特許第5798549号(P5798549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798549
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ヘプシジン結合核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20151001BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C12N15/00 GZNA
   C12Q1/68 A
   A61P43/00 111
   A61P7/06
   A61P27/02
   A61P27/12
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/14
   A61K31/12
   A61K31/16
   A61K31/4196
   A61K31/4412
   A61K47/32
   A61K47/48
   A61P43/00 121
   A61K47/38
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
   G01N33/53 M
【請求項の数】44
【全頁数】100
(21)【出願番号】特願2012-507644(P2012-507644)
(86)(22)【出願日】2010年4月30日
(65)【公表番号】特表2012-525124(P2012-525124A)
(43)【公表日】2012年10月22日
(86)【国際出願番号】EP2010002659
(87)【国際公開番号】WO2010124874
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年4月25日
(31)【優先権主張番号】09006028.6
(32)【優先日】2009年4月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10000635.2
(32)【優先日】2010年1月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509019004
【氏名又は名称】ノクソン・ファルマ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】ゼル,ジモーネ
(72)【発明者】
【氏名】モーリヒ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】マーシュ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルースマン,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ディンゼ,ニコーレ
(72)【発明者】
【氏名】ブッフナー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェーベル,フランク
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/009437(WO,A1)
【文献】 特表平06−508022(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0053310(US,A1)
【文献】 ChemBioChem, 2003, Vol.4, p.979-983
【文献】 The International Journal of Biochemistry & Cell Biology, 2005, Vol.37, p.1768-1773
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00−1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型ヘプシジン結合核酸、C型ヘプシジン結合核酸およびA型ヘプシジン結合核酸からなる群から選択される、ヘプシジンと結合することができるL−核酸であって、
前記核酸が、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチと、ヌクレオチドの中心ストレッチと、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチとからなる、または、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチと、ヌクレオチドの中心ストレッチと、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチとからなり、
前記ヌクレオチドの中心ストレッチが32〜40ヌクレオチドからなり、
ここで、前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの中心ストレッチが、5’ RKAUGGGAKUAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’または5’ RKAUGGGAKAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’のヌクレオチド配列からなり、
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの中心ストレッチが、5’ GRCRGCCGGVGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’または5’ GRCRGCCGGARGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’のヌクレオチド配列からなり、
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの中心ストレッチが、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの以下のストレッチ:
ボックスA、ヌクレオチドの連結ストレッチおよびボックスB;または
ボックスB、ヌクレオチドの連結ストレッチおよびボックスA
からなり、ボックスAが、5’ WAAAGUWGAR 3’のヌクレオチド配列からなり、ヌクレオチドの連結ストレッチが、10〜18ヌクレオチドからなり、ボックスBが、5’ RGMGUGWKAGUKC 3’のヌクレオチド配列からなる、
L−核酸。
【請求項2】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが5〜8ヌクレオチドからなり
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが5〜8ヌクレオチドからなる、請求項に記載の核酸。
【請求項3】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチと前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチとが互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成される、請求項に記載の核酸。
【請求項4】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列からなり前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項5】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列からなり前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ GVBVBX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在である、請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項6】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列からなり前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列からなり前記B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
は不在であり、Xは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項8】
前記B型ヘプシジン結合核酸が、配列番号115〜119、配列番号121、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号151、配列番号152、配列番号175または配列番号176に記載の核酸配列のいずれか1つからなる、請求項のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項9】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが4〜7ヌクレオチドからなり
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが4〜7ヌクレオチドからなる、請求項に記載の核酸。
【請求項10】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチと前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチとが互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成される、請求項に記載の核酸。
【請求項11】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列からなり前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在である、請求項1、9および10のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項12】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列からなり前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在である、請求項1および911のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項13】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列からなり前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項1および911のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項14】
前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列からなり前記C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、Xは不在であり、Xは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項1および911のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項15】
前記C型ヘプシジン結合核酸が、配列番号122〜126、配列番号154、配列番号159、配列番号163または配列番号174に記載の核酸配列のいずれか1つからなる、請求項1および914のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項16】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの連結ストレッチが、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチと、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチと、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチとからなる、請求項に記載の核酸。
【請求項17】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチおよび前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチがそれぞれ互いに独立して3〜6ヌクレオチドからなる、請求項16に記載の核酸。
【請求項18】
a)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ GGAC 3’、5’ GGAU 3’および5’ GGA 3’の群から選択されるヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ GUCC 3’のヌクレオチド配列からなり、または
b)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ GCAG 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ CUGC 3’のヌクレオチド配列からなり、または
c)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ GGGC 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ GCCC 3’のヌクレオチド配列からなり、または
d)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ GAC 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ GUC 3’のヌクレオチド配列からなり、または
e)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ ACUUGU 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ GCAAGU 3’および5’ GCAAGC 3’の群から選択されるヌクレオチド配列からなり、または
f)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ UCCAG 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ CUGGA 3’のヌクレオチド配列からなり、または
g)前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の連結サブストレッチが、5’ GAC 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第3の連結サブストレッチが、5’ GUC 3’のヌクレオチド配列からなる、請求項16または17に記載の核酸。
【請求項19】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の連結サブストレッチが3〜5ヌクレオチドからなる、請求項1618のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項20】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の連結サブストレッチが、5’ VBAAW 3’、5’ AAUW 3’および5’ NBW 3’の群から選択されるヌクレオチド配列からなる、請求項1619のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項21】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが4〜7ヌクレオチドからなり
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが4〜7ヌクレオチドからなる、請求項1および1620のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項22】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチと、前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチとが互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成され、請求項21に記載の核酸。
【請求項23】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、XはGまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在である、請求項1および1622のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項24】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
b)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
c)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在である、請求項1および1623のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項25】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
a)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項1および1623のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項26】
前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1の末端ストレッチが、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列からなり前記A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第2の末端ストレッチが、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列からなり
式中、
は不在であり、Xは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である、請求項1および1623のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項27】
前記A型ヘプシジン結合核酸が、配列番号29、配列番号33、配列番号34、配列番号39から41、配列番号43、配列番号46、配列番号137から141または配列番号173に記載の核酸配列のいずれか1つからなる、請求項1および1626のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項28】
配列番号127〜131に記載の核酸配列のいずれか1つからなる、ヘプシジンと結合することができる核酸。
【請求項29】
ヘプシジンのアンタゴニストである、請求項1〜28のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項30】
核酸が修飾基を含み、修飾基を含む核酸分子の生物からの排出速度が、修飾基を含まない核酸と比較して低下する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項31】
核酸が修飾基を含み、修飾基を含む核酸分子の生物における保持時間が、修飾基を含まない核酸と比較して増大する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項32】
修飾基がリンカーを介して核酸と結合している、請求項30または31に記載の核酸。
【請求項33】
核酸のヌクレオチドまたは核酸を形成するヌクレオチドがL−ヌクレオチドである、請求項1〜32のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項34】
疾患の治療および/または予防方法で使用するための、請求項1〜33のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸、および、さらなる構成要素を含む医薬組成物であって、さらなる構成要素が、薬学的に許容される賦形剤、薬学的に許容される担体および薬学的活性作用物質を含む群から選択される医薬組成物。
【請求項36】
薬剤を製造するための、請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸の使用。
【請求項37】
診断を製造するための、請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸の使用。
【請求項38】
薬剤が、貧血、低鉄血症、異食症、ヘプシジンレベルの上昇を伴う状態、鉄レベルの上昇を伴う状態もしくは鉄過剰を伴う状態の治療および/または予防用の薬剤である、請求項36に記載の使用。
【請求項39】
薬剤が、さらなる薬剤もしくは治療方法に使用される、または、さらなる薬剤もしくは治療方法と組み合わせて使用するための薬剤であり、前記薬剤または治療方法が、さらなる薬学的活性化合物または当該さらなる薬学的活性化合物の投与を含み、前記さらなる薬学的活性化合物が、鉄補給剤、ビタミン補給剤、赤血球産生刺激物質、抗生物質、抗炎症性生物製剤、免疫系の抑制物質、抗血栓溶解剤、スタチン、昇圧剤および変力性化合物の群から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項40】
求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸およびヘプシジンを含む複合体。
【請求項41】
ヘプシジンを検出するための、請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸の使用。
【請求項42】
ヘプシジンのアンタゴニストまたはアゴニストをスクリーニングする方法であって、
ヘプシジンの候補アンタゴニストおよび/または候補アゴニストを提供するステップと、
請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸を提供するステップと、
ヘプシジンのアンタゴニストおよび/またはアゴニストの存在下でシグナルをもたらす試験系を提供するステップと、
前記候補アンタゴニストがヘプシジンのアンタゴニストであるかどうか、および/または前記候補アゴニストがヘプシジンのアゴニストであるかどうかを決定するステップと
を含む方法。
【請求項43】
請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸を含む、ヘプシジンを検出するためのキット。
【請求項44】
試料中の請求項1〜34のいずれか一項に記載の核酸を検出する方法であって、
a)配列番号148または176に記載のヌクレオチド配列からなる核酸を含有する試料を提供するステップと、
b)配列番号177のヌクレオチド配列からなる捕捉プローブおよび配列番号178のヌクレオチド配列からなる検出プローブを提供するステップと
c)捕捉プローブおよび検出プローブを、配列番号148または176に記載のヌクレオチド配列からなる核酸またはその部分と同時にまたは任意の順番で順次に反応させるステップと、
)捕捉プローブがステップa)で提供された配列番号148または176に記載のヌクレオチド配列からなる核酸による核酸とハイブリダイズするか否かを検出するステップと、
e)配列番号148または176に記載のヌクレオチド配列からなる核酸および捕捉プローブおよび検出プローブからなる、ステップc)で形成された複合体を検出するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘプシジンと結合する核酸、ならびに薬剤、診断薬および検出薬をそれぞれ製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘプシジンの一次構造(HEPC−HUMAN、SwissProt登録P81172)は2000年に決定された(Krause、2000)。ヘプシジンは、抗微生物ペプチドを調べている別のグループにより独立して発見された(Park、2001)。このタンパク質の同義語は、肝臓で発現される抗微生物ペプチド(略語:LEAP−1)および推定上の肝腫瘍退縮因子(略語:PLTR)である。ヘプシジンはシステインに富むカチオン性ペプチドであり、25アミノ酸からなり、分子量は2,790ダルトンとなる。8つのシステインが4つのジスルフィド結合を形成し、この分子に安定した堅い構造を付与する。
【0003】
ヘプシジンの三次構造がNMR分析によって決定された(Hunter、2002)。このタンパク質は、ヘアピンの曲がり目で認められる珍しい近接したジスルフィド架橋を有するねじれたベータシートからなる(Hunter、2002)。
【0004】
異なる哺乳動物種由来のヘプシジンのアミノ酸配列は一般に進化の過程でよく保存されている。ヒトヘプシジンは、以下のもの由来のヘプシジンと同一のアミノ酸を、以下の百分率で有する。
− Macaca mulatta(アカゲザル) 100%
− Macaca fascularis(カニクイザル) 100%
− Sus scrofa(ブタ) 84%
− Mus musculus(マウス) 76%
− Rattus norvegicus(ラット) 68%。
【0005】
25アミノ酸からなる生物活性ヘプシジン(ヘプシジン−25とも称される)に加えて、20および22アミノ酸を有する2つの切断型不活性変異体であるヘプシジン−20およびヘプシジン22が同定された(Rivera、2005)。これらのペプチドは全て、ヒトおよびラットにおける84アミノ酸のプレプロペプチド、ならびにマウスにおける83アミノ酸のプレプロペプチドに基づいて生じる(Pigeon、2001)。84アミノ酸のヘプシジンプレプロペプチドは、除去される典型的な小胞体標的化24アミノ酸シグナルペプチドと、プロホルモンコンバターゼであるフューリンのコンセンサス切断部位とを含有する(Valore、2008)。これらのプロセシングステップで、血液および尿中に認められる25アミノ酸のペプチドホルモンが生じる。
【0006】
ヘプシジンは、鉄の恒常性を制御する鍵となるシグナルである。ヘプシジン欠損およびヘプシジン過剰発現マウスモデルで示されるように、ヒトヘプシジンのレベルが高いと血清鉄レベルが低下するが、レベルが低いと血清鉄レベルが増大する(Nicolas、2001;Nicolas、2002;Nicolas、2003)。さらに、ヘプシジン活性が欠如するヘプシジン遺伝子の突然変異は、若年性ヘモクロマトーシスという重度の鉄過剰疾患を伴う(Roetto、2003)。ヘプシジンの腹腔内注射後、用量依存性および長期持続性の血清鉄の低下が観察された(Rivera、2005)。
【0007】
鉄は、全ての生物の成長および発生に必要な必須元素である。哺乳動物における鉄含量は、鉄吸収、鉄再利用、および鉄が貯蔵されている細胞からの鉄の放出を調節することによって制御される。鉄は、主に十二指腸および上部空腸において腸細胞により吸収される。
【0008】
フィードバック機構は、鉄が欠乏している個体における鉄吸着を亢進し、鉄過剰の個体における鉄吸収を低下させる。この機構の鍵となる化合物は鉄輸送体のフェロポーチンであり、これはヘプシジン受容体としても働く(Abboud、2000;Donovan、2000;McKie、2000)。フェロポーチンは、マウス、ラット、およびヒトの間で90%のアミノ酸配列の同一性を有する571アミノ酸のタンパク質であり、鉄の放出を調節する(McKie、2000)。この主要な鉄輸送タンパク質は、胎盤の栄養膜合胞体細胞および腸細胞の基底膜、ならびにマクロファージおよび肝細胞の細胞膜上に位置する。
【0009】
ヘプシジンは、上記で述べた種類の細胞において発現しているフェロポーチンと結合することにより、これらの異なる種類の細胞からの鉄放出を阻害し、そのリン酸化、内部移行、ユビキチン化およびリソソーム分解を誘導し、それによってフェロポーチンが仲介する血中への鉄の放出を低下させる(Nemeth、2004;De Domenico、2007)。血漿鉄がヘモグロビン合成に消費され続けると、健常な対象において血漿鉄レベルは低下し、ヘプシジン産生は減少する。
【0010】
急性および慢性の全身性炎症の状況では、サイトカインはヘプシジン産生を誘導する。ヘプシジン遺伝子発現は、脊椎動物の自然免疫系の急性期応答を誘導する感染などの炎症性刺激後に著しく増大することが観察されている。マウスでは、ヘプシジン遺伝子発現は、リポ多糖(Constante、2006)、テルペンチン(Nemeth、2004)およびフロイント完全アジュバント(Frazer、2004)、ならびにアデノウイルス感染によって上方制御されることが示された。ヒトでは、ヘプシジン発現は、炎症性サイトカインのインターロイキン−6、およびLPSによって誘導される(Nemeth、2004)。細菌、真菌およびウイルス感染を含む慢性炎症性疾患の患者において、ヘプシジン発現と炎症の貧血との強い相関も認められた。これらの状態すべてにおいて、ヘプシジンの濃度の増大は、マクロファージ、肝臓の貯蔵および十二指腸から血漿中への鉄流出を阻害する。低鉄血症が発症し、赤血球産生では鉄が制限されるようになり、慢性炎症の状態の下で貧血が生じる(Weiss、2005;Weiss、2008;Andrews、2008)。
【発明の概要】
【0011】
本発明の根底にある課題は、ヘプシジンと特異的に相互作用する手段を提供することである。より具体的には、本発明の根底にある課題は、ヘプシジンと特異的に相互作用する核酸に基づく手段を提供することである。
【0012】
本発明の根底にあるさらなる課題は、ヒトまたは非ヒト疾患の治療用の薬剤を製造するための手段を提供することであり、その疾患は、ヘプシジンがその疾患の発症機序に直接または間接的に関与することによって特徴付けられる。
【0013】
本発明の根底にあるさらなる課題は、疾患の治療用の診断薬を製造するための手段を提供することであり、その疾患は、ヘプシジンがその疾患の発症機序に直接または間接的に関与することによって特徴付けられる。
【0014】
本発明の根底にあるこれらおよび他の課題は、添付した独立請求項の内容によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項から得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の根底にある課題は、第1の態様の第1の実施形態でもある第1の態様において、ヘプシジンと結合することができる核酸によって解決される。
【0016】
第1の態様の第1の実施形態でもある第1の態様の第2の実施形態では、核酸はヘプシジンのアンタゴニストである。
【0017】
第1の態様の第1および第2の実施形態でもある第1の態様の第3の実施形態では、核酸はヘプシジン−フェロポーチン系の阻害物質である。
【0018】
