(54)【発明の名称】身体内での材料もしくは信号の送達または収集のために、ヒトまたは動物の身体に埋め込まれる装置または装置部品、およびその装置または装置部品をヒトまたは動物の身体内に固定するシステム
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
材料もしくは信号の送達または収集部分は、薬剤、薬剤/担体組成、本質的に知られている薬剤送達システム、懸濁液もしくは基質中の生細胞、治療上もしくは予防的にもしくは別のやり方で有効な薬品、電子もしくは微小機械装置、RFIDチップ、または粒子放射線源のうち少なくとも1つを含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の装置または装置部品。
エネルギを伝達する前記手段は、活性超音波装置に結合されたソノトロードを装置または装置部品の近位端に含み、それにより超音波振動エネルギを前記装置または装置部品に伝達すると同時に前記装置または装置部品を開口部内により深く押込む機能を有する、請求項10または11に記載のシステム。
前記硬組織に前記開口部を設けるために前記硬組織を打ち抜く打ち抜き工具、および、開口部を予め設けずに前記装置を前記硬組織を通って押し込むための手段のうちの、少なくとも一方を含む、請求項10または11に記載のシステム。
前記打ち抜き工具および前記押し込むための手段のうちの少なくとも一方が、振動エネルギを利用して動作し、前記打ち抜き工具および前記押し込むための手段のうちの少なくとも一方は、熱可塑特性を有する材料の液化によって前記装置を硬組織に同時に固着する、請求項18に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
身体内での材料送達のための装置は、特に(治療上または予防的に有効な分子または粒子を組織に送達する)薬剤送達装置および輸液装置であるが、たとえば造影剤もしくは蛍光分子、(たとえば組織中の分染および統合または所望のタンパク質の生成のための)生細胞、または身体内の亜原子粒子(粒子放射線)といった他の材料を送達するようにも機能し得る。身体内での材料収集のための装置は、たとえば治療または診断目的で組織成分または体液を取出すためのたとえばカテーテルまたは中空針である。身体内での信号送達のための装置は、たとえば組織を刺激するか、堆積された化学材料を活性化するか、またはたとえば薬剤送達装置などの他の埋込まれた装置を活性化するように機能し、身体内に送達される信号は、たとえば電気、機械、聴覚、または視覚信号であり得る。身体内での信号収集のための装置は、たとえば診断目的を果たし、信号の収集は、たとえば組織に送られた信号の収集、局地的な体温、圧力もしくは化学反応の測定、またはたとえば薬剤送達装置などの別の埋込まれた装置の状態の検知を含み得る。
【0003】
身体内での材料もしくは信号の送達または収集のための装置は、たとえば、診断(たとえば走査)目的での信号送達と信号収集との組合せ、または、該当組織での送達の必要性を検出するための信号収集機能に組合された薬剤送達機能と、当該薬剤送達機能の活性化のための信号送達機能との組合せといった上記の機能の組合せのためにも装備され得る。多くの場合、上記の装置は電子もしくは微小電気および/または微小機械要素を含む。装置は、完全に埋込まれてもよいし、埋込まれる部分と身体の外部に位置する部分とを含んでもよく、埋込まれた部分は、埋込まれていない部分に物理的または機能的に接続されるかまたは接続可能であり、そのような場合、発明は埋込まれた装置部品にのみ関する。そのような部分的にのみ埋込まれた装置の例は、たとえば、埋込まれたカテーテルと埋込まれていない貯槽と駆動手段とを含む装置、埋込まれたセンサとセンサ読取値の記録のための埋込まれていない装置部品とを含む装置、または埋込まれた識別チップ(RFID)と埋込まれていない読取り装置とを含むシステムである。
【0004】
本発明に関連して使用される限りにおいて「材料もしくは信号の送達または収集のための、ヒトまたは動物の身体における埋込みのための装置」という用語は、埋込み可能な装置または埋込み可能な装置部品の上記のグループおよび例のすべてと、当業者が上記のグループに包含させるであろう装置および装置部品のすべてとを含むものと理解される。
【0005】
発明の背景
埋込み可能な薬剤送達装置が今日の医学において周知である。そのような薬剤送達装置は通常、薬剤の放出が持続されるおよび/または遅延されるように設計され、送達プロセスは、装置の化学的性質(たとえば薬剤を包囲する装置成分の生体再吸収)によって、たとえば装置に一体化されて完全に自動的にまたは信号もしくは身体外部から起こされた行為により送達を活性化させる制御手段によって制御され得る。
【0006】
既知の埋込み可能な薬剤送達装置、ならびに電子もしくは微小電気および/または微小機械要素(たとえばRFIDチップ、センサ、心臓パルス発生器、送達装置を起動するための電気または機械要素)を含む埋込み可能な装置といった、材料もしくは信号の送達または収集のための他の既知の埋込み可能な装置は、「浮遊する」(たとえば皮下的に埋込まれる)ように、または(たとえば縫合糸もしくはワイヤで軟組織に結合されることによって、または縫合糸の有無に関わらず骨アンカーを利用して硬組織に固定されることによって)特定の身体位置に固定されるかのいずれかとなるように埋込まれる。浮遊埋込みは、(たとえば動物の識別用の)RFIDチップと薬剤送達装置とについて特に知られている。固定埋込みはより複雑であるが、体内での装置の移動を防ぐことから、多くの場合有利である。薬剤の送達に関して、薬剤が局所的に投与されなければならない場合は固定埋込みが特に有利であり、固定位置は、所望の投与の位置と可能な限り厳密に一致するように選択される。
【0007】
骨組織における固定埋込みに好適な薬剤送達装置は、たとえば公報US−6936270に記載されている。記載されている装置は、骨組織に少なくとも部分的に埋め込まれる骨ねじ、骨釘または骨止め金といった、たとえば金属の骨接合要素を含む。薬剤および場合によっては好適な薬剤担体は、ねじもしくは釘頭部に、または止め金の中央セクションに固定された容器に含まれ、頭部または容器は、装置が固着される骨に隣接して位置する組織または体液に薬剤を送達するように設計される。装置は、滑膜性関節内での埋込みと、関節の滑液への薬剤の送達とに特に適していると言われている。
【0008】
軸ねじチャネルをねじ切りされたねじ面に接続する開口部を含み、かつチャネルに送達される薬剤を含む、カニューレが挿入された骨ねじの形態の薬剤送達装置も知られており(たとえばWO2005/053795)、薬剤は、ねじが埋められている骨組織に開口部を通って送達される。
【0009】
生分解性材料からなる骨接合要素(たとえば骨ねじまたはプレート)を含む埋込み可能な薬剤送達装置がたとえば公報US−6214008に記載されている。この公報によれば、薬剤(たとえば成長因子GFまたは骨形態形成蛋白質BMP)が骨接合要素の生分解性材料と一体化され、生分解性材料の分解速度に直接依存する速度で放出される。装置は、骨欠陥位置たとえば骨折した骨組織に薬剤を送達して骨修復を促進するのに特に有利であると言われている。
【0010】
骨組織における固定埋込みのために設計された上述の既知の薬剤送達装置について、装置の固定は通常、骨欠陥、つまり骨表面(アクセス可能な骨表面)から発生する骨組織の開口部の生成と、通常は皮質骨層に浸透して皮質骨層の下に位置する海綿骨組織に到達することとに結び付けられる。これは、たとえほんの小さくても開口部が(たとえば皮質骨層のアクセス可能な側の)第1の身体領域から(たとえば皮質骨層のアクセス不可能な側の)第2の身体領域への非天然通路を構成することを意味し、2つの身体領域の特徴、機能および必要性は大きく異なり得、開口部が設けられる前に、2つの身体領域は自然にかつ適切に、たとえば皮質骨層によって互いから封止状態に分離される。そのような開口部に埋込まれた骨ねじ、骨釘または骨止め金は、皮質骨層の天然バリア機能を完全に修復することはできないことが知られている。特に初期のプレス嵌めが緩むと、または生体再吸収性装置の場合には再吸収が開始すると、化学材料およびバクテリアさえもが損傷した皮質骨層を装置面に沿って通過することができることになる。これは、上に簡潔に記載された既知の薬剤送達装置が、骨にまたは骨内に固定されると、皮質骨層の天然バリア機能の場合によっては望ましくない損傷を生じさせるだけでなく、そのような目的のために特定的に設計されていても薬剤の送達を皮質骨層の一方側に十分に限定することができないことを意味する(US−6936270に係る皮質層のアクセス可能な側への送達、またはWO2005/053795もしくはUS−6214008に係る皮質層のアクセス不可能な側への送達)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
本発明は、ヒトまたは動物の身体内での材料もしくは信号の送達または収集のためのさらなる装置を提供することを目的とし、当該装置またはその一部は、ヒトもしくは動物の身体の硬組織またはヒトもしくは動物の身体内に位置する対応する置換材料における固定埋込みに好適である。本発明は、装置またはその一部を埋込むための方法を提供することも目的とする。発明に係る装置および方法を使用することによって実現することができる1つの特定の改良は、硬組織層、特に装置または装置部品の埋込み時に浸透される骨層の天然バリア機能を再構成することができる点に関する。
