(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記強度信号の大きさと基準信号の大きさとの間の差分に基づく大きさを有するエラー信号を生成するように構成されたエラー信号生成器をさらに備え、前記エラー信号が、前記検出レーザを動的に調整して、前記吸収確率ピークから、前記所定の量に対応する吸収に前記光学検出ビームを維持するために実装される、請求項5に記載のジャイロスコープシステム。
前記原子線源が、第1の検出領域の長さに沿って第1の原子線を生成するように構成された第1の原子線源と、第2の検出領域の長さに沿って第2の原子線を生成するように構成された第2の原子線源とを備え、前記第1の原子線と前記第2の原子線とは、前記受感軸に直交し、互いに反対方向に伝搬する、請求項1に記載のジャイロスコープシステム。
前記検出システムが、前記第1の原子線に関連する第1の検出システムであり、第1の光学検出ビームを生成する第1の検出レーザと、第1の強度信号を生成する第1の光検出器とを備え、前記システムが、第2の検出レーザと第2の光検出器とを備える第2の検出システムをさらに備え、前記第2の検出レーザが、前記第2の検出領域を照射して、前記第2の原子線の前記アルカリ金属原子を励起する第2の光学検出ビームを生成するように構成され、前記第2の光検出器が、前記第2の原子線中の前記アルカリ金属原子による前記第2の光学検出ビームの光吸収を測定し、前記測定された光吸収に関連する第2の強度信号を生成するように構成され、前記検出システムが、前記第1の強度信号および前記第2の強度信号の大きさに基づいて、前記原子線ジャイロスコープの線形加速度と、前記受感軸を中心とした前記原子線ジャイロスコープシステムの回転とを計算するように構成されている、請求項10に記載のジャイロスコープシステム。
前記原子線が第1の原子線であり、前記検出領域が第1の検出領域であり、前記光学検出ビームが第1の光学検出ビームであり、前記強度信号が第1の強度信号であり、前記方法は、
第2の検出領域の長さに沿って第2の原子線を生成するステップであって、前記第1の原子線と前記第2の原子線とは、前記受感軸に直交し、互いに反対方向に伝搬する、ステップと、
前記第1の波長を有する第2の光学検出ビームを生成するステップと、
前記第2の原子線の前記アルカリ金属原子を励起するために、前記第2の検出領域を前記第2の光学検出ビームを用いて照射するステップと、
前記第2の原子線中の前記アルカリ金属原子による前記第2の光学検出ビームの光吸収を測定するステップと、
前記測定される前記第2の光学検出ビームの吸収に関連する第2の強度信号を生成するステップと、
前記第1の強度信号および前記第2の強度信号に基づいて、線形加速度および前記受感軸を中心とした回転を計算するステップと、
をさらに備える、請求項13に記載の方法。
ドップラーフリー吸光分光光度計に基づいて、前記光学検出ビームの波長を、絶対値が最大である傾きを有する前記吸収確率ピークの一部分に対応する前記第1の波長に調整するステップをさらに備える、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、概して、ジャイロスコープシステムに関し、具体的には、原子線ジャイロスコープに関する。原子線ジャイロスコープシステムは、アルカリ金属原子を含む1つまたは2つの原子線を生成する原子線源を含むことができ、原子線源からアルカリ金属原子が、原子線ジャイロスコープシステムの受感軸に対して直交する方向に放出される。例として、原子線源は、アルカリ金属蒸気ビームセルとして、または、2次元または3次元磁気光学トラップとして構成され得る。また、原子線ジャイロスコープシステムは、少なくとも1つの検出レーザと、光検出器とを含む検出システムを備えてもよい。例として、検出レーザは、検出ビームを生成することができ、検出ビームが、円偏光され、原子線ジャイロスコープ受感軸および原子線の両方に直交する方向に伝搬する。磁場生成器は、原子線の公称軸から増加する磁場勾配を生成するように構成され得て、磁場勾配および円偏光された検出ビームが、ゼーマン効果に起因して検出ビームに対し非ゼロ速度を有するアルカリ金属原子による検出ビームの光子吸収確率を実質的に調整できるようにする。したがって、受感軸の周囲におけるジャイロスコープの回転により生じる原子線のドップラーシフト量は、光検出器により検出され得て、このように、ジャイロスコープシステムの回転が計算されるようにする。
【0010】
