特許第5798586号(P5798586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798586
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20151001BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300C
   B60C11/13 B
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-53722(P2013-53722)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-177236(P2014-177236A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 竜雄
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−323511(JP,A)
【文献】 特開昭56−131406(JP,A)
【文献】 特表2004−537453(JP,A)
【文献】 特開平02−053608(JP,A)
【文献】 特開平08−164716(JP,A)
【文献】 特開昭58−056903(JP,A)
【文献】 特開2010−116030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター主溝と、該1対のセンター主溝間を継ぐ複数本のセンター横溝とが設けられた空気入りタイヤであって、
前記センター横溝は、タイヤ軸方向に対して一方側かつ3〜20°の角度で傾斜する第1センター横溝と、前記第1センター横溝とは逆向きかつタイヤ軸方向に対して3〜20°の角度で傾斜する第2センター横溝とをタイヤ周方向に交互に含むことにより、
前記センター主溝間に、略台形状の複数個のセンターブロックが区分され、
正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態の接地面は、少なくともタイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックを含み、
前記センターブロックは、前記いずれか一方のセンター主溝側をのびかつタイヤ周方向の長さが小さい短縁と、前記短縁よりもタイヤ周方向の長さが大きくかつ前記他方のセンター主溝側をのびる長縁とを含み、
前記短縁及び長縁は、ともにタイヤ赤道側に凹む凹み部を有し、
前記短縁の凹み部のタイヤ軸方向の長さは、前記長縁の凹み部のタイヤ軸方向の長さよりも大きく、
前記短縁の凹み部のタイヤ周方向の長さは、前記長縁の凹み部のタイヤ周方向の長さよりも小さいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記短縁の凹み部とタイヤ赤道とのタイヤ軸方向の長さは、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減し、
前記長縁の凹み部とタイヤ赤道とのタイヤ軸方向の長さは、タイヤ周方向の前記他方側から前記一方側へ向かって漸減する請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ周方向に並ぶ前記センターブロックにおいて、前記センターブロックのタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ軸方向に交互に位置ずれしている請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記短縁は、前記凹み部と、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁とからなる請求項1乃至のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記長縁は、前記凹み部と、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁とからなる請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記各センターブロックにおいて、前記短縁の縦縁は、前記長縁の縦縁とタイヤ周方向において、反対側に設けられている請求項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷路性能と雪路性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
