特許第5798414号(P5798414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798414
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20151001BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20151001BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B60C11/13 C
   B60C11/01 B
   B60C11/03 100B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-187696(P2011-187696)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2013-49325(P2013-49325A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】梶田 弘明
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−058839(JP,A)
【文献】 特開平08−197911(JP,A)
【文献】 特開昭60−116511(JP,A)
【文献】 特開2007−022151(JP,A)
【文献】 特開2011−042328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/13
B60C 11/01
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向に連続してのびるショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向外側に接地端を越えてのびる複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記接地端に沿ってショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列が形成された空気入りタイヤであって、
前記ショルダー横溝は、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に対して10〜20度の第1の角度α1で傾斜してのびる内側部と、該内側部に接続されかつタイヤ軸方向に対して第1の角度α1よりも大きい第2の角度α2で傾斜してのびる中間部と、該中間部に接続されかつタイヤ軸方向に対して第2の角度α2よりも小さい角度α3でのびる外側部とからなり、
しかも、前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内側端から接地端までの平均溝幅が大きい第1ショルダー横溝と、該第1ショルダー横溝よりも前記平均溝幅が小さい第2ショルダー横溝とがタイヤ周方向に交互に形成され、
前記ショルダー横溝の前記中間部は、該中間部がタイヤ軸方向に対して傾斜する側と反対側の溝縁である反傾斜側溝縁を有し、
前記反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端及び外端間のタイヤ周方向距離であるズレ量は、前記反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端におけるタイヤ周方向の溝幅の20〜50%であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1ショルダー横溝のタイヤ周方向の溝幅は、該第1ショルダー横溝のタイヤ軸方向内端から接地端まで漸増し、
前記第2ショルダー横溝の内側部のタイヤ周方向の溝幅は、該内側部のタイヤ軸方向内端から外端まで一定である請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ショルダー横溝の内側部のタイヤ軸方向長さは、前記第2ショルダー横溝の内側部のタイヤ軸方向長さよりも小さい請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の溝幅Wg1は、トレッド接地幅TWの4〜10%である請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー周方向溝は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部と、この外側溝部よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部と、該内側溝部から前記外側溝部に斜めにのびる移行溝部とを含む台形波状のジグザグをなし、
