特許第5798599号(P5798599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798599無線タグ通信装置及び無線タグ通信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798599
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】無線タグ通信装置及び無線タグ通信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20151001BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20151001BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H04B1/59
   H04B5/02
   H04M1/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-162237(P2013-162237)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-33033(P2015-33033A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2014年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槌田 直
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貢一
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 順
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−088973(JP,A)
【文献】 特開2009−070035(JP,A)
【文献】 特開2009−080743(JP,A)
【文献】 特開2006−127250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
H04B 5/02
H04M 1/00
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグと通信する無線タグ通信装置であって、
対象の無線タグを指定して前記無線タグに記憶されたタグ情報を読取る通信部と、
前記通信部による前記タグ情報の読取状態を判定する読取状態判定部と、
前記読取状態判定部の判定結果に応じて前記無線タグに送信する電波出力を決定する出力調整部と、
前記通信部を介して受信した前記無線タグからの応答信号の信号強度を検出する信号強度検出部と、
前記通信部の動作モードを、前記出力調整部により前記電波出力を増減しながら前記無線タグと通信する遠距離モードと、前記出力調整部により前記電波出力を固定して、前記信号強度検出部により信号強度を検出しながら前記無線タグと通信する近距離モードとに切り替える制御部と、
を備えた無線タグ通信装置。
【請求項2】
通知部を備え、前記近距離モードにおいて、前記信号強度検出部により検出した信号強度に応じて前記無線タグの読取状態を前記通知部から通知する請求項1記載の無線タグ通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記出力調整部により決定した電波出力が予め設定した閾値になった場合に、前記遠距離モードから前記近距離モードに切り替える請求項1又は2記載の無線タグ通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記遠距離モードにおいても前記無線タグからの応答信号の信号強度を検出し、前記信号強度検出部による信号強度が予め設定した閾値より大きくなった場合に、前記遠距離モードから前記近距離モードに切り替える請求項1乃至3のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項5】
前記信号強度検出部で検出した信号強度を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記遠距離モードにおいても前記無線タグからの応答信号の信号強度を検出し、前記記憶部に記憶された所定の期間の信号強度の差が予め設定した値以下になった場合に、前記遠距離モードから前記近距離モードに切り替える請求項1乃至4のいずれか1項記載の無線タグ通信装置。
【請求項6】
無線タグと通信し、前記無線タグに記憶されたタグ情報を読取って処理するプログラムであって、コンピュータに、
対象の無線タグを指定して前記無線タグに記憶されたタグ情報を読取る通信機能と、
前記タグ情報の読取状態を判定する読取状態判定機能と、
前記読取状態の判定結果に応じて前記無線タグに送信する電波出力を決定する出力調整機能と、
前記無線タグからの応答信号の信号強度を検出する信号強度検出機能と、
前記通信機能での読取り動作モードを、前記電波出力を増減しながら前記無線タグと通信する遠距離モードと、前記電波出力を固定して、前記応答信号の信号強度を検出しながら前記無線タグと通信する近距離モードとに切り替える制御機能と、