【0012】
本発明は、薬剤が送達される身体位置および/または身体組織の特異性の向上を確実にすることができる薬剤送達インプラントを提供することもさらなる目的とする。本発明は、薬剤が送達される位置および/または組織の特異性が向上した薬剤送達インプラントのための埋込み方法を提供することをさらに別の目的とする。これはたとえば、発明が、硬組織特に骨組織の中または上に薬剤送達装置を固定することができるようにするものであることを意味し、固定は硬組織層の浸透を含み、そのような浸透にかかわらず、薬剤の送達は、技術水準にしたがって可能であるよりもはるかに高度に、この硬組織層の一方側のみに限定される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらおよび他の目的は、請求項に規定される発明によって実現される。
発明は、硬組織または対応する置換材料と接触させられた液化した熱可塑性材料が硬組織または置換材料の細孔および開口部に容易に浸透して、再凝固時にそれにより押込み嵌め接続(positive fit connection)を構成するだけでなく、再凝固時に接触領域が密封を構成するように極めて密接して硬組織または置換材料と接触することもできるという発見に主に基づく。特に、上記の接触領域の封止能力は、技術水準に係る上記の装置の封止能力よりもはるかに良好であり、かつ荷重による劣化の傾向が小さいと認められ、主に骨ねじが硬組織の開口部にねじ込まれるか、または骨釘もしくは止め金が硬組織に嵌入される。
【0014】
発明によれば、材料もしくは信号の送達または収集のための埋込み可能な装置またはそのような装置の埋込み可能部品は、プラグ部分および/またはカバー部分と材料もしくは信号の送達または収集部分とを含み、プラグまたはカバー部分は、互いに取付けられているかもしくは取付け可能であるか、または互いから完全に分離している。プラグまたはカバー部分は熱可塑特性を有する材料を含み、プラグ部分の周囲におよび/または好ましくは完全なリングを単独で構成するか、またはリング状溝に配置されるリングの少なくとも一部分を構成しそこから突出するカバー部分の硬組織対面側に位置する。
【0015】
発明にしたがって装置を埋込むために、硬組織または置換材料に開口部が設けられ、開口部は、硬組織層を通って、そのアクセス可能な側からアクセス不可能な側に至る。開口部の少なくとも口領域の断面は、装置または装置部品のプラグまたはカバー部分に適合化される。次いで装置または装置部品は、熱可塑特性を有する材料のリングまたはそのような材料を含む溝が開口部の内壁に沿っておよび/または開口部の口の周囲の硬組織表面に沿って開口部の周囲全体に延在するように、硬組織の開口部に対して位置決めされる。
【0016】
次いで熱可塑性材料の少なくとも一部を液化し、開口部の内壁または開口部の口の周囲の硬組織表面に接触させる(該当する場合は、同時に溝に沿って流れさせて完全なリングを形成する)ことに、液化した材料を硬組織の空胴または細孔に浸透させることが有利に組合せられる。液化した材料は次いで再凝固し、硬組織または置換材料に固着され、かつ開口部の内壁に沿って(プラグ部分の周囲のリング)および/または開口部の口の周囲の硬組織表面に沿って(カバー部分上のリング)開口部の周囲全体に延在する封止リングを構成し、それによって液化可能な材料と硬組織もしくは置換材料との間に封止接続もしくは封止リングを、または好ましくはそれらの間に封止接続と押込み嵌め接続との組合せを構成する。
【0017】
埋込みのために特定的に作製される装置または装置部品の硬組織開口部への埋込みの代わりに、他の状況(たとえば骨折、骨腫瘍の摘出、歯根膜炎によって引起こされたポケット)によって引起される硬組織開口部に装置または装置部品を埋込むことも可能であり、インプラントは、特定的に設けられた開口部について上記したように開口部に嵌合するように選択され、埋込み中に実現される封止リングは、装置または装置部品と骨組織との間だけでなく、場合によっては装置または装置部品と、前もってまたは後で埋込まれ得る他の組織または他のインプラントとの間にも封止をもたらし得る。
【0018】
熱可塑特性を有する材料の現場での液化は、熱可塑特性を有する材料のリングまたは部分リングにエネルギを、好ましくは、場合によっては装置または装置部品の他の部分を介して、たとえば超音波装置の相応して成形されたソノトロード(sonotrode)から熱可塑性材料に伝達されている振動エネルギ(特に超音波振動エネルギ)を伝達することによって実現される。そこにおいて、装置または装置部品がソノトロードに一時的に取付けられてもよいし、ソノトロードが装置または装置部品の近位面に押付けられてもよい。しかしながら、たとえば封止リングを形成するために熱可塑性材料にもしくはこの材料に隣接した装置領域に吸収されるレーザ光線を利用して、または熱可塑性材料もしくは隣接した装置領域の抵抗性もしくは誘導性加熱を利用して、所望の液化を実現することも可能である。
【0019】
発明に係る装置を埋込むことにより生成される封止リングは、円形であって実質的に平らな面に延在してもよいし、(たとえば多角形の、卵形の、不規則な、および/または平らではない面に延在する)いずれかの他の形態を有してもよい。封止リングを構成する熱可塑特性を有する材料は、非生体再吸収性または生体再吸収性であり得、再吸収性の性質は、所望の送達もしくは収集の特徴および/または予期される組織再生に適合化される必要があり得る。たとえば皮質骨層を通ってのように、天然封止機能を有する硬組織層を通って埋込まれる代わりに、発明に係る装置は、そのような機能のない硬組織、たとえば他の手術によってアクセス可能になったたとえば海綿骨組織に埋込んでもよく、そのような場合、封止リングの封止機能は極めて重要性が低い。
【0020】
プラグ部分、カバー部分、またはプラグとカバー部分との組合せが、全埋込み可能な装置または装置部品を構成し得る。代替的に、プラグ部分、カバー部分、または両者の組合せがさらなる部分を担持してもよく、これらのさらなる部分は、プラグまたはカバー部分から遠位方向にまたは近位方向に延在し得、プラグまたはカバー部分に含まれる液化可能な材料の液化および再凝固の前または後に、プラグまたはカバー部分に取付けられ得る。熱可塑特性を有する材料のリングまたは部分リングは、たとえば液化不可能な材料のさらなる部分に好適に取付けられる(たとえばそのような他の部分の溝に配置され、当該溝から突出する)この材料の塊を構成してもよいし、熱可塑特性を有する材料で完全に構成される非リング形装置部分、たとえば円柱状もしくは円錐形プラグ部分またはプレート形カバー部分の領域を構成してもよい。
【0021】
すでに述べたように、振動エネルギ、特に超音波振動エネルギを印加することによって、熱可塑特性を有する材料を液化することが好ましい。この方法は、本質的に知られている埋込み技術と一致し、当該技術によれば、熱可塑特性を有し、機械的振動によって液化可能な材料を含むインプラントがそのような振動、特に超音波振動をインプラントに印加することによって、硬組織、特に骨組織に固着される。そのような埋込み技術は、たとえば公報US−7335205、US−7008226、US2006/105295、US−2008/109080、およびUS2009/131947に開示されている。上記の公報すべての全開示は、引用によってここに開示される。
【0022】
上記の埋込み技術の基礎は、骨組織におけるインプラントの機械的に十分な固着に好適な機械的特性を有する熱可塑性材料の現場での液化であり、その液化した状態の材料は、天然のまたは前もって設けられた骨組織の細孔、空洞、または他の構造に浸透することを可能にする粘性を有し、容認できない熱負荷が組織上にかかるのを防ぐように、比較的少量の材料のみが液化される。再凝固されると、細孔、空洞または他の構造に浸透した熱可塑性材料が骨組織との押込み嵌め接続を構成する。当然、そのような押込み嵌め接続は、たとえば多孔性の骨置換材料もしくはさらなるインプラントといった好適な構造または形態の他の好適に硬い材料において、または骨組織と骨組織に隣接して位置する他の材料との両方において同時に実現することもできる。
【0023】
組織の容認可能な熱負荷および押込み嵌め接続の好適な機械的特性と組合せられる好適な液化は、弾性率が少なくとも0.5GPa、融解温度が約350℃までの熱可塑特性を有する材料を使用することによって、かつそのような材料を、たとえば埋込み時に骨組織に押付けられるインプラント表面上に設けることによって、好ましくはインプラントより若干小さい骨開口部にインプラントを導入することによって、または元来インプラントより若干大きい骨開口部においてインプラントを拡張すること(たとえばインプラントの機械的圧縮または座屈による拡張)によって実現可能である。埋込み中、たとえば超音波装置のソノトロードをインプラントに適用することによって、好ましくは2〜200kHzの範囲の周波数の振動(好ましくは超音波振動処理)をインプラントに与える。比較的高い弾性率により、熱可塑性材料は、インプラントの内部液化とそれゆえにインプラントの不安定化とが生じない、つまり液化可能材料が骨組織に接触している場合にのみ液化が生じ、それにより容易に制御可能であり、最小限に抑えることができるような小さい減衰で、超音波振動を伝達することができる。
