(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798636
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】診断用タイヤ試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20151001BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
G01M17/02 B
B60C19/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-540106(P2013-540106)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2013-544360(P2013-544360A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】US2011061783
(87)【国際公開番号】WO2012071379
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/416,521
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509333553
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレイションズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ アール キドニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エル ターナー
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−178729(JP,A)
【文献】
特表2010−531438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00 −17/10
B60C 1/00 −19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの試験方法であって、
第1の車両および第1の仕様のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムに対して前記タイヤを第1のタイヤ圧にまで膨張させて第1の停止距離試験を行うことと、
前記第1の停止距離試験についてのデータを収集することと、
前記第1のタイヤ/車両システムに対して前記タイヤを第2のタイヤ圧にまで膨張させて第2の停止距離試験を行うことと、
前記第2の停止距離試験についてのデータを収集することと、
前記タイヤに対して該タイヤを前記第1のタイヤ圧または前記第2のタイヤ圧のいずれかにまで膨張させて第1の牽引力試験を行うことと、
前記第1の牽引力試験についてのデータを収集することと、
を含み、
前記第1の停止距離試験についてのデータを収集することは、第1の停止距離を計算するのに充分なデータを収集することを含み、
前記第2の停止距離試験についてのデータを収集することは、第2の停止距離を計算するのに充分なデータを収集することを含み、
前記第1の牽引力試験についてのデータを収集することは、ミュースリップデータを計算するためおよびミュースリップ曲線をグラフ化するために充分なデータを収集することを含み、
前記第1の牽引力試験は、一定速度で作動するベルトに所定の垂直負荷で前記タイヤを押し付けて、前記タイヤに生じる長手方向の力Fx、法線方向の力Fzおよびホイール表面速度のデータを取得し、当該データからミュー=Fx/Fzを算出するとともに、ホイール表面速度とベルトとの間の速度差のパーセンテージからスリップレートを得るものである、
方法。
【請求項2】
前記第1の停止距離試験についてのデータを収集することと、前記第2の停止距離試験についてのデータを収集することとは、ホイール角度位置、ホイール角速度、ホイール角加速度、時間、スリップレート、長手方向における制動力、前記長手方向以外の方向における制動力、前記長手方向における変位、前記長手方向以外の方向における変位、前記長手方向における速度、前記長手方向以外の方向における速度、前記長手方向における加速度、前記長手方向以外の方向における加速度またはこれらの何らかの組み合わせを含むまたはこれらを計算するのに充分なデータを収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コンクリート、アスファルト、れんが、砂利、砂、土、雪、水、氷、泥、油またはこれらの何らかの組み合わせを含む表面上において前記第1の停止距離試験を行うことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タイヤの試験方法であって、
