(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本の主溝と、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本の副溝と、前記主溝及び副溝からタイヤ軸方向へのびる複数の横溝とを含み、かつ、タイヤ周方向に隣り合う横溝の間の陸部分と、前記横溝の1つとからなる単位模様であるピッチを有する重荷重用空気入りタイヤであって、
前記副溝は、前記主溝より小さな深さの浅底部を有し、
前記副溝の浅底部には、前記副溝に沿ってのびる溝底サイプが形成され、
前記横溝は、前記主溝より小さな深さの浅底部を有し、
前記横溝の浅底部には、前記横溝に沿ってのびる溝底サイプが形成され、
前記横溝のタイヤ周方向の溝幅W2は、前記ピッチのタイヤ周方向長さL1の5〜15%であり、
前記主溝は、タイヤ赤道の両側をのびる一対のクラウン主溝と、トレッド端側をのびる一対のショルダー主溝とを含み、
前記副溝は、前記クラウン主溝とショルダー主溝との間をのびるミドル副溝を含み、
前記横溝は、前記ミドル副溝からクラウン主溝に向かってのびる内側ミドル横溝と、前記ショルダー主溝と前記ミドル副溝との間を継ぐ外側ミドル横溝とを含み、
前記クラウン主溝と前記ミドル副溝との間には、内側ミドルリブが区分され、
前記ショルダー主溝と前記ミドル副溝との間には、前記外側ミドル横溝で区分された外側ミドルブロックがタイヤ周方向に並ぶ外側ミドルブロック列が形成されることを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載される場合がある)1のトレッド部2の展開図が示される。タイヤ1は、例えば、トラックやバス等の重荷重車両に装着されるのが望ましい。
【0018】
図2には、
図1のA1−A1断面図が示される。
図2に示されるように、トレッド部2は、路面と接する接地面2S側にトレッドゴム2Gを含んで形成されている。該トレッドゴム2Gは、例えば、損失正接(tanδ)が、0.08以下であるのが望ましい。このようなトレッド部2を有するタイヤ1では、トレッド部2の変形に伴うエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上させることができる。なお、損失正接が0.08より大きい場合、燃費性能を悪化させるおそれがある。このような観点より、トレッドゴム2Gの損失正接は、好ましくは、0.078以下である。なお、トレッドゴム2Gの損失正接は、タイヤ1のトラクション性能の観点より、0.04以上であるのが望ましい。
【0019】
ここで、トレッドゴム2Gの損失正接は、加硫後のゴムの損失正接であって、JIS−K6394の規定に準じ、次に示される条件で(株)岩本製作所製の「粘弾性スペクトロメータ」を用いて測定した値である。
初期歪み:10%
振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0020】
さらに、トレッドゴム2Gは、100質量部に対して、例えば、40〜60質量部のカーボンを含むのが望ましい。このようなトレッド部2を有するタイヤ1では、トレッド部2の変形に伴うエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上させることができる。なお、カーボンが60質量部より多い場合、トレッド部2の変形に伴うエネルギー損失が大きくなり、燃費性能が低下するだけでなく、トレッドゴム2Gが硬化し、耐チッピング性能も低下するおそれがある。逆に、カーボンが40質量部未満の場合、トレッドゴム2Gの補強性が低下し、摩耗性能が低下するおそれがある。このような観点より、トレッドゴム2Gは、好ましくは、100質量部に対して、45〜55質量部のカーボンを含む。
【0021】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本、本実施形態では、4本の主溝3が形成されている。主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cの両側をのびる一対のクラウン主溝3A、3Aと、最もトレッド端Te側をのびる一対のショルダー主溝3B、3Bとを含んでいる。
【0022】