【0024】
液化可能材料をインプラントの表面上に設ける(たとえばUS−7335205またはUS−7008226に開示)代わりに、穿孔されたシースに液化可能材料を設け、シース内でそれを液化し、シースの穿孔を通ってインプラントの表面に、かつ骨組織の細孔または空洞に押込むことも可能であり(たとえばUS−7335205およびUS−7008226に開示)、および/または一方が振動され他方が対向要素として機能する2つのインプラント部品間で液化可能材料を液化することができ、2つのインプラント部品間の界面は、骨組織に可能な限り近く位置決めされる(公報US2009/131947およびWO2009/109057に開示)。
【0025】
発明に係る装置および方法に好適な熱可塑特性を有する材料は、熱可塑性ポリマー、たとえば乳酸および/またはグリコール酸(PLA、PLLA、PGA、PLGAなど)、またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサノン(PD)、ポリ無水物、ポリペプチドなどをベースとするポリマーなどの吸収性ポリマー、もしくは対応するコポリマー、もしくは上記のポリマーを一成分として含有する複合材料、またはポリオレフィン(たとえばポリエチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylsulfides)、もしくは液晶ポリマーLCP、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルなどの非吸収性ポリマー、もしくは等価なコポリマー、もしくは上記のポリマーを一成分として含有する複合材料である。
【0026】
分解性材料の特定の実施形態は、すべてBoehringer社のLR706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA 100%Lのようなポリラクチドである。好適な分解性ポリマー材料の一覧は、Erich Wintermantel und Suk-Woo Haa, "Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren", 3. Auflage, Springer, Berlin 2002(以下「Wintermantel」と称する)、200ページにも見出すことができる;PGAおよびPLAの情報については202ページ以降参照、PCLについては207ページ参照、PHB/PHVコポリマーについては206ページ参照;ポリジオクサノンPDSについては209ページ。さらなる生体再吸収性材料についての議論は、たとえばCA Bailey他、J Hand Surg [Br] 2006 Apr;31(2):208-12に見出すことができる。
【0027】
非分解性材料の具体的な実施形態は、ポリエーテルケトン(PEEK Optima(登録商標)、グレード450および150、Invibio社)、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリオキシメチレン、またはポリカーボネートウレタン(特にDSMによるBionate)である。ポリマーおよび用途の概略表はWintermantelの150ページにリストされており、具体的な例はWintermantelの161ページ以降(PE、Hostalen Gur 812、Hoechst AG)、164ページ以降(PET)、169ページ以降(PAつまりPA6およびPA66)、171ページ以降(PTFE)、173ページ以降(PMMA)、180ページ(PUR、表参照)、186ページ以降(PEEK(登録商標))、189ページ以降(PSU)、191ページ以降(POM−ポリアセタール、商品名デルリン(登録商標)、Tenac(登録商標)もProtecによって内部プロテーゼにおいて使用されている)に見出すことができる。
【0028】
熱可塑特性を有する材料は、さらなる機能を果たす異種の段階または化合物をさらに含み得る。特に、熱可塑性材料は、(たとえばリン酸カルシウムセラミックスまたはガラスの)混合されたファイバまたはウィスカーで強化してもよく、このように複合材料を表わす。熱可塑特性を有する材料は、現場で拡張または溶解する(細孔を形成する)成分(たとえばポリエステル、多糖類、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)、インプラントを不透明にしそれによりX線について視覚化する化合物、または現場で放出され、治療効果、たとえば回復および再生の促進を有する化合物(たとえば酸性分解の悪影響に対抗するリン酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムといった成長因子、抗生材料、炎症阻害剤または緩衝液)をさらに含み得る。熱可塑性材料が再吸収性である場合、そのような化合物の放出は遅延される。振動エネルギを利用してではなく、電磁放射を利用して装置が固着される場合、熱可塑特性を有する液化可能材料は、特定周波数域の(特に可視または赤外周波数域の)そのような放射を吸収することができる化合物(微粒子または分子)、たとえばリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、マイカ、飽和脂肪酸、多糖類、グルコース、またはその混合物を局所的に含有し得る。
【0029】
使用される充填剤は、β-リン酸三カルシウム(TCP)、ハイドロキシアパタイト(HA、<90%の結晶度)またはTCP、HA、DHCP、生体ガラスの混合物(Wintermantel参照)を含む分解性ポリマーにおいて使用される分解性の骨刺激性(osseostimulative)充填剤を含み得る。非分解性のポリマーについては、部分的にのみ分解性であるかまたはほとんど分解性ではない骨一体化刺激(Osseo-integration stimulating)充填剤は、生体ガラス、ハイドロキシアパタイト(>90%の結晶度)、HAPEX(登録商標)を含む。SM Rea他、J Mater Sci Mater Med. 2004 Sept;15(9):997-1005参照。ハイドロキシアパタイトについては、L.Fang他、Biomaterials 2006 Jul; 27(20):3701-7、M.Huang他、J Mater Sci Mater Med 2003 Jul;14(7):655-60、ならびにW. BonfieldおよびE. Tanner、Materials World 1997 Jan; 5 no. 1:18-20も参照。生物活性充填剤の実施形態およびそれらの議論は、たとえばX. HuangおよびX. Miao, J Biomater App. 2007 Apr; 21(4):351-74)、JA Juhasz他、Biomaterials, 2004 Mar; 25(6):949-55に見出すことができる。微粒子充填剤の種類は、粗い種類:5〜20μm(含有量、優先的に10〜25体積%)、サブミクロン(沈澱反応によるようなナノ充填剤、優先的にプレート状アスペクト比>10、10〜50nm、含有量0.5〜5体積%)を含む。
【0030】
埋込み可能な装置または装置部品の固着および封止機能を果たさない部分は、生体再吸収性もしくは非生体再吸収性でありかつ液化可能または液化不可能であり得るいずれかの好適な材料(たとえばポリマー、金属、セラミック、ガラス)で構成され得る。
【0031】
発明に係る装置および方法は、低侵襲手術に特に好適であるが、観血療法にも適用可能である。
【0032】
ヒトまたは動物の身体に材料または信号を送達する代わりに、特に放射(たとえばガンマ放射、たとえば赤外光などの電磁放射)の形態で組織にエネルギを送達するために発明に係る装置を使用することも可能である。
【0033】
図面の簡単な説明
発明は、添付の図面に関連してさらに詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好ましい実施形態の説明
図1は、発明に係る埋込み可能な薬剤送達装置の例示的な実施形態を示す。装置は、皮質骨層2の下の海綿骨組織1への例示された薬剤送達(骨内薬剤送達)である例示的な場合において、硬組織層のアクセス不可能な側(つまり硬組織層を通ってのみアクセス可能な側)に位置する組織への薬剤送達Dに好適である。装置の埋込みのために、皮質骨層2は、海綿骨組織に対向するそのアクセス可能な側から穿孔される。
図1は軸方向に切断され、埋込みの準備ができた(左手側)装置と埋込み後(右手側)の装置とを示す。
【0036】
装置は、プラグ部分Pと、たとえばプラグ部分Pの遠位方向に延在し実質的に円柱状である容器3とを含む。容器3は、穿孔された、開窓された、または別のやり方で好適に透過性を有する遠位壁部分5(円柱状容器の側壁の遠位部分および/または遠位壁)と、不透過性の近位壁部分6(円柱状容器の近位壁および/または側壁の近位部)とを有する。例示されている場合では、不透過性の近位壁部分がプラグ部分Pによって構成される。熱可塑特性を有する材料のリング7は、透過性および不透過性壁部分の間、例示されている場合ではプラグ部分Pまたは円柱状容器3の近位領域それぞれの周囲に配置され、好ましくは容器の側壁より若干大きい直径を有する。容器3は、たとえば金属、セラミック材料、または熱可塑特性を有しても有さなくてもよい高分子材料からなり、特に、リング7と同じ熱可塑特性を有する材料からなり得る。装置の軸方向長さは、装置がそれを通って埋込まれる硬組織層(たとえば皮質骨層2)の厚さより好ましくは大きい。薬剤または薬剤と薬剤担体との組合せ(たとえば、薬剤担体粒子8、薬剤担体タブレット、または薬剤担体ゲルに一体化された薬剤)が容器3内に含まれる。