図1は、本発明の一態様による原子線ジャイロスコープシステム10の略図の例を示す。例として、原子線ジャイロスコープシステム10は、航空機および宇宙船の両方、またはいずれか一方を含む、航行または任意の様々な航空電子機器アプリケーションに実装され得る。原子線ジャイロスコープシステム10は、吸収された光子のエネルギーと、アルカリ金属原子の角速度に起因するアルカリ金属原子のエネルギーとの間のドップラーシフトから生じ、測定された、原子線中のアルカリ金属原子の光学エネルギー吸収の変化に基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転角θ
Gを計算するように構成されている。
【0011】
原子線ジャイロスコープシステム10は、原子線システム12を含む。原子線システム12は、平行アルカリ金属原子を含む原子線を生成するように構成された原子線源14を含む。例として、アルカリ金属原子は、セシウム(Cs)またはルビジウム(Rb)であり得る。例えば、原子線源14は、平行光(図示せず)の構成に基づいて2次元MOTもしくは3次元MOTなどの磁気光学トラップ(MOT)として、または、アルカリ金属蒸気ビームセルとして構成され得る。
【0012】
例えば、原子線システム12は、検出領域16も備える。検出領域16は、囲繞されたケーシングとして構成され得、ケーシングを通って原子線が向けられる。例えば、検出領域16は、原子線が、原子線ジャイロスコープシステム10の受感軸に対して直交して向けられるように配置され得る。したがって、原子線は、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転に応答して、検出領域16に対する角速度を受ける。したがって、検出領域16の大きさは、原子線の速度およびビーム光束に基づいて最適化される十分な長さおよび幅を有するように配置され得て、原子線を、検出領域16の基端部における原子線源14から、検出領域16の遠位端部に位置する検出システム18を通り過ぎて向けることができるようにする。
【0013】
検出システム18は、少なくとも1つの検出レーザ20と、対応する少なくとも1つの光検出器22とを含む。例として、検出レーザ20は、分布帰還型レーザ(DFBs)または垂直共振器型面発光レーザ(VCSELs)などの任意の様々な種類のレーザとして構成され得る。このように、検出レーザ20は、検出領域16を光学検出ビームO
DETで照射するよう構成されて、光学検出ビームO
DETが、原子線および受感軸の両方に対して直交に配置されて、原子線のアルカリ金属原子を励起するようにする。結果として、光検出器22は、
図1の例にO
DET′として示される、検出領域16を出る光学検出ビームの強度を測定するように構成され得て、原子線中のアルカリ金属原子による光学検出ビームの光子の吸収を判定する。
図1の例では、光検出器22は、検出領域16を出る光学検出ビームO
DET′の強度に対応する強度信号INTを生成するように構成されている。
【0014】
例として、検出レーザ20は、受感軸の周りの原子線ジャイロスコープシステム10の回転を検出するために最適化される特定の波長で光学検出ビームO
DETを生成するように特に調整され得る。原子線システム12は、ドップラーフリー吸光分光光度計24を含むとして
図1の例に示されている。ドップラーフリー吸光分光光度計24は、検出レーザ20を特定の安定な波長に調整するために実装されるレーザおよび光検出器の配列として構成され得る。
図1の例では、ドップラーフリー吸光分光光度計24は、信号TUNEを検出レーザ20に提供するとして示される。しかしながら、検出レーザ20は、ドップラーフリー吸光分光光度計24のレーザから光学的に分割されるとして構成されて、ドップラーフリー吸光分光光度計24の光学ビームおよび光学検出ビームO
DETが同じ光源から生成され得ることが理解されるべきである。
【0015】
図2は、本発明の一態様によるドップラーフリー吸光分光光度計システム50の例を示す。ドップラーフリー吸光分光光度計システム50は、
図1の例におけるドップラーフリー吸光分光光度計システム26に対応し得る。したがって、以下の
図2の例の説明において、
図1の例を参照する。
【0016】
ドップラーフリー吸光分光光度計システム50は、原子リザーバ52を含み、これは、平行になっていないアルカリ金属原子54の集団を含む囲繞された領域として
図2の例に示されている。例として、アルカリ金属原子54は、セシウム(Cs)またはルビジウム(Rb)のうちの1つであり得る。このように、原子リザーバ52は、
図1の例における原子線源14の一部分に対応し得る。例えば、原子リザーバ52は、平行光により照射されていないMOTの一部分に対応し得、また、アルカリ金属蒸気ビームセルのリザーバチャンバに対応し得る。したがって、アルカリ金属原子54は、実質的にすべての方向にランダムに移動し得、このように、いまだ原子線ジャイロスコープシステム10の原子線として方向づけられていない。