を実現させるための無線タグ通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非接触で無線タグと通信する無線タグ通信装置及び無線タグ通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線タグシステムが注目されている。無線タグシステムは、ICチップとアンテナから成る無線タグを物品に取り付け、ICチップ内のメモリに格納されたID情報を、無線タグ通信装置により非接触で読取るものである。
【0003】
無線タグを利用したシステムとして、それぞれ個別のIDを保持した無線タグを物品に貼付し、それら物品が多数あるエリア内で、無線タグ通信装置を使って特定の無線タグを探索する例がある。
【0004】
無線タグを探索する方法としては、例えば、特許文献1に記載の無線タグ情報読取り装置が知られている。この無線タグ情報読取り装置は、無線通信手段によって無線タグと通信を行い、対象となる無線タグのタグ識別情報を取得した後、無線タグ通信装置の送信出力を制御し、通信可能範囲を縮小したり拡大したりしながら再度無線通信手段でタグ識別情報の取得を試み、これを繰り返すことで無線タグの存在位置を検出するものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、送信出力の調整により無線タグの位置を検出する方法では、無線タグが数十cm近傍の範囲にある状態において、無線タグの情報を読取り可能な最小の送信出力に設定した場合でも、無線タグの種類や取り付け環境の影響を受けて、対象の無線タグが直ぐそばにあるにも拘わらず対象とは異なる無線タグの情報を読取ってしまうことがあり、誤った無線タグを対象の無線タグと認識してしまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−88743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、探索対象の無線タグとの距離が遠方から近距離に近づいて無線タグを特定するまで、無線タグの探索を補助することができる無線タグ通信装置及び無線タグ通信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る無線タグ通信装置は、対象の無線タグを指定して前記無線タグに記憶されたタグ情報を読取る通信部と、前記通信部による前記タグ情報の読取状態を判定する読取状態判定部と、前記読取状態判定部の判定結果に応じて前記無線タグに送信する電波出力を決定する出力調整部と、前記通信部を介して受信した前記無線タグからの応答信号の信号強度を検出する信号強度検出部と、前記通信部の動作モードを、前記出力調整部により前記電波出力を増減しながら前記無線タグと通信する遠距離モードと、前記出力調整部により前記電波出力を固定して、前記信号強度検出部により信号強度を検出しながら前記無線タグと通信する近距離モードとに切り替える制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る無線タグ通信装置の全体を示す斜視図、及びアンテナの断面図。
図2】一実施形態に係る無線タグ通信装置の電気的構成を示すブロック図。
図3】一実施形態における通信部の構成例を示すブロック図。
図4】一実施形態における読取状態判定部の構成を示すブロック図。
図5】一実施形態において無線タグ通信装置が移動したときの通信可能範囲の変化を示す説明図。
図6】一実施形態における無線タグ探索の全体的な動作を示すフローチャート。
図7】無線タグ探索の遠距離モードでの動作を示すフローチャート。
図8】無線タグ探索の近距離モードでの動作を示すフローチャート。
図9A】一実施形態に係る表示部での表示画面の一例を示す説明図。
図9B】一実施形態に係る表示部での表示状態の変化の一例を示す説明図。
図9C】一実施形態に係る表示部での表示状態の変化の他の例を示す説明図。
図10】一実施形態に係る表示部での表示画面の他の例を示す説明図。
図11】第2の実施形態に係る無線タグ通信システムの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係る無線タグ通信装置10を示す斜視図である。無線タグ通信装置10は、本体11と、本体11にアンテナケーブル12により接続されたアンテナ13から成る。
【0012】
本体11は、使用者が入力する入力キー部14や、実行する業務、通信装置の状態、或は通信結果などを表示する表示部15を含む。アンテナ13は、グリップ16や筐体17を有する。グリップ16は、使用者がアンテナを持つ場合の取っ手である。尚、アンテナ13と本体11を連結して一体化した構成にしてもよい。
【0013】
図1(b)は、アンテナ13の構成の一例を示す断面図である。アンテナ13は、板状の誘電体131の一方の面に放射器132を有し、他方の面に地板(GND)133を有する平面パッチアンテナである。アンテナ13は、一方の面の中心に対して略垂直方向に最大利得Mを持つ指向性を有している。この無線タグ通信装置10は、所定のエリア内に複数ある無線タグのうちの1つを指定して通信を行う。無線タグはRFID(Radio Frequency Identification)タグとも呼ばれる。
【0014】
尚、無線タグは、所定のエリアに置かれた商品や機器などの物品に貼付されており、それぞれの無線タグの記憶部には、無線タグを特定するID情報(タグ情報)が格納されている。無線タグ11は、以下、単にタグ11と呼ぶこともある。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る無線タグ通信装置10の電気的構成を示すブロック図である。無線タグ通信装置10は、アンテナ13と、アンテナ13を介して無線タグと通信を行う通信部20と、通信部20を制御する通信制御部21を有する。通信制御部21には、アンテナ13と無線タグとの通信結果から読取状態を検出し判定する読取状態判定部22と、判定結果に基づいてアンテナ13から送信する送信電力を決定する出力調整部23と、アンテナ13で受信した無線タグからの応答信号の信号強度を検出する信号強度検出部24が接続されている。
