特許第5798617号(P5798617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798617
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】装身機器、生体ガス測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20151001BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20151001BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20151001BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G01N1/22 B
   G01N33/497 A
   G01N33/50 Q
   A61B5/00 L
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-503562(P2013-503562)
(86)(22)【出願日】2012年3月6日
(86)【国際出願番号】JP2012055715
(87)【国際公開番号】WO2012121260
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2012年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-50744(P2011-50744)
(32)【優先日】2011年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森谷 優貴
(72)【発明者】
【氏名】檜山 聡
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−148692(JP,A)
【文献】 実開昭61−018106(JP,U)
【文献】 特開2004−294328(JP,A)
【文献】 特開2009−175111(JP,A)
【文献】 特開2009−257772(JP,A)
【文献】 特開2004−258761(JP,A)
【文献】 特開2006−075447(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3153528(JP,U)
【文献】 特開2007−000188(JP,A)
【文献】 実開平01−157711(JP,U)
【文献】 特開2008−200061(JP,A)
【文献】 特開2006−234845(JP,A)
【文献】 特表2009−512534(JP,A)
【文献】 特表2006−523127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0217102(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0276270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、33/48〜33/98、A61B5/00〜5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのに接して装着される音声機器であって、
前記ユーザによる当該音声機器の装着時に、前記ユーザの耳又は耳周辺の皮膚表面から放出される生体ガス成分が滞留する空間を形成するガス滞留構造と、
前記形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するガスセンサ装置と、
音波変換装置と、
を有し、
前記ガスセンサ装置は、前記ユーザの耳又は耳周辺の皮膚表面部位から放出される経皮ガス成分を測し、
前記音波変換装置は、前記ガスセンサ装置による測定結果を当該音声機器からの音声情報に重畳して出力する音声機器。
【請求項2】
前記ユーザの耳又は耳周辺の皮膚表面を含む前記形成された空間内の水分を除去又は抑制する水分除去・抑制機構をさらに有する、請求項1記載の音声機器。
【請求項3】
前記水分除去・抑制機構は、吸水剤、除湿剤、乾燥剤若しくは小型送風装置、又は吸水剤、除湿剤、乾燥剤若しくは小型送風装置の組み合わせによって構成される、請求項2記載の音声機器。
【請求項4】
当該音声機器は、前記ユーザによる当該音声機器の装着時に、前記経皮ガス成分を滞留可能な閉空間を形成可能である、請求項1記載の音声機器。
【請求項5】
前記ガスセンサ装置は、複数のガスセンサを有する、請求項1記載の音声機器。