前記内側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁から前記外側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁までのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Lbが、前記溝幅Wg1の0.5〜0.8倍である請求項記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ性能の悪化を抑制しつつマッド性能及び排水性能を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
マッド路面を走行する、例えば、オールシーズン用タイヤにあっては、トレッド部に、タイヤ周方向にのびる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向にのびる複数の横溝とにより複数のブロックを区分したブロックパターンが採用される。従来、マッド性能や排水性能を高めるために、横溝の溝深さや溝幅を大きくして、トラクションや横溝内で押し固めた泥に対するせん断力を高める他、接地端側への排水をスムーズにすること等が知られている。
【0003】
しかしながら、上述の手法では、横溝の溝容積が増加し、周方向溝内で生じた空気の共鳴振動(気柱共鳴音)が横溝から接地端側へ排出され易くなり、ノイズ性能が悪化するという問題があった。このように、マッド性能及び排水性能の向上とノイズ性能の確保とは、二律背反の関係があり、これらを両立させることは困難であった。関連する技術として次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−245625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向外側にのびるショルダー横溝の形状を改善することを基本として、ノイズ性能の悪化を抑制しつつをマッド性能及び排水性能向上させうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向に連続してのびるショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向外側に接地端を越えてのびる複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記接地端に沿ってショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列が形成された空気入りタイヤであって、前記ショルダー横溝は、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に対して10〜20度の第1の角度α1で傾斜してのびる内側部と、該内側部に接続されかつタイヤ軸方向に対して第1の角度α1よりも大きい第2の角度α2で傾斜してのびる中間部と、該中間部に接続されかつタイヤ軸方向に対して第2の角度α2よりも小さい角度α3でのびる外側部とからなり、しかも、前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内側端から接地端までの平均溝幅が大きい第1ショルダー横溝と、該第1ショルダー横溝よりも前記平均溝幅が小さい第2ショルダー横溝とがタイヤ周方向に交互に形成され、前記ショルダー横溝の前記中間部は、該中間部がタイヤ軸方向に対して傾斜する側と反対側の溝縁である反傾斜側溝縁を有し、前記反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端及び外端間のタイヤ周方向距離であるズレ量は、前記反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端におけるタイヤ周方向の溝幅の20〜50%である。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記第1ショルダー横溝のタイヤ周方向の溝幅は、該第1ショルダー横溝のタイヤ軸方向内端から接地端まで漸増し、前記第2ショルダー横溝の内側部のタイヤ周方向の溝幅は、該内側部のタイヤ軸方向内端から外端まで一定である請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記第1ショルダー横溝の内側部のタイヤ軸方向長さは、前記第2ショルダー横溝の内側部のタイヤ軸方向長さよりも小さい請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の溝幅Wg1は、トレッド接地幅TWの4〜10%である請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記ショルダー周方向溝は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部と、この外側溝部よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部と、該