前記「トレッド端」とは、正規リムにリム組されかつ正規内圧が充填された正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°にて平面に接地させたときのトレッド接地面のタイヤ軸方向最外端とする。
【0023】
また、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0024】
また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えば、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0025】
また、前記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えば、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" とする。
【0026】
なお、タイヤ1の各部の寸法は、特に断りがない限り、無負荷の正規状態にて測定された値である。溝幅については、トレッド部2において溝縁間の中心線と直角に測定された値である。また、溝深さについては、トレッド部2において溝縁間の中心線から溝底までの距離が測定された値である。
【0027】
また、トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本、本実施形態では、2本の副溝4が形成されている。副溝4は、例えば、クラウン主溝3Aとショルダー主溝3Bとの間をのびる一対のミドル副溝である。
【0028】
さらに、トレッド部2には、主溝3及び副溝4からタイヤ軸方向へのびる複数の横溝9が形成されている。横溝9は、一対のクラウン主溝3A、3Aの間を継ぐクラウン横溝9A、ミドル副溝4からクラウン主溝3Aに向かってのびる内側ミドル横溝9B、ショルダー主溝3Bとミドル副溝4との間を継ぐ外側ミドル横溝9C、及び、ショルダー主溝3Bとトレッド端Teとの間を継ぐショルダー横溝9Dを含んでいる。
【0029】
また、トレッド部2には、主溝3と横溝9とによって区分された複数個のブロック11が、タイヤ周方向に並ぶ少なくとも一つのブロック列が設けられている。本実施形態のブロック列には、一対のクラウン主溝3A、3Aとクラウン横溝9Aとにより区分されたクラウンブロック11Aがタイヤ周方向に並ぶクラウンブロック列7A、並びに、ミドル副溝4、ショルダー主溝3C及び外側ミドル横溝9Cで区分された外側ミドルブロック1111Cがタイヤ周方向に並ぶ一対の外側ミドルブロック列7C、7Cが含まれる。さらに、本実施形態のブロック列には、ショルダー主溝3B、トレッド端Te及びショルダー横溝9Dで区分されたショルダーブロック11Dがタイヤ周方向に並ぶ一対のショルダーブロック列7Dが含まれる。
【0030】
また、トレッド部2には、クラウン主溝3Aとミドル副溝4との間に、タイヤ周方向に連続する一対の内側ミドルリブ7Bが区分されている。内側ミドルリブ7Bは、隣り合う内側ミドル横溝9B間に内側ミドル陸部分12を含んでいる。
【0031】
これらのクラウンブロック11A、外側ミドルブロック11C、ショルダーブロック11D及び内側ミドル陸部分12は、タイヤ周方向に隣り合う横溝9の間に形成された陸部分10として構成される。
【0032】
そして、このようなトレッド部2では、ランド比が、70〜80%であるのが望ましい。これにより、タイヤ1は、トレッド部2の溝容積を確保しつつ、パターン剛性を高めることができる。従って、タイヤ1は、ウエット性能を確保しつつ、燃費性能を向上することができる。なお、ランド比が70%未満の場合、トレッド部2のパターン剛性が低下するおそれがある。このため、トレッド部2の変形に伴うエネルギー損失が大きくなり、燃費性能を充分に向上できないおそれがある。逆に、ランド比が80%より大きい場合、トレッド部2の溝が少なく、エッジ性能が充分に発揮されず、ウエット性能が低下するおそれがある。
【0033】
ここで、前記「ランド比」とは、トレッド部2に設けられた全ての溝を埋めたと仮定した状態でのトレッド面の全表面積Saと、実際に路面と接地する接地面の全面積Scとの比(Sc/Sa)である。
【0034】
