(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エラストマー製の柔軟基材と、該柔軟基材に配置されエラストマーおよび導電材を含む柔軟配線と、を有する第一配線体と、該第一配線体に接続される第二配線体と、を備える配線体接続構造体であって、
該第一配線体は、該第二配線体が表裏方向に積層して接続される第一接続部と、該第一接続部に連なる第一本体部と、を有し、該第一接続部の該柔軟基材は、該第一本体部の該柔軟基材よりも拡幅されており、
該第二配線体は、該第一接続部に積層される第二接続部を有し、該第二接続部は、該第一接続部の該柔軟配線に接続される配線が配置される配線部と、該配線部の幅方向両側から該配線部よりも該第一配線体方向に突出する二つの凸部と、からなり、
該二つの凸部の先端は、表裏方向から見た場合に、該配線部における該第一配線体方向の端部と該第一配線体との境界ラインよりも該第一配線体側に配置されていることを特徴とする配線体接続構造体。
【背景技術】
【0002】
エラストマーを利用して、柔軟なセンサ、アクチュエータ等の開発が進められている。例えば、エラストマー製の一対の基材の表面に、電極や配線を形成する。そして、当該一対の基材を、誘電層を挟んで電極が対向するように配置して、静電容量型センサを構成することができる(例えば、特許文献1参照)。静電容量型センサに荷重が加わると、基材が撓んで電極間距離が変化する。基材の変形に追従して電極、配線が伸縮できるように、電極、配線は、エラストマーに導電性カーボンや金属粉末を配合した柔軟導電材料から形成される。
【0003】
このような柔軟なセンサ等において、配線の一端部は電極に接続され、他端部は制御装置等の電気回路に接続される。柔軟な配線体を電気回路に接続する場合、回路基板に設けられた既存のコネクタに、配線体の端部を直接接続する方法が考えられる。既存のコネクタによると、コネクタの電極を配線体に噛み込ませて、配線体と電気回路とを電気的に接続する。しかし、配線体は、接続されるセンサ部等の変形に追従して伸縮する。伸縮を繰り返すと、エラストマーの圧縮永久歪みにより、配線体にへたりが生じる。配線体とコネクタとの機械的な噛み合わせによる接続においては、接続部分が配線体のへたりに追従することができない。このため、配線体とコネクタとの接触不良が生じるおそれがある。また、配線体を構成する基材は、エラストマーからなる。配線も、エラストマーを母材とする。このため、配線体の機械的強度は比較的小さい。したがって、コネクタの噛み込みにより、配線等に亀裂が生じるおそれがある。このように、エラストマーを利用した柔軟な配線体を既存のコネクタに接続した場合、接続部分の信頼性に問題がある。したがって、柔軟な配線体を、既存のコネクタに直接接続することは難しい。
【0004】
これに対して、特許文献2には、柔軟な配線体を、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブルプリント配線板(FPC)等の既存の配線体の一端部に接続し、FFC等の他端部を回路基板のコネクタに接続する方法が開示されている。当該方法によると、柔軟な配線体は、FFC等を介して、間接的に回路基板のコネクタに接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柔軟な配線体においては、配線が基材と共に伸縮する。一方、FFC等の既存の配線体は伸縮しない。また、FFCの剛性は、柔軟な配線体の剛性と比較して、極めて大きい。このため、柔軟な配線体とFFCとの端部同士を積層して接続した場合、荷重の入力により柔軟な配線体が伸長されると、積層部におけるFFCの先端付近に、大きな応力が発生する。このため、FFCの先端付近においては、他の部分よりも、柔軟な配線体の歪みが大きくなる。したがって、柔軟な配線体が伸縮を繰り返すと、FFCの先端付近に配置される配線が、切断されるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、使用時における配線の切断を抑制し、柔軟な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で実現することができる配線体接続構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の配線体接続構造体は、エラストマー製の柔軟基材と、該柔軟基材に配置されエラストマーおよび導電材を含む柔軟配線と、を有する第一配線体と、該第一配線体に接続される第二配線体と、を備える配線体接続構造体であって、該第一配線体は、該第二配線体が表裏方向に積層して接続される第一接続部と、該第一接続部に連なる第一本体部と、を有し、該第一接続部の該柔軟基材は、該第一本体部の該柔軟基材よりも拡幅されており、該第二配線体は、該第一接続部に積層される第二接続部を有し、該第二接続部は、該第一接続部の該柔軟配線に接続される配線が配置される配線部と、該配線部の幅方向両側から該配線部よりも該第一配線体方向に突出する二つの凸部と、からなることを特徴とする。