内側溝部から前記外側溝部に斜めにのびる移行溝部とを含む台形波状のジグザグをなし、前記内側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁から前記外側溝部のタイヤ軸方向外側の溝縁までのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Lbが、前記溝幅Wg1の0.5〜0.8倍である請求項記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、最も接地端側をタイヤ周方向に連続してのびるショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向外側に接地端を越えてのびる複数本のショルダー横溝とが設けられることにより、前記接地端に沿ってショルダーブロックがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列が形成される。
【0012】
そして、前記ショルダー横溝は、前記ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向に対して10〜20度の第1の角度α1で傾斜してのびる内側部と、該内側部に接続されかつ前記第1の角度α1よりも大きい第2の角度α2で傾斜してのびる中間部と、該中間部に接続されかつ前記第2の角度α2よりも小さい角度α3でのびる外側部とからなる。このようなショルダー横溝は、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に小さい内側部及び外側部が、旋回走行時、ショルダー縦溝の泥や排水を容易に接地端側に排出するため、マッド性能や排水性能を高め得る。また、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に大きい中間部は、ショルダー周方向溝内で生じた空気の共鳴振動(気柱共鳴音)を攪乱して小さくするため、ノイズ性能を向上し得る。
【0013】
また、前記ショルダー横溝は、タイヤ軸方向の内側端から接地端までの平均溝幅が大きい第1ショルダー横溝と、該第1ショルダー横溝よりも前記平均溝幅が小さい第2ショルダー横溝とがタイヤ周方向に交互に形成される。即ち、ショルダーブロック列には、溝面積(溝容積)が異なる第1及び第2ショルダー横溝が交互に配されるため、ピッチ音のピークが効果的に抑えられる。従って、本発明の空気入りタイヤは、さらにノイズ性能が向上する。
【0014】
また、前記ショルダー横溝の中間部は、該中間部がタイヤ軸方向に対して傾斜する側と反対側の溝縁である反傾斜側溝縁を有し、この反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端及び外端間のタイヤ周方向距離であるズレ量は、該反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端におけるタイヤ周方向の溝幅の20〜50%に設定される。このようなショルダー横溝は、気柱共鳴音を反傾斜側溝縁の溝壁に衝突・吸収させて低下させ、接地端側への排出を効果的に抑制する他、直進走行時、反傾斜側溝縁のタイヤ周方向成分によって、接地端側への排土性や排水性を確保する。従って、本発明の空気入りタイヤは、より一層、ノイズ性能が向上するとともに、排水性能やマッド性能をもバランス良く高め得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の空気入りタイヤを示すトレッド部の展開図である。
図2図1の右半分の拡大図である。
図3図2のショルダー周方向溝付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えば四輪駆動車用のオールシーズン用タイヤとして好適に利用され、そのトレッド部2には、最も接地端Te側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のショルダー周方向溝3と、該ショルダー周方向溝3よりもタイヤ赤道C側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター周方向溝4とが設けられる。これにより、トレッド部2には、ショルダー周方向溝3と接地端Teとの間をのびる一対のショルダー陸部5、センター周方向溝4とショルダー周方向溝3との間をのびる一対のミドル陸部6、及び一対のセンター周方向溝4、4間をのびる一対のセンター陸部7が形成される。従って、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2に、合計5本の陸部を具える。
【0017】
ここで、前記「接地端」Teは、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。また、タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