第1の態様の第1、第2および第3の実施形態でもある第1の態様の第4の実施形態では、核酸は、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチと、ヌクレオチドの中心ストレッチと、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチとを含み、ヌクレオチドの中心ストレッチは32〜40ヌクレオチド、好ましくは32〜35ヌクレオチドを含む。
【0019】
第1の態様の第1および第2の実施形態でもある第1の態様の第5の実施形態では、核酸は、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチと、ヌクレオチドの中心ストレッチと、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチとを含み、ヌクレオチドの中心ストレッチは32〜40ヌクレオチド、好ましくは32〜35ヌクレオチドを含む。
【0020】
第1の態様の第4および第5の実施形態でもある第1の態様の第6の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチはヘプシジンとの結合に不可欠である。
【0021】
第1の態様の第4、第5および第6の実施形態でもある第1の態様の第7の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチは、5’ RKAUGGGAKUAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’または5’ RKAUGGGAKAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0022】
第1の態様の第4から第7の実施形態でもある第1の態様の第8の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチは、5’ RKAUGGGAKUAAGUAAAUGAGGRGUUGGAGGAAR 3’、好ましくは5’ GUAUGGGAUUAAGUAAAUGAGGAGUUGGAGGAAG 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
第1の態様の第7および第8の実施形態でもある第1の態様の第9の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチと、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチとは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成され、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは5〜8ヌクレオチドを含み、
ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは5〜8ヌクレオチドを含む。
【0024】
第1の態様の第9の実施形態でもある第1の態様の第10の実施形態では、二本鎖構造は5〜8塩基対からなる。
【0025】
第1の態様の第7から第10の実施形態、好ましくは第1の態様の第8から第10の実施形態でもある第1の態様の第11の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在である。
【0026】
第1の態様の第7から第11の実施形態でもある第1の態様の第12の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GVBVBX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在である。
【0027】
第1の態様の第7から第12の実施形態でもある第1の態様の第13の実施形態では、
a)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGCGUGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGUGCGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
b)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGCGUGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCAUGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
c)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGUGUGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GAUGCGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
d)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGUGUGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCAUGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
e)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGCGUGCC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGUGCGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
f)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGCGCGCC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCGCGCU 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0028】
第1の態様の第7から第10の実施形態、好ましくは第8から第10の実施形態でもある第1の態様の第14の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0029】
第1の態様の第7から第12および第14の実施形態でもある第1の態様の第15の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSBC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GVBVYX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
は不在であり、Xは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0030】
第1の態様の第15の実施形態でもある第1の態様の第16の実施形態では、
a)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCGCGC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GCGCGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
b)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GGUGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCAUC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
c)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GGCGUC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCGCC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
d)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCGCC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GGCGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
e)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GGCGC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ GCGCC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0031】
第1の態様の第7から第16の実施形態でもある第1の態様の第17の実施形態では、核酸は、配列番号115〜119、配列番号121、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号151、配列番号152、配列番号175または配列番号176のいずれか1つによる核酸配列を含む。
【0032】
第1の態様の第4から第6の実施形態でもある第1の態様の第18の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチは、5’ GRCRGCCGGVGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’または5’ GRCRGCCGGARGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0033】
第1の態様の第4から第6および第18の実施形態でもある第1の態様の第19の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチは、5’ GRCRGCCGGGGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’好ましくは5’ GACAGCCGGGGGACACCAUAUACAGACUACGAUA 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0034】
第1の態様の第18および第19の実施形態でもある第1の態様の第20の実施形態では、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチと、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチとは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成され、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは4〜7ヌクレオチドを含み、
ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは4〜7ヌクレオチドを含む。
【0035】
第1の態様の第20の実施形態でもある第1の態様の第21の実施形態では、二本鎖構造は4〜7塩基対からなる。
【0036】
第1の態様の第18から第21の実施形態でもある第1の態様の第22の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在である。
【0037】
第1の態様の第18から第22の実施形態、好ましくは第1の態様の第19から第22の実施形態でもある第1の態様の第23の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在である。
【0038】
第1の態様の第18から第23の実施形態でもある第1の態様の第24の実施形態では、
a)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGGCUCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGGGCCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
b)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGGCCCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGGGCCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
c)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGGCUUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGAGCCU 3’のヌクレオチド配列を含み、または
d)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ AGACUUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGAGUCU 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0039】
第1の態様の第18から第22の実施形態、好ましくは第1の態様の第19から第22の実施形態でもある第1の態様の第25の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0040】
第1の態様の第18から第22および第25の実施形態でもある第1の態様の第26の実施形態では、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GGCUCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGGGCC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0041】
第1の態様の第18から第22の実施形態でもある第1の態様の第27の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XSBSN 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ NSVSX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、Xは不在であり、Xは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0042】
第1の態様の第18から第22および第27の実施形態でもある第1の態様の第28の実施形態では、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GGCCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGGCC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGCGC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0043】
第1の態様の第1から第6および第18から第28の実施形態でもある第1の態様の第29の実施形態では、核酸は、配列番号122〜126、配列番号154、配列番号159、配列番号163または配列番号174のいずれか1つによる核酸配列を含む。
【0044】
第1の態様の第4から第6の実施形態でもある第1の態様の第30の実施形態では、ヌクレオチドの中心ストレッチは、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの以下のストレッチ:ボックスA、ヌクレオチドの連結ストレッチおよびボックスBを含み;あるいはヌクレオチドの中心ストレッチは、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの以下のストレッチ:ボックスB、ヌクレオチドの連結ストレッチおよびボックスAを含み、ボックスAは、5’ WAAAGUWGAR 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの連結ストレッチは10〜18ヌクレオチドを含み、ボックスBは、5’ RGMGUGWKAGUKC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0045】
第1の態様の第30の実施形態でもある第1の態様の第31の実施形態では、ボックスAは、5’ UAAAGUAGAG 3’、5’ AAAAGUAGAA 3’、5’ AAAAGUUGAA 3’および5’ GGGAUAUAGUGC 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含み、好ましくは、ボックスAは5’ UAAAGUAGAG 3’を含む。
【0046】
第1の態様の第30から第31の実施形態でもある第1の態様の第32の実施形態では、ボックスBは、5’ GGCGUGAUAGUGC 3’、5’ GGAGUGUUAGUUC 3’、5’ GGCGUGAGAGUGC 3’、5’ AGCGUGAUAGUGC 3’および5’ GGCGUGUUAGUGC 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含み、好ましくはボックスBは、5’ GGCGUGAUAGUGC 3’を含む。
【0047】
第1の態様の第30から第32の実施形態でもある第1の態様の第33の実施形態では、ヌクレオチドの連結ストレッチは、5’→3’の方向に、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチと、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチと、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチとを含み、好ましくはヌクレオチドの第1の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成される。
【0048】
第1の態様の第33の実施形態でもある第1の態様の第34の実施形態では、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチはそれぞれ互いに独立して3〜6ヌクレオチドを含む。
【0049】
第1の態様の第32から第34の実施形態でもある第1の態様の第35の実施形態では、二本鎖構造は3〜6塩基対からなる。
【0050】
第1の態様の第32から第35の実施形態でもある第1の態様の第36の実施形態では、
a)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ GGAC 3’、5’ GGAU 3’および5’ GGA 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ GUCC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
b)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ GCAG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ CUGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
c)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ GGGC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ GCCC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
d)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ GAC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ GUC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
e)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ ACUUGU 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ GCAAGU 3’および5’ GCAAGC 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含み、または
f)ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ UCCAG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ CUGGA 3’のヌクレオチド配列を含み、
好ましくは、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチは、5’ GAC 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは、5’ GUC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0051】
第1の態様の第33から第36の実施形態でもある第1の態様の第37の実施形態では、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチは3〜5ヌクレオチドを含む。
【0052】
第1の態様の第33から第37の実施形態でもある第1の態様の第38の実施形態では、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチは、5’ VBAAW 3’、5’ AAUW 3’および5’ NBW 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0053】
第1の態様の第38の実施形態でもある第1の態様の第39の実施形態では、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチは、5’ VBAAW 3’のヌクレオチド配列、好ましくは5’ CGAAA 3’、5’ GCAAU 3’、5’ GUAAU 3’および5’ AUAAU 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0054】
第1の態様の第38の実施形態でもある第1の態様の第40の実施形態では、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチは、5’ AAUW 3’のヌクレオチド配列、好ましくは、5’ AAUU 3’または5’ AAUA 3’、より好ましくは5’ AAUA 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0055】
第1の態様の第38の実施形態でもある第1の態様の第41の実施形態では、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチは、5’ NBW 3’のヌクレオチド配列、好ましくは、5’ CCA 3’、5’ CUA 3’、5’ UCA 3’、5’ ACA 3’、5’ GUU 3’、5’ UGA 3’および5’ GUA 3’、より好ましくは5’ CCA 3’、5’ CUA 3’、5’ UCA 3’、5’ ACA 3’および5’ GUU 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0056】
第1の態様の第30から第41の実施形態でもある第1の態様の第42の実施形態では、ヌクレオチドの連結ストレッチは、5’ GGACBYAGUCC 3’、5’ GGAUACAGUCC 3’、5’ GCAGGYAAUCUGC 3’、5’ GACAAUWGUC 3’、5’ ACUUGUCGAAAGCAAGYU 3’、5’ UCCAGGUUCUGGA 3’、5’ GGGCUGAGCCC 3’、5’ GCAGAUAAUCUGC 3’および5’ GGACCAGUCC 3’の群から選択される、好ましくは5’ GGACCCAGUCC 3’、5’ GGACCUAGUCC 3’、5’ GGACUCAGUCC 3’、5’ GCAGGUAAUCUGC 3’、5’ GCAGGCAAUCUGC 3’、5’ GACAAUUGUC 3’および5’ GACAAUAGUC 3’の群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0057】
第1の態様の第30から第42の実施形態でもある第1の態様の第43の実施形態では、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチとヌクレオチドの第2の末端ストレッチとは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションの際に二本鎖構造が形成され、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは4〜7ヌクレオチドを含み、
ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは4〜7ヌクレオチドを含む。
【0058】
第1の態様の第43の実施形態でもある第1の態様の第44の実施形態では、二本鎖構造は4〜7塩基対からなる。
【0059】
第1の態様の第30から第44の実施形態でもある第1の態様の第45の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、XはGまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在である。
【0060】
第1の態様の第30から第44の実施形態でもある第1の態様の第46の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
b)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
c)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在である。
【0061】
第1の態様の第30から第46の実施形態、好ましくは第1の態様の第46の実施形態でもある第1の態様の第47の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCACUCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGAGUGC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0062】
第1の態様の第30から第45の実施形態でもある第1の態様の第48の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
a)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
b)Xは不在であり、Xは不在であり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
c)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0063】
第1の態様の第30から第45および第48の実施形態でもある第1の態様の第49の実施形態では、
a)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCUGUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CACAGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
b)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ CGUGUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CACACG 3’のヌクレオチド配列を含み、または
c)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ CGUGCU 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ AGCACG 3’のヌクレオチド配列を含み、または
d)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ CGCGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGCGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、または
e)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCCGUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CACGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、または
f)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCGGUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CACCGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
g)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCUGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGCAGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
h)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCUGGG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CCCAGC 3’のヌクレオチド配列を含み、または
i)ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ GCGGCG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CGCCGC 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0064】
第1の態様の第30から第45の実施形態でもある第1の態様の第50の実施形態では、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ XBKBK 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ MVVVX 3’のヌクレオチド配列を含み、