冬用の空気入りタイヤは、雪路のみならず、氷路等も走行する。従って、このような冬用の空気入りタイヤは、雪路性能だけでなく、氷路性能も向上させることが求められている。
【0003】
例えば、雪路性能を向上するために、雪柱せん断力を高めることを目的として、トレッド部の横溝の体積を大きくすることが提案されている。しかしながら、この手法では、トレッド部の接地面積が小さくなり、氷路性能が悪化するという問題があった。このように、氷路性能と雪路性能とは、相反関係を有し、これら両性能をバランス良く向上するのは困難であった。関連する技術として次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−86665号公報
【特許文献2】特開2009−269500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、センター横溝及びセンターブロックの形状を改善することを基本として氷路性能と雪路性能とをバランス良く向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター主溝と、該1対のセンター主溝間を継ぐ複数本のセンター横溝とが設けられた空気入りタイヤであって、前記センター横溝は、タイヤ軸方向に対して一方側かつ3〜20°の角度で傾斜する第1センター横溝と、前記第1センター横溝とは逆向きかつタイヤ軸方向に対して3〜20°の角度で傾斜する第2センター横溝とをタイヤ周方向に交互に含むことにより、前記センター主溝間に、略台形状の複数個のセンターブロックが区分され、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態の接地面は、少なくともタイヤ周方向に隣り合う前記センターブロックを含み、前記センターブロックは、前記いずれか一方のセンター主溝側をのびかつタイヤ周方向の長さが小さい短縁と、前記短縁よりもタイヤ周方向の長さが大きくかつ前記他方のセンター主溝側をのびる長縁とを含み、前記短縁及び長縁は、ともにタイヤ赤道側に凹む凹み部を有し、前記短縁の凹み部のタイヤ軸方向の長さは、前記長縁の凹み部のタイヤ軸方向の長さよりも大きく、前記短縁の凹み部のタイヤ周方向の長さは、前記長縁の凹み部のタイヤ周方向の長さよりも小さいことを特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記短縁の凹み部とタイヤ赤道とのタイヤ軸方向の長さは、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減し、前記長縁の凹み部とタイヤ赤道とのタイヤ軸方向の長さは、タイヤ周方向の前記他方側から前記一方側へ向かって漸減する請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、タイヤ周方向に並ぶ前記センターブロックにおいて、前記センターブロックのタイヤ軸方向の中心位置は、タイヤ軸方向に交互に位置ずれしている請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0010】
また請求項記載の発明は、前記短縁は、前記凹み部と、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁とからなる請求項1乃至のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0011】
また請求項記載の発明は、前記長縁は、前記凹み部と、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁とからなる請求項に記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また請求項記載の発明は、前記各センターブロックにおいて、前記短縁の縦縁は、前記長縁の縦縁とタイヤ周方向において、反対側に設けられている請求項に記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0013】
センター横溝は、所定の角度で傾斜する第1センター横溝と、第1センター横溝とは逆向きの角度で傾斜する第2センター横溝とをタイヤ周方向に交互に含む。このため、大きな雪柱せん断力が発揮され、雪路でのトラクションが高まり、雪路性能が向上する。また、センター横溝は、タイヤ周方向のエッジ成分及びタイヤ軸方向のエッジ成分を有する。このため、氷路での旋回性能やトラクション性能が向上する。
【0014】