【0016】
制御部である通信制御部21は、出力調整部23で決定した送信電力に応じた制御信号を通信部20に伝送すると共に、読取状態や、送信電力、信号強度から、通信部20の動作モードを後述する遠距離モードと近距離モードとに切り替え制御する。
【0017】
信号強度検出部24は、通信部20に接続され、信号強度演算部241と信号強度記憶部242を含む。信号強度記憶部242は記憶回路により構成され、信号強度を時系列的に記憶する。信号強度演算部241は、予め定めた期間の信号強度記憶部242に記憶された信号強度から、最大の信号強度と最小の信号強度の差分Drssiを算出する。
【0018】
また通信制御部21には、入力部25と、通知部26が接続されている。入力部25は、入力キー14とマウス251と無線タグ指定部252とを含む。無線タグ指定部252は、通信を行う無線タグを指定するものであり、入力キー14またはマウス251によって使用者が入力を行うことにより、無線タグの指定及び閾値の指定が行われる。通知部26は、表示部15と音出力部261を含み、無線タグの読取状態などを使用者に伝えるため表示部15に表示する。また音出力部261は、無線タグのタグ情報を読取ったときや所定の状態になったときに音を発する。
【0019】
また無線タグ通信装置10は、上位機器であるコンピュータなどと通信を行うインターフェース(IF)部27と、無線タグ通信装置10の各部に電源を供給する電源部28と、無線タグ通信装置10の各部を制御する全体制御部29を有する。電源部28は、バッテリとこのバッテリの充放電を制御する制御回路を含み、電源部28から各部に電源が供給される。
【0020】
全体制御部29は、各部を制御するCPU291を含む。全体制御部29は、コンピュータを構成するもので、通信制御部21等の無線タグ通信装置10の各部を制御して無線タグ通信装置10の全体を制御する。また全体制御部29は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)からなる記憶部292を有し、記憶部292のROMには、全体制御部29が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。RAMには、全体制御部29の作用により可変的なデータが一時的に書き込まれる。尚、図を見易くするために、全体制御部29からの制御ラインを意味する線や矢印は示していない。
【0021】
図3は、通信部20の構成を示すブロック図である。通信部20は無線部30と質問応答生成検出部40を有する。無線部30は、第1端子aをアンテナ13に接続した方向性結合器であるサーキュレータ31を有する。サーキュレータ31の第2端子bは電力増幅部32の出力端子に接続され、電力増幅部32の入力端子は振幅変調部33の出力端子に接続している。またサーキュレータ31の第3端子cは、乗算器341、342のそれぞれの入力端子に接続されている。乗算器341には局部発振器35からの発振出力が供給され、乗算器342には、局部発振器35の発振出力を90度移相器36によって移相した出力が供給される。また振幅変調部33には、局部発振器35からの発振出力が供給される。
【0022】
サーキュレータ31は、第2端子b、第1端子a、第3端子cの順序に信号の方向性を有し、第2端子bに供給された電力増幅部32の出力は、第1端子aからアンテナ13に供給される。また、第1端子aに入ってくるアンテナ13からの受信信号は、第3端子cから乗算器341、342に供給される。電力増幅部32には、出力調整部23で決定された送信電力に応じた制御信号が通信制御部21から供給され、電力増幅部32の増幅度を増減してアンテナ13から送信される電力の大きさを変える。これにより、通信制御部21からの制御信号によって送信電力が適切に設定できる。尚、通信制御部21または全体制御部29には、例えばISO18000−6 type Cに準拠したRFIDタグの通信プロトコル機能が搭載される。
【0023】
無線タグがバッテリを持たないパッシブタグの場合には、先ず、無変調波を電力増幅部32で増幅して、サーキュレータ31を介してアンテナ13から電磁波を出力して無線タグを起動させる。無線タグにデータを送信する場合には、振幅変調部33にて、符号化部44(後述)で符号化した信号を局部発振器34の出力により振幅変調を行う。
【0024】
無線タグから信号を受信するときには、無線タグ通信装置10から無変調搬送波を送信している状態で、無線タグがアンテナ端のインピーダンスを制御(バックスキャッタ)し、これによって反射状態が変わり、これを無線タグ通信装置10のアンテナ13で検出する。受信した電磁波信号は、サーキュレータ31を介して直交復調され、例えば同期クロックを生成して、予め決められたプリアンブルを検出して、データの先頭を検出し、復号して受信データを得る。また、誤り検出符号によって、誤りの有無を検出することもできる。図3に示す構成では、直交復調の同相成分での復調と直交成分での復調のどちらかで誤りがなければ正しくデータを受信したものとする構成になっている。
【0025】