【請求項6】
前記ガスセンサ装置は、前記ユーザの右耳又は右耳周辺の皮膚表面と左耳又は左耳周辺の皮膚表面とから放出される同一種類の経皮ガス成分を個別に測定する、請求項5記載の音声機器。
【請求項7】
前記ガスセンサ装置は、前記ユーザの右耳又は右耳周辺の皮膚表面と左耳又は左耳周辺の皮膚表面とから放出される異なる種類の経皮ガス成分を個別に測定する、請求項5記載の音声機器。
【請求項8】
当該音声機器はヘッドホンである、請求項1乃至7何れか一項記載の音声機器。
【請求項9】
当該音声機器はイヤホンである、請求項1乃至7何れか一項記載の音声機器。
【請求項10】
請求項1乃至9何れか一項記載の音声機器と、
前記音声機器に通信接続される携帯端末と、
を有する生体ガス測定装置であって、
前記携帯端末は、前記音声機器により測定された生体ガス成分を示す生体情報を受信し、前記生体情報を前記ユーザに提供する生体ガス測定装置。
【請求項11】
前記音声機器と前記携帯端末とは、ケーブル接続又は無線接続される、請求項10記載の生体ガス測定装置。
【請求項12】
前記携帯端末は、前記生体情報を前記携帯端末内の記憶装置に格納し、及び/又は前記生体情報をネットワークを介し接続されたサーバに送信する、請求項10記載の生体ガス測定装置。
【請求項13】
ユーザのに接して装着される音声機器をユーザが装着すると、前記音声機器のガスセンサ装置が、前記ユーザと前記音声機器との間に形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するステップと、
前記音声機器が、前記測定された生体ガス成分を示す生体情報を通信接続された携帯端末に送信するステップと、
前記携帯端末が、前記受信した生体情報を前記ユーザに提供するステップと、
を有する生体ガス測定方法であって、
前記測定するステップは、前記ユーザの耳又は耳周辺の皮膚表面部位から放出される経皮ガス成分を測定することを含み、
前記提供するステップは、前記ガスセンサ装置による測定結果を前記音声機器からの音声情報に重畳して出力することを含む生体ガス測定方法。
【請求項14】
前記ユーザと前記音声機器との間に形成された空間内の水分を除去又は抑制するステップをさらに有する、請求項13記載の生体ガス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体ガス測定装置及び方法に関し、より詳細には生体の皮膚表面や呼気から放出される生体ガスを測定する装身機器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体から発せられるガス成分を測定及び分析することで、生体の健康状態等に代表される生体情報を取得及び把握する技術が検討されてきた。例えば、特許文献1(特開2001−349888号公報)には、呼気ガスに含まれるアセトン濃度を検出することで、体脂肪の燃焼度合いを測定する手法が開示されている。また、特許文献2(特開2006−75447号公報)では、呼気ガスに含まれる水素を検出することで、腸内嫌気性細菌の異常増殖や消化不良症候群を検知する手法が開示されている。また、特許文献3(特開2009−257772号公報)及び特許文献4(特開2010−26746号公報)には、呼気ガス中の単一のガス成分だけでなく、アセトンや一酸化窒素、二酸化炭素、水素、アンモニアといった複数種類のガスの検出素子を備えることによって呼気中の複数種類のガスを検出することで、複雑な健康診断を実施する手法が開示されている。
【0003】
一方で、ユーザが検出装置に呼気ガスを吹きかける動作を必要とせず、連続的に測定を実施することを可能とする技術として、呼気ガスを対象とせず皮膚を通して放出される経皮ガスを測定し、上記生体情報を取得及び把握する技術が検討されてきた。例えば、特許文献5(特開2006−234845号公報)には、指や手のひらといった部位に装着し、当該部位から放出されるアセトンや水素といった皮膚透過ガス、すなわち、経皮ガスを測定することで利用者の健康状態を検知する手法が開示されている。また、特許文献6(特開2010−148692号公報)には、臍帯ベルト型の皮膚ガス検出装置が開示されており、生体の皮膚表面から放出される水素濃度を連続的に測定することで、健康状態を連続的にモニタできる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した呼気ガス測定技術は、呼気ガス中の成分を検出対象とすることから、検出のためにはユーザが専用の呼気ガス検出装置をわざわざ持ち歩く必要があるという問題がある。
【0005】