センター横溝と1対のセンター主溝とによって略台形状のセンターブロックが区分され、接地面内に少なくともタイヤ周方向に隣り合うセンターブロックが含まれる。これにより、接地面には必ずセンター横溝が設けられ、氷路での旋回性能やトラクション性能及び雪路性能が確実に向上する。
【0015】
各センターブロックは、いずれか一方のセンター主溝側をのびかつタイヤ周方向の長さが小さい短縁と、他方のセンター主溝側をのびかつ短縁よりもタイヤ周方向の長さが大きい長縁とを含み、短縁及び長縁は、それぞれタイヤ赤道側に凹む凹み部を有する。このような凹み部は、タイヤ軸方向のエッジ成分を有する。このため、氷路でのトラクション性能が向上する。また、凹み部は、雪柱せん断力を高める。従って、本発明の空気入りタイヤは、雪路性能と氷路性能とがバランス良く向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示すトレッド部の展開図である。
図2図1のセンター陸部の拡大図である。
図3図1のセンターブロックの斜視図である。
図4図1のセンターブロックの拡大図である。
図5】他の実施形態のトレッド部の展開図である。
図6】比較例の形態を示すトレッド部の展開図である。
図7】他の比較例の形態を示すトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)は、例えばスタッドレスタイヤとして好適に利用できる。タイヤのトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のセンター主溝3、3と、該センター主溝3のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続してのびる1対のショルダー主溝4、4とが設けられる。これにより、本実施形態のトレッド部2には、1対のセンター主溝3、3で区分されたセンター陸部5、センター主溝3とショルダー主溝4とで区分された1対のミドル陸部6、6、及び、ショルダー主溝4と接地端Teとで区分された1対のショルダー陸部7、7が形成される。
【0018】
「接地端」Teは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態のときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離がトレッド接地幅TWとして定められる。タイヤの各部の寸法等は、特に断りがない場合、正規状態での値である。
【0019】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0021】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" であるが、タイヤが乗用車用の場合には前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0022】
センター主溝3は、タイヤ軸方向に対して多方向に傾斜してのびる溝縁を有している。タイヤ軸方向において、内側縁は、台形波状であり、外側縁は、ジグザグ状である。このようなセンター主溝3の溝縁は、多方向のエッジ成分を有する。また、内側縁によって、大きな雪柱が形成される。従って、センター主溝3は、雪路性能や氷路性能を向上させる。
【0023】
ショルダー主溝4は、本実施形態では、ジグザグの内側縁、外側縁を有している。このようなショルダー主溝4は、センター主溝3と同様に、雪路性能及び氷路性能を向上し得る。
【0024】
各主溝3、4の溝幅(タイヤ軸方向の最大幅)W1、W2及び溝深さD1(図3に、センター主溝の溝深さが示される)については、慣例に従って種々定めることができる。各主溝3、4の溝幅W1、W2は、例えば、トレッド接地幅TWの3〜10%が望ましい。各主溝3、4の溝深さD1は、例えば、10〜12mmが望ましい。
【0025】
図2には、図1のセンター陸部5の拡大図が示される。図2に示されるように、センター陸部5は、1対のセンター主溝3、3間を継ぐ複数本のセンター横溝8が設けられる。これにより、センター陸部5は、1対のセンター主溝3、3とセンター横溝8とで区分された複数個のセンターブロック9がタイヤ周方向に隔設されたセンターブロック列である。
【0026】
センター横溝8は、本実施形態では、タイヤ軸方向に対して一方側(図2では左上がり)かつ3〜20°の角度α1で傾斜する第1センター横溝8Aと、第1センター横溝8Aとは逆向き(図2では右上がり)かつタイヤ軸方向に対して3〜20°の角度α2で傾斜する第2センター横溝8Bとを含む。
【0027】
本実施形態では、各センター横溝8A、8Bは、直線状にのびている。このため、センターブロック9の剛性が高く確保される。