式中、
は不在であり、Xは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0065】
第1の態様の第30から第45および第50の実施形態でもある第1の態様の第51の実施形態では、
ヌクレオチドの第1の末端ストレッチは、5’ CGUG 3’のヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、5’ CACG 3’のヌクレオチド配列を含む。
【0066】
第1の態様の第1から第6の実施形態および第1の態様の第30から第11の実施形態でもある第1の態様の第52の実施形態では、核酸は、配列番号29、配列番号33、配列番号34、配列番号39から41、配列番号43、配列番号46、配列番号137から141または配列番号173のいずれか1つによる核酸配列を含む。
【0067】
第1の態様の第1から第6の実施形態でもある第1の態様の第53の実施形態では、核酸は、配列番号127から131のいずれか1つによる核酸配列を含む。
【0068】
第1の態様の第1から第53の実施形態でもある第1の態様の第54の実施形態では、核酸はヘプシジンと結合することができ、ヘプシジンはヒトヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22、ヒトヘプシジン−20、サルヘプシジン−25、サルヘプシジン−22、サルヘプシジン−20、好ましくはヒトヘプシジン−25である。
【0069】
第1の態様の第1から第54の実施形態、好ましくは第1の態様の第54の実施形態でもある第1の態様の第55の実施形態では、ヘプシジンは配列番号1によるアミノ酸配列を有する。
【0070】
第1の態様の第1から第55の実施形態でもある第1の態様の第56の実施形態では、核酸は修飾基を含み、修飾基を含む核酸分子の生物からの排出速度は、修飾基を含まない核酸と比較して低下する。
【0071】
第1の態様の第1から第55の実施形態でもある第1の態様の第57の実施形態では、核酸は修飾基を含み、修飾基を含む核酸分子の生物における保持時間は、修飾基を含まない核酸と比較して増大する。
【0072】
第1の態様の第56および第57の実施形態でもある第1の態様の第58の実施形態では、修飾基は生分解性および非生分解性修飾を含む群から選択され、好ましくは修飾基は直鎖ポリ(エチレン)グリコ−ル、分岐ポリ(エチレン)グリコール、ヒドロキシエチルデンプン、ペプチド、タンパク質、多糖、ステロール、ポリオキシプロピレン、ポリオキシアミデート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミンおよびポリエチレングリコ−ルを含む群から選択される。
【0073】
第1の態様の第58の実施形態でもある第1の態様の第59の実施形態では、修飾基は、直線状または分岐PEGからなるPEG部分であり、PEG部分の分子量は好ましくは約20,000〜約120,000Da、より好ましくは約30,000〜約80,000Da、最も好ましくは約40,000Daである。
【0074】
第1の態様の第58の実施形態でもある第1の態様の第60の実施形態では、修飾基はHES部分であり、好ましくはHES部分の分子量は約10,000〜約200,000Da、より好ましくは約30,000〜約170,000Da、最も好ましくは約150,000Daである。
【0075】
第1の態様の第56から第60の実施形態でもある第1の態様の第61の実施形態では、修飾基はリンカーを介して核酸と結合し、好ましくはリンカーは生分解性リンカーである。
【0076】
第1の態様の第56から第61の実施形態でもある第1の態様の第62の実施形態では、修飾基は核酸の5’末端ヌクレオチドおよび/もしくは3’末端ヌクレオチド、ならびに/または核酸の5’末端ヌクレオチドと核酸の3’末端ヌクレオチドとの間にある核酸のヌクレオチドと結合している。
【0077】
第1の態様の第56から第62の実施形態でもある第1の態様の第63の実施形態では、生物は動物またはヒトの身体、好ましくはヒトの身体である。
【0078】
第1の態様の第1から第63の実施形態でもある第1の態様の第64の実施形態では、核酸のヌクレオチドまたは核酸を形成するヌクレオチドはL−ヌクレオチドである。
【0079】
第1の態様の第1から第64の実施形態でもある第1の態様の第65の実施形態では、核酸はL−核酸である。
【0080】
第1の態様の第1から第65の実施形態でもある第1の態様の第66の実施形態では、核酸はヘプシジンと結合することができる少なくとも1つの結合部分を含み、そのような結合部分はL−ヌクレオチドからなる。
【0081】
第1の態様の第1から第66の実施形態でもある第1の態様の第67の実施形態では、核酸は、疾患の治療および/もしくは予防方法で使用するための核酸であり、またはその方法で使用するのに適している。
【0082】
本発明の根底にある問題は、第2の態様の第1の実施形態でもある第2の態様において、第1の態様の任意の実施形態による核酸、および任意選択でさらなる構成要素を含む医薬組成物であって、さらなる構成要素が、薬学的に許容される賦形剤、薬学的に許容される担体および薬学的活性作用物質を含む群から選択される医薬組成物によって解決される。
【0083】
第2の態様の第1の実施形態でもある第2の態様の第2の実施形態では、医薬組成物は、第1の態様の任意の実施形態による核酸および薬学的に許容される担体を含む。
【0084】
本発明の根底にある課題は、第3の態様の第1の実施形態でもある第3の態様において、薬剤を製造するための、第1の態様の任意の実施形態による核酸の使用によって解決される。
【0085】
第3の態様の第1の実施形態でもある第3の態様の第2の実施形態では、薬剤は、ヒト医学で使用するためまたは獣医学で使用するための薬剤である。
【0086】
本発明の根底にある課題は、第4の態様の第1の実施形態でもある第4の態様において、診断手段を製造するための、第1の態様の任意の実施形態による核酸の使用によって解決される。
【0087】
第3の態様の第1および第2の実施形態でもある第3の態様の第3の実施形態では、薬剤は、貧血、低鉄血症、異食症、ヘプシジンレベルの上昇を伴う状態、鉄レベルの上昇を伴う状態または鉄過剰を伴う状態の治療および/または予防用の薬剤である。
【0088】
第3の態様の第3の実施形態でもある第3の態様の第4の実施形態では、貧血は、鉄芽球性貧血、低色素性小球性貧血、慢性疾患および/または障害によって引き起こされる貧血、炎症によって引き起こされる貧血、遺伝的障害によって引き起こされる貧血、急性感染によって引き起こされる貧血、鉄の代謝および/または恒常性の遺伝子の突然変異によって引き起こされる貧血、ならびにがん治療によって引き起こされる貧血からなる群から選択される。
【0089】
第3の態様の第4の実施形態でもある第3の態様の第5の実施形態では、慢性疾患および/または障害は、慢性炎症、がん、自己免疫疾患および/または障害、慢性感染、動脈硬化、アテローム動脈硬化、ならびに肝硬変の群から選択される。
【0090】
第3の態様の第5の実施形態でもある第3の態様の第6の実施形態では、慢性炎症は慢性腎臓疾患、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、骨関節炎、糖尿病、肥満、脳血管疾患、うっ血性心疾患、うっ血性心不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、膵炎および血管炎の群から選択され、好ましくは慢性腎臓疾患は腎疾患、慢性腎不全および慢性腎臓不全の群から選択され、かつ慢性腎臓疾患は腎臓透析もしくは腎臓移植によって引き起こされる。
【0091】
第3の態様の第5の実施形態でもある第3の態様の第7の実施形態では、自己免疫疾患および/または障害は、関節リウマチ、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデスおよびクローン病の群から選択される。
【0092】
第3の態様の第5の実施形態でもある第3の態様の第8の実施形態では、慢性感染はウイルス感染、ウイルス疾患、細菌感染および真菌感染の群から選択され、好ましくはウイルス感染は肝炎およびHIV感染を含み、細菌感染はH.pyelori感染を含む。
【0093】
第3の態様の第1から第4の実施形態でもある第3の態様の第9の実施形態では、炎症によって引き起こされる貧血は正球性から小球性であり、かつ/または低い網状赤血球産生指数および/もしくは炎症のマーカーの増大によって特徴付けられる。
【0094】
第3の態様の第4の実施形態でもある第3の態様の第10の実施形態では、遺伝的障害は、キャッスルマン病、シュニッツラー症候群、鉄不応性鉄欠乏性貧血(マトリプターゼ−2(TMPRSS6)突然変異、無トランスフェリン症、先天性赤血球異形成貧血または異常ヘモグロビン症である。
【0095】
第3の態様の第4の実施形態でもある第3の態様の第11の実施形態では、急性感染は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染の群から選択され、好ましくは敗血症である。
【0096】
第3の態様の第5の実施形態でもある第3の態様の第12の実施形態では、がんは、肝細胞癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頚部がん、乳がん、結腸直腸がん、非骨髄性がん、腎細胞癌腫、非小細胞肺癌腫瘍および脳腫瘍の群から選択される。
【0097】
第3の態様の第3の実施形態でもある第3の態様の第13の実施形態では、薬剤は、鉄レベルの上昇を伴う状態の治療用の薬剤であり、その状態は、運動失調症、フリードライヒ運動失調症、加齢性黄斑変性症、加齢性白内障、加齢性網膜疾患および神経変性疾患の群から選択され、そのような神経変性疾患は、好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、不穏下肢症候群およびハンチントン病を含む群から選択される。
【0098】
第3の態様の第3の実施形態でもある第3の態様の第14の実施形態では、薬剤は、ヘプシジン血漿レベルが上昇しない鉄過剰の治療用の薬剤である。
【0099】
第3の態様の第14の実施形態でもある第3の態様の第15の実施形態では、鉄過剰は、輸血性鉄過剰、鉄中毒、肺鉄血症、骨減少症、インスリン耐性、アフリカ型鉄過剰、ハレルフォルデンスパッツ病、高フェリチン血症、セルロプラスミン欠乏、新生児ヘモクロマトーシスならびにサラセミア、アルファサラセミア、中間型サラセミア、鎌状赤血球症および骨髄異形成症候群を含む赤血球障害の群から選択される。
【0100】
第3の態様の第12から第15の実施形態でもある第3の態様の第16の実施形態では、薬剤は、鉄キレート化合物と組み合わせて使用される。
【0101】
第3の態様の第16の実施形態でもある第3の態様の第17の実施形態では、鉄キレート化合物は、クルクミン、デフェロキサミン、デフェラシロクスおよびデフェリプロンの群から選択される。
【0102】
第3の態様の第1の実施形態でもある第3の態様の第18の実施形態では、薬剤は、さらなる薬剤もしくは治療方法に使用される、またはそれと組み合わせて使用するための薬剤であり、そのような薬剤または治療方法は、さらなる薬学的活性化合物またはそのようなさらなる薬学的活性化合物の投与を含み、そのようなさらなる薬学的活性化合物は、鉄補給剤、ビタミン補給剤、赤血球産生刺激物質、抗生物質、抗炎症性生物製剤、免疫系の抑制物質、抗血栓溶解剤、スタチン、昇圧剤および変力性化合物の群から選択される。
【0103】
本発明の根底にある問題は、第5の態様の第1の実施形態でもある第5の態様において、好ましくは結晶複合体である、第1の態様の任意の実施形態による核酸およびヘプシジンを含む複合体によって解決される。
【0104】
第5の態様の第1の実施形態でもある第5の態様の第2の実施形態では、ヘプシジンはヒトヘプシジン、サルヘプシジンを含む群から選択され、より好ましくはヘプシジンはヒトヘプシジンである。
【0105】
本発明の根底にある問題は、第6の態様の第1の実施形態でもある第6の態様において、ヘプシジンを検出するための、第1の態様の任意の実施形態による核酸の使用によって解決される。
【0106】
第6の態様の第1の実施形態でもある第6の態様の第2の実施形態では、ヘプシジンはヒトヘプシジン、サルヘプシジンを含む群から選択され、より好ましくはヘプシジンはヒトヘプシジンである。
【0107】
本発明の根底にある問題は、第7の態様の第1の実施形態でもある第7の態様において、ヘプシジンのアンタゴニストまたはアゴニストをスクリーニングする方法であって、
ヘプシジンの候補アンタゴニストおよび/または候補アゴニストを提供するステップと、
第1の態様の任意の実施形態による核酸を提供するステップと、
ヘプシジンのアンタゴニストおよび/またはアゴニストの存在下でシグナルをもたらす試験系を提供するステップと、
候補アンタゴニストがヘプシジンのアンタゴニストであるかどうか、および/または候補アゴニストがヘプシジンのアゴニストであるかどうかを決定するステップと
を含む方法によって解決される。
【0108】
第7の態様の第1の実施形態でもある第7の態様の第2の実施形態では、ヘプシジンはヒトヘプシジン、サルヘプシジンを含む群から選択され、より好ましくはヘプシジンはヒトヘプシジンである。
【0109】
本発明の根底にある問題は、第8の態様の第1の実施形態でもある第8の態様において、ヘプシジンを検出するためのキットであって、第1の態様の任意の実施形態による核酸を含み、好ましくはヘプシジンはヒトヘプシジンであるキットによって解決される。
【0110】
本発明の根底にある問題は、第9の態様の第1の実施形態でもある第9の態様において、試料中の第1の態様の任意の実施形態による核酸を検出する方法であって、
a)本発明による核酸を含有する試料を提供するステップと、
b)捕捉プローブおよび検出プローブを提供するステップと、ここで、捕捉プローブが第1の態様の任意の実施形態による核酸の第1の部分と少なくとも部分的に相補的であるか、検出プローブが第1の態様の任意の実施形態による核酸の第2の部分と少なくとも部分的に相補的であるか、捕捉プローブが第1の態様の任意の実施形態による核酸の第2の部分と少なくとも部分的に相補的であり、検出プローブが第1の態様の任意の実施形態による核酸の第1の部分と少なくとも部分的に相補的であり、
c)捕捉プローブおよび検出プローブを、第1の態様の任意の実施形態による核酸またはその部分と同時にまたは任意の順番で順次に反応させるステップと、
d)任意選択的に、捕捉プローブがステップa)で提供された第1の態様の任意の実施形態による核酸による核酸とハイブリダイズするか否かを検出するステップと、
e)第1の態様の任意の実施形態による核酸および捕捉プローブおよび検出プローブからなる、ステップc)で形成された複合体を検出するステップと
を含む方法によって解決される。
【0111】
第9の態様の第1の実施形態でもある第9の態様の第2の実施形態では、検出プローブは検出手段を含み、かつ/または捕捉プローブを支持体、好ましくは固体支持体に固定化することができる。
【0112】
第9の態様の第1および第2の実施形態でもある第9の態様の第3の実施形態では、複合体の一部でないいかなる検出プローブも反応から除去され、その結果ステップe)で複合体の一部である検出プローブだけが検出される。
【0113】
第9の態様の第1、第2および第3の実施形態でもある第9の態様の第4の実施形態では、ステップe)は、捕捉プローブおよび検出プローブは第1の態様の任意の実施形態による核酸またはその部分の存在下でハイブリダイズするとき、検出手段によって生じたシグナルと、前記核酸またはその部分の不在下でハイブリダイズするとき、検出手段によって生じたシグナルとを比較するステップを含む。
【0114】
本明細書に記載されている、本発明による核酸の特徴は、核酸が単独でまたは任意の組合せで使用される本発明の任意の態様において実現することができる。
【0115】
本発明に関連して、好ましくは、「試料を提供すること(providing a sample)」という用語は、ヒトまたは動物の身体の治療または診断方法と異なり、かつ、その方法を含まない。
【0116】
ヒトヘプシジン−25は、配列番号1に記載のアミノ酸配列および8.2のpIを有する塩基性タンパク質である。
【0117】
本発明は、ヘプシジンと高い親和性で特異的に結合する核酸を生成することが可能であるという驚くべき知見に基づいている。そのような核酸は、好ましくは、本明細書において本発明による核酸分子、本発明による核酸、本発明の核酸または本発明の核酸分子とも称される。
【0118】
ヒトヘプシジンに対する短い高親和性結合核酸を同定することができたという知見は、塩基性タンパク質を対象とするアプタマー、すなわち標的分子と結合するD−核酸の生成が、この種の標的が高いが非特異的なシグナル対ノイズ比を生じさせるため、一般に非常に困難であることをEatonら(1997)が観察したので、その限りにおいて驚くべきことである。この高いシグナル対ノイズ比は、ヒトヘプシジンなどの塩基性の標的に対する、核酸によって示される高く非特異的な親和性から生じる。
【0119】
特許請求の範囲および実施例1でより詳細な概略を述べるように、本発明者らは、驚くべきことに、そのほとんどが本明細書においてボックスとも称されるヌクレオチドのストレッチの観点から特徴付けることができるいくつかの異なるヒトヘプシジン結合核酸分子を同定することができた。種々のヒトヘプシジン結合核酸分子は、前記ボックスならびにいくつかの追加の構造的特徴および要素それぞれに基づいて、A型、B型およびC型ヘプシジン結合核酸に分類することができる。
【0120】
異なる型のヘプシジン結合核酸は、異なるヌクレオチドのストレッチを含む。したがって、異なる型のヘプシジン結合核酸は、異なるヘプシジンペプチドに対する異なる結合挙動を示す。実施例で実証されるように、本発明によるヘプシジン結合核酸は、ヒトヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22、ヒトヘプシジン−20、カニクイザルヘプシジン−25およびマーモセットヘプシジン−25と結合する。
【0121】
本明細書においてヘプシジンに言及するときはいつも、そうでないことを示さない場合にそのようなヘプシジンはヘプシジン−25であることが認められるはずである。
【0122】
2つ以上のストレッチまたはその(1つまたは複数の)部分を含む、本発明による核酸が、原理上、互いにハイブリダイズすることができることは、本発明の範囲内である。そのようなハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。特にインビトロおよび/またはインビボの条件下で、そのようなハイブリダイゼーションが起こることもあり、または起こらないこともあることが当業者によって認められるであろう。また、そのようなハイブリダイゼーションの場合、必ずしも、ハイブリダイゼーションが、少なくとも塩基対形成の規則に基づいて、二本鎖構造の形成が原理上起こり得る2つのストレッチの長さ全体にわたって起こるとは限らない。好ましくは本明細書において、二本鎖構造とは、核酸分子の2つ以上の別々の鎖または一本鎖の2つの空間的に分離したストレッチによって形成される核酸分子の一部分または構造であり、好ましくはワトソン−クリック塩基対形成の規則に従って塩基対を形成している少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の塩基対が存在する。フーグスティーン塩基対形成などの他の塩基対形成がそのような二本鎖構造中に存在し、またはそれを形成する可能性があることも当業者によって認められるであろう。2つのストレッチがハイブリダイズするという特徴が、好ましくは、そのようなハイブリダイゼーションが2つのストレッチの塩基相補性に起因して起こると想定されることを示唆することも認められるはずである。
【0123】
好ましい実施形態では、本明細書において配置という用語は、本明細書で開示されている核酸に関連して本明細書に記載されている構造的または機能的特徴または要素の順番または順序を意味する。
【0124】
本発明による核酸が、ヘプシジンと結合することができることが当業者によって認められるであろう。どんな理論にも拘泥するものではないが、ヘプシジン結合は、特許請求に係る核酸分子の三次元構造的特性または要素の組合せから生じると考えられ、その特性または要素は、そのような特性または要素を形成するヌクレオチドの一次配列の配向および折り畳みパターンによって生じる。そのような要素または特性は、形成しなければならない三次元構造に応じて変動の程度が様々であり得る種々の異なる個々の配列によって形成され得ることは明らかである。特許請求に係る核酸の全体的な結合の特徴は、最終的に特許請求に係る核酸とその標的、すなわちヘプシジンの相互作用をもたらす種々の要素および特性それぞれの相互影響から生じる。さらに、どんな理論にも拘泥するものではないが、B型およびC型ヘプシジン結合核酸に特徴的な中心ストレッチ、ならびにA型ヘプシジン結合核酸に特徴的な第1のストレッチのボックスAおよび第2のストレッチのボックスBは、特許請求に係る核酸とヘプシジンの結合の媒介にとって重要であると思われる。したがって、本発明による核酸は、ヘプシジンとの相互作用およびその検出に適している。また、本発明による核酸が、ヘプシジンに対するアンタゴニストであることも当業者によって認められるであろう。このため、本発明による核酸は、ヘプシジンに関連しまたはそれによって引き起こされる任意の疾患または状態の治療および予防それぞれに適している。そのような疾患および状態は、ヘプシジンが前記疾患および状態それぞれに関与しまたはそれに関連することを明らかにし、本発明による核酸の治療および診断的使用について科学的論拠をもたらす、参照により本明細書に組み込まれる従来技術から得ることができる。
【0125】
本発明による核酸が核酸分子であることは、本発明の範囲内である。その限りにおいて、核酸および核酸分子という用語は、そうでないことを示さない場合は同意語のように本明細書で使用される。本出願の一実施形態では、核酸、したがって核酸分子は、1つまたは複数の共有結合によって、核酸分子を形成している連続したヌクレオチドの全てが互いに連結しまたはつながっていることを特徴とする核酸分子を含む。より具体的には、そのようなヌクレオチドがそれぞれ、好ましくはホスホジエステル結合または他の結合により、2つの他のヌクレオチドと連結しまたはつながり、連続したヌクレオチドのストレッチを形成している。しかし、そのような配置では、2つの末端ヌクレオチド、すなわち好ましくは5’末端および3’末端にあるヌクレオチドは、そのような配置が直鎖状であり環状でない配置であり、したがって環状ではなく直鎖状の分子である条件下ではそれぞれ1つのヌクレオチドとしか連結しない。
【0126】
本出願の別の実施形態では、核酸、したがって核酸分子は連続したヌクレオチドの少なくとも2つの群を含み、連続したヌクレオチドの各群内で、各ヌクレオチドは、好ましくはホスホジエステル結合または他の結合により、2つの他のヌクレオチドと連結しまたはつながり、連続したヌクレオチドのストレッチを形成している。しかし、そのような配置では、前記連続したヌクレオチドの少なくとも2つの群それぞれの2つの末端ヌクレオチド、すなわち好ましくは5’末端および3’末端にあるヌクレオチドは、それぞれ1つのヌクレオチドとしか連結しない。しかし、そのような実施形態では、連続したヌクレオチドの2つの群は、共有結合により1つの群の1つのヌクレオチドともう1つのまたはその他の群の1つのヌクレオチドを連結する共有結合、好ましくは前記2つのヌクレオチドのうち一方の糖部分と前記2つのヌクレオチドまたはヌクレオシドのうち他方のリン部分との間で形成される共有結合により互いに連結しまたはつながることはない。しかし、代替の実施形態では、連続したヌクレオチドの2つの群は、共有結合により1つの群の1つのヌクレオチドともう1つのまたはその他の群の1つのヌクレオチドを連結する共有結合、好ましくは前記2つのヌクレオチドのうち一方の糖部分と前記2つのヌクレオチドまたはヌクレオシドのうち他方のリン部分との間で形成される共有結合により互いに連結しまたはつながっている。好ましくは、連続したヌクレオチドの少なくとも2つの群は、共有結合により連結していない。別の好ましい実施形態では、少なくとも2つの群は、ホスホジエステル結合と異なる共有結合により連結している。さらに別の実施形態では、少なくとも2つの群は、ホスホジエステル結合である共有結合により連結している。さらに、好ましくは、連続したヌクレオチドの2つの群は、共有結合により互いに連結しまたはつながり、共有結合は、連続したヌクレオチドの2つの群のうち1番目の3’末端にあるヌクレオチドと、連続したヌクレオチドの2つの群のうち2番目の5’末端にあるヌクレオチドとの間で形成され、または共有結合は、連続したヌクレオチドの2つの群のうち1番目の5’末端にあるヌクレオチドと、連続したヌクレオチドの2つの群のうち2番目の3’末端にあるヌクレオチドとの間で形成される。
【0127】
本発明による核酸は、本明細書で開示されている特定の配列と本質的に相同である核酸も含むものとする。実質的に相同という用語は、相同性が少なくとも75%、好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%または99%を超えるものであるように理解されるものとする。
【0128】
当業者に知られているように、2つの核酸分子間の相同性を決定することができる。より具体的には、配列比較アルゴリズムを使用して、指定されたプログラムパラメータに基づいて基準配列に対する(1つまたは複数の)試験配列のパーセント配列相同性を計算することができる。試験配列は、好ましくは、異なる核酸分子と相同であるといわれている、または相同であるかどうか、相同である場合はどの程度であるかを試験すべきである配列または核酸分子であり、そのような異なる核酸分子は基準配列とも称される。一実施形態では、基準配列は、本明細書に記載の核酸分子、より好ましくは配列番号29〜43、配列番号45〜48、配列番号110〜156、配列番号158〜176または配列番号179〜181のいずれか1つによる配列を有する核酸分子である。比較に最適な配列のアラインメントは、例えば、Smith&Waterman(Smith&Waterman、1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman&Wunsch(Needleman&Wunsch、1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson&Lipman(Pearson&Lipman、1988)の類似性の検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装系(Wisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)によって、または視覚的検査によって行うことができる。
【0129】
パーセント配列同一性の決定に適したアルゴリズムの一例は、基本的な局所アラインメント検索ツールで使用されるアルゴリズム(以下「BLAST」)であり、例えば、Altschulら(Altschulら、1990およびAltschulら、1997)を参照されたい。BLAST分析を行うソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(以後「NCBI」)を通じて公的に利用可能である。NCBIから利用可能であるソフトウェア、例えばBLASTN(ヌクレオチド配列用)およびBLASTP(アミノ酸配列用)を使用して配列同一性を決定する際に使用される初期設定パラメータは、McGinnisら(McGinnisら、2004)に記載されている。
【0130】
本発明の核酸またはこの(本)発明による核酸という用語は、どちらの用語も互換的に使用され、本明細書で開示されている核酸配列またはその部分を、好ましくは核酸または前記部分がヒトヘプシジンとの結合に関与する程度まで含む核酸も含むものとする。そのような核酸は、一実施形態では、本明細書に記載の核酸分子の1つ、またはその誘導体および/もしくは代謝物であり、そのような誘導体および/または代謝物は、好ましくは、本明細書に記載の核酸分子と比較して切断されている核酸である。切断は、本明細書で開示されている核酸の末端の一方または両方に関連し得る。また、切断は、核酸のヌクレオチドの内部配列にも関連し得、すなわち、5’および3’末端ヌクレオチドそれぞれの間にある(1つまたは複数の)ヌクレオチドに関連し得る。さらに、切断は、本明細書で開示されている核酸の配列からのわずか1つだけのヌクレオチドの欠失を含むものとする。切断は、(1つまたは複数の)本発明の核酸の複数のストレッチにも関連し得、そのストレッチはわずか1ヌクレオチドの長さでもよい。本発明による核酸の結合は、日常的な実験を使用して、または本明細書に記載の、好ましくは実施例の部において本明細書に記載の方法を使用もしくは採用することによって、当業者により決定することができる。
【0131】
本発明による核酸は、D−核酸でもよく、またはL−核酸でもよい。好ましくは、本発明の核酸はL−核酸である。さらに、核酸の1つもしくはいくつかの部分がD−核酸として存在し、または核酸の少なくとも1つもしくはいくつかの部分がL−核酸であることがあり得る。核酸の「部分」という用語は、わずか1つのヌクレオチドをも意味するものとする。したがって、特に好ましい実施形態では、本発明による核酸はL−ヌクレオチドからなり、少なくとも1つのD−ヌクレオチドを含む。そのようなD−ヌクレオチドは、好ましくは、本発明による核酸、好ましくは核酸の他の部分またはその標的、すなわちヘプシジンとの相互作用が関与するその部分を規定するストレッチとは異なる部分と結合している。好ましくは、そのようなD−ヌクレオチドは、ストレッチのいずれかの末端で、または本発明による任意の核酸の末端でそれぞれ結合している。さらなる好ましい実施形態では、そのようなD−ヌクレオチドは、好ましくはPEGやHESなどの修飾または修飾基を本発明による核酸と結合させるスペーサーまたはリンカーとして働くことができる。
【0132】
その(1つまたは複数の)核酸配列の観点から本明細書に記載の核酸分子その全体のうちのそれぞれおよびいずれかが、特定の(1つまたは複数の)ヌクレオチド配列に限定されることも、本発明の実施形態の範囲内である。言い換えると、「含んでいる(comprising)」または「含む(comprise(s))」という用語は、そのような実施形態において、含有している(containing)またはからなる(consisting of)の意味に解釈されるものとする。
【0133】
本発明による核酸が長い核酸の一部であり、この長い核酸がいくつかの部分を含み、少なくとも1つのそのような部分が本発明による核酸またはその部分であることも、本発明の範囲内である。これらの長い核酸の(1つまたは複数の)他の部分は、1つもしくはいくつかの(1つもしくは複数の)D−核酸でもよく、または1つもしくはいくつかの(1つもしくは複数の)L−核酸でもよい。本発明に関連して任意の組合せを使用することができる。単独のまたは一緒にまとめた、その全体または特定の組合せにおける、長い核酸のこれらの(1つまたは複数の)他の部分は、結合、好ましくはヘプシジンとの結合とは異なる機能を示し得る。1つのあり得る機能は、例えば固定化、架橋、検出または増幅などのために、他の分子との相互作用を可能にすることであり、そのような他の分子は、好ましくはヘプシジンと異なる。本発明のさらなる実施形態では、本発明による核酸は、個々のまたは組み合わせた部分として、本発明の核酸のいくつかを含む。本発明の核酸のいくつかを含むそのような核酸も、長い核酸という用語によって包含される。
【0134】
