(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するためのパティキュレートフィルタを機関排気通路内に配置し、パティキュレートフィルタは多孔性の隔壁を介して交互に配置された排気ガス流入通路及び排気ガス流出通路を備えている、内燃機関の排気浄化装置において、
排気ガス流入通路の内周面上に堆積したアッシュが排気ガス流入通路の奥部に移動するのを促進する移動促進制御を行う移動促進手段と、
パティキュレートフィルタの圧力損失を検出する検出手段と、
検出された圧力損失があらかじめ定められた上限値よりも大きいときにパティキュレートフィルタから粒子状物質を除去するPM除去制御を行うPM除去手段と、
を具備し、
移動促進手段は、排気ガス流入通路の内周面上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いか否かを判別し、前記アッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いと判別されたときに移動促進制御を行い、
移動促進手段は、移動促進制御を行うために液体をパティキュレートフィルタに供給する、
内燃機関の排気浄化装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、1は圧縮着火式内燃機関の本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内にそれぞれ燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドをそれぞれ示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7cの出口に連結され、コンプレッサ7cの入口はエアフローメータ8を介してエアクリーナ9に連結される。吸気ダクト6内には電気制御式スロットル弁10が配置され、更に吸気ダクト6内には吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置される。一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7tの入口に連結され、排気タービン7tの出口は排気後処理装置20に連結される。
【0016】
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路12を介して互いに連結され、EGR通路12内には電気制御式EGR制御弁13が配置される。また、EGR通路12内にはEGR通路12内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置14が配置される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管15を介してコモンレール16に連結される。このコモンレール16内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ17から燃料が供給され、コモンレール16内に供給された燃料は各燃料供給管15を介して燃料噴射弁3に供給される。
図1に示される実施例ではこの燃料は軽油から構成される。別の実施例では、内燃機関はリーン空燃比のもとで燃焼が行われる火花点火式内燃機関から構成される。この場合には燃料はガソリンから構成される。
【0017】
排気後処理装置20は排気タービン7tの出口に連結された排気管21と、排気管21に連結された触媒コンバータ22と、触媒コンバータ22に連結された排気管23とを具備する。触媒コンバータ22内にはウォールフロー型のパティキュレートフィルタ24が配置される。
【0018】
触媒コンバータ22には、パティキュレートフィルタ24の温度を検出するための温度センサ25が設けられる。別の実施例では、パティキュレートフィルタ24に流入する排気ガスの温度を検出するための温度センサが排気管21に配置される。更に別の実施例では、パティキュレートフィルタ24から流出する排気ガスの温度を検出するための温度センサが排気管23に配置される。これら排気ガスの温度はパティキュレートフィルタ24の温度を表している。
【0019】
触媒コンバータ22には更に、パティキュレートフィルタ24の圧力損失を検出するための圧力損失センサ26が設けられる。
図1に示される実施例では、圧力損失センサ26はパティキュレートフィルタ24の上流及び下流の圧力差を検出するための圧力差センサから構成される。別の実施例では、圧力損失センサ26は排気管21に取り付けられて機関背圧を検出するセンサから構成される。
【0020】
一方、排気マニホルド5には燃料添加弁27が取り付けられる。この燃料添加弁27にはコモンレール16から燃料が供給され、燃料添加弁27から排気マニホルド5内に燃料が添加される。別の実施例では、燃料添加弁27が排気管21に配置される。
【0021】
図2はEGR通路12内に設けられた冷却装置14を示している。冷却装置14は、EGR通路12に連結されたメイン通路14aと、メイン通路14aの周りに配置された冷却器14bと、冷却器14b上流のメイン通路14aから分岐して冷却器14b下流のメイン通路14aに戻るバイパス通路14cと、EGRガスをメイン通路14a及びバイパス通路14cの一方に選択的に導くバイパス制御弁14dと、を具備する。EGRガスを冷却すべきときにはバイパス制御弁14dが
図2において実線で示される冷却位置に制御され、したがってEGRガスが冷却器14b内に導かれる。これに対し、冷間運転時のようにEGRガスを冷却すべきでないときにはバイパス制御弁14dが
図2において破線で示されるバイパス位置に制御され、したがってEGRガスが冷却器14bを迂回される。更に、バイパス通路14cには、EGR通路12及び冷却装置14で生ずる凝縮水を貯留するための凝縮水貯留部14eが設けられる。
図2に示される実施例では、凝縮水貯留部14eはバイパス通路14cの底面に形成された凹部から構成される。
【0022】
再び
図1を参照すると、電子制御ユニット30はデジタルコンピュータから構成され、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。エアフローメータ8、温度センサ25、及び圧力差センサ26の出力信号はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル39にはアクセルペダル39の踏み込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ40が接続され、負荷センサ40の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。機関本体1には機関冷却水温を検出するための水温センサ41及び機関潤滑油温度を検出するための油温センサ42が取り付けられ、これらセンサ41,42の出力電圧はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ43が接続される。CPU34ではクランク角センサ43からの出力パルスに基づいて機関回転数Neが算出される。入力ポート35には更に、イグニッションスイッチ44及びスタータスイッチ45がオンであるかオフであるかをそれぞれ表す信号が入力される。スタータスイッチ45がオンにされているときにスタータモータ46が作動される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10駆動装置、EGR制御弁13、バイパス制御弁14d、燃料ポンプ17、燃料添加弁27、及びスタータモータ46に接続される。
【0023】
図3A及び
図3Bはウォールフロー型パティキュレートフィルタ24の構造を示している。なお、
