特許第5798628号(P5798628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798628ウシ顆粒球コロニー刺激因子のための製剤およびその変異体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798628
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ウシ顆粒球コロニー刺激因子のための製剤およびその変異体
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20151001BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/48 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20151001BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A61K37/02ZNA
   A61K9/08
   A61K47/48
   A61K47/34
   A61K47/12
   A61K47/02
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61K47/18
   A61K9/19
   A61K9/14
   A61P31/00
   A61P31/00 171
【請求項の数】7
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-530298(P2013-530298)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-538828(P2013-538828A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】US2011052692
(87)【国際公開番号】WO2012040421
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/385,629
(32)【優先日】2010年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】フアン・ダバニーノ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ニャン・カー
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ボスキャンプ・クロッツ
【審査官】 ▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/011735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
bG−CSF−T133pAF−20K PEG、クエン酸塩またはコハク酸塩緩衝物質、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンを含む安定水性製剤であって、前記製剤が、0.001%未満の界面活性剤を含む製剤。
【請求項2】
アルギニンに対する対イオンが、塩化物または硫酸塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
界面活性剤が、ポリソルベート界面活性剤である、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
bG−CSF−T133pAF−20K PEGが、約0.5から約12グラム/リットルの間の量で存在し、緩衝物質が、クエン酸塩であり、クエン酸緩衝物質が、約30mMのモル濃度を有し、アルギニンが、約250mMのモル濃度を有し、製剤が、約5.7から約6.6のpH値を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の製剤。
【請求項5】
1種以上の他の治療成分を任意に含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の製剤。
【請求項6】
bG−CSFにより変調された疾患を有するヒト以外の動物を治療する方法であって、該動物に対して治療有効量の請求項1〜5のいずれか1つに記載の製剤を投与することを含む、方法
【請求項7】
疾患が、乳腺炎であり、動物が、周産期のウシである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシ顆粒球コロニー刺激因子のための製剤およびその変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)は、成長ホルモン超遺伝子ファミリーのメンバーである。G−CSFは、特定の骨髄前駆細胞の増殖およびそれらの顆粒球への分化を刺激する。更に、G−CSFは、インビボでの好中球の増殖および成熟に対する強い刺激である(非特許文献1;非特許文献2もまた参照のこと)。G−CSFはまた、インビトロでの成熟好中球の機能的活性化または「プライミング」を誘導することができる(非特許文献3)。G−CSFは、ヒト顆粒球にプライミングし、走化性ペプチドN−ホルミル−メチオニル−ロイシル−フェナルアラニンにより刺激される超酸化物放出を促進し(非特許文献4および非特許文献5)、ヒト好中球IgA媒介食作用を活性化する(非特許文献6)ことが示されている。
【0003】
G−CSFは、好中球が増加する兆候の処置に有用であり、利益をもたらすことが見出されている。G−CSFはまた、例えば骨髄移植について、培養液中の細胞の増殖または拡大に対して、単体または他の化合物(例えば他のサイトカイン)との組み合わせでも有用である。
【0004】
組み換えヒトG−CSF(hG−CSF)のcDNAクローニングおよび発現が説明されており、また、組み換えhG−CSFは、天然分子の生物学的特性の大部分を、全部ではないが示している(非特許文献7)。cDNAおよびゲノムDNAのクローンの配列解析は、アミノ酸配列を差し引き、タンパク質が、30アミノ酸のシグナル配列を含む204アミノ酸長であることを明らかにしている。成熟タンパク質は、174アミノ酸長であり、有効なN結合糖鎖付加部位を有さないが、0結合グリコシル化のためのいくつかの候補部位を有する。
【0005】
hG−CSFを含有する医薬品は当該技術分野で公知であり、多数の製剤が挙げられる。例えば、hG−CSFの種々の製剤は、非特許文献8、非特許文献9、Michaelisらの特許文献1、および、Satoらの特許文献2に説明されている。従来、界面活性剤は、hG−CSF製剤中に含まれ、潜在的に不安定な接触面でのhG−CSFを、処理中の接触面に対して、および、その立体配座の安定性の変更に対して、保護し得る。
【0006】
組み換えウシG−CSF(bG−CSF)のcDNAクローニングおよび発現もまた説明されている。例えば、成熟bG−CSFのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は、特許文献3に記載されており、この特許文献3はまた、ポリペプチドおよびその類似体をクローニングし、単離し、精製する方法を説明している。成熟bG−CSFは、174アミノ酸長であり、hG−CSFに対して82%の相同性を有する。上記非特許文献2は、bG−CSFの発現、精製、および、生物学的活性を説明している。
【0007】
畜牛へのbG−CSFの投与は、治療的有用性を提供することができる。従って、bG−CSFを含有する医薬製剤は、その治療可能性を利用することが望ましい。しかしながら、当該技術分野で公知の典型的な方法に従って開発されたbG−CSF医薬製剤は、望ましくない製品の特性、例えば、bG−CSFポリペプチドおよび/または製剤の凝集および不安定化をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,919,757号明細書
【特許文献2】米国特許第6,908,610号明細書
【特許文献3】米国特許第5,849,883号明細書
【0009】
【非特許文献1】Cohenら,Proc.Natl.Acad.Sci.1987;84:2484−2488
【非特許文献2】Heidariら,Vet.Immol.Imunopathol.2001;81:45−57
【非特許文献3】Weisbart,R.H.ら,Annals of Internal Medicine 1989;110:297−303
【非特許文献4】S.Kitagawaら,Biochem.Biophys.Res.Commun.1987;144:1143−1146
【非特許文献5】C.F.Nathan,Blood 1989;74:301−306
【非特許文献6】Weisbart,R.H.ら,Nature 1988;332:647−649
【非特許文献7】Souza,L.ら,Science 232,61−65(1986)
【非特許文献8】Piedmonteら,Advanced Drug Delivery Reviews,60:50−58(2008)
【非特許文献9】Hermanら,in Formulation,Characterization,and Stability of Protein Drugs,Rodney Pearlman and Y. John Wang,eds.,Plenum Press,New York(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、望ましい特性、例えば、最小限の製剤凝集および不安定特性などの、安定bG−CSF医薬製剤が必要とされている。従って、本発明は、望ましい特性を示しかつ関連する利点も提供するbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を有する安定水性医薬製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、緩衝物質、および、賦形剤を含む安定水性製剤を提供する。ここで、前記製剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを実質的に含まない。本発明はまた、前記製剤の凍結乾燥形態または粉末形態を用いる方法、および前記製剤を調製するためのプロセスを提供する。
【0012】
