【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[試料の作製1]原料(化合物)として、炭酸リチウム(Li
2CO
3)粉末370gと、水酸化コバルト(Co(OH)
2)粉末930gと、を用いた。それらと、水2.5kgを、合成樹脂製の円筒型広口瓶に入れ、更にボールミル(直径φ=5mmのジルコニアボール)を2kg入れて、16時間、混合し、混合スラリーを得た。その後、その混合スラリーを、スプレードライヤーで乾燥造粒し、混合粉末(混合物、粒子径約50μm)を得た。これを試料Aとする。又、原料として、Li
2CO
3粉末370gと、炭酸コバルト(CoCO
3)粉末1190gと、を用いた。そして、同じ条件で得た混合粉末を、試料Bとする。更に、原料として、Li
2CO
3粉末370gと、酸化コバルト(Co
3O
4)粉末800gと、を用いた。そして、同じ条件で得た混合粉末を、試料Cとする。更に、試料Aに、予め、乾燥器内部で300℃として水分を除去する加熱処理を施したものを、試料A’とする。これら混合粉末(混合物)である試料A,B,C,A’(更には後述する試料D,E)が、被熱処理体であり、加熱による反応後において、所望の粒子状のリチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質となるものである。
【0053】
(実施例1)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器2を1つ用い、そこに被熱処理体1として試料Aを収めた。そして、
図5に炉体51のみが示される加熱炉50を使用して、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料Aを加熱した。収められる試料Aの質量は、350gである。そして、試料Aに予め差し込んでおいた熱電対によって、試料Aの温度が800℃に達した時点(10分経過)を確認し、その時点で加熱(ミリ波の発生)を停止した。冷却後、試料A(混合粉末)を取り出して目視で観察したところ、
図7に示されるように、全体が良好に反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラがないことが確認出来た(焼きムラについては、後述する比較例1(
図8A)、比較例2(
図8B)、比較例3(
図8C)を参照)。
【0054】
尚、加熱炉50は、炉体51が円筒体の横型塔である点が異なる他は、既述の加熱炉20と同じ構成を採るバッチ炉である。加熱炉50の長さL1(導波管4の開口4aの向きに平行な方向の寸法)は1140mm、直径(高さ)D1は650mmである。
【0055】
(実施例2〜4)試料を、試料B(実施例2)、試料C(実施例3)、試料A’(実施例4)とした。それ以外は、実施例1と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、何れも10〜15分の間であった。試料は、何れも、全体が反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラはなかった。
【0056】
(比較例1)
図6に炉体61のみが示される加熱炉60を使用し、2.45GHzのマイクロ波によって加熱した。それ以外は、実施例1と同様にして(出力は2kW一定である)、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱(マイクロ波の発生)を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、6分であった。試料は、
図8Aに示されるように、良好な反応部分Xの他に、未反応部分Y、焼結部分Zが確認され、焼きムラが生じていた。
【0057】
尚、加熱炉60は、炉体61が直方体のボックスであり、その炉体61内に、ファン62を備える。そして、図示しない発振器が(マイクロ波発生用の)マグネトロンであり、そのマグネトロンで発生したマイクロ波が導波管64から内部に導入されるバッチ炉である。加熱炉60の長さL1(導波管64の開口64aの向きに平行な方向の寸法)は400mm、高さH1は400mmである。
【0058】
(比較例2)試料を、試料Bとした。それ以外は、比較例1と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、2分であった。試料は、
図8Bに示されるように、良好な反応部分Xは少なく、未反応部分Yが大部分であり、焼きムラが生じていた。
【0059】
(比較例3)試料を、試料Cとした。それ以外は、比較例1と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、2分であった。試料は、
図8Cに示されるように、良好な反応部分Xは少なく、未反応部分Yが大部分であり、焼きムラが生じていた。
【0060】