【0018】
また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0019】
また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0020】
さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0021】
ショルダー陸部5には、ショルダー周方向溝3からタイヤ軸方向外側に接地端Teを越えてのびるショルダー横溝8がタイヤ周方向に隔設される。これにより、ショルダー陸部5は、ショルダー周方向溝3、接地端Te及びショルダー横溝8により区分される複数個のショルダーブロック9が接地端Teに沿ってタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列9Rが形成される。
【0022】
前記ショルダー周方向溝3は、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部10と、該外側溝部10よりもタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部11と、該内側溝部11から前記外側溝部10に斜めにのびる移行溝部12とを含む台形波状のジグザグに形成される。このような斜めにのびる移行溝部12は、タイヤ軸方向成分を有するため、該移行溝部12の溝内で泥を掴み易くかつ、該溝内で押し固められた泥に対して大きなせん断力を得ることができる。また、タイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部10と内側溝部11とは、排土性を高めるのに役立つ。
【0023】
図2に示されるように、前記移行溝部12は、内側溝部11と外側溝部10との間をタイヤ軸方向に対して一方側(本図では右下がり)に傾斜してのびる第1移行片12Aと、該第1移行片12Aとは逆向き(本図では右上がり)に傾斜してのびる第2移行片12Bとを含む。即ち、本実施形態のショルダー周方向溝3は、外側溝部10、第1移行片12A、内側溝部11及び第2移行片12Bが順次連続して前記台形波状のジグザグに形成される。
【0024】
また、図3に示されるように、ショルダー周方向溝3は、内側溝部11のタイヤ軸方向外側の溝縁11eから外側溝部10のタイヤ軸方向外側の溝縁10eまでのタイヤ軸方向距離である出っ張り量Lbが、ショルダー周方向溝3のタイヤ軸方向の溝幅Wg1の0.5〜0.8倍に形成されるのが望ましい。即ち、出っ張り量Lbが、前記溝幅Wg1の0.5倍よりも小さくなると、ショルダー周方向溝3内に押し固められた泥に対するせん断力が低下するおそれがあり、逆に0.8倍を超えると、排土抵抗や排水抵抗が大きくなるため、マッド性能や排水性能が悪化するおそれがある。
【0025】
また、前述の作用をより有効に発揮させるために、移行溝部12の溝中心線12Gのタイヤ軸方向に対する角度θ1は、好ましくは35度以上、より好ましくは40度以上が望ましく、また好ましくは60度以下、より好ましくは55度以下が望ましい。
【0026】
また、このようなショルダー周方向溝3のタイヤ軸方向の溝幅Wg1は、トレッド接地幅TWの4.0〜10.0%に形成される望ましい。前記溝幅Wg1が大きくなると、溝容積が増加しノイズ性能が悪化する他、各陸部5及び6の剛性が低下するおそれがある。逆に溝幅Wg1が小さくなると、タイヤ転動を利用した排土性排水性が低下しマッド性能や排水性能が悪化する。このため、溝幅Wg1は、より好ましくはトレッド接地幅TWの6%以上が望ましく、またより好ましくは8%以下が望ましい。また、ショルダー周方向溝3の溝深さD1(図示しない)については、上述の作用を効果的に発揮させるために、例えば9.0〜10.0mmが望ましい。
【0027】
また、前記センター周方向溝4も、ショルダー周方向溝3と同様に、本実施形態では、タイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に沿ってのびる外側溝部4aと、タイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に沿ってのびる内側溝部4bと、該内側溝部4bから前記外側溝部4aの間を斜めにのびて継ぐ移行溝部4cとを含む台形波状のジグザグに形成される。これにより、クラウン部においても、ショルダー周方向溝3と同様の作用が得られ、ひいてはマッド性能を向上し得る。なお、ショルダー周方向溝3及びセンター周方向溝4の形状は、このような態様に限定されるものではなく、種々の形状を採用し得る。
【0028】
また、センター周方向溝4のタイヤ軸方向の溝幅Wg2(図2に示す)及び溝深さD2(図示しない)については、慣例に従い種々定めることができるが、例えば、溝幅Wg2は、トレッド接地幅TWの2.0〜6.0%が望ましく、溝深さD2は、9.0〜10.0mmが望ましい。
【0029】