本発明にかかるウシ顆粒球コロニー刺激因子(「bG−CSF」)の安定水性製剤は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含む。本願明細書において、「ウシG−CSFポリペプチド」(あるいは、「bG−CSFポリペプチド」、「ウシG−CSF」または「bG−CSF」と呼ぶ)およびその変異体は、それらのポリペプチドおよびタンパク質を含み得、これらは、生物活性が同じであるかに関わらず、また更にその合成または製造の方法に関わらず、CSF、bG−CSF類似体、bG−CSF変異体、改変グリコシル化bG−CSF、PEG結合bG−CSF、bG−CSFアイソフォーム、G−CSF模倣物、bG−CSF断片、ハイブリッドbG−CSFタンパク質、融合タンパク質、オリゴマーおよびマルチマー、同族体、糖鎖付加パターン変異体、変異体、スプライス変異体、および、その突然変異タンパク質のうち少なくとも1つの生物活性を有する。その合成または製造の方法としては、これらに限定されないが、核酸分子のマイクロインジェクション、合成方法、トランスジェニック方法、および遺伝子活性化方法による、インビトロ、インビボでの(cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたは核酸の他の形態から生成されるかに関わらず)組み換えが挙げられる。加えて、用語bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、1つ以上のアミノ酸置換、付加または欠失を含むbG−CSFポリペプチドを包含する。ウシG−CSFの類似体の例として米国特許5,849,883号明細書を参照のこと。成熟bG−CSFポリペプチドの配列は、以下のように174アミノ酸長である。
【0013】
TPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0014】
更に、初期メチオニンアミノ酸残基を有するbG−CSFポリペプチドは以下に示すとおりである。
【0015】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0016】
bG−CSFにおけるアミノ酸位置の多種多様な置換が説明されている。置換は、これらに限定されないが、薬剤安定性を調節し、アゴニスト活性を増加させ、プロテアーゼ抵抗性を増加させ、ポリペプチドをアンタゴニストへ変換するなどのものが挙げられ、これらは、用語bG−CSFポリペプチドまたはその変異体に包含される。
【0017】
用語bG−CSFポリペプチドまたはその変異体はまた、グリコシル化bG−CSF、例えばこれらに限定されないが、任意のアミノ酸位置でグリコシル化されたポリペプチド、ポリペプチドのN結合グリコシル化形態、またはポリペプチドのO結合グリコシル化形態を含む。単一のヌクレオチド変化を含む変異体はまた、bG−CSFポリペプチドの生物学的に活性な変異体として考えられている。単一のヌクレオチド変化を含む変異体はまた、bG−CSFの生物学的に活性な変異体として考えられている。加えて、スプライス変異体もまた含まれる。用語bG−CSFポリペプチドまたはその変異体はまた、化学的手段により結合されたかまたは融合タンパク質として発現された、任意の1つ以上のbG−CSFまたは任意の他のポリペプチド、タンパク質、炭水化物、ポリマー、小分子、リンカー、リガンド、または、他のあらゆるタイプの活性分子の、bG−CSFヘテロダイマー、ホモダイマー、ヘテロマルチマー、またはホモマルチマーを含み(例えば、米国特許第6,261,550号明細書;米国特許第6,166,183号明細書;米国特許第6,204,247号明細書;米国特許第6,261,550号明細書;および米国特許第6,017,876号明細書を参照のこと)、ならびに、例えば、生物活性を維持しながらの特定の欠失または修飾を含むポリペプチド類似体を含む(例えば、米国特許第6,261,550号明細書;米国特許第6,004,548号明細書;および米国特許第6,632,426号明細書を参照のこと)。bG−CSFポリペプチドおよびその変異体は、本願明細書において参照により組み込まれた、例えば米国特許出願12/507,237号明細書(現在、米国特許出願公開2010/0035812号明細書)に記載される。いくつかの実施形態において、1つ以上の非天然にコードされたアミノ酸は、1つ以上の以下のbG−CSFでの位置:8,62,69,125,133,136、およびそれの任意の組み合わせに組み込まれる(成熟bG−CSFポリペプチドまたは初期メチオニンアミノ酸残基を有するbG−CSFポリペプチドにおいて対応するアミノ酸)。いくつかの実施形態において、非天然にコードされたアミノ酸パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)は、以下の位置:S8,S62,L69,G125,T133,A136、および、それの任意の組み合わせのうちの1つで天然にコードされたアミノ酸と置換される(成熟bG−CSFポリペプチドまたは初期メチオニンアミノ酸残基を有するbG−CSFポリペプチドにおいて対応するアミノ酸。
【0018】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−S8pAFであり、以下の配列を有する。
【0019】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0020】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置S8で起こる。
【0021】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−S62pAFであり、以下の配列を有する。
【0022】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0023】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置S62で起こる。
【0024】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−L69pAFであり、以下の配列を有する。
【0025】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0026】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置L69で起こる。
【0027】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−G125pAFであり、以下の配列を有する。
【0028】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0029】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置G125で起こる。
【0030】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAFであり、以下の配列を有する。
【0031】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0032】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置T133で起こる。
【0033】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−A136pAFであり、以下の配列を有する。
【0034】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0035】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置A136で起こる。
【0036】
本発明の製剤は、リンカー、ポリマー、または生物学的に活性な分子と結合するbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含み得る。リンカー、ポリマー、および、生物学的に活性な分子は、米国特許出願12/507,237号明細書(現在、米国特許出願公開2010/0035812号明細書)に記載されている。本願明細書において用いられる用語「結合(linkage)」または「リンカー(linker)」は、通常は化学反応の結果に形成され、典型的には共有結合により形成される基または結合を意味する。加水分解に安定な結合は、水中で実質的に安定であり、有用なpH値(例えば、これらに限定されないが、長時間、おそらくいつまでも生理条件下)では水に反応しない結合を意味する。加水分解に不安定または分解可能な結合は、結合が水中または水性溶液(例えば血液)中で分解可能であることを意味する。酵素的に不安定または分解可能な結合は、1つ以上の酵素により分解され得る結合を意味する。当該技術分野において理解されるように、PEGおよび関連ポリマーは、ポリマー骨格とポリマー分子の1つ以上の末端官能基との間でのポリマー骨格またはリンカー基で分解可能な結合を含み得る。例えば、生物学的に活性因子上でのPEGカルボン酸またはアルコール基を有するPEGカルボン酸の反応により形成されたエステル結合は、一般的に生理条件下で加水分解して、因子を放出する。他の加水分解で分解可能な結合としては、これらに限定されないが、アミンとアルデヒドの反応から得られたカーボネート結合、イミン結合;リン酸基を有するアルコールの反応により形成されたリン酸エステル結合;ヒドラジドとアルデヒドの反応生成物であるヒドラゾン結合;アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタール結合;ギ酸塩とアルコールの反応生成物であるオルトエステル結合;ペプチドのアミン基(例えば、これに限定されないが、ポリマー(例えばPEGの末端基)およびカルボキシル基により形成されたペプチド結合;および、オリゴヌクレオチドのホスホラミダイト基(例えば、これに限定されないが、ポリマーの末端基)および5’ヒドロキシル基が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、水溶性ポリマーと結合する。本願明細書において用いられるように、用語「水溶性ポリマー」は、水溶媒に可溶なあらゆるポリマーを意味する。水溶性ポリマーとbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の結合は、例えば、これに限定されないが、血中半減期の増加または調節、未修飾形態に関連する治療的半減期の増加または調節、免疫原性の調節、物理的結合特性(例えば、凝集およびマルチマー形成)の調節、レセプター結合の変更、1つ以上の結合パートナーに対する結合の変更、および、レセプター二量化または多量化の変更などの変化をもたらし得る。水溶性ポリマーは、それ自身の生物活性を有し得るかまたは有し得ず、他の物質(例えば、これに限定されないが、1つ以上のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体、または、1つ以上の生物学的に活性な分子)にbG−CSFを付着させるリンカーとして使用され得る。