(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フード本体及び前記突出部の少なくともいずれかは、下層部、上層部及び前記下層部と前記上層部との間に形成された空気層部を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドガイドローラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハンドガイドローラ100は、走行機体101の前後部、両側部及び上部を筐体104で覆うことにより、エンジン音を遮蔽しているが、排気管Dを通じてエンジン音が不可避的に外部に漏洩するという問題がある。従来のハンドガイドローラ100のように、筐体104の上部から排気する形態であると、排気口Daと操作者との距離が近く、操作者の耳の高さに近くなり、操作者にとって騒音が大きくなる。
【0005】
通常、排気管Dの基端側にはマフラーが設けられているが、十分な消音効果を得るためには大型のマフラーを設置する必要がある。しかし、走行機体101の限られたスペースにおいては、十分な消音効果が得られる大型のマフラーを取り付けるのは困難である。また、排気に関しても風向きによっては操作者が排気ガスを吸引しやすい状態になるという問題もある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、操作者の作業環境を向上させることができるハンドガイドローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、少なくともエンジン及び排気管を備えた走行機体と、前記走行機体に取り付けられるローラと、前記走行機体の後部から後方に延設された操作桿と、前記走行機体の前後部及び両側部を覆う枠状壁部材と、前記枠状壁部材の上部を覆うフードと、を有し、
前記排気管は、上方向に延設されるとともにマフラー機能を備えた立ち上げ部と、前記立ち上げ部と離間して配置され下方向に延設された立ち下げ部と、前記立ち上げ部及び前記立ち下げ部の一端部同士を連結し上下方向に折り返される折返し部と、前記立ち下げ部の他端部から前側に向けて延設された延設部と、を少なくとも備え、前記走行機体又は前記枠状壁部材の前側から排気するように構成されており、
前記フードは、フード本体と、前記フード本体の一部に上方に突出したドーム状の突出部とを有し、前記折返し部が、前記突出部の内部に配設されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、ハンドガイドローラの前側から排気することができるため、操作者と排気口との距離を従来よりも大きくすることができるとともに、ハンドガイドローラの前側において、排気口の向きを前方とすることができる。これにより、操作者に排気が届くまでに排気が拡散しやすくなる。また、音が直接ではなくハンドガイドローラを回り込むようにして伝達するため従来よりも音の減衰量が大きくなり、操作者へ到達する音量を小さくすることができる。よって、操作者の作業環境を向上させることができる。
【0010】
また、かかる構成によれば、風雨時において雨水が排気管をさかのぼることがなく、ハンドガイドローラのエンジン停止時も、雨水のエンジンへの流入を防止できる。
【0012】
平面形状では遮音・吸音効果がほとんどないとされる軽量な膜部材又は板部材であっても、ドーム状の曲率の形状としてその周辺を固定することによって、遮音・吸音構造体とすることが知られている。フードの一部を突出させてドーム状とすれば、その周りのフード本体は固定部とみなされる。フードを閉めたときに
、排気管の折返し部をドーム状の突出部の
内部に配設するようにすれば、排気管表面から発生する騒音をドーム状の突出部により遮音・吸音させて、騒音を低減させることができる。
【0013】
また、前記フード本体及び前記突出部の少なくともいずれかは、下層部、上層部及び前記下層部と前記上層部との間に形成された空気層部を含んで構成されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、フードの内部に空気層を設けることにより、遮音・吸音効果をさらに高めることができるとともに、遮温効果によりフードの上面に係る温度の上昇を抑制できる。
【0015】
また、前記下層部と前記上層部とを連結するリブが形成されていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、フードの強度及び剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るハンドガイドローラによれば、操作者の作業環境を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るハンドガイドローラHは、舗装体等を締め固める機械である。ハンドガイドローラHは、走行機体1と、ローラ2,2と、操作桿3と、枠状壁部材4と、フード5とで主に構成されている。なお、説明における「上下」、「左右」、「前後」は
