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特許5798620ナビゲーション信号送信機、ならびにナビゲーション信号生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798620
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ナビゲーション信号送信機、ならびにナビゲーション信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/10 20100101AFI20151001BHJP
【FI】
   G01S19/10
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-511816(P2013-511816)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2011060136
(87)【国際公開番号】WO2012147156
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2014年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503107484
【氏名又は名称】測位衛星技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507395692
【氏名又は名称】ライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 真
(72)【発明者】
【氏名】浅子 正浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕昭
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−019993(JP,A)
【文献】 特開2007−228327(JP,A)
【文献】 特開平09−191249(JP,A)
【文献】 特開2011−095086(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0002230(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0086511(US,A1)
【文献】 特表2006−510034(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/120381(WO,A1)
【文献】 特開昭63−015530(JP,A)
【文献】 特開2000−115152(JP,A)
【文献】 特開2007−150973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S19/00−19/55
H03L 1/00− 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を受信し所定のデータフレームに同期した同期パルスを生成させる受信部と、前記受信部から生成されたパルスを基準信号として内部クロック原振を生成する基準信号同期部と、前記内部クロック原振に基づいてIMES信号を生成するIMES信号生成部と、前記IMES信号生成部で生成されたIMES信号を送信する送信アンテナとを備えたナビゲーション信号送信機であって、
前記基準信号同期部は、カウン回路と比較器とローパス制御用フィルタとD/Aコンバータと電圧制御発信器と分周回路とを含み、前記カウンタ回路においては、前記所定のデータフレームに同期した同期パルスを基準信号として前記電圧制御発信器で生成されるクロックのパルス数がカウントされ、前記カウント値は前記比較器において基準値と比較され、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値以内の範囲で一方向に所定回数連続した場合に前記電圧制御発信の制御電圧レベルを調整するよう制御される
ことを特徴とするナビゲーション信号送信機。
【請求項2】
前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超えた場合には、前記カウント値を破棄するよう制御される
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション信号送信機。
【請求項3】
前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超え、かつ前記所定値を超えた値が所定時間内に所定回数連続した場合には、時定数となる値を変更するよう制御される
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション信号送信機。
【請求項4】
前記送信波はPHS基地局から送信される1.9GHz帯のPHS電波であり、前記データフレームはPHSデータフレームであり、前記同期パルスは100ms周期のパルスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のナビゲーション信号送信機。
【請求項5】