本明細書においてL−核酸またはL−核酸分子とは、L−ヌクレオチドからなる、好ましくは完全にL−ヌクレオチドからなる核酸または核酸分子である。
【0135】
本明細書においてD−核酸またはD−核酸分子とは、D−ヌクレオチドからなる、好ましくは完全にD−ヌクレオチドからなる核酸または核酸分子である。
【0136】
また、特に記載がない限り、任意のヌクレオチド配列は、本明細書において5’→3’の方向で記載されている。
【0137】
好ましくは本明細書において、ヌクレオチドの任意の位置は、配列、ストレッチまたはサブストレッチの5’末端に対して決定または言及される。したがって、2番目のヌクレオチドは、配列、ストレッチおよびサブストレッチそれぞれの5’末端からカウントして2番目のヌクレオチドである。また、それによれば、最後から2番目のヌクレオチドは、配列、ストレッチおよびサブストレッチそれぞれの3’末端からカウントして2番目のヌクレオチドである。
【0138】
本発明の核酸が、D−ヌクレオチド、L−ヌクレオチドまたは例えばランダムな組合せもしくは少なくとも1つのL−ヌクレオチドおよび少なくとも1つのD−核酸からなるストレッチの規定された配列である両方の組合せからなるかどうかに関係なく、核酸は、(1つまたは複数の)デオキシリボヌクレオチド、(1つまたは複数の)リボヌクレオチドまたはその組合せからなっていてもよい。
【0139】
L−核酸として本発明の核酸を設計することは、いくつかの理由で有利である。L−核酸は、天然に存在する核酸の鏡像異性体である。しかし、D−核酸は、ヌクレアーゼが広範に存在するために、水溶液中、特に生物系または生物試料中であまり安定でない。天然に存在するヌクレアーゼ、特に動物細胞由来のヌクレアーゼは、L−核酸を分解することができない。このため、L−核酸の生物学的半減期は、動物およびヒトの身体を含めた生物系の中で著しく増大する。L−核酸の分解性を欠くため、ヌクレアーゼ分解産物は発生せず、したがってそれから生じる副作用も観察されない。この側面は、ヘプシジンの存在が関与している疾患および/または障害の治療で使用される事実上全ての他の化合物からL−核酸の境界を定めるものである。ワトソンクリック塩基対形成と異なる機構を通じて標的分子と特異的に結合するL−核酸、または部分的にまたは完全にL−ヌクレオチドからなるアプタマー、特にアプタマーと標的分子の結合に関与しているアプタマーの部分を有するものは、スピーゲルマーとも呼ばれる。アプタマーそれ自体は当業者に知られており、とりわけ、「The Aptamer Handbook」(Klussmann編、2006)に記載されている。
【0140】
本発明による核酸が、それがD−核酸、L−核酸もしくはD,L−核酸として存在するかどうか、またはDNAもしくはRNAであるかどうかに関わらず、一本鎖または二本鎖核酸として存在し得ることも、本発明の範囲内である。典型的には、本発明の核酸は、一次配列により規定された二次構造を示し、したがって三次構造をも形成できる一本鎖核酸である。しかし、本発明の核酸は、互いに相補的または部分的に相補的な2つの鎖が、2つの別々の鎖であるかどうか、または互いに結合し、好ましくは共有結合しているかどうかに関わらず、互いにハイブリダイズするという意味で二本鎖でもよい。
【0141】
本発明の核酸を修飾することができる。そのような修飾は、核酸の単一のヌクレオチドに関連し得、当技術分野で周知である。そのような修飾の例は、とりわけ、Venkatesan(2003);Kusser(2000);Aurup(1994);Cummins(1995);Eaton(1995);Green(1995);Kawasaki(1993);Lesnik(1993);およびMiller(1993)に記載されている。そのような修飾は、本発明の核酸の部分である個々のヌクレオチドの2’位におけるH原子、F原子またはO−CH3基もしくはNH2−基であり得る。また、本発明による核酸は、少なくとも1つのLNAヌクレオチドを含んでもよい。一実施形態では、本発明による核酸はLNAヌクレオチドからなる。
【0142】
一実施形態では、本発明による核酸は多分割核酸でもよい。本明細書において多分割核酸とは、少なくとも2つの別々の核酸鎖からなる核酸である。これら少なくとも2つの核酸鎖は機能的単位を形成し、その機能的単位は標的分子に対するリガンドである。少なくとも2つの核酸鎖は、核酸分子を切断して2つの鎖を得るか、または本発明の、すなわち核酸全体の第1の部分に対応する1つの核酸および核酸全体の第2の部分に対応するもう1つの核酸を合成することにより、本発明の核酸のいずれかから得ることができる。切断と合成を両方適用して、上記で例示した、鎖が2つより多い多分割核酸を得ることができることが認められるはずである。言い換えると、少なくとも2つの別々の核酸鎖は、典型的には、互いに相補的でありハイブリダイズする2つの鎖と異なるが、前記少なくとも2つの別々の核酸鎖の間にある程度の相補性が存在することがあり、そのような相補性の結果、前記別々の鎖のハイブリダイゼーションが生じることがある。
【0143】
最後に、本発明による核酸の完全に閉鎖した、すなわち環状の構造が実現され、すなわち、本発明による核酸が一実施形態において、好ましくは共有結合により閉鎖し、より好ましくはそのような共有結合が本明細書で開示されている核酸配列またはその任意の誘導体の5’末端と3’末端の間でなされることも、本発明の範囲内である。
【0144】
本発明による核酸分子の結合定数を決定できる可能性は、実施例4に記載の表面プラズモン共鳴の使用にあり、これにより、本発明による核酸が有望なK値の範囲を示すという上記の知見が確認される。個々の核酸分子と、この場合ヘプシジンである標的との結合の強度を表すのに適した尺度はいわゆるK値であり、それ自体、同様にその決定の方法も当業者に知られている。
【0145】
好ましくは、本発明による核酸によって示されるK値は1μM以下である。約1μMのK値は、核酸と標的の非特異的な結合に特徴的であるといわれている。当業者によって認められるように、本発明による核酸などの一群の化合物のK値は特定の範囲内にある。上記で述べた約1μMのKは、K値について好ましい上限である。標的結合核酸のKの下限はわずか約10ピコモルでもよく、またはより高くてもよい。ヘプシジンと結合する個々の核酸のK値が好ましくはこの範囲内であることは、本発明の範囲内である。この範囲内での任意の第1の数およびこの範囲内での任意の第2の数を選択することによって、好ましい範囲を規定することができる。好ましい上位のK値は250nMおよび100nMであり、好ましい下位のK値は50nM、10nM、1nM、100pMおよび10pMである。より好ましい上位のK値は2.5nMであり、より好ましい下位のK値は400pMである。
【0146】
本発明による核酸分子は、それが依然として標的分子と結合することができるという条件で、どんな長さを有していてもよい。本発明による核酸について好ましい長さがあることが当業者によって認められるであろう。典型的には、その長さは15〜120ヌクレオチドである。15〜120の間の任意の整数が、本発明による核酸についてあり得る長さであることが当業者によって認められるであろう。本発明による核酸の長さについてより好ましい範囲は、約20〜100ヌクレオチド、約20〜80ヌクレオチド、約20〜60ヌクレオチド、約20〜50ヌクレオチドおよび約30〜50ヌクレオチドである。
【0147】
本明細書で開示されている核酸が、好ましくは高分子量部分であり、かつ/または好ましくは核酸の特徴を、とりわけ、動物の身体、好ましくはヒトの身体における滞留時間の観点から修飾することを可能にする部分を含むことは、本発明の範囲内である。そのような修飾の特に好ましい実施形態は、本発明による核酸のPEG化およびHES化である。本明細書において、PEGはポリ(エチレングリコール)を表し、HESはヒドロキシエチルデンプンを表す。好ましくは本明細書においてPEG化は本発明による核酸の修飾であり、そのような修飾は本発明による核酸と結合したPEG部分からなる。好ましくは本明細書においてHES化は本発明による核酸の修飾であり、そのような修飾は本発明による核酸と結合したHES部分からなる。直鎖ポリ(エチレン)グリコール、分岐ポリ(エチレン)グリコール、ヒドロキシエチルデンプン、ペプチド、タンパク質、多糖、ステロール、ポリオキシプロピレン、ポリオキシアミデート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミンやポリエチレングリコ−ルなどの修飾、ならびにそのような修飾を使用して核酸を修飾する方法は欧州特許出願EP1306382に記載され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0148】
好ましくは、高分子量部分からなるまたはそれを含む修飾の分子量は約2,000〜250,000Da、好ましくは20,000〜200,000Daである。PEGがそのような高分子量部分である場合、分子量は好ましくは20,000〜120,000Da、より好ましくは40,000〜80,000Daである。HESがそのような高分子量部分である場合、分子量は好ましくは20,000〜200,000Da、より好ましくは40,000〜150,000Daである。HES修飾の方法は、例えば、独国特許出願DE 1 2004 006 249.8に記載され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0149】
特許出願WO2005/074993、WO2003/035665およびEP1496076にさらに記載されているように、PEGおよびHESのどちらかを直鎖または分岐形態として使用できることは、本発明の範囲内である。そのような修飾は、原理上、本発明の核酸分子に対してその任意の位置で行うことができる。好ましくは、そのような修飾は、本発明による核酸分子の5’末端ヌクレオチド、3’末端ヌクレオチドおよび/または5’ヌクレオチドと3’ヌクレオチドの間にある任意のヌクレオチドに対して行われる。
【0150】
修飾ならびに好ましくはPEGおよび/またはHES部分を、直接または好ましくはリンカーを介して間接的に本発明の核酸分子と結合させることができる。本発明による核酸分子が1つまたは複数の修飾、好ましくは1つまたは複数のPEGおよび/またはHES部分を含むことも、本発明の範囲内である。一実施形態では、個々のリンカー分子は複数のPEG部分またはHES部分を本発明による核酸分子と結合させる。本発明に関連して使用されるリンカーは、それ自体直鎖でもよく、または分岐していてもよい。この種のリンカーは当業者に知られており、特許出願WO2005/074993、WO2003/035665およびEP1496076にさらに記載されている。
【0151】
好ましい実施形態では、リンカーは生分解性リンカーである。生分解性リンカーは、本発明による核酸からの修飾の放出により、本発明による核酸の特徴を、とりわけ、動物の身体、好ましくはヒトの身体における滞留時間の観点から修飾することを可能にする。生分解性リンカーを使用すると、本発明による核酸の滞留時間の良好な調節を可能にすることができる。そのような生分解性リンカーの好ましい実施形態は、それだけに限らないが、国際特許出願WO2006/052790、WO2008/034122、WO2004/092191およびWO2005/099768に記載されている生分解性リンカーである。
【0152】
修飾または修飾基が生分解性修飾であり、その生分解性修飾を、直接または好ましくはリンカーを介して間接的に本発明の核酸分子と結合させることができることは、本発明の範囲内である。生分解性修飾は、本発明による核酸からの修飾の放出または分解により、本発明による核酸の特徴を、とりわけ、動物の身体、好ましくはヒトの身体における滞留時間の観点から修飾することを可能にする。生分解性修飾を使用すると、本発明による核酸の滞留時間の良好な調節を可能にすることができる。そのような生分解性修飾の好ましい実施形態は、それだけに制限されないが、国際特許出願WO2002/065963、WO2003/070823、WO2004/113394およびWO2000/41647に、好ましくはWO2000/41647、18ページ、4〜24行目に記載されているように生分解性である。
【0153】
上記に記載の修飾のほかに、他の修飾を使用して、本発明による核酸の特徴を修飾することができ、そのような他の修飾は、タンパク質、コレステロールなどの脂質およびアミラーゼ、デキストランなどの糖鎖などの群から選択することができる。
【0154】
どんな理論にも拘泥するものではないが、好ましくは生理的に許容されるポリマー、より詳細には本明細書で開示されているポリマーの1つまたはいくつかなどの高分子量部分で本発明による核酸を修飾することにより、排出動態が変化すると思われる。より詳細には、そのような修飾された本発明の核酸の分子量が増大し、特にL型のときに本発明の核酸が代謝にさらされないため、動物の身体、好ましくは哺乳動物の身体、より好ましくはヒトの身体からの排出が低下すると思われる。典型的には排出が腎臓を介して行われるので、こうして修飾された核酸の糸球体濾過量がこの種の高分子量修飾を有さない核酸と比較して著しく低減し、その結果動物の身体における滞留時間が増大することが想定される。それに関連して、そのような高分子量修飾にも関わらず、本発明による核酸の特異性が不利益な影響を受けないことは特に注目に値する。その限りにおいて、本発明による核酸は、とりわけ、持続性放出をもたらす医薬製剤が本発明による核酸の持続性放出をもたらすことが必ずしも必要でないような、薬学的活性化合物から通常は予想できない驚くべき特徴を有する。むしろ、高分子量部分を含む修飾された形態の本発明による核酸は、その修飾のためすでに持続性放出製剤から放出されたかのように働くので、それ自体すでに持続性放出製剤として使用することができる。その限りにおいて、本明細書で開示されている本発明による核酸分子の(1つまたは複数の)修飾およびこうして修飾された本発明による核酸分子およびそれを含む任意の組成物は、独特の、好ましくは調節された薬物動態および生体内分布をもたらすことができる。これは、組織への循環および分布における滞留時間も含む。そのような修飾は、特許出願WO2003/035665にさらに記載されている。
【0155】
しかし、本発明による核酸が、修飾、特にPEG化またはHES化などの高分子量修飾を含まないことも、本発明の範囲内である。そのような実施形態は、本発明による核酸が体内の任意の標的臓器もしくは組織に対して優先的な分布を示すとき、または投与後の身体からの本発明による核酸の迅速なクリアランスが所望されるときに特に好ましい。体内の任意の標的臓器または組織に対して優先的な分布プロファイルを有する、本明細書で開示されている本発明による核酸により、核酸の全身濃度を低く維持しつつ、標的組織における有効な局所濃度の確立が可能となる。これにより低用量の使用が可能となり、それは経済的な視点から有益であるだけでなく、核酸作用物質に対する他の組織の不要な曝露も低減し、それによって副作用の潜在的なリスクが低減する。投与後の身体からの本発明による核酸の迅速なクリアランスは、とりわけ、本発明による核酸またはそれを含む薬剤を使用したインビボ画像化または特定の治療的投与の必要のある場合に所望されることがある。
【0156】
本発明による核酸および/または本発明によるアンタゴニストは、薬剤または医薬組成物の生成または製造に、またはそれにおいて使用することができる。本発明によるそのような薬剤または医薬組成物は、任意選択で少なくとも1つのさらなる薬学的活性化合物と一緒に、本発明の核酸の少なくとも1つを含有し、本発明の核酸は、好ましくは、薬学的活性化合物それ自体として働く。そのような薬剤または医薬組成物は、好ましい実施形態では、少なくとも薬学的に許容される担体を含む。そのような担体は、例えば、水、緩衝液、PBS、グルコース溶液、好ましくは5%グルコース塩平衡溶液、デンプン、糖、ゼラチンまたは任意の他の許容される担体物質でよい。そのような担体は、当業者に一般に知られている。本発明の薬剤のまたはそれに関連する任意の実施形態、使用および態様が、本発明の医薬組成物にも適用可能であり、逆もまた同じであることが当業者によって認められるであろう。
【0157】
治療および/または予防にそれぞれ本発明に従ったまたはそれに従って調製された核酸、医薬組成物および薬剤が使用され、または使用されることが意図される適応症、疾患および障害は、それぞれの病原性機構においてヘプシジンが直接または間接的に関与することから生じる。
【0158】
導入部で述べたように、ヘプシジンは鉄の恒常性を制御する鍵となるシグナルであり、一方、ヘプシジン欠損およびヘプシジン過剰発現マウスモデルで示されるように、ヒトヘプシジンのレベルが高いと血清鉄レベルが低下し、レベルが低いと血清鉄レベルが増大する(Nicolas、2001;Nicolas、2002;Nicolas、2003)。
【0159】
やはり本明細書で述べたように、ヘプシジンとフェロポーチンの結合の結果、フェロポーチンが直ちに内部移行し、その後長期持続的に血清鉄が低下し(Rivera、2005)、その血清鉄の低下が貧血の原因となる。貧血は、循環している血液におけるヘモグロビンの量の絶対的な低減として定義され、しばしば、低いヘモグロビンによって現れる疾患の症状となり、それ自体で単独の診断とはならない。貧血は、赤血球の産生および/または寿命を負の方向に障害する医学的状態から生じる。さらに、貧血は、失血の結果であり得る。
【0160】
したがって、貧血の発症を理解するために、根底にある機構に基づいて貧血は3つの病因カテゴリーに分類される。
a)赤血球産生の低下、
b)赤血球破壊の増大、
c)失血。
【0161】
しかし、この3つのカテゴリーである赤血球産生の低下、赤血球破壊の増大および失血は、互いに厳密に分けられないが、互いに付随してまたは独立して起こる可能性がある。
【0162】
多くの疾患で、前記機構の組合せが貧血をもたらす可能性がある。したがって、ヘプシジンの中和が貧血の多くの状態で有益となり得る。
【0163】
本発明によるヘプシジン結合核酸はヒトヘプシジンと相互作用しまたは結合するため、当業者なら、本発明によるヘプシジン結合核酸が、本明細書に記載のヒトおよび動物の任意の疾患の治療、予防および/または診断に使用できることを理解するであろう。それに関連して、本発明による核酸分子が、本明細書に記載の疾患、障害または状態のいずれかの治療および予防に使用できることが認められるはずである。
【0164】
以下で、どんな理論にも拘泥するものではないが、種々の疾患、障害および状態に関連して本発明による核酸分子を使用する論拠が提供され、それによって本発明による核酸分子の特許請求に係る治療、予防および診断的適用性が妥当なものとなる。不必要な繰り返しを避けるため、当業者に知られ、本明細書でも概略を述べるヘプシジン−フェロポーチンの相互作用の関与により、特許請求に係る治療および/または予防的効果が実現するように本発明による核酸分子によって前記相互作用に対処できることが認められるはずである。
【0165】
したがって、治療および/または予防に本発明による薬剤を使用できる疾患および/または障害および/または疾患状態には、それだけに限らないが、貧血、低鉄血症、異食症、ヘプシジンレベルの上昇を伴う状態、鉄レベルの上昇を伴う状態および/または鉄過剰を伴う状態が含まれる。
【0166】
好ましくは、貧血は、鉄芽球性貧血、低色素性小球性貧血、慢性疾患および/もしくは障害によって引き起こされる貧血、炎症によって引き起こされる貧血、遺伝的障害によって引き起こされる貧血、急性感染によって引き起こされる貧血、ならびに/または鉄の代謝および/もしくは恒常性の遺伝子の突然変異によって引き起こされる貧血の群から選択される。
【0167】
貧血を引き起こすことができる種々の慢性疾患および/または障害は、慢性炎症、がん、自己免疫疾患および/または自己免疫障害、慢性感染、動脈硬化、アテローム動脈硬化、ならびに肝硬変の群から選択される。その限りにおいて、本発明の核酸によって治療することができる貧血は、前記種々の慢性疾患および/または障害のいずれか1つによって引き起こされまたはそれに関連する貧血である。さらに、貧血は、がん治療、好ましくは化学療法によって引き起こされるものである可能性がある。
【0168】
慢性炎症のサブグループは、慢性腎臓疾患、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、骨関節炎、糖尿病、肥満、脳血管疾患、うっ血性心疾患、うっ血性心不全、心筋梗塞、冠動脈疾患、末梢閉塞性動脈疾患、膵炎、血管炎であり、そのような慢性腎臓疾患は、腎疾患、慢性腎不全、慢性腎臓不全を含み、かつ/または腎臓透析もしくは腎臓移植によって引き起こされる。
【0169】
がんのサブグループは、肝細胞癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頚部がん、乳がん、結腸直腸がん、非骨髄性がん、腎細胞癌腫、非小細胞肺癌腫瘍および脳腫瘍である。
【0170】
自己免疫疾患および/または障害のサブグループは、関節リウマチ、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデスおよびクローン病である。
【0171】
慢性感染のサブグループはウイルス感染、ウイルス疾患、細菌感染および真菌感染であり、ウイルス感染は、それだけに限らないが、肝炎およびHIV感染を含み、細菌感染は、それだけに限らないが、H.pylori感染を含む。
【0172】
炎症によって引き起こされる貧血は正球性から小球性であり、低い網状赤血球産生指数によって特徴付けられ、総鉄結合能(TIBC)は低くまたは正常である。ヘプシジン、急性期タンパク質および炎症の他のマーカー(例えば、C反応性タンパク質)は、炎症によって引き起こされる貧血の場合に増大する。炎症によって引き起こされる貧血は、炎症による貧血とも称される。
【0173】
貧血を引き起こすことができる種々の遺伝的障害は、キャッスルマン病、シュニッツラー症候群、鉄不応性鉄欠乏性貧血(マトリプターゼ−2(TMPRSS6)突然変異、無トランスフェリン症、先天性赤血球異形成貧血および異常ヘモグロビン症の群から選択される。
【0174】
貧血を引き起こすことができる種々の急性感染は、ウイルス感染、細菌感染および真菌感染の群から選択され、ウイルス感染、細菌感染および真菌感染は個々にまたは互いの組合せで敗血症をもたらす可能性がある。
【0175】
「ヘプシジンレベルの上昇を伴う状態」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける状態を指し、哺乳動物の正常ヘプシジン血清レベル(ヒトの場合およそ120ngl/mL)と比較して上昇したヘプシジン血清レベルなど、体内のヘプシジンのレベルが、そのような哺乳動物のヘプシジンの正常レベルと比較して上昇している。血清ヘプシジンレベルの上昇は、とりわけ、酵素結合免疫測定法(DRG Diagonstics、Marburg、Germanyにより市販されているキット)によって決定することができる。
【0176】
したがって、本発明による薬剤を好ましくは使用できる患者には、それだけに限らないが、エリスロポエチンおよび他の赤血球刺激療法で治療され、好ましくはエリスロポエチンに対する低い応答性を示す患者が含まれ、より好ましくは、患者は慢性腎臓疾患を有しまたはがんを患っており、がんは、肝細胞癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頚部がん、乳がん、結腸直腸がん、非骨髄性がん、腎細胞癌腫、非小細胞肺癌腫瘍および脳腫瘍の群から選択される。
【0177】
さらなる実施形態では、本発明による薬剤は、さらなる薬学的活性化合物を含む。そのようなさらなる薬学的活性化合物は、好ましくは、ヘプシジンまたはフェロポーチンの活性、濃度または発現を調節できるものである。そのような化合物は、好ましくは、プロヘプシジン切断プロテアーゼ阻害物質、プロヘプシジン抗体、例えばフェロポーチン抗体などのフェロポーチンアンタゴニスト、JAK2阻害物質、GDF15、BMP調節物質、可溶性ヘモジュベリンまたはTGF−ベータ阻害物質である。
【0178】
本発明による核酸を含む薬剤と一緒に使用し、またはそれに入れることができる他のさらなる薬学的活性化合物は、貧血および/または炎症状態の治療について知られ、かつ/またはそれに使用されるものであり、炎症状態の治療は貧血に正の影響を及ぼす。そのような薬学的活性化合物は、鉄補給剤、ビタミン補給剤、赤血球産生刺激物質、抗生物質、抗炎症性生物製剤、免疫系の抑制物質、抗血栓溶解剤、スタチン、昇圧剤および変力性化合物を含む群から選択される。
【0179】
鉄補給剤の非限定的な例は、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、鉄デキストラン、グルコン酸鉄ナトリウム、カルボキシマルトース鉄、水酸化鉄ポリマルトース、フマル酸鉄、鉄サッカロースおよび水酸化鉄スクロースである。
【0180】
ビタミン補給剤の非限定的な例は、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6およびビタミンDである。
【0181】
赤血球産生刺激物質の非限定的な例は、エリスロポエチン、エポエチン、ダルベポエチン、CERA、HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害物質(例えば、FG−2216およびFG−4592)および他の赤血球生成刺激作用物質である。
【0182】
抗生物質の非限定的な例は、アミノグリコシド、ベータ−ラクタム系抗生物質、エプチド系抗生物質、グリヤーゼ阻害物質、リンコサミド、マクロライド系抗生物質、ニトロイミダゾール誘導体、ポリペプチド系抗生物質、スルホンアミド、テトラサイクリンおよびトリメトプリムである。
【0183】
抗炎症性生物製剤の非限定的な例は、
a)例えばトシリズマブまたはアトリズマブなどのIL−6受容体アンタゴニスト、
b)例えばエタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブなどのTNFアンタゴニスト、
c)例えばアナキンラなどのIL−1受容体アンタゴニスト、および
d)例えばリツキシマブやイブリツマブなどのCD20結合分子
である。
【0184】
免疫系の抑制物質の非限定的な例は、アザチオプリン、ブレキナル、カルシニューリン阻害物質、クロラムブシル、シクロスポリンA、デオキシスペルグアリン、レフルノミド、メトトレキセート、ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、タクロリムスおよびサリドマイドである。
【0185】
抗炎症作用物質の非限定的な例は、ロフルミラストなどのPDE4阻害物質、およびプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、発泡性物質、ブデゾニド、シクレソニドやフルチカゾンなどのコルチコステロイドである。
【0186】
抗血栓溶解剤の非限定的な例は、ドロトレコギンアルファなどの活性化ヒトプロテインCである。
【0187】
スタチンの非限定的な例は、アトロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンである。
【0188】
昇圧剤および/または変力性化合物の非限定的な例は、ノルアドレナリン、バソプレッシンおよびドブタミンである。
【0189】
ヘプシジン血漿レベルの上昇を伴う状況に加えて、本発明による核酸分子を使用して、鉄レベルの上昇および/または鉄過剰の状態を伴う患者ならびにヘプシジン血漿レベルの上昇を伴わない患者においてヘプシジンをアンタゴナイズすることもできる。好ましくは細胞の鉄濃度を低下させるために本発明による核酸分子でのそのような患者の治療が行われ、その治療は、好ましくは鉄キレート化合物と組み合わせたものである。本発明による核酸による生理的ヘプシジンの中和はフェロポーチンの発現を保護し、それによって、細胞内貯蔵からのさらなる鉄放出を支持する。鉄キレート化合物と組み合わせたフェロポーチンの保護により、尿を介して鉄が排除され、全身の鉄含量が低減する。
【0190】
医療分野では、鉄過剰は、任意の原因による体内での鉄の蓄積を示す。人間の場合、鉄の全身含量>5mgが鉄過剰に特徴的である。鉄過剰は、ヘモクロマトーシスとも称される。
【0191】
「鉄過剰を伴う状態」 という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける状態を指し、哺乳動物の正常鉄血清レベル(ヒトの場合およそ20μmol/L)と比較して上昇した鉄血清レベルまたは哺乳動物の肝臓における鉄の正常レベルと比較して増大した哺乳動物の肝臓における鉄のレベルなど、哺乳動物の体内の鉄のレベルが、そのような哺乳動物の鉄の正常レベルと比較して上昇している。血清鉄レベルの上昇は、とりわけ比色アッセイを使用した血清鉄の直接測定、(どのくらい血中で鉄を運搬するタンパク質と鉄が結合しているかを明らかにする)標準的なトランスフェリン飽和アッセイ、または標準的な血清フェリチンアッセイ(例えば、Calbiotech、USAのFerritin Blood Test ELISAキット)によって決定することができる。例えば、45%以上のトランスフェリン飽和レベルは通常、血清中の鉄の異常に高いレベルを示している。肝臓における鉄レベルの上昇は、とりわけ、肝生検によって得られた組織から肝臓の鉄含量を測定して、またはMRIおよび/もしくはSQUIDなどの画像化技術によって決定することができる。これらおよび他の画像化技術を使用して、例えば脳、心臓など他の組織における鉄レベルの程度を見積もることもできる。
【0192】
鉄過剰のサブグループは、輸血性鉄過剰、鉄中毒、肺鉄血症、骨減少症、インスリン耐性、アフリカ型鉄過剰、ハレルフォルデンスパッツ病、高フェリチン血症、セルロプラスミン欠乏、新生児ヘモクロマトーシスならびにサラセミア、アルファサラセミア、中間型サラセミア、鎌状赤血球症および骨髄異形成症候群を含めた赤血球障害である。
【0193】
鉄レベルの上昇に関連する他の障害/疾患を患っている患者も、好ましくは鉄キレート化合物と組み合わせた、本発明による核酸分子での治療から利益を受けるはずである。したがって、治療および/または予防に本発明による薬剤を使用できる疾患および/または障害および/または疾患状態には、それだけに限らないが、運動失調症、フリードライヒ運動失調症、加齢性黄斑変性症、加齢性白内障、加齢性網膜疾患および神経変性疾患を含む、鉄レベルの上昇を伴う疾患が含まれ、そのような神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、不穏下肢症候群およびハンチントン病を含む。
【0194】
さらなる実施形態では、本発明による薬剤は、好ましくは鉄と結合することができ、哺乳動物の身体、特にヒトの身体の組織または循環から鉄を除去するものであるさらなる薬学的活性化合物を含む。そのような薬学的活性化合物は、好ましくは、鉄キレート化合物の群から選択される。そのような化合物を本発明による核酸分子と組み合わせると、生理的ヘプシジン濃度がさらに低減し、それによって細胞の鉄量が低減する。
【0195】
鉄キレート化合物の非限定的な例は、クルクミン、デフェロキサミン、デフェラシロクスおよびデフェリプロンである。
【0196】
最後に、さらなる薬学的活性作用物質は、鉄代謝および/または鉄恒常性の調節物質でもよい。あるいは、またはさらに、そのようなさらなる薬学的活性作用物質は、さらなる、好ましくは第2の種の本発明による核酸である。あるいは、薬剤は、ヘプシジンとは異なる標的分子と結合し、または本発明による核酸の1つとは異なる機能を示す少なくともあと1つの核酸を含む。好ましくは、そのような少なくともあと1つの核酸は、本明細書で開示されている(1つまたは複数の)さらなる薬学的活性化合物の1つまたはいくつかのうち1つと類似するまたは同一の機能を示す。
【0197】