質問応答生成検出部40は、乗算器341の乗算出力を入力信号としてI信号成分を復調するI信号成分復調部411と、上記乗算器342の乗算出力を入力信号としてQ信号成分を復調するQ信号成分復調部412を有する。I信号成分復調部411とQ信号成分復調部412の出力は、応答信号検出部42に供給され、応答信号検出部42はI信号成分復調部411とQ信号成分復調部412において復調された信号をもとに、無線タグから送信されてきた応答信号を検出する。
【0026】
また応答信号検出部42は、質問信号生成部43を介して符号化部44に接続される。質問信号生成部43は、無線タグに送信する質問信号を生成し、符号化部44は、質問信号生成部43により生成された質問信号を符号化し、符号化した質問信号を振幅変調部33に送る。さらに、I信号成分復調部411及びQ信号成分復調部412に入力されるI信号成分及びQ信号成分は、受信信号レベル検出部45に入力され、受信信号レベル検出部45は、I信号成分及びQ信号成分から受信信号レベルを検出する。
【0027】
受信信号レベル検出部45は、I信号とQ信号の振幅の大きい方を検出して出力する。あるいは、I信号とQ信号は直交しているので、(1)式で示すようにベクトル合成した振幅を検出して出力してもよい。尚、(1)式において、IとQはそれぞれ、I信号の振幅、Q信号の振幅を示す。
【数1】
【0028】
受信信号レベル検出部45の出力は、信号強度検出部24に供給される。符号化部44の出力、すなわち符号化された質問信号は、振幅変調部33に入力される。振幅変調部33では、局部発振器34から入力される発振信号により質問信号を振幅変調し、変調信号である質問信号を電力増幅部32で電力増幅してサーキュレータ31からアンテナ13に送り、無線タグに向けて送信される。
【0029】
質問信号生成部43は、生成した質問信号を符号化部44に送信するとともに、読取状態判定部22に質問信号を生成したことを示す信号を送信する。また応答信号検出部42にて得られた応答信号は通知部26に送られ、無線タグから応答があったことを表示部15に表示したり、音出力部261により音で使用者に通知する。また、応答信号は読取状態判定部22にも送られる。
【0030】
図4は、読取状態判定部22の構成例を示すブロック図である。読取状態判定部22は、読取判定部221、読取状態記憶部222、読取状態検出部223及び状態比較部224を有する。
【0031】
読取判定部221は、通信部20の応答信号検出部42からの信号と質問信号生成部43からの信号を受けて、無線タグの読取りに成功したか否かを判定する。尚、「無線タグの読取り」とは、無線タグに記憶されたタグ情報を読取ることを意味する。読読取状態記憶部222は、読取判定部221の判定結果を時系列的に記憶する。読取状態検出部223は、読取状態記憶部222に記憶された読取判定結果から読取状態を検出する。状態比較部224は、読取状態検出部223の出力を予め設定した読取状態と比較する。読取状態検出部223の検出結果は通信制御部21に送られる。状態比較部224は、その比較結果に応じて送信出力を変更する必要があれば、送信電力調整信号が出力調整部23に送られる。
【0032】
尚、ここで読取状態とは、所定時間内に無線タグから正しく情報を入手できた回数(読取回数)、或いは読取率、または無線タグの読取りに連続して成功している回数、及び連続して失敗している回数を意味する。この読取状態を、検出読取状態値Rで表す。読取状態として、無線タグの読取りに連続して成功している回数、及び連続して失敗している回数を用いる場合には、検出読取状態値Rは、無線タグの読取りに連続して成功している場合は正の数を、連続して失敗している場合は負の数を用いる。
【0033】
次に、無線タグ通信装置10の無線タグとの通信動作を、図5を参照して説明する。図5は、無線タグ通信装置10が移動したときの通信可能範囲の変化を示す説明図であり、無線タグB1〜B5、C1〜C10、D1〜D10が混然となっている領域の中で、例えば無線タグD8と通信を行う場合を説明する。
【0034】
尚、無線タグ(B1〜B5、C1〜C10、D1〜D10)には、それぞれのID情報(タグ情報)が記憶されており、無線タグ通信装置10は、無線タグを指定する際には、タグ情報を入力部25から入力する。以下の説明では無線タグを単にタグと呼ぶこともある。
【0035】
本体11とアンテナ13から成る無線タグ通信装置10は、移動可能なモバイル型であり、使用者は位置Aから位置Bに移りさらに位置Cに移動する。使用者が位置Aにいて、送信電力P1で無線タグと無線通信できる領域を通信可能領域AP1で表す。また送信電力P2で無線タグと無線通信できる領域を通信可能領域AP2で表す。以下同様に、位置B,Cと送信電力P2,P3,P4の組み合わせで、各々の場合に無線タグと通信できる通信可能領域をBP2,BP3、CP3,CP4で表示する。また位置C’と送信電力P3の組み合わせの場合に無線タグと通信できる通信可能領域をCP3’で表示する。
【0036】
無線タグ通信装置10により無線タグD8を探索する際の動作を、図6のフローチャートに示す。まず位置Aにいる使用者が、入力部25の入力キー14を操作することにより無線タグ指定部252で無線タグD8を指定する。
【0037】
使用者は、位置Aにおいて、送信電力P1で無線タグD8の探索及びこの無線タグからの情報の読取りを開始する。この場合の通信可能領域AP1は太い実線で示す領域であり、探索及び情報の読取りを開始する領域は十分広い範囲となるよう、送信電力を大きくする(電力P1)。
【0038】