図3Aはパティキュレートフィルタ24の正面図を示しており、
図3Bはパティキュレートフィルタ24の側面断面図を示している。
図3A及び
図3Bに示されるようにパティキュレートフィルタ24はハニカム構造をなしており、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路71i,71oと、これら排気流通路71i,71oを互いに隔てる隔壁72とを具備する。
図3Aに示される実施例では、排気流通路71i,71oは、上流端が開放されかつ下流端が栓73dにより閉塞された排気ガス流入通路71iと、上流端が栓73uにより閉塞されかつ下流端が開放された排気ガス流出通路71oとにより構成される。なお、
図3Aにおいてハッチングを付した部分は栓73uを示している。したがって、排気ガス流入通路71i及び排気ガス流出通路71oは薄肉の隔壁72を介して交互に配置される。云い換えると排気ガス流入通路71i及び排気ガス流出通路71oは各排気ガス流入通路71iが4つの排気ガス流出通路71oによって包囲され、各排気ガス流出通路71oが4つの排気ガス流入通路71iによって包囲されるように配置される。別の実施例では、排気流通路は、上流端及び下流端が開放された排気ガス流入通路と、上流端が栓により閉塞されかつ下流端が開放された排気ガス流出通路とにより構成される。
【0024】
隔壁72は多孔質材料、例えばコージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、ムライト、リチウムアルミニウムシリケート、リン酸ジルコニウムのようなセラミックから形成される。したがって、
図3Bに矢印で示されるように、排気ガスはまず排気ガス流入通路71i内に流入し、次いで周囲の隔壁72内を通って隣接する排気ガス流出通路71o内に流出する。このように隔壁72は排気ガス流入通路71iの内周面を構成する。なお、隔壁72の平均細孔径は10から25μm程度である。
【0025】
隔壁72の両側面及び細孔内表面には酸化機能を有する触媒が担持される。酸化機能を有する触媒は白金Pt、ロジウムRh、パラジウムPdのような貴金属から構成される。別の実施例では、酸化機能を有する触媒はセリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、ランタンLaのような卑金属を含む複合酸化物から構成される。更に別の実施例では、触媒は貴金属及び複合酸化物の組み合わせから構成される。
【0026】
さて、排気ガス中には主として固体炭素から形成される粒子状物質が含まれている。この粒子状物質はパティキュレートフィルタ24上に捕集される。燃焼室2では酸素過剰のもとで燃焼が行われている。したがって、燃料噴射弁3及び燃料添加弁27から燃料が2次的に供給されない限り、パティキュレートフィルタ24は酸化雰囲気にある。また、パティキュレートフィルタ24には酸化機能を有する触媒が担持されている。その結果、パティキュレートフィルタ24に捕集された粒子状物質は順次酸化される。ところが、単位時間当たりに捕集される粒子状物質の量が単位時間当たりに酸化される粒子状物質の量よりも多くなると、パティキュレートフィルタ24上に捕集されている粒子状物質の量が機関運転時間の経過と共に増大する。
【0027】
そこで本発明による実施例では、パティキュレートフィルタ24から粒子状物質を除去するPM除去制御が繰り返し行われる。その結果、パティキュレートフィルタ24上の粒子状物質が除去され、パティキュレートフィルタ24の圧力損失が低減される。
【0028】
図1に示される実施例では、PM除去制御は、粒子状物質を酸化除去するためにパティキュレートフィルタ24の温度をPM除去温度(例えば600℃)まで上昇させ保持する昇温制御から構成される。昇温制御を実行するために、一実施例では、燃料添加弁27から燃料が添加され、この燃料が排気通路又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。別の実施例では、燃料噴射弁3から燃料が圧縮行程又は排気行程に噴射され、この燃料が燃焼室2、排気通路、又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。
【0029】
すなわち、
図4に示されるように、時間ta1において、パティキュレートフィルタ24の圧力損失すなわち圧力差PDが上限値UPDよりも大きくなると、PM除去制御すなわち昇温制御が開始される。したがって、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TFPMまで上昇され、保持される。その結果、圧力差PDが小さくなる。また、パティキュレートフィルタ24上に堆積している粒子状物質の量QPMも小さくなる。次いで、時間ta2において、粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さくなると、PM除去制御が終了される。したがって、パティキュレートフィルタ24の温度TFが低下する。次いで、時間ta3において、圧力差PDが上限値UPDよりも大きくなるとPM除去制御が開始される。次いで、時間ta4において、粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さくなると、PM除去制御が終了される。このように、PM除去制御が繰り返し行われる。
【0030】
粒子状物質堆積量QPMは、一実施例では、単位時間当たりの増大分qPMiと単位時間当たりの減少分qPMdとを機関運転状態に基づきそれぞれ求め、増大分qPMi及び減少分qPMdの合計を積算して得られるカウンタ値により表される(QPM=QPM+qPMi−qPMd)。増大分qPMiは
図5Aに示されるように燃料噴射量QF及び機関回転数Neの関数としてマップの形であらかじめROM32(
図1)に記憶されている。燃料噴射量QFは機関負荷を表している。一方、減少分qPMdは
図5Bに示されるように吸入空気量Ga及びパティキュレートフィルタ24の温度TFの関数としてマップの形であらかじめROM32に記憶されている。吸入空気量Gaはパティキュレートフィルタ24に流入する排気ガス又は酸素の流量を表している。
【0031】
図6は
図4に示されるPM除去制御を実行するルーチンを示している。
図6を参照すると、ステップ101ではパティキュレートフィルタ24の圧力差PDが上限値UPDよりも大きいか否かが判別される。PD>UPDのときには次いでステップ102に進み、昇温制御が行われる。すなわち、パティキュレートフィルタ24の温度TFの目標値TTFがPM除去温度TFPMに設定される。
図1に示される実施例では、パティキュレートフィルタ24の実際の温度が目標値TTFになるようにパティキュレートフィルタ24の温度が制御される。続くステップ103では粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さいか否かが判別される。QPM≧LQPMのときにはステップ102に戻る。QPM<LQPMのときには処理サイクルを終了する。したがって、昇温制御が終了される。ステップ101においてPD≦UPDのときには処理サイクルを終了する。この場合、昇温制御が行われない。
【0032】
図7は粒子状物質堆積量QPMを算出するルーチンを示している。
図7を参照すると、ステップ111では増大分qPMiが
図5Aのマップから算出される。続くステップ112では減少分qPMdが
図5Bのマップから算出される。続くステップ113では粒子状物質堆積量QPMが算出される(QPM=QPM+qPMi−qPMd)。
【0033】