あるいは、またはさらに、本明細書においてこの(本)発明の薬剤とも称される、本発明による核酸を含む薬剤が、原理上、前記疾患の治療のための薬剤の使用に関連して開示されている疾患のいずれかの予防に使用されることは、本発明の範囲内である。したがって、すなわちそれぞれの疾患に対するそれぞれのマーカーが当業者に知られている。好ましくは、それぞれのマーカーはヘプシジンである。
【0198】
本発明の薬剤の一実施形態では、そのような薬剤は、本明細書で開示されている疾患、特に本発明の薬剤が使用される疾患のいずれかに対する他の治療と組み合わせて使用するための薬剤である。
【0199】
好ましくは本明細書において「併用療法」または「共同療法」は、治療レジメンの一部としての本発明の薬剤および少なくとも第2の作用物質の投与を含み、その治療レジメンは、これらの治療作用物質、すなわち本発明の薬剤および前記第2の作用物質の共同作用から有益な効果をもたらすことを意図している。組合せとしてのまたはそれにおけるこれらの治療作用物質の投与は、典型的には、規定された期間にわたって(選択された組合せに応じて通常は数分、数時間、数日または数週間)実施される。
【0200】
「併用療法」は、付随的にかつ任意に本発明の組合せとなる別々の単独療法レジメンの一部としての2つ以上の治療作用物質の投与を包含することを意図し得るが、一般には意図していない。「併用療法」は、順次の、すなわち各治療作用物質が異なる時期に投与される形でのこれらの治療作用物質の投与、ならびに実質的に同時のこれらの治療作用物質、または少なくとも2つの治療作用物質の投与を含むことを意図している。実質的に同時の投与は、例えば、対象に、固定された比率の各治療作用物質を有する単一のカプセルを投与し、または治療作用物質それぞれについて単一のカプセルを複数投与することによって行うことができる。
【0201】
治療作用物質の順次または実質的に同時の投与は、それだけに限らないが、局所経路、経口経路、静脈内経路、筋内経路、および粘膜組織を介する直接吸収を含めた任意の適当な経路により実施することができる。治療作用物質は、同じ経路により投与することもでき、または異なる経路により投与することもできる。例えば、治療に有効な作用物質の特定の組合せの第1の治療作用物質を注射により投与することができ、その組合せの他方または他の治療作用物質を局所投与することができる。
【0202】
あるいは、例えば、全ての治療作用物質を局所投与することができ、または全ての治療作用物質を注射により投与することができる。治療作用物質が投与される順序は、別段言及されていない限り重要ではない。併用療法が非薬物治療をさらに含む場合、非薬物治療は、治療作用物質と非薬物治療の組合せからの有益な効果が実現される限り、任意の適切な時期に行うことができる。例えば、適当な場合には、非薬物治療がおそらくは数日または数週間でも時間的に止められている一方で、治療作用物質が依然として投与されるときでも有益な効果を依然として実現することができる。
【0203】
上記の一般用語で概略を述べたように、原理上、当業者に知られている任意の形態で、本発明による薬剤を投与することができる。好ましい投与経路は全身投与であり、より好ましくは非経口投与により、好ましくは注射による。あるいは、薬剤を局所に投与することができる。他の投与経路は、筋内、腹腔内、皮下、経口、鼻内、気管内および肺を含み、効率を確保しつつ侵襲性が最も小さい投与経路が優先される。
【0204】
皮下、筋内または静脈内注射および注入に非経口投与が一般に使用される。さらに、非経口投与の1つの手法は、確実に一定レベルの投与量が維持されるようにし、当業者に周知である緩徐放出または持続性放出系の植え込みを使用する。
【0205】
さらに、適切な鼻内用媒体、吸入剤の局所使用を介する鼻内経路により、または当業者に周知の経皮的皮膚パッチの形態を使用する経皮経路を介して、本発明の好ましい薬剤を投与することができる。経皮送達系の形態で投与するために、その投与は、典型的には、投与レジメン全体にわたって断続的ではなく連続的となる。他の好ましい局所製剤には、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、エアロゾルスプレー剤およびゲル剤が含まれ、活性成分の濃度は、典型的には、w/wまたはw/vで0.01%〜15%となる。
【0206】
本発明の薬剤は、一般に、それだけに限らないが、好ましくは薬学的に許容される媒質中に溶解または分散した本発明の核酸分子を含めた、治療に有効なある量の(1つまたは複数の)活性構成成分を含む。薬学的に許容される媒質または担体には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質についてのそのような媒質および作用剤の使用は当技術分野で周知である。本発明の薬剤中に補充的な活性成分を取り込むこともできる。
【0207】
さらなる態様では、本発明は医薬組成物に関する。そのような医薬組成物は、本発明による核酸の少なくとも1つおよび好ましくは薬学的に許容される媒体を含む。そのような媒体は、当技術分野で使用され、かつ/または知られている任意の媒体または任意の結合剤でよい。より詳細には、そのような結合剤または媒体は、本明細書で開示されている薬剤の製造に関連して論じられる任意の結合剤または媒体である。さらなる実施形態では、医薬組成物はさらなる薬学的活性作用物質を含む。
【0208】
薬剤および医薬組成物の調製はそれぞれ、本開示に照らして当業者に知られている。典型的には、そのような組成物は、液体の溶液もしくは懸濁液の注射剤として;注射前に液体で溶液もしくは懸濁液にするのに適した固体形態;経口投与用の錠剤もしくは他の固体として;徐放型カプセルとして;または点眼剤、クリーム剤、ローション剤、膏薬、吸入剤などを含めた現在使用されている任意の他の形態で調製することができる。手術現場において特定の領域を取り扱う外科医、内科医または医療従事者による、食塩水に基づく洗浄などの滅菌製剤の使用も特に有用であり得る。微小デバイス、微小粒子またはスポンジを介して組成物を送達することもできる。
【0209】
これに関連して、投与する活性成分の量および組成物の体積は、治療する個体または対象に依存する。投与に必要な活性化合物の特定の量は、専門家の判断に依存し、各個体に特有である。
【0210】
活性化合物を分散させるのに必要な薬剤の最小体積が典型的には利用される。投与に適したレジメも様々であるが、最初に化合物を投与し、結果をモニタリングし、次いでさらなる間隔でさらなる調節された用量を投与することによって類型化される。
【0211】
例えば、錠剤またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態での経口投与では、本明細書においてその全体で(1つまたは複数の)治療作用物質または(1つまたは複数の)活性化合物とも称される、活性薬物構成成分、すなわち本発明による核酸分子および/または任意のさらなる薬学的活性作用物質は、エタノール、グリセロール、水などの経口用、非毒性の薬学的に許容される好ましくは不活性の担体と組み合わせることができる。さらに、所望のまたは必要なとき、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤を混合物中に取り込むこともできる。適切な結合剤には、デンプン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンのり、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/もしくはポリビニルピロリドン、グルコースもしくはベータ−ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカントなどの天然および合成ゴム、またはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコ−ル、ろうなどが含まれる。これらの剤形で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコ−ルなどが含まれる。崩壊剤には、それだけに限らないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物などが含まれる。希釈剤には、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシンが含まれる。
【0212】
本発明による薬剤は、徐放および持続性放出錠剤またはカプセル、丸剤、粉末、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップおよびエマルションのような経口剤形で投与することもできる。坐剤は、脂肪性のエマルションまたは懸濁液から調製すると有利である。
【0213】
本発明による医薬組成物または薬剤は、滅菌することができ、かつ/または保存剤、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を制御するための塩および/もしくは緩衝剤などのアジュバントを含有してよい。さらに、それらは他の治療的価値のある物質を含有してもよい。組成物は、従来の混合、造粒、または被覆方法に従って調製され、典型的には、約0.1%〜75%、好ましくは約1%〜50%の活性成分を含む。
【0214】
液体の、特に注射可能な組成物は、例えば、溶解、分散などによって調製することができる。活性化合物を、例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの薬学的に純粋な溶媒中に溶解し、またはそれと混合することによって、注射可能な溶液または懸濁液を形成する。さらに、注射前に液体で溶解するのに適した固体形態を製剤することができる。
【0215】
固体組成物では、賦形剤には医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。上記で定義した活性化合物は、担体として例えば、ポリアルキレングリコール、例えばプロピレングリコールを使用して、坐剤として製剤することもできる。いくつかの実施形態では、坐剤は、脂肪性のエマルションまたは懸濁液から調製すると有利である。
【0216】
本発明の薬剤および核酸分子はそれぞれ、小型単層小胞、大型単層小胞や多層小胞などのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、種々のリン脂質から形成することができ、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンを含有している。いくつかの実施形態では、脂質構成成分の薄膜が薬物の水溶液で水和されて薬物を被包する脂質層を形成するが、これは当業者に周知である。例えば、当技術分野で知られている方法を使用して構築された親油性化合物または非免疫原性の高分子量化合物との複合体として、本発明による核酸分子を提供することができる。さらに、リポソームは、その表面上に、細胞傷害作用物質を標的化し内部に運搬して細胞死滅を媒介するためのそのような核酸分子を有し得る。核酸結合複合体の例は、米国特許第6,011,020号に示されている。
【0217】
本発明の薬剤および核酸分子はそれぞれ、標的化可能な薬物担体である可溶性ポリマーと結合していてもよい。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシドポリリシンが含まれ得る。さらに、本発明の薬剤および核酸分子はそれぞれ、薬物の制御放出を実現するのに有用なあるクラスの生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーと結合していてもよい。
【0218】
所望の場合、投与する医薬組成物および薬剤はそれぞれ、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤や、例えば酢酸ナトリウムやオレイン酸トリエタノールアミンなどの他の物質などの非毒性補助物質をある量、典型的には少量含有してもよい。
【0219】
本発明の核酸分子および薬剤をそれぞれ利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療する状態の重症度;投与経路;患者の腎および肝機能;ならびに使用する本発明による特定の核酸またはその塩を含めた種々のファクターに従って選択される。通常の技能を有する医師または獣医なら、状態の進行を予防し、それに対抗し、またはそれを停止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定し処方することができる。
【0220】
本明細書で開示されている疾患のいずれかの治療において、本発明による核酸の有効な血漿レベルは、好ましくは500fM〜500μMである。
【0221】
本発明の核酸分子および薬剤はそれぞれ、好ましくは、毎日1回の投与で、2日もしくは3日に1回、毎週、2週間に1回、毎月1回の投与でまたは3ヶ月に1回投与することができる。
【0222】
本明細書に記載の薬剤が、本明細書に開示されている医薬組成物を構成することは、本発明の範囲内である。
【0223】
さらなる態様では、本発明は、そのような治療を必要とする対象の治療方法に関し、その方法は、薬学的有効量の本発明による核酸の少なくとも1つの投与を含む。一実施形態では、対象は疾患を患いまたはそのような疾患を発症するリスクがあり、疾患は、本明細書で開示されているもののいずれか1つ、特に薬剤を製造するための本発明による核酸のいずれかの使用に関連して開示されている疾患のいずれか1つである。
【0224】
本発明による核酸ならびにアンタゴニストは、薬剤としてまたは薬剤の製造にだけでなく、特に炎症性局所皮膚病変におけるヘプシジンの関与に関して、審美的な目的でも使用できることを理解されたい。したがって、治療または予防に本発明による核酸、薬剤および/または医薬組成物を使用できるさらなる状態または疾患は、炎症性局所皮膚病変である。
【0225】
好ましくは本明細書において診断用物質または診断薬または診断手段は、ヘプシジン、好ましくは本明細書に記載のヘプシジン、より好ましくは本明細書に記載の種々の障害および疾患に関連して本明細書に記載されているヘプシジンを直接または間接的に検出するのに適している。診断用物質は、本明細書に記載の障害および疾患それぞれのうちいずれかの検出および/または経過観察に適している。そのような検出は、本発明による核酸とヘプシジンの結合により可能である。そのような結合を直接または間接的に検出することができる。そのそれぞれの方法および手段は当業者に知られている。とりわけ、本発明による核酸は、本発明による核酸、好ましくはヘプシジンと結合している核酸の検出を可能にする標識を含んでよい。そのような標識は、好ましくは、放射性、酵素および蛍光標識を含む群から選択される。原理上、抗体について開発された全ての既知のアッセイを本発明による核酸に採用し適合させることができ、標的結合抗体は本発明の標的結合核酸に置き換えられる。標識のない標的結合抗体を使用する抗体アッセイでは、好ましくは、検出は、放射性、酵素および蛍光標識で修飾され、標的結合抗体のFc断片で標的結合抗体と結合する二次抗体によって行われる。核酸、好ましくは本発明による核酸の場合、核酸はそのような標識で修飾され、好ましくは、そのような標識はビオチン、Cy−3およびCy−5を含む群から選択され、そのような標識はそのような標識に対する抗体、例えば抗ビオチン抗体、抗Cy3抗体もしくは抗Cy5抗体によって検出され、または標識がビオチンである場合、その標識は、天然にビオチンと結合するストレプトアビジンまたはアビジンによって検出される。そのような抗体、ストレプトアビジンまたはアビジンが、好ましくは、それぞれの標識、例えば二次抗体のような放射性、酵素および蛍光標識で修飾され、その検出を可能にする。
【0226】
さらなる実施形態では、本発明による核酸分子は、第2の検出手段によって検出または分析され、その第2の検出手段は分子ビーコンである。分子ビーコンの方法は当業者に知られている。
【0227】
簡潔に述べると、分子ビーコンとも称される核酸プローブは、検出する核酸の逆相補体であり、このため、検出する核酸の一部または全体とハイブリダイズする。検出する核酸との結合後、分子ビーコンの蛍光基が分離し、その結果蛍光シグナルが変化し、好ましくは強度が変化する。この変化は、検出する核酸の量と相関する。
【0228】
本発明による核酸を使用したヘプシジンの検出により、本明細書で定義されるヘプシジンの検出が特に可能となることが認められるであろう。
【0229】
ヘプシジンの検出に関連して好ましい方法は、
(a)ヘプシジンの存在について試験する試料を提供するステップと、
(b)本発明による核酸を提供するステップと、
(c)好ましくは反応ベッセル中で試料を核酸と反応させるステップと
を含み、ステップ(b)の前にステップ(a)を行うことができ、またはステップ(a)の前にステップ(b)を行うことができる。
【0230】
好ましい実施形態では、さらなるステップd)が提供され、これは、核酸がヘプシジンと反応したか否かを検出することにある。好ましくは、ステップb)の核酸は表面に固定化される。その表面は、反応チューブ、プレートのウェルなどの反応ベッセルの表面でもよく、または例えばビーズなどそのような反応ベッセルに入っているデバイスの表面でもよい。表面への核酸の固定化は、それだけに限らないが、非共有結合または共有結合による連結を含めた、当業者に知られている任意の手段によって行うことができる。好ましくは、表面と核酸との共有化学結合を介して連結が確立される。しかし、核酸が表面に間接的に固定化されることも本発明の範囲内であり、そのような間接的固定化はさらなる構成成分または一対の相互作用パートナーの使用を伴う。そのようなさらなる構成成分は、好ましくは、相互作用パートナーとも称される固定化する核酸と特異的に相互作用し、したがって核酸と表面の結合を媒介する化合物である。相互作用パートナーは、好ましくは、核酸、ポリペプチド、タンパク質および抗体を含む群から選択される。好ましくは、相互作用パートナーは抗体、より好ましくはモノクローナル抗体である。あるいは、相互作用パートナーは核酸、好ましくは機能的核酸である。より好ましくは、そのような機能的核酸は、アプタマー、スピーゲルマーおよび核酸と少なくとも部分的に相補的である核酸を含む群から選択される。さらなる代替の実施形態では、核酸と表面の結合は、多分割相互作用パートナーによって媒介される。そのような多分割相互作用パートナーは、好ましくは、一対の相互作用パートナー、または核酸に含まれもしくはそれに結合した第1のメンバーおよび表面に結合しもしくはそれに含まれる第2のメンバーからなる相互作用パートナーである。多分割相互作用パートナーは、好ましくは、ビオチンおよびアビジン、ビオチンおよびストレプトアビジン、ならびにビオチンおよびニュートラアビジンを含む相互作用パートナーの対の群から選択される。好ましくは、相互作用パートナーの対の第1のメンバーはビオチンである。
【0231】
そのようなヘプシジンの検出方法の好ましい結果は、ヘプシジンと核酸の固定化された複合体の形成であり、より好ましくは前記複合体が検出される。複合体に含有されている、または複合体に含まれない状態にあるヘプシジンが検出されることは、実施形態の範囲内である。
【0232】
前記ヘプシジンの検出に適したそれぞれの検出手段は、ヘプシジンに特異的な任意の検出手段である。特に好ましい検出手段は、核酸、ポリペプチド、タンパク質および抗体を含む群から選択される検出手段である。
【0233】
本発明によるヘプシジンの検出方法は、好ましくはステップc)を行うのに使用されている反応ベッセルから試料を除去することも含む。
【0234】
本発明の方法は、さらなる実施形態では、表面、好ましくは上記で定義した表面上にヘプシジンの相互作用パートナーを固定化するステップも含み、相互作用パートナーは、本明細書、好ましくはそのそれぞれの方法に関連して上記と同様に定義され、より好ましくはその種々の実施形態において核酸、ポリペプチド、タンパク質および抗体を含む。この実施形態では、特に好ましい検出手段は本発明による核酸であり、そのような核酸は標識されていてもよく、または標識されていなくてもよい。そのような核酸が標識されている場合、核酸は検出標識を含む。そのような検出標識を直接または間接的に検出することができる。そのような検出は、第2の検出手段の使用を伴うこともあり、この手段は、好ましくは、本明細書に記載の種々の実施形態において核酸、ポリペプチド、タンパク質および抗体を含む群からやはり選択される。そのような第2の検出手段は、好ましくは、本発明による核酸に特異的であり、本発明による核酸が検出標識を含む場合、そのような第2の検出手段は検出標識に特異的である。より好ましい実施形態では、第2の検出手段は分子ビーコンである。第2の検出手段が好ましい実施形態では検出標識を含むことも、本発明の範囲内である。検出標識は、本発明による核酸または第2の検出手段に含まれるかどうかに関係なく、好ましくは、ビオチン、ブロモデオキシウリジン標識、ジゴキシゲニン標識、蛍光標識、UV標識、放射標識、およびキレーター分子を含む群から選択される。特に好ましい組合せは以下の通りである。
本発明による核酸に結合した検出標識がビオチンであり、第2の検出手段がビオチンに対する抗体であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がビオチンであり、第2の検出手段がアビジンもしくはアビジン保有分子であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がビオチンであり、第2の検出手段がストレプトアビジンもしくはストレプトアビジン保有分子であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がビオチンであり、第2の検出手段がニュートラアビジンもしくはニュートラアビジン保有分子であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がブロモデオキシウリジンであり、第2の検出手段がブロモデオキシウリジンに対する抗体であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がジゴキシゲニンであり、第2の検出手段がジゴキシゲニンに対する抗体であり、または
本発明による核酸に結合した検出標識がキレーターであり、第2の検出手段が放射性核種であり、前記検出標識は本発明による核酸に結合していることが好ましい。
【0235】
これらの種類の組合せが、本発明による核酸が表面に結合している実施形態にも適用可能であることが認められるはずである。そのような実施形態では、検出標識が、第2の検出手段、すなわち、好ましくは相互作用パートナーに結合していることが好ましい。
【0236】
最後に、第3の検出手段を使用して第2の検出手段が検出されることも本発明の範囲内であり、好ましくは、第3の検出手段は、酵素、より好ましくは第2の検出手段との反応後に酵素反応を示す酵素である。あるいは、第3の検出手段は、放射線、より好ましくは、本発明による核酸または第2の検出手段に、好ましくは第2の検出手段に結合している放射性核種により放射される放射線を検出するための手段である。好ましくは、第3の検出手段は、第2の検出手段を特異的に検出し、かつ/またはそれと相互作用している。
【0237】
また、ヘプシジンの相互作用パートナーが表面上に固定化され、本発明による核酸が好ましくは相互作用パートナーとヘプシジンの間で形成された複合体に付加される実施形態では、反応から、より好ましくはステップc)および/またはd)が行われる反応ベッセルから試料を除去することができる。
【0238】
一実施形態では、本発明による核酸は蛍光部分を含み、蛍光部分の蛍光は、一方では核酸およびヘプシジンの間での複合体形成後と、他方では核酸および遊離ヘプシジンとで異なる。
【0239】
さらなる実施形態では、本発明に従ってヘプシジンを検出する方法で使用される核酸は、本発明による核酸の誘導体であり、核酸の誘導体は、アデノシンを置換するアデノシンの少なくとも1つの蛍光誘導体を含む。好ましい実施形態では、アデノシンの蛍光誘導体はエテノアデノシンである。
【0240】
さらなる実施形態では、本発明による核酸の誘導体およびヘプシジンからなる複合体は、蛍光を使用して検出される。
【0241】
その方法の実施形態では、ステップc)またはステップd)でシグナルが生じ、好ましくは、シグナルは試料中のヘプシジンの濃度と相関する。
【0242】
好ましい実施形態では、構成成分が上記に記載の反応ベッセル中に固定化され、ウェルが反応ベッセルとして働く96ウェルプレート中でその方法を実施することができる。
【0243】
薬物設計の出発物質として、本発明の核酸をさらに使用することができる。基本的に2つの手法が考えられる。1つの手法は化合物ライブラリーのスクリーニングであり、そのような化合物ライブラリーは、好ましくは低分子量化合物ライブラリーである。一実施形態では、スクリーニングはハイスループットスクリーニングである。好ましくは、ハイスループットスクリーニングは、標的に基づくアッセイにおける化合物の迅速で効率のよい、試行錯誤による評価である。最も良い場合、標的に基づくアッセイのアッセイフォーマットは比色測定に基づいている。それに関連して使用されるライブラリーは当業者に知られている。
【0244】
あるいは、薬物の合理的な設計に本発明による核酸を使用することができる。好ましくは、合理的な薬物設計は、医薬リード構造の設計である。典型的にはX線結晶解析または核磁気共鳴分光法などの方法によって同定される標的の三次元構造から出発して、コンピュータプログラムを使用して多数の異なる化学化合物の構造を含有するデータベースを検索する。選択はコンピュータによって行われ、同定された化合物をその後実験室で試験することができる。
【0245】
薬物の合理的な設計は、本発明による核酸のいずれかから出発することができ、本発明の核酸の構造と類似し、または核酸と標的、すなわちヘプシジンの結合を媒介する本発明の核酸の構造の部分と同一である構造、好ましくは三次元構造を必要とする。薬物の合理的な設計におけるさらなるステップにおいてまたは代替のステップとして、好ましくはヘプシジンと結合する核酸の部分の三次元構造が、ヌクレオチドおよび核酸と異なる化学基によって模倣される。この模倣により、本発明による核酸と異なる化合物を設計することができる。そのような化合物は、好ましくは小分子またはペプチドである。
【0246】
化合物ライブラリーのスクリーニングの場合では、当業者に知られている競合アッセイなどを使用することによって、適当なヘプシジン類似体、ヘプシジンアゴニストまたはヘプシジンアンタゴニストを見つけることができる。そのような競合アッセイを以下のように設定することができる。本発明の核酸、好ましくは標的結合L−核酸であるスピーゲルマーを固相と結合させる。ヘプシジン類似体を同定するために、標識ヘプシジンをアッセイに加えることができる。潜在的な類似体はスピーゲルマーと結合するヘプシジン分子と競合し、このことは、それぞれの標識によって得られるシグナルの低下と同時に起こる。アゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニングは、当業者に知られている細胞培養アッセイの使用を伴うことがある。
【0247】
本発明によるキットは、本発明の核酸の少なくとも1つまたはいくつかを含んでよい。さらに、キットは、少なくとも1つまたはいくつかの陽性または陰性対照を含んでよい。陽性対照は、例えばヘプシジン、特に本発明の核酸に結合するヘプシジンでよく、好ましくは、陽性対照は液体または凍結乾燥形態で存在する。陰性対照は、例えば、ヘプシジンと類似する生物物理学的特性の観点から定義されるが、本発明の核酸によって認識されないペプチドでよい。さらに、前記キットは、1つまたはいくつかの緩衝液をさらに含んでよい。種々の成分は、乾燥もしくは凍結乾燥形態でキット中に入っていてもよく、または液体中に溶解または分散していてもよい。キットは、1つまたはいくつかの容器をさらに含んでもよく、その容器はキットの成分の1つまたはいくつかを含有してもよい。なおさらなる実施形態では、キットは、キットおよびその種々の成分の使用法についての情報を使用者に提供する使用説明または使用説明リーフレットをさらに含む。
【0248】
ヒトまたは非ヒト身体のいくつかの体液、組織および臓器における本発明による核酸の定量は、本発明による核酸の薬物動態および薬力学プロファイルの評価に不可欠である。そのような目的で、本発明による核酸を使用した、本明細書で開示されまたは当業者に知られている検出方法のいずれかを使用することができる。本発明のさらなる態様では、本発明による核酸を検出するサンドイッチハイブリダイゼーションアッセイが提供される。そのようなサンドイッチハイブリダイゼーションアッセイに関連して、捕捉プローブおよび検出プローブが使用される。捕捉プローブは、本発明による核酸の第1の部分と本質的に相補的であり、検出プローブは、本発明による核酸の第2の部分と本質的に相補的である。捕捉および検出プローブはどちらも、DNAヌクレオチド、修飾DNAヌクレオチド、修飾RNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド、LNAヌクレオチド、および/またはPNAヌクレオチドによって形成することができる。
【0249】
したがって、捕捉プローブは、本発明による核酸の5’末端と本質的に相補的であるヌクレオチドのストレッチを含み、検出プローブは、本発明による核酸の3’末端と本質的に相補的であるヌクレオチドのストレッチを含む。この場合では、捕捉プローブはその5’末端を介して表面またはマトリックスに固定化され、その5’末端で直接、またはその5’末端と表面もしくはマトリックスの間のリンカーを介して捕捉プローブを固定化することができる。しかし、原理上、リンカーは捕捉プローブの各ヌクレオチドと連結することができる。リンカーは、親水性リンカーによって、または当業者に知られているD−DNAヌクレオチド、修飾D−DNAヌクレオチド、D−RNAヌクレオチド、修飾D−RNAヌクレオチド、D−LNAヌクレオチド、PNAヌクレオチド、L−RNAヌクレオチド、L−DNAヌクレオチド、修飾L−RNAヌクレオチド、修飾L−DNAヌクレオチドおよび/もしくはL−LNAヌクレオチドによって形成することができる。
【0250】
あるいは、捕捉プローブは、本発明による核酸の3’末端と本質的に相補的であるヌクレオチドのストレッチを含んでもよく、検出プローブは、本発明による核酸の5’末端と本質的に相補的であるヌクレオチドのストレッチを含む。この場合では、捕捉プローブはその3’末端を介して表面またはマトリックスに固定化され、その3’末端で直接、またはその3’末端と表面もしくはマトリックスの間のリンカーを介して捕捉プローブを固定化することができる。しかし、原理上、リンカーは本発明による核酸と本質的に相補的であるヌクレオチドのストレッチの各ヌクレオチドと連結することができる。リンカーは、親水性リンカーによって、または当業者に知られているD−DNAヌクレオチド、修飾D−DNAヌクレオチド、D−RNAヌクレオチド、修飾D−RNAヌクレオチド、D−LNAヌクレオチド、PNAヌクレオチド、L−RNAヌクレオチド、L−DNAヌクレオチド、修飾L−RNAヌクレオチド、修飾L−DNAヌクレオチドおよび/もしくはL−LNAヌクレオチドによって形成することができる。
【0251】
本発明による核酸とハイブリダイズできる捕捉および検出プローブそれぞれのヌクレオチド数は様々であり、捕捉プローブおよび/または検出プローブおよび/または本発明による核酸それ自体のヌクレオチド数に依存し得る。本発明による核酸とハイブリダイズできる捕捉プローブおよび検出プローブのヌクレオチドの合計数は、最大で本発明による核酸に含まれるヌクレオチド数であるはずである。検出プローブおよび捕捉プローブそれぞれについて独立して典型的には2〜10ヌクレオチドである最小のヌクレオチド数は、本発明による核酸の5’末端または3’末端それぞれとのハイブリダイゼーションを可能にするはずである。