【0009】
第一配線体は、エラストマー製の柔軟基材と、エラストマーを母材とする柔軟配線と、を有し、柔軟で伸縮可能である。第二配線体としては、例えば、FFC、FPC等の既存の配線体を使用することができる。FFC等の既存の配線体は、ZIF(Zero Insertion Force)コネクタ等の既存のコネクタに、接続可能である。したがって、本発明の配線体接続構造体によると、第二配線体を介して、柔軟で伸縮可能な第一配線体を、間接的に回路基板のコネクタに接続することができる。
【0010】
上述したように、柔軟な配線体と既存の配線体との端部同士を積層して接続した場合、柔軟な配線体の伸長により、積層部における既存の配線体の先端付近に、応力が集中する。この点、本発明の配線体接続構造体によると、第一配線体の第一接続部と第二配線体の第二接続部とが表裏方向に積層して、積層部が形成される。まず、第一配線体において、第一接続部の柔軟基材の幅は、第一本体部の柔軟基材の幅よりも大きい。つまり、第一接続部の幅は、第一本体部の幅よりも大きい。
【0011】
第一接続部の幅を大きくすると、その分だけ、積層部における応力が幅方向に分散される。これにより、第二配線体の先端付近で生じる応力が小さくなり、その部分における第一配線体の歪みを、小さくすることができる。また、第二配線体の先端付近で生じる応力は、幅方向両端部において特に大きくなる。したがって、第一接続部の柔軟基材を拡幅して、積層部の幅を大きくすることにより、応力が集中する部位を、柔軟配線が配置される領域(以下適宜、「柔軟配線領域」と称す)から遠ざけることができる。また、拡幅された部分は、第二接続部が積層されることにより、積層部を補強する補強板としての役割も果たす。なお、本明細書において「幅」とは、第一配線体の表裏方向および伸長方向に略直交する方向の長さである。
【0012】
次に、第二配線体において、第一接続部に積層される第二接続部は、配線部と二つの凸部とからなる。配線部には、第一接続部の柔軟配線に接続される配線が配置される。すなわち、第二接続部の配線部は、第一接続部の柔軟配線領域に対向している。二つの凸部は、配線部の幅方向両側に配置される。したがって、二つの凸部は、第一接続部の柔軟配線領域の幅方向両側、つまり柔軟配線が配置されない領域に対向して、配置される。加えて、二つの凸部は、配線部よりも第一配線体方向に突出している。よって、二つの凸部の先端は、配線部よりも第一配線体側に配置される。例えば、第一配線体の伸長時に荷重が入力される点を力点、固定された積層部を支点と仮定すると、積層部の第一配線体側の端部を作用点とみなすことができる。伸長時の応力は、力点に最も近い作用点に集中する。したがって、二つの凸部の先端を、配線部よりも第一配線体側に配置することにより、二つの凸部の先端部分に、応力を集中させることができる。これにより、二つの凸部の先端部分以外の応力、すなわち配線部の先端付近の応力は、小さくなる。よって、配線部の先端付近における第一配線体(柔軟配線領域)の歪みを、小さくすることができる。
【0013】
このように、第一接続部の柔軟基材を拡幅し、かつ、第二接続部の配線部の両側に、第一配線体方向に突出する二つの凸部を配置することにより、幅方向に応力を分散させると共に、柔軟配線が配置されない部分に応力を集中させることができる。これにより、第二配線体の先端付近に配置される柔軟配線の切断を、抑制することができる。したがって、本発明の配線体接続構造体は、耐久性に優れる。また、本発明の配線体接続構造体によると、柔軟で伸縮可能な配線体と電気回路との接続を、高い信頼性で実現することができる。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記第一接続部と前記第一本体部との境界付近における前記柔軟配線の歪みは、該第一本体部の該柔軟配線の歪みよりも小さい構成とする方がよい。
【0015】
