(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798589
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】天井構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/22 20060101AFI20151001BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
E04B5/57 R
E04B5/55 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-88777(P2013-88777)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-211057(P2014-211057A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小椋 一彦
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 奨
(72)【発明者】
【氏名】前田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 光範
(72)【発明者】
【氏名】橋本 稔
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−029073(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0014461(US,A1)
【文献】
実開平07−043189(JP,U)
【文献】
特公昭51−008255(JP,B1)
【文献】
実公昭51−002893(JP,Y1)
【文献】
実開昭53−137519(JP,U)
【文献】
実開昭52−062608(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/06−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tバーのフランジ部が室内側の面で面一になるようにTバーを格子状に組んで鋼製下地とし、天井板の四周を天井板固定部材にてTバーのフランジ部に打ち付けて張り付けた天井構造であって、
Tバーのフランジ部には、天井板固定部材より細い幅のスリットが幅方向に複数形成され、
前記スリットを構成する、スリットの両側のリブ間の開口幅が、室内側の面から反対側の面に向けて次第に幅が狭くなるように形成され、
隣接するリブをつなぐ連結部がスリットの全長にわたって所定間隔で設けられていることを特徴とする天井構造。
【請求項2】
フランジ部と天井板との間に接着剤が更に塗着され、該接着剤がスリット内に入り込んでフランジ部の反対側の面側に露出していることを特徴とする請求項1に記載の天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で施工性ならびに意匠性に優れた天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、システム天井としては長短の鋼製Tバーを格子状に組んでグリッド下地を構成し、天井板をグリッドに落とし込むグリッドタイプと呼ばれる工法が一般的である。この工法による天井構造は軽量で、天井板の四辺がTバーに載っているため落下しにくく耐震性に優れている。ところが天井板を載せるTバーのフランジ部や鋼製Tバーの継ぎ目が天井表面側(室内側)に現れるため天井面としての意匠性を損なってしまうという問題がある。
【0003】
一方、平行に配設されたCチャンネルと、これに対してその下面に直角に配設されたMバーとで鋼製下地で組む一般工法の場合は、Mバーの下に不陸解消のために石膏ボードなどの下地材を張り、この下地材に天井板を室内側から天井全面に貼るようになっている。これにより鋼製下地が隠れるため意匠性は損なわれないが、CチャンネルとMバーとの接合部が多いため下地組みに手間がかかるだけでなく、下地材を必要とすることもあって天井全体の重量があり耐震性に劣る。最近では、災震の影響もあり、躯体のみならず、空調機をはじめとする天井設置物の落下をなくすため、天井面の意匠性のみならず天井部分の耐震性も求められるようになっている。
【0004】
特許文献1は、上記の一般工法の改良で、一般工法のMバーに対して天井板を接着剤で接着し、ステープルで直接固定する天井構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−254474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この改良工法では、平行に配設されているMバーに長方形の天井板を固定することになるため、Mバーに一致する天井板の長辺側の二辺しかMバーに固定できず、天井板の四周全てを固定することができない。その結果、天井構造としてはMバーを用いた一般工法に比べて軽量であるものの耐震性に劣るという問題がある。加えて、天井板をMバーに留めつけるステープルはコ字形の細い金属部材でMバーよりも強度が劣るため、ステープルを打ち込んでもMバーを突き抜けて直接固定することは困難であり施工性にも問題があった。
【0007】
そこで、本発明はステープルのような打ち込み力の弱い天井板固定部材を用いても簡単に打ち込むことができ、その保持力にも優れたTバーを使用して耐震性並びに施工性がよく、加えて、接着剤を用いた場合でも高い保持力を示し、意匠性にも優れた天井構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、Tバー1のフランジ部1bが室内側の面で面一になるようにTバー1を格子状に組んで鋼製下地10とし、天井板11の四周を天井板固定部材7にてTバー1のフランジ部1bに打ち付けて張り付けた天井構造であって、
Tバー1のフランジ部1bには、天井板固定部材7より細い幅のスリット5が
幅方向に複数形成され、
前記スリット5を構成する、スリット5の両側のリブ8間の開口幅が、室内側の面1cから反対側の面1dに向けて次第に幅が狭くなるように形成され
、