第1の車両および第1の仕様のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムの前記タイヤが第1のタイヤ圧にまで膨張された状態における第1の停止距離データを生成することであって、前記第1の停止距離データを生成することは、
前記第1のタイヤ/車両システムに対して前記タイヤを前記第1のタイヤ圧にまで膨張させて第1の停止距離試験を行うことと、
前記第1の停止距離試験についてのデータを収集することと、
を含み、
前記第1のタイヤ/車両システムの前記タイヤが第2のタイヤ圧にまで膨張された状態における第2の停止距離データを生成することであって、前記第2の停止距離データを生成することは、
前記第1のタイヤ/車両システムに対して前記タイヤを前記第2のタイヤ圧にまで膨張させて第2の停止距離試験を行うことと、
前記第2の停止距離試験についてのデータを収集することと、
を含み、
少なくとも前記第1のタイヤ圧または前記第2のタイヤ圧のいずれかにまで膨張させた前記タイヤについての第1のミュースリップデータから第1のミュースリップ曲線を生成することであって、前記第1のミュースリップ曲線を生成することは、
少なくとも前記第1のタイヤ圧または前記第2のタイヤ圧のいずれかにまで膨張させた前記タイヤについて第1の牽引力試験を行うことと、
前記第1の牽引力試験についてのデータを収集することと、
を含み、
前記第1の牽引力試験は、一定速度で作動するベルトに所定の垂直負荷で前記タイヤを押し付けて、前記タイヤに生じる長手方向の力Fx、法線方向の力Fzおよびホイール表面速度のデータを取得し、当該データからミュー=Fx/Fzを算出するとともに、ホイール表面速度とベルトとの間の速度差のパーセンテージからスリップレートを得るものである、
方法。
【請求項5】
前記第1のミュースリップデータからの前記第1ミュースリップ曲線は前記第1のタイヤ圧にまで膨張された前記タイヤについて生成され、
前記方法は、さらに前記第2のタイヤ圧にまで膨張させた前記タイヤについての第2のミュースリップデータから第2のミュースリップ曲線を生成することを含み、前記第2のミュースリップ曲線を生成することは、
前記第2のタイヤにまで膨張させた前記タイヤについて第2の牽引力試験を行うことと、
前記第2の牽引力試験についてのデータを収集することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国仮特許出願シリアル番号第61/416,521号(出願日:2010年11月23日)に対する優先権を主張する。
【0002】
本明細書中に開示される特定の実施形態は、概してタイヤ試験または車両試験に関する。より詳細には、本明細書中に開示される特定の実施形態は、特定の性能基準を決定するための、タイヤ試験のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タイヤ性能は、重要な考慮すべき事項である。タイヤおよびタイヤを用いた車両の製造者および開発者にとって、タイヤ特性の試験方法は極めて重要である。
【0004】
タイヤおよびタイヤを含むシステムの試験方法を提供することが、未だに望まれている。
【発明の概要】
【0005】
タイヤの試験方法が提供される。方法は、第1の仕様のタイヤに対して第1のタイヤ圧において第1の停止距離試験を行うことと、第1の停止距離試験についてのデータを収集することと、を含んでもよい。方法は、第1の仕様のタイヤに対して第2のタイヤ圧において第2の停止距離試験を行うことと、第2の停止距離試験についてのデータを収集することと、をさらに含んでもよい。方法は、第1の仕様のタイヤに対する第1の牽引力試験を第1のタイヤ圧または第2のタイヤ圧のいずれかで行うことと、第1の牽引力試験についてのデータを収集することと、をさらに含んでもよい。
【0006】
タイヤの試験方法がさらに提供される。方法は、第1の車両および第1の仕様のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムについての停止距離データを生成することと、を含んでもよく、前記タイヤは、第1のタイヤ圧まで膨張される。方法は、第1の車両および第1の仕様のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムについての停止距離データを生成することを含んでもよく、前記タイヤは、第2のタイヤ圧まで膨張される。方法は、第1のタイヤ圧または第2のタイヤ圧のいずれかにおける第1の仕様のタイヤについてのミュースリップデータを生成することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】タイヤ/車両システムを2つの異なるタイヤ圧において試験した場合のミュースリップ曲線を示す非限定的な一般的グラフである。
