特許第5798473号(P5798473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798473
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/12 20060101AFI20151001BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G21C15/12 AGDB
   G21C15/18 W
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-276344(P2011-276344)
(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2013-127379(P2013-127379A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100156524
【弁理士】
【氏名又は名称】猪野木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中堂園 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 久道
(72)【発明者】
【氏名】奥山 圭太
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−011091(JP,A)
【文献】 特開平06−130169(JP,A)
【文献】 特開2010−203858(JP,A)
【文献】 特開平04−337499(JP,A)
【文献】 特開2003−202392(JP,A)
【文献】 特開平06−034783(JP,A)
【文献】 特開2002−122688(JP,A)
【文献】 特開平10−090468(JP,A)
【文献】 特開平04−136792(JP,A)
【文献】 実開平05−092795(JP,U)
【文献】 特開昭58−182587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00
G21C 15/12
G21C 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心を内蔵する原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器の外周側に間隔を介して設けられた生体遮蔽壁とを備え、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に、前記原子炉圧力容器の支持部であって貫通孔が形成されていない底部が設けられて冷却水を溜めることが可能な原子炉において、
前記原子炉圧力容器より上方に位置する冷却水貯蔵プールと、
前記冷却水貯蔵プール内の冷却水をその自重によって前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に注水可能な注水配管と、
前記注水配管に設けられ、前記冷却水貯蔵プール内の冷却水を前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に注水する場合に開く起動弁と、
前記注水配管に設けられ、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に溜められた冷却水の水位に応じて開閉するフロート弁とを備え、
前記フロート弁は、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に溜められた冷却水の水位が予め設定された設定値以上である場合に閉じ、前記設定値未満である場合に開くことを特徴とすることを特徴とする原子炉。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉において、
前記起動弁は、周囲の温度が予め設定された設定値以上であるときに自動的に開く熱動式のものであることを特徴とする原子炉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の原子炉において、
前記注水配管に設けられ、前記冷却水貯蔵プール側への逆流を防止する逆止弁を備えたことを特徴とする原子炉。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の原子炉において、
外部から前記冷却水貯蔵プールに冷却水を補給する補給経路を備えたことを特徴とする原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉圧力容器の冷却に好適な原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの原子炉は、停止後も、燃料から発生する崩壊熱を除熱する必要がある。例えば、改良型沸騰水軽水炉では、原子炉圧力容器から抜き出した水を海水と熱交換して冷却させた後、原子炉圧力容器に戻す電動式の冷却系(崩壊熱除熱系)などを備えている。しかし、例えば全交流電源喪失が長期間続くような非常時には、電動式の冷却系が使用できなくなる。そのため、例えば、改良型沸騰水型軽水炉では、蒸気圧を駆動力として原子炉圧力容器内に水を供給して冷却する隔離時冷却系などを備えている。
【0003】