適切なポリマーとしては、これに限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、そのモノC1−C10アルコキシまたはアリールオキシ誘導体(米国特許5,252,714号明細書に記載される)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体(例えば、硫酸デキストラン)、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、オリゴ糖、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体(例えば、これに限定されないが、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)、澱粉および澱粉誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールのコポリマーおよびその誘導体、ポリビニルエチルエーテル、およびアルファ−ベータ−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミドなどまたはその誘導体が挙げられる。このような水溶性ポリマーの例としては、これに限定されないが、ポリエチレングリコールおよび血清アルブミンが挙げられる。国際特許公開03/074087号および国際特許公開03/074088号は、ヒドロキシアルキル澱粉(HAS)に対するタンパク質または小分子の共役を説明している。ヒドロキシアルキル澱粉の例としては、これに限定されないが、ヒドロキシアルキル澱粉が挙げられる。ヒドロキシアルキル澱粉および別の分子の共役体は、例えば、HASの末端アルデヒド基と他の分子の反応基との間の共有結合を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)部分である。いくつかの実施形態において、ポリ(エチレングリコール)部分は、約0.1kDaから約100kDaの間の分子量を有する。別の実施形態において、水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約50kDaの間の分子量を有する。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、約10kDaから約30kDaの間の分子量を有する。別の実施形態において、水溶性ポリマーは、約15kDaから約25kDaの間の分子量を有する。さらに別の実施形態において、水溶性ポリマーは、約20kDaの分子量を有する。当業者は、「約20kDa」の分子量を有する水溶性ポリマーが、本願明細書に基づく約15%(すなわち、約17kDaから約23kDa)の分子量の変動性およびその部分のポリ分散物を含むことが理解される。
【0039】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−S8pAFであり、以下の配列を有する。
【0040】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0041】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置S8で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置S8で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−S8pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0042】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−S62pAFであり、以下の配列を有する。
【0043】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0044】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置S62で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置S62で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−S62pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0045】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−S69pAFであり、以下の配列を有する。
【0046】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0047】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置S69で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置S69で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−S69pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0048】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−G125pAFであり、以下の配列を有する。
【0049】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0050】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置G125で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置G125で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−G125pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0051】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAFであり、以下の配列を有する。
【0052】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0053】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置T133で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置T133で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−T133pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0054】
一実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T136pAFであり、以下の配列を有する。
【0055】
MTPLGPARSLPQSFLLKCLEQVRKIQADGAELQERLCAAHKLCHPEELMLLRHSLGIPQAPLSSCSSQSLQLTSCLNQLHGGLFLYQGLLQALAGISPELAPTLDTLQLDVTDFATNIWLQMEDLGAAPAVQPTQGAMPTFTSAFQRRAGGVLVASQLHRFLELAYRGLRYLAEP
【0056】
ここで、単一パラ−アセチルフェニルアラニン(pAF)置換は、位置A136で起こり、ポリ(エチレングリコール)部分と結合する。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分は、約20kDaの分子量を有する場合、この実施形態のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、20kDaポリ(エチレングリコール)部分が位置A136で起こるpAF置換に結合することを示す「bG−CSF−A136pAF−20K PEG」として特定され得る。
【0057】
本願明細書に用いられるように、用語「安定性(stability)」および「安定な(stable)」は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含む製剤では、所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および保存条件下での、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の熱変性および化学変性、凝集、分解、変性、断片化、または、不安定化を意味する。本発明の「安定な」製剤は、所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および保存条件下での、望ましくは80%、85%、90%、95%、98%、99%、または99.5%以上の生物活性の保持をもたらす構造的完全性を維持する。製剤の安定性は、当業者が公知の方法および更に本願明細書に記載された方法による、凝集、脱ペグ化、分解、変性、または断片化の程度によって評価され得る。
【0058】
本願明細書において用いられるように、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含む製剤では、用語「水性」は、水、1つ以上の水溶性有機溶媒、または、その混合物を意味する。用語「有機溶媒」は、その従来の意味で本願明細書で用いられ、液体有機化合物、典型的には液体形態の単量体有機材料、好ましくは比較的非粘着性の液体、酸素原子、炭素原子、および任意に他の原子も含有し、かつ、抗体、気体、または液体を溶解可能な分子構造を意味する。
【0059】
本発明の医薬製剤は、薬学的に受容可能な担体を含み得る。薬学的に受容可能な担体は、投与される特定の組成物により、ならびに、組成物を投与するのに用いられる特定の方法により、部分的に決定される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed. (1985)を参照のこと)。適切な薬学的に受容可能な担体としては、これに限定されないが、緩衝物質および賦形剤を含み、例えばこれらは、食塩水、緩衝食塩水、グルコース、水、グリセロール、エタノール、および/または、それらの組み合わせを含有する。適切な担体は、コハク酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、HEPES、クエン酸塩、ヒスチジン、イミダゾール、酢酸塩、重炭酸塩、および、他の有機酸を含有する緩衝物質であり得る。適切な担体は、多価糖アルコール、アミノ酸(例えば、アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、ロイシン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等)、有機糖または糖アルコール(例えば、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール糖)を含有し、シクリトール(例えば、イノシトール);ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー、含硫還元剤(例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール、α−モノチオグリコール、および、チオ硫酸ナトリウム);低分子量ポリペプチド(すなわち、10残基未満);タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、およびグリコース);二糖(例えば、ラクトース、マルトース、およびスクロース);三糖(例えば、ラフィノース)および多糖類(例えば、デキストラン)を含む賦形剤であり得る。