また、上述した経皮ガス測定技術は、経皮ガスを測定するために、日常生活では不要かつ不自然なガス測定装置をユーザが装着する必要があるため、ユーザに大きな負担を強いる問題がある。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、ユーザに与える負担を小さくしつつ、生体から放出されるガス成分を測定して、ユーザの健康状態等に代表される生体情報を、日常生活の中で自然に取得及び把握する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一特徴は、ユーザの皮膚に接して装着される装身機器であって、前記ユーザによる当該装身機器の装着時に、前記ユーザの皮膚表面又は呼気から放出される生体ガス成分が滞留する空間を形成するガス滞留構造と、前記形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するガスセンサ装置とを有する装身機器に関する。
【0008】
本発明の他の特徴は、ユーザの皮膚に接して装着される装身機器と、前記装身機器に通信接続される携帯端末とを有する生体ガス測定装置であって、前記装身機器は、前記ユーザによる当該装身機器の装着時に、前記ユーザの皮膚表面又は呼気から放出される生体ガス成分が滞留する空間を形成するガス滞留構造と、前記形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するガスセンサ装置とを有し、前記携帯端末は、前記装身機器により測定された生体ガス成分を示す生体情報を受信し、前記生体情報を前記ユーザに提供する生体ガス測定装置に関する。
【0009】
本発明の他の特徴は、ユーザの皮膚に接して装着される装身機器をユーザが装着すると、前記装身機器のガスセンサ装置が、前記ユーザと前記装身機器との間に形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するステップと、前記装身機器が、前記測定された生体ガス成分を示す生体情報を通信接続された携帯端末に送信するステップと、前記携帯端末が、前記受信した生体情報を前記ユーザに提供するステップとを有する生体ガス測定方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザが音楽や映像等を視聴する際や、アクセサリーを身に付ける際などに当該装置を装着することで、音楽や映像等の視聴やファッション性の呈示などと並行して皮膚表面や呼気から放出される生体ガス成分を測定することができるため、ユーザの生体ガス測定装置を装着する負荷を小さくしつつ、ユーザの健康状態等に代表される生体情報を、日常生活の中で自然に取得及び把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施例による生体ガス測定装置を説明するための概略図である。
図2図2は、本発明の他の実施例による生体ガス測定装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
ここでは、装身機器の代表例として装着型音波変換装置を取り上げ、図1を参照して、本発明の一実施例による生体ガス測定装置を説明する。図1は、本発明の一実施例による生体ガス測定装置を説明するための概略図である。
【0014】
図1に示されるように、本実施例による生体ガス測定装置10は、装着型音波変換装置20と、携帯端末30と、ケーブル40とを有する。装着型音波変換装置20は、ケーブル40を介し携帯端末30に通信接続される。
【0015】
装着型音波変換装置20は、典型的にはヘッドホンなどの装着時に耳に近接して配置されたスピーカーを介しユーザに音声を提供する装着型音声出力装置である。装着型音波変換装置20は、携帯端末30から送信される音声情報を表す電気信号を、ユーザが聴取可能な音波(音声)に変換するための音波変換機能を有する。
【0016】
本実施例の装着型音波変換装置20は、ユーザが装着型音波変換装置20を装着した際に、ユーザの耳皮膚表面から放出される経皮ガス成分を滞留させるための空間を形成するガス滞留構造50を有する。すなわち、ユーザが装着型音波変換装置20を装着すると、ユーザの耳周辺の皮膚と装着型音波変換装置20とが接触し、ユーザの耳周辺で閉空間が形成される。ユーザの耳皮膚表面から放出される経皮ガスが、この閉空間に滞留することとなる。なお、ユーザが装着型音波変換装置20を装着した際にユーザの耳周辺の皮膚と装着型音波変換装置20との間で形成される空間は閉空間であることが望ましいが、完全な閉空間でなくともよい。すなわち、耳表面から放出される経皮ガスが滞留可能な何れか適切な空間であればよい。また、装着型音波変換装置20は、経皮ガスがある程度滞留した後に当該空間から排出されるような構造となっていてもよい。