受信部において送信波を受信し所定のデータフレームに同期した同期パルスを生成させるステップと、基準信号同期部において前記受信部から生成されたパルスを基準信号として内部クロック原振を生成するステップと、IMES信号生成部において前記内部クロック原振に基づいてIMES信号を生成するステップと、送信アンテナにおいて前記IMES信号生成部で生成されたIMES信号を送信するステップとを備えたナビゲーション信号送信方法であって、
前記基準信号同期部においては、カウン回路と比較器とローパス制御用フィルタとD/Aコンバータと電圧制御発信器と分周回路とが含まれ、前記カウンタ回路においては、前記所定のデータフレームに同期した同期パルスを基準信号として前記電圧制御発信器で生成されるクロックのパルス数がカウントされ、前記カウント値は前記比較器において基準値と比較され、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値以内の範囲で一方向に所定回数連続した場合に前記電圧制御発信の制御電圧レベルを調整するよう制御される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超えた場合には、前記カウント値を破棄するよう制御される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超え、かつ前記所定値を超えた値が所定時間内に所定回数連続した場合には、時定数となる値を変更するよう制御される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上に設置されてナビゲーション信号あるいは受信機の位置決めのための信号を送信するナビゲーション信号送信機、ならびにナビゲーション信号を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システムは、複数の衛星から送信される測位信号を受信機が受動的に測定することによって受信機の位置決定が行われる。この場合、時刻同期が重要な技術要素の一つとなり、「エポック」と呼ばれる、規則的な通常連続した一連のイベントを生成するために、オンボードクロックが使用され、これらエポックの発生時刻は、乱数符号または擬似乱数符号(拡散符号(spreading code)と呼ばれる)へとコーディングされる。そして、タイムエポック符号化シーケンスの擬似乱数または乱数機能の結果として、出力信号のスペクトルは、拡散符号要素の変化のレートおよび拡散信号の波形によって決定される。その周波数は広範囲にわたるものである。通常、その拡散波形は、長方形(矩形状)であり、sinc関数であらわされるパワースペクラムを有する。
【0003】
かかる衛星測位システムの例として、全地球測位システム(GPS)があげられる。一般に、GPSは、それぞれ1575.42MHz、1227.6MHz、および1176.45MHzを中心とするL1、L2、およびL5などの複数の周波数を使用して動作する。これらの信号の各々が、それぞれの拡散信号によって変調される。当業者なら容易に理解できるように、GPS衛星ナビゲーションシステムが発するCA(Coarse Acquisition)信号は、1575.42MHzのL1周波数でブロードキャストされ、1.023MHzの拡散符号レート(チップレート)を有する。
【0004】
一方、GPSをはじめとする衛星測位システムの他に、屋内環境において位置情報を決定することを目的とした地上補完信号(Indoor Messaging System(IMES))がある。IMES信号はGPSと類似の測位信号であり、同一の1575.42MHzのL1周波数で放送され、CA信号の拡散符号と同一ファミリ(Gold系列)の1.023MHzの拡散符号レート(チップレート)を有する。
【0005】
IMES信号を送信するIMES送信機は、ビル建物内や、地下街に多数設置され、送信機の位置情報をIMES信号に重畳して送信される。すわなち、IMES受信装置を持ったユーザはIMES信号を受信、復調し、重畳されている位置情報を解読することにより、自身の位置を知ることができる。
【0006】
ここで、IMES信号のCAコードは、GPSのCAコードと同様で、1023ビット(1023チップ)の系列が周期1msで繰り返される。したがって、搬送波周波数とコード位相の探索を行うことなく信号の切り替えを行うためには、搬送波周波数はその期待値との差がコード周期1msの逆数である1kHzの幅に入っている必要があるため±500Hz以内の精度を確保することが必要となる。これはクロックの周波数偏差としては、500Hz/1575.42MHz=0.33E−6であるため、若干の余裕を見て約0.2E−6(0.2ppm)以下の精度が必要とされるものとみて良い。また、コード位相は、1チップの長さが約1μ秒であるため、±300ns程度以下の精度が必要とされる。
【0007】
図8に従来のIMES受信機をもったユーザが従来の送信機Aの信号エリアから送信機Bの信号エリアへと移動した場合の様子を示す。IMES受信機803を持ったユーザが送信機A(801)の信号エリア(801E)から送信機B(802)の信号エリア(802E)へと移動した場合、IMES受信機803もまた受信信号を送信機801に対応する信号aから送信機802に対応する信号bへと切り替える必要がある。このように、受信信号を例えば信号aから信号bへ切り替える場合、通信の安定性及びユーザの利便性の観点からIMES信号受信の切断時間は極力少ないほうが望ましい。
【0008】
そこで、信号切断時間を極力少なくするためには、IMES送信機A(801)から送信される信号aと送信機B(802)から送信される信号bの搬送波周波数及び拡散コードの位相差が小さいことが必要とされる。