【0252】
さらに、検出プローブは、好ましくは、本明細書においてすでに記載されているように検出できるマーカー分子または標識を保有する。標識またはマーカー分子は、原理上、検出プローブの各ヌクレオチドまたは検出プローブの各部分と連結することができる。好ましくは、標識またはマーカーは、検出プローブの5’末端または3’末端に位置し、本発明による核酸と相補的な検出プローブ内のヌクレオチドと標識の間にリンカーを挿入することができる。リンカーは、親水性リンカーによって、または当業者に知られているD−DNAヌクレオチド、修飾D−DNAヌクレオチド、D−RNAヌクレオチド、修飾D−RNAヌクレオチド、D−LNAヌクレオチド、PNAヌクレオチド、L−RNAヌクレオチド、L−DNAヌクレオチド、修飾L−RNAヌクレオチド、修飾L−DNAヌクレオチドおよび/もしくはL−LNAヌクレオチドによって形成することができる。
【0253】
ヘプシジンを検出する方法の実施形態では、本発明による核酸の検出は、以下の通りに実施することができる。
本発明による核酸を、その末端の1つで捕捉プローブと、その他の末端で検出プローブとハイブリダイズさせる。その後、非結合検出プローブ、すなわち本発明による核酸と結合していない検出プローブを例えば1つまたはいくつかの洗浄ステップにより除去する。続いて、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO/2008/052774でより詳細な概略が述べられているように、好ましくは標識またはマーカー分子を保有する結合検出プローブの量を測定することができる。
【0254】
好ましくは本明細書において、治療という用語は、好ましい実施形態ではそれに加えてまたはその代わりに予防および/または経過観察を含む。
【0255】
好ましくは本明細書において、疾患および障害という用語は、そうでないと示さない場合は互換的に使用されるものとする。
【0256】
本明細書において、含む(comprise)という用語は、好ましくは、そのような用語の前にあるまたはそれによって述べられる内容を限定することを意図していない。しかし、代替の実施形態では、その用語は、含有している(containing)の意味で、したがって、そのような用語の前にあるまたはそれによって述べられる内容を限定するように理解されるものとする。
【0257】
種々の配列番号、本明細書で使用される本発明による核酸分子および標的分子ヘプシジンの化学的性質、その実際の配列ならびに内部参照番号が以下の表にまとめられている。
【0258】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【表1D】
【表1E】
【表1F】
【表1G】
【表1H】
【表1I】
【表1J】
【表1K】
【表1L】
【表1M】
【表1N】
【表1O】
【表1P】
【表1Q】
【表1R】
【表1S】
【表1T】
【表1U】
【表1V】
【表1W】
【0259】
それからさらなる特徴、実施形態および利点を得ることができる図面、実施例および配列表によって、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0260】
図1】A型ヘプシジン結合核酸の配列のアラインメントを示す。
図2】A型ヘプシジン結合核酸の配列のアラインメントを示す。
図3】A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001の誘導体を示す。
図4】A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001の誘導体を示す。
図5】B型ヘプシジン結合核酸の配列のアラインメントを示す。
図6】B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001の誘導体を示す。
図7】C型ヘプシジン結合核酸の配列のアラインメントを示す。
図8】C型ヘプシジン結合核酸238−C4−001の誘導体を示す。
図9】他のヘプシジン結合核酸の配列のアラインメントを示す。
図10】ヒトヘプシジン−25、カニクイザルヘプシジン−25、マーモセットヘプシジン−25、マウスヘプシジン−25およびラットヘプシジン−25に対するヘプシジン結合核酸223−C5−001、229−B1−002、238−C4−006、238−D4−001および238−D4−008の結合に関するデータを示す。
図11】ヒトヘプシジン−25、ヘプシジン−22およびヘプシジン−20に対するヘプシジン結合核酸223−C5−001、229−B1−002、238−C4−006、238−D4−001および238−D4−008の結合に関するデータを示す。
図12】ヒトヘプシジン−25に対するヘプシジン結合核酸223−C5−001−5’−PEG、229−B1−002−5’−PEG、238−C4−006−5’−PEG、238−D4−002−5’−PEGおよび238−D4−008−5’−PEGの結合に関するデータを示す。
図13】37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に結合するA型ヘプシジン結合核酸223−C5−001のアプタマーのK値を表示するBiacore2000センサーグラムを示し、ストレプトアビジンカップリング手順により、37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジンをストレプトアビジンがコンジュゲートしたセンサーチップに固定し、経時的に応答(RU)として表した。
図14】ヘプシジン結合核酸を互いに比較し、最適なヘプシジン結合核酸を同定するための順位付け実験の結果を示し、A型ヘプシジン結合核酸233−C5−001を標識し、37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に対する核酸233−C5−001の結合を、10、50または250nMの標識していない競合相手RNA、異なる型のヘプシジン結合核酸のそれぞれの存在下で実施し、ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25の濃度にわたる223−C5−001の結合として表した(「競合的プルダウンアッセイ」)。
図15】ヘプシジン結合核酸を互いに比較し、最適なヘプシジン結合核酸を同定するための順位付け実験の結果を示し、A型ヘプシジン結合核酸233−C5−001を標識し、37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に対する核酸233−C5−001の結合を、10、50または250nMの標識していない競合相手RNA、異なる型のヘプシジン結合核酸のそれぞれの存在下で実施し、ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25の濃度にわたる223−C5−001の結合として表した(「競合的プルダウンアッセイ」)。
図16】37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に結合するA型ヘプシジン結合核酸229−B1−001のアプタマーのK値を表示するBiacore2000センサーグラムを示し、ストレプトアビジンカップリング手順により、37℃でビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25をストレプトアビジンがコンジュゲートしたセンサーチップに固定し、経時的に応答(RU)として表した。
図17A】鉄により誘導されるフェロポーチンの上方制御に対するヒトヘプシジン−25の効果におけるスピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGの効果を示し、ヘプシジンヒト−25)またはヘプシジン−25)とスピーゲルマーでの刺激後にJ774.1細胞から得た溶解物を、SDS−ゲル電気泳動により分離し、マウスフェロポーチンに対する抗体を使用するウェスタンブロットにより分析した。
図17B】鉄により誘導されるフェロポーチンの上方制御に対するヒトヘプシジン−25の効果におけるスピーゲルマー238−D4−008−5’−アミノおよび238−D4−008−5’−PEG(=NOX−H94)の効果を示し、ヘプシジンヒト−25)またはヘプシジン−25)とスピーゲルマーでの刺激後にJ774.1細胞から得た溶解物を、SDS−ゲル電気泳動により分離し、マウスフェロポーチンに対する抗体を使用するウェスタンブロットにより分析した。
図18】インビボでのヘプシジン活性に対するスピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGの効果を示し、ヒトヘプシジンにより引き起こされた血清鉄の減少は、ヒトヘプシジンの注射前にスピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGを適用することにより完全に遮断される。
図19】37℃でビオチン化ヒトL−ヘプシジンに結合するヘプシジン結合核酸NOX−H94(=238−D4−008−5’−PEG)のスピーゲルマーのK値を表示するBiacore2000センサーグラムを示し、ストレプトアビジンカップリング手順により、37℃でビオチン化ヒトL−ヘプシジンをストレプトアビジンがコンジュゲートしたセンサーチップに固定し、経時的に応答(RU)として表した。
図20】インビボでのヘプシジン活性に対するスピーゲルマーNOX−H94(=238−D4−008−5’−PEG)の効果を示し、ヒトヘプシジンによって引き起こされた血清鉄の減少は、ヒトヘプシジンの注射前にスピーゲルマーNOX−H94(=238−D4−008−5’−PEG)を適用することにより完全に遮断される。
図21】炎症による貧血のための動物モデル(カニクイザル)におけるスピーゲルマーNOX−H94(=238−D4−008−5’−PEG)の効果を示し、IL−6はヘプシジン分泌を誘導した後、非ヒト霊長類において貧血を生じ、この実験において、ヒトIL−6は、媒体/IL−6処置したサルの前投与の値の27%までの血清鉄濃度の減少を生じ、血清鉄の減少は、ヒトIL−6の注射前にスピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGを適用することにより完全に遮断される。
【実施例】
【0261】
<実施例1:ヒトヘプシジンに結合する核酸>
標的としてビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25を使用して、ヒトヘプシジン、特にヒトヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22およびヒトヘプシジン−20に結合するいくつかの核酸を作製することができ、そのヌクレオチド配列を図1から9に示す。この核酸を、ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25を用いる直接プルダウンアッセイ(実施例3)、競合的プルダウンアッセイ(実施例3)および/もしくは表面プラズモン共鳴測定(実施例4)を使用してアプタマー、すなわちD−核酸レベルに関して特徴付けたか、または競合的プルダウンアッセイ(実施例3)、表面プラズモン共鳴測定(実施例4)、インビトロアッセイ(実施例5)において、および/もしくはインビボアッセイ(実施例6および7)においてスピーゲルマーレベル、すなわちヒトヘプシジン−25(ヒトL−ヘプシジン−25)の天然の立体配置を有するL−核酸に関して特徴付けた。スピーゲルマーおよびアプタマーは実施例2に記載されるように合成した。
【0262】
このように作製した核酸分子は種々の配列モチーフを示し、それによって、3つの主な型を特定し、A型、B型およびC型ヘプシジン結合核酸と定義し、図1から8に示す。
【0263】
ヌクレオチド配列モチーフの定義のために、曖昧なヌクレオチドに関してIUPAC略称を以下のように使用する。
S 強 GまたはC、
W 弱 AまたはU、
R プリン GまたはA、
Y ピリミジン CまたはU、
K ケト GまたはU、
M イミノ AまたはC、
B Aでない CまたはUまたはG、
D Cでない AまたはGまたはU、
H Gでない AまたはCまたはU、
V Uでない AまたはCまたはG、
N 全て AまたはGまたはCまたはU。
【0264】
特に記載がない場合、任意の核酸配列またはストレッチおよびボックスの配列は、それぞれ5’→3’の方向で示す。
【0265】
1.1 A型ヘプシジン結合核酸
図1図2図3および図4に示すように、A型ヘプシジン結合核酸はヌクレオチドの中心ストレッチを1つ含み、そのヌクレオチドの中心ストレッチは、少なくとも2つのヌクレオチドのストレッチ(本明細書においてヌクレオチドのボックスとも称する)を含み、潜在的なヘプシジン結合モチーフである、ヌクレオチドボックスAの第1のストレッチおよびヌクレオチドボックスBの第2のストレッチを定義する。
【0266】
ヌクレオチドボックスAの第1のストレッチおよびヌクレオチドボックスBの第2のストレッチは、ヌクレオチドの連結ストレッチによって互いに連結される。
【0267】
ヌクレオチドの連結ストレッチ内で、一部のヌクレオチドが互いにハイブリダイズでき、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0268】
一般に、A型ヘプシジン結合核酸は、それらの5’末端および3’末端において、ヌクレオチドの末端ストレッチである、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチを含む。ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは互いにハイブリダイズでき、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0269】
A型ヘプシジン結合核酸の5つのヌクレオチドのストレッチである、ボックスA、ボックスB、ヌクレオチドの連結ストレッチ、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ−ボックスA−ヌクレオチドの連結ストレッチ−ボックスB−ヌクレオチドの第2の末端ストレッチまたはヌクレオチドの第1の末端ストレッチ−ボックスB−ヌクレオチドの連結ストレッチ−ボックスA−ヌクレオチドの第2の末端ストレッチのように互いに異なって配列されてもよい。
【0270】
しかしながら、A型ヘプシジン結合核酸の5つのヌクレオチドのストレッチである、ボックスA、ボックスB、ヌクレオチドの連結ストレッチ、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチはまた、以下、ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ−ボックスA−ヌクレオチドの連結ストレッチ−ボックスB−ヌクレオチドの第1の末端ストレッチまたはヌクレオチドの第2の末端ストレッチ−ボックスB−ヌクレオチドの連結ストレッチ−ボックスA−ヌクレオチドの第1の末端ストレッチのように互いに配列されてもよい。
【0271】
ヌクレオチドの定義されたボックスまたはストレッチの配列は、ヒトヘプシジン、特にヒトヘプシジン−25に対する結合親和性に影響を与えるA型ヘプシジン結合核酸の間で異なってもよい。異なるA型ヘプシジン結合核酸の結合分析に基づいて、以下に記載するようにボックスAおよびBならびにそれらのヌクレオチド配列は個々に、より好ましくはそれらの全体がヒトヘプシジン、特にヒトヘプシジン−25との結合に不可欠である。
【0272】
本発明によるA型ヘプシジン結合核酸を図1〜4に示す。それらの全てを、アプタマーおよび/またはスピーゲルマーとして、ヒトヘプシジン−25、より正確にはビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25およびビオチン化ヒトL−ヘプシジン−24にそれぞれ結合する、それらの能力について試験した。ヒトヘプシジン−25に対するその結合親和性について特徴付けた第1のA型ヘプシジン結合核酸は、ヘプシジン結合核酸223−C5−001である。ヒトヘプシジン−25についての平衡結合定数Kは、表面プラズモン共鳴測定により決定した(K=1.2nM、アプタマー配列を用いて決定した(図13)、K=2.7nM、スピーゲルマー配列を用いて決定した(図11))。ヒトヘプシジン−25に加えて、ヘプシジン結合核酸223−C5−001は、ほぼ同じ結合親和性でヒトヘプシジン−20に結合する(図11)。
【0273】
A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001の誘導体223−C5−002、223−C5−007および223−C5−008は、A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001と比較して競合的プルダウンアッセイにおいて低い結合親和性を示した(図3)。実際に、ヘプシジン結合核酸223−C5−006は、同じアッセイ形式において、223−C5−001と同様のヒトヘプシジン−25に対する結合を示した(図3)。
【0274】
A型ヘプシジン結合核酸223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−F5−001、223−G4−001、223−A4−001、229−C2−001、229−B4−001、229−E2−001、229−B1−001 229−G1−001、229−C4−001、238−A1−001、238−E2−001、237−A7−001、236−G2−001、236−D1−001、229−D1−001および229−E1−001を、A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001に対する競合的プルダウンアッセイにおいてアプタマーとして試験し、最初に放射性標識したアプタマー223−C5−001の結合親和性を、直接プルダウンアッセイを使用して決定した。核酸229−E1−001によるA型ヘプシジン結合核酸223−C5−001の結合の競合は、観測できなかった(図2および15)。この観測により、核酸229−E1−001は、ヒトヘプシジン−25に対する結合親和性を有さないか、または非常に低い結合親和性を有することが想定される。A型ヘプシジン結合核酸223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−A4−001、229−C2−001、229−B4−001、229−E2−001、229−C4−001、238−A1−001、238−E2−001、237−A7−001、236−G2−001および236−D1−001は、A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001と比較して競合的プルダウンアッセイにおいて低い結合親和性を示した(図1、14および15)。A型ヘプシジン結合核酸223−F5−001、223−G4−001、229−G1−001および229−D1−001は、223−C5−001と同様の結合親和性を示した(図1、2、14および15)。ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25についてのより良い結合親和性が、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001について観測できた(図1および15)。したがって、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001をさらに特徴付けた。A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(K=0.5nM、アプタマー配列を用いて決定した(図16)、K=1.25nM、スピーゲルマー配列を用いて決定した(データは示さず))。
【0275】
A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001の誘導体229−B1−003、229−B1−004、229−B1−005および229−B1−006は、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001と比較して競合的プルダウンアッセイにおいて低い結合親和性を示した(図4)。実際に、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−002、229−B1−007、229−B1−008、229−B1−009、229−B1−010および229−B1−011は、同じアッセイ形式において、229−B1−001と比較して、ヒトヘプシジン−25に対する同様の結合またはわずかに向上した結合を示した(図4)。
【0276】
A型ヘプシジン結合核酸229−B1−002をさらに特徴付けた。A型ヘプシジン結合核酸229−B1−002の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(K=1.47nM、アピーゲルマー(apiegelmer)配列を用いて決定した(図10および11))。
【0277】
さらに、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−002の結合特異性/選択性を、以下のヘプシジン分子である、ヒトヘプシジン−25、カニクイザルヘプシジン−25、マウスヘプシジン−25、ラットヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22およびヒトヘプシジン−20を用いて試験した(図10および11)。A型ヘプシジン結合核酸229−B1−002は、ヒトヘプシジン−25、カニクイザルヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22およびヒトヘプシジン−20と同様の結合を示し、マウスヘプシジン−25およびラットヘプシジン−25に対する結合を示さない(図10および11)。
【0278】
A型核酸229−E1−001を除いて、本発明による全てのA型ヘプシジン結合核酸は、第1のストレッチボックスAを含む。A型ヘプシジン結合核酸229−D1−001において、ボックスAは、第2の末端ストレッチのその3’末端から5’末端で連結される(図2)。全ての他のA型ヘプシジン結合核酸において、ボックスAは、第1の末端ストレッチのその5’末端から3’末端で連結される(図1から4)。ボックスAを含むA型ヘプシジン結合核酸は、ボックスAについて配列5’ WAAAGUWGAR 3’を共有する。ボックスAについて5’ AAAAGUAGAA 3’および5’ AAAAGUUGAA 3’の配列をそれぞれ含むA型ヘプシジン結合核酸229−C4−001/236−G2−001および236−D1−001以外の全ての他のA型ヘプシジン結合核酸のボックスAの配列は5’ UAAAGUAGAG 3’である。
【0279】
A型ヘプシジン結合核酸236−D1−001(図2を参照)を除いて、全てのA型ヘプシジン結合核酸は、5’ RGMGUGWKAGUKC 3’の配列を有するボックスBを含む。A型ヘプシジン結合核酸236−D1−001は、他のA型ヘプシジン結合核酸:5’ GGGAUAUAGUGC 3’のボックスのコンセンサス配列と異なるボックスBを含む。ボックスAを含まない核酸229−E1−001は、上記のようにヒトヘプシジン−25に結合しないか、または弱く結合するので、ボックスB以外に、ボックスAが、ヒトヘプシジン−25に対する結合、特にヒトヘプシジン−25に対する高親和結合に不可欠であることが想定される。A型ヘプシジン結合核酸229−D1−001において、ボックスBは、第1の末端ストレッチのその5’末端から3’末端で連結される(図2)。全ての他のA型ヘプシジン結合核酸において、ボックスB(ヘプシジン結合核酸229−E1−001を除く)は、第2の末端ストレッチのその3’末端から5’末端で連結される(図1、3および4)。ボックスBの異なる配列を有するヘプシジン結合核酸は、ヒトヘプシジン−25:
a)229−B1−001および誘導体、223−C5−001および誘導体、223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−F5−001、223−G4−001、223−A4−001、238−E2:5’ GGCGUGAUAGUGC 3’;
b)229−B4−001、229−C2−001、229−E2−001:5’ GGAGUGUUAGUUC 3’;
c)229−G1−001:5’ GGCGUGAGAGUGC 3’;
d)229−C4−001、236−G2−001:5’ AGCGUGAUAGUGC 3’
e)238−A1−001:5’ GGCGUGUUAGUGC 3’
f)236−D1−001:5’ GGGAUAUAGUGC 3’
に対して高い結合親和性を示した。
【0280】
ボックスAおよびボックスBを含むヘプシジン結合核酸は、10〜18ヌクレオチドのヌクレオチドの連結ストレッチによって互いに連結される。ヌクレオチドの連結ストレッチは、5’→3’方向で、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチ、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチ、およびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチを含み、好ましくはヌクレオチドの第1の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは、分子内に必ずしも与えられるわけではない。ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチのヌクレオチドが互いにハイブリダイズする場合、それらは、互いにハイブリダイズしないヌクレオチド(すなわち第2のサブストレッチ)のループ間で形成される。ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの連結ストレッチのヌクレオチドの第1のサブストレッチおよびヌクレオチドの第3のサブストレッチは、3つ(229−B1−001および誘導体、229−G1−001を参照)、4つ(223−C5−001および誘導体、223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−F5−001、223−G4−001、223−A4−001、229−C2−001、229−B4−001、229−E2−001、238−A1−001、238−E2−001、237−A7−001を参照)、5つ(229−D1−001)または6つ(229−C4−001、236−G2−001)のヌクレオチドを含む。A型結合核酸236−D1−001は、18ヌクレオチドのヌクレオチドの連結ストレッチを含み、前記ヌクレオチドの連結ストレッチの特異的配列に起因して、ヌクレオチドの連結ストレッチは、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチ、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチに分類できない。
【0281】
ヘプシジン結合核酸223−C5−001およびその誘導体、223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−F5−001、223−G4−001、238−E2−001ならびに223−A4−001について示したように、ヌクレオチドの連結ストレッチの第1のサブストレッチは、配列5’ GGAC 3’または5’ GGAU 3’または5’ GGA 3’を含み、ヌクレオチドの連結ストレッチの第3のサブストレッチは5’ GUCC 3’のヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチドの連結ストレッチの第1および第3のサブストレッチの他の組み合わせは、
a)5’ GCAG 3’および5’ CUGC 3’(229−C2−001、229−B4−001、229−E2−001、237−A7−001)または
b)5’ GAC 3’および5’ GUC 3’(229−B1−001およびその誘導体、229−G1−001)または
c)5’ ACUUGU 3’および5’ GCAAGU 3’(229−C4−001)または
d)5’ ACUUGU 3’および5’ GCAAGC 3’(236−G2−001)または
e)5’ UCCAG 3’および5’ CUGGA 3’(229−D1−001)または
f)5’ GGGC 3’および5’ GCCC 3’(238−A1−001)
である。
【0282】
図1、2、3および4に示すように、ヌクレオチドの連結ストレッチの第2のサブストレッチは、3から5個のヌクレオチドを含み、種々の配列は非常に不均一である。5’ CGAAA 3’、5’ GCAAU 3’、5’ GUAAU 3’、5’ AAUU 3’、5’ AUAAU 3’、5’ AAUA 3’、5’ CCA 3’、5’ CUA 3’、5’ UCA 3’、5’ ACA 3’、5’ GUU 3’、5’ UGA 3’および5’ GUA 3’。ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの連結ストレッチの第2のサブストレッチは、以下の一般的な配列に集約できる。5’ VBAAW 3’、5’ AAUW 3’または5’ NBW 3’。
【0283】
しかしながら、最適な結合親和性を有するヘプシジン結合核酸は、ヌクレオチドの連結ストレッチの第2のサブストレッチについて以下の配列:
a)5’ AAUU 3’(229−B1およびその誘導体)
b)5’ CCA 3’(223−C5およびその誘導体)
c)5’ CUA 3’(223−F5−001)
d)5’ UCA 3’(223−G4−001)
e)5’ AAUA 3’(229−G1−001)
を含む。
【0284】
上記のように、連結ストレッチの第1および第3のサブストレッチのヌクレオチド配列は互いに関連する。さらに、ヌクレオチドの連結ストレッチの第2のサブストレッチのヌクレオチド配列は、以下の配列またはヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの連結ストレッチの一般的な配列:
a)5’ GGACBYAGUCC 3’(223−C5−001、223−C5−002、223−C5−006、223−C5−007、223−B5−001、223−A5−001、223−A3−001、223−F5−001、223−G4−001、238−E2−001)、好ましくは5’ GGACCCAGUCC 3’、5’ GGACCUAGUCC 3’もしくは5’ GGACUCAGUCC 3’もしくは5’ GGACGUAGUCC 3’、より好ましくは5’ GGACCCAGUCC 3’、5’ GGACCUAGUCC 3’もしくは5’ GGACUCAGUCC 3’、または
b)5’ GGAUACAGUCC 3’(223−A4−001)、または
c)5’ GCAGGYAAUCUGC 3’(229−C2−001、229−B4−001、229−E2−001)、好ましくは5’ GCAGGUAAUCUGC 3’もしくは5’ GCAGGCAAUCUGC 3’、より好ましくは5’ GCAGGUAAUCUGC 3’、または
d)5’ GACAAUWGUC 3’(229−B1−001および誘導体229−G1−001)、好ましくは5’ GACAAUUGUC 3’もしくは5’ GACAAUAGUC 3’、または
e)5’ ACUUGUCGAAAGCAAGY 3’(229−C4−001、236−G2−001)、または