図6の動作(Act.)A0では、探索対象の無線タグのIDと送信電力の初期値P1を設定する。この場合の通信可能領域AP1には、無線タグD8が入っており、使用者は本体11とアンテナ13を少し動かすことで無線タグD8から情報を読取ることができる。次の動作A1では、探索モードを遠距離モードにして無線タグの探索を行い、動作A2では、探索モードを近距離モードに変更して無線タグの探索を行う。
【0039】
遠距離モードA1について、図7を参照して説明する。図7は、無線タグ探索の遠距離モードでの動作を示すフローチャートであり、動作A11で、無線タグの読取りを行う。動作A12では、読取状態を読取状態判定部22の読取状態検出部223で検出する。
【0040】
動作A13では、読取判定部221で判定された無線タグの読取りに成功したか否かの結果を判定し、読取りに成功した場合は、動作A14において、通知部26によって無線タグの読取りに成功したことを示す通知を行い、また信号強度検出部24で無線タグからの応答信号のレベルを検出する。通知は、例えば、音出力部261よりビープ音を出力する。
【0041】
次に動作A15では、検出読取状態値Rが第1の閾値a(第1の読取状態値)より大きいか否かの比較を、読取状態判定部22の状態比較部224で行う。状態比較部44で読取状態(検出読取状態値R)と閾値aを比較し、検出読取状態値Rが閾値aを超えていない場合(動作A15の判断がNOの場合)には、動作A11に戻り、読取状態が閾値aを超えている場合(動作A15の判断がYESの場合)には、読取状態が良好と判断し、動作A16へ進む。
【0042】
使用者が位置Aで矢印51の方向にアンテナ13を向けている場合には、図5に示すように、探索対象の無線タグD8は通信可能領域AP1に入っており通信状態は良好となる。
【0043】
検出読取状態値Rが、閾値aより大きいときには、動作A16において、モード切替条件Aを満たしているか否かが通信制御部21で判定される。動作A16において、モード切替条件Aを達成してない場合(動作A16の判断がNOの場合)には、動作A17において、読取状態判定部22から出力調整部23へ送信電力調整信号を送り、送信電力を1ステップ下げる。そして、動作A11に戻る。
【0044】
一方、動作A13において、読取りが失敗したと判定された場合(動作A13の判断がNOの場合)は、動作A18に移り、読取状態検出部22の状態比較部44は、検出読取状態値Rが第2の閾値b(第2の読取状態値)より小さいか否かの比較を行う。ここで、閾値bは閾値aより小さい値とする。
【0045】
動作A18において、検出読取状態値Rが閾値bより小さいとき(動作A18の判断がYESのとき)には、動作A19において、読取状態判定部22から出力調整部23へ送信電力調整信号を送り、送信電力を1ステップ上げ、動作A11に戻る。検出読取状態値Rが、閾値bより小さくなるのは、例えば図5において使用者が位置C′の位置に移動して、無線タグD8とまったく通信できなくなったときなどに生ずる。また、動作A18において、検出読取状態値Rが閾値bよりも大きいとき(動作A18の判断がNOの場合)には、動作A11に戻る。
【0046】
また、動作A16において、モード切替条件Aを満たしている場合(動作A16の判断がYESの場合)は、近距離モードに移行し、通知部26より近距離モードに移行したことを示す通知を行う。通知は、例えば表示部15に近距離モードに移行したことを示す文字や画像を表示する。または、音出力部261からブザーなどの音を出力する。
【0047】
近距離モードに切り替わるモード切替条件Aとしては、下記の(1)〜(4)の4つの条件が挙げられる。
【0048】
(1)現在の送信電力値Pと予め定められた送信電力値Pminを比較し、同じ値であるとき。尚、送信電力値Pminは50cm程度離れた無線タグをほぼ確実に読取ることができる出力に設定する。
(2)条件(1)を満たし検出読取状態値Rが第3の閾値c以上であるとき。(閾値b,cの関係は、c>bである)。
(3)信号強度検出部21により検出された応答信号のレベルが第4の閾値d以上であるとき。尚、第4の閾値dは50cm程度離れた無線タグを読取った際の応答信号レベルに設定することが望ましい。
(4)信号強度検出部21の信号強度演算部241で算出されたDrssiが第5の閾値e以下であるとき。尚、第5の閾値eは無線タグから数m以上離れた状態でのDrssiと比較し、十分小さい値に設定することが望ましい。
【0049】
通信制御部21は上記いずれかの条件を満たした場合に、モード切替条件Aを満たしたと判定する。或いは、上記(1)〜(4)の条件のうちの1つを設定しておき、設定した条件を満たした場合にモード切替条件Aを満たしたと判定する。
【0050】
上記のように設定することで、無線タグの周囲にある物品などからの反射の影響を抑えることができ、且つ無線タグを読取ることができる十分な送信電力であるため、後述する近距離モードでの周囲環境の影響による応答信号レベルの変動を抑えることができ、さらに安定した読取りが可能となる。
【0051】
このようにして、位置Aにおいて、最初送信電力P1で信号が送信され、読取状態が良好な場合には、徐々に送信電力を下げていく。そして、送信電力が小さくなり、検出読取状態値Rが閾値bよりも小さい場合には、送信電力を1ステップ上げる。したがって、位置Aで最初の送信電力P1を送信するときには、通信可能領域はAP1であるが、徐々に送信電力が小さくされ、通信可能領域は無線タグD8に送信電力が適度に届く通信可能領域AP2(このときの送信電力はP2)となる。
【0052】
図5において、使用者が矢印51に従って位置Bに移動すると、通信可能領域はBP2となる。位置Bは、無線タグD8に近づいているから先の送信電力P2で送信すれば当然、無線タグD8よりも遠くまでをカバーすることになる。図5において通信可能領域BP2がこのことを表している。
