けて進退可能に付勢しかつドッグ先端が突出するよう回動方向に付勢するドッグばねを具備する請求項1に記載の引戸用指詰防止装置。
上記衝撃緩和装置は当接時の衝撃を緩和する緩衝ばねと、キッカー若しくはストップ部材の移動を制動する制動装置を含み、緩衝ばねによるキッカー若しくはストップ部材の復帰を遅延させるよう上記制動装置とキッカー若しくはストップ部材を連結部材で連絡した請求項6に記載の引戸用指詰防止装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
指詰防止装置は、種々の場所で使用することができるが、
図1に示す実施例は、戸枠や窓枠等の枠体1と、この枠体1内で開閉可能に組み込まれた引戸(障子)2間に設けられ、以下引戸を閉鎖する際に、枠体の竪枠3との間に指等を挟み込まない空間(間隙)4を形成した位置で引戸の移動を一時的に停止させ、その後に完全に閉鎖できるようにした実施例につき説明する。
【0013】
図2を参照し、本発明の指詰防止装置は、係合部5を有するストップ部材6と衝突部15を有する回動部材7を設けた装置本体8と、該ストップ部材6が当接するキッカー45及び該ストップ部材6がキッカー45方向に移動するときには通過を許容し、該キッカーから離れる方行に移動するときには該ストップ部材の移動を一時的に制動したのち移動を許容する復帰機構46を含む停止復帰装置47を具備し、これらの装置8、47のうちいずれか一方を枠体1に取り付け、他方の装置を引戸2に取り付けてある。
図2に示す実施例では、枠体1の上枠9に停止復帰装置47を取り付け、この停止復帰装置47に対向する引戸2の上框10に装置本体8を取り付けてあるが、枠体1に装置本体8を取り付け、引戸2に停止復帰装置47を取り付けることもできる。
【0014】
上記装置本体8の上記ストップ部材6は、
図2において本体8のケース17と蓋体18の上端間に形成されたガイド溝11に沿って引戸2の開閉方向に移動可能に設けられ、該ガイド溝11の両端にはストップ部材6の戸先側への移動を制限する前進端ストッパー48と、戸尻側への移動を制限する後進端ストッパー49が設けられている。なお、図に示す実施例においては、上記ストップ部材は、上記ガイド溝に嵌着する幅狭部50を設けて開閉方向に摺動するようにしてあるが、適宜のローラーを設けて該ローラーが本体の上部を転動して移動するようにしてもよいし、ストップ部材が開閉方向にほぼ水平に摺動するようガイドを設けてもよい(図示略)。ストップ部材がキッカーに45に当接した際の上記後進端ストッパー49とストップ部材6の後退側小口52間の間隔は、少なくとも、引戸2を閉鎖方向に移動して戸先と枠体間に指詰防止に必要な間隔を形成したのち、引戸を完全に閉鎖できるよう引戸をさらに閉鎖方向に移動できる長さにしてある。
【0015】
該ストップ部材6は、上記のように、中間に引戸の開閉方向に沿って凹む幅狭部50を設けた扁平な略直方体形状に形成されて、下面には、
図2において引戸の閉鎖方向に向かって水平でもよいが、緩やかに下方に傾斜する案内傾斜面12と、この案内傾斜面12に続いて下方に大きく傾斜する上記係合部5が設けられ、該係合部5の下端に続いて引戸2の上縁に沿って延びるよう水平面13が形成され、該水平面13の端部は角部14を介して上方に延びている。この係合部5には、緩やかな隆起部を形成したり、凹部を設けて回動部材7の衝突部15が、より確実に係合するようにしてもよい。また、ストップ部材6には、前進側小口51と後退側小口52が形成され、後退側小口52の上端の角部53を介して上記水平面とほぼ平行な上面54が形成され、該小口51、52の一部と上面54が装置本体8から突出している。
【0016】
上記装置本体8は、上記引戸2の上框上面から隠蔽式に取り付けることもできるが、実施例では上框横から取り付ける構造を図示してあり、ねじ16で取り付けられるケース17と、このケース17を覆う蓋体18で箱状に構成され、上記ストップ部材6の係合部5に係合可能するよう斜面19を介して突出する衝突部15と横方向に延びる作用アーム部20を有する上記回動部材7が回動可能に設けられている。該回動部材7は回動軸21の外周に回転自在に遊嵌され、該回動軸21は上記ケース17と蓋体18に形成した長孔22に挿入されて引戸2の開閉方向に往復動可能に遊嵌されると共に引戸の閉鎖方向(戸先側)に向けて横方向に付勢されている。なお、長孔22はケース若しくは蓋体側のいずれか一方に設けることもでき、蓋体を省略することもできる。