f)5’ UCCAGGUUCUGGA 3’(229−D1−001)、または
g)5’ GGGCUGAGCCC 3’(238−A1−001)、または
h)5’ GCAGAUAAUCUGC 3’(237−A7−001)、または
i)5’ GGACCAGUCC 3’(223−C5−008)
をもたらすヌクレオチドの第1および第3のサブストレッチの特異的対に関する。
【0285】
以前に記載したように、A型結合核酸236−D1−001のヌクレオチドの連結ストレッチは、ヌクレオチドの第1の連結サブストレッチ、ヌクレオチドの第2の連結サブストレッチおよびヌクレオチドの第3の連結サブストレッチに分類できない。しかしながら、A型結合核酸236−D1−001のヌクレオチドの連結ストレッチの配列は5’ AUUUGUUGGAAUCAAGCA 3’である。
【0286】
A型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチは、4つ(例えば229−C4−001)、5つ(例えば223−C5−007)、6つ(例えば229−B1−001)または7つ(例えば223−C5−001)のヌクレオチドを含み、ストレッチは任意選択で互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。この二本鎖構造は4〜7個の塩基対からなり得る。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0287】
全ての試験したヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチを組み合わせると、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチについて、およびヌクレオチドの第2の末端ストレッチについての一般式は、5’ XBKBK 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ MVVVX 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)であり、
はGまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在であり、好ましくは
a)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
b)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、または
d)XはGであり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
e)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
f)Xは不在であり、Xは不在であり、XはVであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、または
g)Xは不在であり、XはSであり、XはVであり、XはBであり、Xは不在であり、Xは不在であり、または
f)Xは不在であり、Xは不在であり、XはVまたは不在であり、XはBまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0288】
しかしながら、最適な結合親和性を有するヘプシジン結合核酸は、ヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチの以下の組み合わせ:
a)223−C5−001、223−F5−001、223−G4−001:5’ GCACUCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGAGUGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ);
b)229−B1−002:5’ GCUGUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CACAGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ);
c)229−B1−001、229−G1−001:5’ CGUGUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CACACG 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ);
d)229−D1−001:5’ CGUGCU 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ AGCACG 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ);
e)223−C5−006:5’ CGCGCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGCGCG 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
f)229−B1−007:5’ GCCGUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CACGGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
g)229−B1−008:5’ GCGGUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CACCGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
h)229−B1−009:5’ GCUGCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGCAGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
i)229−B1−010:5’ GCUGGG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CCCAGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
j)229−B1−011:5’ GCGGCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGCCGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
を含む。
【0289】
スピーゲルマーとしてヘプシジン結合核酸の機能性を検証するために、A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001および229−B1−002を、その5’末端にアミノ基を含むスピーゲルマーとして合成した。アミノ修飾スピーゲルマー223−C5−001−5’−アミノおよび229−B1−002−5’−アミノに、40kDaのPEG部分を連結して、A型ヘプシジン結合核酸223−C5−001−5’−PEGおよび229−B1−002−5’−PEGを得た。スピーゲルマーの合成およびPEG化は実施例2に記載している。
【0290】
スピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGおよび229−B1−002の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(図12):
223−C5−001−5’−PEG:K=4.44nM;
229−B1−002−5’−PEG:K=1.92nM。
【0291】
スピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGを試験して、インビトロおよびインビボでのヘプシジンの機能を阻害/アンタゴナイズした。実施例5に示すように、スピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGは、インビトロでのフェロポーチンのヘプシジンにより誘導される下方制御を阻害する。スピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGのインビボでの使用についての適用性を、炎症による貧血のための動物モデルにおいて試験し、血清鉄低下を誘導するヒトヘプシジン−25の公知の特性を利用した(実施例5)。
【0292】
1.2 B型ヘプシジン結合核酸
図5および6に示すように、B型ヘプシジン結合核酸は、潜在的ヘプシジン結合モチーフを定義するヌクレオチドの1つの中心ストレッチを含む。
【0293】
一般に、B型ヘプシジン結合核酸は、それらの5’末端および3’末端において、ヌクレオチドの末端ストレッチである、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチを含む。ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは互いにハイブリダイズでき、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0294】
B型ヘプシジン結合核酸の3つのストレッチである、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ、ヌクレオチドの中心ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ−ヌクレオチドの中心ストレッチ−ヌクレオチドの第2の末端ストレッチまたはヌクレオチドの第2の末端ストレッチ−ヌクレオチドの中心ストレッチ−ヌクレオチドの第1の末端ストレッチのように互いに異なって配列されてもよい。
【0295】
定義されたストレッチの配列は、ヒトヘプシジン、特にヒトヘプシジン−25に対する結合親和性に影響を与えるB型ヘプシジン結合核酸の間で異なっていてもよい。異なるヘプシジン結合核酸の結合分析に基づいて、以下に記載するようにヌクレオチドの中心ストレッチおよびそのヌクレオチド配列は、個々に、より好ましくはその全体がヒトヘプシジン−25との結合に不可欠である。
【0296】
本発明によるB型ヘプシジン結合核酸を図5および6に示す。それらの全てを、アプタマーまたはスピーゲルマーとして、ヒトヘプシジン−25、より正確にはビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25およびビオチン化ヒトL−ヘプシジン−25にそれぞれ結合するそれらの能力について試験した。
【0297】
B型ヘプシジン結合核酸238−D2−001、238−D4−001、238−H1−001、238−A2−001、238−G2−001、238−G4−001、238−G3−001を、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001に対する競合的プルダウンアッセイにおいてアプタマーとして試験した。B型ヘプシジン結合核酸238−G4−001のみが、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001と比較して、競合的プルダウンアッセイにおいて低い結合親和性を示した(図5)。
【0298】
B型ヘプシジン結合核酸238−D2−001、238−D4−001、238−H1−001、238−A2−001、238−G2−001および238−G3−001は、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001と比較して向上した結合親和性を示した(図5)。B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001をさらに特徴付けた。スピーゲルマー238−D4−001の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(K=0.51nM(図5))。
【0299】
B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001の誘導体238−D4−003、238−D4−005、238−D4−007、238−D4−009、238−D4−010、238−D4−011、および238−D4−013は、B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001と比較して、競合的プルダウンアッセイにおいて(または表面プラズモン共鳴測定によって示されるように)低い結合親和性を示した(図6)。実際に、ヘプシジン結合核酸238−D4−002、238−D4−004、238−D4−006、238−D4−008および238−D4−012は、同じアッセイ形式において、ヒトヘプシジンに対して、238−D4−001と同様の結合を示した(図6)。スピーゲルマー238−D4−002、238−D4−006および238−D4−008の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した。238−D4−001の誘導体の算出した平衡結合定数は、238−D4−001自体について示したものと同じ範囲内にある(図6)。
【0300】
さらに、B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001および238−D4−008の結合選択性を、以下のヘプシジン分子:ヒトヘプシジン−25、カニクイザルヘプシジン−25、マーモセットヘプシジン−25(238−D4−008に関してのみ)、マウスヘプシジン−25、ラットヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22(238−D4−008を除いて)およびヒトヘプシジン−20を用いて試験した(図10および11)。B型ヘプシジン結合核酸238−D4−001および238−D4−008は、ヒトヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22、ヒトヘプシジン−20およびカニクイザルヘプシジン−25と同様の結合、マーモセットヘプシジン−25に対して弱い結合を示し、マウスヘプシジン−25およびラットヘプシジン−25に対して結合は示さない(図10および11)。
【0301】
本発明によるB型ヘプシジン結合核酸は、ヌクレオチドの中心ストレッチについて配列5’ RKAUGGGAKUAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’または5’ RKAUGGGAKAAGUAAAUGAGGRGUWGGAGGAAR 3’を共有する。ヒトヘプシジン−25に対して同じ結合親和性を示したB型ヘプシジン結合核酸238−D4−001およびその誘導体は、ヌクレオチドの中心ストレッチについて配列5’ GUAUGGGAUUAAGUAAAUGAGGAGUUGGAGGAAG 3’を含むコンセンサス配列を共有する。
【0302】
B型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチは、5つ(238−D4−004、238−D4−005、238−D4−008、238−D4−009)、6つ(238−D4−002、238−D4−003、238−D4−006、238−D4−007、238−D4−010、238−D4−011、238−D4−012、238−D4−013)または8つ(238−D2−001、238−D4−001、238−H1−001、238−A2−001、238−G2−001、238−G4−001、238−G3−001)のヌクレオチドを含み、ストレッチは任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。この二本鎖構造は5〜8個の塩基対からなり得る。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0303】
全ての試験したB型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチを組み合わせると、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチについて、およびヌクレオチドの第2の末端ストレッチについての一般式は、5’ XSBSBC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GVBVBX 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)であり、式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在であり、好ましくは
a)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
d)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
e)Xは不在であり、Xは不在であり、XはBであり、XはSであり、XはCであり、Xは不在であり、または
f)Xは不在であり、XはGであり、XはBであり、XはSであり、Xは不在であり、Xは不在であり、または
g)Xは不在であり、Xは不在であり、XはBまたは不在であり、XはSまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0304】
しかしながら、B型ヘプシジン結合核酸に結合する最適なものは、ヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチの以下の組み合わせ:
a)238−D2−001:5’ AGCGUGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGUGCGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
b)238−D4−001:5’ AGCGUGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCAUGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
c)238−H1−001:5’ AGUGUGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GAUGCGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
d)238−A2−001:5’ AGUGUGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCAUGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
e)238−G2−001:5’ AGCGUGCC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGUGCGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
f)238−G3−001:5’ AGCGCGCC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCGCGCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
g)238−D4−002:5’ GCGCGC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GCGCGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
h)238−D4−006:5’ GGUGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCAUC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
i)238−D4−012:5’ GGCGUC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCGCC 3’(ヌクレオチドの3’末端ストレッチ)
j)238−D4−008:5’ GCGCC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GGCGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
k)238−D4−004:5’ GGCGC 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ GCGCC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
を含む。
【0305】
スピーゲルマーとしてB型ヘプシジン結合核酸の機能性を提供するために、ヘプシジン結合核酸238−D4−002および238−D4−008を、その5’末端にアミノ基を含むスピーゲルマーとして合成した。アミノ修飾スピーゲルマー238−D4−002−5’−アミノおよび238−D4−008−5’−アミノに、40kDaのPEG部分を連結して、ヘプシジン結合核酸238−D4−002−5’−PEGおよび238−D4−008−5’PEGを得た。スピーゲルマーの合成およびPEG化は実施例2に記載している。
【0306】
スピーゲルマー238−D4−002−5’−PEGおよび238−D4−008−5’−PEGの平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(図12):
238−D4−002−5’−PEG:0.53nM、
238−D4−008−5’−PEG:0.64nM。
【0307】
スピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGを試験して、インビトロおよびインビボでのヘプシジンの機能を阻害/アンタゴナイズした。実施例5に示すように、スピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGは、インビトロでのフェロポーチンのヘプシジンにより誘導される下方制御を阻害する。スピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGのインビボでの使用についての適用性を、炎症による貧血のための動物モデルにおいて試験し、血清鉄低下を誘導するヒトヘプシジン−25の公知の特性を利用した(実施例5、図20)。さらに、スピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGを、炎症による貧血のための別の動物モデル(カニクイザル)において試験し、非ヒト霊長類においてIL−6がヘプシジン分泌を誘導した後、貧血を生じた。この実験において、ヒトIL−6は、血清鉄濃度の減少をもたらす(実施例6、図21)。
【0308】
1.3 C型ヘプシジン結合核酸
図7および8に示すように、C型ヘプシジン結合核酸は、潜在的ヘプシジン結合モチーフを定義するヌクレオチドの1つの中心ストレッチを含む。
【0309】
一般に、C型ヘプシジン結合核酸は、それらの5末端および3’末端において、末端ストレッチである、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチを含む。ヌクレオチドの第1の末端ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは互いにハイブリダイズでき、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0310】
C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの3つのストレッチである、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ、ヌクレオチドの中心ストレッチおよびヌクレオチドの第2の末端ストレッチは、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ−ヌクレオチドの中心ストレッチ−ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ、またはヌクレオチドの第2の末端ストレッチ−ヌクレオチドの中心ストレッチ−ヌクレオチドの第1の末端ストレッチのように互いに異なって配列されてもよい。
【0311】
定義されたストレッチの配列は、ヒトヘプシジン、特にヒトヘプシジン−25に対する結合親和性に影響を与えるC型ヘプシジン結合核酸の間で異なっていてもよい。異なるC型ヘプシジン結合核酸の結合分析に基づいて、以下に記載するようなヌクレオチドの中心ストレッチおよびそのヌクレオチド配列は、個々に、およびより好ましくはその全体がヒトヘプシジンとの結合に不可欠である。
【0312】
本発明によるC型ヘプシジン結合核酸を図7および8に示す。それらの全てを、アプタマーまたはスピーゲルマーとして、ヒトヘプシジン−25、より正確にはビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25およびビオチン化ヒトL−ヘプシジン−25に結合するそれらの能力について試験した。
【0313】
C型ヘプシジン結合核酸238−C4−001、238−E3−001、238−F2−001、238−A4−001および238−E1−001を、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001に対する競合的プルダウンアッセイにおいてアプタマーとして試験した。C型ヘプシジン結合核酸は、A型ヘプシジン結合核酸229−B1−001と比較して向上した結合親和性を示した(図7)。C型ヘプシジン結合核酸238−C4−001をさらに特徴付けた。スピーゲルマー238−C4−001の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(K=0.9nM(図7))。
【0314】
C型ヘプシジン結合核酸238−C4−001の誘導体238−C4−003、238−C4−004、238−C4−005、238−C4−007、238−C4−008、238−C4−009、238−C4−011、238−C4−012、238−C4−013、238−C4−014、238−C4−024、238−C4−025および238−C4−062は、ヘプシジン結合核酸238−C4−001または238−C4−006と比較して、競合的プルダウンアッセイにおいて、または表面プラズモン共鳴測定によって、低い結合親和性を示した(図8)。核酸238−C4−063は、ヘプシジンに対する結合を示さなかった。実際に、ヘプシジン結合核酸238−C4−002、238−C4−006および238−C4−010は、同じアッセイにおいて、238−C4−001と同様のヒトヘプシジン−25に対する結合を示した(図8)。スピーゲルマー238−C4−002および238−C4−006の平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した。238−C4−001の誘導体の算出した平衡結合定数は、238−C4−001自体について示すものと同じ範囲内にある(図8)。
【0315】
さらに、C型ヘプシジン結合核酸238−C4−006の結合特異性/選択性を、以下のヘプシジン分子:ヒトヘプシジン−25、カニクイザルヘプシジン−25、マーモセットヘプシジン−25、マウスヘプシジン−25、ラットヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22およびヒトヘプシジン−20を用いて試験した(図10および11)。C型ヘプシジン結合核酸238−C4−006は、ヒトヘプシジン−25、ヒトヘプシジン−22、ヒトヘプシジン−20およびカニクイザルヘプシジン−25に対して同様の結合を示し、マーモセットヘプシジン−25、マウスヘプシジン−25およびラットヘプシジン−25に対する結合を示さない(図10および11)。
【0316】
ヘプシジン−25に対して結合を示さない核酸238−C4−063を除いて、本発明によるC型ヘプシジン結合核酸は、ヌクレオチドの中心ストレッチについて、配列5’ GRCRGCCGGVGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’または5’ GRCRGCCGGVAGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’を共有する。C型ヘプシジン結合核酸238−C4−001およびその誘導体238−C4−002、238−C4−005、238−C4−010ならびに同じ結合親和性を全て示したC型ヘプシジン結合核酸238−E3−001、238−F2−001、238−A4−001、238−E1−001は、コンセンサス配列5’ GRCRGCCGGGGGACACCAUAUACAGACUACKAUA 3’、および好ましくは配列_5’ GACAGCCGGGGGACACCAUAUACAGACUACGAUA 3’を共有する。
【0317】
C型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチは、4つ(238−C4−004、238−C4−011、238−C4−012、238−C4−013、238−C4−014)、5つ(238−C4−003、238−C4−005、238−C4−006、238−C4−007、238−C4−008、238−C4−009、238−C4−010、238−C4−024、238−C4−025、238−C4−062)、6つ(238−C4−002)または7つ(238−C4−001、238−E3−001、238−F2−001、238−A4−001、238−E1−001)のヌクレオチドを含み、ストレッチが任意選択的に互いにハイブリダイズし、ハイブリダイゼーション後に二本鎖構造が形成される。この二本鎖構造は4個〜7個の塩基対からなり得る。しかしながら、このようなハイブリダイゼーションは分子内に必ずしも与えられるわけではない。
【0318】
全ての試験したC型ヘプシジン結合核酸のヌクレオチドの第1および第2の末端ストレッチを組み合わせると、ヌクレオチドの第1の末端ストレッチについて、およびヌクレオチドの第2の末端ストレッチについての一般式は、5’ XSBSN 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ NSVSX 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)であり、式中、XはAまたは不在であり、XはGまたは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、XはCまたは不在であり、XはUまたは不在であり、好ましくは、
a)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
b)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、XはUであり、または
c)XはAであり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
d)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
e)Xは不在であり、Xは不在であり、XはRであり、XはYであり、XはCであり、Xは不在であり、または