【0053】
この状態から、図7のフローチャートで動作A11から動作させると、読取状態が良好であり、動作A16でモード切替条件Aを満たさない限り動作A12〜A17に行き、更に動作A11に戻るので、送信電力は小さくなる。反面、第2の閾値bより検出読取状態値Rが小さくなる(読取状態が悪くなる)と、送信電力を1ステップ上げる(動作A13→A18→A19→A11)ので、送信電力はP3となり、通信可能領域は位置Bから辛うじて無線タグD8に電波が届くBP3になる。
【0054】
更に、使用者が矢印52にしたがって位置Cに移動し、この位置から送信電力P3で無線タグD8の探索を継続する。このときの通信可能領域は、CP3である。この位置Cにおいても同様にして送信電力を1ステップずつ下げていき、無線タグD8に辛うじて送信電波が届く送信電力P4となり、通信可能領域がCP4となる。こうして、本体11とアンテナ13を有する無線タグ通信装置10を携えて無線タグD8に近づいていくと、無線タグとの通信が可能な範囲で送信電力を小さくすることができる。
【0055】
動作A14では、読取成功の通知の他に、送信電力の増減を通知してもよい。例えば、表示部15の表示画面上に現在の送信電力値を表示したり、送信電力が増減された際に音出力部261からブザーなどの音を出力する。また、読取成功に伴い、音出力部261からビープ音などの音を出力する場合は、送信電力に応じて音の出力回数を変更したり、音程を変更してもよく、例えば、送信電力が小さい程、音程を高くする。
【0056】
上述したように、無線タグとの通信状態はビープ音などを発したり、或いは示部15に表示されるため、使用者は探索対象の無線タグの方向を検出することができる。使用者が位置Aに留まった状態では、図7のフローチャートにより、送信電力が下がっていくため、送信電力がP2になると読取状態が閾値a以下になるが、使用者が、検出した方向に進んでいけば、図5に示す位置B、位置Cを通って、読取状態良好のまま探索対象の無線タグD8の近傍に辿り着くことができる。そして、モード切替条件Aを満たすと近距離モードに切り替わる。
【0057】
また、使用者が無線タグを検出した方向に向かって動くのよりも、出力調整部23が送信電力を下げるのが早い場合には、読取状態は閾値aを超えない。読取状態が第1の閾値a以下で第2の閾値b以上の場合には、送信電力は変わらない。したがって、使用者が位置Aに留まっている場合には、送信出力を維持することになる。
【0058】
また、使用者が探索対象の無線タグD8の方向とは異なる方向(例えば矢印53)に進んでしまうこともある。使用者が図5に示すように位置C'に行った場合には、読取状態は第2の閾値bを下回ってしまう。読取状態がこの閾値bを下回った場合には、読取状態判定部22は、探索対象の無線タグD8を見失ったと判断し、出力調整部23が送信電力を1ステップ上げ、通信可能範囲を広げる。
【0059】
読取状態に応じて送信電力を増減することで、使用者は対象の無線タグD8に近づくことができる。そして、探索のモードが遠距離モードから近距離モードに切り替わり、無線タグD8の特定を行う。
【0060】
次に、近距離モードの動作について、図8を用いて説明する。図8は、無線タグ探索の近距離モードでの動作を示すフローチャートである。
【0061】
動作A21では無線タグの読取りを行い、動作A22では、読取状態判定部22の読取状態検出部223で無線タグの読取状態を検出する。次に動作A23では、読取判定部221での判定結果(無線タグの読取りに成功したか否か)を判定する。読取りに成功した場合(動作A23の判定がYESの場合)は、動作A24において、信号強度検出部24で無線タグからの応答信号のレベルを検出する。
【0062】
次に動作A25では、読取りに成功した旨を伝える通知と、信号強度検出部24で検出した応答信号のレベルに応じた通知を通知部26にて行う。通知は、表示部15に表示したり、音出力部261から音を出力する。例えば、読取りに成功した場合には、音出力部261からビープ音を出力し、表示部15の表示画面上に応答信号レベルを表示する。応答信号レベルの表示は、数値の表示の他に、レベルメーターや、レベルに応じた円などの図形の表示が考えられる。また、応答信号レベルに応じて、読取成功を示すビープ音を鳴らす回数や音程を変更することが考えられる。
【0063】
一方、動作A23で読取に失敗したと判定された場合(動作A23の判定がNOの場合)には、動作A26に移行し、状態比較部224によって検出読取状態値Rが第6の閾値f(閾値f<閾値a)より小さいか否かの比較を行う。比較の結果、検出読取状態値Rが閾値fより小さい場合(動作A26の判定がYESの場合)は、読取状態が悪いと判断され、遠距離モードに戻る。これは、使用者が対象の無線タグD8とは異なる方向に移動してしまった場合であり、例えば、図5の位置Cから位置C’に移動した場合に当たる。
【0064】
近距離モードでは、送信電力は固定のため、無線タグD8を読取ることができず、そのため応答信号レベルの検出も行えない。このような場合には、検出読取状態値Rが閾値fより小さくなり、遠距離モードに戻り、図7の動作A19で送信電力を上げることで、読取りが可能となる。そして、再度モード切替条件Aを満たした場合に近距離モードに戻る。
【0065】
一方、検出読取状態値Rが閾値f以上の場合(動作A26の判定がNOの場合)は、動作A21に戻り、使用者がタグを特定できるまで、動作A21〜A25を繰り返す。
【0066】