(比較例4)試料を、試料A’とした。それ以外は、比較例1と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、6分であった。試料は、一見、良好であったが、内部には未反応部分が見られ、焼きムラが生じていた。
【0061】
(比較例5)出力を0.5kWで一定とした。それ以外は、比較例1と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、40分であった。試料は、良好な反応部分が多かったが、未反応部分、焼結部分も確認され、焼きムラは生じていた。
【0062】
(実施例5)解析ソフトウエアのMAGNA−TDM(Ver7.0、伊藤忠テクノソリューションズ製)を使用して、
図9に示されるような解析モデル(中央断面2次元モデル)を構築し、炉体51内の電界強度分布と発熱分布を解析した。解析にあたっては、
図5に示される加熱炉50と、試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器2、及びそこに収められる被熱処理体1(試料)を想定した。
図9に示される炉体51内の矢印で示される寸法(数字)の単位はmmである。これは、後述の
図20、
図22、
図24においても、同様である。
図10A、
図10Bに示されるように、直ぐに電界強度は一様になり、定常状態(1秒経過後)では、混合粉末(被熱処理体1)及び容器2の周りの電界強度のムラが小さく(導波管4の開口4aからのミリ波の経路については
図5を参照)、
図19に示されるように、混合粉末全体が一様に発熱しているものと推定された。尚、
図19において、(白黒で)白く見える部分は、ミリ波が到達したことによる発熱(量)を示している。後述の
図21、
図23、
図25においても、同様である。
【0063】
(実施例6)
図20に示されるような解析モデル(中央断面2次元モデル)を構築して、炉体51内の電界強度分布と発熱分布を解析した。解析にあたっては、
図5に示される加熱炉50と、試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが40mmとなるような容器、及びそこに収められる被熱処理体(試料)を想定した。
図21に示されるように、定常状態(1秒経過後)では、混合粉末(被熱処理体)全体が一様に発熱しているものと推定された。尚、使用した解析ソフト、及び、解析の条件は、実施例5と同じである。この
図21の解析結果では、中央部分でミリ波が到達したことによる発熱量が、若干少なく見えているが、実験では、周囲からの熱伝導等で、ほぼ均一に粉末が昇温している結果となっている。
【0064】
(実施例7)
図22に示されるような解析モデル(中央断面2次元モデル)を構築して、炉体51内の電界強度分布と発熱分布を解析した。解析にあたっては、
図5に示される加熱炉50と、試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で10mm×4段(トータルの厚さ40mm)となるような容器、及びそこに収められる被熱処理体(試料)を想定した。
図23に示されるように定常状態(1秒経過後)では、混合粉末(被熱処理体)全体が一様に発熱しているものと推定された。尚、使用した解析ソフト、及び、解析の条件は、実施例5と同じである。尚、この
図23の解析結果では、2段目と3段目で、ミリ波が到達したことによる発熱量が、若干少なく見えているが、実験では、上下からの輻射、対流や周囲からの熱伝導で、ほぼ均一に粉末が昇温している結果となっている。
【0065】
(実施例8)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器を1つ用い、そこに被熱処理体として試料A’を収めた。そして、市販の加熱炉を使用して、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料A’を加熱した。容器は蓋付であり、その蓋も含めた容器自体の厚さは何れの部分も20mmであり、その容器に収められる試料A’の質量は350gである。そして、
図11におけるM1の位置に(試料A’に)予め差し込んでおいた熱電対によって、試料A’の温度が800℃に達した時点(10分経過)を確認し、その時点で加熱(ミリ波の発生)を停止した。試料A’の温度上昇の様子は、
図13に示す通りである。そして、冷却後、試料A’を取り出して目視で観察したところ、全体が良好に反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラがないことが確認出来た。更に、X線解析により、混合粉末(試料A’)の加熱処理後における成分分析を行ったところ、
図14に示されるピークは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)のみを示しており、LiCoO
2のみが生成され、未反応部分がないことが裏付けられた。
【0066】