【0017】
なお、ユーザの皮膚表面を含む前記形成された空間内には、ユーザの皮膚表面からの発汗や水蒸気の発生、気温や湿度による影響などに起因して、水分が発生する可能性がある。測定対象となる経皮ガス成分に水溶性がある場合は特に、当該水分の影響で正しく経皮ガス成分の濃度を測定できない恐れがある。そこで本実施例では、装着型音波変換装置20はさらに、ユーザの皮膚表面を含むガス滞留構造50により形成された空間内の水分を除去又は抑制する水分除去・抑制機構100を有してもよい。具体的には、水分除去・抑制機構100は、吸水剤、除湿剤、乾燥剤、小型送風装置、のいずれか、またはこれらの組み合わせによって構成される。発生した水分を除去するための吸水剤、除湿剤、乾燥剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムやシリカゲル、酸化カルシウム、塩化カルシウム、活性炭、紙片、繊維などが使用できるが、これらに限定されない。また、例えば、小型送風装置にて皮膚表面に風を吹き掛けることで、皮膚表面を乾燥させ、水分が発生しにくい状態を作り出してもよい。
【0018】
また、水分除去・抑制機構100は、ガスセンサ装置200の測定タイミングと連係して何れか適切なタイミングで起動されてもよい。すなわち、水分除去・抑制機構100は、ガスセンサ装置200による経皮ガス成分の測定タイミング前に又は同時に、ガス滞留構造50により形成された空間内の水分を除去又は抑制するようにしてもよい。さらに、水分除去・抑制機構100は、それの実現形態に応じて何れか適切なタイミングで起動されてもよい。例えば、水分除去・抑制機構100が上述した吸水剤、除湿剤、乾燥剤などの吸湿剤により実現される場合、水分除去・抑制機構100は、ガスセンサ装置200による経皮ガス成分の測定タイミング前に又は同時に起動されてもよい。また、水分除去・抑制機構100が小型送風装置により実現される場合、水分除去・抑制機構100は、ガスセンサ装置200による経皮ガス成分の測定タイミング前に起動されてもよい。
【0019】
本実施例の装着型音波変換装置20は、耳表面から放出される経皮ガス成分を測定するガスセンサ装置200を有する。ガスセンサ装置200は、装着型音波変換装置20に固定され、装着時に形成された経皮ガス滞留空間に滞留する経皮ガス成分を測定する。ガスセンサ装置200は、例えば半導体式センサから構成され、形成された経皮ガス滞留空間に滞留する経皮ガス中のアセトン、水素、一酸化炭素、メタン、硫化水素、イソプレン、トリメチルアミン、アンモニア、メタノール、アセトアルデヒド、エタノール等の生体から発生する各種ガス成分を測定するセンサから構成される。なお、測定対象となるガス成分は、上述したガス成分に限られず、生体から発生する経皮ガスに含まれる何れの種類のガス成分であってもよい。また、ガスセンサ装置200は、半導体式センサに限定されるものでなく、例えば特許文献3(特開2009−257772号公報)に記載されているようなカーボンナノチューブ型のセンサであってもよい。これらのガスセンサ以外にも、ガスセンサ装置200は、グラフェン型センサ、電気化学式センサ、光ファイバー型センサ、薄膜型センサ、MEMS熱伝導式センサ、弾性表面波センサ、マイクロ熱伝式センサ、接触燃焼式センサ、起電力変化方式センサ等であってもよく、経皮ガス成分を測定できる何れか適切なセンサであってもよい。
【0020】
また、ガスセンサ装置200は、特定の1成分のみを測定するセンサに限定されず、複数の異なるタイプのセンサをアレイ状に配置し、複数の異なるガス成分を同時に測定できるような構成であってもよい。この場合、ガスセンサ装置200の各種センサは、アレイ状に配置されることに限定されるものでなく、例えば非特許文献1(Leandro Lorenzelli, et al. "Development of a gas chromatography silicon-based microsystem in clinical diagnostics," Biosensors and Bioelectronics, vol. 20, pp. 1968-1976, 2005)に記載の小型化したガスクロマトグラフィーチップ等を用いてガス成分を分離し、複数のガス成分を測定できるようにしてもよい。
【0021】
また、図1では、ガスセンサ装置200は、装着型音波変換装置20の保護メッシュ(音波変換機能を有する部分を外部から保護するためのメッシュ)の内側に固定されている。しかしながら、ガスセンサ装置200の固定位置は、この場所に限定されるものでなく、装着型音波変換装置20と耳周辺の皮膚との間に形成される経皮ガス滞留空間に滞留するガス成分を測定できる位置であればよい。例えば、装着型音波変換装置20の外観からは確認できない位置に内蔵されてもよい。