図1の矢印に従う。
【0020】
図1及び
図2に示すように、走行機体1は、支持板11と、側部フレーム12,12と、エンジン13と、排気管14と、吊りフック15と、バッテリーBTと、燃料タンクFT、作動油タンクWT、油圧ポンプ、付随部材等を含んで構成されている。支持板11は、金属製の板状部材であって、走行機体1を構成する各装置や枠状壁部材4が設置される。側部フレーム12は、支持板11の左右両側に設置された板状部材である。
【0021】
エンジン13は、走行駆動源となる装置である。排気管14は、エンジン13から排出される排気を外部に排出する管である。排気管14は立ち上げ部14aと、折返し部14bと、立ち下げ部14cと、延設部14dとで構成されている。立ち上げ部14aは、単なる円筒管でもよいが、本実施形態では消音効果を備えたマフラーを用いている。折返し部14b、立ち下げ部14c及び延設部14dは、同等の外径からなる円筒管を用いている。立ち上げ部14aは、折返し部14bよりも大きな外径になっている。
【0022】
立ち上げ部14a及び立ち下げ部14cは、鉛直方向に延設されており、互いに間隔をあけて配置されている。折返し部14bは、上下方向に湾曲して折り返されるように設けられており、立ち上げ部14aの上端と立ち下げ部14cの上端とを連結する部位である。立ち下げ部14cは、走行機体1に立設された内部壁L1にブラケットM,Mを介して固定されている。なお、立ち上げ部14a及び立ち下げ部14cは、本実施形態では鉛直方向と平行に設けたが、鉛直方向に対して傾斜して設けてもよい。
【0023】
延設部14dは、立ち下げ部14cの下端から走行機体1の前側まで延設されている。延設部14dは、走行機体1の外部に向かうにつれて下方に若干傾斜するようになっている。また、
図3に示すように、延設部14dは、右斜め前側に向けて延設されている。
図2に示すように、延設部14dの先端側は、走行機体1に取り付けられた前部プレート16を貫通している。排気口14eは、雨水の流入を避けるために、前方、側方又は下方に向いて開口していることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、吊りフック15は、支持板11に強固に固定されている。吊りフック15は、ハンドガイドローラHをクレーン等で吊り上げ又は吊り下げる際に用いられるフックである。
【0025】
ローラ2は、舗装体等に接する円筒状の鉄輪である。ローラ2は、本実施形態では、間隔をあけて前後に2つ設けられており、互いに平行となるように配置されている。ローラ2は、エンジン13の駆動に伴って正逆回転するようになっている。なお、ローラ2が起振するように構成してもよい。
【0026】
操作桿3は、ハンドガイドローラHを操作する装置である。操作桿3は、走行機体1の後部から後方に向けて延設されている。操作桿3には、レバー等の操作部材が設けられている。
【0027】
図1に示すように、枠状壁部材4は、走行機体1の前側、左側、右側及び後側を覆う枠状の部材である。枠状壁部材4は、本実施形態では、前カバー21と、横カバー22,22と、水タンク23とで構成されている。
【0028】
前カバー21は、金属製の板状部材であって、支持板11の前端に立設されている。前カバー21は、後側に若干傾斜している。横カバー22,22は、金属製の板状部材であって、支持板11の左右端において、支持板11に対して垂直に設けられている。前カバー21の高さは、横カバー22よりも低くなっている。横カバー22,22同士の高さは同等になっている。
【0029】
水タンク23は、ローラ2の周面に散水する水を貯留するための中空容器である。水タンク23は、走行機体1の後側を覆う部材として、枠状壁部材4の一部を構成している。水タンク23の左右方向の長さは、横カバー22,22間の距離と略同等になっている。また、水タンク23の高さは、横カバー22の高さと略同等になっている。走行機体1のエンジン13及び排気管14等は、前カバー21、横カバー22,22及び水タンク23で構成される枠状壁部材4によってその周囲が覆われている。
【0030】
水タンク23の前壁には、前方に向けて張り出す張出部23aが形成されている。水タンク23の前壁と、張出部23aと、内壁L2とで囲まれた空間で収納ポケットPOが形成されている。収納ポケットPOには、取扱説明書等の資料が収納できるようになっている。
【0031】
図1に示すように、フード5は、枠状壁部材4の上部を覆う樹脂製の板状部材である。フード5は、本実施形態では、フード本体31と、突出部32と、把手33とを含んで構成されている。
【0032】
図4及び