別の実施例では、PM除去制御は、粒子状物質をNOxにより酸化除去するために、パティキュレートフィルタ24に流入する排気ガス中のNOx量を増大させるNOx増大制御から構成される。NOx量を増大させるために例えばEGRガス量が減少される。更に別の実施例では、PM除去制御は、粒子状物質をオゾンにより酸化除去するために、パティキュレートフィルタ24上流の排気通路に連結されたオゾン供給器からオゾンをパティキュレートフィルタ24に供給するオゾン供給制御から構成される。
【0034】
ところで、排気ガス中にはアッシュも含まれており、このアッシュも粒子状物質と共にパティキュレートフィルタ24に捕集される。このアッシュは主として硫酸カルシウムCaSO
4、リン酸亜鉛カルシウムCa
19Zn
2(PO
4)
14のようなカルシウム塩から形成されることが本願発明者により確認されている。カルシウムCa,亜鉛Zn,リンP等は機関潤滑油に由来し、イオウSは燃料に由来する。すなわち、硫酸カルシウムCaSO
4を例にとって説明すると、機関潤滑油が燃焼室2内に流入して燃焼し、潤滑油中のカルシウムCaが燃料中のイオウSと結合することにより硫酸カルシウムCaSO
4が生成される。
【0035】
ところが、PM除去制御が行われても、アッシュは燃焼せず又は気化しない。すなわち、アッシュはパティキュレートフィルタ24から除去されず、パティキュレートフィルタ24上に残留する。その結果、パティキュレートフィルタ24上に堆積しているアッシュの分だけパティキュレートフィルタ24の圧力損失ないし圧力差PDが増大する。
【0036】
すなわち、パティキュレートフィルタ24が新品の状態から機関運転が開始されると、
図8Aに示されるように、圧力差PDはその初期値PD0から、粒子状物質堆積量QPMはその初期値ゼロから、曲線CT1に沿ってそれぞれ増大する。次いで、圧力差PDが上限値UPDよりも大きくなると、PM除去制御が開始される。その結果、
図8Bに示されるように、圧力差PDは上限値UPDから、粒子状物質堆積量QPMは値QPM1から、曲線CR1に沿ってそれぞれ減少する。次いで、粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さくなると、PM除去制御が終了される。その結果、
図8Cに示されるように、圧力差PDは値PD1から、粒子状物質堆積量QPMは下限値LQPMから、曲線CT2に沿ってそれぞれ増大する。次いで、圧力差PDが上限値UPDよりも大きくなると、PM除去制御が開始される。その結果、
図8Dに示されるように、圧力差PDは上限値UPDから、粒子状物質堆積量QPMは値QPM2から、曲線CR2に沿ってそれぞれ減少する。次いで、粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さくなると、PM除去制御が終了される。このようにして、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの増大及び減少が交互に繰り返される。
【0037】
別の見方をすると、
図8Aは圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの1回目の増大作用を示しており、
図8Bは圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの1回目の減少作用を示しており、
図8Cは圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの2回目の増大作用を示しており、
図8Dは圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの2回目の減少作用を示している。
【0038】
このように、機関運転時間が長くなるにつれて、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの増大作用が停止される時点すなわちPM除去制御が開始される時点での粒子状物質堆積量QPMが減少し(QPM1>QPM2)、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMの増大作用が開始される時点での圧力差PDが増大する(PD0<PD1<PD2)。その結果、PM除去制御の実行タイミングが最適なタイミングよりも早められるおそれがある。この場合、PM除去処理が好ましくなく頻繁に行われることになり、燃料消費量が好ましくなく増大する。
【0039】
一方、おおまかに言うと、パティキュレートフィルタ24上におけるアッシュは、
図9Aに示されるように排気ガス流入通路71iの内周面71is上に分散的に堆積しているアッシュA、及び、
図9Bに示されるように排気ガス流入通路71iの奥部ないし底部71irに局所的に堆積しているアッシュAの一方又は両方から形成されると考えられる。その上で、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積しているアッシュAはパティキュレートフィルタ24の圧力損失ないし圧力差PDに対する影響が大きい。これに対し、排気ガス流入通路71iの奥部71irに堆積しているアッシュAはパティキュレートフィルタ24の圧力損失ないし圧力差PDに対する影響が小さい。
【0040】
そうすると、内周面71is上に堆積しているアッシュAが奥部71irに移動されれば、アッシュの圧力差PDに対する影響を弱められるということになる。この点、例えば機関高負荷運転時のようにパティキュレートフィルタ24内に流入する排気ガスの量が多いときには、内周面71is上に堆積しているアッシュAの一部が排気ガス流れによって奥部71irに移動される場合がある。しかしながら、この場合、十分な量のアッシュを移動させることは困難である。
【0041】
そこで本発明による実施例では、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積しているアッシュAが排気ガス流入通路71iの奥部71irに移動するのを促進する移動促進制御が行われる。その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積しているアッシュの量が減少され、アッシュの圧力差PDへの影響を小さく維持することができる。したがって、PM除去制御の実行タイミングを最適なタイミングに維持することができる。
【0042】
図1に示される実施例では、パティキュレートフィルタ24に液体を供給することにより移動促進制御が行われる。この液体は凝縮水貯留部14eに貯留された凝縮水から構成される。
【0043】
また、
図1に示される実施例では、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いか否かが判別され、内周面71is上に堆積したアッシュの量が上限量よりも多いと判別されたときに、機関冷間始動時に移動促進制御が行われる。これに対し、内周面71is上に堆積したアッシュの量が上限量よりも多いと判別されないときには移動促進制御は行われない。この移動促進制御を
図10を参照して説明する。
【0044】
図10において、実線は移動促進制御が行われる場合を、破線は移動促進制御が行われない場合を、それぞれ示している。
図10を参照すると、時間tb1において、イグニッションスイッチ44がオンにされ、スタータスイッチ45がオンにされ、したがって機関始動が開始される。その結果、機関回転数Neが上昇する。次いで、時間tb2において、機関回転数Neがあらかじめ定められた設定値NeC(例えば900rpm)を越えて完爆が生ずる。次いで、移動促進制御が行われない場合には、
図10に破線で示されるように、通常のアイドリング制御が行われる。すなわち、機関運転が冷間運転のときには機関回転数Neが冷間時アイドリング回転数NeIC(例えば高くても1000rpm)に維持される。また、EGR制御弁13が閉弁され、したがってEGRガスの供給が禁止される。次いで、時間tb4において機関運転が温間運転に切り換わると、機関回転数Neが温間時アイドリング回転数NeIW(例えば700から800rpm)に維持される。また、EGRガスの供給が許容される。すなわち、EGR制御弁13の開度DEGRが機関運転状態に応じて制御される。なお、