また、本実施形態のトレッド部2は、陸部分10と横溝9の1つとからなる単位模様であるピッチPを有している。そして、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ周方向に40〜50個のピッチPを含んでいるのが望ましい。このようなトレッド部2は、タイヤ軸方向のエッジ成分を発揮しつつ、周方向剛性が高められる。これによりトレッド部2は、ウエット性能を確保しつつ、燃費性能を向上させることができる。なお、トレッド部2において、ピッチPが50個を超えると、ピッチPの周方向長さが小さくなる。このため、トレッド部2は、陸部分10の周方向剛性が低下し、燃費性能を充分に向上できないおそれがある。逆に、ピッチPが40個未満の場合、ピッチPの周方向長さが大きくなる。このため、トレッド部2は、タイヤ軸方向のエッジ成分が少なくなり、ウエット性能を充分に向上できないおそれがある。このような観点より、トレッド部2は、好ましくは、42〜48個のピッチPを含んでいる。
【0035】
さらに、本発明は、横溝9のタイヤ周方向の溝幅W2が、ピッチPのタイヤ周方向の長さL1の5〜15%に限定される。これにより、トレッド部2は、横溝9の溝容積を確保しつつ、トレッド部2の周方向剛性を向上させることができる。従って、トレッド部2は、ウエット性能を確保しつつ、燃費性能を向上させることができる。なお、横溝9の溝幅W2がピッチPの長さL1の15%を超えると、陸部分10の周方向剛性を充分に高めることができず、燃費性能が低下するおそれがある。逆に、横溝9の溝幅W2がピッチPの長さL1の5%未満の場合、トレッド部2の溝容積を充分に確保できず、ウエット性能が低下するおそれがある。このような観点より、横溝9の溝幅W2は、好ましくは、ピッチPの長さL1の8〜12%である。
【0036】
図3には、
図1のタイヤ赤道C付近の拡大図が示される。
図3に示されるように、クラウン主溝3Aは、タイヤ赤道C側に凸状の内側頂点3Aiと、トレッド端Te側に凸状の外側頂点3Aoとを含み、振幅の小さなジグザグ状に形成されている。一対のクラウン主溝3A、3Aは、ジグザグ状の位相が、タイヤ周方向にずらして配置される。このようなクラウン主溝3Aは、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ周方向に案内しつつ、タイヤ周方向に対してエッジ効果を発揮でき、ウエット性能及びトラクション性能を向上しうる。
【0037】
図2又は
図3に示されるように、クラウン主溝3Aの溝幅Waは、上記のような作用を効果的に発揮させるために、例えば、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TW(
図1に示す)の2〜4%程度が望ましい。また、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1は、例えば、トレッド幅TWの5〜8%程度が望ましい。
【0038】
クラウン主溝3Aは、その溝底から突出する突起
40を含んでいる。該突起
40は、クラウン主溝3Aの溝中心線3CLに沿って隔設される。この突起
40は、トレッド平面視おいて、略縦長矩形状に形成されている。このような突起
40は、クラウン主溝3Aにおける石噛みを防ぐのに役立つ。
【0039】
図4には、
図1のトレッド端Te付近の拡大図が示される。
図4に示されるように、ショルダー主溝3Bは、タイヤ赤道C側に凸状の内側頂点3Biと、トレッド端Te側に凸状の外側頂点3Boとを含み、振幅の小さなジグザグ状に形成されている。このようなショルダー主溝3Bは、クラウン主溝3Aと同様に、ウエット性能及びトラクション性能を向上しうる。
【0040】
ショルダー主溝3Bの溝幅Wcは、上記のような作用を効果的に発揮させるために、トレッド幅TWの4〜6%程度が望ましい。また、最大溝深さD4(
図2に示す)は、クラウン主溝3Aの最大深さD1と同程度であるのが望ましい。このようなショルダー主溝3Bには、例えば、クラウン主溝3Aと同様に、石噛み防止用の突起が設けられてもよい。
【0041】
図5には、
図1のミドル副溝4付近の拡大図が示される。
図5に示されるように、ミドル副溝4は、タイヤ赤道C側に凸状の内側頂点4Aiと、トレッド端Te側に凸状の外側頂点4Aoとを含み、ジグザグ状に形成されている。本実施形態のミドル副溝4のジグザグ状の振幅W9は、クラウン主溝3Aのジグザグ状の振幅よりも大きい。また、ミドル副溝4は、内側頂点4Aiから外側頂点4Aoへのびる短尺傾斜部4Aと、外側頂点4Aoから内側頂点4Aiへのび、かつ短尺傾斜部4Aよりもタイヤ周方向の長さが大きい長尺傾斜部4Bとを含んでいる。
【0042】