【0037】
図1の装置を埋込むために、開口部9が骨の所望の位置に設けられ、装置またはリング7それぞれの近位方向断面は、開口部の口の断面よりも若干大きく、開口部は、透過性壁を有する容器部分を収容するのに十分な深さまで海綿骨組織1内に至る。装置は、リング7が開口部内または開口部の口の上に乗った状態で開口部9に位置決めされる。次いで、少なくともリング7にエネルギが伝達され、装置が同時に開口部9に押込まれる。この目的のために、たとえば活性超音波装置に連結されたソノトロード10が位置決めされた装置に適用され、後者に押付けられ、ソノトロードは、たとえば例示されるようにリング7に適合化された断面を有する。ソノトロード10は、装置を保持するための手段も装備し得、埋込み(図示せず)のために装置を位置決めするためにも使用され得る。
【0038】
振動および押圧は、開口部9の口領域の骨壁とリング7との間に摩擦を生じさせ、リング材料の液化のための熱を発生させ、同時にリング材料がこの骨壁と密接に接触させられる。同時に、装置を開口部内により深く移動させる。装置の近位面が骨表面とほぼ面一になると振動が停止されることが有利であるが、皮質骨層2においてかつ有利には皮質と海綿骨組織との間の移行領域において実現されたリング7の固着が完全な封止リング11を形成するのに十分である限り、振動を停止すると、装置の近位面は骨表面の上または下にも位置し得る。
【0039】
図1の右手側に示されるように、リング材料の再凝固時に、この材料は、骨組織との封止接続(封止リング11)を、対応する空洞または細孔をこの骨組織が含む場合は骨組織との押込み嵌め接続を形成する。皮質骨といった生来の有孔性をほんのわずかしか有さない硬組織においてそのような押込み嵌め接続を実現するために、たとえば糸または他の好適な表面構造が開口部9の口領域に設けられ得る。押込み嵌め接続は、リング材料が皮質骨層の深さだけでなく、骨組織が押込み嵌め接続を実現するのに十分な有孔性を含む、皮質と海綿骨との間の移行帯の深さでも液化されるように、十分深く開口部9内に至るようにリング7を寸法決めした状態でも実現することができる。
【0040】
プラグ部分Pの遠位側で延在するのに加え、容器は、プラグ部分を通ってプラグ部分の近位側にも延在し得る(
図3に示される装置と同様)が、上記の領域においては透過性壁は有しておらず、埋込み後に近位容器部品はそのアクセス可能な側で皮質骨から突出することになる。
【0041】
図1に例示されるように振動エネルギを埋込みプロセスに使用する代わりに、レーザ光源に接続された光導波路を含み、かつレーザ光線をリング7中にまたはリング7を通して送り、リング中にまたはリングの下で吸収させて、リング材料の液化に必要な熱エネルギを供給するのに好適なプレス器具を使用することもできる。代替的に、リング7またはリングに隣接した装置部分は、抵抗性または誘導性加熱のために装備され得、プレス器具は、必要な電気または電磁エネルギを送るように装備される。
【0042】
上記のように、(装置の材料もしくは信号の送達または収集部分の例として)薬剤が容器3内に配置される。薬剤が存在する構成と、容器の穿孔、開窓または他の好適な透過性とが互いに適合化され、所望の送達速度および/または送達プロファイルを実現する。透過性の遠位壁部分が薬剤の通過のためだけに実質的な障害またはバッフルを構成しないように設計される場合、薬剤と薬剤担体との好適な組合せ(装置の材料もしくは信号の送達または収集部分のさらなる例)、すなわち完全な薬剤送達システムを容器内に供給することによって所望の送達速度および/またはプロファイルが実現され、埋込み可能な容器は固定埋込みだけのための手段として現れ、送達プロセスの特徴にせいぜいごくわずかにしか影響しない。そのような薬剤送達システムは、薬剤が一体化されるゲル、リポソーム、ナノ粒子、マイクロスフェア、ビーズ、もしくはタブレット、または薬剤が含有されるたとえばポリマー、セラミックもしくは金属材料の封入物、カプセル剤、または多孔質体といった1つまたは複数の本質的に知られている薬剤担体を含み得る。薬剤は、担体材料の生体再吸収、溶解または分解によって、または拡散もしくは浸透によって送達システムから放出される。
【0043】
容器の壁部分の上記の透過性は装置の用途に適合化される。これは、材料の送達または収集のための装置では、そのような透過性は特定用途の材料の通過を可能にするものであり、信号の送達または収集のための装置では、透過性は特定の信号の通過を可能にするものであることを意味する。
【0044】
一方、薬剤送達プロセスにおいてより直接的な役割を果たすように容器3を装備することも可能である。その透過性の遠位壁部分5は、たとえば特定の程度の再吸収、溶解または分解(遅延送達)の後で初めて薬剤について透過性となる生体再吸収性、可溶性、または分解する材料から少なくとも部分的に作製され得る。さらに、壁5の透過性は、上記の薬剤担体のようなさらなる制限手段の必要なしに、所望の薬剤送達速度(遅い送達)を制限するように制約され得る。さらに、透過性壁セクションの窓は、送達システムを駆動する浸透性ポンプがそれを通って供給される半透過性膜によって閉鎖され得る。
【0045】
図2は、
図1に係る装置を利用した骨内薬剤送達Dの例示的な用途を例示する。例示されている装置は、膝関節のカプセルの真下の脛骨顆の横側に埋込まれ、骨内薬剤送達D(薬剤送達装置から離れて骨組織に広がる矢印および黒い点として例示される)は脛骨の関節面付近の骨組織に向けられる。
【0046】
図1または
図2に例示されるような薬剤送達装置を利用した局所的な骨内薬剤送達は、たとえば、抗生材料もしくは抗炎症薬、骨の再生を促進する薬剤、または骨肉腫と戦うための薬剤の骨組織への送達に役立ち得る。例示的な用途は、抗生材料処方(たとえばゲンタミシン、バンコマイシン、アモキシシリン、セファロスポリン)の局所的な遅放出性の骨内送達による(たとえば開放骨折または骨手術の後の)ヒトの患者における慢性または急性骨髄炎の局所的な予防および補助治療、骨組織に埋め込まれる内部プロテーゼの部分付近の抗生材料(たとえばゲンタミシンまたはバンコマイシン)の局所的な遅放出性の骨内送達による、内部プロテーゼ手術(初回または再手術)に続く感染症の予防または治療、抗生材料(たとえばゲンタミシン、アミカシン、セファロスポリン)の局所的な遅放出性の骨内送達による動物の患者における骨髄炎、敗血性骨端炎、または骨折感染症の治療または予防、骨折部位付近の骨成長因子(たとえばBMP−2またはBMP−7)の局所的な骨内送達による、骨折、複雑かつ治すのが困難な偽関節炎および偽関節骨折の予防および治療上の処置(急性または二次的な処置)、癒合部位またはその付近の骨成長因子(たとえばBMP−2またはBMP−7)の制御された局所的な骨内送達による脊椎癒合の支援、腱/骨または靭帯/骨の界面付近の骨成長因子(たとえばBMP−2またはBMP−7)の局所的な送達による腱または靭帯の修復の支援、転移性病巣またはその近辺の抗癌剤(たとえばメトトレキセートまたはシスプラチン)の遅放出性の骨内送達による外科的切除(たとえば1つ以上の症候性の骨転移を有するグレードIVの乳がんおよび前立腺がん)後の手術不可能な症候性もしくは不安定な骨転移またはアジュバント療法(adjuvant therapy)の緩和的局所治療、骨形成を刺激するおよび/または骨破壊を阻止する薬剤(たとえば骨成長因子、ビスホスホネート)の遅放出性の骨内送達による症候性または不安定な骨転移の外科的切除後の骨再生、無血管性骨壊死の治療、局所的な疼痛に対する治療である。
【0047】
上に挙げた用途のすべてにおいて、発明に係る薬剤送達装置は、好ましくは皮質骨層を通って埋込まれ、海綿骨における送達のために装備され、それにより骨組織への送達を制限する。しかしながら、皮層なしに、それにより封止機能なしに、外科的に作製された骨表面を通って同様の装置を埋込むことも可能である。そのような埋込みは、たとえば、骨組織に接する内部プロテーゼ表面付近の抗生材料(たとえばゲンタマイシンまたはバンコマイシン)の局所的な遅放出性の送達による内部プロテーゼ手術(初回または再手術)後の感染症の予防の用途において可能である。
【0048】
局所的な薬剤送達の代わりに、
図1および
図2に係る装置および方法は、全身的な送達にも好適であり、薬剤は海綿骨組織に送達され、この海綿骨組織内での優れた血液供給が利用される。骨内薬剤送達の代わりに、
図1および
図2に例示される装置および方法は、装置が硬組織層を通って埋込まれ、体腔にまたは硬組織層のアクセス不可能な側の他の組織に至る場合は、硬組織(たとえば骨)層のアクセス不可能な側での骨外送達にも使用され得る。そのような使用の用途は、たとえば、頭蓋内空間もしくは脳脊髄液それぞれへの頭骨を通る薬剤の送達、骨髄腔もしくは骨髄それぞれへの長骨を通る送達、または洞腔への顔面骨を通る送達である。
【0049】
図3は、発明に係る装置および方法のさらなる実施形態を例示するが、