図1に示される実施例では、機関冷却水温及び機関潤滑油温が共にあらかじめ定められた設定温度(例えば20℃)よりも低いときに機関運転が冷間運転であると判別され、機関冷却水温及び機関潤滑油温の一方又は両方が設定温度よりも高いときに機関運転が温間運転であると判別される。
【0045】
これに対し、移動促進制御が行われる場合には、
図10に実線で示されるように、時間tb2における完爆の後、機関回転数Neがあらかじめ定められた移動促進アイドリング回転数NeIT(例えば1500rpm)に維持される。この移動促進アイドリング回転数NeITは通常のアイドリング回転数NeIC,NeIWよりも高く設定されている。その結果、吸気マニホルド4、燃焼室2、排気マニホルド5、排気管21、及びパティキュレートフィルタ24内を流れるガス量が増大される。また、EGR制御弁13の開度DEGRが開弁される。
図10に示される例では開度DEGRが100%にされ、すなわちEGR制御弁13が全開にされる。このとき機関運転が冷間運転であるので冷却装置14のバイパス制御弁14dがバイパス位置に制御されている(
図2)。その結果、比較的多量のEGRガスがパイパス通路14c内を流れ、この多量のEGRガスによって凝縮水が凝縮水貯留部14eから排出される。この凝縮水はEGRガスと共に吸気マニホルド4、燃焼室2、排気マニホルド5、排気管21を順次流通し、パティキュレートフィルタ24内に供給される。
【0046】
その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上のアッシュが凝縮水によって流され、奥部71irに移動される。或いは、アッシュが凝縮水により膨潤し、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。内周面71isから剥離したアッシュは後続の機関運転中に排気ガスによって奥部71irに容易に移動される。
【0047】
この場合、機関運転が冷間運転であるので、凝縮水が液体のままパティキュレートフィルタ24に供給され、したがってアッシュの移動を確実に促進することができる。なお、移動促進制御により燃焼室2を通過する凝縮水の量は比較的少なく、ウォータハンマ現象は生じない。また、移動促進制御が行われると、内周面71is上に堆積している粒子状物質も奥部71irに移動される。このように移動された粒子状物質は後続のPM除去処理時に除去される。
【0048】
次いで、時間tb3において、あらかじめ定められた設定時間tBが経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。すなわち、機関運転が冷間運転のときには機関回転数Neが冷間時アイドリング回転数NeICに維持され、EGR制御弁13が閉弁される。次いで、時間tb4において機関運転が温間運転に切り換わると、機関回転数Neが温間時アイドリング回転数NeIWに維持され、EGRガスの供給が許容される。
【0049】
パティキュレートフィルタ24が新品のときの燃料消費率を新品時燃料消費率と称すると、本願発明者らによれば、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多くなった場合において、燃料消費率の新品時燃料消費率に対する増加分は約13%であった。次いで、移動促進制御が行われた後において燃料消費率の新品時燃料消費率に対する増加分は約3%であった。このように、移動促進制御により、燃料消費率の増加を確実に抑制することができる。
【0050】
排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いか否かは例えば次のようにして判別される。すなわち、
図11Aに示されるように、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMは1回目の増大作用時には曲線CT1に沿って変化する。この曲線CT1の漸近線AST1は次式で表される。
PD=A1・QPM+(B1+C1)
【0051】
また、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMは1回目の減少作用時には曲線CR1に沿って変化する。この曲線CR1の漸近線ASR1は次式で表される。
PD=A1・QPM+B1
【0052】
これら2つの式の切片の差はC1で表される。なお、B1はパティキュレートフィルタ24自体の圧力損失を表しており、PD0に相当する。
【0053】
同様に、
図11Bに示されるように、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMはi回目の増大作用時には曲線CTiに沿って変化する(i=1,2,…)。この曲線CTiの漸近線ASTiは次式で表される。
PD=Ai・QPM+(Bi+Ci)
【0054】
また、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMはi回目の減少作用時には曲線CRiに沿って変化する。この曲線CRiの漸近線ASRiは次式で表される。
PD=Ai・QPM+Bi
【0055】
これら2つの式の切片の差はCiで表される。
【0056】
切片の差Ciは圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMのi回目の増大作用時にパティキュレートフィルタ24に堆積した粒子状物質の量を表しており、あるいは、圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMのi回目の減少作用時にパティキュレートフィルタ24から除去された粒子状物質の量を表している。この粒子状物質の量は、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量が多くなるにつれて少なくなる。したがって、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量が多くなるにつれて、差Ci又は比R(=Ci/C1)が小さくなる。なお、
図11Aは差Ci又は比Rが大きい場合を示しており、
図11Bは差Ci又は比Rが小さい場合を示している。
【0057】
そこで、
図1に示される実施例では、比Rがあらかじめ定められた下限値RLよりも小さいときに、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いと判別され、比Rが下限値RLよりも大きいときに内周面71is上に堆積したアッシュの量が上限量よりも少ないと判別される。
【0058】
図12は
図1に示される実施例における機関始動制御を実行するルーチンを示している。このルーチンはイグニッションスイッチ44がオンにされたときに1回だけ実行される。
図12を参照すると、ステップ121ではフラグXがリセットされる(X=0)。このフラグXは通常のアイドリング制御ルーチン(
図14)を実行すべきときにセットされ(X=1)、それ以外はリセットされる(X=0)。続くステップ122では機関回転数Neが設定回転数NeCよりも高いか否かが判別される。Ne≦NeCのときにはステップ122に戻る。Ne>NeCのとき、すなわち完爆が生じたときには次いでステップ123に進み、比Rが下限値RLよりも小さいか否かが判別される。R<RLのときには次いでステップ124に進み、機関運転が冷間運転であるか否かが判別される。機関運転が冷間運転のときには次いでステップ125に進み、移動促進制御ルーチンが実行される。続くステップ126ではフラグXがセットされる(X=1)。ステップ123においてR≧RLのとき及びステップ125において機関運転が温間運転のときにはステップ126に進む。したがって、これらの場合には移動促進制御が行われない。