【
図2】一実施形態における乾燥停止距離試験基準の概要を示すグラフである。
【
図3】一実施形態における試験条件の概要を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで
図1〜
図6の図面を参照すると、記載は、ひとえに診断用タイヤ試験方法の特定の実施形態を例示するためのものである。
【0009】
タイヤ特性を試験するための方法が開発されてきた。タイヤ/車両システムとは、特定の1組のタイヤと、特定の車両との組み合わせである。特定の実施形態において、診断用タイヤ試験方法は、第1のタイヤ仕様のタイヤに係合された車両と、タイヤ/車両システムとについて、タイヤが第1のタイヤ圧まで膨張された場合の停止距離について車両を試験することと、タイヤが第2のタイヤ圧まで膨張された場合の停止距離についてタイヤ/車両システムを試験することとを含む。
【0010】
特定の実施形態において、これらの方法は、第1のタイヤ仕様のタイヤを第1のタイヤ圧または第2のタイヤ圧あるいは第1のタイヤ圧および第2のタイヤ圧双方において牽引力試験することを含む。いかなる特定の理論にも縛られることを望まないが、試験時においてタイヤを膨張させる際の上限となるタイヤ圧が変化した場合、停止距離挙動時におけるタイヤ/車両システムの応答様態に影響が出る場合がある。
【0012】
特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離についてのデータを収集または生成することができる。特定の実施形態において、タイヤ/車両システム停止距離試験を行って、システムの停止性能についてのデータを得る場合がある。特定の実施形態において、タイヤ/車両システム乾燥停止距離試験を行って、システムの乾燥時停止性能についてのデータを得る場合がある。特定の実施形態において、走行路、性能試験場または他の車両試験面上においてタイヤ/車両システム停止距離試験が行われてもよい。タイヤ/車両システム停止距離試験は、起動されたアンチロックブレーキングシステム(「ABS」)を用いてABSの性能についてのデータを得るために行われてもよい。
【0013】
特定の実施形態において、試験車両は、タイヤ/車両システムの停止挙動時における挙動を取得するためのセンサーを搭載してもよい。特定の実施形態において、停止挙動は、ブレーキング動作を含む。ブレーキング動作は、データ収集と同時にまたはデータ収集前に行われる。データ収集は、長手方向または他の方向における停止距離、ホイール位置、スリップレート、長手方向または他の方向における制動力、長手方向または他の方向における変位、長手方向または他の方向における速度、長手方向または他の方向における加速度、長手方向におけるスリップレートに対する制動力、またはこれらの組み合わせについて行われるかまたはこれらを計算するのに充分である。特定の実施形態において、停止挙動は、ブレーキング動作およびステアリング動作を含む。停止挙動と、関連付けられたデータ収集とを停止距離試験と呼ぶ場合がある。停止距離試験は、車両を初期速度から最終速度までブレーキングすることを含む場合がある。特定の実施形態において、最終速度は、何らかの非ゼロ速度またはゼロであってもよい。停止距離試験は、車両を曲線経路または直線経路に沿って操舵することを含んでもよい。停止距離試験は、ABSの活性化を含んでもよい。
図2は、停止距離試験基準の非限定的な例示的グラフを示す。
【0014】
特定のタイヤおよび車両システムにおいて、停止距離を含む停止距離試験の結果はタイヤ圧による影響を受ける場合があるため、タイヤ圧のうち1つにおいて停止距離利点を認識することができる。特定の実施形態において、停止距離の利点は、より短い停止距離、より効率的な停止動作、または別のものである場合がある。
【0015】
特定の実施形態において、停止距離試験は、試験面上において行われてもよい。特定の実施形態において、試験表面は、走行路、道路または他の表面を含んでもよい。特定の実施形態において、試験面は、乾燥表面、湿潤表面、または雪で覆われた表面、または凍結した表面を含んでもよい。試験表面は、コンクリート、アスファルト、れんが、砂利、砂、土、雪、水、氷、泥、油、またはこれらの何らか組み合わせを含んでもよい。
【0016】