このようなミドル副溝4は、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してエッジ効果を発揮でき、ウエット性能及びトラクション性能を向上するのに役立つ。このような作用を効果的に発揮させるために、ミドル副溝4の溝幅Wbは、例えば、トレッド幅TWの1〜3%程度が望ましい。
【0043】
図6には、
図5のA2−A2断面図が示される。
図5又は
図6に示されるように、ミドル副溝4は、クラウン主溝3Aより小さな深さの浅底部13を有している。このような浅底部13は、内側ミドルリブ7Bと外側ミドルブロック列7Cとの間を連結し、トレッド部2のパターン剛性を大きくし、内側ミドルリブ7B及び外側ミドルブロック列7Cの変形を効果的に抑制することができる。従って、内側ミドルリブ7B及び外側ミドルブロック列7Cでのエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上させることができる。
【0044】
浅底部13の溝深さD2aは、例えば、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55〜75%であるのが望ましい。該浅底部13の溝深さがクラウン主溝3Aの最大溝深さD1の75%より大きい場合、内側ミドルリブ7B及び外側ミドルブロック列7Cの変形を抑制することができず、燃費性能を充分に向上できないおそれがある。逆に、浅底部13の溝深さがクラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55%未満の場合、ミドル副溝4の溝容積が低下し、ウエット性能を維持できないおそれがある。このような観点より、浅底部1
3の溝深さD2
aは、より好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の60〜70%である。
【0045】
本実施形態の浅底部13は、例えば、短尺傾斜部4Aと長尺傾斜部4Bとに設けられる第1浅底部13A、及び、第1浅底部13Aの深さD2aよりも深さが大きい第2浅底部13Bとを含んでいる。第1浅底部13Aの深さD2aは、第2浅底部13Bの深さよりも小さいため、短尺傾斜部4A及び長尺傾斜部4Bにおいて、内側ミドルリブ7Bと外側ミドルブロック列7Cとの間をより強固に連結でき、燃費性能を向上しうる。一方、第2浅底部13Bの深さは、第1浅底部13Aの深さD2aよりも大きいため、溝容積を確保でき、ウエット性能の低下を抑制しうる。
【0046】
第1浅底部13A及び第2浅底部13Bには、ミドル副溝4の中心線に沿ってのびる溝底サイプ14が形成されている。溝底サイプ14は、ミドル副溝4の溝幅Wbを、接地圧により大きくできる。従って、ミドル副溝4による排水性能を向上させ、ウエット性能を向上させることができる。さらに、溝底サイプ14は、各浅底部13A、13Bが接地する摩耗末期において、エッジ成分を発揮でき、ウエット性能を確保することができる。
【0047】
溝底サイプ14のサイプ深さD3aは、上記作用を効果的に発揮させるため、例えば、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85〜100%であるのが望ましい。溝底サイプ14のサイプ深さD3aが、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の100%より大きい場合、内側ミドルリブ7B及び外側ミドルブロック列7Cの変形が大きくなり、燃費性能を充分に向上できないおそれがある。逆に、溝底サイプ14のサイプ深さD3aが、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85%未満の場合、摩耗末期にウエット性能を確保できないおそれがある。このような観点より、溝底サイプ14のサイプ深さD3aは、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の90〜95%である。
【0048】
図3に示されるように、クラウン横溝9Aは、一対のクラウン主溝3A、3Aの内側頂点3Ai、3Ai間を、タイヤ周方向に対して55〜75度の角度αaで傾斜してのびる。このようなクラウン横溝9Aは、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してエッジ効果を発揮でき、トラクション性能、ウエット性能、及び、操縦安定性能を向上しうる。また、クラウン横溝9Aは、その傾斜に沿って、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、ウエット性能を向上しうる。