【0060】
クエン酸塩、ヒスチジン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、またはその組み合わせは、緩衝物質として本発明に従って使用され得る。いくつかの実施形態において、クエン酸またはコハク酸エステルは、安定水性製剤での緩衝物質として使用される。いくつかの実施形態において、緩衝物質は、約10mMから約50mMの間の部分を有する。いくつかの実施形態において、緩衝物質は、約30mMの部分を有する。緩衝物質は、対応する遊離酸の形態またはアルカリ塩、アルカリ土類塩またはアンモニウム塩の形態のいずれかで存在し得る。製剤は、更に共通の薬学的補助物質を含有し得る。液体医薬製剤の生成の間における種々の補助物質または活性物質の追加物の配列は、本発明に従って見出された保存における安定化効果とは大きく独立しており、当業者の裁量によるものである。
【0061】
塩化ナトリウム、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、またはその組み合わせは、本発明に従って賦形剤として用いられ得る。一実施形態において、賦形剤は、アルギニンである。いくつかの実施形態において、アルギニンは、約100mMから約500mMの間のモル濃度である。他の実施形態において、アルギニンは、約200mMから約300mMの間のモル濃度である。いくつかの実施形態において、アルギニンは、約250mMのモル濃度である。
【0062】
従来、タンパク質の医薬製剤は、界面活性剤を含む。界面活性剤の包含は、処理の間に出くわす表面に対して、および、それらの熱力学的立体配座の安定性の変更に対して、潜在的な不安定化面においてタンパク質を保護し得る。界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、ポリソルベート界面活性剤である。ポリソルベート界面活性剤の一例は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートであり、商品名Tween20(登録商標)とも知られる。しかしながら、微量レベルのポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含有するbG−CSF製剤の研究は、凝集が25℃での5日間のインキュベーション後に、3.2%まで(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定される)増加することを示している。よって、本発明の製剤は、界面活性剤、ポリソルベート界面活性剤、および/またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを実質的に含まない。本願明細書において用いられるように、界面活性剤、ポリソルベート界面活性剤、および/またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを「実質的に含まない」という用語は、界面活性剤、ポリソルベート界面活性剤、および/またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを0.033%未満、0.001%未満、0.0005%未満、0.0003%未満、または、0.0001%未満で含有する製剤を意味する。本発明の製剤は、望ましい特性(例えば、最小限の製剤凝集および最小限の不安定化、および、適用可能であれば脱ペグ化)を有する安定製剤を達成するために、界面活性剤、ポリソルベート界面活性剤、および/またはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを実質的に含まない。
【0063】
本願明細書において用いられる用語「生物学的に活性な分子」は、有機体(例えば、これに限定されないが、ウイルス、バクテリア、バクテリオファージ、トランスポゾン、プリオン、昆虫、菌類、植物、動物、およびヒト)に関連する生物学的システム、経路、分子、相互作用あらゆる物理的または生化学的特性に影響を与え得るあらゆる物質を意味する。特に、本願明細書において用いられる、生物学的に活性な分子としては、これに限定されないが、ヒトまたは他の動物の疾患についての診断、治療、緩和、処置、または予防を対象とし、あるいは、一方でヒトまたは動物における肉体的または精神的幸福を促進することを対象とするあらゆる物質を含む。生物学的に活性な分子の例としては、これに限定されないが、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬物、ワクチン、免疫源、硬性薬物、軟性薬物、炭水化物、無機原子、または、分子、染料、脂質、ヌクレオシド、放射性核種、オリゴヌクレオチド、トキソイド、毒素、原核生物および真核生物、ウイルス、多糖、核酸、およびその部分が挙げられ、これらは、ウイルス、バクテリア、昆虫、動物またはあらゆる他の細胞または細胞タイプ、リポソーム、微小分子およびミセルから得られるかまたはこれら由来である。
【0064】
本発明の医薬製剤はまた、1つ以上の他の活性成分を、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体に加えて任意に含む。本願明細書において用いられるように、用語「活性成分」または「治療成分」は、治療的に活性な化合物、ならびに、その任意のプロドラッグおよび薬学的に受容可能な塩、化合物およびプロドラッグの水和物と溶媒和物を意味する。他の活性成分は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体と組み合わされ得、別個に投与され得るか、同じ薬学的製剤中で投与され得る。与えられる他の活性成分の量は、bG−CSFを用いる治療に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【0065】
本発明の医薬製剤はまた、1つ以上の他の不活性成分を、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体に加えて任意に含む。本願明細書において用いられるように、用語「不活性成分」は、治療的に不活性な化合物、ならびに、その任意のプロドラッグおよび薬学的に受容可能な塩、化合物およびプロドラッグの水和物と溶媒和物を意味する。他の不活性成分は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体と組み合わされ得、別個に投与され得るか、同じ薬学的製剤中で投与され得る。与えられる他の不活性成分の量は、bG−CSFを用いる治療に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【0066】
安定水性製剤中のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の量は、治療効果を達成するのに適切である。本願明細書において用いられるように、用語「治療有効量」は、動物に対する所望の利点を与え、かつ、治療投与および予防投与の両方の利点を与える量である。この量は、ある固体から別の固体まで異なり、患者の体調および治療状態の根本原因を含む因子数に依存する。治療に用いられるbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の量は、受容可能な変化速度を与え、有益なレベルでの所望な反応を維持する。本発明の組成物の治療有効量は、公的に入手可能な材料および手順を用いて当業者に容易に確認され得る。例えば、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の量は、約0.5から約12グラム/リットルの間、好ましくは約5グラム/リットルの量で製剤中に存在し得る。
【0067】
本発明によると、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の安定水性製剤は、種々のpH値で製剤化され得る。いくつかの実施形態において、安定水性製剤は、約5.7から約6.6の間のpH値を有し得る。一実施形態において、安定水性製剤は、約6.0から約6.3の間のpH値を有し得る。製剤の望ましいpH値は、例えば、アルカリ性水酸化物、アルカリ土類水酸化物、または、アンモニウム水酸化物等の塩基を加えることで調整される。水酸化ナトリウムは、好ましくは、pH調節のために用いられ得る。所望のpH値の調節は、原則的に、酸性溶液を加えることで達成され得る。一般的に、弱酸を有する強塩基の塩(例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素カリウムまたは酢酸カリウム等)が用いられ得る。補助物質の薬学的溶液が基本pH値を有する場合、それは、所望のpH範囲の4−5または7−8に達するまで酸で滴定することで調節される。生理学的に許容される無機酸および有機酸は、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、または、酸性pH値を有する物質の典型的な溶液等の酸として考えられる。この局面において、いくつかの例の物質は、弱塩基を有する強酸(例えば、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸二水素カリウム)である。
【0068】
以下の実施例で実証しているように、本発明のbG−CSF製剤は、ストレス下保存条件および促進された保存条件下でbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の望ましい低い凝集濃度を示している。本願明細書において用いられる、ストレス保存条件は、製剤サンプルが25℃で5日間インキュベートされた後に評価される。本願明細書において用いられる、促進された保存条件は、製剤サンプルが40℃で1日間インキュベートされた後に評価される。保存条件はまた、本発明の目的のために他の種々の温度および継続時間で評価され得る。例えば、保存条件は、製剤サンプルが25℃で28日間インキュベートされた後、または、製剤サンプルが40℃で3日間インキュベートされた後に評価され得る。
【0069】
bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の凝集濃度は、以下のストレス下保存条件および促進された保存条件で分析される。いくつかの実施形態において、本発明のbG−CSF製剤は、ストレス下保存条件で約2.1%(重量/重量パーセント)未満のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の凝集濃度を有する。他の実施形態において、本発明のbG−CSF製剤は、ストレス保存条件で約1.5%(重量/重量パーセント)未満のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の凝集濃度を有する。いくつかの実施形態において、本発明のbG−CSF製剤は、促進された保存条件で約1.5%(重量/重量パーセント)未満のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の凝集濃度を有する。