伸長時に応力が生じやすい第二配線体の先端付近は、第一配線体において、第一接続部と第一本体部との境界付近に相当する。本構成によると、応力が大きくなりやすい領域における柔軟配線の歪みが、ベースとなる第一本体部の柔軟配線の歪みよりも小さい。したがって、従来切断されやすかった柔軟配線の切断抑制効果が高く、配線体接続構造体の耐久性をより向上させることができる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記第一接続部において、前記柔軟基材の幅は、前記柔軟配線が配置される領域の幅の1.05倍以上である構成とする方がよい。
【0017】
本構成によると、第二配線体の先端付近における柔軟配線の歪みを、小さくすることができる。第一接続部において、柔軟基材の幅を大きくするほど、伸長時に生じる応力を幅方向に分散させることができる。また、拡幅された部分による、積層部の補強効果も大きい。したがって、第一接続部における柔軟基材の幅を、柔軟配線領域の幅の1.15倍以上、さらには、1.2倍以上にするとよい。
【0018】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記第二接続部における前記第一配線体方向の端部は、表裏方向から見た場合に、二つの前記凸部および前記配線部が曲線で連結される凹形状を有する構成とする方がよい。
【0019】
第二配線体として、FFC、FPC等の既存の配線体を使用する場合、端部を切断加工して、第二接続部を形成する必要がある。本構成によると、第二接続部の表裏方向端面において、二つの凸部および配線部が、曲線で連結される。このため、第二配線体の端部を切断加工しやすく、容易に第二接続部を形成することができる。
【0020】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記第一配線体は、複数の前記柔軟配線を有し、前記第二配線体は、複数の前記配線を有し、前記第一接続部と前記第二接続部との間には導電接着層が配置され、該導電接着層は、表裏方向に対向する該柔軟配線と該配線とを各々導通させる異方導電接着剤からなる構成とする方がよい。
【0021】
第一配線体と第二配線体とは、導電接着層により接着される。このため、噛み込みによる機械的な接続と比較して、接触不良を生じにくい。また、導電接着層は、導電性と接着性との両方を備える。よって、他の部材で接続する場合と比較して、積層部を小型化、薄型化しやすい。
【0022】
導電接着層は、異方導電接着剤からなる。異方導電接着剤は、接着性を有する絶縁樹脂や絶縁ゴム(母材)の中に導電粒子を分散させたものである。異方導電接着剤としては、母材の種類により、熱硬化型異方導電接着剤、熱可塑型異方導電接着剤、紫外線硬化型異方導電接着剤、エラストマー系異方導電接着剤等が挙げられる。異方導電接着剤に圧力を加えると、母材中の導電粒子が接続部材間の一方向に点接触して導通経路を形成する。この状態で固化または硬化することにより、導電性が発現する。なお、本明細書では、化学反応を伴わない可逆的な状態変化を「固化」と称し、架橋反応等の化学反応を伴う不可逆的な状態変化を「硬化」と称す。
【0023】
異方導電接着剤は、一方向の導電性が高い性質(異方導電性)を有する。このため、異方導電接着剤を、第一接続部と第二接続部との間に介装すると、表裏方向に対向する配線同士を接着することができると共に、異方導電接着剤の厚さ方向(表裏方向)に、配線同士を導通させることができる。この場合、異方導電接着剤の面方向における導電性は低い。したがって、柔軟配線および第二配線体の配線の各々において、隣接する配線同士が導通するおそれはない。
【0024】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記第一本体部は、前記柔軟配線を外部から絶縁するカバーフィルムを有する構成とする方がよい。
【0025】
本構成によると、柔軟配線を外部から絶縁することができる。よって、安全性が向上する。また、カバーフィルムの材質により、柔軟配線の防水性を確保したり、酸化を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の配線体接続構造体においては、第一配線体が伸縮しても、柔軟配線が切断されにくい。このため、本発明の配線体接続構造体は、耐久性に優れる。したがって、本発明の配線体接続構造体によると、エラストマーを利用した柔軟で伸縮可能な第一配線体を、第二配線体を介して、高い信頼性で、回路基板のコネクタに接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の配線体接続構造体の実施形態について説明する。