【0049】
図2又は
図3に示されるように、クラウン横溝9Aは、クラウン主溝3Aより小さな深さの浅底部16を有している。該浅底部16は、タイヤ周方向に隣り合うクラウンブロック11A、11A間を連結し、クラウンブロック11Aの変形を小さくすることができる。従って、浅底部16は、クラウンブロック列7Aのエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上することができる。浅底部16は、ミドル副溝4の浅底部13と同様に、クラウンブロック列7Aの周方向剛性及びクラウン横溝9Aの溝容積を確保するとの観点より、例えば、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55〜75%の溝深さD2bを有するのが望ましい。浅底部16の溝深さD2bは、より好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の60〜70%である。
【0050】
クラウン横溝9Aの浅底部16には、ミドル副溝4の浅底部13と同様に、クラウン横溝9Aの中心線に沿ってのびるクラウン溝底サイプ17が形成されている。クラウン溝底サイプ17は、クラウン横溝9Aの溝幅W2を、接地圧によって大きくでき、ウエット性能を向上しうる。さらに、クラウン溝底サイプ17は、浅底部16が接地するトレッド部2の摩耗末期において、エッジ成分を発揮でき、ウエット性能を確保することができる。
【0051】
クラウン溝底サイプ17のサイプ深さD3bは、上記のような作用を効果的に発揮させるために、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85〜100%であるのが望ましい。クラウン溝底サイプ17のサイプ深さD3bが、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85%未満の場合、トレッド部2の摩耗末期にウエット性能を確保できないおそれがある。逆に、クラウン溝底サイプ17のサイプ深さD3bが、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の100%より大きい場合、クラウンブロック列7Aの変形が大きくなり、燃費性能を充分に向上できないおそれがある。このような観点より、クラウン溝底サイプ17のサイプ深さD3bは、より好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の90〜95%である。
【0052】
図5に示されるように、内側ミドル横溝9Bは、ミドル副溝4の内側頂点4Aiからクラウン主溝3Aの外側頂点3Aoに向かって、タイヤ周方向に対して55〜75度の角度αbで傾斜してのびる。このため、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、ウエット性能を維持しうる。
【0053】
内側ミドル横溝9Bは、クラウン主溝3Aに連通しない。このため、接地時において、クラウン主溝3A内で圧縮された空気が、内側ミドル横溝9Bに流れ込むのを抑制でき、ノイズ性能を向上しうる。このような作用をより効果的に発揮させるため、内側ミドル横溝9Bの内端とクラウン主溝3Aとの間の最短距離Lbは、トレッド幅TWの1.3〜2.5%であるのが望ましい。
【0054】
図2又は
図5に示されるように、内側ミドル横溝9Bは、クラウン主溝3Aより小さな深さの浅底部19を有している。該浅底部19は、内側ミドルリブ7Bの周方向剛性をより高めることができ、燃費性能を向上することができる。浅底部19は、ミドル副溝4の浅底部13と同様の観点より、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55〜75%の深さD2cを有するのが望ましい。なお、浅底部19の深さD2cは、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の60〜70%である。
【0055】