また、原子炉格納容器の除熱を目的として、冷却水貯蔵タンク内の冷却水をその自重によって供給し、原子炉格納容器を外側から冷却する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の従来技術では、原子炉格納容器の上方に冷却水貯蔵タンクが配置されており、この貯蔵タンク内の水が自重によって散水管を流れ、原子炉格納容器の上部に散水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−236885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術は、原子炉格納容器の除熱を目的として、原子炉格納容器を外側から冷却する方法であるが、これに代えて、原子炉圧力容器の除熱を目的として、原子炉圧力容器を外側から冷却する方法が考えられる。具体的には、例えば図6で示すように、冷却水貯蔵プール内の冷却水が自重によって配管15Aを流れ、原子炉格納容器内に供給されて、原子炉圧力容器を外側から冷却する方法が考えられる。また、例えば図7で示すように、冷却水貯蔵プール内の冷却水が自重によって配管15Bを流れ、スプリンクラー16により原子炉圧力容器の上部に散水されて、原子炉圧力容器を外側から冷却する方法が考えられる。
【0006】
しかし、例えば図6で示すように原子炉格納容器内に冷却水を供給する方法では、原子炉圧力容器の冷却を開始するまでに、大量の冷却水を供給しなければならない。すなわち、例えば原子炉圧力容器と生体遮蔽壁との間に冷却水を溜めることができない構造(言い換えれば、原子炉圧力容器の下側に水が漏れる構造)では、原子炉圧力容器の下側の空間に冷却水が満たされてその水位が原子炉圧力の底部に達するまで冷却水を供給し、その後、冷却水をさらに供給しなければ原子炉圧力容器を冷却することができない。また、例えば原子炉圧力容器と生体遮蔽壁との間に冷却水を溜めることができる構造であっても、生体遮蔽壁の外側の空間に冷却水が満たされてその水位が生体遮蔽壁の上端に達するまで冷却水を供給し、その後、冷却水をさらに供給しなければ原子炉圧力容器を冷却することができない。そのため、冷却水を無駄に使用することになる。
【0007】
また、例えば図7で示すように原子炉圧力容器の上部に散水する方法では、原子炉圧力容器の発熱状態に応じて散水を自動的に中断・再開するか若しくは散水量を自動的に調節する手段がない。そのため、冷却水を無駄に使用する可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、受動的な駆動力によって冷却水を無駄なく使用し、原子炉圧力容器を長期的に冷却することができる原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、炉心を内蔵する原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器の外周側に間隔を介して設けられた生体遮蔽壁とを備え、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に、前記原子炉圧力容器の支持部であって貫通孔が形成されていない底部が設けられて冷却水を溜めることが可能な原子炉において、前記原子炉圧力容器より上方に位置する冷却水貯蔵プールと、前記冷却水貯蔵プール内の冷却水をその自重によって前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に注水可能な注水配管と、前記注水配管に設けられ、前記冷却水貯蔵プール内の冷却水を前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に注水する場合に開く起動弁と、前記注水配管に設けられ、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に溜められた冷却水の水位に応じて開閉するフロート弁とを備え、前記フロート弁は、前記原子炉圧力容器と前記生体遮蔽壁との間に溜められた冷却水の水位が予め設定された設定値以上である場合に閉じ、前記設定値未満である場合に開くことを特徴とする。
【0010】
このような本発明においては、非常時に起動弁を開くと、冷却水貯蔵プール内の冷却水が自重によって注水配管を流れ、原子炉圧力容器と生体遮蔽壁との間に注水される。これにより、原子炉圧力容器と生体遮蔽壁との間に冷却水を溜めることができ、原子炉圧力容器を外側から冷却することができる。また、原子炉圧力容器と生体遮蔽壁との間に溜められた冷却水の水位に応じて、フロート弁が開閉する。すなわち、電動手段を用いることなく、原子炉圧力容器の発熱状態に応じて注水を自動的に中断することができる。したがって、受動的な駆動力によって冷却水を無駄なく使用し、原子炉圧力容器を長期的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、受動的な駆動力によって冷却水を無駄なく使用し、原子炉圧力容器を長期的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における原子炉の概略構造を表す図である。
図2】本発明の一実施形態における開閉弁の概略構造を表す図である。
図3】本発明の第1の変形例における原子炉の概略構造を表す図である。
図4】本発明の第2の変形例における原子炉の概略構造を表す図である。
図5】本発明の第3の変形例における原子炉の概略構造を表す図である。
図6】第1の比較例における原子炉の概略構造を表す図である。
図7】第2の比較例における原子炉の概略構造を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を、図1及び図2により説明する。図1は、本実施形態における原子炉の概略構造を表す図である。図2は、本実施形態におけるフロート弁の概略構造を表す図である。
【0014】
原子炉(例えば改良型沸騰水型軽水炉)は、炉心1を内蔵する原子炉圧力容器2と、この原子炉圧力容器2の外周側に間隔(例えば約1m)を介して設けられた生体遮蔽壁3と、これら原子炉圧力容器2及び生体遮蔽壁3などを内包する原子炉格納容器4と、この原子炉格納容器4の外側であって原子炉圧力容器2より上方に位置するように設置された冷却水貯蔵プール5(詳細には、例えば使用済み燃料プール又はドライヤー保管プール)とを備えている。なお、冷却水貯蔵プール5には、冷却水が貯蔵されている。
【0015】