【0022】
携帯端末30は、典型的には携帯電話や音楽プレイヤーからなり、携帯端末30内の記憶装置などに記録された音楽などの音声情報を再生する音声再生機能を有する。携帯端末30は、装着型音波変換装置20において音波に変換される音声データを表す電気信号を出力し、ケーブル40を介して装着型音波変換装置20に伝達する。また、ガスセンサ装置200で測定された結果をケーブル40を介して受信すると、携帯端末30は、必要に応じて演算処理等を実施し、測定対象のガス成分濃度等の測定結果をディスプレイ300に表示したり、携帯端末30内の記憶装置に記録する。また、携帯端末30が、携帯電話等のように通信機能を有する場合には、ネットワーク上のサーバなどに測定結果を送信し記録してもよい。
【0023】
なお、本実施例では、装着型音波変換装置20と携帯端末30とはケーブル40で接続されているとしたが、他の実施例では、装着型音波変換装置20と携帯端末30との間でケーブルでなく無線で信号を伝達するようにしてもよい。また、ケーブルで接続する場合であっても、音楽等の電気信号とガス成分の測定結果の電気信号との干渉等を防止したり、それぞれの伝送路を物理的に分離したりするために複数のケーブルを用いてもよい。すなわち、携帯端末30と装着型音波変換装置20とが信号を送受信できる何れの通信形態により構成されてもよい。また、携帯端末30で再生する情報は装着型音波変換装置20にて音波に変換される情報を含むものであれば音楽等に限られず、例えば、映像と音声が複合した情報でもよい。この場合、映像情報はディスプレイ300に表示され、音声情報は、ディスプレイ300に表示される映像情報と連動して音楽等と同様に装着型音波変換装置20に出力される。
【0024】
上述したように、本実施例の生体ガス測定装置10によると、ユーザが携帯端末30に記録された音楽や映像等を視聴するために装着型音波変換装置20を装着すると、ユーザの耳周辺に経皮ガス滞留空間が形成される。形成された経皮ガス滞留空間にはユーザの皮膚から放出された経皮ガスが滞留するため、ガスセンサ装置200は経皮ガス中のアセトン等のガス成分を測定することが可能となる。この測定結果がケーブル40を介して携帯端末30に伝達され、ディスプレイ300に表示されたり、携帯端末30及び/又は外部のサーバ等に記録されることによって、ユーザは自身の経皮ガス中のアセトンの濃度等の各種生体情報を知ることが可能となる。
【0025】
また、携帯端末30は、測定された各種経皮ガス成分を解析し、ユーザに適切なガイド情報を提供してもよい。例えば、ユーザが、装着型音波変換装置20を装着しながら減量などのためにウォーキングをしているケースを考える。この場合、ユーザから放出される測定されたアセトンの濃度が減量効果が得られる程度の濃度に到達していないとき、携帯端末30は、歩行速度を上げるようユーザにガイド情報を提供するようにしてもよい。これにより、より効果的にユーザは運動成果を達成することが可能となる。
【0026】
また、ユーザは測定結果に基づく生体情報及びガイド情報をディスプレイ300上の画像情報やテキスト情報として認識するだけでなく、装着型音波変換装置20から音声情報として取得するようにしてもよい。すなわち、測定結果に基づく生体情報及びガイド情報が音声化され、装着型音波変換装置20から出力される音楽などの音声情報に重畳されて、ユーザに提供されてもよい。これにより、ユーザはディスプレイ300を確認することなく、装着型音波変換装置20から生体情報及びガイド情報を取得することが可能となる。
【0027】
なお、本実施例のガスセンサ装置200は、装着型音波変換装置20の装着部分の片側に固定されているとして説明したが、両側に固定されていてもよい。両側にガスセンサ装置200を固定することで、異なるガス成分の測定をしたり、同一ガス成分を右耳と左耳の2つのガスセンサ装置で個別に測定して平均を算出したり、ノイズ成分を算出及び除去したりすることで測定精度を向上させることが可能となる。
【0028】
図1に示された実施例では、装着型音波変換装置20はヘッドホンタイプのものであったが、本発明の装着型音波変換装置はこれに限定されるものでなく、ユーザの耳周辺で経皮ガスを滞留可能な閉空間を形成可能な何れか適切な装着型音波変換装置であってもよい。他の実施例では、図2に示されるように、装着型音波変換装置21はイヤホンタイプのものであってもよい。この場合、ユーザの耳内部とイヤホンのユーザ接触面とによって閉空間が形成される。なお、図2に示される生体ガス測定装置11の装着型音波変換装置21以外のガス滞留構造51,水分除去・抑制機構101、ガスセンサ装置201、携帯端末31、ケーブル41、ディスプレイ301などの他の構成要素は図1に示された構成要素と同様の機能を有する。