特定の実施形態において、第1の組の停止距離試験は、第1の車両および第1のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムに対して行われる第1の停止距離試験と、第1のタイヤ/車両システムに対して行われる第2の停止距離試験とを含んでもよい。特定の実施形態において、第1の組の停止距離試験は、第1の車両および第1のタイヤを含む第1のタイヤ/車両システムに対して行われる第1の停止距離試験と、第1の車両および第2のタイヤを含む第2のタイヤ/車両システムに対して個なわれる第2の停止距離試験とを含んでもよい。タイヤ/車両システムは、複数のタイヤ圧において試験されてもよい。特定の実施形態において、第1の組の停止距離試験は、第2のタイヤを用いておよび任意選択的に1つ以上の後続タイヤを用いて第1の車両で行われるさらなる停止距離試験を含んでもよい。
【0017】
特定の実施形態において、試験は、第1の組の停止距離試験に類似する第2の組の停止距離試験を含んでもよい。特定の実施形態において、第2の組の停止距離試験は、第2の車両に対して第1のタイヤを用いて行われる試験と、第2の車両に対して第2のタイヤを用いて行われる試験と、任意選択的に第2の車両に対して1つ以上の後続タイヤを用いて行われる試験とを含んでもよい。
【0018】
特定の実施形態において、試験は、第1の組の停止距離試験または別の組の停止距離試験に類似する1つ以上のさらなる組の停止距離試験を含んでもよい。特定の実施形態において、1つ以上のさらなる組の停止距離試験は、第1のタイヤを用いて1つ以上のさらなる車両で行われる試験と、第2のタイヤを用いて1つ以上のさらなる車両で行われる試験と、任意選択的に1つ以上の後続タイヤを用いて1つ以上のさらなる車両で行われる試験とを含んでもよい。
【0019】
特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、それぞれが複数のタイヤに対して複数の車両で、複数のタイヤ圧において行われてもよい。
【0020】
特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、第1のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両と、第2のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両とに対して行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、第1のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両と、第2のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両とに対して行われてもよく、任意選択的に、別のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤに対して各試験が行われる、第1のタイヤと係合された第1の車両に対する1つ以上のさらなる停止距離が行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、322kph(200mph)未満の初期速度で行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、100kph(62mph)初期速度で行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、初期速度未満の最終速度で行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、1kph(0.62mph)または0kph(0mph)の最終速度で行われてもよい。停止距離試験における「停止距離」は、初期速度から最終速度への減速時における移動距離である。したように、停止距離試験における「停止距離」は、必ずしも初期速度から0kph(0mph)への減速時における移動距離ではない。なぜならば、最終速度は、必ずしも0kph(0mph)ではないからである。特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験は、複数のタイヤ圧において、複数の初期速度においてかつ/または複数の最終速度において、複数の車両に対し、複数のタイヤに対して行われてもよい。
【0021】
特定の実施形態において、試験車両、または試験タイヤ、もしくはタイヤが取り付けられるホイールは、1つ以上のセンサーが搭載されてもよい。特定の実施形態において、試験走行路または試験道路またはその区画に1つ以上のセンサーが搭載されてもよい。センサーは、タイヤもしくは車両またはタイヤ/車両システムの挙動についてのデータを取得するように適合されてもよい。センサーは、感知システムの一部であってもよい。感知システムは、停止距離、ホイール位置、スリップレート、長手方向または他の方向における制動力、長手方向または他の方向における変位、長手方向または他の方向における速度、長手方向または他の方向における加速度、長手方向のスリップレートに対する制動力またはこれらの何らか組み合わせに関して、またはこれらを計算するのに充分なデータを収集することを可能にする。感知システムは、センサー、データ保存デバイス、データ処理デバイス、デジタル/アナログ変換器、アナログ/デジタル変換器、通信デバイスまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0022】