浅底部19には、内側ミドル横溝9Bの中心線に沿ってのびる内側溝底サイプ20が形成されている。このような内側溝底サイプ20は、溝底サイプ14と同様に、内側ミドル横溝9Bの溝幅W2を、接地圧によって大きくでき、ウエット性能を向上することができる。さらに、内側溝底サイプ20は、浅底部19が接地する摩耗末期時においてエッジ成分を発揮でき、ウエット性能を向上しうる。
【0056】
内側溝底サイプ20の深さD3cは、溝底サイプ14と同様の観点より、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85〜100%であり、さらに好ましくは、90〜95%である。
【0057】
内側溝底サイプ20のタイヤ軸方向の外端は、ミドル副溝4の内側頂点4Aiにおいて、溝底サイプ14に連通するのが望ましい。これにより、内側溝底サイプ20は、内側ミドル横溝9Bの溝幅W2及びミドル副溝4の溝幅Wbを効果的に大きくでき、ウエット性能を大幅に向上しうる。
【0058】
図4に示されるように、外側ミドル横溝9Cは、ミドル副溝4の外側頂点4Aoとショルダー主溝3Bの内側頂点3Biとの間を、タイヤ周方向に対して55〜75度の角度αcで傾斜してのびる。外側ミドル横溝9Cは、クラウン横溝9Aと同様に、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に対してエッジ効果を発揮でき、トラクション性能、ウエット性能、及び、操縦安定性能を向上しうる。また、外側ミドル横溝9Cは、その傾斜に沿って、トレッド部2と路面との間の水膜を、タイヤ軸方向外側に円滑に案内でき、ウエット性能を向上しうる。
【0059】
図2又は
図4に示されるように、外側ミドル横溝9Cは、クラウン主溝3Aより小さな深さの浅底部22を有している。該浅底部22は、外側ミドルブロック列7Cの変形を小さくすることができる。従って、浅底部22は、外側ミドルブロック列7Cのエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上することができる。該浅底部22は、内側ミドル横溝9Bの浅底部19と同様の観点より、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55〜75%の深さD2d(
図2に示す)を有するのが望ましい。なお、浅底部22の深さD2dは、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の60〜70%である。
【0060】
また、浅底部22には、外側ミドル横溝9Cの中心線に沿ってのびる外側溝底サイプ23が形成されている。外側溝底サイプ23は、溝底サイプ14と同様に、外側ミドル横溝9Cの溝幅W2を、接地圧によって大きくでき、ウエット性能を向上することができる。さらに、外側溝底サイプ23は、浅底部22が接地する摩耗末期時においてエッジ成分を発揮でき、ウエット性能の向上しうる。
【0061】
外側溝底サイプ23の深さD
3dは、溝底サイプ14と同様の観点より、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の85〜100%であり、さらに好ましくは、90〜95%である。
【0062】
外側溝底サイプ23のタイヤ軸方向の内端は、ミドル副溝4の外側頂点4Aoにおいて、ミドル副溝4の溝底サイプ14と連通するのが望ましい。これにより、外側溝底サイプ23は、ミドル副溝4の溝幅を大きくでき、ウエット性能をさらに向上しうる。
【0063】
図4に示されるように、ショルダー横溝9Dは、ショルダー主溝3Bの外側頂点3Boとトレッド端Teとの間を連通し、かつ、タイヤ周方向に対して70〜90度程度の角度αdで傾斜してのびる。このようなショルダー横溝9Dは、クラウン横溝9A、内側ミドル横溝9B及び外側ミドル横溝9Cと同様に、トラクション性能、ウエット性能、及び、操縦安定性能を向上しうる。
【0064】
図2又は
図4に示されるように、ショルダー横溝9Dは、クラウン主溝3Aより小さな深さの浅底部25を有している。該浅底部25は、ショルダーブロック列7Dの変形を小さくすることができる。従って、浅底部25は、ショルダーブロック列7Dでのエネルギー損失を小さくでき、燃費性能を向上することができる。浅底部25は、ミドル副溝4の浅底部13と同様の観点より、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の55〜75%の深さD5を有するのが望ましい。なお、浅底部25の深さD5は、好ましくは、クラウン主溝3Aの最大溝深さD1の60〜70%である。さらに、浅底部25のタイヤ軸方向の長さL5は、ショルダーブロック列7Dのタイヤ軸方向の幅W6の40〜60%が望ましく、ショルダー横溝9Dによる排水性能を確保しつつ、ショルダーブロック列7Dの変形を小さくすることができる。