【0029】
<第一実施形態>
[構成]
まず、本実施形態の配線体接続構造体の構成について説明する。
図1に、本実施形態の配線体接続構造体の斜視分解図を示す。
図2に、同配線体接続構造体の透過上面図を示す。
図3に、同配線体接続構造体の透過上面分解図を示す。
図1においては、第一配線体の柔軟配線、およびFFC(第二配線体)の配線を、透過して示す。また、
図2、
図3においては、第一配線体の柔軟配線、およびFFCの配線を、透過してハッチングを施して示す。
図1〜
図3に示すように、配線体接続構造体1は、第一配線体2と、FFC3と、を備えている。
【0030】
第一配線体2は、柔軟基材20と、柔軟配線21と、カバーフィルム22と、を有している。柔軟基材20は、シリコーンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。柔軟基材20の厚さは、約0.5mmである。
【0031】
柔軟配線21は、柔軟基材20の上面(表面)に、合計13本配置されている。柔軟配線21は、各々、アクリルゴムおよび銀粉末を含んでいる。柔軟配線21は、各々、アクリルゴムポリマーおよび銀粉末を含む配線塗料を、柔軟基材20の上面にスクリーン印刷することにより、形成されている。柔軟配線21は、各々、線状を呈している。柔軟配線21は、各々、前後方向に延在している。13本の柔軟配線21は、左右方向(幅方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように配置されている。
【0032】
カバーフィルム22は、シリコーンゴム製であって、前後方向に延びる帯状を呈している。カバーフィルム22の厚さは、約20μmである。カバーフィルム22は、柔軟基材20および柔軟配線21の上面を、前方から、後述する第一接続部23の前端まで、覆っている。
【0033】
第一配線体2は、第一接続部23と、第一本体部24と、を有している。第一接続部23は、第一配線体2の後端部に配置されている。第一接続部23は、カバーフィルム22に覆われていない。つまり、第一接続部23においては、柔軟配線21が上側に露出している。第一接続部23の上面には、FFC3の後述する第二接続部32が、導電接着層(図略)を介して、積層されている。第一本体部24は、第一接続部23に連続して、第一配線体2の前方に延在している。
【0034】
第一接続部23の幅(左右方向長さ)は、第一本体部24の幅よりも、大きい。すなわち、第一接続部23の柔軟基材20の幅は、第一本体部24の柔軟基材20の幅よりも、大きい。柔軟基材20の幅は、第一本体部24の後方から第一接続部23にかけて、逆テーパ状に大きくなっている。
図3に示すように、柔軟配線21が配置される領域の幅(以下、「柔軟配線領域幅」と称す)をW1とすると、第一接続部23においては、柔軟配線領域幅W1に対する柔軟基材20の幅W2の比率が、第一本体部24のそれよりも、大きくなっている。具体的には、第一接続部23における柔軟基材20の幅W2は、柔軟配線領域幅W1の1.2倍である。
【0035】
FFC3は、絶縁基材30と、配線31と、を有している。絶縁基材30は、前後方向に延びる帯状を呈している。絶縁基材30は、二枚のフィルム部材30a、30bからなる。二枚のフィルム部材30a、30bは、ポリエステル製であり、上下方向に積層されている。二枚のフィルム部材30a、30bの厚さは、各々、約0.1mmである。
【0036】
配線31は、錫めっきされた銅箔である。配線31は、二枚のフィルム部材30a、30bの間に、合計13本挟装されている。配線31の厚さは約0.1mmである。配線31は、各々、線状を呈している。配線31は、各々、前後方向に延在している。13本の配線31は、左右方向(幅方向)に、所定間隔ごとに離間して、互いに略平行になるように配置されている。FFC3は、本発明における第二配線体に含まれる。
【0037】