【0059】
図13は
図1に示される実施例における移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図12のステップ125で実行される。
図13を参照すると、ステップ131では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。
図1に示される実施例では、実際の機関回転数が目標回転数TNeになるように機関回転数が制御される。続くステップ132ではEGR制御弁13が開弁される。続くステップ133では設定時間tBが経過したか否かが判別される。設定時間tBが経過していないときにはステップ131に戻る。設定時間tBが経過したときには処理サイクルを終了する。すなわち、移動促進制御が終了され、
図12のステップ126に進む。
【0060】
図14は通常のアイドリング制御を実行するルーチンを示している。
図14を参照すると、ステップ141ではアクセルペダル39の踏み込み量Lがゼロであるか、すなわち機関運転がアイドリング運転であるか否かが判別される。L>0のとき、すなわち機関運転がアイドリング運転でないときには処理サイクルを終了する。L=0、すなわち機関運転がアイドリング運転のときには次いでステップ142に進み、フラグXがセットされているか否かが判別される。フラグXがリセットされているとき(X=0)には処理サイクルを終了する。これに対し、フラグXがセットされているとき(X=1)には次いでステップ143に進む。したがって、機関始動が開始されてから
図12のルーチンのステップ126でフラグXがセットされるまではルーチンはステップ143に進まない。ステップ143では、機関運転が冷間運転であるか否かが判別される。機関運転が冷間運転のときには次いでステップ144に進み、目標回転数TNeが冷間アイドリング回転数NeICに設定される。続くステップ146ではEGR制御弁13が閉弁される。これに対し、機関運転が温間運転のときにはステップ146に進み、目標回転数TNeが温間アイドリング回転数NeIWに設定される。続くステップ147ではEGRガスの供給が許容される。
【0061】
図15は比Rの算出ルーチンを示している。
図15を参照すると、ステップ151では圧力差PDが読み込まれる。続くステップ152では粒子状物質量QPMが読み込まれる。続くステップ153では、PM除去制御が実行から停止に切り換わったか否かが判別される。PM除去制御が実行から停止に切り換わっていないときには次いでステップ154に進み、PM除去制御が停止から実行に切り換わったか否かが判別される。PM除去制御が停止から実行に切り換わっていないときには処理サイクルを終了する。PM除去制御が停止から実行に切り換わったとき、すなわち圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMのi回目の増大作用が終了したときには、ステップ155に進み、i回目の増大作用の曲線CTiの漸近線ASTiが決定される。次いで、PM除去制御が実行から停止に切り換わったとき、すなわち圧力差PD及び粒子状物質堆積量QPMのi回目の減少作用が終了したときには、ステップ153からステップ156に進み、i回目の減少作用の曲線CRiの漸近線ASRiが決定される。続くステップ157では切片の差Ciが算出される。続くステップ158では比Rが算出される(R=Ci/C1)。続くステップ159ではパラメータiが1だけインクリメントされる(i=i+1)。なお、パラメータiは機関始動時に1にセットされる。
【0062】
次に、
図16を参照して比Rの別の実施例を説明する。
図16に示されるように、圧力差PDはi回目の減少作用時によりDi(=UPD−PD(i+1))だけ減少する。この減少分Diないし比Di/D1は排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量が多くなるにつれて少なくなる。そこで、比RがDi/D1の形で算出される。更に別の実施例では、差Ci又は減少分Diがあらかじめ定められた下限値よりも小さいときに、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積したアッシュの量があらかじめ定められた上限量よりも多いと判別され、差Ci又は減少分Diが下限値よりも大きいときに内周面71is上に堆積したアッシュの量が上限量よりも少ないと判別される。
【0063】
図17Aから
図17Cは凝縮水貯留部14eの別の実施例を示している。
図17Aに示される実施例では、冷却装置14のバイパス通路14cが下方に向けて屈曲され、凝縮水貯留部14eはバイパス通路14cの屈曲部から構成される。
図17Bに示される実施例では、凝縮水貯留部14eは吸気マニホルド4の底面に形成された凹部から構成される。
図17Cに示される実施例では、凝縮水貯留部14eは排気マニホルド5の底面に形成された凹部から構成される。なお、
図17B及び
図17Cに示される実施例では、移動促進制御時にEGR制御弁13は閉弁される。更に別の実施例では、排気ターボチャージャ7のハウジングの底面に形成される凹部又は排気管21の底面に形成される凹部から凝縮水貯留部14eが構成される。
【0064】
図18は本発明による別の実施例を示している。
図18を参照すると、パティキュレートフィルタ24にはNOx還元触媒24aが担持される。このNOx還元触媒24aは、還元剤が含まれる酸化雰囲気において排気ガス中のNOxを還元剤でもって還元する機能を有する。NOx還元触媒24aは例えばチタニアから形成された担体上に酸化バナジウムを担持したバナジウム・チタニア触媒又はゼオライトから形成された担体上に銅を担持した銅ゼオライト触媒から構成される。別の実施例では、NOx還元触媒はパティキュレートフィルタ24の下流に配置される。
【0065】
NOx還元触媒24a上流の排気管21には排気ガス中に還元剤を2次的に添加するための還元剤添加弁50が配置される。還元剤添加弁50は還元剤供給管51を介して還元剤タンク52に連結され、還元剤供給管51内には吐出圧を調節可能な還元剤ポンプ53が配置される。
図18に示される例では還元剤は尿素水溶液から構成され、還元剤タンク52内には尿素水溶液が収容されている。
【0066】
機関始動が完了した後の通常運転時において、NOxを還元するために還元剤添加弁50から還元剤が添加される。この還元剤は次いでNOx還元触媒24aに供給される。その結果、NOx還元触媒24aにおいてNOxが還元される。この場合、還元剤は還元剤添加弁50からNOx還元用添加圧及びNOx還元用添加時間でもって添加される。これらNOx還元用添加圧及びNOx還元用添加時間は還元剤すなわち尿素水溶液が十分に霧化しうるように、機関運転状態に応じて選択される。
【0067】
図18に示される実施例では、移動促進制御で供給される液体が還元剤添加弁50から添加される還元剤すなわち尿素水溶液から構成される。すなわち、
図19に示されるように、時間tc1における機関始動の後、時間tc2において完爆が生じると、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。その結果、パティキュレートフィルタ24内を流通する排気ガス量が増大される。このとき還元剤添加弁50から還元剤が移動促進用添加圧でもって液体の形で添加される。この液体還元剤は排気ガスによってパティキュレートフィルタ24に供給される。その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上のアッシュが奥部71rに移動するのが促進される。次いで、時間tc3において、移動促進用添加時間tCが経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。また、液体還元剤の添加が停止される。すなわち、移動促進制御が停止される。