図2に示す実施例では、ケース17内のばね軸23に捩りコイルばね24の環状部を遊嵌し、該ばね24の一端をケースに形成したブラケットやスリット等の支承部25に当接させ、他端を上記回動軸21の側面に当接させることにより該回動軸21を引戸の閉鎖方向(戸先側)に付勢しているが、引張ばね等を用いて付勢するようにしてもよい。なお、上記長孔22には、潤滑性を有する適宜のプラスチック材料で形成した摺動ガイド部材55を孔縁に嵌着したり、上記回動軸に適宜の軸受(図示略)を設けて長孔内を転動若しくはスムーズに左右動できるようにすることもできる。また、回動軸21と回動部材7を一体的に構成してもよい。
【0017】
また、上記回動部材7は上記衝突部15が上記ストップ部材6方向に突出するよう回動方向にも付勢されている。
図2に示す実施例では、上記回動軸21を中心として反時計方向に回転するよう作用アーム部20側の重量を衝突部15側の重量より重く形成してあるが、適宜のばね等の付勢手段を設けて付勢するようにしてもよい(図示略)。
図2に示すように上記作用アーム部20は、衝突部15がストップ部材6に当接していない状態のとき、本体8に設けたホルダー26の上面に着座している。
【0018】
この際、振動、衝撃等で回動部材7が勝手に回動して衝突部15が引戸(装置本体)内に後退しないようこの状態を確保するため、上記作用アーム部20とホルダー26には、磁性により吸着する構造を設けることが好ましい。
図2においては、作用アーム部20に磁石27を設け、ホルダー26に吸着板28を設け、それぞれ取付孔に挿入してねじで固定してある。ホルダー26側の吸着板28は、上記磁石27に吸着する材質の金属板で構成してあるが、上記磁石27と極性の異なる磁石をホルダーに設けて吸着板としてもよい。このホルダー26は、両側に設けたピン若しくはねじ29をケース等に形成した案内溝30に挿入し、本体の下方から調整ねじ31をねじ込み、この調整ねじ31を調整することにより
図2において上下方向に移動して作用アーム部20との間隔を調整して磁力を調整できるようにしてある。なお、ホルダー26を用いずに適宜の部材により吸着板をケースに設けてもよい。
【0019】
上記長孔22の長さは、
図2に示すように、引戸2が開放状態にあるとき、回動部材7が回動方向に作用する付勢力により作用アーム部20がホルダー26に着座すると共に上記ばね24により戸先方向に作用する付勢力により回動軸21が閉鎖側(戸先側)の孔端32に当接し、後記するように、衝突部15がストップ部材6の係合部5に係合して押圧されたとき上記ばね24に抗して引戸2の開放方向(戸尻側)に所定量移動し、開放側(戸尻側)の孔端33に当接する長さに形成してある。そして、このように引戸の開放側(戸尻側)に移動した位置で、上記作用アーム部20に設けた上記磁石27に対向するホルダー26には、該磁石27に近接することにより上記回動方向に回動部材7を付勢する上記付勢力よりも大きな反発力(斥力)を回動部材7に作用させるよう磁石(同極の磁石)34が設けられている。これにより、回動部材7は上記衝突部15がストップ部材6の係合部5から離れる方向(
図2において時計方向)に回動し、ストップ部材6との係合が解除される。
【0020】
上記停止復帰装置47のキッカー45は、側面視で矩形状に形成され、閉鎖位置に引戸が移動してきたとき、上記ストップ部材6が当接するような位置の枠体1にねじ56で取り付けられているが、円柱状やストップ部材側からみて円板状に形成することもできる。復帰機構46は、
図2においては、該キッカー45と別体に設けて枠体に取り付けてあるが、一体的に構成して枠体に取り付けることもでき、上記ストップ部材6に当接可能なドッグ57を有する。該ドッグ57は、先端にキッカー方向に向かって上昇する傾斜面58が形成され、ドッグケース59に設けた上下方向に延びる収納溝60内に嵌挿され、ドッグケース59に形成した案内溝61に沿って上下動可能に設けたドッグ軸62に遊嵌され、