図1に係る実施形態と多くの類似点を有する。同じ項目は
図1と同じ参照数字で表記される。
図1に係る装置以外に、
図3に係る装置は、装置がそれを通って埋込まれる硬組織層(皮質骨層2)のアクセス可能な側での薬剤送達D(硬組織層のアクセス可能な側での骨外薬剤送達、たとえば皮質骨層に隣接する空洞または組織への、たとえば関節襄への薬剤送達)のために設計される。この理由により、容器3の遠位壁部分5は不透過性であり、近位壁部分6は透過性であり、
図1のように2つの壁部分5および6を分離するプラグ部分Pまたは熱可塑性材料のリング7から近位方向に延在しても延在しなくてもよい。このリング7は、たとえば装置の周囲を通るアンダーカット溝に配置され、リングは溝から突出し、したがって容器の直径を若干増大させる(プラグ部分P)。そのようなリングは初めに完全である必要はなく、十分な熱可塑性材料を含み、液化状態において溝全体を充填し十分な封止リング11を構成するならば、周方向の間隙を含んでもよいことは明白である。
【0050】
図3の右手側に示されるように、装置は骨表面と面一となるようには埋込まれず、埋込まれた状態で開口部9から突出する。代替的に、装置は骨表面と面一となるように埋込まれ得、その場合には、熱可塑性材料のリング7は、(
図1に例示のように)近位装置端部に位置決めされることになり、透過性の近位壁部分6は近位装置面に制限されることになる。
図1に関連して述べたように、
図3に係る装置は少なくとも2つの異なる材料からなってもよいし、熱可塑特性を有する材料から完全になってもよく、リング7は装置全体の一体部品となり、好ましくは容器の側壁の若干上に突出することになる。
【0051】
図4は、膝関節のカプセル内の大腿顆の横方向の側に埋込まれる
図3に係る装置の例示的な用途を
図2と同じ方法で示し、薬剤送達D(黒い点で例示される)は、カプセルに含まれる滑液に、または滑液に接する組織(たとえば軟骨)に向けられている。そのような薬剤送達の例示的な用途は、動物患者における患部の関節の滑液への抗生材料(たとえばゲンタミシン、アミカシン、セファロスポリン)の遅放出性の関節内送達による急性、亜急性もしくは慢性の関節の感染症(たとえば隣接する骨および軟組織の関与の有無に関わらず敗血症性関節炎)の局所的な補助治療もしくは予防、または患部の関節の滑液への抗炎症薬(たとえばコルチゾン)の長期的な送達による炎症性もしくは退行性骨関節症の長期治療に関係がある。関節襄内部での埋込みについて上記したのと同じように、装置を他の骨に埋込んでもよく、薬剤送達は、空洞もしくは液体に、または骨のアクセス可能な側の骨組織以外の組織に向けられる。
【0052】
図5は、
図1に係る薬剤送達装置と極めて同様の薬剤送達装置(埋込まれた構造)を示す。
図1に示したものとは異なり、熱可塑特性を有する材料のリング7は、プラグ部分の周囲に配置されて開口部9に導入されるのではなく、リング材料が開口部9の口の周囲の硬組織表面に固着されるように、カバー部分Cの硬組織対向面上に配置される。したがって、リング7は開口部9の直径より大きな直径を有する。装置は、遠位および近位壁部分(5,6)を有する容器3を含み、近位壁部分6はカバー部分Cによって構成され、不透過性であり、遠位壁部分5は穿孔、開窓、または他の好適な透過性を含み、カバー部分Cから遠位方向に延在する。
図5は埋込まれた装置を示し、リング7は、皮質骨層2の外面に封止状態に固着され、そこに封止リング11を構成する。骨組織とリング7との間に良好な封止および押込み嵌め接続を実現するためには、装置を埋込む前に上記の骨表面を粗面化することが有利であり得る。
【0053】
当然、
図5の装置のカバー部分Cに隣接する、つまり熱可塑特性を有する材料のさらなるリングを含む容器領域を、プラグ部分として寸法決めおよび/または装備することと、骨表面におけるカバー部分Cのリングだけでなく開口部の壁のプラグ部分のリングも固着することとが可能であり、両方のリングの固着がともに完全な封止リング11を形成することが条件であるが、各リングが単独で完全な封止リングを形成することは条件ではない。
【0054】
図6は、
図5に係る薬剤送達装置と同様のさらなる薬剤送達装置を示すが、硬組織(たとえば骨)層を通って埋込まれると、
図3および
図4に関連して上記したように、硬組織層のアクセス可能な側での(骨外)薬剤送達に役立つ(たとえば関節内薬剤送達、すなわち滑液関節の滑液への薬剤送達)。
図6に係る装置は、透過性を有するのは近位壁部分6(カバー部分C)であって、遠位壁部分5は不透過性である点で、
図5に係る装置とは異なる。
【0055】
図6に示されるような装置のカバー部分が熱可塑特性を有する材料から完全になる場合は、例示したのと反対の方位に、つまり容器が近位方向つまり骨表面から離れて延在する状態で、開口部9の周囲の骨表面に固定してもよい。そのような方位で埋込まれた場合、同じ装置は、開口部9の深さが皮質骨層の厚さと少なくとも同じくらい大きければ、骨内薬剤送達が可能である。
【0056】
図5および
図6に示される装置の両方において、容器はカバー部分Cに延在するかまたはカバー部分から近位方向に突出し得る。
図5および
図6に示される装置の材料、機能および用途は、
図1〜
図4に示される装置に関連して記載したものと実質的に同じである。
【0057】
図1〜
図6によって例示される薬剤送達装置および埋込み方法は、発明から逸脱することなく、たとえば以下のやり方で変更され得る。
− 実質的に円柱状である代わりに、装置は、たとえば円錐形または段差状であり得、先細りまたは段差状の硬組織開口部に嵌合し得る。また、装置の軸方向長さは、その直径より大きくても、同じでも、小さくても良く、装置および/または熱可塑性材料のリングは、いずれかの形態の断面、特に非円形断面を有し得る。装置の形態とそれによる容器3の形態との大きな可変性により、発明に係る装置を利用するのとは異なる投与のための市販の多数の薬剤/担体の組合せへの適合化が可能となる。
− 装置もしくはその部分が埋込みのために位置決めされるかまたは硬組織にすでに埋込まれている場合、装置の容器は、容器に充填される薬剤または薬剤/担体の組合せに好適な閉鎖可能な近位開口部を含み得る。次いで開口部は、たとえば閉鎖要素をその中に超音波溶接することによって閉鎖され、閉鎖要素は装置のカバーまたはプラグ部分を同時に構成し得、容器を閉鎖するために容器の側壁部分に溶接されるのと同時に、封止リングを生成するために硬組織に固着される。
− 容器の近位開口部は、閉鎖され、再び開かれ、再び閉鎖されることが可能であり得る(たとえば中空針で貫通される隔膜)。薬剤または薬剤/担体組成は、埋込まれた装置に開口部を通って充填され、次いで開口部が閉鎖されるかまたは自ら閉鎖する。(装置の埋込まれた構造において)再充填するために、開口部が再び開かれ、次いで再び閉鎖される。
− 容器の透過性の遠位または近位壁部分は可撓性であり得(たとえば繊維材料で構成され)、非可撓性のプラグまたはカバー部分に取付けられ得る。
− 装置は、容器の代わりに、少なくとも透過性の遠位または近位壁部分の機能を引継ぐことができ、かつ装置のプラグまたはカバー部分に取付けられる薬剤/担体の組合せを含む。そのような薬剤/担体の組合せは、たとえば、数片の生体吸収性材料または開放気孔率を有する材料である。
− 薬剤もしくは薬剤/担体の組合せの代わりにまたはそれに加えて、容器は、たとえば電子要素などの、他の材料もしくは信号の送達または収集部分を含み得、埋込まれる体内での信号の送達または収集のために、場合によってはさらなる装置部品と協動して機能し得る。発せられるかまたは受信される信号に依存して、かつ容器の壁の材料に依存して、そのような場合には、容器の壁は穿孔を含まなくてもよい。電子要素はたとえばRFIDチップである。電子もしくは他の信号を発信または受信する要素を、容器を使用せずにプラグまたはカバー部分に直接取付けることも可能である。
− 薬剤もしくは薬剤/担体の組合せの代わりにまたはそれに加えて、容器はアルファまたはベータ放射のための放射線源を含み得、放射に対して透過性でない壁部分は、たとえば硫酸バリウムまたはタンタルを含有する。
− 薬剤もしくは薬剤/担体の組合せの代わりにまたはそれに加えて、容器は好適な懸濁液もしくは基質に細胞を含有し、細胞は局所的に所望の組織(たとえば幹細胞もしくは骨芽細胞といったさらなる分化細胞)を形成することができるか、または局所的治療もしくは他の点で好都合な目的に好適なタンパク質(たとえば成長因子または骨形態形成因子)の生成のために設計される。
− 装置は、装置がそれを通って埋込まれる硬組織層のアクセス不可能な側での薬剤の送達、特に骨内送達のために装備され、埋込みのために特定的に作製され、相応して装置に適合化された硬組織の開口部には埋込まれず、他の原因(たとえば手術、不慮の骨折)による硬組織層の開口部に埋込まれる。装置を開口部に適合化させるため、硬組織だけでなく1つまたは複数の他の同様の装置に封止状態に接触する封止リングによって各装置の封止機能が実現されるように、対応する装置を選択するかまたは複数の装置を埋込むことが可能である。発明の装置の目的とはまったく異なる目的に役立つ内部プロテーゼに隣接した開口部に埋込まれている装置にも同じことが当てはまる。
【0058】
図1〜