【0070】
加えて、強制攪拌研究または凍結融解研究は、本発明の製剤の安定特性を評価するために使用され得る。例えば、強制攪拌研究は、磁気スターラーを用いて設定速度(例えば、60rpm)でガラスビーカー中で製剤サンプルを混合する工程からなり得る。攪拌を、製剤サンプルの特徴を決定するために、所定期間(例えば、2時間)の間で起こし得る。凍結融解サイクルは、約75℃で1時間の間製剤サンプルを凍結する工程、および、氷が観察されなくなるまで室温で約1時間融解する工程からなり得る。
【0071】
更に、以下の実施例で実証しているように、本発明のbG−CSF製剤は、ストレス下保存条件および促進された保存条件下でbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の望ましい不安定化および/または脱ペグ化特性を示し得る。本願明細書において用いられるように、用語「脱ペグ化」は、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体に結合するペグ化部分の付着の安定性を意味し、すなわち、例えば水性溶液中で保存する間にこのようなペグ化部分が時間とともにポリペプチドと結合し続けるか否か、または、それらが例えばエステル結合加水分解の結果として分離しやすい傾向にあるか否かを意味する。
【0072】
いくつかの実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の安定水性製剤は、緩衝物質としてクエン酸および賦形剤としてアルギニンを用いて製剤化し得る。一実施形態において、水性製剤は、緩衝物質としてクエン酸一水和物(Fisher,C/6200/60または同等物)および賦形剤としてL−アルギニン(Sigma,A8094または同等物)を用いて調製され得る。水性製剤は、1.6±0.1グラムのクエン酸一水和物および10.9±0.1グラムのL−アルギニンを200mLの高品質水に加えることで調製され得る。その後、pHは、塩酸を用いて6.0±0.1まで調整され得、混合物は、高品質水を用いて250mLに希釈され得る。得られた製剤は、6.0のpHで、30mMクエン酸、250mMアルギニン、およびbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含み得る。
【0073】
本発明にかかる水性製剤は、従来の凍結乾燥または粉末によって凍結乾燥物を生成するために使用され得る。本発明にかかる製剤は、水または他の水性溶液中に凍結乾燥物を溶解することで再度得られる。フリーズドライ(freeze−drying)としても知られる用語「凍結乾燥(lyophilization)」は、対象のタンパク質調製物から水を除去するのに役立つタンパク質を提供するのに一般的に利用される技術である。凍結乾燥は、乾燥させる材料をまず凍結し、次いで氷または凍結溶媒を真空環境での昇華によって除去する工程である。賦形剤は、凍結乾燥前の製剤中に含まれ得、フリーズドライ工程の間に安定性を促進し、および/または、保存の際の凍結乾燥生成物の安定性を向上させる。例えば、Pikal,M.Biopharm.3(9)26−30(1990)およびArakawaら、Pharm.Res.8(3):285−291(1991)を参照のこと。
【0074】
薬学的成分のスプレー乾燥もまた当業者に公知である。例えば、Broadhead,J.ら、Drug Dev.Ind.Pharm,18(11&12),1169−1206(1992)の「The Spray Drying of Pharmaceuticals」を参照のこと。小分子調剤に加えて、種々の生物学的材料(例えば、酵素、血清、微生物、および酵母)はスプレー乾燥されている。スプレー乾燥は、液体薬学的調製物を、純度の高い、埃のないまたは凝集した粉末へと一工程で変換できるので有用な技術である。基本技術は、以下の4工程を含む。(a)与えられた溶液(feed solution)のスプレーへの噴霧;(b)スプレーエアー接触;(c)スプレーの乾燥;(d)乾燥空気からの乾燥生成物の分離。例えば、米国特許第6,235,710号明細書および米国特許第6,001,800号明細書は、スプレー乾燥による組み換えエリスロポエチンの生成を記載している。
【0075】
bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤を使用する方法もまた、本発明に含まれる。bG−CSFは、限定されないが、その受容体に対する結合、その受容体の二量化を引き起こすこと、好中球産生の刺激、ならびに細胞増殖および分化を刺激することを含む、種々の生物学的活性を有する。顆粒球コロニー刺激因子およびbG−CSFの生物学的活性の一部は、上記ならびに米国特許第6,676,947号;同第6,579,525号;同第6,531,121号;同第6,521,245号;同第6,489,293号;同第6,368,854号;同第6,316,254号;同第6,268,336号;同第6,239,109号;同第6,165,283号;同第5,986,047号;同第5,830,851号;同第5,043,156号;および同第5,773,569号に記載されている。本発明のb−GCSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、広範囲の障害の治療または予防に有用である。「予防」とは、受容者が、病態のいずれかを発生または発症する可能性を減少させることを指す。「予防」という用語は特に、特定の病理学的状態の影響を受けやすい患者に適用できる。「治療」という用語は、疾患または病態を仲介し、疾患の臨床作用を予防し、反転するか、またはそのさらなる進行を軽減するか、または疾患もしくは病態に関連した症状を寛解することを指す。
【0076】
G−CSF生成物の投与は白血球形成を生じる。従って、本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤の投与は、感染の危険性のある動物における感染を予防するのに有用であり得る。本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、感染を有する動物に投与されてもよい。本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤を用いて治療され得る感染には、限定されないが、乳腺炎および輸送熱が含まれる。本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、例えば、2週間の間、および誕生の一日前に動物に投与されてもよく、必要に応じて、追加投与が誕生の日または誕生後、1週間まで与えられてもよい。一部の実施形態において、本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤を投与される動物はウシであり、誕生は「分娩」と称される。一実施形態において、本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、乳腺炎を予防するために周産期のウシに投与されてもよい。
【0077】
本発明によれば、本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、限定されないが、皮下または静脈内または注射もしくは点滴の任意の他の形態を含む、限定されないが、非経口、例えば注射を含む、タンパク質またはペプチドに適切な任意の従来の経路により投与されてもよい。bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、限定されないが、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下腺、血管内、乳房内、または直腸手段を含む、複数の経路により投与されてもよい。bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤はまた、リポソームにより投与されてもよい。このような投与経路および適切な製剤は一般に当業者により公知である。単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤はまた、吸入により投与されるエアロゾル製剤にされてもよい(すなわちそれらは「噴霧」され得る)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧を許容できる推進剤に入れられてもよい。
【0078】
例えば、関節内(接合部分におて)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路により非経口投与に適切なbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤には、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、および製剤等張を対象とする受容者の血液に与える溶質を含有し得る、水性および非水性の無菌等張注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含有し得る水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単回投与または複数回投与の密閉容器に提供されてもよい。bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤はまた、予め充填されたシリンジなどのシリンジに提供されてもよい。
【0079】
非経口投与および静脈内投与が本発明の製剤の投与の可能な方法である。特に、現在使用する製剤と共に、天然のアミノ酸相同体治療薬のために既に使用されている投与経路(限定されないが、EPO、GH、G−CSF、GM−CSF、IFN、インターロイキン、抗体、FGF、および/または任意の他の薬学的に送達されるタンパク質について典型的に使用されているものを含む)が、本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する製剤の可能な投与経路である。
【0080】
一部の実施形態において、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体を含有する本発明の製剤は、約0.5〜約12グラム/リットルの間の量である。本発明に関して、動物へ投与する用量は、時間にわたる動物における有益な治療応答、または用途に応じて他の適切な活性を有するのに十分である。用量は、特定のベクターまたは製剤の有効性、および利用される非天然アミノ酸ポリペプチドの活性、安定性または血中半減期、および動物の病態、ならびに治療される動物の体重または表面積により決定される。用量のサイズもまた、特定の動物における特定のベクター、製剤などに伴う存在度、性質、およびあらゆる副作用の範囲により決定される。