【0009】
ここで、IMES信号を受信するためには、受信機は、IMES送信機が送信する信号と同一の周波数、及び同一の拡散コードから成るレプリカ信号と呼ばれる信号を内部で生成させ、放送される信号との相関をとりながら復調を行うことで受信する。典型的な測位信号受信機のブロック構成を図9に示す。図9における測位信号受信機900は、受信信号を受信するアンテナ901と、アンテナ901からの受信信号の増幅処理、ダウンコンバート処理及びA/D変換等の受信処理、ならびにデジタル中間周波数信号(デジタルIF信号,IF:Intermediate Frequency)に変換するための受信部902と、コードレプリカ信号を生成するコードレプリカ生成器904と、受信部902からの信号とコードレプリカ生成器904からの信号とをそれぞれ乗算する乗算器905および906とを含む。
【0010】
さらに、測位信号受信機900は、受信機内での搬送波レプリカ信号を生成するための搬送波レプリカ生成器907と、搬送波レプリカ生成器904からの位相が互いに90度異なる搬送波レプリカ信号であるsinωrt信号とcosωrt信号とを、それぞれ乗算器905および906の出力に積算する乗算器908および909とを含み、さらに、乗算器908の出力を所定期間積算するための積算器910と、乗算器909の出力を所定期間積算するための積算器911と、積算器910および911の出力を受けて、S/Nの向上のための積算(2乗する前の積算と2乗後の積算)をソフトウェア的に行い、信号補足および信号追尾のために、コードレプリカ生成器904および搬送波レプリカ生成器907を制御する演算制御器912とを含む。
【0011】
ここで、演算制御器912は、コードレプリカ生成器904の生成するコードをソフトウェア的に変更することが可能である。また、演算制御器912は、受信した衛星測位信号に基づいて航法メッセージの抽出を行い、測位演算等の処理を行う。
【0012】
かかる受信機における復調の過程では、放送される搬送波周波数とレプリカ信号の搬送波周波数とが同一(より正確には、上述した±500Hz以内の精度)となる周波数の探索、及びIMES送信機から送信される拡散コードとレプリカ信号の拡散コードのコード位相とが同一となるコード位相の探索を行う。図10に示されるようにレプリカ信号が放送される信号と同一の搬送波周波数及び拡散コード位相になった場合に放送される信号との相関値は最大となり、このとき放送信号を受信できることとなる。
【0013】
なお、搬送波周波数とコード位相の探索を行うことなく信号の切り替えを行うためには、搬送波周波数は、約0.2E−6(0.2ppm)以下の精度が必要とされ、コード位相は、±300ns程度以下の精度が必要とされることは上述したとおりである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−85928号公報
【特許文献2】特開2009−133731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
かかる状況において、全てのIMES送信機が同一の搬送波周波数IMES信号を送信するためには、送信機内部の原振が公称周波数に対して偏差が小さいこと、周波数の揺らぎが小さいこと、及び周囲の温度変動により周波数が変動しないといった低温度依存性が要求される。一般にこのような特性を持つ発振器は、恒温槽等に収められ厳密な温度管理及び温度コントロールがなされ、ある特定周波数の原子の共鳴を利用した原子時計を利用することもあり、設備費用が高額になるとともにそのサイズも大きくなってしまうという欠点があった。
【0016】
更に、どんな高価な発振器でも長期に渡り使用していると、必ず周波数が変化する。このため、定期的に周波数の校正を行う必要が生じてしまう。
【0017】
このような長期的な周波数の変化を抑制する一つの方法として、GPS信号を受信して、発振器の長期的な変動を補正する方法がある。しかし、GPS信号の屋外環境であれば容易に受信可能であるが、ビル建物内や地下街といった屋内環境では信号が届かないために受信ができないといった問題がある。
【0018】
これを解決する手段として、GPSリピータと呼ばれるものがある。屋外で受信したGPS信号を有線で屋内まで引き込み、屋内で再放射するものである。しかし、この手段を地上に設置するナビゲーション信号送信機の周波数同期に適用する場合、別途GPSリピータシステムを導入する必要があり、GPSリピータシステムの装置、工事コストが追加で必要となる。また、GPSリピータにより送信されるGPS信号は、微弱ながらも屋外から通過してくる本来のGPS信号を高感度受信機等により受信しようとするユーザにとって大きな干渉源となってしまう。
【0019】
また、屋内環境で地上に設置するナビゲーション信号の周波数同期を行う別の手段として、送信機間でタイミング信号を有線或いは無線で送受し実現するものがある。しかし、この手段を地上に設置するナビゲーション信号送信機の周波数同期に適用する場合、送信機はナビゲーション信号とは別にタイミング信号の送信回路を持つ必要があり、これにより送信機の部品点数の増加消費電力の増加を伴ってしまうといった欠点があった。
【0020】
本願発明の実施形態の第一の目的は、従来技術の問題を少なくとも軽減することである。すなわち本願発明は、地上において送信されるナビゲーション信号の周波数偏差を安価で確実に低減する方法に関するものであって、その生成方式を提供することで従来送信機に内蔵させる必要があった高精度且つ高価な発振器を不要にすることが、発明が解決する課題である。