図6に例示される装置および方法の上記に挙げた例示的な変更は、以下の図に例示される装置および方法にも少なくとも部分的に適用可能であり、当業者は可能な組合せおよび場合によっては必要な適合化を容易に見出すであろう。
【0059】
図7〜
図9は、
図1および
図2に示された発明に係る装置のさらなる例示的な形態を示し、装置は、それを通って埋込まれる硬組織層のアクセス不可能な側での薬剤の送達(たとえば骨内薬剤送達)に適用可能であり、プラグ部分Pから遠位方向に延在し、透過性の遠位壁部分5を含む実質的に円柱状の容器3を含む。
【0060】
図7および
図8によれば、装置は、開窓された遠位壁部分5を有する実質的に円柱状の容器3と、熱可塑性材料のリングおよび容器の不透過性の近位壁部分(不可視)を構成するプラグ部分Pとを含む。薬剤または薬剤および薬剤担体(図示せず)の組合せは、その遠位または近位端のいずれかから容器3内に位置決めされ、少なくとも装置がまだ埋込まれていない限りは薬剤または薬剤送達システムそれぞれが容器から離れるのを防ぐために、近位端における入口ポートは対応する閉鎖要素(図示せず)で堅く閉鎖され、遠位端における入口ポートは好適な手段(たとえば
図3のクロスピン12)で十分に閉鎖される。ヒトの運動系における用途については、
図7および
図8に示される装置は、たとえば20〜30mmの長さと、たとえば3〜10mmの外径と、1〜8mmの内径とを有する。リング7は、遠位容器領域の外径よりたとえば1mm大きい外径と、少なくとも5mm程度の軸方向長さとを有する(骨内薬剤送達または皮質骨層を通る埋込みそれぞれについて)。より小さいおよび/またはより薄いヒトの骨(たとえば神経外科および顎顔面用途)、ならびに小動物における用途については、装置は相応してより小さく、より大きな動物における用途については、相応してより大きい(馬の用途:たとえば150mmまでの装置長さ)。
【0061】
プラグ部分Pおよび容器3は、たとえば一体成形され、熱可塑特性を有する材料、たとえばポリラクチドで構成される。ポリラクチドの場合のように材料が生体再吸収性である場合、その再吸収性は、薬剤の送達が実質的に完了する前に少なくともリング7または封止リング11それぞれの領域での吸収が開始しないか、または相応して封止機能を損なわないように、薬剤送達プロセスに適合化されるべきである。
【0062】
図9は、
図1に示される発明に係る装置のさらなる例示的な形態の分解軸方向断面である。装置は、穿孔された、開窓された、または別のやり方で好適に透過性を有する壁を有し、かつ遠位閉鎖要素15とともに容器の透過性の遠位壁部分5を構成する管要素13を含む。装置はさらに、熱可塑特性を有する材料からなり、管要素13より断面が若干大きく、かつ、熱可塑特性を有する材料のリング7と不透過性の近位壁部分6とを有するプラグまたはカバー部分PまたはCを構成する近位閉鎖要素14を含む。両方の閉鎖要素は熱可塑特性を有する材料で構成され、管要素13はたとえば金属チューブであることが有利である。
図9に示される装置は有利に組み立てられ、薬剤または薬剤/担体の組合せ、または材料もしくは信号の送達または収集のための他の要素が装填され、次いで、
図1の装置についてさらに上記したように埋込まれる。装置の硬組織に設けられる開口部の深さと、この開口部の底部の硬組織の機械的特性と装置の遠位面の形態とに依存して、開口部の口領域における固着と同様に、遠位閉鎖要素の領域における硬組織への固着が可能である。
【0063】
開窓、穿孔、または他の透過性を含む管要素13の代わりに、管要素13は不透過性の壁を有してもよく、遠位閉鎖要素15は相応して透過性であってもよい。2つの閉鎖要素のうち一方が透過性で、他方が不透過性であり、かつ両方の閉鎖要素が実質的に同じ形態を有する場合、同じ装置を
図2および
図4に関連して記載された用途に使用することが可能であり、用途に依存して、透過性の閉鎖要素が先端または後端にある状態で装置が埋込まれる。
【0064】
図10は、発明に係る薬剤送達装置のさらなる例示的な実施形態を示し、装置は、硬組織層のアクセス不可能な側、たとえば皮質骨層2の下の海綿骨1に薬剤を送達するように装備される。装置は、骨組織に設けられた開口部9に上記のやり方で適合化されたプラグ部分Pおよび/またはカバー部分Cを含む。プラグおよび/またはカバー部分は、
図1〜
図9に関連して記載したように不透過性の近位壁部分と熱可塑特性を有する材料のリング7とを実質的に構成し、透過性の遠位壁部分の機能は、浸透された硬組織層のアクセス不可能な側の組織(特に皮質骨層2のアクセス不可能な側の海綿骨組織1)の開口部9の壁によって引継がれる。海綿骨組織に送達される薬剤または薬剤/担体の組合せ、または他の材料(たとえば、薬剤が一体化される生体再吸収性担体粒子8もしくはタブレット、たとえば成長因子が懸濁されるかもしくは溶解される食塩水、またはたとえば細胞外骨基質材料もしくは骨成長を促進する因子を生成することができる細胞を含む懸濁液もしくは好適な基質)が開口部9に導入され、次いでプラグ部分Pおよび/またはカバー部分Cが、
図1〜
図9に例示された薬剤送達装置に関連して実質的に記載したように、開口部9の壁および/または開口部の口の周囲の骨表面に、封止状態で固着される。
【0065】
図11は、
図10によって例示された装置と同様の特徴を有する薬剤送達装置を示す。装置は、プラグ部分Pと後者から遠位方向に延在する容器とを含み、容器は側壁のみを有し、側壁は、穿孔されているか、開窓されているか、もしくは別のやり方で透過性を有するか、またはそうでなくてもよく、遠位壁がないことにより唯一のまたは追加的な窓が生じる。プラグ部分は、容器の不透過性の近位壁部分を構成する。装置は、たとえば骨欠陥を覆うように埋込まれ、開口部の壁における固着は、装置の軸方向長さ全体にわたって延在し得る(不透過性の側壁についてまたは窓どうしの間)。
図11に係る装置の容器3は遠位壁を有していないため、たとえば、装置の埋込み後に掘削され、かつ容器3を充填した後でたとえば超音波振動エネルギを用いてチャネル20に「溶接」される骨プラグ21または熱可塑特性を有する材料のプラグで閉鎖される横方向チャネル20を通って、薬剤または薬剤/担体の組合せを埋込み後に導入することが有利である。
【0066】
図12および
図13は、硬組織層のアクセス不可能な側での、たとえば皮質骨層2の下の海綿骨組織1または長骨内の骨髄への薬剤送達のための薬剤送達装置を再び示し、薬剤は遠位装置端においてのみ放出される。装置は容器3を含み、容器の側壁は透過性ではなく、したがって装置の軸方向長さ全体がプラグ部分Pを構成し得るか、または換言すると、熱可塑特性を有する材料のリング7と封止リング11との軸方向長さは、実質的に装置の軸方向長さ全体にわたって延在し得る。
【0067】
図12に係る実施形態では、容器3の内部空間は、たとえばばね30によって若干狭い遠位出口ポートに対して偏倚された列または鎖でこの空間に配置される生体分解性薬剤担体ビーズ8またはタブレットの直径に適合化された直径を有する。出口ポートに最も近い第1の担体ビーズが出口ポートを通過できるように十分に再吸収されるとすぐに、再吸収する媒体から第1の担体ビーズによって前もって遮蔽されていた次の第2の担体ビーズが出口ポートに押出され、再吸収される。
【0068】
図14に係る実施形態では、釘形の薬剤担体32のシャフト31に薬剤が含有される。釘形の薬剤担体の頭部33は薬剤を含有せず、管状容器3またはプラグ部分Pそれぞれの上に閉鎖要素として嵌合する。薬剤釘32は、後者の埋込み前または後にプラグ部分Pに導入され、頭部33がプラグ部分Pの近位面に(たとえば超音波振動エネルギを利用して)有利に溶接される。開口部9の壁および/または開口部9の口の周囲の硬組織表面に固着されるプラグ部分および/または閉鎖部分Cとして頭部33を寸法決めし装備することも可能である。そのような場合、管状容器3は硬組織開口部に位置決めされ、薬剤釘32が容器の位置決め前または後に後者に導入され、次いで頭部が容器に溶接され、同時に硬組織に固着される。薬剤の送達は、担体釘のシャフトの生物分解もしくは溶解、またはこのシャフトからの拡散によって行われる。
【0069】
図14は発明に係るさらなる薬剤送達装置を示し、当該装置は、装置がそれを通って埋込まれる硬組織層のアクセス可能な側への薬剤送達に好適である。装置は、穿孔されたまたは開窓された薬剤容器3または薬剤/担体タブレットと不透過性のプラグ部分P(場合によってはカバー部分Cと組合せられる)とを含み、薬剤容器は、たとえばスナップ接合35を利用してプラグまたはカバー部分の近位側に放出可能に取付けられる。取付けられると、容器は、硬組織層のアクセス可能な側の硬組織表面上またはその上方に位置する。プラグ部分は、容器がそれに取付けられる前に硬組織開口部に埋込まれることが好ましい。
【0070】
図15は、発明に係る薬剤送達装置および装置を埋込むための方法のさらなる実施形態を例示する。装置は、たとえば皮質骨層を通る骨内薬剤送達について、硬組織層のアクセス不可能な側での薬剤送達のために装備される。しかしながら、発明に係る装置の他の実施形態についてさらに上記したように適合化された場合、当該装置は、硬組織層のアクセス可能な側での薬剤送達にも役立ち得る。
【0071】
装置は、穿孔されたまたは開窓された壁5を有する管要素13によって構成される実質的に円柱状の容器と、場合によってはカバー部分Cと組合せられたプラグ部分Pを構成する、つまり、プラグ部分Pの周囲に、かつ場合によってはカバー部分Cの硬組織対向面上にも、熱可塑特性を有する材料のリング7を含む近位閉鎖要素14とを