尚、使用した加熱炉(富士電波工業製、FMW−10−28、FVPS−M−650/1100、定格出力10kW)は、バッチ炉である。加熱炉における発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は2.9kWhr/kgであった。又、製造された混合粉末の比表面積は0.35m
2/g、試作したコインセルの初期放電容量は、110〜120mAh/g程度であった。
【0067】
[コインセルによる評価]作製されたリチウム遷移金属複合酸化物を86質量%、導電剤としてグラファイトを10質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを4質量%の比で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを得た。そして、このスラリーを、厚さ20μmの帯状アルミニウム箔に、均一に塗布し、乾燥させた後、ローラープレス機を用いて圧縮し、更に所定の寸法に打ち抜いて、ペレットを得た。そして、このペレットを正極、リチウム箔を負極として、両者を公知の多孔性ポリオレフィンフィルムを介して積層し、直径20mm、高さ1.6mmのコインセルを作製した。ここで、電解液としては、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとの体積混合率比が1:1である混合溶液に、1モル/dm
3の濃度になるように、LiPF
6を溶解して調整した、非水電解液を用いた。そして、このように作製されたコインセルを、4.250Vまで充電し、0.2Cの電流値で、3.000Vまで放電し、初期放電容量を測定した。
【0068】
(実施例9,10)試料を、試料B(実施例9)、試料C(実施例10)とした。それ以外は、実施例8と同様にして、試料を加熱し、試料の温度が800℃に達した時点で、加熱を停止し、冷却後に、試料を取り出して目視で観察した。更には、X線解析により、混合粉末(試料B,C)の加熱処理後における成分分析を行った。試料B,Cの温度上昇の様子は、
図13に示す通りである。試料の温度が800℃に達するまでの時間は、何れも12分であった。試料は、何れも、全体が反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラはなかった。又、そのことは、図示しないX線解析によるプロファイルでも確認することが出来た。
【0069】
尚、実施例9,10においては、何れも、加熱炉の発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は3.4kWhr/kgであった。又、製造された混合粉末の比表面積は0.35m
2/g、実施例8に準じて、試作したコインセルの初期放電容量は、110〜120mAh/g程度であった。
【0070】
(実施例11)試料の大きさが□250mm(長さ250mm×幅250mm)で高さが20mmとなるような容器を複数用い、各容器に被熱処理体1として試料A’を収めた。そして、
図3A,3Bに示される加熱炉30と同型の加熱炉(連続処理炉)を使用して、28GHzのミリ波によって、各発振器の出力を4kWで一定として、試料A’を連続して加熱処理した。各容器に収められる試料A’の質量は1kgである。そして、退出待機室から出てきた試料A’を取り出して目視で観察したところ、全体が良好に反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラがないことが確認出来た。
【0071】
尚、実施例8の結果より、1kgの試料A’(混合粉末)が800℃まで温度上昇するのに必要な電力量は、1kWhrであることが求まる。従って、それを根拠として、使用した連続処理炉では、炉体は16個の容器を通過(通窯)可能なものであって、炉体の長さL2を5000mmとし(
図3Aを参照)、発振器として28GHzのミリ波を発生可能な定格10kWのジャイロトロンを8台備えた。そして、各発振器毎に4分の処理とし、合計で32分(4分×8台)通過(通窯)させた。試料1kgあたりの加熱処理時間は2分であり、24時間操業で720kgを加熱処理することが可能である。
【0072】
又、実施例11においては、何れも、加熱炉の発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は3.0kWhr/kgであった。又、製造された混合粉末の比表面積は0.35m
2/g、実施例8に準じて、試作したコインセルの初期放電容量は、110〜120mAh/g程度であった。
【0073】
(比較例6)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器を用い、そこに被熱処理体として試料Cを収めた。そして、市販の加熱炉を使用して、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料Cを加熱した。容器は蓋付であり、その蓋も含めた容器自体の厚さは何れの部分も20mmであり、その容器に収められる試料Cの質量は370gである。そして、