【0068】
移動促進用添加圧及び移動促進用添加時間は還元剤がほとんど霧化せず液体の形でパティキュレートフィルタ24に供給されるように設定される。すなわち、NOx還元用添加圧よりも低い移動促進用添加圧又はNOx還元用添加時間よりも長い移動促進用添加時間でもって還元剤が添加される。なお、移動促進用添加圧及び移動促進用添加時間は機関運転状態に応じて設定される。
図18に示される実施例では、移動促進用添加圧は吸入空気量が多くなるにつれて高くなり、パティキュレートフィルタ24への流入排気ガスの温度が高くなるにつれて高くなる。また、移動促進用添加時間は排気管21内の圧力が高くなるにつれて長くなり、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に堆積しているアッシュの量が多くなるにつれて長くなる。
【0069】
図20は
図19に示される移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図12のステップ125で実行される。
図19を参照すると、ステップ161では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。続くステップ162では移動促進用添加圧が算出される。続くステップ163では移動促進用添加時間が算出される。続くステプ164では、還元剤が還元剤添加弁50から移動促進用添加圧でもって移動促進用添加時間だけ添加される。次いで処理サイクルを終了する。すなわち、移動促進制御が終了され、
図12のステップ126に進む。
【0070】
次に、
図1又は
図18に示される実施例における移動促進制御の別の実施例を説明する。この実施例では、移動促進制御で供給される液体が燃料添加弁27から添加される燃料から構成される。燃料添加弁27から添加された燃料はパティキュレートフィルタ24に担持された触媒でNOxを還元するのに用いられ、或いは、上述の昇温制御を行うのに用いられる。
【0071】
移動促進制御を行うべきときには、燃料添加弁27から液体燃料が添加される。この場合、NOx還元又は昇温制御のための添加圧よりも低い添加圧又はNOx還元又は昇温制御のための添加時間よりも長い添加時間でもって燃料が添加される。その結果、燃料が液体の形でパティキュレートフィルタ24に添加される。
【0072】
このように、移動促進制御を行うために還元剤添加弁50(
図18)又は燃料添加弁27(
図1)から液体を添加すると、追加の構成を必要としない。
【0073】
図21は本発明による更に別の実施例を示している。
図21を参照すると、EGR通路12にはEGRガス中に液体を2次的に添加するための液体添加弁55が配置される。液体添加弁55は液体供給管56を介して液体タンク57に連結され、液体供給管56内には吐出圧を調節可能な液体ポンプ58が配置される。
図21に示される例では液体は水から構成され、液体タンク57内には水が収容されている。別の実施例では、液体は水溶液又は液体燃料から構成される。
【0074】
図21に示される実施例では、移動促進制御で供給される液体が液体添加弁55から添加される液体すなわち水から構成される。すなわち、
図22に示されるように、時間td1における機関始動の後、時間td2において完爆が生じると、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。また、EGR制御弁13が開弁される。このとき液体添加弁55から水が移動促進用添加圧でもって添加される。この水は排気ガスによってパティキュレートフィルタ24に供給される。その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上のアッシュが奥部71rに移動するのが促進される。この場合、移動促進用添加圧及び移動促進用添加時間は水が液体の形でパティキュレートフィルタ24に供給されるように設定される。次いで、時間td3において、移動促進用添加時間tDが経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。また、水の添加が停止される。すなわち、移動促進制御が停止される。
【0075】
図23は
図22に示される移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図12のステップ125で実行される。
図23を参照すると、ステップ171では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。続くステップ172ではEGR制御弁13が開弁される。続くステップ173では移動促進用添加圧が算出される。続くステップ174では移動促進用添加時間が算出される。続くステプ175では、液体が液体添加弁55から移動促進用添加圧でもって移動促進用添加時間だけ添加される。次いで処理サイクルを終了する。すなわち、移動促進制御が終了され、
図12のステップ126に進む。
【0076】
図24Aに示される実施例では液体添加弁55が吸気ダクト6に配置される。
図24Bに示される実施例では液体添加弁55が排気マニホルド5に配置される。
図24Cに示される実施例では液体添加弁55が排気管21に配置される。なお、
図24Aから
図24Cに示される実施例では、移動促進制御時にEGR制御弁13は閉弁される。
【0077】
図25は本発明による更に別の実施例を示している。
図25を参照すると、パティキュレートフィルタ24下流の排気管23内に、排気管23内を開放及び閉鎖可能な排気制御弁60が配置される。排気制御弁60は通常は全開にされている。
【0078】
図25に示される実施例では移動促進制御がパティキュレートフィルタ24内での圧力脈動の発生から構成される。すなわち、
図26に示されるように、時間te1における機関始動の後、時間te2において完爆が生じると、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。このとき排気制御弁60が交互に繰り返し開弁及び閉弁される。その結果、パティキュレートフィルタ24内の圧力に脈動は発生される。この圧力脈動により、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。内周面71isから剥離したアッシュは後続の機関運転中に排気ガスによって奥部71irに容易に移動される。次いで、時間te3において、あらかじめ定められた設定時間tEが経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。また、排気制御弁60が全開に維持される。すなわち、移動促進制御が停止される。
【0079】
図27は
図26に示される移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図12のステップ125で実行される。
図27を参照すると、ステップ181では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。続くステップ182では排気制御弁60が開閉される。続くステップ183では設定時間tEが経過したか否かが判別される。設定時間tEが経過していないときにはステップ181に戻る。設定時間tEが経過した時には処理サイクルを終了する。すなわち、移動促進制御が停止され、
図12のステップ126に進む。
【0080】
図28は本発明による更に別の実施例を示している。
図28を参照すると、触媒コンバータ22に振動器61が取り付けられる。
【0081】
図28に示される実施例では移動促進制御がパティキュレートフィルタ24の振動の発生から構成される。すなわち、