図2において時計方向に回動したとき収納溝60の戸尻側の内壁面にドッグ57の側面が当る位置まで時計方向に回動でき、反時計方向には自由に回動できるようドッグ57の上端には弧状面63が形成されている。また、該ドッグ57に形成した肩部64とドッグケース59の内面に形成した肩部65間には、上記ドッグ軸62に装着したドッグばね(捩りコイルばね)66の両端部が当接しており、該ドッグばね66によりドッグ57を装置本体方向、すなわち引戸の上縁方向に進退可能に突出させるとともに先端が時計方向に回動して突出する方向にドッグ57を付勢している。この構成により、
図2において、ドッグ57は上下動可能であり、反時計方向には自由に回動するが、時計方向には、
図2に示す状態までしか回動させることができない。
【0021】
上記実施例による引戸2を閉鎖する際の動作を説明する。
図5は、上記
図2の状態で手動若しくは適宜の自動閉鎖装置(図示略)により引戸2に矢印35方向に向かって移動する力、すなわち閉鎖力を作用させて引戸2を閉鎖方向に移動し、ストップ部材6が停止復帰装置47のドッグ57に近づいた状態を示している。そして、
図6に示すように、ストップ部材6がドッグ57に衝突すると、ドッグ57は反時計方向には自由に回動可能であるから、該ドッグ57を押し退けて引戸2は移動し、
図7に示すようにドッグ57の先端がストップ部材6の上面54を摺動しながら
図8に示すようにドッグ57からストップ部材6が外れ、ストップ部材6の前進側小口51がキッカー45に当り、ストップ部材6の移動は停止される。
【0022】
引戸にはさらに閉鎖方向の力が作用しているから、ストップ部材6がキッカー45に当接した状態で引戸2は閉鎖方向に移動し、ストップ部材6の係合部5に回動部材7の衝突部15が係合した状態で回動部材7の回動軸21は、ばね24による戸先方向の付勢作用に抗して上記閉鎖力により相対的に引戸2の開放方向(戸尻側)に長孔22内を移動し(
図9)、
図10に示すように、回動軸21が戸尻側の孔端33に当った位置で止まる(実際には、回動部材7はストップ部材6に当って横方向の移動が拘束されているので、停止しており、装置本体8のホルダー26側が戸先側に移動している)。なお、この際、上記のようにホルダー26に、上記作用アーム部20側の上記磁石27と引き合う吸着板28を設けておくと、磁石の作用として吸着方向に引き剥がすには大きな力が必要であるので、引張方向には動きにくいが、せん断方向(横方向)には小さな力で動かすことができるので、作用アーム部20がホルダー26の上面に沿った状態で容易に回動部材7を移動させることができる。したがって、衝突部15が係合部5に当ったときの衝撃で回動部材7の作用アーム部20がホルダー26の吸着板28から離れる方向に飛び跳ねるようなおそれがなく、
図9に示す状態から
図10に示す状態に確実に滑らかに移行させることができ、移行中は、回動部材7に設けた磁石27とホルダー26に設けた同極の磁石34による同極面での最大の反発力を受ける直前まで吸着板28に吸着されながら移動している。
【0023】
このようにして、引戸2を閉鎖方向に作用する閉鎖力と衝突部15をストップ部材方向に付勢するよう回動部材に付与した回動方向の付勢力により、上記衝突部15と係合部5が押し付けられ、上記回動部材7は衝突部15と係合部5が係合した状態でロックされ、引戸2の移動は一時的に停止する。これにより、ストップ部材6を適宜位置に設けることにより引戸2の戸先と枠体1間には、指詰防止の空間(間隙)4が確保される。
【0024】
そして、上記引戸2を閉鎖しようとする力を緩めるか、引戸から手を離し、若しくは自動閉鎖装置併用の場合には引戸2をわずか開放方向に戻して引戸を閉鎖しようとする閉鎖力を一旦少なくし、若しくは消失させると、上記衝突部15を係合部5に押し付けている力が消失若しくは少なくなるので、ロック状態が解除される。このとき、引戸2が停止した状態で、上記磁石27と磁石34がほぼ同位置で対向し最大の斥力を生じるように設けてあるから、上記回動部材7は回動方向に付勢している付勢力に打ち勝って上記磁石27、34による反発力により衝突部15がストップ部材6の係合部5から離れる方向(図において時計方向)に自動的に回動し始める(
図11)。この回動中も上記回動部材7には、ばね24により戸先方向に付勢力が働いているから、