図11におけるM1及びM2の位置に(試料Cに)予め差し込んでおいた熱電対によって、試料CのM1における温度が600℃に達した時点を確認し、その時点で加熱を停止した。このときの試料CのM2における温度は750℃である。M1における試料Cの温度上昇の様子は、
図15Aに示す通りであり、M2における試料Cの温度上昇の様子は、
図15Bに示す通りである。そして、冷却後、試料Cを取り出して目視で観察したとこ、中心部分(M1における表面側)に少し未反応部分が見られ、焼きムラが生じていた。更に、X線解析により、混合粉末(試料C)の加熱処理後のM1及びM2における成分分析を行った。M1におけるX線プロファイルは、
図16Aに示される通りであり、M2におけるX線プロファイルは、
図16Bに示される通りである。
図16Bに示されるピークは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)のみを示しており、LiCoO
2のみが生成されていることがわかる(併せて
図14を参照)。一方、
図16Aに示されるピークは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)を示すが(併せて
図14を参照)、その他に、炭酸リチウム(Li
2CO
3)と、酸化コバルト(Co
3O
4)を示しており、未反応部分があることを裏付けている(
図14と比較)。
【0074】
尚、使用した加熱炉、及び、X線解析の条件は、実施例6と同じである。加熱炉における発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は2.4kWhr/kgであった。
【0075】
(比較例7)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器を3つ用い、各容器に被熱処理体として試料A’を収め、3段に積み重ねた。それを市販の加熱炉に収容し、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料A’を加熱した。各容器は蓋付であり、その蓋も含めた各容器自体の厚さは何れの部分も20mmである。その各容器に収められる試料A’の質量は350gであり、合計の質量は1050gである。そして、
図12AにおけるM3〜M8の位置に(試料A’に)予め差し込んでおいた熱電対によって、試料A’のM8における温度が800℃に達した時点を確認し、その時点で加熱を停止した。このときの試料A’のM3における温度は1050℃であり、試料A’のM5における温度は890℃であり、試料A’のM6における温度は670℃であり、試料A’のM7における温度は970℃である。M3における試料A’の温度上昇の様子は、
図17Aに示す通りであり、M5における試料A’の温度上昇の様子は、
図17Bに示す通りであり、M6における試料A’の温度上昇の様子は、
図17Cに示す通りであり、M7における試料A’の温度上昇の様子は、
図17Dに示す通りであり、M8における試料A’の温度上昇の様子は、
図17Eに示す通りである。そして、冷却後、X線解析により、混合粉末(試料A’)の加熱処理後のM4,M5,M6,M8における成分分析を行った。M4におけるX線プロファイルは、
図18Aに示される通りであり、M5におけるX線プロファイルは、
図18Bに示される通りであり、M6におけるX線プロファイルは、
図18Cに示される通りであり、M8におけるX線プロファイルは、
図18Dに示される通りである。
図18A、
図18B、
図18Dに示されるピークは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)のみを示しており、LiCoO
2のみが生成されていることがわかる(併せて
図14、
図16Bを参照)。一方、
図18Cに示されるピークは、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)を示すが(併せて
図14、
図16Bを参照)、その他に、炭酸リチウム(Li
2Co
3)と、酸化コバルト(Co
3O
4)を示しており(
図18A、
図18B、
図18Dと比較)、
図12Bに示されるように、3段重ねの中段の中央には、未反応部分Yがあることがわかる。
【0076】
尚、使用した加熱炉、及び、X線解析の条件は、実施例6と同じである。加熱炉における発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は3.1kWhr/kgであった。
【0077】
(比較例8)
図24に示されるような解析モデル(中央断面2次元モデル)を構築して、炉体51内の電界強度分布と発熱分布を解析した。解析にあたっては、