f)Xは不在であり、XはGであり、XはRであり、XはYであり、Xは不在であり、Xは不在であり、または
g)Xは不在であり、Xは不在であり、XはRまたは不在であり、XはYまたは不在であり、Xは不在であり、Xは不在である。
【0319】
しかしながら、C型ヘプシジン結合核酸に結合する最適なものは、ヌクレオチドの第1および3’末端ストレッチの以下の組み合わせ:
a)238−C4−001、238−E3−001:5’ AGGCUCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGGGCCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)、
b)238−F2−001:5’ AGGCCCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGGGCCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)、
c)238−A4−001:5’ AGGCUUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGAGCCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)、
d)238−E1−001:5’ AGACUUG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGAGUCU 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)、
e)238−C4−002:5’ GGCUCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGGGCC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)、
f)238−C4−006:5’ GGCCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGGCC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
g)238−C4−010:5’ GCGCG 3’(ヌクレオチドの第1の末端ストレッチ)および5’ CGCGC 3’(ヌクレオチドの第2の末端ストレッチ)
を含む。
【0320】
スピーゲルマーとしてヘプシジン結合核酸の機能性を提供するために、ヘプシジン結合核酸238−C4−006を、その5’末端にアミノ基を含むスピーゲルマーとして合成した。アミノ修飾スピーゲルマー238−C4−006−5’−アミノに、40kDaのPEG部分を連結して、C型ヘプシジン結合核酸238−C4−006−5’−PEGを得た。スピーゲルマーの合成およびPEG化は実施例2に記載している。
【0321】
スピーゲルマー238−C4−006−5’−PEGの平衡結合定数Kを、表面プラズモン共鳴測定により決定した(図12):0.76nM。
【0322】
1.4 他のヘプシジン結合核酸
図9に示すように、A型、B型およびC型ヘプシジン結合核酸に関連しない他のヘプシジン結合核酸を示す。それらのヘプシジン核酸の結合親和性を、プラズモン共鳴測定によって、およびA型ヘプシジン結合核酸229−G1−001に対する競合結合実験によって決定した。全ての核酸は、A型ヘプシジン結合核酸229−G1−001より弱い結合親和性を示した(図9)。
【0323】
<実施例2:アプタマーおよびスピーゲルマーの合成および誘導体化>
小規模合成
2’TBDMS RNAホスホラミダイト化学(DamhaおよびOgilvie、1993)を使用して、ABI 394合成装置(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を用いた固相合成によって、アプタマー(D−RNA核酸)およびスピーゲルマー(L−RNA核酸)を生成した。D−立体配置およびL−立体配置のrA(N−Bz)−ホスホラミダイト、rC(Ac)−ホスホラミダイト、rG(N−ibu)−ホスホラミダイト、およびrU−ホスホラミダイトは、ChemGenes、Wilmington、MAから購入した。アプタマーおよびスピーゲルマーは、ゲル電気泳動によって精製した。
【0324】
大規模合成および修飾
2’TBDMS RNAホスホラミダイト化学(DamhaおよびOgilvie、1993)を使用して、AktaPilot100合成装置(Amersham Biosciences、General Electric Healthcare、Freiburg)を用いた固相合成によって、スピーゲルマーを生成した。L−rA(N−Bz)−ホスホラミダイト、L−rC(Ac)−ホスホラミダイト、L−rG(N−ibu)−ホスホラミダイト、およびL−rU−ホスホラミダイトは、ChemGenes、Wilmington、MAから購入した。5’−アミノ−修飾剤は、American International Chemicals Inc.(Framingham、MA、USA)から購入した。非修飾スピーゲルマーまたは5’−アミノ−修飾スピーゲルマーの合成を、L−リボG、L−リボC、L−リボAまたはL−リボU修飾CPG孔径1000Å(Link Technology、Glasgow、UK)で開始した。カップリング(1サイクル当たり15分)について、アセトニトリル中の0.3Mのベンジルチオテトラゾール(CMS−Chemicals、Abingdon、UK)、およびアセトニトリル中のそれぞれの0.1Mのホスホラミダイト溶液3.5当量を使用した。酸素−キャッピングサイクルを使用した。オリゴヌクレオチド合成のためのさらなる標準的な溶媒および試薬は、Biosolve(Valkenswaard、NL)から購入した。スピーゲルマーをDMT−ON合成し、脱保護後、Source15RPC媒体(Amersham)を使用して分取RP−HPLC(Wincottら、1995)によって精製した。5’DMT−基を、80%酢酸(室温で30分)で除去した。続いて、水性2MのNaOAc溶液を加え、5K再生セルロース膜(Millipore、Bedford、MA)を使用した接線流濾過によってスピーゲルマーを脱塩した。
【0325】
スピーゲルマーのPEG化
インビボでのスピーゲルマーの血漿残留時間を延長するために、スピーゲルマーを、40kDaのポリエチレングリコール(PEG)部分の5’末端に共有結合した。
【0326】
スピーゲルマーの5’PEG化
PEG化(PEG化のための方法の技術的詳細については、欧州特許出願第1306382号を参照)のために、精製5’−アミノ修飾スピーゲルマーを、HO(2.5ml)、DMF(5ml)、および緩衝液A(5ml、クエン酸・HO[7g]、ホウ酸[3.54g]、リン酸[2.26ml]、および1MのNaOH[343ml]を混合し、1lの最終容量まで水を加えることにより調製した。pH=8.4は1MのHClで調整した)の混合物に溶解させた。
【0327】
スピーゲルマー溶液のpHを、1MのNaOHで8.4にした。次いで、40kDaのPEG−NHSエステル(Jenkem Technology、Allen、TX、USA)を、37℃で30分ごとに0.25当量を6回に分けて、75〜85%の最大収率に達するまで加えた。反応混合物のpHは、PEG−NHSエステルを加える間、1MのNaOHで8〜8.5に保った。
【0328】
反応混合物を4mlの尿素溶液(8M)、および4mlの緩衝液B(HO中に0.1Mのトリエチルアンモニウムアセテート)と混ぜ、95℃まで15分間加熱した。次いでPEG化スピーゲルマーを、アセトニトリル勾配(緩衝液B、緩衝液C:アセトニトリル中に0.1Mのトリエチルアンモニウムアセテート)を使用して、Source 15RPC媒体(Amersham)を用いるRP−HPLCによって精製した。過剰なPEGは5%緩衝液Cで、PEG化スピーゲルマーは10〜15%の緩衝液Cで溶出した。95%超の純度(HPLCにより評価した場合)を有する生成物画分を合わせ、3MのNaOAC40mlと混合した。接線流濾過(5K再生セルロース膜、Millipore、Bedford MA)によってPEG化スピーゲルマーを脱塩した。
【0329】
<実施例3:ヘプシジンに対する結合定数の決定(プルダウンアッセイ)>
直接プルダウンアッセイ
ヘプシジン結合核酸の親和性を、37℃にてプルダウンアッセイ形式において、ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25(配列番号7)に対するアプタマー(D−RNA核酸)として測定した。アプタマーを、[γ−32P]−標識ATP(Hartmann Analytic、Braunschweig、Germany)を使用して、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(インビトロgen、Karlsruhe、Germany)によって5’−リン酸標識した。標識アプタマーの比放射能は、200,000〜800,000cpm/pmolであった。アプタマーを、変性および復元後、低濃度で平衡に達するために、20pMの濃度、37℃で選択緩衝液(20mMのTris−HCl、pH7.4、137mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl、1mMのCaCl、0.1%[w/vol]のTween−20)中で、様々な量のビオチン化ヒトD−ヘプシジンと一緒に2〜12時間インキュベートした。結合相手の使用されたプラスチック容器または固定化マトリックスの表面との吸着を避けるために、選択緩衝液に10μg/mlのヒト血清アルブミン(Sigma−Aldrich、Steinheim、Germany)および10μg/mlの酵母RNA(Ambion、Austin、USA)を添加した。ビオチン化ヒトD−ヘプシジンの濃度範囲は32pM〜500nMに設定し、全反応容量は1mlであった。ビオチン化ヒトD−ヘプシジンおよびアプタマーとビオチン化ヒトD−ヘプシジンの複合体を、選択緩衝液で予め平衡化された6μlのニュートラアビジンまたはストレプトアビジンUltralink Plus粒子(Thermo Scientific、Rockford、USA)上に固定し、全容量12μl中に再懸濁した。粒子を、それぞれの温度で30分間、サーモミキサー中で懸濁し続けた。上清の分離および適切な洗浄後、固定された放射能をシンチレーションカウンターで定量した。結合の割合をビオチン化ヒトD−ヘプシジンの濃度に対してプロッティングし、1:1の化学量論比を仮定して、ソフトウェアアルゴリズム(GRAFIT、Erithacus Software、Surrey U.K.)を使用することによって解離定数を得た。
【0330】
アプタマー競合的プルダウンアッセイ
異なるヘプシジン結合核酸のアプタマーを比較するために、競合的順位付けアッセイを実施した。この目的のために、利用可能なもののうち最も親和性の高いアプタマーを放射性標識(上記参照)し、参照とした。変性および復元の後、これをビオチン化ヒトD−ヘプシジンと一緒に37℃で0.8mlの選択的緩衝液において、競合なしでニュートラアビジンアガロースまたはストレプトアビジンUltralink Plus(共にThermo Scientific製)における固定化および洗浄後にビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に対する約5〜10%の結合をもたらす条件でインキュベートした。過剰の変性および復元された標識されていないD−RNAアプタマー変異体を、結合反応を並行させるために標識された参照アプタマーと一緒に、種々の濃度(例えば10、50および250nM)に添加した。試験されるアプタマーは、標的結合に関して参照アプタマーと競合したため、それらの結合特性に依存して結合シグナルを減少させた。したがって、このアッセイにおいて最も活性であると判明したアプタマーは、さらなるアプタマー変異体の競合分析のための新しい参照として機能することができた。
【0331】
スピーゲルマー競合的プルダウンアッセイ
加えて、競合的プルダウンアッセイを、ヘプシジン結合スピーゲルマーの親和性を分析するために実施した。この目的のために、ビオチン化ヒトL−ヘプシジン−25と結合するスピーゲルマーを適用した。スピーゲルマーの5’末端にてD−立体配置の2つのさらなるグアノシン残基の付加により、T4ポリヌクレオチドキナーゼによるスピーゲルマーの放射性標識を可能にした(上記参照)。変性および復元の後、標識したスピーゲルマーおよび0.032〜500nMの範囲の競合相手分子の5倍希釈のセット(このような異なる種のヘプシジン、ヘプシジンの切断型またはスピーゲルマー、以下参照)を、37℃で2〜4時間、0,8mlの選択緩衝液中で、一定量のビオチン化ヒトL−ヘプシジンと一緒にインキュベートした。選択したペプチド濃度により、最も低い競合相手濃度において約5〜10%の放射性標識したスピーゲルマーの最終結合が生じるはずである。競合的プルダウンアッセイの1つのバージョンにおいて、過剰な変性および復元した標識していないL−RNAスピーゲルマー変異体を競合相手として機能させ、一方で未修飾およびPEG化形態を試験した。別のアッセイアプローチにおいて、様々な種由来のビオチン化していないL−ヘプシジン−25(例えばヒトL−ヘプシジン−25、カニクイザルL−ヘプシジン−25、マーモセットL−ヘプシジン−25またはラットL−ヘプシジン−25)またはビオチン化していないN末端切断型L−ヘプシジン−20およびL−ヘプシジン−22を、スピーゲルマー結合のためにビオチン化L−ヘプシジンに対して競合させた。1,5〜3μlのStreptavidin Ultralink Plusマトリックス(Thermo Scientific、Rockford、USA)上でビオチン化L−ヘプシジン−25および結合したスピーゲルマーを固定させた後、洗浄し、シンチレーション計数し(上記参照)、正規化した割合の結合した放射性標識したスピーゲルマーを、競合相手分子の対応する濃度に対してプロッティングした。得られた解離定数を、GraFitソフトウェアを利用して算出した。
【0332】
<実施例4:表面プラズモン共鳴測定による結合分析>
Biacore 2000装置(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を使用して、ビオチン化ヒトD−ヘプシジン−25に対するヘプシジン結合核酸のアプタマーの結合ならびにビオチン化ヒトL−ヘプシジン−20、およびヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25に対するヘプシジン結合核酸のスピーゲルマーの結合を分析した。
【0333】
この装置を37℃の維持温度に設定した。各実験を開始する前に、製造業者の指示書に従ってDESORB法を用いてBiacoreを洗浄した。メンテナンスチップをドッキングした後、この装置に連続してDESORB溶液1(0.5%のドデシル硫酸ナトリウム、SDS)、DESORB溶液2(50mMのグリシン、pH9.5)および最後に脱気MilliQ水でプライミングした。続いてSANATIZE法を0.1MのNaOClを用いて実施し、その後、系をMilliQ水でプライミングした。
【0334】
ビオチン化ヒトD−ヘプシジン25、ヒトL−ヘプシジン20、ならびにヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25(全てBACHEM製のペプチド、カスタム合成)を、ねじロックバイアル中で1mMの濃度にて1mg/mlの脂肪酸フリーBSAを含む水に溶解させて、使用するまで4℃で保存した。
【0335】
カルボキシメチル化デキストランマトリックスを有するセンサーチップ(SensorChip CM5、GE、BR−1000−14)をドッキングした後、Biacore装置をMilliQ水、続いてHBS−EP緩衝液(0.01MのHEPES緩衝液[pH7.4]、0.15MのNaCl、0.005%のサーファクタント(Surfactant)P20(GE、BR−1001−88)を含む)でプライミングし、安定なベースラインが観測されるまで平衡化した。フローセル(FC)をフローセル4から始めてフローセル1まで固定し、他のフローセルへのペプチドのキャリーオーバーを回避する。
【0336】
0.4MのEDC(HO中の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、GE、BR−1000−50)と0.1MのNHS(HO中のN−ヒドロキシスクシンイミド、GE、BR−1000−50)の100μlの1:1混合物を、10μl/分の流量でQUICKINJECTコマンドを使用して注入した。フローセルの活性化を、NHS/EDC注入後のRU(典型的にCM5チップについて500〜600RU)の増加によりモニターした。
【0337】
可溶性ニュートラアビジンを1mg/mlの濃度まで水に溶解させ、50μg/mlまでHBS−EPで希釈し、続いて10μl/分の流量でMANUALINJECTコマンドを使用して注入した。共有結合的に固定したニュートラアビジンの観測された最大量は約10.000〜15.000RUであった。フローセルを、10μl/分の流量で1Mのエタノールアミン塩酸塩(GE、BR−1000−50)の70μlの注入により遮断し、典型的に共有結合していないペプチド/タンパク質はこの手順により除去する。共有結合していないニュートラアビジンを50mMのNaOH溶液の10〜30μlの注入により除去した。ビオチン化ヒトD−ヘプシジン25、ヒトL−ヘプシジン20、ならびにヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25を、HBS−EP緩衝液中で10〜20nMの最終濃度まで直接希釈し、すぐにボルテックスした。この試料の1000μlをφ9mmガラスバイアル(Glass Vials、φ9mm、GE、BR−1002−07)に移し、10μl/分の流量でMANUALINJECTコマンドを使用して注入した。ビオチン化ヒトD−ヘプシジン25、ヒトL−ヘプシジン20、ならびにヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25の5000応答単位(RU)までの結合実験のために、および動態評価のために、500〜1500RUをフローセルに固定した。続いてフローセルを1MのNaCl(Ambion、カタログ番号AM9759)で洗浄して、Biacore管および他の表面を用いてビオチン化ヒトD−ヘプシジン25、ヒトL−ヘプシジン20、ならびにヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25の非特異的相互作用に起因してビオチン化ヒトD−ヘプシジン25、ヒトL−ヘプシジン20、ならびにヒト、ラットおよびマウスL−ヘプシジン25のキャリーオーバーを回避した。FC1は遮断された対照フローセルとして機能した。
【0338】
最終的に全てのセンサーフローセル(FC1から始めてFC4まで)を、20μl/分の流量でHBS−EP緩衝液中で1:10に希釈した20μlの飽和ビオチン溶液(Biotin、Sigma−Aldrich B−4501 Lot 68H1373)を注入することにより遮断した。センサーチップを、脱気したランニング緩衝液(20mMのTris pH7.4、150mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl、1mMのCaClおよび0.1%のTween20)を用いて2回プライミングして、ベースラインが安定に見えるまで30μl/分で平衡化した。
【0339】
典型的に分析目的のために、ヘプシジン結合核酸のアプタマー/スピーゲルマーを、100μMの保存濃度(UV測定により定量化)まで水で希釈し、水浴またはサーモミキサー中で30秒間95℃まで加熱し、氷上で即座に冷却して、均一に溶解した溶液を確保した。
【0340】
ランニング緩衝液で希釈した1000、500、250、125、62.5、31.25、15.63、7.8、3.9および0nMの濃度の一連のアプタマー注入によって、動態パラメータおよび解離定数を評価した。全ての実験において、30μl/分の流量で360秒の結合時間および360秒の解離時間を定量するKinjectコマンドを使用して、37℃で分析を実施した。このアッセイは2重を基準とし、一方でFC1は(遮断された)表面対照(各アプタマー濃度のバルク寄与)として機能し、検体を有さない連続した緩衝液注入により緩衝液自体のバルク寄与を決定した。データ分析および解離定数(KD)の算出は、Langmuir1:1化学量論的適合アルゴリズムを使用して、BIAevaluation3.0ソフトウェア(BIACORE AB、Uppsala、Sweden)により行った。
【0341】
<実施例5:ヘプシジン結合スピーゲルマーによるフェロポーチンのヒトおよびマウスのヘプシジンにより誘導される下方制御の阻害>
方法
J774.1細胞(マウス単球−マクロファージ、DSMZ、Braunschweigから得た)を、10%のウシ胎仔血清、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを含有するGlutamax(インビトロgen、Karlsruhe、Germany)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で37℃および5%COにて培養する。この実験に関して、2mlの培地中で7.3×10細胞/ウェル(2×10細胞/cm)の密度で細胞を12−ウェルプレートに播種し、37℃および5%COで数時間培養した。細胞付着後、HO中の1部の0.3MのFeClとHO中の2部の0.3MのNTA(ニトリロトリアセテート)とを混合し、続いてDMEMで1:10希釈することによって調製した20μlのFe−NTA−溶液を添加することにより細胞に鉄を負荷した。記載しているように細胞を一晩培養する。次の日に刺激溶液を、ヒトヘプシジンを含有するDMEM中で調製し、必要であれば、スピーゲルマー(以下の添加したスピーゲルマーを参照)を各々5倍の意図した最終濃度にし、37℃で30分間プレインキュベートした。0.5mlの溶液を12−ウェルプレートの各ウェルに添加した。3時間の刺激後、培地を除去し、1mlの氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて細胞を迅速に1回洗浄した。次いで1mlの冷PBS中で細胞をウェルから剥がし、予め冷却したエッペンドルフチューブに回収した。4℃にて500gで5分間遠心分離した後、上清を除去し、ペレットを75μlの溶解緩衝液(Tris/HCl、pH7.5、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のTriton X−100およびプロテアーゼ−阻害剤(プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤、Roche#11873580001)に再懸濁した。細胞懸濁液をドライアイスで凍結し、解凍し、十分にボルテックスし、4℃にて1000gで10分間遠心分離した。溶解上清物を回収し、さらに分析するまで−80℃で保存した。
【0342】
ビシンコニン酸法を使用してタンパク質定量を実施した。20μgのタンパク質を含有する量の溶解物を、2倍の試料緩衝液(125mMのTris/HCl、pH6.8、20%のグリセロール、4%のSDS、0.02%のブロモフェノールブルー)と混合し、37℃で10分間インキュベートした。10%のSDS−ポリアクリルアミドゲル上でタンパク質を分離し、次いで電気ブロッティングによりHybondECLニトロセルロースまたはHybond−P PVDF膜(GE Healthcare、Munich、Germany)に移した。ブロッティング後、タンパク質負荷および移動を抑制するためにPonceau−レッド(3%のトリクロロ酢酸中に0.2%)を用いて膜を染色した。LumiGlo(登録商標)化学発光試薬(CellSignaling Technology、Frankfurt a.M.、Germany)およびHyperfilm(商標)ECL化学発光フィルム(GE Healthcare、Munich、Germany)を使用するウサギ抗マウスフェロポーチン抗体(Alpha Diagnostics、#MTP11−A)および抗ウサギ−IgG−HRP−コンジュゲート(New England Biolabs、Frankfurt a.M.、Germany)を用いてフェロポーチンを検出した。
【0343】
結果
ヒトヘプシジンまたはヘプシジンとそれぞれのスピーゲルマーでの刺激後にJ774.1細胞から得た溶解物をSDS−ゲル電気泳動により分離し、マウスフェロポーチンに対する抗体を使用してウェスタンブロットにより分析した。
【0344】
Fe/NTAでのJ774.1細胞の処理により、フェロポーチン発現の十分な上方制御が生じた。この効果は、3時間の100nMのヒトヘプシジン−25での細胞の刺激によりかなり逆転した。ヘプシジンがスピーゲルマー226−C5−001−5’−PEG、238−D4−008−5’−アミノおよび238−D4−008−5’−PEG(=NOX−H94)と共にプレインキュベートした場合、このヘプシジン効果は遮断される。
【0345】
図17A:未処理の細胞(レーン1)においてかろうじて検出可能である、フェロポーチン(矢印)は、Fe/NTAでの処理により上方制御される(レーン2、3)。100nMのヒトヘプシジン−25(HEP)は、フェロポーチンの下方制御を生じ(レーン4、5)、この効果はスピーゲルマー226−C5−001(C5−PEG)により強力に阻害され得る(レーン6、7)。
【0346】
図17B:ヒトヘプシジンは、Fe/NTA処理したJ774.1細胞においてフェロポーチンの下方制御を生じる(レーン6、7)。ヒトヘプシジン−25のこの効果は、スピーゲルマーNOX−H94(レーン12〜15)により強力に阻害され得、また、238−D4−008−5’−PEG(=NOX−H94)のアミノ修飾オリゴヌクレオチド中間体である、スピーゲルマーHEP−238−D4−008a(レーン8〜11)により強力に阻害され得る。
【0347】
<実施例6:インビボでのヘプシジン結合スピーゲルマーの活性>
慢性疾患による貧血の現在の概念は、ヘプシジン合成および放出が、肝細胞において炎症性サイトカイン、特にIL−6により刺激されるということである。次いでヘプシジンは、鉄輸送体フェロポーチンを発現する種々の細胞種類に結合する。この相互作用は、ヘプシジン−フェロポーチン複合体の内在化および分解、続いて血清鉄減少を誘導する。血清鉄の慢性的な減少は、赤血球生成を負に減少させ、最終的に貧血の症状が現れる。マウスにおいて血清鉄減少を誘導するヒトヘプシジン−25の公知の特性(Rivera、2005)は、炎症による貧血のためのモデルとして利用されていた。インビボでのスピーゲルマーの活性を試験するために、低鉄血症の状態を、ヒト−ヘプシジン−25を用いてC57BL/6マウスにおいて誘導させた。このモデルにおいてスピーゲルマーを特徴付けるために、動物にスピーゲルマーを用いた予防的処置を与えて、ヒト−ヘプシジンの効果を遮断した。
【0348】
方法
メスのC57Bl/6マウス(Elevage Janvier、France、6週齢、1群当たりn=6〜7)に、抗ヘプシジンスピーゲルマー(10〜20ml/kg体重)または媒体(5%のグルコース、10〜20ml/kg体重)の単一の静脈注射を与えた。30分後、1〜2mg/kg体重の用量にて合成ヒトヘプシジン−25(Bachem、Weil am Rhein、Germany、カタログ番号H−5926)を腹腔内注射した(10mg/kg体重)。ヘプシジン注射から2時間後に血液を回収した。血清および血漿試料はそれぞれ鉄定量および全血球計算から得た。各動物に関して、血清鉄、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、赤血球数、血小板数、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロビン値を定量した。
【0349】
結果
合成ヒト−ヘプシジン−25の注射により、血清鉄の急速な減少が生じる。注射してから2時間後、血清鉄濃度は、媒体処置したマウスの値の56%まで減少した。これらのインビボでの知見は、より高いヘプシジン用量を用いる非常に類似した実験において約25%までの減少を報告している、Riveraら(Riberaら)によって公開されたデータと一致している。図9に示すように、ヒトヘプシジンの注射前にスピーゲルマー223−C5−001−5’−PEGを適用することによって血清鉄の減少が完全に遮断される(98%の抑制)。図20に示すように、239−D4−008−5’−PEGを用いて同様の効果が観測された。
【0350】
<実施例7:ヒトインターロイキン−6で刺激したカニクイザルにおけるヘプシジン結合スピーゲルマーの活性>
慢性疾患による貧血におけるインターロイキン−6(IL−6)の主要な役割を、IL−6受容体抗体トシリズマブを用いて実証した。この抗体を用いる処理により、キャッスルマン病(Nishimoto、2008)を罹患している患者における効果、およびまたカニクイザルにおける関節炎モデル(Hashizume、2009)における効果が示された。非ヒト霊長類においてヘプシジン分泌を誘導した後、貧血を生じるIL−6の公知の特性を、炎症による貧血のための別のモデルとして利用した(Asano、1990、Klug 1994)。パラメータであるヘモグロビンの代わりに、抗ヘプシジンスピーゲルマーの効果を示すために、血清鉄含有量をエンドポイントとして選択した。低鉄血症の状態を、ヒト−組換えIL−6を用いてカニクイザルにおいて誘導した。抗ヘプシジンスピーゲルマーもまた、内因性ヘプシジンに結合することを示すのでこのモデルは重要であり、全ての他の実験と同様に合成ヒトヘプシジンを使用した。インビボでのスピーゲルマーの活性を試験するために、低鉄血症の状態を、ヒト−組換えIL−6を用いてカニクイザルにおいて誘導した。このモデルにおいてスピーゲルマーを特徴付けるために、動物にスピーゲルマーを用いた予防的処置を与え、カニクイザル−ヘプシジンの効果を遮断した。
【0351】
方法
オスのカニクイザル(Roberto C.Hartelust、Tilburg、The Netherlands)34〜38ヶ月齢、1群当たりn=3)に、抗ヘプシジンスピーゲルマー(1ml/kg体重)または媒体(5%のグルコース、1ml/kg体重)の単一の静脈注射を与えた。30分後、10μg/kg体重の用量にて組換えヒトIL−6(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)を皮下注射した(1ml/kg体重)。IL−6注射から8時間後、血液を回収した。血清および血漿試料はそれぞれ鉄定量および全血球計算から得た。各動物に関して、血清鉄、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、赤血球数、血小板数、平均赤血球容積、および平均赤血球ヘモグロビン値を定量した。
【0352】
結果
組換えヒトIL−6の注射により、血清鉄の減少が生じる。注射してから8時間後、血清鉄濃度は、媒体/IL−6処置したサルの前投与値の27%まで減少した。図21に示すように、ヒトIL−6の注射前にスピーゲルマー238−D4−008−5’−PEGを適用することによって血清鉄の減少が完全に遮断される。
【0353】
参照文献
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0354】
明細書、特許請求の範囲、配列表および/または図面において開示されている本発明の特徴は、その様々な形態において、別個で、および任意の組み合わせの両方で、本発明を実現化するための材料とすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]