【0021】
また、本願発明の実施形態の第二の目的は、地上において送信されるナビゲーション信号のタイミングを合わせることである。すなわち本願発明は、地上において送信されるナビゲーション信号の時刻タイミングを或る基準に合わせる方法に関するものであって、その生成方式を提供することで従来は互いに合っていなかった地上において送信される複数のナビゲーション信号間のタイミングを相対的に、或いは、相対的且つ絶対的に合わせることで、互いのナビゲーション信号間の拡散コード位相差が小さくなり、信号捕捉時間を短くする等の受信時の利便性を向上させることが、発明が解決する課題である。
【0022】
なお、以上述べた技術課題を踏まえ、発明者らは、IMES信号aとIMES信号bとが同一の搬送波周波数、及び同一の拡散コード位相であれば、受信機はIMES信号aを受信して決定した搬送波周波数と拡散コード位相の情報を用いることにより、IMES信号bの搬送波周波数と拡散コード位相の探索を行うことなくIMES信号bを受信でき、IMES信号aからIMES信号bへと切り替えをスムーズに行うことが可能であることを見出している。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明にかかるナビゲーション信号送信機は、送信波を受信し所定のデータフレームに同期した同期パルスを生成させる受信部と、前記受信部から生成されたパルスを基準信号として内部クロック原振を生成する基準信号同期部と、前記内部クロック原振に基づいてIMES信号を生成するIMES信号生成部と、前記IMES信号生成部で生成されたIMES信号を送信する送信アンテナとを備えたナビゲーション信号送信機であって、前記基準信号同期部は、カウント回路と比較器とローパス制御用フィルタとD/Aコンバータと電圧制御発信器と分周回路とを含み、前記カウンタ回路においては、前記送信波から入力された信号を基準信号として前記電圧制御発信器で生成されるクロックのパルス数がカウントされ、前記カウント値は前記比較器において基準値と比較され、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値以内の範囲で一方向に所定回数連続した場合に前記電圧制御発信機の制御電圧レベルを調整するよう制御されることを特徴とする。
【0024】
また、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超えた場合には、前記カウント値を破棄するよう制御されることを特徴とする。
【0025】
また、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値を超え、かつ前記所定値を超えた値が所定時間内に所定回数連続した場合には、時定数となる値を変更するよう制御されることを特徴とする。
【0026】
本発明にかかるナビゲーション信号送信方法は、受信部において送信波を受信し所定のデータフレームに同期した同期パルスを生成させるステップと、基準信号同期部において前記受信部から生成されたパルスを基準信号として内部クロック原振を生成するステップと、IMES信号生成部において前記内部クロック原振に基づいてIMES信号を生成するステップと、送信アンテナにおいて前記IMES信号生成部で生成されたIMES信号を送信するステップとを備えたナビゲーション信号送信方法であって、前記基準信号同期部においては、カウント回路と比較器とローパス制御用フィルタとD/Aコンバータと電圧制御発信器と分周回路とが含まれ、前記カウンタ回路においては、前記送信波から入力された信号を基準信号として前記電圧制御発信器で生成されるクロックのパルス数がカウントされ、前記カウント値は前記比較器において基準値と比較され、前記比較器における比較結果の大小関係が所定値以内の範囲で一方向に所定回数連続した場合に前記電圧制御発信機の制御電圧レベルを調整するよう制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるナビゲーション信号送信機ないしナビゲーション信号送信方法によれば、地上において送信されるナビゲーション信号の周波数偏差を安価で確実に低減することができ、従来の送信機に搭載する必要があった高精度且つ高価な発振器を不要にすることができる。さらには、地上において送信される複数のナビゲーション信号間のタイミングを相対的に、或いは、相対的且つ絶対的に合わせることで、互いのナビゲーション信号間の拡散コード位相差が小さくなり、信号捕捉時間を短くする等の受信時の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態にかかるナビゲーション信号送信機の構成を説明する説明図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるナビゲーション信号送信機における基準信号同期部のブロック構成を説明する説明図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるナビゲーション信号送信機の基準信号同期部における周波数カウント部の動作を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施形態にかかるナビゲーション信号送信機の基準信号同期部における各信号の周波数安定度(アラン標準偏差)を説明する説明図である。