図11鎖線で示すように、回動部材7は回動軸21を中心に回動しつつ係合部5から外れた衝突部15がストップ部材6の水平面13を滑りながら、閉鎖方向に移動し、回動軸21が戸先側の孔端32に当接する位置で止まり、衝突部15とストップ部材6の係合が外れた瞬間から引戸を閉鎖することができる。上記ホルダー26側からの反発力は、上記磁石34から作用アーム部20の磁石27が離れるので次第に弱くなり、かつ回動部材7に作用する回動方向の付勢力により、
図12に示すように、作用アーム部20はホルダー26に近づきつつ引戸の移動により衝突部15がストップ部材6を超え、引戸を閉鎖位置まで移動させることができる。なお、上記のようにホルダー26に作用アーム部20側の磁石27に吸着される吸着板28を設けておけば、回動部材7を
図12に示す状態に確実に保持しておくことができ、閉鎖中に引戸が振動、衝撃を受けても回動部材がホルダーから簡単に外れることがない。
【0025】
上記のようにして引戸2を完全に閉鎖した
図12の状態から開放する工程を説明すると、
図13に示すように、引戸2を開放位置に向けて矢印36方向に移動すると、回動部材7の衝突部15の後面に形成した斜面19がストップ部材6の角部14に当接し、ストップ部材6を戸尻方向に移動させると共に該ストップ部材の角部53がドッグ57の傾斜面58に当ると、ストップ部材6は該ドッグ57を上方に押し上げつつ戸尻方向への移動が一時的に制限される。この間に上記磁石27と吸着板28による吸着作用を徐々に引き剥がしつつ回動部材7は回動方向に付勢する付勢力に抗して時計方向に回動し、衝突部15が水平面13を滑りながら引戸とともに開放方向に移動する(
図14)。そして、水平面13を外れると、
図15に示すように回動方向に作用する付勢力により反時計方向に回動して衝撃部15は係合部5に対向する位置に移動するが、引戸2には開放方向(戸尻側)に力が作用しているので、回動部材7がロックされるおそれはない。上記ストップ部材6が完全にドッグ57を押し上げるまでの間にストップ部材6は相対的に前進端ストッパー48に当たる位置まで移動し、該ドッグ57を通過すると、上記
図6、
図5に示すようにドッグ57は復帰し、その後は引戸2を開放位置まで移動することができる。
【0026】
引戸2が停止する際に、閉じる速度が著しく速い場合には、ストップ部材6がキッカー45に当接した際、引戸2が跳ね返ったり、ストップ部材6や回動部材7が破壊するおそれがあるので、衝撃が作用しないよう適宜の元位置に復帰する衝撃緩和装置や制動装置をキッカーやストップ部材に設けることが好ましい。
図16には、キッカー側に衝撃緩和装置を設けた一例を示し、キッカー45を移動可能に設け、該キッカーに作用する衝撃力を緩和する緩衝ばね37と、該ばね37によるキッカー45の復帰動を遅延させるよう制動装置を設けている。制動装置(衝撃緩和装置)としては、油圧、空圧等を利用した各種の装置を用いることができるが
図16には、粘性流体の抵抗を用いたリニアダンパ38を用いた実施例が示されている。
図16において、キッカー45は、引戸2の開閉方向に延びるガイドケース39内に摺動可能に設けられており、該ケース39の一端側にはリニアダンパ38が固定され、該リニアダンパ38とキッカー45の間には緩衝ばね(圧縮コイルばね)37が設けられている。該リニアダンパ38に挿通したスパイラルロッド40の一端は、上記緩衝ばね37の中心を通過してキッカー方向に延び、先端にはパイプ41が固着され、該パイプ41をキッカー45に設けた一方向クラッチ42に挿入し、スパイラルロッド40がキッカーと共に軸方向に移動すると共に一方向にのみ回転できるようキッカーに連結している。
【0027】
リニアダンパ38内には公知のように上記スパイラルロッド40の周面に形成したスパイラル状の溝や突条にねじ係合する制動板43と油等の制動流体が収納されている。該制動板43は上記スパイラルロッド40が回転せずに軸方向に移動するときはスパイラル部の作用で回転するが、この回転は制動抵抗を受けているのでゆっくりとした回転であり、それによりスパイラルロッド40の移動を制動することができる。スパイラルロッド40が自由に回転できるときには、スパイラルロッド40が軸方向に移動しても、単にスパイラルロッドが回転しながら軸方向に移動するだけで、上記制動板43は回転しない。上記スパイラルロッドと制動板に形成するスパイラルの方向と一方向クラッチの関係は、