【0081】
本発明に関して動物に投与される用量は、時間にわたって被験体に有益な応答を引き起こすのに十分である。通常、用量当たり非経口で投与される本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の全体の薬学的に有効な量は、動物の体重の約0.01μg/kg/日〜約100μg/kg、または約0.05mg/kg〜約1mg/kgの範囲であるが、これは治療裁量による。あるいは、用量当たり非経口に投与される本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の薬学的に有効な量は、約1mg〜約25mg、または約5mg〜約20mgである。例えば、用量当たり非経口で投与される本発明のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の薬学的に有効な量は約14mgであってもよい。投与頻度はまた、治療裁量による。
【0082】
bG−CSFポリペプチドまたはその変異体の薬学的に有効な量は、単一用量として、または複数回投与スケジュールの一部として動物に投与されてもよい。例えば、bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、複数回投与されてもよく、そのスケジュールは少なくとも2回の投薬レジメンである。一実施形態において、複数回投与スケジュールは2回の投薬レジメンである。
【0083】
一実施形態において、複数回投与スケジュールは、動物の誕生の約1日〜約14日前に動物に投与される第1の用量と、動物の誕生の約4日〜約7日後に動物に投与される第2の用量とを含む。別の実施形態において、複数回投与スケジュールは、動物の誕生の約7日前に動物に投与される第1の用量と、動物の誕生の日に動物に投与される第2の用量とを含む。
【0084】
以下の実施形態もまた意図される。
項1 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、緩衝物質、および賦形剤を含む安定水性製剤であって、前記製剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを実質的に含まない、製剤。
項2 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、リンカー、ポリマー、または生物学的に活性な分子と結合する、項1に記載の製剤。
項3 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、水溶性ポリマーと結合する、項1または項2に記載の製剤。
項4 前記水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)部分を含む、項3に記載の製剤。
項5 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約100kDaの間の分子量を有する、項3または項4に記載の製剤。
項6 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約50kDaの間の分子量を有する、項3〜5のいずれか1つに記載の製剤。
項7 前記水溶性ポリマーは、約20kDaの分子量を有する、項3〜6のいずれか1つに記載の製剤。
項8 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAF−20K PEGである、項1〜7のいずれか1つに記載の製剤。
項9 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、約0.5から約12グラム/リットルの間の量で存在する、項1〜8のいずれか1つに記載の製剤。
項10 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、約5グラム/リットルの量で存在する、項1〜9のいずれか1つに記載の製剤。
項11 前記緩衝物質は、クエン酸塩、ヒスチジン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、またはそれらの組み合わせである、項1〜10のいずれか1つに記載の製剤。
項12 前記緩衝物質は、クエン酸塩またはコハク酸塩である、項1〜11のいずれか1つに記載の製剤。
項13 前記緩衝物質は、クエン酸塩である、項1〜12のいずれか1つに記載の製剤。
項14 前記緩衝物質は、コハク酸塩である、項1〜12のいずれか1つに記載の製剤。
項15 前記緩衝物質は、約10mMから約50mMの間のモル濃度を有する、項1〜14のいずれか1つに記載の製剤。
項16 前記緩衝物質は、約30mMのモル濃度を有する、項1〜15のいずれか1つに記載の製剤。
項17 前記賦形剤は、塩化ナトリウム、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、またはそれらの組み合わせである、項1〜16のいずれか1つに記載の製剤。
項18 前記賦形剤は、アルギニンである、項1〜17のいずれか1つに記載の製剤。
項19 前記アルギニンは、約100mMから約500mMの間のモル濃度を有する、項18に記載の製剤。
項20 前記アルギニンは、約200から約300mMのモル濃度を有する、項18または項19に記載の製剤。
項21 前記アルギニンは、約250mMのモル濃度を有する、項18〜20のいずれか1つに記載の製剤。
項22 前記製剤は、約5.7から約6.6の間のpHを有する、項1〜21のいずれか1つに記載の製剤。
項23 前記製剤は、約6.0から約6.3の間のpHを有する、項1〜22のいずれか1つに記載の製剤。
項24 前記製剤は、ストレス下での保存条件にて5日のインキュベーション期間後、約2.1%重量/重量%未満のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の平均凝集濃度を有する、項1〜23のいずれか1つに記載の製剤。
項25 前記製剤は、促進された保存条件にて1日のインキュベーション期間後、約1.5%重量/重量%未満のbG−CSFポリペプチドまたはその変異体の平均凝集濃度を有する、項1〜24のいずれか1つに記載の製剤。
項26 1種以上の他の治療成分を任意に含む、項1〜25のいずれか1つに記載の製剤。
項27 項1〜26のいずれか1つに記載の製剤の凍結乾燥物または粉末。
項28 項27に記載の凍結乾燥物または粉末を水に溶解することにより生成される水溶液。
項29 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、緩衝物質、および賦形剤を含む安定水溶液を形成する工程を含む、項1〜26のいずれか1つに記載の製剤を調製するためのプロセスであって、前記製剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを実質的に含まない、プロセス。
項30 bG−CSFにより変調された疾患を有する動物を治療する方法であって、前記動物に対して治療有効量の項1〜26のいずれか1つに記載の製剤を投与する工程を含む、方法。
項31 前記疾患は、感染症である、項30に記載の方法。
項32 前記感染症は、乳腺炎であり、前記動物は、周産期のウシである、項31に記載の方法。
項33 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、クエン酸塩またはコハク酸塩緩衝剤、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンを含む、安定水性製剤。
項34 前記製剤は、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まない、項33に記載の製剤。
項35 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、リンカー、ポリマー、または生物学的に活性な分子と結合する、項33または項34に記載の製剤。
項36 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、水溶性ポリマーと結合する、項33〜35のいずれか1つに記載の製剤。
項37 前記水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)部分を含む、項36に記載の製剤。
項38 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約100kDaの間の分子量を有する、項36または項37に記載の製剤。
項39 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約50kDaの間の分子量を有する、項36〜項38のいずれか1つに記載の製剤。
項40 前記水溶性ポリマーは、約20kDaの分子量を有する、項36〜項39に記載の製剤。
項41 前記ポリソルベート界面活性剤は、ナトリウムモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体である、項34〜40のいずれか1つに記載の製剤。
項42 前記ポリソルベート界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートである、項34〜41のいずれか1つに記載の製剤。
項43 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAF−20K PEGである、項33〜42のいずれか1つに記載の製剤。
項44 bG−CSF−T133pAF−20K PEGは、約0.5から約12グラム/リットルの間の量で存在し、前記クエン酸塩緩衝剤は、約30mMのモル濃度を有し、アルギニンは、約250mMのモル濃度を有し、前記製剤は、約6.0のpH値を有する、項43に記載の製剤。
項45 前記製剤は、25℃で28日のインキュベーション期間後、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項43または項44に記載の製剤。
項46 前記製剤は、40℃で3日のインキュベーション期間後、約2.8%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項43〜45のいずれか1つに記載の製剤。
項47 前記製剤は、強制攪拌研究の後で、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項43〜46のいずれか1つに記載の製剤。
項48 前記製剤は、5回の凍結融解サイクルの後で、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項43〜47のいずれか1つに記載の製剤。
項49 前記アルギニンに対する対イオンは、塩化物または硫酸塩である、項33〜48のいずれか1つに記載の製剤。
項50 1種以上の他の治療成分を任意に含む、項33〜49のいずれか1つに記載の製剤。
項51 項33〜50のいずれか1つに記載の製剤の凍結乾燥物または粉末。