図5A】本発明の他の実施形態にかかるナビゲーション信号送信機において時刻同期を行うための基準信号同期部の構成を説明する説明図である。
図5B】本発明の他の実施形態にかかるナビゲーション信号送信機において時刻同期を行うための基準信号同期部の構成を説明する説明図である。
図5C】本発明の他の実施形態にかかるナビゲーション信号送信機において時刻同期を行うための基準信号同期部における動作フローを説明するフローチャートである。
図6】本発明の他の実施形態にかかるナビゲーション信号送信機における時刻タイミング信号と拡散コードとの関係を説明する説明図である。
図7】本発明の他の実施形態にかかるナビゲーション信号送信機の構成を説明する説明図である。
図8】従来のIMES受信機をもったユーザが従来の送信機Aの信号エリアから送信機Bの信号エリアへと移動した場合の様子を説明する説明図である。
図9】従来の測位信号受信機の受信回路のブロック構成を説明する説明図である。
図10】従来の測位信号の搬送波周波数及びコード位相探索概念を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかるナビゲーション信号送信機、ならびにナビゲーション信号生成方法について詳述する。
【実施例1】
【0030】
図1に、本発明の一実施形態にかかるナビゲーション信号送信機の構成を示す。ここで、本実施形態における「外部システムの何らかの信号(送信波)」としてPHS信号を想定するものとする。ナビゲーション信号送信機100は、PHS受信部101と、基準信号同期部102と、IMES信号生成部103と、送信アンテナ104とからなる。なお、PHS受信部101及び基準信号同期部102は、内部クロック生成部(ちょうど特許文献1の図2に示される内部クロック生成器231に対応)を構成する。しかしながら、例えば特許文献1の図2に示されるものなど従来の内部クロック生成器においては、高い周波数精度を確保するために高価なOCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator、「温度制御型水晶発振器」とも呼ばれる)等が用いられていた。
【0031】
ナビゲーション信号送信機100において、PHS基地局から送信される1.9GHz帯のPHS電波は、図1における内部クロック生成部の構成要素であるPHS受信部101により受信され、ここでPHSデータフレームに同期した100msのパルスが生成される。PHS基地局の周波数オフセットは小さく複数のPHS基地局が同期しているので、送信機内部のPHS受信部の内蔵クロックがずれていたとしても、PHSデータフレームの周期は一定の基準を満たしている。すなわち、PHSデータフレームの繰り返し周波数の周波数オフセットは小さい。
【0032】
ここで、外部システムの何らかの信号を、空中を伝播する電波として、それに同期させることを考えた場合、空中を伝播する電波の搬送波周波数に同期させる方法や、搬送波からタイミング信号を生成する方法が考えられる。しかしながら、搬送波周波数は、電波の変調方式により異なる場合があるため(FM変調、FDMA、CDMAの周波数ホッピング方式などは周波数が動的に変化する)、本発明においては、搬送波ではなくデータフレーム周期に同期させることを特徴としている。
【0033】
次に、図1におけるPHS受信部101から出力された100msのパルスは、基準信号として基準信号同期部102へ入力される。基準信号同期部102ではこの基準信号に周波数同期した内部クロック原振を生成し、IMES信号生成部103へ出力する。なお、IMES信号生成部103へ出力するかわりに特許文献1の図2に示したようなMUX232に出力することも可能である。
【0034】
そして、図1におけるIMES信号生成部では、特許文献1及び2において開示されたIMES信号を生成し、送信アンテナ104を介して送信する。
【0035】
ここで、PHS受信部101が出力し、基準信号同期部102の基準信号として入力される信号は、空中を伝播するPHS電波に同期していることに留意されたい。
【0036】
なお、PHS受信部101は、PHS信号以外の信号(例えば、GSM(global system for mobile communicationsの略称であって登録商標。以下、同じ)、LTE(long term evolutionの略称。以下、同じ)、商用電源等)を受信する受信部であってもよい。PHS信号以外の信号であっても信号処理の詳細は次段落以降に説明する構成を採用することができる。以下、受信部101で受信する信号はPHS信号であるものとして説明を進める。
【0037】
図2に、基準信号同期部102の詳細構成を説明するブロック図を示す。基準信号同期部102は、周波数カウント部201とループカウンタ202とVCO(電圧制御発振器)203とから構成され、PHS受信部101から入力された基準信号は、最終的には10MHzの内部クロック原振としてIMES信号生成部103へ出力される。
【0038】
次に、基準信号同期部102における周波数カウント部201の動作を図3に示す。周波数カウント部201では、PHS受信部101から入力される信号を基準信号同期部102の基準信号とするが、その信号をトリガとして、図3に示すように基準信号同期部102内のVCO203で生成されるクロックのパルス数をカウンタ回路(不図示)を用いてカウントする。計測されたカウント値は、VCO203の公称周波数と基準信号のパルス周期公称値とから決定されるパルス数と比較回路(不図示)において比較され、その差となる値に対してループフィルタ202で平滑化処理を行い、適切なゲイン設定及びD/A変換により直流電圧に変換され、VCO203に入力されるものである。この直流電圧は、基準信号と内部クロック原振との周波数差に比例し、VCO203は、電圧に応じて自身の周波数を調整することにより基準信号と内部クロック原振との周波数差が一定に保たれることとなる。