また、図1に示されるように、ショルダー周方向溝3の配設位置については、例えばその振幅中心線3Gと接地端Teとの間のタイヤ軸方向距離L1が、好ましくはトレッド接地幅TWの15%以上、さらに好ましくは20%以上が望ましく、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下が望ましい。また、センター周方向溝4の配設位置については、例えばその振幅中心線4Gとタイヤ赤道Cとの間のタイヤ軸方向距離L2が、好ましくはトレッド接地幅TWの4%以上、さらに好ましくは4.5%以上が望ましく、好ましくは9.0%以下、さらに好ましくは8.5%以下が望ましい。このような範囲に設定することにより、各陸部5、6及び7の剛性バランスがより一層向上し、耐偏摩耗性能を高め得る。
【0030】
図2に示されるように、前記ショルダー横溝8は、ショルダー周方向溝3からタイヤ軸方向に対して10〜20度の第1の角度α1で傾斜してのびる内側部13と、該内側部13に接続されかつ前記第1の角度α1よりも大きい第2の角度α2で傾斜してのびる中間部14と、該中間部14に接続されかつ前記第2の角度α2よりも小さい角度α3でのびる外側部15とからなる。このようなショルダー横溝8は、旋回走行時、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に小さい内側部13及び外側部15を介して、ショルダー周方向溝3内の泥や排水を容易に接地端Te側に排出するため、マッド性能や排水性能を高め得る。また、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に大きい中間部14は、ショルダー周方向溝内で生じた空気の共鳴振動(気柱共鳴音)を中間部14の溝壁で攪乱して小さくするため、ノイズ性能を向上し得る。
【0031】
また、本実施形態の内側部13、中間部14及び外側部15は、タイヤ軸方向に対して同じ方向に傾斜して接地端Teまでのびている。このようなショルダー横溝8は、ショルダー周方向溝3内の泥や排水を接地端Te側へさらにスムーズに排出でき、排水性能やマッド性能さらに高めるのに役立つ。
【0032】
前記第1の角度α1が10度未満になると、ショルダー周方向溝3の泥をスムーズに接地端Te側に排出できず、マッド性能や排水性能が悪化する他、ショルダー周方向溝3とショルダー横溝8との接続付近のショルダーブロック9の剛性が低下して、偏摩耗が生じるおそれがある。また、第1の角度α1が20度を超えると、タイヤ軸方向のエッジ成分が小さくなり、マッド性能が悪化する。このため、前記角度α1は、より好ましくは、12度以上が望ましく、またより好ましくは18度以下が望ましい。
【0033】
中間部14は、内側部13の前記第1の角度α1よりも大きい第2の角度α2で形成される。即ち、前記第2の角度α2は、20度よりも大であれば特に限定されないが、好ましくは、前記第2の角度α2と第1の角度α1との差(α2−α1)は、20〜40度が望ましい。即ち、前記差(α2−α1)が小さくなると、中間部14の溝壁14bのタイヤ周方向成分が小さくなり、気柱共鳴音を吸収・拡散しきれず、ノイズ性能が悪化するおそれがある。逆に、前記差(α2−α1)が大きくなると、旋回走行時において中間部14での排水抵抗等が大きくなるため、ショルダー周方向溝3や内側部13から接地端Te側へスムーズに排水や排土され難くなる。このため、前記角度の差(α2−α1)は、より好ましくは25度以上が望ましく、また、より好ましくは35度以下が望ましい。
【0034】
前記外側部15は、中間部14の前記第2の角度α2よりも小さい第3の角度α3で形成されるが、上述の作用をより効果的に発揮させるために、前記第3の角度α3と第2の角度α2との差(α2−α3)は、好ましくは30度以上、より好ましくは35度以上が望ましく、また好ましくは50度以下、より好ましくは45度以下が望ましい。
【0035】
また、ショルダー横溝8は、タイヤ軸方向の内側端8i(ショルダー横溝8の溝中心線8Gとショルダー周方向溝3の接地端Te側の溝縁3eとの交点)から接地端Teまでの平均溝幅(溝の長手方向と直角な溝幅のタイヤ軸方向に亘る平均)Waが相対的に大きい第1ショルダー横溝8Aと、該第1ショルダー横溝8Aよりも前記平均溝幅Waが小さい第2ショルダー横溝8Bとがタイヤ周方向に交互に形成される。これにより、ショルダーブロック列9Rには、溝面積(溝容積)が異なる第1及び第2ショルダー横溝8A、8Bが交互に配されるため、タイヤ転動時のピッチ音のピークが効果的に低減される。従って、本発明の空気入りタイヤ1は、さらにノイズ性能が向上する。
【0036】
なお、第1ショルダー横溝8Aの平均溝幅Wa1(図示せず)と第2ショルダー横溝8Bの平均溝幅Wa2(図示せず)との比Wa1/Wa2が大きくなると、排水性能及び排土性能が悪化、又は前記中間部14を設けた効果が十分に発揮され難く、ノイズ性能が悪化するおそれがある。逆に、前記比Wa1/Wa2が小さくなると、ピッチ音を効果的に低減できないおそれがある。このため、前記比Wa1/Wa2は、好ましくは1.0より大、より好ましくは1.2以上が望ましく、また好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下が望ましい。