図29に示されるように、時間tf1における機関始動の後、時間tf2において完爆が生じると、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。このとき振動器61が作動される。その結果、パティキュレートフィルタ24に振動が付与される。この振動により、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。内周面71isから剥離したアッシュは後続の機関運転中に排気ガスによって奥部71irに容易に移動される。次いで、時間tf3において、あらかじめ定められた設定時間tFが経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。また、振動器61が停止される。すなわち、移動促進制御が停止される。
【0082】
図30は
図29に示される移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図12のステップ125で実行される。
図30を参照すると、ステップ191では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。続くステップ192では振動器61が作動される。続くステップ193では設定時間tFが経過したか否かが判別される。設定時間tFが経過していないときにはステップ191に戻る。設定時間tFが経過した時には処理サイクルを終了する。すなわち、移動促進制御が停止され、
図12のステップ126に進む。
【0083】
図31は本発明による更に別の実施例を示している。
図31に示される実施例の移動促進制御では、まず、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去制御時のPM除去温度TFPMよりも高い移動促進温度TFTまで上昇する移動促進用昇温制御が行われる。次いで、パティキュレートフィルタ24内を流通する排気ガス量を一時的に増大させる排気ガス増量制御が行われる。その結果、アッシュが加熱により収縮し、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。内周面71isから剥離したアッシュは増量された排気ガスによって奥部71irに容易にかつ確実に移動される。なお、移動促進温度TFTは例えば630℃から1100℃程度である。
【0084】
この実施例の移動促進制御は機関始動が完了した後の通常運転時に行われる。すなわち、
図31に示されるように、時間tg1において、PM除去制御が開始され、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TFPMまで上昇される。次いで、時間tg2において、粒子状物質堆積量QPMが下限値LQPMよりも小さくなり、PM除去制御が終了される。PM除去制御に引き続いて、移動促進制御が開始される。具体的には、まず移動促進用昇温制御が開始される。すなわち、パティキュレートフィルタ24の温度TFがPM除去温度TFPMから移動促進温度TFTまで上昇され保持される。このようにすると、移動促進用昇温制御に必要なエネルギを低減することができる。次いで、時間tg3においてあらかじめ定められた設定時間tG1が経過すると、移動促進用昇温制御が終了される。次いで、排気ガス増量制御が開始される。その結果、パティキュレートフィルタ24内を流通する排気ガス量QEXが増大される。次いで、時間tg4においてあらかじめ定められた設定時間tG2が経過すると、排気ガス増量制御が終了される。したがって、移動促進制御が終了される。
【0085】
なお、移動促進用昇温制御を実行するために、一実施例では、燃料添加弁27から燃料が添加され、この燃料が排気通路又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。別の実施例では、燃料噴射弁3から燃料が圧縮行程又は排気行程に噴射され、この燃料が燃焼室2、排気通路、又はパティキュレートフィルタ24で燃焼される。一方、排気ガス増量制御を行うために機関回転数又はスロットル開度が増大される。
【0086】
図32は
図31に示される排気浄化制御を実行するルーチンを示している。
図32を参照すると、ステップ201では
図6に示されるPM除去制御ルーチンが実行される。続くステップ202では比Rが下限値RLよりも小さいか否かが判別される。R<RLのときには次いでステップ203に進み、移動促進制御ルーチンが実行される。これに対し、R≧RLのときには処理サイクルを終了する。したがって、この場合には移動促進制御ルーチンが実行されない。
【0087】
図33は
図31に示される移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図32のステップ203で実行される。
図33を参照すると、ステップ211ではパティキュレートフィルタ24の温度TFの目標値TTFが移動促進温度TFTに設定される。続くステップ212では設定時間tG1が経過したか否かが判別される。設定時間tG1が経過していないときにはステップ211に戻る。設定時間tG1が経過したときには次いでステップ213に進み、排気ガス増量制御が行われる。続くステップ214では設定時間tG2が経過したか否かが判別される。設定時間tG2が経過していないときにはステップ213に戻る。設定時間tG2が経過したときには処理サイクルを終了する。すなわち、排気ガス増量制御が終了され、したがって移動促進制御が終了される。
【0088】
別の実施例では、排気ガス増量制御が省略される。この場合、移動促進用昇温制御により内周面71isから剥離されたアッシュは後続の機関運転中に排気ガスによって奥部71irに容易に移動される。
【0089】
図34は
図24Cに示される実施例における移動促進制御の別の実施例を示している。
図34に示される実施例では、移動促進制御が、機関停止時に行われる停止時移動促進制御と、後続の機関始動時に行われる始動時移動促進制御とから構成される。
【0090】
すなわち、
図34に示されるように、時間th1においてイグニッションスイッチ44がオフにされると、機関運転が停止される。その結果、機関回転数Neがゼロまで低下する。次いで、あらかじめ定められた設定時間tH1が経過すると、停止時移動促進制御が行われる。すなわち、液体添加弁55から液体が移動促進用添加圧でもって添加される。その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上のアッシュが凝縮水によって流され、奥部71irに移動される。或いは、アッシュが凝縮水により膨潤し、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。なお、設定時間tH1は、液体添加弁55から添加された液体がパティキュレートフィルタ24で気化しないようにパティキュレートフィルタ24の温度TFを低下させるのに必要な時間に設定される。次いで、時間th3において、液体の添加が移動促進用添加時間tH2だけ行われると、液体の添加が停止される。すなわち、停止時移動促進制御が停止される。
【0091】
次いで、時間th4において、イグニッションスイッチ44がオンにされて機関始動が行われる。次いで、時間th5において完爆が生じると、始動時移動促進制御が開始される。すなわち、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。その結果、パティキュレートフィルタ24内を流通する排気ガス量が増大される。したがって、排気ガス流入通路71iの内周面71isから剥離されたアッシュが奥部71irに容易に移動される。次いで、時間th6において、あらかじめ定められた設定時間tH3が経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。すなわち、始動時移動促進制御が停止される。