【0028】
センター横溝8の溝幅W3は、好ましくはセンターブロック9のタイヤ周方向の最大長さLsの11〜15%であるのが望ましい。これにより、大きな雪柱が形成される。また、センターブロック9のタイヤ周方向の剛性が確保される。同様の観点より、センター横溝8の溝深さD3(図3に示す)は、好ましくはセンター主溝3の溝深さD1の40〜75%である。
【0029】
第1センター横溝8Aの角度α1及び第2センター横溝8Bの角度α2が3〜20°の範囲とされることにより、タイヤ周方向のエッジ成分が得られ、氷路性能が向上する。また大きな雪柱せん断力が発揮される。特に好ましくは、第1センター横溝8Aの角度α1及び第2センター横溝8Bの角度α2は、5〜15°の範囲である。第1センター横溝8Aの角度α1及び第2センター横溝8Bの角度α2は、各横溝8の両端の溝幅中心点間を結ぶ直線8cの角度として定義される。
【0030】
第1センター横溝8Aと第2センター横溝8Bとは、タイヤ周方向に交互に配されている。これにより、センターブロック9は、上底部分及び下底部分をタイヤ周方向に有する略台形状をなす。「略台形状」のブロックとは、タイヤ周方向の両側に、傾斜の向きが互いに逆であるブロック縁を持っているブロックを意味し、厳密な台形である必要はない。
【0031】
センターブロック9は、第1ブロック9Aと第2ブロック9Bとを含んでいる。第1ブロック9Aは、第1センター横溝8Aがタイヤ周方向の一方側(図2では上側)かつ第2センター横溝8Bがタイヤ周方向の他方側(図2では下側)に配されている。第2ブロック9Bは、第2センター横溝8Bがタイヤ周方向の一方側かつ第1センター横溝8Aがタイヤ周方向の他方側に配されている。本実施形態では、第1ブロック9Aと第2ブロック9Bとがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0032】
センターブロック9は、路面の輪郭縁である縁を有する。この縁は、タイヤ周方向の長さが小さい短縁11と、短縁11よりもタイヤ周方向の長さが大きい長縁12とを含む。本実施形態のセンターブロック9は、その短縁11が、一方のセンター主溝3側をのびており、長縁12は、他方のセンター主溝3側をのびている。より具体的には、第1ブロック9Aの短縁11及び第2ブロック9Bの長縁12は、一方のセンター主溝3A側をのびている。第1ブロック9Aの長縁12及び第2ブロック9Bの短縁11は、他方のセンター主溝3B側をのびている。従って、センター陸部5全体として、センターブロック9のタイヤ周方向にのびるタイヤ軸方向両側の溝縁の長さが等しくなり、タイヤ周方向のエッジ効果がタイヤ赤道Cの両側でバランスされるため、氷路性能が向上する。
【0033】
本実施形態では、長縁12は、短縁11よりもタイヤ軸方向の外側に配される。これにより、旋回時、タイヤ軸方向の外側に作用する相対的に大きな横力が、長縁12で効果的に受け止められる。従って、氷路での旋回性能が向上する。
【0034】
短縁11及び長縁12は、ともに各センター主溝3A、3B側からタイヤ赤道C側に凹む凹み部14と、タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁15とを含む。このような凹み部14は、タイヤ軸方向のエッジ成分を増加させる。このため、氷路でのトラクション性能が向上する。また、凹み部14は、雪柱せん断力を高める。このため雪路性能が向上する。なお、「タイヤ周方向に沿ってのびる縦縁」とは、縦縁15がタイヤ周方向に対し10°以下の角度でのびるものをいう。
【0035】
図3には、図1のセンターブロック9(第2ブロック9B)の斜視図が示される。図3に示されるように、本実施形態の短縁11及び長縁12の凹み部14は、センター主溝3よりも小さい深さを有する切欠き部16の輪郭縁である。このような切欠き部16は、センターブロック9の剛性低下を抑えつつ、雪柱せん断力を効果的に発揮する。このため、切欠き部16の深さD4は、センター主溝3の溝深さD1の50〜55%が望ましい。このような凹み部14の設けられたセンターブロック9の踏面は、略Z字状をなす。
【0036】
図4には、図1のセンターブロック9(第2ブロック9B)の拡大図が示される。図4に示されるように、短縁11の凹み部14は、短縁11の一方側(図4では下側)の端から他方側(図4では上側)に向かってタイヤ赤道C側に傾斜してのびる傾斜部14aと、タイヤ軸方向にのびかつ傾斜部14aと縦縁15とを継ぐ継部14bとを含む。長縁12の凹み部14は、長縁12の他方側の端から一方側に向かってタイヤ赤道C側に傾斜してのびる傾斜部14aと、タイヤ軸方向にのびかつ傾斜部14aと縦縁15とを継ぐ継部14bとからなる。