隣接するリブ8をつなぐ連結部9がスリット5の全長にわたって所定間隔で設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2は、請求項1の天井構造において、フランジ部1bと天井板11との間に接着剤12が更に塗着され、該接着剤12がスリット5内に入り込んでフランジ部1bの反対側の面1d側に露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のフランジ部1bには、天井板固定部材7より細い幅のスリット5が複数形成され、スリット5の両側のリブ8間の開口幅が、フランジ部1bの室内側の面1cから反対側の面1dに向けて次第に幅が狭くなるように形成されているので、天井板固定部材7の打ち込みに対してはリブ8の側面が天井板固定部材7の打ち込み時のガイドとなり、天井板固定部材7を打ち込むとスムーズにスリット5に導かれてスリット5に打ち込まれることになり、天井という高所での天井板11の張り付けにおける打ち込み作業が容易になると同時に、天井板固定部材7のスリット5への食い込みが強固に行われることになる。この時、隣接するリブ8をつなぐ連結部9がスリット5の全長にわたって所定間隔で設けられておれば、天井板固定部材7のスリット5への打ち込み時に連結部9が抵抗となってスリット5が開きにくくなり、打ち込まれた後は弾性的にスリット5を閉じる方向に働き、前記食い込みがより強固におこなわれる。
【0013】
また、接着剤12を用いる場合には、同様にリブ8の側面がガイドとなってスリット5への接着剤12のスリット5への流れ込みが容易になる。なお、接着剤12を用いる場合には、施工が簡単であり、スリット5に接着剤12を入り込ませることで天井板11を鋼製下地10に一体化させやすく強固な天井構造が実現できる。更に天井板固定部材7を併用することでより強固に固着することができる。
【0014】
さらに、接着剤12、または天井板固定部材7、或いはその両者で天井板11の四周をフランジ部1bに留め付けるため、鋼製下地10と一体化した強固で耐震性の高い天井構造が実現できる。そして、天井板11はフランジ部1bの室内側の面1cに張り付けられるので、Tバー1を用いた鋼製下地10であるにも拘わらず、鋼製下地10が室内側に露出せず、高い意匠性を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のシステム天井の施工状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3のフランジ部の施工状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6】本発明における天井板固定部材のスリットへの打ち込み状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。Tバー1はスチールなど一般的な鋼板で形成され、ハンガー部材2を介して吊りボルト3に取り付けられる縦片1aと、縦片1aの下縁の両側或いは片側に直角に延出されて設けられ、天井板4を取り付けるためのフランジ部1bとで構成される。フランジ部1bの端部は縦片1a側に補強のため折り曲げられている。
図4は両側にフランジ部1bが設けられている例を示す。フランジ部1bの出幅は指定されないが、直貼りしやすいのは幅50mm程度が適当とされている。
【0017】
フランジ部1bには、所定間隔でスリット5が形成されている。スリット5は幅方向に設けてもよいし長さ方向や斜め方向でもよい。図の実施例では幅方向に設けている。スリット5の形状は
図5から分かるように、室内側の面1c側からプレス成形で波形に形成されており、波形のリブ8の間にスリット5が形成されている。このリブ8間の開口幅が、打ち込み側の面1cから打ち抜き側の面1dに向けて次第に幅が狭くなるように形成されており、スリット5の幅はビス又はステープルなどの天井板固定部材7の打ち込み部分の直径より狭く形成されている。そしてスリット5を構成するリブ8間には、隣接するリブ8をつなぐ連結部9がスリット5の全長にわたって所定間隔で設けられている。
【0018】
天井板11は周知のものが使用され、一般的には軽量なロックウール板が使用される。そして、天井板固定部材7は前述のようにビス又はステープルなどが用いられる。
【0019】
Tバー1は
図1、2に示すように、格子状に組まれ、その交差部分の適所においてハンガー2が取り付けられ、躯体から吊設された吊りボルト3にて室内空間の天井部分に鋼製下地10とて吊設される。この鋼製下地10では、Tバー1のフランジ部1bの室内側の面は面一になるように組まれる。なお、Tバー1の数は必要に応じて増減可能であるので、鋼製下地10のグリッドは正方形になるとは限らない。
【0020】
このように鋼製下地10が天井部分に組まれると、次に、鋼製下地10に対して室内側から天井板11は張り付けられることになる。天井板11の張り付け作業は、直接、天井板固定部材7を打ち付けて天井板11をフランジ部1bに固定していてもよいが、接着剤12による仮止め行い、然る後、天井板固定部材7によって行ってもよい。以下の説明では、接着剤12と天井板固定部材7の併用による天井板張着作業を代表例として説明する。
【0021】
上記のように天井部分に組まれた鋼製下地10のフランジ部1bの室内側の面1cまたは天井板11の四周の適所に接着剤12を塗布し、天井板11の四周をフランジ部1bに押圧して張り付けて行く。天井板11によって押圧された接着剤12は波形のリブ8の側面にそってリブ8間に押し込まれ、スリット5から漏れ出す。このようにして順次天井板11を鋼製下地10の全面に隙間なく仮接着する。
【0022】
続いて、仮接着された天井板11の四周に天井板固定部材7を打ち込む。打ち込まれた天井板固定部材7の打ち込み部分7aは天井板11を貫通し、リブ8の側面に接触して滑り、強度の弱いステープルのような天井板固定部材7であっても簡単にスリット5に打ち込まれる。スリット5の打ち込まれた部分は変形し、同時にスリット5全体が若干口を開く。この時、若干口を開いたスリット5は口を閉じる方向に弾性力が作用し、打ち込み部分7aに食い込む。この時、隣接するリブ8の連結部9は、スリット長さを短くするため、この打ち込みに対してスリット5の口を閉じる方向の弾性力を強めることになる。
【0023】
このようにして、天井板11の四周は打ち込まれた天井板固定部材7と、スリット5から外にはみ出て固定した接着剤12との働きでフランジ部1bの室内側に強固に固定される。天井板11は鋼製下地10の室内側の面1c全面に隙間なく施工されることになるので、フランジ部1bは天井板11に隠されて露出せず、天井の意匠性が高められる。
【符号の説明】
【0024】
1:Tバー、1a:縦片、1b:フランジ部、2:ハンガー部材、3:吊りボルト、4:天井板、5:スリット、7:天井板固定部材、7a:打ち込み部分、8:リブ、9:連結部、10:鋼製下地、11:天井板、12:接着剤。