FFC3は、第二接続部32を有している。第二接続部32は、FFC3の前端部に配置されている。第二接続部32においては、フィルム部材30aの下面(裏面)側に配線31が露出するように、フィルム部材30bが剥がされている。つまり、第二接続部32においては、フィルム部材30bが無く、下側に配線31が露出している。第二接続部32の下面には、第一配線体2の第一接続部23が、導電接着層(図略)を介して、積層されている。導電接着層は、エポキシ樹脂中にニッケル粒子が分散された異方導電接着剤からなる。これにより、第一接続部23と第二接続部32とは、接着されている。また、第一接続部23の柔軟配線21の幅および間隔は、第二接続部32の配線31の幅および間隔と、同じである。よって、柔軟配線21と配線31とは、各々、導電接着層を介して導通している。FFC3の後端部は、コネクタ(図略)に接続されている。コネクタは、電気回路基板(図略)に設置されている。
【0038】
第二接続部32は、配線部33と、二つの凸部34a、34bと、からなる。配線部33には、13本の配線31が配置されている。13本の配線31は、各々、第一接続部23の13本の柔軟配線21に、電気的に接続されている。凸部34aは、配線部33の左側に配置されている。凸部34aは、配線部33よりも前方に突出している。同様に、凸部34bは、配線部33の右側に配置されている。凸部34bは、配線部33よりも前方に突出している。二つの凸部34a、34bおよび配線部33は、上下方向(表裏方向)から見て、曲線で連結されている。すなわち、第二接続部32の前端部は、二つの凸部34a、34bおよび配線部33が曲線で連結された凹形状を有している。第二接続部32の幅は、第一接続部23の幅(柔軟基材20の幅W2)と、同じである。
【0039】
[製造方法]
次に、配線体接続構造体1の製造方法について説明する。配線体接続構造体1の製造方法は、配線体準備工程と、配置工程と、接着工程と、を有する。
【0040】
配線体準備工程においては、第一配線体2とFFC3とを準備する。すなわち、第一配線体2については、まず、柔軟基材20の上面に、配線塗料を所定のパターンでスクリーン印刷する。これにより、13本の柔軟配線21を形成する。次に、第一接続部23を除いて、柔軟基材20および柔軟配線21の上面を覆うように、カバーフィルム塗料を印刷する。これにより、第一本体部24のカバーフィルム22を形成する。FFC3については、市販のFFCを切断加工して、第二接続部32を形成する。
【0041】
配置工程においては、第一配線体2と異方導電接着剤とFFC3とを、積層配置する。具体的には、まず、第一配線体2の第一接続部23の上面に、硬化前のペースト状の異方導電接着剤を塗布する。次に、異方導電接着剤に重ねて、FFC3の第二接続部32を配置する。この際、第一接続部23の柔軟配線21と、第二接続部32の配線31と、が各々対向するように、第一接続部23と第二接続部32とを、配置する。
【0042】
接着工程においては、異方導電接着剤を硬化させることにより、対向する柔軟配線21、配線31同士を、上下方向に導通可能に接着する。具体的には、第一配線体2、異方導電接着剤、およびFFC3の積層部を、FFC3側から加熱すると共に、上下方向に加圧する。これにより、異方導電接着剤が硬化して、導電接着層が形成される。その結果、第一接続部23と第二接続部32とが、接着される。
【0043】
[作用効果]
次に、配線体接続構造体1の作用効果について説明する。配線体接続構造体1によると、FFC3の前端部は第一配線体2に、後端部は電気回路基板に設置されているコネクタに、各々接続されている。これにより、柔軟で伸縮可能な第一配線体2を、既存のFFC3を利用して、電気回路基板に接続することができる。
【0044】
第一接続部23の幅は、第一本体部24の幅よりも大きい。すなわち、第一接続部23の柔軟基材20は、第一本体部24の柔軟基材20よりも拡幅されている。具体的には、第一接続部23における柔軟基材20の幅W2は、柔軟配線領域幅W1の1.2倍である。よって、第一配線体2の伸長時に、第一接続部23と第二接続部32とが積層された積層部に生じる応力が、幅方向(左右方向)に分散される。これにより、FFC3の先端付近、すなわち、第一接続部23と第一本体部24との境界付近(
図2中、一点鎖線で囲んだ領域A)で生じる応力が小さくなり、領域Aにおける第一配線体2の歪みを、小さくすることができる。また、柔軟基材20を拡幅することにより、応力が集中する部位を、柔軟配線21が配置される領域から、左右方向に遠ざけることができる。柔軟基材20を拡幅した部分には、柔軟配線21は配置されない。当該部分には、第二接続部32の二つの凸部34a、34bが、積層される。これにより、積層部が補強される。
【0045】
第二接続部32の二つの凸部34a、34bは、配線部33よりも前方に突出している。このため、二つの凸部34a、34bの先端は、配線部33よりも第一配線体2側に配置される。これにより、二つの凸部34a、34bの先端部分に、応力を集中させることができる。その結果、それ以外の領域、すなわち配線部33の先端付近(