【0037】
短縁11及び長縁12の傾斜部14aは、本実施形態では、直線状にのびる。これにより、センターブロック9の剛性が高く維持される。
【0038】
短縁11及び長縁12の継部14bは、本実施形態では、縦縁15側に屈曲している。これにより、さらに大きな雪柱を形成することができる。
【0039】
雪路でのトラクション性能を高めるため、継部14bのタイヤ軸方向に対する角度α3は、15°以下が望ましい。継部14bの角度α3は、縦縁15の端と傾斜部14aの端とを結ぶ直線で定められる。
【0040】
本実施形態では、短縁11の縦縁15は、長縁12の縦縁15とタイヤ周方向において、反対側に設けられている。これにより、センターブロック9のタイヤ周方向の両端側のタイヤ軸方向の剛性が高く確保される。従って、氷路での旋回性能が向上する。
【0041】
短縁11の凹み部14とタイヤ赤道Cとのタイヤ軸方向の長さL1は、タイヤ周方向の一方側から他方側へ向かって漸減している。また、長縁12の凹み部14とタイヤ赤道Cとのタイヤ軸方向の長さL2は、タイヤ軸方向の他方側から一方側へ向かって漸減している。これにより、タイヤの回転方向に影響されることなく、雪柱がスムーズに形成される。また、接地時、相対的に大きな荷重が作用するセンターブロック9のタイヤ周方向両側部分の剛性を大きく確保でき、トラクション性能が高められる。従って、雪路性能と氷路性能とがバランス良く向上する。
【0042】
短縁11の凹み部14のタイヤ周方向の長さLaは、長縁12の凹み部14のタイヤ周方向の長さLbよりも小さいのが望ましい。即ち、タイヤ周方向の長さの小さい短縁11に設けられた凹み部14の長さLaが、タイヤ周方向の長さの大きい長縁12に設けられた凹み部14の長さLbよりも小さいことで、センターブロック9のタイヤ軸方向の両側のタイヤ周方向の剛性が均等化される。
【0043】
雪柱せん断力を高めつつ、センターブロック9の剛性を大きく確保するため、短縁11の凹み部14のタイヤ周方向の長さLaは、短縁11のタイヤ周方向の長さLcの65〜70%であるのが望ましい。長縁12の凹み部14のタイヤ周方向の長さLbは、長縁12のタイヤ周方向の長さLdの65〜70%であるのが望ましい。
【0044】
なお、短縁11のタイヤ周方向長さLcは、長縁12のタイヤ周方向長さLdの0.60〜0.85倍であるのが望ましい。これにより、センターブロック9のタイヤ周方向のエッジ成分とタイヤ周方向の剛性とがバランス良く確保され、氷路でのトラクション性能や旋回性能が向上する。
【0045】
短縁11の凹み部14のタイヤ軸方向の長さLeは、長縁12の凹み部14のタイヤ軸方向の長さLfよりも大きいのが望ましい。これにより、短縁11の凹み部14のタイヤ周方向の長さLaと長縁12の凹み部14のタイヤ周方向の長さLbとの関係を含め、短縁11の凹み部14によって形成される雪柱と、長縁12の凹み部14によって形成される雪柱の体積の差が小さくなり、雪路性能が向上する。
【0046】
このような観点より、短縁11の凹み部14のタイヤ軸方向の長さLeは、センターブロック9のタイヤ軸方向の最大幅Wcの17〜22%であるのが望ましい。長縁12の凹み部14のタイヤ軸方向の長さLfは、センターブロック9のタイヤ軸方向の最大幅Wcの14〜19%であるのが望ましい。
【0047】
センターブロック9は、タイヤ赤道Cと短縁11とのタイヤ軸方向の最大長さLgが、タイヤ赤道Cと長縁12とのタイヤ軸方向の最大長さLhよりも小さくなるように配置されるのが望ましい。これにより、センターブロック9のタイヤ赤道Cのタイヤ軸方向両側での剛性がバランス良く確保され、氷路性能がさらに向上する。とりわけ、前記長さの比Lg/Lhが0.75〜0.90が望ましい。
【0048】
図2に示されるように、タイヤ周方向に並ぶセンターブロック9において、センターブロック9のタイヤ軸方向の中心位置9cは、タイヤ軸方向に交互に位置ずれしている。これにより、一方のセンター主溝3A側をのびる第1ブロック9Aの短縁11の凹み部14と第2ブロック9Bの長縁12の凹み部14とがタイヤ軸方向に位置ずれしている。同様に、他方のセンター主溝3B側をのびる第1ブロック9Aの長縁12の凹み部14と第2ブロック9Bの短縁11の凹み部14とがタイヤ軸方向に位置ずれしている。このため、凹み部14による雪柱せん断力やエッジ効果が、一層、効果的に発揮される。本実施形態では、第1ブロック9Aの中心位置9cは、タイヤ赤道Cよりも左側、第2ブロック9Bの中心位置9cは、タイヤ赤道Cよりも右側に位置ずれしている。