【0037】
また、図3に示されるように、ショルダー横溝8の中間部14は、該中間部14がタイヤ軸方向に対して傾斜する側と反対側の溝縁である反傾斜側溝縁16を有している。そして、反傾斜側溝縁16のタイヤ軸方向内端16i及び外端16e間のタイヤ周方向距離であるズレ量Lcは、前記反傾斜側溝縁16のタイヤ軸方向内端16iにおけるタイヤ周方向の溝幅Ws1の20〜50%に設定される必要がある。即ち、前記ズレ量Lcが前記溝幅Ws1の20%未満になると、中間部14によって、ショルダー周方向溝3内の気柱共鳴音を吸収・拡散できず、ノイズ性能が悪化する。逆に、ズレ量Lcが溝幅Ws1の50%を超えると、旋回走行時に、ショルダー周方向溝3内の排土や排水が接地端Te側に排出され難くなり、マッド性能や排水性能が悪化する。このため、前記ズレ量Lcは、好ましくは前記溝幅Ws1の25%以上が望ましく、また、好ましくは45%以下が望ましい。
【0038】
このように、本発明のタイヤ1は、ショルダー周方向溝3から接地端Teを越えてのびるショルダー横溝8に、タイヤ軸方向に対する角度が相対的に大きい中間部14とタイヤ軸方向に対する角度が相対的に小さい内側部13及び外側部15とを設けることにより、ノイズ性能とマッド性能及び排水性能とをバランス良く向上させる。
【0039】
また、本実施形態の第1ショルダー横溝8Aのタイヤ周方向の溝幅WsAは、該第1ショルダー横溝8Aのタイヤ軸方向内端8A1から接地端Teまで漸増する。一方、本実施形態の第2ショルダー横溝8Bの内側部13Bのタイヤ周方向の溝幅WsBは、該内側部13Bのタイヤ軸方向内端13B1から外端13B2まで一定である。このような第1ショルダー横溝8Aは、旋回走行時の接地端Te側への排土や排水がより一層、スムーズになされ、マッド性能や排水性能を向上するのに役立つ。また、第2ショルダー横溝8Bの内側部13Bは、ショルダーブロック9の剛性を大きく確保して、耐偏摩耗性能を向上させるのに役立つ。即ち、第1ショルダー横溝8A及び第2ショルダー横溝8Bをタイヤ周方向に交互に設けることにより、ショルダーブロック9の剛性を確保しつつ、排水性能及びマッド性能をバランス良く向上する。
【0040】
また、図2に示されるように、第1ショルダー横溝8Aの内側部13Aのタイヤ軸方向長さLa1は、前記第2ショルダー横溝8Bの内側部13Bのタイヤ軸方向長さLa2よりも小さく形成されている。このようなショルダー横溝8は、さらに、ショルダーブロック9の剛性を確保しつつ気柱共鳴を小さくするのに役立つ。従って、本実施形態のタイヤ1は、マッド性能、排水性能、ノイズ性能及び耐偏摩耗性能をバランス良く向上する。なお、前記内側部13Bのタイヤ軸方向長さLa2が過度に大きくなると、排土性や排水性が悪化するおそれがある。このため、前記タイヤ軸方向長さLa1と前記タイヤ軸方向長さLa2との比La2/La1は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上が望ましく、また、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下が望ましい。
【0041】
また、図3に示されるように、本実施形態のショルダー横溝8は、前記第2移行片12Bの接地端Te側の溝縁12Beのタイヤ周方向の前後端に亘って接続されている。これにより、ショルダー横溝8と第2移行片12Bとの接続近傍のショルダーブロック9の剛性が確保されるため、偏摩耗が抑制され得る。
【0042】
このようなショルダー横溝8の溝深さD3(図示しない)は、マッド性能及び排水性能とノイズ性能とを両立させる観点より、例えばショルダー周方向溝3の溝深さD1の90〜100%が望ましい。
【0043】
次に、本実施形態のミドル陸部6及びセンター陸部7について言及する。図1及び図2に示されるように、前記ミドル陸部6には、ショルダー周方向溝3からセンター周方向溝4に傾斜してのびるミドル横溝20がタイヤ周方向に隔設される。これにより、ミドル陸部6は、ショルダー周方向溝3、センター周方向溝4及びミドル横溝20により区分される複数個のミドルブロック21が接地端Teに沿ってタイヤ周方向に並ぶミドルブロック列21Rとして形成される。
【0044】
前記ミドル横溝20は、センター周方向溝4から一定の溝幅でのびる等幅部20aと、該等幅部20aに接続されかつ溝幅が漸増する拡大部20bと、該拡大部20bとショルダー周方向溝3との間をのびかつ溝幅が拡大部20bよりも小さい割合で漸増する漸増部20cとからなる。このようなミドル横溝20は、直進走行時に接地圧の高いタイヤ赤道C側のミドルブロック21の剛性を高めつつ、センター周方向溝4内の排水や排土を効果的にショルダー周方向溝3側へ排出する他、センター周方向溝4内の気柱共鳴音がショルダー周方向溝3側へ流れるのを抑制する。従って、本実施形態のタイヤ1は、耐偏摩耗性能、排水性能、マッド性能及びノイズ性能が、さらに効果的に向上する。なお、タイヤの回転方向に関わらず、前記作用を効果的に発揮させるため、ミドル横溝20は、ショルダー横溝8と逆向きの傾斜とするのが望ましい。