項52 項51に記載の凍結乾燥物または粉末を水に溶解することにより生成される水溶液。
項53 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、クエン酸塩緩衝剤、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンを含む安定水溶液を形成する工程を含む、項33〜50のいずれか1つに記載の製剤を調製するためのプロセス。
項54 前記製剤は、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まない、項53に記載のプロセス。
項55 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAF−20K PEGである、項53または項54に記載のプロセス。
項56 bG−CSFにより変調された疾患を有する動物を治療する方法であって、前記動物に対して治療有効量の項33〜50のいずれか1つに記載の製剤を投与する工程を含む、方法。
項57 前記疾患は、感染症である、項56に記載の方法。
項58 前記感染症は、乳腺炎であり、前記動物は、周産期のウシである、項57に記載の方法。
項59 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、クエン酸塩またはコハク酸塩緩衝剤、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンを本質的に含む、安定水性製剤。
項60 前記製剤は、界面活性剤を実質的に含まない、項59に記載の製剤。
項61 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、リンカー、ポリマー、または生物学的に活性な分子と結合する、項59または項60に記載の製剤。
項62 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、水溶性ポリマーと結合する、項59〜61のいずれか1つに記載の製剤。
項63 前記水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)部分を含む、項62に記載の製剤。
項64 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約100kDaの間の分子量を有する、項62または項63に記載の製剤。
項65 前記水溶性ポリマーは、約0.1kDaから約50kDaの間の分子量を有する、項62〜64のいずれか1つに記載の製剤。
項66 前記水溶性ポリマーは、約20kDaの分子量を有する、項62〜65のいずれか1つに記載の製剤。
項67 前記界面活性剤は、ポリソルベート界面活性剤である、項60〜66のいずれか1つに記載の製剤。
項68 前記界面活性剤は、ナトリウムモノラウレートのポリオキシエチレン誘導体である、項60〜項67のいずれか1つに記載の製剤。
項69 前記界面活性剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートである、項60〜項68のいずれか1つに記載の製剤。
項70 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAF−20K PEGである、項59〜69のいずれか1つに記載の製剤。
項71 bG−CSF−T133pAF−20K PEGは、約0.5から約12グラム/リットルの間の量で存在し、前記クエン酸塩緩衝剤は、約30mMのモル濃度を有し、アルギニンは、約250mMのモル濃度を有し、前記製剤は、約6.0のpH値を有する、項70に記載の製剤。
項72 前記製剤は、25℃で28日のインキュベーション期間の後、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項70または項71に記載の製剤。
項73 前記製剤は、40℃で3日のインキュベーション期間の後、約2.8%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項70〜72のいずれか1つに記載の製剤。
項74 前記製剤は、強制攪拌研究の後、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項70〜73のいずれか1つに記載の製剤。
項75 前記製剤は、5回の凍結融解サイクルの後、約1.6%重量/重量%未満のbG−CSF−T133pAF−20K PEGの平均凝集濃度を有する、項70〜74のいずれか1つに記載の製剤。
項76 前記アルギニンに対する対イオンは、塩化物または硫酸塩である、項59〜75のいずれか1つに記載の製剤。
項77 1種以上の他の治療成分を任意に含む、項59〜76のいずれか1つに記載の製剤。
項78 項59〜77のいずれか1つに記載の製剤の凍結乾燥物または粉末。
項79 項78に記載の凍結乾燥物または粉末を水に溶解することにより生成される水溶液。
項80 bG−CSFポリペプチドまたはその変異体、クエン酸塩緩衝剤、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンから本質的になる安定水溶液を形成する工程を含む、項59〜77のいずれか1つに記載の製剤を調製するためのプロセス。
項81 前記製剤は、界面活性剤を実質的に含まない、項80に記載のプロセス。
項82 前記bG−CSFポリペプチドまたはその変異体は、bG−CSF−T133pAF−20K PEGである、項80または項81に記載のプロセス。
項83 bG−CSFにより変調された疾患を有する動物を治療する方法であって、前記動物に対して治療有効量の項59〜77のいずれか1つに記載の製剤を投与する工程を含む、方法。
項84 前記疾患は、感染症である、項83に記載の方法。
項85 前記感染症は、乳腺炎であり、前記動物は、周産期のウシである、項84に記載の方法。
項86 bG−CSF−T133pAF−20K PEG、クエン酸塩緩衝剤、アルギニン、および任意にアルギニンに対する対イオンから本質的になる安定水性製剤であって、前記クエン酸塩緩衝剤は、約30mMのモル濃度を有し、前記アルギニンは、約250mMのモル濃度を有する、安定水性製剤。
【実施例】
【0085】
実施例1
緩衝剤および賦形剤スクリーニング研究
バックグランド中にポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを有さないbGCSF−T133−20K PEG製剤を、複数の緩衝剤および賦形剤(塩化ナトリウム、トレハロース、およびアルギニン)を用いて生産物安定性を評価するためにスクリーニングできる。全ての透析緩衝剤についての標的pHはpH6.0である。比較のために、pH6.0にて10mMリン酸塩、180mMマンニトール、および60mMトレハロースを含有する製剤を調製できる。その製剤は、酸素の存在および非存在下でタンパク質凝集および脱ペグ化に対する効果について評価できる。
【0086】
サンプルは、各製剤中に2〜8℃にて1mLのbGCSF−T133−20K PEGを透析することにより調製できる。透析したサンプルのタンパク質濃度は、タンパク質濃度を5mg/mLに正規化する前に測定できる。透析および濃度正規化後、約3×1mLの透析後の希釈したプールを5mLのガラスバイアルに充填できる。サンプルの1つのセットは初期条件を提供するために試験できる。第2のセットは、試験前に5日間、25℃/60%RHにて保存できる。サンプルの第3のセットは、不活性雰囲気(窒素)下で閉じた、凍結乾燥チャンバ中で脱気でき、次いで試験前に5日間、25℃/60%RHにて保存できる。5日後、SECにより測定して、凝集レベルが2.0%以下になった場合、脱気した、および脱気していない両方のサンプルは、1日間40℃にてインキュベートできる。
【0087】
5日のインキュベーション後、各サンプルのタンパク質濃度を測定できる。表1はタンパク質濃度を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表2は各サンプルについてのpHの結果を示す。
【表2】
【0090】
各製剤におけるタンパク質凝集および脱ペグ化レベルはSECにより分析できる。表3はSECの結果を示し、凝集および脱ペグ化レベルが全てのサンプルにわたって類似していたことを示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表4は、1日間、40℃でインキュベートしたサンプルについてのSECの結果を示す。凝集組成物の比較は、アルギニンを含有する製剤が最も低い生成物凝集を有したことを示す。さらに、基準製剤である10mMリン酸塩、180mMマンニトール、および60mMトレハロース pH6は、スクリーニング研究における全ての他の製剤と比較して最も高いレベルの凝集を有する。
【0093】
【表4】
【0094】
このスクリーニング研究からの結果は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを全て有さないコハク酸塩、ヒスチジン、マレイン酸塩、およびクエン酸塩の製剤は、25℃での5日のインキュベーション後、ごく少量の凝集増加(SECにより1%未満)を有することを示す。また、脱気および非脱気サンプルの間でタンパク質安定性における相違は存在しない。さらに、1日間、40℃でのストレス下でのサンプルからのSECの結果は、0.1Mアルギニンを含有する製剤が、塩化ナトリウムおよびトレハロース賦形剤を含有する製剤と比較してほとんど凝集しないことを示す。
【0095】
実施例2
bG−CSF製剤に対するポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの効果
凝集に対するポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの効果を評価して、攪拌研究についての将来の製剤に対する影響を決定できる。サンプルは、pH6.0にて10mMリン酸塩および150mM NaCl中に2〜8℃で4mLのbGCSF−T133−20K PEGを透析することにより調製できる。透析後、透析したプールは、1%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートストック溶液でスパイクでき、次いで5mg/mLの最終タンパク質濃度までpH6.0にて10mMリン酸塩および150mM NaClで希釈できる。各製剤からのサンプルは、2セットのサンプルを形成するために1mLガラスバイアルに充填した2×1mLアリコートに分けることができる。1セットは2〜8℃にて保存でき、初期条件で試験でき、第2のセットは1日間40℃にて保存できる。
【0096】
表5は、SEC積分データを示し、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート濃度が増加すると、凝集レベルが増加することを示す。サンプルのSEC分析は、bGCSF−T133−20K PEG凝集が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート濃度と共に造以下することを示す。結果として、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートは、bGCSF−T133−20K PEGについて試験する将来の製剤から除外できる。