特定の実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験のために、車両は、データ(例を非限定的に挙げると、乾燥停止距離、車両位置、車両速度、車両加速度、ホイール角度位置、ホイール角速度、ホイール角加速度、またはこれらの組み合わせ)を取得するかまたはその計算を可能にするのに充分なデータを取得するように、適合される,ホイールエンコーダと、速度センサーとが搭載されてもよい。
【0023】
特定の実施形態において、データがそこから、またはその間に取得される停止挙動が行われる前に、停止挙動がタイヤ/車両システムによって行われてもよい。特定の実施形態において、データがそこから、またはその間に取得される停止挙動が行われる前に、停止挙動がタイヤ/車両システムによって行われた停止挙動は調節挙動であり、タイヤまたはタイヤ/車両システムにおける調節または制動において有用である場合がある。
【0025】
多くの現代の車両は、アンチロックブレーキングシステム(ABS)コントローラを含む。アンチロックブレーキングシステムコントローラは、停止距離性能試験において、タイヤミュースリップ応答と相互作用する場合がある。
【0026】
特定の実施形態において、停止距離試験に加えて、停止距離試験において試験されたタイヤ、または停止距離試験において試験されたタイヤと同じ仕様タイヤに対し、同一または極めて類似のタイヤ圧で、牽引力試験を含む試験が行われてもよい。特定の実施形態において、タイヤ圧は約1psi以内の精度である。特定の実施形態において、牽引力試験により、Fx、ミュー、スリップ率、Fxスリップまたはミュースリップについてのデータが得られる。ミューは
、長手方向における力であ
るFxを法線方向における力Fzで除算した値であり、よってミュー=Fx/Fzとなる。スリップレートは、軸間の速度と比較したホイール表面速度と、路面との間の速度差のパーセンテージであり、スリップレート=(ωr−v)/vである。式中、ωはホイール回転速度であり、rはホイール半径であり、vは車両速度である。ミュースリップデータは、スリップレートに対するミューであり、すなわちミューに対するスリップレートである。ミュースリップ曲線は、複数のミュースリップデータ点を示すグラフである。
図1は、2つの異なるタイヤ圧において試験されたタイヤ/車両システムについてミュースリップデータをプロットしたミュースリップ曲線を示す非限定的な一般的グラフを示す。タイヤ/車両システムのミュースリップ特性の性質を理解することにより、ブレーキング性能に影響を与えるように技術者がシステムを変更することが可能になる。よって、タイヤについてミュースリップデータを取得することが重要になる。ミュースリップデータは、屋内のタイヤ牽引力試験によって取得してもよいし、あるいは屋外のタイヤ牽引力試験によって取得してもよい。特定の実施形態において、タイヤ牽引力試験により、タイヤと、それぞれが単一のタイヤ圧に対応するミュースリップ曲線を有する複数のタイヤ圧とに対して牽引力試験を行うことにより、各タイヤについての複数のミュースリップ曲線が得られる。
【0027】
非限定的に、特定の実施形態において、平ベルトタイヤ試験機(「FlatTrac」)(例を非限定的に挙げると、MTSFlat−Trac(登録商標)タイヤ試験システム、CalspanTIRFにおける平ベルトタイヤ試験機など)上において屋内タイヤ牽引力試験を行ってもよい。いくつかの状況において、良好に規定されたミュースリップ曲線が得られるように、FlatTrac機を適切に調節する必要がある。FlatTracは、実質的に平坦な道路シミュレーション表面上でタイヤを機械制限内の所望の道路速度、法線力、ブレーキング負荷、スリップ角度、スリップレート、タイヤ圧およびキャンバ角度において試験する場合がある。
【0029】
タイヤ/車両システムの停止距離試験から得られたデータを、牽引力試験とタイヤ牽引力試験から得られたデータとと比較するかまたは通知してもよい。いくつかの実施形態において、タイヤ/車両システムの停止距離試験から得られたデータを、タイヤ牽引力試験から得られたデータとを比較、または対照してもよい。
【0030】