【0049】
なお、タイヤ周方向に並ぶセンターブロック9のタイヤ軸方向の中心位置間9c、9cのタイヤ軸方向の長さL3が大きい場合、ミドル陸部6、ショルダー陸部7の剛性が小さくなり、氷路での旋回性能が悪化するおそれがある。このため、タイヤ周方向に並ぶセンターブロック9のタイヤ軸方向の中心位置間9c、9cのタイヤ軸方向の長さL3は、好ましくはセンターブロック9のタイヤ軸方向の最大幅Wc(図4に示す)の5〜10%である。
【0050】
センターブロック9には、タイヤ軸方向にのびるサイピング17が設けられる。本実施形態では、第1ブロック9Aは、第1センター横溝8Aと略平行にのびる第1センターサイピング17Aが複数本設けられている。第2ブロック9Bは、第2センター横溝8Bと略平行にのびる第2センターサイピング17Bが複数本設けられている。これにより、多くのタイヤ軸方向のエッジ成分及びタイヤ周方向のエッジ成分が得られる。このため、氷路性能がより一層向上する。
【0051】
第1センター横溝8Aの角度α1と第1センターサイピング17Aのタイヤ軸方向の角度α3との差、及び、第2センター横溝8Bの角度α2と第2センターサイピング17Bのタイヤ軸方向の角度α4との差の絶対値は、好ましくは5°以下の範囲が望ましい。これにより、センターブロック9の剛性が高く確保される。
【0052】
センターブロック9の剛性を確保しつつ、エッジ成分を効果的に増加させるために、センターサイピング17の深さD5(図3に示す)は、好ましくはセンター主溝3の溝深さD1の65〜85%である。また、センターサイピング17は、その両端側に深さが小さい浅底部(図示省略)を有している。これにより、センターブロック9の剛性が高く確保されている。浅底部の深さは、センター主溝3の溝深さD1の15〜20%である。
【0053】
センターブロック9のタイヤ軸方向の最大幅Wcは、トレッド接地幅TW(図1に示す)の10〜20%であるのが望ましい。センターブロック9の最大幅Wcがトレッド接地幅TWの10%未満の場合、タイヤ軸方向のエッジ成分が小さくなり、トラクション性能が悪化するおそれがある。センターブロック9の最大幅Wcがトレッド接地幅TWの20%を超える場合、ミドル陸部6及びショルダー陸部7のタイヤ軸方向の剛性が小さくなり、氷路での旋回性能が悪化するおそれがある。このため、センターブロック9の最大幅Wcは、より好ましくはトレッド接地幅TWの12〜18%である。
【0054】
本実施形態のタイヤでは、正規荷重負荷状態において、少なくともタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック9、9がともに含まれる接地面を有する。これにより、向きが逆である台形状のセンターブロック9、9が略同時に接地するため、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向のエッジ成分がバランス良く発揮され、氷路性能が向上する。また、センター横溝8が必ず接地面に表れるので、雪柱せん断力が確実に発揮される。
【0055】
図1に示されるように、ミドル陸部6には、センター主溝3とショルダー主溝4との間を継ぐ複数本のミドル横溝20と、該ミドル横溝20、20間を継ぐミドル縦溝21とが配される。これにより、ミドル陸部6は、ミドル横溝20、20間で区分されるミドルブロック6Aがタイヤ周方向に隔設されたミドルブロック列として形成される。
【0056】
ミドル横溝20及びミドル縦溝21は、直線状かつタイヤ軸方向に対し一方向(図1では右上がり)に傾斜している。これにより、氷路性能と雪路性能がさらに向上する。
【0057】
ミドルブロック6Aは、ミドル縦溝21のタイヤ軸方向に外側に配される外側部22と、ミドル縦溝21のタイヤ軸方向内側に配される内側部23とに区分される。
【0058】
外側部22には、ミドル横溝20と同じ向きに傾斜するミドル外側サイピング24が設けられる。内側部23には、ミドル外側サイピング24とは、逆向きに傾斜するミドル内側サイピング25が設けられる。これにより多方向のエッジ効果が発生し、一層、氷路性能が向上する。
【0059】
内側部23には、ミドル内側サイピング25や各溝3、20、21に連通することなく内側部23内で終端する楕円状のディンプル26が設けられる。このようなディンプル26は、内側部23の剛性を確保しつつ、多方向のエッジ成分を有する。このため、旋回性能が向上する。
【0060】
ミドルブロック6Aのタイヤ軸方向の最大幅Wmは、トレッド接地幅TWの15〜25%であるのが望ましい。これにより、各センター陸部5、ミドル陸部6、ショルダー陸部7のタイヤ軸方向の剛性がバランス良く確保され、氷路性能が、より一層、向上する。