【0029】
本発明によれば、ユーザは、生体情報を取得及び把握するための専用の装置を装着する必要なく、音楽や映像等を視聴する際に自身の健康状態等に代表される生体情報を取得及び把握することが可能となる。例えば、本発明の生体ガス測定装置によって体内の脂肪燃焼量の指標となるアセトンを測定すれば、ユーザは、生体ガス測定装置に備えられた音波変換機能によって音楽を聴きながら運動するだけで、自身の運動により、どの程度体内の脂肪が燃焼されたかを専用の生体ガス測定装置を装着することなく知ることができる。また、肝臓疾患等の指標となるアンモニアを測定すれば、ユーザは、生体ガス測定装置に備えられた音波変換機能によって音楽を聴いたり、携帯端末上で映像を視聴したりしながら通勤等をするだけで、自身に健康上の問題がないかを把握することも可能となる。
【0030】
上述した実施例では、装着型電子機器の代表例としてヘッドホンやイヤホンなどの装着型音波変換装置を上述したが、本発明は、これに限定されず、ユーザの皮膚に接して装着され、装着時にユーザの皮膚表面又は呼気から放出される生体ガスを測定可能な何れか適切な装身機器であってもよい。すなわち、当該装身機器は、ユーザの皮膚に接して装着され、日常生活の中で本来の目的をもって装着される電子機器などである。例えば、装身機器は、生体ガス成分を測定する以外の目的を有するものであってもよく、また携帯可能であってもよい。
【0031】
上述した装着型音波変換装置20,21と同様に、装身機器は、ユーザによる装身機器の装着時に、ユーザの皮膚表面又は呼気から放出される生体ガス成分が滞留する空間を形成するガス滞留構造と、前記形成された空間に滞留する生体ガス成分を測定するガスセンサ装置とを有する。さらに、装身機器は、ガス滞留構造により形成された空間内の水分を除去又は抑制する水分除去・抑制機構を有してもよい。また、水分除去・抑制機構は、ガスセンサ装置の測定タイミングと連係して何れか適切なタイミングで起動されてもよい。すなわち、水分除去・抑制機構は、ガスセンサ装置による生体ガス成分の測定タイミング前に又は同時に、ガス滞留構造により形成された空間内の水分を除去又は抑制するようにしてもよい。さらに、水分除去・抑制機構は、それの実現形態に応じて何れか適切なタイミングで起動されてもよい。例えば、水分除去・抑制機構が上述した吸水剤、除湿剤、乾燥剤などの吸湿剤により実現される場合、水分除去・抑制機構は、ガスセンサ装置による生体ガス成分の測定タイミング前に又は同時に起動されてもよい。また、水分除去・抑制機構が小型送風装置により実現される場合、水分除去・抑制機構は、ガスセンサ装置による生体ガス成分の測定タイミング前に起動されてもよい。
【0032】
また、装身機器は、ユーザが携帯する携帯端末などとケーブル接続又は無線接続されてもよい。すなわち、装身機器の各構成要素の基本的な構造や動作は、上述した装着型音波変換装置のものと同様とすることができる。
【0033】
例えば、このような装身機器の一例として、ユーザの腕に接して装着される腕時計、ユーザの体の一部に装着される携帯電話や携帯機器などがあげられる。また、上述したガスセンサ装置などの各構成要素が内部電源を必要としない、あるいは外光などから電源を取得できるような構成では、装身機器は、ユーザの体に接して装着される腕輪、リストバンド、指輪、ネックレス、イヤリング、ヘアバンド、眼鏡、マスク、絆創膏、衣服、帽子、手袋、靴などであってもよい。
【0034】
上述した各実施例によると、ユーザは専用の生体ガス検出装置をわざわざ持ち歩く必要がなく、上述した装着型電子機器又は装身機器を身に付けるだけで、ユーザの健康状態等に代表される生体情報を、日常生活の中で自然に取得及び把握することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
本国際出願は、2011年3月8日に出願した日本国特許出願2011−050744号に基づく優先権を主張するものであり、2011−050744号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0037】
10,11 生体ガス測定装置
20,21 装着型音波変換装置
30,31 携帯端末
40,41 ケーブル
50,51 ガス滞留構造
100,101 水分除去・抑制機構
200,201 ガスセンサ装置
300,301 ディスプレイ
図1
図2