【0045】
また、前記ミドル陸部6には、ショルダー周方向溝3からタイヤ軸方向内側に向かって傾斜してのびかつセンター周方向溝4に接することなく終端するミドル外ラグ溝22と、センター周方向溝4からタイヤ軸方向外側に向かい傾斜してのびかつショルダー周方向溝3に接することなく終端するミドル内ラグ溝23とがタイヤ周方向に隔設される。このようなミドル外ラグ溝22及びミドル内ラグ溝23は、ミドル陸部6の剛性を確保しつつタイヤ軸方向のエッジ成分を増加させ、トラクションを高めてマッド性能を向上するのに役立つ。また、ミドル外ラグ溝22及びミドル内ラグ溝23は、ミドル陸部6の剛性を高く維持するため、同方向の傾斜とするのが望ましい。
【0046】
また、前記センター陸部7には、センター周方向溝4からタイヤ赤道Cに向かってタイヤ軸方向にのびかつタイヤ赤道Cに達することなく終端するセンターラグ溝24が設けられる。このようなセンターラグ溝24は、直進走行時に接地圧が大きく作用するタイヤ赤道C近傍の剛性を確保しつつ、タイヤ軸方向のエッジ成分を増加させるため、トラクションを高めマッド性能を向上するのに役立つ。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
【実施例】
【0048】
図1のパターンを有しかつ表1の仕様に基づいた空気入りタイヤ(サイズ:285/60R18)が製造され、それらの各性能についてテストがされた。なお、共通仕様は以下の通りである。
トレッド接地幅TW:114mm
<ショルダー周方向溝>
溝深さD1:10.0mm
<センター周方向溝>
溝深さD2:10.0mm
<ショルダー横溝>
溝深さD3/D1:100%
第1ショルダー横溝の中間部の第2の角度α2:35度
第2ショルダー横溝の内側部の第1の角度α1:10度
第2ショルダー横溝の中間部の第2の角度α2:35度
第2ショルダー横溝の外側部の第3の角度α3:2度
テスト方法は、次の通りである。
【0049】
<ノイズ性能>
試供タイヤをリム18×8.5JJ、内圧(230kPa)の条件にて、車両(国産4600cc、4WD車)の全輪に装着し、ロードノイズ計測路(アスファルト粗面路)を速度60km/hで走行させたときの車内ノイズを運転席窓側耳許位置に設置したマイクロホンで採取し、狭帯域240Hz付近の気柱共鳴音のピーク値の音圧レベルを測定した。評価は、比較例1の逆数を100とした指数で示し、数値が大きいほど良好である。
【0050】
<マッド性能>
上記の車両条件で軟弱なマッド路テストコースをドライバー1名乗車で走行し、制動力、旋回性などを総合的にドライバーのフィーリングにより評価した。評価は、比較例1を100とする評点とし、数値が大きいほど良好である。
【0051】
<トラクション性能>
上記車両条件で同一のテストコースを、プロのテストドライバーにより走行して路面に対する駆動力の伝達度合いが、ドライバーのフィーリングにより評価された。比較例1を100とする評点とし、数値が大きいほど良好である。
【0052】
<耐偏摩耗性能>
上記車両条件にて、乾燥アスファルトのタイヤテストコースを限界走行によって30km走行し、リブやブロックの欠け、偏摩耗の有無などを目視によって観察した。評価は、比較例1を100とする評点で表示し、数値が大きいほど耐偏摩耗性能が良好である。
【0053】
<排水性能>
上記車両条件にて、半径100mのアスファルト路面に、水深10mm、長さ20mの水たまりを設けたコース上を、速度を段階的に増加させながら前記車両を進入させ、横加速度(横G)を計測し、50〜80km/hの速度における前輪の平均横Gを算出した。結果は、比較例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
テストの結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて各種性能が向上していることが確認できる。
【符号の説明】
【0056】
2 トレッド部
3 ショルダー周方向溝
8 ショルダー横溝
8A 第1ショルダー横溝
8B 第2ショルダー横溝
9 ショルダーブロック
9R ショルダーブロック列
13 内側部
14 中間部
14e 反傾斜側溝縁
15 外側部
Lc 反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端及び外端のズレ量
16i 反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端
Te 接地端
Wa 平均溝幅
Ws1 反傾斜側溝縁のタイヤ軸方向内端におけるタイヤ周方向の溝幅
図1
図2
図3