【0097】
【表5】
【0098】
実施例3
Box−Behnken応答表面設計(DOE#1)
他の重要な過去の製剤パラメータと共に種々のアルギニン濃度の効果を試験して、主要な効果およびそれらの相互作用を評価できる。実験設計は、各々の数因子が低、中、および高レベルで変化するBox−Behnken応答表面であり得る。さらに、緩衝剤の種類はカテゴリカル因子であり得る。パラメータの組み合わせは、各々3つの中心点でクエン酸塩およびコハク酸塩について繰り返した。pHは全ての条件について6.0に設定できる。pH6にて10mMリン酸塩、150mM NaCl、および0.0033%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むコントロール条件を、過去の結果との比較のために含んでもよい。
【0099】
全ての透析緩衝剤はpH6.0±0.1にて調製できる。PEG−bGCSFは、DOE#1研究の全ての緩衝剤条件を表わす18の緩衝剤条件に透析できる。透析工程にわたるタンパク質回収はほぼ78%であり得るので、透析サンプルセット内に一致する。透析後、透析したプールのタンパク質濃度は、Box−Behnken応答表面設計において示した標的値に透析緩衝剤で調整できる。これにより、24の製剤の組み合わせプラスクエン酸塩において3つの中心点およびコハク酸塩において3つの中心点が得られ得る。各製剤は、3セットのサンプルを形成するために1mLガラスバイアルに充填した3×1mLアリコートに分けることができ、1セットは開始条件として試験でき、次いで2〜8℃に保存でき、第2のセットは2週間25℃にて保存でき、第3のセットは1日間40℃にて保存できる。
【0100】
生成物濃度の変化を分析して生成物安定性を評価できる。表6は、インキュベーション前後のサンプルの生成物濃度を示す。10mMクエン酸塩、300mMアルギニン(8mg/mL)および10mMクエン酸塩、300mMアルギニン(8mg/mL)におけるサンプルは、最も高い増加(0.5〜0.6mg/mL)を有するのに対して、全ての他のサンプルについての差はほとんどない。
【0101】
【表6】
【0102】
pHの変化を分析して、サンプルのpH安定性を評価できる。全てのサンプルのpHは6.0〜6.3の範囲内であり得る。表7は、pH値およびゼロ時からの差を示す。サンプルのpHは、DOE#1研究の全期間、安定である。
【0103】
【表7】
【0104】
SEC凝集、モノマー、および脱ペグ化レベルの変化を分析して、タンパク質安定性を評価できる。表8、9および10は、各々のサンプル組成におけるそれぞれの凝集、モノマー、および脱ペグ化の組成を示す。
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
【表10】
【0108】
SECの結果は、クエン酸塩サンプルにおける凝集レベルが相対的に未変化であることを示す。コハク酸塩サンプルもまた、100mMアルギニンを含むサンプルを除いて低い凝集レベルを有し、コハク酸塩ベースの緩衝剤が、低いタンパク質凝集を維持するために100mMアルギニンより多くを必要とすることを示唆する。コントロール条件(pH6および5mg/mLにおける10mMリン酸塩、150mM NaCl、および0.0033%(w/v)ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)は、40℃での1日のインキュベーション後、3.7%凝集を有する(表8を参照のこと)。
【0109】
脱ペグ化は別のタンパク質分解経路である。表10は、脱ペグ化生成物についてのSECの結果を示し、コハク酸塩サンプルにおける脱ペグ化レベルがクエン酸塩サンプルにおけるもの(≦0.3)より高い(0.4%〜0.8%)ことを示す。リン酸塩コントロールにおける脱ペグ化レベルは、全てのクエン酸塩製剤サンプルより高く、ほとんどのコハク酸塩製剤よりわずかに高い。
【0110】
40℃で1日間インキュベートしたクエン酸塩サンプルについてのSECの結果は最小の凝集を有するので、DOE#1サンプルのサブセットは、25℃にて28日間、インキュベートできる。以下のサンプル条件はSECにより分析できる:
1.2mg/mLにおける30mMクエン酸塩、100mMアルギニン
2.2mg/mLにおける30mMクエン酸塩、500mMアルギニン
3.8mg/mLにおける30mMクエン酸塩、100mMアルギニン
4.8mg/mLにおける30mMクエン酸塩、500mMアルギニン
5.5mg/mLにおける30mMクエン酸塩、300mMアルギニン。
【0111】
表11は28日の実験のSEC結果を示す。さらに、RP−HPLCによる分析は、生成物分解の欠如を確保するために28日にインキュベートしたサンプルで実施できる。表12はこれらの結果を示す。
【0112】
【表11】
【0113】
【表12】
【0114】
実施例4
対イオンおよび注射器適合性評価
アルギニンに対する対イオンとして塩化物および硫酸塩の比較を評価できる。サンプル条件は、5mg/mL(pH6)において30mMクエン酸塩および300mMアルギニンであり得る。さらに、薬物製剤を含有するためのMONOJECT3mLポリプロピレン注射器における製剤適合性を1mLガラスバイアルと比較できる。30mMクエン酸塩、300mMアルギニンpH6(塩化物)緩衝剤は、クエン酸ナトリウムおよびアルギニン−HClを用いて調製でき、溶液は6N HClで滴定できる。30mMクエン酸塩、300mMアルギニンpH6(硫酸塩)緩衝剤は、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、およびアルギニン塩基を用いて調製でき、ナトリウムは濃硫酸で滴定できる。bGCSFT133−20K PEGは2つの緩衝剤中に透析できる。サンプルはゼロ時にてSECにより分析できる。1セットのサンプルは、1mLガラス凍結乾燥バイアルに入れることができ、第2セットは、40℃にて3日までインキュベーション前に3mL注射器に入れることができる。
【0115】
表13はSECの結果を示す。SECの結果は、凝集形成が、ガラスバイアルより注射器に保存されたサンプルにおいて2〜3倍高いことを示す。製剤の脱ペグ化はゼロ時のサンプルと同じままである。両方の対イオンに関して、ガラスバイアル中のサンプルは、40℃にて3日後、凝集の最小の変化を有する。塩化物は、凝集形成に影響を与えずに対イオンとして硫酸塩の代わりに使用できる。
【0116】
【表13】
【0117】
実施例5
3つのパラメータ、2レベルの全ての要因(DOE#2)
第2のDOE研究は、クエン酸塩緩衝剤におけるpH、アルギニン濃度、およびタンパク質濃度の効果を評価するために実施できる。表14はDOE#2に使用される製剤条件を示す。
【0118】
【表14】
【0119】
bGCSF−T133−20K PEGは5つの緩衝剤条件に透析できる。サンプル1および2は、pH5.0にて30mMクエン酸塩および200mMアルギニンを含有する緩衝剤に透析できる。サンプル3および4は、pH5.0にて30mMクエン酸塩および200mMアルギニンを含有する緩衝剤に透析できる。サンプル5および6は、pH6.0にて30mMクエン酸塩および250mMアルギニンを含有する緩衝剤に透析できる。サンプル7および8は、pH6.0にて30mMクエン酸塩および300mMアルギニンを含有する緩衝剤に透析できる。サンプル9および10は、pH5.5にて30mMクエン酸塩および300mMアルギニンを含有する緩衝剤に透析できる。各々の透析後のサンプルは最終標的生成物濃度に調整でき、次いでガラス凍結乾燥バイアル中に2×1mLアリコートに分けることができ、2セットのサンプルを生成する:第1のセットはコントロールとして2〜8℃に保存でき、第2のセットは40℃にて3日間保存できる。
【0120】
表15はSECの結果を示す。凝集の変化は−0.1%〜2.1%の間である。より高い凝集は、より高い生成物濃度と強力に相関する。デルタ脱ペグ化は0.1%〜0.8%の間である。わずかに高い脱ペグ化は低いpHにおける低い生成物濃度と相関する。pHが減少すると、脱ペグ化が増加し、この傾向は製剤前研究の過去の観察と一致する。
【0121】
【表15】
【0122】
実施例6
攪拌研究
強制攪拌研究を実施して、製剤のタンパク質安定性を評価できる。サンプルは、pH6.0にて30mMクエン酸塩および250mMアルギニンに対してbGCSF−T133−20K PEG(10mM酢酸ナトリウム、5%ソルビトール pH4.0中の16.6mg/mLタンパク質)を透析することにより調製できる。透析した材料の一部は、pH6.0にて緩衝剤の30mMクエン酸塩および250mMのアルギニンを用いて5mg/mLの標的濃度まで希釈できる。次いでプールを0.22ミクロンフィルターを通して濾過でき、次いで磁気スターラーを使用して60rpmにて室温で2時間、混合することによりガラスビーカー内で強制攪拌に供すことができる。サンプルを30分ごとに得ることができる。
【0123】
全てのサンプルは透明で、無色であり、全ての時点について目に見える粒子を含まない。各時点についてのタンパク質濃度、550nmにおける吸光度、およびpH測定を表16に示す。
【0124】
【表16】
【0125】
タンパク質濃度は混合時間全体にわたって安定なままである。pHは実験全体にわたって一定のままである。SECによる生成物の組成もまた、図17に示すように、研究全体にわたって一定である。全体として、この研究からの結果は、強制攪拌の全体の時間、タンパク質が安定であることを示す。
【0126】
【表17】
【0127】
実施例7
凍結融解研究
凍結融解研究を実施して、種々のサンプルのタンパク質濃度およびpHを測定できる。サンプル中のタンパク質は5回までの凍結および融解サイクルに供することができる。サンプルは0.22ミクロンフィルターを通して濾過でき、15mLバイアルに分配できる。1つのアリコートをコントロールとして余分に設定できる。残っている3つのアリコートに関して、各凍結融解サイクルは、−75±5℃にて1時間、タンパク質溶液を透析し、氷が観測されなくなるまで約1時間、室温にて解凍することからなる。サンプルバイアルを3回穏やかに回転させて、サンプルを混合できる。試験するために第1、第2、および第5の凍結および融解サイクルの後に1つのアリコートを余分に設定できる。
【0128】
全てのサンプルは透明で、無色であり、全ての時点について目に見える粒子を含まない。各時点についてのタンパク質濃度、550nmにおける吸光度、pH測定を表18に示す。
【0129】
【表18】
【0130】
タンパク質濃度は各凍結融解サイクルの後、安定なままである。さらに、pHは5回の凍結融解サイクルにわたって一定のままである。SECによる生成物の組成は全ての時点にわたって類似しており、表19に示す。
【0131】
【表19】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]