図2中、一点鎖線で囲んだ領域A)の応力は、小さくなる。よって、領域Aにおける第一配線体2の歪みを、小さくすることができる。
【0046】
このように、第一接続部23の柔軟基材20を拡幅し、かつ、第二接続部32の配線部33の両側に、第一配線体2方向(前方)に突出する二つの凸部34a、34bを配置することにより、幅方向に応力を分散させると共に、柔軟配線21が配置されない部分に応力を集中させることができる。これにより、FFC3の先端付近(領域A)の柔軟配線21の歪みは、第一本体部24の柔軟配線21の歪みよりも小さくなる。よって、FFC3の先端付近(領域A)に配置される柔軟配線21の切断を、抑制することができる。したがって、配線体接続構造体1は、耐久性に優れる。また、配線体接続構造体1によると、第一配線体2と電気回路との接続を、高い信頼性で実現することができる。
【0047】
FFC3の前端部、すなわち第二接続部32の第一配線体2方向の端部は、上下方向から見た場合に、二つの凸部34a、34bおよび配線部33が曲線で連結される凹形状を有している(
図2、
図3参照)。つまり、第二接続部32の前端部は、R形状を有している。このため、FFC3の前端部を切断加工して、容易に第二接続部32を形成することができる。
【0048】
第一本体部24において、柔軟配線21は、カバーフィルム22により被覆されている。このため、柔軟配線21を外部から絶縁することができ、安全性が高い。また、柔軟配線21の防水性を確保することができると共に、酸化を抑制することができる。
【0049】
第一接続部23と第二接続部32とは、導電接着層により接着されている。このため、噛み込みによる機械的な接続と比較して、接触不良を生じにくい。また、導電接着層は、導電性と接着性との両方を備えている。よって、他の部材で接続する場合と比較して、積層部を小型化、薄型化しやすい。
【0050】
導電接着層は、異方導電接着剤からなる。よって、導電接着層の左右方向における導電性は低い。このため、第一接続部23において、左右方向に隣接する柔軟配線21同士が導通するおそれはない。同様に、第二接続部32において、左右方向に隣接する配線31同士が導通するおそれはない。このように、導電接着層として異方導電接着剤を用いることにより、対向する複数の配線21、31同士を、まとめて接着および導通させることができる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の配線体接続構造体の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、第二配線体として、FFCを使用した。しかし、第二配線体はFFCに限定されない。第二配線体として、例えば、フレキシブルプリント配線板(FPC)等を使用してもよい。FPCによると、エッチングにより、容易に所望の配線パターンを形成することができる。このため、隣り合う配線間の間隔を変化させたり、配線同士を接合して集約することが容易である。また、第二配線体を接続するコネクタの種類は、特に限定されない。例えば、FPC、FFC等と接続可能な既存のコネクタ(ZIFコネクタ等)を使用すればよい。
【0053】
第二配線体の第二接続部の端部形状は、特に限定されない。表裏方向から見て、第二配線体側に凹む形状であればよい。以下、第二接続部の他の実施形態を説明する。
図4に、第二実施形態の第二配線体の透過上面図を示す。
図5に、第三実施形態の第二配線体の透過上面図を示す。
図4、
図5中、
図3と対応する部材については、同じ符号で示す。
【0054】
図4に示すように、第二接続部32は、配線部33と、二つの凸部34a、34bと、からなる。第二接続部32の前端部においては、二つの凸部34a、34bおよび配線部33が、直線で連結されている。第二接続部32の前端部は、第二配線体側に台形状に凹んだ角形状を有している。また、
図5に示すように、第二接続部32の前端部は、二つの凸部34a、34bおよび配線部33が、一本の直線で連結されている。第二接続部32の前端部は、第二配線体側に凹んだV字形状を有している。
【0055】
第一配線体および第二配線体の配線数は、特に限定されない。例えば、一本の柔軟配線と、第二配線体の一本の配線と、を接続してもよい。また、第二配線体が、第一配線体の柔軟配線数よりも多くの配線を有する場合には、柔軟配線と対向する一部の配線のみを使用すればよい。この場合、柔軟配線に接続されない配線が、第二接続部の配線部の両側、若しくは片側に配置される。これにより、凸部が補強される。したがって、積層部の補強効果が向上する。