【0039】
ここで、VCO203の公称周波数及び基準信号のパルス周波数公称値から決定されるパルス数は、VCO203の公称周波数が10MHz、基準信号のパルス周期公称値が100msの場合、
10*10^6*0.1=1000000[パルス]
となる。
【0040】
[本発明にかかるナビゲーション信号送信機等の効果]
図4に、基準信号同期部102の動作にともない生成される基準信号と内部クロック原振の安定性を説明する説明図を示す。まず、図4において、(a)は基準信号同期部の基準信号、すなわちPHS受信部出力信号の周波数安定度(アラン標準偏差)の典型例であり、(b)は基準信号同期部に組み込まれているVCO単体の周波数安定度の一例を示すものである。特性(a)から分かることは、基準信号は長期的な周波数安定性に優れているものの短期的な周波数安定性に欠けるということであり、特性(b)から分かることは、VCOは長期的な周波数安定性に欠けるものの短期的な周波数安定性に優れているということである。
【0041】
そうして、特性(c)は、本発明にかかるナビゲーション信号送信機等における基準信号同期部102が出力するクロック信号の周波数安定性を示す。特性(c)によれば、長期的な周波数安定性は基準信号(すなわちPHS電波)と同等であり、短期的な周波数安定性はVCOの特性と同等の特性を有するので、長期短期にわたる広範な周波数領域において安定した性能を発揮することが分かる。
【実施例2】
【0042】
図5Aに、本発明の第2の実施形態として、ナビゲーション信号送信機において時刻同期を行うための基準信号同期部の構成を示す。基準信号同期部500は、位相比較部501と、ループフィルタ502と、VCO(電圧制御発振器)503と、分周器504とから構成される。
【0043】
PHS受信部が出力する信号を基準信号同期部の基準信号として、PLL部内の分周器504から生成される信号との位相比較を位相比較部501において行い、位相差を計測する。ここで計測された位相差は、ループフィルタ502において平滑化処理され、適切なゲイン設定及びD/A変換により直流電圧に変換され、VCO503に入力される。この直流電圧は、基準信号と分周信号との位相差に比例し、したがってVCO503は電圧に応じて自身の周波数を調整することで、基準信号と分周信号との位相差が一定に保たれることとなる。
【0044】
この実施形態においては、基準信号同期部からは内部クロック原振に加え、例えば、PRNコードのタイミングを制御するために、パルス周期が1msの整数倍(一例として、10ms、100ms、1000msが採用される。図7における基準信号パルスとは異なる)である時刻同期タイミング信号パルスが出力される(この時刻同期タイミング信号パルスは、後述する図7において、702から703へ供給される)。
なお、PRNコードのタイミング制御例を図6に示す。図6(A)にはIMES信号生成部で生成される周期1msの拡散コードCが表されており、拡散コードCに対して時刻同期タイミング信号Tを同期させる。図6(A)の区間T1−T2を拡大したものが図6(B)であり、ビット数(チップ数)1023ビット(1023チップ)の拡散コードC’の先頭(Code1とChip1とが一致しているタイミング)を、時刻同期タイミング信号T’のパルスに同期するように制御して放送することで、時刻タイミングもPHS電波に同期した状態となる。
【実施例3】
【0045】
図7に本願発明の第3の実施形態として、外部システムの何らかの信号として、GSMやLTEといった携帯電話の電波を利用する場合の構成を示す。ナビゲーション信号送信機700は、GSM又はLTE信号を受信するためのGSM受信部又はLTE受信部(総称して受信部701)と、基準信号同期部702と、IMES信号生成部703と、送信アンテナ704とから構成される。すなわち、本実施形態ではPHS受信部101に替えて、GSM或いはLTE受信部701を用いて、10ms、100ms又は1000msのパルスを基準信号として基準信号同期部702に入力する。基準信号同期部702では、周波数カウント部(図7において不図示)で数えるパルス数と比較する値を10ms、100ms又は1000msへと変更するのみで良く、GSM或いはLTE受信部701以外は送信機の構成を変更する必要がなく、これによってGSMやLTEといったPHS以外の電波を簡便に利用することができる。
ここで、基準信号パルスの周期(10ms、100ms、1000ms)は、通信インフラの環境によって使い分けられる。例えば、PHSでは100msの基準信号のみ利用可能であり、CDMAでは10msの基準信号が利用可能である。
【実施例4】
【0046】
本願発明の第4の実施形態として、外部システムの何らかの信号として、商用電源を利用しても良い。本実施形態では、受信部701に替えて、商用電源受信部を用い、電源周波数(日本では50/60Hz)から10ms、100ms又は1000msのパルスを基準信号として基準信号同期部702に入力する。商用電源であれば、絶対精度は悪くとも、例えばビル内では同じ電源であるため、同一ビル内のIMES送信機の相対的な周波数は一致する。これにより、PHS,GSM,LTEといった電波が届かない場所においても、IMES送信機は周波数同期が可能となる。