図16においてスパイラルロッドが引戸の閉鎖方向(戸先側)に移動するときには、一方向クラッチが空転しスパイラルロッドが自由に回転して制動板が回転せず、一方、引戸の開放方向(戸尻側)にスパイラルロッドが移動するときには一方向クラッチがスパイラルロッドの回転を拘束し該スパイラルロッドにねじ係合する制動板が回転してスパイルルロッドの軸方向の移動を制動するよう構成してある。
【0028】
上記の構成により、
図16に示すように、引戸2が閉鎖方向に移動してキッカー45にストップ部材6が衝突すると、上述のようにストップ部材6と回動部材7はロックされるが、この間に上記キッカー45は衝撃を吸収しつつ緩衝ばね37を圧縮しながら引戸2の閉鎖方向(戸先側)に移動するから、衝撃が緩和され、引戸を閉鎖する力と緩衝ばね37の力が釣り合った場所で停止する。このとき、上記スパイラルロッド40は、キッカー45と一緒に戸先方向に移動するが、一方向クラッチ42により空転可能状態に支持されているので、自由に回転するからリニアダンパ38内の制動板43を回転させることはなく、自身が回転しながら抵抗なく上記リニアダンパ38内に滑り込む。
【0029】
そして、引戸2の移動が停止した状態で引戸に作用する閉鎖力が弱められたり、消失したりすると、上述したように回動部材7は閉鎖方向(戸先側)に移動しながら回動してストップ部材6とのロック状態が解除されるが、キッカー45を介してストップ部材6が上記緩衝ばね37の復元力により戸尻側に直ちに強く押された状態であると、ロックの解除に支障を生じるおそれがある。そこで、キッカー45が
図16の状態に戻るとき、上記一方向クラッチ42によりスパイラルロッド40の回転を拘束し、リニアダンパ38による制動力をスパイラルロッド40に作用させ、リニアダンパ38とスパイラルロッド40間で発生する抵抗によりスパイラルロッド40がゆっくりと移動するようにしてある。これにより、上記キッカー45は、緩衝ばね37によりを徐々に戸尻方向に移動するから、
図16に示す状態に戻るまでの間に回動部材7とストップ部材6のロック状態を確実に解除することができる。なお、上記実施例においては、リニアダンパ38の構造に対応してストップ部材6とリニアダンパ38をスパイラルロッド40で連結してあるが、制動装置(ダンパ)の構成や形式等によりリニアダンパではなく通常の空気或いは油圧シリンダーを連結部材として用いることもできる。
【0030】
なお、上記
図16の実施例においては、キッカーをガイドケース内に移動可能に設けたが、
図17に示すように、上記ロッド63の先端にキッカー45を直接設け、緩衝ばねをダンパ64内に内蔵させたり、ダンパを油圧、空圧機構で形成してもよいし、ストップ部材側に上記衝撃緩和装置とほぼ同様の装置を組み込んでもよい。なお、ストップ部材と回動部材間の衝撃を緩和するために、いずれか一方の部材に、適宜のプラスチック材料やゴム材料等で構成した緩衝部材を設けることもできる。
【0031】
上記実施例においては、停止復帰装置47を枠体1側に設け、装置本体8を引戸2側に設けたが、停止復帰装置47を引戸2側に設け、装置本体8を枠1側に設けることもできる。この場合、回動部材の上下の方向が逆になるので、回動部材7を回動方向に付勢するための重量配分を上記実施例と変える必要がある。すなわち、回動軸21を中心として反時計方向に回転して該衝突部15がストップ部材6の係合部に係合するよう回動部材7の衝突部15側の重量を作用アーム部20側に比べて重く形成すればよいが、適宜のばねにより回動方向に付勢してもよい。
【0032】
上記実施例は引戸を閉じるとき指等を挟み込まないよう引戸の戸先と枠体間に空間・間隙を形成した状態で装置本体内のストップ部材と回動部材をロックして一旦引戸の移動を停止し、その後、ロックを自動的に解除して完全に閉鎖できるようにしたが、上述したように、所望により引戸を開放する際に枠体との間に間隙を形成した状態で引戸の移動を一旦停止させるようにすることもできる。このような構成は、上記実施例に基づき当業者には容易に変更できる事項であるので詳細な説明は省略する。