図9に係る装置と同様のやり方で含む。管要素13は、開かれた近位端と、開かれたまたは閉鎖された遠位端とを有し、近位閉鎖要素14は近位開放端に嵌合し、管の穿孔がちょうどこの近位端に続く。装置は遠位閉鎖要素15をさらに含み得、遠位閉鎖要素15は、近位閉鎖要素14の材料と同じかまたは異なる熱可塑特性を有する材料を含む。閉鎖要素15は、管要素13の底部に位置決めされる。遠位閉鎖要素15は、装置を硬組織開口部9の底部に固着させるように役立ち、その目的のために、管要素13の遠位端は穿孔されたまたは開窓された壁を含む必要がある。遠位閉鎖要素はさらに、管要素13の遠位端を閉鎖するように、および/または遠位装置端の領域の海綿骨組織を強化するように役立ち得る。
【0072】
図15は、上記の薬剤送達装置の埋込みの3つの連続的な段階(a)〜(c)を示す。段階(a)において、管要素13が硬組織開口部9に位置決めされる。硬組織開口部9は、少なくともその口の領域において管要素13が開口部の壁によって密接に包囲されるように寸法決めされる。管要素13の遠位端は、開口部9の底部に載っても載らなくてもよい(管要素13は、開口部の口の周囲の硬組織表面上に支持される近位フランジを含む場合、開口部内に自由に垂下し得る)。該当する場合、遠位閉鎖要素15が管要素13の底部に位置決めされ、一次的なソノトロード10′が管要素13に導入され、管要素13の底部に遠位閉鎖要素15を押付け、それに振動を送ることによって遠位固着を行い、この閉鎖要素の熱可塑性材料を少なくとも部分的に液化し、それを管要素の穿孔または窓を通って押し、後者を包囲する組織に浸透させる。
【0073】
段階(b)において、遠位固着が完了され、一次的なソノトロード10′が除去される。薬剤または薬剤送達組成(たとえば薬剤封入容器42)が管要素13に導入される。近位閉鎖要素14が管要素13の近位端の上または中に位置決めされ、二次的なソノトロード10″がそれに適用され、プラグ部分P(リング7)の外周面の材料を液化し、それを管要素13の穿孔または窓を通って押し、開口部9の壁にその口の領域において接触させることにより、管要素13の閉鎖を行いかつ同時に管要素13を開口部9の硬組織壁に封止状態に固着させる。該当する場合は、カバー部分C上に配置された熱可塑特性を有するさらなる材料も液化される。そうすると、再凝固した材料が装置と開口部9の壁および場合によっては開口部9の口の周囲の硬組織表面との間に封止リング11を構成する。
【0074】
図12に示される装置の遠位および近位固着を行う際、薬剤の通過を可能にするために、管要素13の穿孔または窓を十分に熱可塑特性を有する材料から守るように注意すべきである。容器の壁のこれらの穿孔または窓または別の好適な透過性は、さらに上記したようなやり方で薬剤の通過について単純なバッフルを構成し得、そこでは容器に含まれる薬剤送達システムによって薬剤の送達が実質的に制御され、または薬剤の送達の制御において、より直接的な役割を果たし得る。
【0075】
図15に例示される発明に係る薬剤送達装置の例示的な実施形態は、以下のように変更され得る。
− 管要素13は穿孔されたまたは開窓された近位フランジを含み、近位カバー要素14はカバー部分Cを含み、熱可塑特性を有する材料のリング7は、フランジ穿孔を介して硬組織表面に固着される。
− 管要素13の固着はその完全な穿孔に関し得、近位カバー部分14は透過性であり、そのような場合、装置は、埋込まれる硬組織層のアクセス可能な側への薬剤送達に役立つ。
【0076】
図16は、硬組織層の直接アクセス可能ではない側へのアクセスポートとして機能する埋込み可能な装置部品を例示する。そのようなアクセスポートは、たとえば輸液カニューレ、カテーテル、センサ、電極、光導波路などのための一時的または永久的なアクセスに役立ち得、発明に係る改良によって、アクセスポートを埋込むことで損なわれる硬組織層の天然封止機能が十分に修復される。
図16に示されるアクセスポートは、頭蓋の内部への一時的または反復的なアクセスをもたらすために頭骨に埋込まれる。同じように、骨の髄腔へのアクセスをもたらすために管状骨を通って、皮質骨層の下の海綿骨組織または嚢腫または腫瘍へのアクセスをもたらすために皮質骨層を通って、洞腔へのアクセスをもたらすために顔面骨を通って、または、たとえば歯と顎骨との間の歯根膜炎によって引起こされるポケットのように装置自身によって閉鎖される硬組織開口部を通って、アクセスポートを埋込んでもよい。アクセスポートは、硬組織層のアクセス不可能な側での材料もしくは信号の送達または収集のための装置の一部を構成する。
【0077】
図16は、埋込み前(上)および埋込まれた状態(下)のアクセスポートを示す。アクセスポートは、薬剤送達装置について上記したようなプラグ部分Pおよび/またはカバー部分(図示せず)を含む。プラグ部分Pは、熱可塑特性を有する材料の外周リング7と、断面が小さい要素(たとえばカニューレ、中空針)で穿孔されることができ、この要素の除去後にこの要素の周囲の穿孔を再び封止状態に閉鎖することができるように弾性特性を有する材料の中心隔壁要素50とを含む。たとえばシリコーン系のエラストマーであるそのような材料は、注射器を充填するために多元アクセスを可能とする容器の閉鎖部から周知である。
【0078】
アクセスポートは、たとえばソノトロード10を利用してたとえば頭骨51に設けられる開口部9を通って埋込まれ、埋込まれた状態において、頭骨を通る望ましくない通過の防止を隔壁要素50とともに保証する封止リング11によってこの開口部9の壁に隣接し固着され、例示されている場合には、たとえばバクテリアの通過の防止が特に重要である。
【0079】
隔壁要素50を含む代わりに、アクセスポートは、たとえばアクセスポートを通って伸びるカニューレ、センサ、電極、または他の要素を含んでもよく、当該要素は、アクセスポートに永久的に設置され、さらなる装置部品と一時的にまたは永久的に接続されるか、接続可能であるか、または協動する。
【0080】
上記したようなアクセスポートの用途は、たとえば硬組織層のアクセス不可能な側に配置された薬剤容器への再充填のためのアクセスまたは末梢血管系虚脱を患っているかもしくは血管内投与には侵襲的すぎる薬剤の投与を必要としている患者への薬剤の投与のための管状骨の壁を通る骨髄への緊急アクセスをもたらすことである。アクセスポートは、アクセスポートが埋込まれる硬組織層のアクセス可能な側にたとえば皮下的に配置され、かつたとえば身体の外部からまたはアクセスポートも通過するセンサの信号によって起動される薬剤貯槽または薬剤ポンプに永久的に接続されてもよい。アクセスポートは、たとえば光線力学療法のために硬組織層のアクセス不可能な側に放射エネルギ(たとえば赤外光)を送達するために、場合によっては遠位拡散要素を含む光導波路の一時的な通過用に使用されてもよい。
【0081】
中心隔壁要素を含む代わりに、
図16に係る装置は、非透過性材料の中心部分を含んでもよいし、熱可塑特性を有する材料で完全に構成されてもよい。
図16に係るアクセスポートと同じやり方で埋込まれるそのような装置は、唯一の材料送達または収集ステップに役立つ装置の一部であり、硬組織層を通る開口部が設けられ、カニューレまたは中空針を使用して開口部を通って硬組織層にアクセス可能な側から材料が送達されるかまたは取出され、開口部は次いで、カニューレまたは中空針とともに材料送達または収集のための装置全体を構成するプラグおよび/またはカバー部分を利用して閉鎖される。
【0082】
図17は、上記の装置または装置部品の皮下埋込み、特に
図1、
図2、
図7、または
図8に関連して記載した薬剤送達装置の、またはたとえば
図16に関連して記載し、かつたとえば埋込まれた装置に永久経皮的なアクセスをもたらすアクセスポートの、そのような埋込みをさらに例示する。
図17は、埋込みプロセスの5つの連続的な段階(a)〜(e)を示す。
【0083】
段階(a)は、装置が埋込まれる位置において硬組織層(たとえば皮質骨層2)のアクセス可能な側に皮膚62を通って位置決めされている超音波装置61に接続されている中空の打抜工具60を示す。打抜工具60は、軸方向長さがより小さいスリーブ64を近位位置に担持する。超音波装置61を利用して、工具60は、所望の深さまで、かつスリーブ64が硬組織層2の表面上に位置決めされるかまたはわずかに食込むように皮膚62と硬組織層2とを通って押込まれる。打抜工具60が超音波振動エネルギによって駆動される打抜きプロセスは、公報US2008/269649に記載されており、その開示は引用によってここに開示される。
【0084】
段階(b)は、硬組織層2を通って設けられる開口部9を示し、スリーブ64が開口部の口に位置決めされ、打抜工具60が開口部9内から骨プラグ9′とともに取出される。
【0085】
段階(c)は、ソノトロード10の遠位端に保持され、かつスリーブ64を通って導入される埋込み可能な装置65を示す。段階(d)は、封止リング11を通って硬組織層に固着され、かつスリーブ64または皮膚62それぞれを通って経皮的にアクセス可能な装置65を示し、段階(e)は、好適なカバー66で閉鎖されたスリーブ64を示す。
【0086】