【実施例5】
【0047】
本願発明の第5の実施形態として、図5Bに、ナビゲーション信号送信機において時刻同期を行うための基準信号同期部の構成を説明する。基準信号同期部550は、カウンタ回路551と、保持回路552と、比較器553と、ローパス制御用フィルタ554と、D/Aコンバータ555と、電圧制御発信器556と、分周回路557とから構成される。
【0048】
カウンタ551は、電圧制御型発信器(VCXO)556から発信されるクロックの「パルス数(典型的には10MHz)をカウントし、基準信号パルスが送られる100ms毎に、カウント値を保持回路552へ送信する。さらにカウント値は、比較器553において、比較用の基準値(典型的には1,000,000回)と比較し、第1のフィルタリングとして、VCXOのカウント値が基準値と±10%より外れている場合には異常な値として無視する(アウトライアー除去)。
次に、第2のフィルタリングとして、比較結果の大小関係が、大(+方向)あるいは小(−方向)が連続してn回続いた場合に、電圧制御レベルを1だけ変更するように制御する。すわなち、+方向がn回連続して計測された場合には、制御電圧レベルを現在のレベルに対して−1とし、−方向がn回連続して計測された場合には、制御電圧レベルを現在のレベルに対して+1とする。ここで、レベル1に対する電圧制御量は、12ビットの解像度で制御される場合には、2.5(v)/4096(v)である。
また、分周回路557からは、時刻同期タイミング信号パルスが出力される。
【0049】
なお、図5Bにおいて、RINはリセット入力であり、CLINはクロック入力であり、CNTOUTはカウント値出力であり、CNTINはカウント値入力であり、STINはセットタイミング入力である。
【0050】
このように、図5Bにおいて、比較器553及びローパス制御用フィルタ554は、いわゆるランダムウォークフィルターを応用した構成になっているが、本願発明においては、上記n(フィルター時定数)の調整に特徴があり、nの値を大きくすると収束までの時間は長くなるが、試行の結果、基準信号パルスとしてPHSを使用する場合には、nを10程度に設定することで良好な結果が得られている。また、基準信号パルスとしてCDMAを使用する場合には、nを2程度とすることが望ましい。
【0051】
ここで、基準信号パルスは100msごとの周期なので、n=10の場合は、1秒に1回の割合で電圧制御調整が行われることになり、n=2の場合は、0.2秒に1回の割合で調整が行われることになる。
【0052】
一般に、PHSを基準信号パルスとして使用する場合は、ナビゲーション信号送信機の設置後、15分〜30分程度で基準信号パルスの周波数とほぼ同期することになる。しかしながら、火災などが生じて、ナビゲーション信号送信機の温度が急激に上昇した場合には、送信機の正確な動作が期待できなくなる場合がある。このような場合には、基準信号パルスの周波数との同期が失われ、速やかにタイミング同期をやり直す必要がある。したがって、火災のような急激な温度上昇等の非常事態を検知するために、温度センサを別途設けるように構成してもよいが、追加の回路やコストがかかるため、カウンタ値の異常を検出することにより、非常事態の判断を行うように構成してもよい。具体的には、VCXOが±10%以上外れる回数が所定時間(例えば、20秒間とか30秒間)内に一定回数(例えば、100回とか150回)連続した場合に、温度異常(火災等の非常事態)と判断する。
【0053】
この場合の詳細フローを図5Cに示す。S501において、タイミング同期が開始されると、S502に進み、火災などによる急激な温度上昇等の非常事態であるかどうかをチェックするためのフラグ(以下、非常事態フラグ)が初期化される。
【0054】
次に、S503に進み、VCXOから発信されるパルスをカウンタにおいてカウントする。S504において、PHSの原振に基づいて時間が計測され、100msが経過したかどうかが判断される。まだ100msが経過していない場合(S504において、No)は、S503に復帰し、100msが経過した場合には、S505に進み、非常事態フラグがオンかどうかチェックされる。S505において非常事態フラグがオンである場合にはS510に進むが、非常事態フラグがオフである場合には、S506に進む。
【0055】
S506では、VCXOが±10%以内かどうかが判断される。VCXOが±10%以内であれば、正常な変動として制御電圧調整を進めるが(S510へ進む)、VCXOが±10%を超える場合には、破棄すべきエラー(アウトライアー)か、非常事態であるかどうかが判断される(S507)。S507では、VCXOが±10%を超える場合であって、それが所定時間内に一定回数連続しているかどうかが判断される。一例として、20秒間に100回連続しているか、あるいは、30秒間に150回連続しているかが判断される。所定時間内に一定回数連続している場合には(Yes)、S509に進み、ナビゲーション信号送信機が設置されている場所付近は、火災等の非常事態により周辺温度が急激に上昇しているものと判断し、時定数nを現在設定されている値よりも小さい値に変更する(例えば、n=10からn=2へ変更)。そして、非常事態フラグをオンにする。
S507において、VCXOが±10%を超える場合が所定時間内に一定回数連続しなかった場合には、その値はアウトライアーとして破棄する。
【0056】