【0056】
第一配線体の柔軟基材を構成するエラストマーとしては、上記実施形態のシリコーンゴムの他、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等を用いることができる。
【0057】
また、柔軟配線は、エラストマーおよび導電材を含む。エラストマーは、柔軟基材のエラストマーと同じでもよく、異なっていてもよい。上記実施形態のアクリルゴムの他、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン等が好適である。導電材の種類は、特に限定されない。例えば、銀、金、銅、ニッケル等の金属粉末、導電性を有するカーボン粉末等が好適である。所望の導電性を発現させるため、エラストマーにおける導電材の充填率は、柔軟配線の体積を100vol%とした場合の20vol%以上であることが望ましい。一方、導電材の充填率が65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。加えて、柔軟配線の伸縮性が低下する。このため、導電材の充填率は、50vol%以下であることが望ましい。
【0058】
柔軟配線の形成方法は、特に限定されない。例えば、まず、柔軟配線の形成成分を含む配線塗料から、未加硫の薄膜状の配線を作製する。次に、当該配線を柔軟基材の表面に配置して、所定の条件下でプレスして加硫接着すればよい。あるいは、配線塗料を、柔軟基材の表面に印刷し、その後、加熱により乾燥させて、塗料中の溶剤を揮発させてもよい。印刷法によると、加熱時に、乾燥と同時に、エラストマー分の架橋反応を進行させることもできる。印刷法としては、上記実施形態のスクリーン印刷の他、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー等が挙げられる。なかでも、高粘度の塗料が使用可能であり、塗膜厚さの調整が容易であるという理由から、スクリーン印刷法が好適である。配線塗料は、柔軟配線の形成成分(エラストマー、導電材、添加剤等)を溶剤に混合して、調製すればよい。
【0059】
第一配線体において、第一接続部の柔軟基材の幅は、第一本体部の柔軟基材の幅よりも大きければよい。第一接続部の柔軟基材の幅は、柔軟配線領域の幅の、1.05倍以上、好適には1.15倍以上、さらには、1.2倍以上にするとよい。
【0060】
柔軟基材の拡幅の仕方は、特に限定されない。例えば、上記実施形態の逆テーパ状、あるいは階段状に、第一本体部の後方から第一接続部にかけて、徐々に拡幅することができる。また、
図6に、第四実施形態の第一配線体の透過上面図を示すように、第一接続部23の柔軟基材20の幅を、第一本体部24から一段階で拡幅してもよい(
図6中、
図3と対応する部材については、同じ符号で示す)。
【0061】
カバーフィルムの材料としては、上記実施形態のシリコーンゴムの他、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、各種の熱可塑性エラストマー等が好適である。
【0062】
上記実施形態では、導電接着層として、エポキシ樹脂(熱硬化型接着剤)を母材とする異方導電接着剤を使用した。熱硬化型接着剤の主剤としては、上記エポキシ樹脂の他、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン等を使用することができる。主剤の種類に応じて、適宜、硬化剤等の添加剤を組み合わせればよい。なお、第一配線体、第二配線体の配線数が各々一本の場合には、導電接着層に異方性がなくてもよい。
【0063】
異方性の有無によらず、導電接着層を構成する導電接着剤の母材としては、熱硬化型接着剤の他、熱可塑型接着剤、紫外線硬化型接着剤、エラストマー系接着剤等を使用することができる。
【0064】
熱硬化型接着剤を使用する場合、第一配線体のエラストマーの熱膨張を抑制するという観点から、低温かつ短時間で硬化するものが望ましい。具体的には、硬化温度が、130℃以上180℃以下のものが望ましい。また、硬化時間が60秒以下、さらには20秒以下のものが望ましい。熱硬化型接着剤を母材とする好適な異方導電接着剤としては、京セラケミカル(株)製の異方導電接続材料「TAP0402F」、「TAP0401C」等が挙げられる。