原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間には底部(詳細には、原子炉圧力容器2の支持部であって、貫通孔等が形成されていないもの)が設けられており、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に冷却水を溜めることが可能となっている。そこで、冷却水貯蔵プール5内の冷却水を、その自重を利用して、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に注水するための注水配管6が設けられている。この注水配管6は、原子炉格納容器4を貫通しており、一端側が冷却水貯蔵プール5の下部に接続され、他端側が原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に注水可能な位置まで延在している。
【0016】
注水配管6には、手動式の起動弁7と、フロート弁8(スライダー弁)とが設けられている。起動弁7は、原子炉格納容器の外側に位置し、通常、閉じている。そして、非常時に起動弁7を開くことにより、冷却水貯蔵プール5内の冷却水を、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に注水することが可能になっている。なお、起動弁7の動力源としての電源を一時的でも確保できるのであれば、起動弁7を電動式としてもよい。
【0017】
フロート弁8は、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に溜められた冷却水の水位に応じて上下動するフロート9と、このフロート9にリンク機構10を介して連結され、フロート9の上下動に応じてスライドする弁体11と、この弁体11によって開閉する弁座12とを有している。そして、例えば図2(a)で示すように、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に溜められた冷却水の水位が設定値H(詳細には、例えば生体遮蔽壁3の上端に相当する水位より若干低くなるように、予め設定された設定値)未満になると、フロート9が下がり、弁体11が上流側(図中上側)にスライドして、弁座12が開く。一方、例えば図2(b)で示すように、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に溜められた冷却水の水位が設定値H以上になると、フロート9が上がり、弁体11が下流側(図中下側)にスライドして、弁座12が閉じるようになっている。
【0018】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0019】
例えば炉心1の温度が上昇して、原子炉圧力容器2を冷却しなければならない事態となった場合に、起動弁7を開く。最初は、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に冷却水が満たされていないから(すなわち、冷却水の水位が設定値H未満であるから)、フロート弁8が開いている。これにより、冷却水貯蔵プール5内の冷却水が自重によって注水配管6を流れ、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に注水される。したがって、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に冷却水を溜めることができ、原子炉圧力容器2を外側から冷却することができる。
【0020】
そして、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に溜められた冷却水の水位が上昇して設定値Hに達すると、フロート弁8が自動的に閉じて、注水が止まる。その後、原子炉圧力容器2と生体遮蔽壁3との間に溜められた冷却水の一部が原子炉圧力容器2から熱を奪うことで蒸発し、冷却水の水位が低下して設定値H未満になると、フロート弁8が自動的に開いて、注水が再開する。すなわち、電動手段を用いることなく、原子炉圧力容器の発熱状態に応じて注水を自動的に中断・再開することができる。
【0021】
したがって、本実施形態においては、受動的な駆動力によって冷却水を無駄なく使用し、原子炉圧力容器を長期的に冷却することができる。
【0022】
なお、上記一実施形態においては、注水配管6に手動式(又は電動式)の起動弁7を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば図3で示すように、原子炉格納容器4内に位置して、周囲の温度(すなわち、原子炉格納容器4内の温度)が予め設定された設定値以上であるときに自動的に開く熱動式の起動弁7Aを設けてもよい。このような変形例においては、例えば電動式の起動弁を設けた場合とは異なり、全交流電源が喪失されていても開くことができ、冷却機能の信頼性を高めることができる。また、例えば手動式の起動弁を設けた場合と比べ、原子炉格納容器4内の温度が上昇したときに冷却水の注水を素早く開始することができる。
【0023】
また、上記一実施形態及び変形例においては、特に、説明しなかったが、例えば図4で示すように、注水配管6におけるフロート弁8の上流側に逆止弁13を設け、冷却水貯蔵プール5側への逆流を防止してもよい。このような変形例においては、例えば冷却水貯蔵プール5内の冷却水が尽きた場合に、原子炉格納容器4内の空気が冷却水貯蔵プール5側に流れるのを防止することができる。
【0024】
また、上記一実施形態及び変形例においては、特に、説明しなかったが、例えば図5で示すように、外部から冷却水貯蔵プール5に冷却水を補給する補給経路14を設けてもよい。このような変形例においては、冷却水貯蔵プール5に冷却水を補給でき、原子炉圧力容器2をさらに長期的に冷却することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 炉心
2 原子炉圧力容器
3 生体遮蔽壁
5 冷却水貯蔵プール
6 注水配管
7,7A 起動弁
8 フロート弁
13 逆止弁
14 補給経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7