図18は、発明に係る装置65の皮下埋込みのさらなる実施形態を例示し、当該装置は、装置65がそれを通って埋込まれる硬組織層2のアクセス不可能な側での薬剤送達に役立つ薬剤送達装置である。埋込みは、4つの連続的な段階(a)〜(d)で示される。装置は
図12および
図13に示される装置と同様であり、その遠位口が穿刺要素70によって当初は封鎖される軸方向チャネルを含み、穿刺要素70は、チャネルに設けられた好適な手段によって、チャネルに押込まれることは妨げられるが、チャネルの遠位端から押出されることは妨げられない。実質的に円柱状の装置部分は、例示されるように熱可塑特性を有する材料からなることが好ましいが、金属のコアを含んでもよい。穿刺要素70は、たとえば鋭い遠位端を有する金属要素である。
【0087】
段階(a)は、埋込みのために位置決めされている装置65と装置の近位面に適用されたソノトロード10とを示し、K−ワイヤ71は、ソノトロード10を通過して装置65のチャネルに至るようにすでに設置されていてもよい。装置は、皮膚62と硬組織層2(たとえば皮質骨層)とを通って押込まれ、プレス力と超音波振動エネルギとをソノトロード10に印加することによって、硬組織層2の壁と、場合によっては硬組織層の下に位置する組織(たとえば海綿骨組織1)とに封止状態で固着される(封止リング11)。
【0088】
段階(b)は、埋込まれた装置65と、取外されたソノトロード10と、ソノトロードの取外し後に初めて設置され得るK−ワイヤ71を利用してチャネルから押出される穿刺要素70とを示す。
【0089】
段階(c)は、取外されたK−ワイヤ71と、薬剤または薬剤/担体の組合せをチャネルに導入するために装置チャネルの近位口に導入されたカニューレ72とを示す。段階(d)は、取外されたカニューレ72と、さらなるソノトロード10′′′を装置の近位面に適用することによって閉鎖された装置チャネルとを示し、さらなるソノトロードは、液化した材料をチャネルの近位口に押込むのに好適な遠位面を有する。
【0090】
図19は、発明のさらなる例示的な用途を示す。この用途は、たとえば骨接合手術の身体領域におけるたとえば抗生材料の予防的なまたは治療上の送達、特に骨表面と骨接合プレートとの間のそのような送達に関する。そのようなプレートは、骨に設けられた開口部にねじ込まれる骨ねじによって、または(たとえばピンに与えられる超音波振動処理により生じる)再凝固に続く現場での液化および骨組織の浸透により骨に設けられた開口部に固着される熱可塑性材料を含むピンによって、たとえば骨折した骨に通常は固定され、ねじまたはピンは、同時にまたは後の処置において、場合によってはプレートに固着される。プレートは通常は一連の貫通開口部を含み、開口部の数は、外科医がねじまたはピンにとって最も有利な位置を選択できるように、通常はねじまたはピンの必要数よりも多い。
図19に示されるように、そのような余分の開口部のうち少なくとも1つが発明に係る装置を埋込むために使用され、薬剤の送達は、プレートとプレートの下の骨表面との間の間隙に向けられる。
【0091】
図19は、たとえば再吸収性ポリマー材料からなる骨接合プレート80(またはたとえば前頚部プレートなどの他のプレート)の断面を示し、プレートは、ねじ81または熱可塑性ピン82を利用してたとえば骨折した骨の表面に対して位置決めされ、ねじおよびピンの両方は、プレートと骨とを固定された局所的な関係に保つために、プレート80を通って少なくとも皮質骨2に、またはさらに海綿骨1に至る。ねじ81およびピン82の両方について、プレート80は貫通開口部83を含み、対応する開口部が骨に設けられ、ピン82は、好ましくは皮質および海綿骨組織に固着され、その頭部は、同じ振動エネルギの印加中にプレートの貫通開口部83に場合によっては溶接される。さらなる貫通開口部83および対応する骨の開口部において、発明に係る装置65、たとえば
図3に示された装置と同様の装置が埋込まれ、装置は、さらに上記したように少なくとも皮質骨に固着されるが場合によっては海綿骨組織にも固着され、そこでは熱可塑性材料がプラグ部分上に封止リング11を形成し、ともに骨の開口部を封止状態に閉鎖する。装置の頭部分84は、熱可塑性ピン82について上記したのと同じやり方でプレート80の貫通開口部83にさらに溶接されてもよい。
【0092】
装置65は、上記の固着11に近位方向に隣接する好適な透過性を有し、たとえば頭部分84に至る透過性の近位壁部分6を有する容器3を含む。そのような埋込まれた装置は、骨表面とプレート80の下側との間の空間への薬剤送達を可能にし、薬剤送達は、骨側の封止リング11と、他方側の薬剤送達装置65およびプレート80の間の溶接部とによってこの空間に制限される。
【0093】
所望であれば、プレートと骨表面つまり骨組織に面するプレート面との間の間隙だけでなく、反対側のプレート面も送達される薬剤によって治療されるように、
図19に係る装置の近位面を透過性壁としても設計することができる。
【0094】
図20は、発明のさらなる用途を示し、薬剤たとえば抗生材料(薬剤送達D)は、発明に係る薬剤送達装置65から送達され、装置は埋込まれた内部プロテーゼ90の近傍に埋込まれ、内部プロテーゼは、骨に部分的に埋込まれ、骨から部分的に突出して他の組織または内部プロテーゼのさらなる部分に隣接する。装置は、たとえば
図3、
図4、
図6と組合わせて記載したのと同じやり方で埋込まれる骨のアクセス可能な側での薬剤送達のために装備され、骨から突出するプロテーゼ部分の表面に沿って薬剤を送達する(たとえば予防的な抗生材料治療)。
【0095】
図21は発明のさらなる用途を示し、(
図16に関連して簡単に上記した)閉鎖要素が海綿状骨の小柱構造94内の導管93に沿って延在し、かつたとえば骨手術中に切断される血管92(小動脈または細静脈)を封止するために使用される。骨組織を切断すると、上記の種類の血管を通る切断に繋がり得る。これは容易に止められない出血を招き得る。なぜなら血管92の切断された端部は切断された骨表面95から骨組織に直ちに後退し、締付けられるかまたは焼灼されることによって閉鎖することができないからである。しかしながら、
図21の右手側に示されるように、そのような出血は、熱可塑性の、好ましくは再吸収性材料で構成されるか、または少なくともそのような材料のリングをその周囲に担持する閉鎖要素96を利用して容易に止めることができる。そのようなカバー要素は、導管93の開放端に可能な限り厳密に適合化され、たとえば振動する器具(たとえば図示しない超音波装置のソノトロード)を利用してこの導管の端部に導入されると同時に導管の切断端部付近で導管の壁に封止状態に固着され、そのようにして出血を止める寸法および形態を有するように選択される。
図21に例示されるように、近位面が骨組織の切断された表面95と面一となるように閉鎖要素が導管93に導入される場合、閉鎖要素96は、切断された骨表面95においてさらなる手術工程に対する障害とはならない。
【0096】
当業者は、過度の実験なしに、装置の特定の実施形態について記載された特徴と発明に係る方法とを異なるやり方で組み合わせ、そのようにして発明の範囲から逸脱することなくさらなる実施形態を作成することができる。
【0097】
実施例
図7に例示され、PLAからなる装置に、低分子量のモデル薬剤として数ミリグラムのメチレンブルーが一体化されたポリラクチド粒子を装填した。装填された装置は、メチレンブルーの骨内送達のために羊の膝関節付近の脛骨に
図2に示されるように埋込まれた。埋込み後5日および10日を経た羊の脛骨が光学的に分析され、埋込まれた装置の周囲の海綿骨においてメチレンブルーが見出されたが、骨膜または脛骨硬骨のアクセス可能な側の埋込み箇所に隣接するいずれかの組織ではまったく検出されなかった。
【0098】
実質的に
図3に例示され、かつメチレンブルーの関節内送達のために羊の膝関節のカプセル内の脛骨に
図4に例示されたように埋込まれた装置を用いて、同じ実験が行われた。犠牲にされた羊において、膝関節の関節軟骨は青であることが分かったが、インプラントを包囲する皮質または海綿骨にはメチレンブルーは見出されなかった。
【0099】
上記の実験結果は、インプラントがこの皮質骨を通って至る羊の脛骨の皮質骨に分子量が小さい薬剤が浸透することをインプラントが十分に防ぐこと、つまり、薬剤の送達が、皮質骨層のアクセス不可能な側またはアクセス可能な側のいずれかに十分に制限されることを示す。
【0100】
ポリラクチドからなる
図7に示される装置に、タンパク質の骨内送達のための骨形態形成蛋白質(BMP)を含有する骨代替材料の顆粒を装填した。骨代替材料の顆粒のみを含有する、つまり骨形態形成蛋白質のない装置が対照として埋込まれた。埋込みは羊の膝関節の下の軟骨下脛骨において行われ、埋込みのために設けられる開口部の深さは、装置の埋込み後に埋込まれた装置の下の海綿骨に空所があるように、装置の軸方向長さより大きかった。犠牲にされた羊において、4週間後にはすでに、装填された装置の下の中空空間を新たな骨成長が満たしていたが、対照の装置の下にはほぼ何も見出されなかった。埋込み箇所(皮質骨層のアクセス可能な側)付近の骨表面近傍には、新たな骨成長または骨膜の骨化は見出されなかった。この実験は、埋込み時に装置が受ける熱負荷が小さいために、極めて感熱性のタンパク質であるBMPがその効能を失わないことを示す。さらに、モデル薬剤のメチレンブルーと同じく、BMPは、送達される皮質骨の一方側から他方側に移動することが妨げられることを示す。