【0061】
ショルダー陸部7には、ショルダー主溝4と接地端Teとの間を継ぐ複数本のショルダー横溝27が配される。これにより、ショルダー陸部7は、ショルダー横溝27で区分されるショルダーブロック7Aがタイヤ周方向に隔設されたショルダーブロック列として形成される。
【0062】
ショルダーブロック7Aには、ショルダー横溝27と略平行にのびるショルダーサイピング28が設けられる。これにより、さらに氷路での旋回性能が向上する。
【0063】
本実施形態のタイヤは、冬用のスタッドレスタイヤとして、ランド比が、63〜70%に設定されるのが望ましい。これにより、氷路性能と雪路性能とがバランス良く向上する。ランド比は、全ての陸部5乃至7の踏面の全表面積Mbと、トレッド部2の全ての溝3、4、8、20、21及び27、切欠き部16、ディンプル26並びに、各サイピング17、24、25及び28を埋めて得られる仮想踏面の仮想表面積Maとの比(Mb/Ma)である。
【0064】
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0065】
本発明の効果を確認するために、図1の基本パターンを有し、表1の仕様に基づいた225/65R17の空気入りタイヤがテストされた。表1に記載された溝を除いて各溝の溝幅及び角度等は、図1に示される通りである。なお、各タイヤの主な共通仕様やテスト方法は以下の通りである。
トレッド接地幅TW:180mm
センター主溝の溝深さ:11mm
ショルダー主溝の溝深さ:11mm
センター横溝の溝深さ:6mm
ミドル横溝の溝深さ:11mm
ミドル縦溝の溝深さ:9mm
ショルダー横溝の溝深さ:10mm
センターサイピングの深さ/センター主溝の溝深さ:77%
センターサイピングの浅底部の深さ/センター主溝の溝深さ:18%
センター横溝の角度α1、α2:8°
正規荷重負荷状態の接地面のタイヤ周方向長さ:センターブロックのタイヤ周方向最大長さ×3.6+センター横溝の溝幅×3
【0066】
<氷路性能(旋回及びブレーキ)>
各テストタイヤが、下記の条件で、排気量が2400ccの四輪駆動の乗用車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、上記テスト車両を、アイスバーンのテストコース(1周、1200m)を10周走行させ、そのときの走行時間が測定された。また、同じテストコースの直線部分を用いて、上記テスト車両を30km/hの速度からフルブレーキを作動させ、停止するまでの制動距離が測定された。結果は、比較例1の走行時間の逆数を50とする指数、及び比較例1の制動距離の逆数を50とする指数の合計(比較例1は100)で表示されている。数値が大きいほど良好である。
リム(全輪):17×6.5J
内圧(全輪):220kPa
【0067】
<雪路性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、圧雪路のテストコースを走行させ、このときのハンドル安定性及びトラクション性能等に関する走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1の値を6.0とする評点で表示されている。数値が大きいほど良好である。
【0068】
<耐摩耗性能>
テストドライバーが、上記テスト車両を、乾燥アスファルト路面のテストコースを8000km走行させた。この後、センターブロックのタイヤ軸方向の両端部の溝残量が、タイヤ周方向で8カ所測定され、その溝残量の平均値が求められた。結果は、比較例1の値を100とする指数で表示された。数値が大きいほど良好である。
テストの結果が表1に示される。
【0069】
【表1】
【0070】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に比べて有意に向上していることが確認できた。また、正規荷重負荷状態の接地面のタイヤ周方向長さを、センターブロックのタイヤ周方向最大長さの1.8〜1.9倍とした場合、氷路での旋回性能やトラクション性能が悪化することが確認できた。また、センター横溝の角度を変化させてテストを行ったが、角度が3〜20°のタイヤのテスト結果は、角度が3°未満及び20°を超えるタイヤのテスト結果よりも良好であった。
【符号の説明】
【0071】
3 センター主溝
4 ショルダー主溝
8A 第1センター横溝
8B 第2センター横溝
9 センターブロック
11 短縁
12 長縁
14 凹み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7