図5の(a)〜(c)に示すように、フード本体31は、下層部41と、下層部41と離間する上層部42と、下層部41と上層部42との間に形成された空気層部43と、長孔37と、取付部38とで構成されている。フード本体31は、二層構造になっており、内部が中空になっている。
【0033】
長孔37は、フード本体31の左右方向の中央において、上下方向に貫通している。長孔37は、前後方向に沿って形成されている。長孔37には、吊りフック15が挿通される(
図1参照)。取付部38は、長孔37の後方に形成されており、上下方向に貫通している。取付部38は、把手33が取り付けられる部位である。
【0034】
また、
図4に示すように、フード本体31の裏側には、一対の第一凹部51と、一対の第二凹部52と、一対の第三凹部53と、一対の側部溝54と、後部溝55とが形成されている。第一凹部51、第二凹部52及び第三凹部53は、前後方向に延びる直線上に形成されている。
【0035】
第一凹部51は、長孔37の左右両側において、前後方向沿って延設されている。第一凹部51は、平面視長丸状を呈する。
図5の(a)に示すように、第一凹部51は、下層部41と上層部42とを連結する一対のリブ51a,51aで構成されており、断面略三角形状になっている。
【0036】
図4に示すように、第二凹部52は、突出部32の後側の左右両側において、左右方向に沿って延設されている。第二凹部52は、平面視長丸状を呈する。
図5の(b)に示すように、第二凹部52は、下層部41と上層部42とを連結するリブ52a,52a及び底部52bで構成されており、断面略台形状になっている。
【0037】
図4に示すように、第三凹部53は、突出部32の前側の左右両側に形成されている。第三凹部53は、平面視円形状を呈する。
図5の(b)に示すように、第三凹部53は、下層部41と上層部42とを連結するリブ53a,53a及び底部53bで構成されており、断面略台形状になっている。
【0038】
側部溝54は、
図4及び
図5の(a)に示すように、フード本体31の裏側の左右両端において、前後方向に沿って延設されている。側部溝54は、横カバー22の先端が入り込む部位である。
【0039】
後部溝55は、
図4及び
図5の(b)に示すように、フード本体31の裏側の後端において、左右方向に沿って延設されている。後部溝55は、水タンク23の上端が入り込む部位である。
【0040】
また、
図5の(b)に示すように、フード本体31の裏側の前端には、接続プレート56が形成されている。接続プレート56は、フード本体31に対して垂直に形成されている。
図2に示すように、接続プレート56は、ブラケット57を介して、走行機体1の前側において左右方向に延設された軸部17に連結されている。
【0041】
これにより、フード5は、ヒンジ機構によって軸部17周りに回動可能になっている。操作者は、把手33を掴んで持ち上げたり、下げたりすることで、フード5の開閉が可能になっている。なお、フード5の後部は、緩衝部材Nに当接するようになっている。緩衝部材Nは、走行機体1の後部に形成された内壁L2の上端に設けられている。緩衝部材Nを設けることにより、フード5を閉じる際における、走行機体1とフード5との衝撃を吸収することができる。
【0042】
図2に示すように、フード本体31の後側(突出部32よりも後側の部位)は、前側に向けて低くなるように若干傾斜している。また、
図5の(b)に示すように、フード本体31の前側は、前方に向けて低くなる曲面で構成されている。フード本体31の前端は、前カバー21の上端に突き合わされている。
【0043】
図1に示すように、突出部32は、フード本体31の前側において、左右方向の中央に形成されている。突出部32は、フード本体31の一部において、フード本体31よりも上方に突出するようにドーム状に形成されている。
図5の(c)に示すように、突出部32の内部には、排気管14の折返し部14bを逃がすための中空部32aが形成されている。折返し部14bは、突出部32の近傍に配設されればよいが、本実施形態のように、中空部32aの内部に配設されることが好ましい。突出部32は、本実施形態では、フード本体31と一体的に形成されている。突出部32も下層部41と、上層部42と、空気層部43とを備えている。
【0044】
フード5の成形方法については特に制限されないが、本実施形態では、フード本体31、突出部32及び接続プレート56が回転成形によって一体成形されている。
【0045】
以上のように形成された本実施形態に係るハンドガイドローラHによれば、ハンドガイドローラHの前側から排気することができるため、操作者と排気口14eとの距離を従来よりも大きくすることができるとともに、ハンドガイドローラHの前側において、排気口14eの向きが前方となる。これにより、操作者に排気が届くまでに排気が拡散しやすくなる。また、音がハンドガイドローラHを回り込むようにして伝達するため従来よりも音の減衰量が大きくなり、操作者へ到達する音量を小さくすることができる。よって、操作者の作業環境を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る排気管14は、立ち上げ部14aと、折返し部14bと、立ち下げ部14cと、延設部14dとを備えるようにしたため、風雨時において雨水が排気管14をさかのぼることがなく、ハンドガイドローラHのエンジン停止時も、雨水のエンジンへの流入を防止できる。