特定の実施形態において、第1のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両と、第2のタイヤ圧まで膨張された第1のタイヤと係合された第1の車両とに対してタイヤ/車両システムの停止距離試験を行ってもよい。特定の実施形態において、第1のタイヤまたは第1のタイヤと同じ仕様のタイヤに対して、第1の圧力において牽引力試験が行われ、第1の圧力におけるタイヤ性能に関するデータが収集される。特定の実施形態において、第1のタイヤまたは第1のタイヤと同じ仕様を有するタイヤに対して、第2の圧力において牽引力試験が行われ、第2の圧力におけるタイヤ性能についてのデータが収集される。特定の実施形態において、タイヤ性能についてのデータは、Fx、ミュー、スリップ率、Fx−スリップまたはミュースリップについてのデータを含んでもよい。
【0031】
特定の実施形態において、停止距離試験を既に経験したタイヤ/車両システムの一部として試験された各タイヤに対し、牽引力試験が行われる。特定の実施形態において、停止距離試験を既に経験したタイヤ/車両システムの一部として試験された各タイヤに対して牽引力試験が行われ、停止距離試験を既に経験したタイヤ/車両システムの一部として試験されたタイヤについて用いられた各圧力において各タイヤが試験される。特定の実施形態において、停止距離試験を既に経験したタイヤ/車両システムの一部として試験されたタイヤに対し、停止距離試験を既に経験したタイヤ/車両システムの一部として試験されたタイヤに用いられたタイヤ圧において牽引力試験が行われ、そのタイヤに対して、そのダイヤ圧でミュースリップデータが生成される。
【0033】
例として、非限定的に、一実施形態において、停止挙動およびタイヤ牽引力の試験を含む試験を行った。
【0034】
非限定的に、タイヤ/車両システムに対して乾燥停止距離試験を行った。乾燥停止距離試験基準の概要を示すグラフを
図2に示す。実施例1における停止距離試験において、2つの車両(すなわち、車両1および車両2)それぞれに対する試験が含まれ、それぞれ5つのタイヤ仕様(以下仕様A、仕様B、仕様C、仕様Dおよび仕様Eのコードで呼ぶ)で、それぞれ3つのタイヤ圧(すなわち、20psi、30.5psiおよび40psi)で、6個の試験走行それぞれにおいて行った。各試験走行において、タイヤ/車両システムにより、初期車両速度である60mphから最終車両速度である0mphまでのブレーキング挙動を行った。
【0035】
非限定的に、停止距離試験を行った各タイヤ/車両システムは、センサーを搭載した。センサーは、速度センサー、ホイールエンコーダ、ブレーキ圧力変換器、加速度計、ブレーキペダル力変換器、およびブレーキパッド熱電対を含む。
【0036】
非限定的に、ミュースリップデータを得るためのタイヤ牽引力試験を、MTSFlat−Trac(登録商標)タイヤ試験システムを用いて行った。試験は、2つのタイヤを含む、1組のタイヤに対して行った。2つのタイヤはそれぞれ、上記の乾燥停止距離試験が行われた5つのタイヤ仕様のうち3つの仕様(すなわち、仕様A、仕様Bおよび仕様Eのコード)に対応し、全部で6個のタイヤであった。6個のタイヤそれぞれに対する試験を、3つのタイヤ圧(20psi、30.5psiおよび40psi)それぞれにおいて、垂直負荷944lbfおよびベルト速度40mphで行った。試験は、
図3中に概要を示すような全部で9種類の異なる試験条件において行った。
【0037】
図3中に概要を示すような9種類の異なる試験条件における牽引力試験の結果を
図4〜
図6にグラフで示す。
図4〜
図6のそれぞれは、ミュースリップグラフである。
図4は、仕様Eのタイヤ双方における20psi、30.5psiおよび40psiそれぞれにおける試験結果を示す。
図5は、仕様Aのタイヤ双方における20psi、30.5psiおよび40psiそれぞれにおける試験結果を示す。
図6は、仕様Bのタイヤ双方における20psi、30.5psiおよび40psiそれぞれにおける試験結果を示す。
【0038】
上記特定の実施形態に関連して診断用タイヤ試験方法について説明してきたが、他の実施形態も利用されてもよく、診断用タイヤ試験方法と同じ機能を行うために、記載された実施形態の改良および追加が本発明の範囲から逸脱することなく行われてもよいことが理解される。さらに、診断用タイヤ試験方法は、開示されているが詳述されていない実施形態を含む場合がある。さらに、全ての開示された実施形態は必ずしも選択的なものではない。なぜならば、多様な実施形態を組み合わせて所望の特性を得てもよいからである。当業者であれば、診断用タイヤ試験方法の意図および範囲から逸脱することなく改変を行うことが可能である。よって、診断用タイヤ試験方法は、いかなる単一の実施形態にも限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の記載に従った幅および範囲において解釈される。