S510では、VCXOから発信されるパルスカウントがプラス(+)方向にずれている場合には+1としてカウントし、パルスカウントがマイナス(−)方向にずれている場合には−1としてカウントし、S511へ進む。
【0057】
S511では、S510でカウントされた値(+又は−)がn回連続したかが判断され、n回連続している場合(Yes)には、S512へ進み、n回連続しなかった場合(No)には、S502へ復帰する。
【0058】
S512では、n回連続したのがプラス(+)方向であった場合には、制御電圧を−方向へ調整し、n回連続したのがマイナス(−)方向であった場合には、制御電圧を−方向へ調整する。そして、S503に復帰する。
【0059】
図5Cに示したフローでは、S507においてVCXOが±10%を超える場合であって、それが所定時間内に一定回数連続しているかどうかが判断されるが、所定時間内に連続してVCXOが±10%を超える場合に限らず、所定時間内に累積してVCXOが±10%を超える場合が一定回数に達したときに、S509へ進み、非常事態フラグをオンにすると共に、時定数nを現在設定されている値よりも小さい値に変更するよう制御することとしてもよい。この場合、例えば、3分間にVCXOが±10%を超える場合が累積して1000回に達したとき、あるいは、5分間にVCXOが±10%を超える場合が累積して1000回に達したときに、S509に進む。
【0060】
VCXOが±10%を超える場合が所定時間内に一定回数連続しているかどうかを判断するフローは、極めて短時間に火災等の被害を検出できる利点がある。一方で、VCXOが±10%を超える場合が所定時間内に累積して一定回数に達するかどうかを判断するフローは、誤動作を起こってしまうのを防ぎながら、ある程度短時間で火災等の被害を検出できるという利点がある。
【0061】
図5Cに示したフローでは、非常事態フラグをオフにする処理について説明を省略しているが、実施形態に応じて様々な処理を考慮することができる。例えば、予め決められた時間が経過した場合に非常事態フラグをオフにする、手動でオフにするなどである。
【0062】
あるいは、所定時間内に一定回数連続してVCXOが±10%以内に収まったときに非常事態フラグをオフにするよう制御してもよいし、VCXOが±10%以内に収まる場合が所定時間内に累積して一定回数に達したときに非常事態フラグをオフにするよう制御してもよい。
【0063】
なお、上述した非常事態検知ロジック(S502、S505、S509等)を実装しない簡素なタイミング同期制御も実施可能であることは言うまでもない。
【0064】
以上述べたように、本発明にかかるナビゲーション信号送信機等おいては、GPSという高精度クロックに基づく信号を受信する受信機での受信動作に着目し、同時に受信機の利便性を向上させるための地上用に設置されて使用するナビゲーション信号の課題に着目し、0.2ppm程度の周波数オフセット要求という課題を克服すべく、かかる条件を満たす送信機を実現するための安価な手段及び方法を提供するものである。
【0065】
また、GPSは高精度クロックに基づくものであるので、当業者による自然な考えに基づけば、GPSと同様に地上用に設置されて使用するナビゲーション信号の生成にも高精度クロックが必要であるとの認識が生まれやすい。しかし、地上に設置するナビゲーション信号送信機で必要とされるのは、絶対的な周波数精度よりというよりは、むしろ各送信機間の相対的な周波数精度である。したがって、使用する周波数基準は高精度であることよりも、各送信機が共通の周波数標準を用いることが重要となる。一方で、上記要求を実現するためのナビゲーション信号送信機に対して新たに付加する機能やモジュールは少ないことが望ましい。よって、地上でのナビゲーション信号送信機の周波数基準は、仮に一般的な周波数標準として利用される性質のものでなくとも、屋内において使用可能で、ナビゲーション信号送信機のカバレッジエリアより広く、複数のナビゲーション信号送信機を利用でき、その周波数標準として既存のものを利用することにより、本発明にかかるナビゲーション信号送信機を含むシステム全体の構成規模を小型化できるという効果を奏するものである。
【0066】
なお、特許請求の範囲、明細書、要約書、図面に記載された全ての技術的要素、ならびに、方法ないし処理ステップは、これら要素及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的となる組み合わせを除く任意の組み合わせによって本発明にかかる送信機、ならびに方法の構成要素ないし構成段階となりうる。
さらに、本発明は、上述した実施形態のいずれの個別具体的な詳細記載に制限されることはない。さらに、本発明の技術的範囲は、上述の説明のみによってではなく、特許請求の範囲の記載によってその外延が特定されるものであり、特許請求の範囲と均等となる置換ないし変更も本発明の技術的範囲となるものである。
【符号の説明】
【0067】
100、500 ナビゲーション信号送信機
101 PHS受信部
102、702 基準信号同期部
103、703 IMES信号生成部
104、704 送信アンテナ
201 周波数カウント部
202、502 ループフィルタ
203、503 VCO(電圧制御発信器)
501 位相比較部
504 分周器
551 カウンタ
552 保持回路
553 比較器
554 ローパス制御用フィルタ
555 D/Aコンバータ
556 電圧制御型発信器
557 分周回路
701 GSM又はLTE受信部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10