【0047】
ここで、平面形状では遮音・吸音効果がほとんどないとされる軽量な膜部材又は板部材であっても、ドーム状の曲率の形状としてその周辺を固定することによって、遮音・吸音構造体とすることが知られている(国際公開WO2004/107313)。この点、本実施形態のように、フード5の一部を突出させてドーム状とすれば、その周りのフード本体31は固定部とみなされる。
【0048】
突出部32をドーム状にしているため、突出部32の部分に音圧が作用すると、曲率を増減させながら面内方向に伸縮振動を生じるようになる。音圧によって、突出部32の面内の伸縮振動を生じさせることにより、弾性による遮音及び弾性損失による吸音効果を奏することができる。つまり、排気管14の折返し部14bがドーム状の突出部32の近傍に配設されるようにすれば、排気管14表面から発生する騒音をドーム状の突出部32により遮音・吸音させて、騒音を低減させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る支持板11、枠状壁部材4及びフード5によって、走行機体1の前後部、両側部及び上下部を覆う筐体を構成するため、エンジン音を遮蔽することができる。また、フード5は、空気層部43を含む二層構造になっているため、遮音効果を向上させることができるとともに、遮温効果によりフード5の上面に係る温度の上昇を抑制できる。
【0050】
また、フード5には、下層部41と上層部42とを連結するリブ51a,52a,53aが形成されているため、フード5の強度を向上させることができる。また、本実施形態では、リブ51a,52a,53aをそれぞれ含む第一凹部51、第二凹部52及び第三凹部53が複数箇所に形成され、かつ、それぞれ形状が異なるため、より効果的に強度及び剛性を向上させることができる。また、第一凹部51、第二凹部52及び第三凹部53が左右対称に配置されることで、バランスよく強度及び剛性を向上させることができる。
【0051】
また、フード5の剛性を向上させることで、フード5の曲げ振動を抑制できる。これにより、フード5の防音効果を向上させることができる。また、フード5の一部を突出させて断面を変形させることにより、フード5の曲げ振動の波長を短くすることができる。これにより、共振周波数を変化させることができるため、防音効果を向上させることができる。
【0052】
また、把手33を設けてフード5を開閉式にすることにより、バッテリーBT及び作動油タンクWT等の内部装置の点検、水タンク23の補充等のメンテナンスを容易に行うことができる。また、把手33を操作桿3に近い位置に設けることにより、よりメンテナンスを行いやすくなっている。
【0053】
また、フード本体31、突出部32及び接続プレート56は一体成形されているため、フード5の製造が容易になる。また、フード5は、金属製でもよいが、本実施形態では樹脂で成形されているため、軽量化を図ることができる。
【0054】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、空気層部43の中に、吸音材を設けてもよい。これにより、より防音効果を向上させることができる。また、本実施形態ではフード5を二層構造としたが、3層以上としてもよいし、単一層(空気層部43の無い中実構造)としてもよい。また、本実施形態では、フード本体31及び突出部32の両方を二層構造としたが、少なくともいずれかを二層構造にするだけでもよい。
【0055】
また、本実施形態では、フード本体31と突出部32とは一体になっているが、別体であってもよい。また、フード本体31は複数の部材から構成する形態であってもよい。また、フード本体31及び突出部32のいずれかを透明として内部を視認可能となるようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、水タンク23を利用して枠状壁部材4の後側を構成したが、水タンク23の前又は後ろに後カバーを設けて、前カバー21、横カバー22,22及び後カバーで枠状壁部材4を構成してもよい。
【0057】
また、突出部32は、本実施形態では左右方向の中央に設けたが、それ以外の位置に設けてもよい。
【0058】
また、排気管14の形状は、上下方向に折り返される折返し部14bを備える構成であれば、他の形状であってもよい。例えば、排気管14は、立ち下げ部14cを省略して、折返し部14bと延設部14dとを直接連結するようにしてもよい。