【0092】
図35は
図34に示される機関停止制御を実行するルーチンを示している。このルーチンはイグニッションスイッチ44がオフにされたときに1回だけ実行される。
図35を参照すると、ステップ221ではフラグXXがリセットされる(XX=0)。このフラグXXは始動時移動促進制御を実行すべきときにセットされ(XX=1)、それ以外はリセットされる(XX=0)。続くステップ222では機関運転が停止される。続くステップ223では比Rが下限値RLよりも小さいか否かが判別される。R<RLのときには次いでステップ224に進み、停止時移動促進制御ルーチンが実行される。続くステップ225ではフラグXXがセットされる(XX=1)。続くステップ226では電子制御ユニット30への通電が停止される。次いで処理サイクルを終了する。これに対し、R≧RLのときにはステップ223からステップ226に進む。したがって、この場合には移動促進制御が行われない。
【0093】
図36は
図34に示される機関始動制御を実行するルーチンを示している。このルーチンはイグニッションスイッチ44がオンにされたときに1回だけ実行される。
図36を参照すると、ステップ231では
図12を参照して説明したフラグXがリセットされる(X=0)。続くステップ232では機関回転数Neが設定回転数NeCよりも高いか否かが判別される。Ne≦NeCのときにはステップ232に戻る。Ne>NeCのとき、すなわち完爆が生じたときには次いでステップ233に進み、
図35を参照して説明したフラグXXがセットされているか否かが判別される。フラグXXがセットされているとき(XX=1)には次いでステップ234に進み、始動時移動促進制御ルーチンが実行される。続くステップ235ではフラグXがセットされる(X=1)。ステップ233においてフラグXXがリセットされているとき(XX=0)にはステップ235に進む。したがって、この場合には始動時移動促進制御が行われない。
【0094】
図37は
図34に示される停止時移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図35のステップ224で実行される。
図37を参照すると、ステップ241ではイグニッションスイッチ44がオフにされてから設定時間tH1が経過したか否かが判別される。設定時間tH1が経過していないときにはステップ241に戻る。設定時間tH1が経過したときには次いでステップ242に進み、移動促進用添加圧が算出される。続くステップ243では移動促進用添加時間が算出される。続くステプ244では、液体が液体添加弁55から移動促進用添加圧でもって移動促進用添加時間だけ添加される。次いで処理サイクルを終了する。すなわち、停止移動促進制御が終了され、
図35のステップ225に進む。
【0095】
図38は
図34に示される始動時移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図36のステップ234で実行される。
図38を参照すると、ステップ251では目標回転数TNeが移動促進アイドリング回転数NeITに設定される。続くステップ252では設定時間tH3が経過したか否かが判別される。設定時間tH3が経過していないときにはステップ251に戻る。設定時間tH3が経過した時には処理サイクルを終了する。すなわち、始動時移動促進制御が停止され、
図36のステップ235に進む。
【0096】
図39は本発明による更に別の実施例を示している。
図39に示される実施例は、触媒コンバータ24に冷却器62が取り付けられ、パティキュレートフィルタ24に添加された液体が冷却器62により凝固される点で、
図34に示される実施例と異なっている。
【0097】
すなわち、
図40に示されるように、時間tj1においてイグニッションスイッチ44がオフにされ機関運転が停止され、次いであらかじめ定められた設定時間tJ1が経過すると、停止時移動促進制御が行われる。すなわち、液体添加弁55から液体が移動促進用添加圧でもって添加される。その結果、排気ガス流入通路71iの内周面71is上のアッシュが凝縮水によって流され、奥部71irに移動される。或いは、アッシュが凝縮水により膨潤し、排気ガス流入通路71iの内周面71isに形成されているアッシュ層が破壊され、アッシュが内周面71isから容易に剥離する。なお、設定時間tJ1は上述の設定時間tH1と同様に設定される。
【0098】
次いで、時間tj3において、液体の添加が移動促進用添加時間tJ2だけ行われると、液体の添加が停止される。次いで、tj4において、液体添加の停止からあらかじめ定められた設定時間tJ3が経過すると、冷却器62が作動され、パティキュレートフィルタ24に添加された液体が凝固される。その結果、液体が膨張するので、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に形成されているアッシュ層が更に破壊される。したがって、アッシュが内周面71isから更に容易に剥離する。次いで、時間tj5において、あらかじめ定められた設定時間tJ4が経過すると、冷却器62が停止される。すなわち、停止時移動促進制御が停止される。なお、設定時間tJ4はパティキュレートフィルタ24に添加された液体が十分に凝固するのに必要な時間に設定される。
【0099】
次いで、時間tj6において、イグニッションスイッチ44がオンにされて機関始動が行われる。この時点で、凝固された液体は融解している。次いで、時間tj7において完爆が生じると、始動時移動促進制御が開始される。すなわち、機関回転数Neが移動促進アイドリング回転数NeITに維持される。その結果、パティキュレートフィルタ24内を流通する排気ガス量が増大される。したがって、排気ガス流入通路71iの内周面71isから剥離されたアッシュが奥部71irに容易に移動される。次いで、時間tj8において、あらかじめ定められた設定時間tJ5が経過すると、通常のアイドリング制御が開始される。すなわち、始動時移動促進制御が停止される。
【0100】
図41は
図39に示される停止時移動促進制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは例えば
図35のステップ224で実行される。
図41を参照すると、ステップ261ではイグニッションスイッチ44がオフにされてから設定時間tJ1が経過したか否かが判別される。設定時間tJ1が経過していないときにはステップ261に戻る。設定時間tJ1が経過したときには次いでステップ262に進み、移動促進用添加圧が算出される。続くステップ263では移動促進用添加時間が算出される。続くステプ264では、液体が液体添加弁55から移動促進用添加圧でもって移動促進用添加時間だけ添加される。続くステップ265では液体添加が停止されてから設定時間tJ3が経過したか否かが判別される。設定時間tJ3が経過していないときにはステップ265に戻る。設定時間tJ3が経過したときには次いでステップ266に進み、冷却器62が作動される。続くステップ267では冷却器63が作動されてから設定時間tJ4が経過したか否かが判別される。設定時間tJ4が経過していないときにはステップ266に戻る。設定時間tJ4が経過したときには次いで処理サイクルを終了する。すなわち、停止移動促進制御が終了され、
図35のステップ225に進む。
【0101】
なお、
図34に示される実施例において、機関運転停止中に大気温度がかなり低くなって、パティキュレートフィルタ24に添加された液体が凝固する場合がある。この場合にも、排気ガス流入通路71iの内周面71is上に形成されているアッシュ層が更に破壊され、したがってアッシュが奥部71irに容易に移動される。