図5に示される加熱炉50と、試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で20mm×3段(トータルの厚さ60mm)となるような容器、及びそこに収められる被熱処理体(試料)を想定した。
図25に示されるように、定常状態(1秒経過後)では、3段重ねの中段の中央の混合粉末(被熱処理体)にはミリ波が到達せず、発熱しないと推定された。尚、使用した解析ソフト、及び、解析の条件は、実施例5と同じである。尚、この
図25の解析結果では、2段目中央にはミリ波が全く到達せず、全く発熱していない様子が認められ、実験でも100℃以上温度差が生ずる結果となっており、これらと一致している。
【0078】
[試料の作製2]原料(化合物)として、炭酸リチウム(Li
2CO
3)粉末370gと、炭酸マンガン(MnCO
3)粉末2300gと、を用いた。それらと、水2.5kgを、合成樹脂製の円筒型広口瓶に入れ、ボールミル(直径φ=5mmのジルコニアボール)を2kg入れて、16時間、混合し、混合スラリーを得た。その後、この混合スラリーをスプレードライヤーで乾燥造粒した混合粉末(混合物、粒子径約50μm)を得た。これを試料Dとする。
【0079】
(実施例12)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器を1つ用い、そこに被熱処理体として試料Dを収め、市販の加熱炉を使用して、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料Dを加熱した。容器は蓋付であり、その蓋も含めた容器自体の厚さは何れの部分も20mmであり、その容器に収められる試料Dの質量は400gである。そして、
図11におけるM1の位置に(試料Dに)予め差し込んでおいた熱電対によって、試料Dの温度が700℃に達した時点(8分経過)を確認し、その時点で加熱(ミリ波の発生)を停止した。そして、冷却後、試料Dを取り出して目視で観察したところ、全体が良好に反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラがないことが確認出来た。更に、X線解析により、混合粉末の加熱処理後における成分分析を行ったところ、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)のみを示しており、LiMn
2O
4のみが生成され、未反応部分がないことが裏付けられた。
【0080】
加熱炉における発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は2.7kWhr/kgであった。又、製造された混合粉末(試料D)の比表面積は0.53m
2/g、実施例8に準じて、試作したコインセルの初期放電容量は、80〜90mAh/g程度であった。
【0081】
[試料の作製3]原料(化合物)として、炭酸リチウム(Li
2CO
3)粉末370g、酸化鉄(Fe
2O
3)粉末800g、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)粉末1140gの混合粉末にカーボンブラック粉末60g(IPA120gで分散)を加えたものを用いた。それらと、水6kgを、合成樹脂製の円筒型広口瓶に入れ、ボールミル(直径φ=5mmのジルコニアボール)を5kg入れて、16時間、混合し、混合スラリーを得た。その後、この混合スラリーをスプレードライヤーで乾燥造粒した混合粉末(混合物、粒子径約50μm)を得た。これを試料Eとする。
【0082】
(実施例13)試料の大きさが□150mm(長さ150mm×幅150mm)で高さが20mmとなるような容器を1つ用い、そこに被熱処理体として試料Eを収めた。そして、市販の加熱炉を使用して、28GHzのミリ波によって、出力を2kWで一定として、試料Eを加熱した。尚、窒素雰囲気で熱処理するためミリ波加熱前に全体を窒素で置換した。容器は蓋付であり、その蓋も含めた容器自体の厚さは何れの部分も20mmであり、その容器に収められる試料Eの質量は370gである。そして、
図11におけるM1の位置に(試料Eに)予め差し込んでおいた熱電対によって、試料Eの温度が500℃に達した時点(6分経過)を確認し、その時点で加熱(ミリ波の発生)を停止した。そして、冷却後、試料Eを取り出して目視で観察したところ、全体が良好に反応していて、内部にも未反応部分は見られず、焼きムラがないことが確認出来た。更に、X線解析により、混合粉末の加熱処理後における成分分析を行ったところ、燐酸鉄リチウム(LiFePO
4)のみを示しており、LiFePO
4のみが生成され、未反応部分がないことが裏付けられた。
【0083】
加熱炉における発振器の発振効率は33.3%であり、試料1kgあたりの消費電力は1.9kWhr/kgであった。又、製造された混合粉末(試料E)の比表面積は0.68m
2/g、実施例8に準じて、試作したコインセルの初期放電容量は、130〜145mAh/g程度であった。