【0065】
本実施形態のショルダー横溝9Dの浅底部25には、溝底サイプを設けていない。これにより、浅底部25は、ショルダーブロック列7Dの剛性をより効果的に高めることができ、燃費性能及び操縦安定性能を高めることができる。
【0066】
このように本実施形態のタイヤ1では、ミドル副溝4、クラウン横溝9A、内側ミドル横溝9B及び外側ミドル横溝9C、ショルダー横溝9Dが、浅底部13、16、19、22、25を有している。これにより、タイヤ1は、トレッド部2のパターン剛性を大きくし、燃費性能を向上させることができる。さらに、各浅底部13、16、19、22には、溝底サイプ14、17、20、23が形成される。これにより、タイヤ1は、トレッド部2の摩耗末期のウエット性能を確保することができる。また、横溝9の溝幅W2が、ピッチPのタイヤ周方向長さL1の上記範囲に特定されるため、横溝9の溝容積を確保し、各浅底部13、16、19、22、25及び各溝底サイプ14、17、20、23による効果を確保しつつ、トレッド部2のパターン剛性を向上させることができる。従って、本発明のタイヤ1は、ウエット性能を確保しつつ、燃費性能を向上することができる。
【0067】
図3に示されるように、クラウンブロック11Aは、トレッド平面視において、タイヤ周方向の長さBLaが、タイヤ軸方向の幅BWaよりも大きい縦長矩形状に形成されている。クラウンブロック11Aは、タイヤ周方向の剛性を高めてエネルギー損失を少なくすることができ、燃費性能、及び、トラクション性能を向上しうる。このような作用を効果的に発揮させるために、クラウンブロック11Aの幅BWaは、トレッド幅TWの8〜20%程度が望ましい。
【0068】
また、クラウンブロック11Aには、クラウン主溝3Aとクラウン横溝9Aとがなす鋭角のコーナ部に面取30が設けられる。面取30は、鋭角のコーナ部でチッピング等の損傷が生じるのを抑制しうる。さらに、面取30は、クラウン主溝3Aと路面との間で形成される気柱内の振動に乱れを生じさせることができ、気柱共鳴によるノイズの発生を効果的に抑制しうる。
【0069】
図4に示されるように、外側ミドルブロック11Cは、タイヤ周方向の長さBLcが、タイヤ軸方向の最大幅W1(BWc)よりも大、かつタイヤ軸方向内側に突出する略縦長ベース形状に形成される。外側ミドルブロック11Cは、タイヤ周方向剛性を高めることができ、燃費性能、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。
【0070】
外側ミドルブロック11Cの最大幅W1は、トレッド幅TWの5〜12%程度が望ましい。外側ミドルブロック11Cの最大幅W1がトレッド幅TWの
12%より大きい場合、ランド比が大きくなり、トレッド部2の溝が少なく、エッジ性能が充分に発揮されず、ウエット性能が低下するおそれがある。逆に、外側ミドルブロック11Cの最大幅W1がトレッド幅TWの5%未満の場合、タイヤ軸方向剛性が低下し、操縦安定性能を低下させるおそれがある。このような観点より、外側ミドルブロック11Cの最大幅W1は、好ましくは、トレッド幅TWの7〜10%程度である。
【0071】
また、外側ミドルブロック11Cのタイヤ軸方向の内端には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向外側に縦長矩形状に凹む凹溝31bが設けられるのが望ましい。このような凹溝31bは、チッピング等の損傷を抑制しうるとともに、ウエット性能を向上しうる。
【0072】
ショルダーブロック11Dは、タイヤ周方向の長さBLdが、タイヤ軸方向の幅W6よりも大きい縦長矩形状に形成される。ショルダーブロック11Dは、タイヤ周方向剛性を高めることができ、燃費性能、トラクション性能及び操縦安定性能を向上しうる。なお、ショルダーブロック11Dの幅W6は、トレッド幅TWの10〜20%程度が望ましい。
【0073】