上述したように、近距離モードでは、対象の無線タグD8の読取りに成功した場合に、読取成功の通知に加えて、応答信号レベルに応じた通知が行われる。例えば、応答信号レベルが表示部15の表示画面上に数値として表示される場合には、使用者は数値が大きくなる方向に進むことで、対象の無線タグD8の極近傍に辿り着くことができ、容易に無線タグを特定することができる。
【0067】
このように、無線タグの探索開始直後は探索モードを遠距離モードとし、無線タグの読取状態に応じて送信電力を増減することで、通信可能範囲を制御する。送信電力の初期値P1を大きな値とすることで、使用者は無線タグから数m以上離れた地点から、読取成功の通知などを頼りに対象の無線タグの方向を知ることができ、対象の無線タグに近づくことができる。
【0068】
そして、モード切替条件Aを満たした場合には、探索モードが近距離モードに変更され、応答信号レベルに応じた通知が行われる。この際、遠距離モードにより対象の無線タグの近傍(数十cm程度)に近づいており、また送信電力が下げられて必要以上に大きな電力ではないため、周囲環境の影響による応答信号レベルの変動が小さく、応答信号レベルの強い方向を容易に探すことができる。これにより、使用者は容易に対象の無線タグの特定を行うことができる。
【0069】
ここで、近距離モードにおいて送信電力を固定する理由を述べる。即ち、近距離モード時に送信出力を固定することにより、安定して無線タグのタグ情報を読取ることができ、無線タグからの応答信号の強度(RSSI)の検出を行うことができる。近距離モードでの固定の送信出力を、例えば無線タグとの距離が50cm程度のときに安定して読取れる出力に設定すると、無線タグに近づく(又はアンテナが無線タグの方向に向く)につれて、応答信号の強度が高くなり、ユーザが無線タグに近づいていることを認識できる。
【0070】
また、タグの種類や取付け環境が異なり、無線タグを読取りにくい場合でも、近距離モードでの送信出力は、無線タグを読取れる最小出力よりも高く設定されるため、タグを読取りやすく応答信号の強度を検出できる。但し、非常に読取りにくい無線タグは除く。逆に読取りやすい場合は、無線タグを読取れる範囲が広くなるが、探索開始時よりも十分に範囲を絞り込むことができ、応答信号の強度(RSSI)を頼りにタグの特定を行うことができる。
【0071】
一方で、近距離モードにおいても、遠距離モードと同様に送信出力を下げると、送信出力に合わせてユーザがタグに近づく必要があり(近づかないとタグが読めない)、遠距離モードと変わらなくなってしまう。また、ある値まで送信出力を下げると、無線タグに近づいてもタグを読取れなくなってしまい、応答信号の強度(RSSI)を取得できなくなる。その際に、送信出力を増減制御すると、タグを読取れる(そのときのRSSIはXXとする)場合と、読取れない場合の繰り返しとなり、応答信号の強度(RSSI)は、「XX」か「未検出」の繰り返しとなる。そのため、無線タグの特定が行えなくなる。したがって、近距離モード時には送信出力を固定にしている。
【0072】
次に、探索動作中に表示部15に表示する画面について説明する。図9Aは表示部15に表示する探索動作中の表示画面の一例である。表示画面には、本体11と対象の無線タグとの相対距離、及び応答信号レベルに相当する情報を表示する探索補助画像61と、対象の無線タグのID情報を表示するタグID画像62が表示されている。探索補助画像61は、相対距離及び応答信号レベルの強さを表す目盛63と、目盛63の中心に表示され、本体11を表す自己位置画像64と、対象の無線タグを表すタグ画像65とで構成されている。目盛63の同心円の半径は本体11と対象の無線タグの相対距離を示している。
【0073】
図9Aは、探索を開始し、対象の無線タグを読取った際の表示画面である。探索開始直後の探索モードは、遠距離モードであり、相対距離は送信電力などから算出する。探索開始直後は、タグ画像65は目盛63の中心から離れた位置に表示され、図8の動作A17で送信出力が下げられる毎に、タグ画像65の表示位置は目盛63の中心に近づく。
【0074】
図9Bは、図8の動作A16でモード切替条件Aを満たす直前の表示画面である。タグ画像65は、自己位置画像64に重なり、対象の無線タグの近傍に近づいたことを意味する。ここで、モード切替条件Aを満たすと探索モードが近距離モードに切り替えられる。
【0075】
図9Cは、近距離モード時の表示画面である。タグ画像65は目盛63の中心に表示され、応答信号レベルの強さに応じて、その大きさ(半径)が大きくなる。タグ画像65の同心円の半径は応答信号レベルの強さを示している。
【0076】
図9B図9Cの表示により、無線タグ通信装置10の使用者は、遠距離モード時はタグ画像65の表示位置から、対象の無線タグに近づいているか、又は遠ざかっていることを認識することができる。近距離モード時では、タグ画像65の大きさで応答信号レベルの強さを認識することができ、タグ画像65が大きくなる方向に対象の無線タグがあると認識することができる。
【0077】
図9A図9Cは、本体11と対象の無線タグとの相対距離と、応答信号レベルの強さを1つの表示領域に表示しているが、相対距離表示と応答信号レベルの強さを別々に表示してもよい。
【0078】
図10は、表示部15での表示画面の他の例を示す説明図であり、相対距離表示と応答信号レベルの強さを別々に表示する表示画面の一例を示す。表示画面には、応答信号レベルを表す応答信号レベル画像71と、対象とする無線タグのID情報を表示するタグ画像72と、相対距離を表すレベルメーター73とが表示されている。
【0079】