また、ショルダーブロック11Dは、ショルダー主溝3Bとショルダー横溝9Dとがなす鋭角のコーナ部に面取32が設けられる。このような面取32は、耐久性能及び耐ノイズ性能を向上させるのに役立つ。
【0074】
さらに、ショルダーブロック11Dには、トレッド端Te側に、タイヤ軸方向に小長さで切り込まれたショルダーサイプ33がタイヤ周方向に隔設される。このようなショルダーサイプ33は、ショルダーブロック11Dのトレッド端Te側の剛性を緩和させて、轍に衝突した際の衝撃を吸収できき、ワンダリング性能を向上しうる。
【0075】
図5に示されるように、内側ミドルリブ7Bは、クラウン主溝3Aとミドル副溝4との間で、タイヤ周方向に連続するリブ体として形成される。ここでリブ体について「連続する」とは、横溝によってタイヤ周方向に分断されていないことを意味し、サイプは上記横溝には含まないものとする。このような内側ミドルリブ7
Bは、外側ミドルブロック列7Cに比べて、タイヤ周方向の剛性、及びタイヤ軸方向の剛性を高めることができ、直進安定性能、旋回安定性能、及び、燃費性能を高めうる。
【0076】
内側ミドルリブ7Bの最大幅W1(BWb)は、外側ミドルブロック11Cの最大幅W1と同様の観点より、トレッド幅TWの5〜12%程度が望ましい。さらに、内側ミドルリブ7Bの最大幅W1は、好ましくは、トレッド幅TWの7〜10%程度である。
【0077】
また、本実施形態の内側ミドルリブ7Bには、内側溝底サイプ20のタイヤ軸方向の内端からタイヤ軸方向内側に向かってのび、かつ、クラウン主溝3Aに連通する連通サイプ28が設けられている。このような連通サイプ28は、内側ミドルリブ7Bの剛性を緩和でき、その部分で歪が集中するのを防ぐことができる。さらに、内側ミドルリブ7Bのエッジ成分を高めることができ、ウエット性能の向上しうる。
【0078】
また、内側ミドルリブ7Bのタイヤ軸方向の外端には、トレッド平面視において、タイヤ軸方向内側に縦長矩形状に凹む凹溝31aが設けられるのが望ましい。このような凹溝31aは、チッピング等の損傷を抑制しうるとともに、ウエット性能を向上しうる。
【0079】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0080】
図1に示される基本パターンを有し、かつ、表1の仕様に基いてタイヤが試作され、それらが評価された。
主な共通仕様は下記の通りである。
【0081】
タイヤサイズ:275/80R22.5 151/148J
リムサイズ:22.5×7.5
トレッド幅TW:248mm
クラウン主溝:溝幅Wa:6mm
最大溝深さD1:16mm
各テスト方法は次の通りである。
【0082】
<燃費性能(転がり抵抗)>
転がり抵抗試験機を用い、下記の条件において、タイヤの転がり抵抗値を測定した。評価は、転がり抵抗の測定値の逆数を、実施例1を100とする指数で評価した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく燃費性能に優れる。
内圧:900kPa
荷重:33.83kN
速度:80km/h
【0083】
<ウエット性能>
75%磨耗させた各試作タイヤを上記リムにリム組みし、内圧900kPaを充填して、10トン積みのトラック(2−D車)の全輪に装着し、5mmの水膜を有するウエットアスファルト路面において、2速−1500rpm固定でクラッチを繋いだ瞬間から10m通過したときのタイムを測定した。評価は、各タイムの逆数を、実施例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0084】
<耐摩耗性能>
各試作タイヤを上記リムにリム組みし、内圧900kPaを充填して、10トン積みのトラック(2−D車)の後輪の一方に実施例1のタイヤを装着し、他方に各試作タイヤを装着し、いずれかのタイヤのクラウン主溝の溝深さが1.6mmになるまで走行し、走行距離を測定した。評価は、走行距離を、実施例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0085】
<耐チッピング性能>
耐摩耗性能のテストを終えた後、目視によりチッピングの有無とその大きさを確認した。評価は、確認したチッピングを、実施例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示されるように、実施例のタイヤは、ウエット性能を確保しつつ、燃費性能を向上れることが確認できた。