応答信号レベル画像71は、目盛73と応答信号レベルの強さを表す円74とで構成されている。円74は応答信号レベルが強いほど、半径が大きくなる。レベルメーター73のバー75の長さは相対距離であり、長いほど本体11と対象の無線タグとの相対距離が近いこと示している。
【0080】
無線タグ通信装置10の使用者は、遠距離モード時には、レベルメーター73で相対距離を確認し、近距離モード時には、応答信号レベル画像71を確認することで、対象とする無線タグとの距離や無線タグの方向を知ることができる。
【0081】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、探索対象となっている無線タグとの距離が数m以上離れた遠方から、無線タグを特定するまで、無線タグの探索を補助することができる無線タグ通信装置が得られる。
【0082】
尚、第1の実施形態では、図1(a)に示すように、本体11とこの本体11にアンテナケーブル12により接続されたアンテナ13から成る無線タグ通信装置10を説明したが、図2の通信部20の機能のみを備えアンテナ13に接続された本体11と、図2のアンテナ13と通信部20を除いた機能を備えたコントローラとで構成しても良い。
【0083】
コントローラとしては、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの携帯端末が挙げられる。また、本体11とコントローラの接続はLANケーブルやUSBケーブルによる有線接続や、無線LANやBluetooth(登録商標)による無線接続が挙げられる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係る無線タグ通信装置について説明する。
【0085】
図11は、第2の実施形態に係る無線タグ通信システムのブロック図である。無線タグ通信システムは、無線タグ通信装置10と上位機器(サーバ)100とで構成した例である。図2と機能的に同じ部分には同一符号を付している。
【0086】
無線タグ通信装置10は、アンテナ13、通信部20、通信制御部21、入力部25、通知部26、電源部28を備える。一方、上位機器100は、全体制御部29、読取状態判定部22、出力調整部23、信号強度検出部24を備える。信号強度検出部24は信号強度演算部241と信号強度記憶部242を含む。全体制御部29は、CPU291を含む。
【0087】
全体制御部29は、コンピュータを構成するもので、上位機器100本体の動作を制御するとともに、通信制御部21等の無線タグ通信装置10の各部を制御して無線タグ通信装置10の全体を制御する。また全体制御部29は、ROMとRAMからなる記憶部292を有し、記憶部292のROMには、全体制御部29が使用するプログラムや設定データ等が予め格納されている。RAMには、全体制御部29の作用により可変的なデータが一時的に書き込まれる。
【0088】
上位機器100と無線タグ通信装置10は、インターフェース部(I/F部)271,272を有し、I/F部271,272は、通信回線80を介して接続され、無線タグ通信装置10と上位機器100との間の通信を行う。通信回線80は有線、無線を問わない。
【0089】
上位機器100の信号強度記憶部242には、無線タグ通信装置20の通信部10から送信されたタグを読取った際の応答信号強度が格納される。信号強度演算部241は、予め定めた期間の信号強度記憶部242に記憶された信号強度から、最大の信号強度と最小の信号強度の差分Drssiを算出し、算出結果を通信制御部21に送信する。読取状態判定部22は、通信部20から送信されたタグ読取情報に基づいて読取状態を検出し、検出結果を通信制御部21に送信する。また読取状態判定部22は、読取状態から出力調整が必要と判定した場合には、送信電力調整信号を出力調整部23に送信する。出力調整部23は、送信電力調整信号から送信電力を決定し、送信電力情報を通信制御部21に送信する。
【0090】
通信制御部21は、無線タグの読取状態や送信電力、信号強度から、遠距離モード機能と近距離モード機能とを切り替え、通信部20を制御する。また出力調整部23で決定した送信電力に応じた制御信号を通信部20に伝送する。
【0091】
図11の無線タグ通信システムの基本的な動作は、図2と同様であるが、無線タグ通信装置10の制御や無線タグの読取情報の記憶や、読取った情報の演算などは上位機器側で行い、演算結果をタグ通信装置10にて表示処理するようにしたものである。
【0092】
また上位機器100として、サーバを例に説明したが、上位機器100は、サーバ以外にノート型のパーソナルコンピュータ、スマートフォン(多機能携帯電話)、タブレット端末などで構成することもできる。
【0093】
第2の実施形態においても、探索対象となっている無線タグとの距離が数m以上離れた遠方から、無線タグを特定するまで、無線タグの探索を補助することができる。
【0094】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10…無線タグ通信装置
11…本体
13…アンテナ
20…通信部
21…通信制御部
22…読取状態判定部
23…出力調整部
24…信号強度検出部
25…入力部
26…通知部
27,271,272…インターフェース(I/F)部
28…電源部
29…全体制御部(CPU)
221…読取判定部
222…読取状態記憶部
223…読取状態検出部
224…状態比較部
100…上位機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11