【0017】
また、ドップラーフリー吸光分光光度計システム50は、ドップラーフリー吸光分光光度計56も備える。ドップラーフリー吸光分光光度計56は、第1のプローブレーザ58と、第2のプローブレーザ60と、ポンプレーザ62とを含むとして示されている。第1のプローブレーザ58は、第1の光学プローブビームO
PRB1を生成するように構成され、第2のプローブレーザ60は、第2の光学プローブビームO
PRB2を生成するように構成され、ポンプレーザ62は、光学ポンプビームO
PMPを生成するように構成されている。一式の光学系64は、第1の光学プローブビームO
PRB1と、第2の光学プローブビームO
PRB2と、光学ポンプビームO
PMPとを方向づけて、原子リザーバ52を通すように構成されている。また、ドップラーフリー吸光分光光度計システム50は、第1のプローブビーム光検出器66と、第2のプローブビーム光検出器68と、ポンプビーム光検出器70とも備える。第1のプローブビーム光検出器66は、第1の光学プローブビームO
PRB1の強度を監視するように構成され、第2のプローブビーム光検出器68は、第2の光学プローブビームO
PRB2の強度を監視するように構成され、ポンプビーム光検出器70は、光学ポンプビームO
PMPの強度を監視するように構成されている。
【0018】
図2の例では、第1の光学プローブビームO
PRB1は、光学ポンプビームO
PMPに対して実質的に同一直線上を反対方向に伝搬するとして示されている。さらに、第2の光学プローブビームO
PRB2は、光学ポンプビームO
PMPに対して実質的に平行、かつ反対向きであり、原子リザーバ52内の光学ポンプビームO
PMPから離間しているとして示されている。第1および第2の光学プローブビームO
PRB1およびO
PRB2は、光学ポンプビームO
PMPの強度の大きさ未満またはほぼ等しい強度の大きさを有し得る。例えば、第1および第2の光学プローブビームO
PRB1およびO
PRB2は、光学ポンプビームO
PMPの強度の約10%の強度を有し得る。
図2の例では、第1および第2の光学プローブビームO
PRB1およびO
PRB2は、それぞれ、ビームO
PRB1′およびO
PRB2′として原子リザーバ52から出て、第1および第2のプローブビーム光検出器66および68に提供される。同様に、光学ポンプビームO
PMPは、ビームO
PMP′として原子リザーバ52から出て、ポンプビーム光検出器70に提供される。
【0019】
このように、ドップラーフリー吸光分光光度計56は、
図1の例における検出レーザ20を特定の安定な波長に調整するように構成されている。例として、原子リザーバ52を出る第1および第2の光学プローブビームO
PRB1′およびO
PRB2′の両方とも、アルカリ金属原子54に関連するドップラー幅で広がった吸収信号を提供し得る。しかしながら、第1の光学プローブビームO
PRB1′はまた、光学ポンプビームO
PMPに対して実質的に同一直線上を反対方向に伝搬することに基づいて、ドップラー幅で広がった吸収信号内で非線形飽和吸収分光信号を提供する。具体的には、第1の光学プローブビームO
PRB1よりも高い光強度を有する光学ポンプビームO
PMPに基づいて、光学ポンプビームO
PMPは、第1の光学プローブビームO
PRB1から光子を吸収可能な原子状態から、比較的多数のアルカリ金属原子54を励起する。したがって、アルカリ金属原子54が第1の光学プローブビームO
PRB1の光子を吸収する波長では、第1の光学プローブビームO
PRB1の光子の吸収は、第2の光学プローブビームO
PRB2の光子の吸収に比べて低減する。
【0020】
結果として、プローブビーム光検出器66および68により測定される、原子リザーバ52を出る第1および第2の光学プローブビームO
PRB1′およびO
PRB2′の強度の差は、アルカリ金属原子54のドップラー幅効果を実質的に排除し得る。したがって、ドップラーフリー吸光分光光度計56は、光学プローブビームO
PRB1およびO
PRB2ならびに光学ポンプビームO
PMPに対して軸方向の速度が実質的にゼロであるアルカリ金属原子54の吸収スペクトルのピークに関連するアルカリ金属原子54の基本線幅周波数を検出できる。上述のように、アルカリ金属原子54と、原子線中のアルカリ金属原子とを含むアルカリ金属原子の吸収スペクトルに関連するすべては、それぞれ、光学プローブビームO
PRB1およびO
PRB2ならびに光学ポンプビームO
PMPと、光学検出ビームO
DETとを含むポンプ光に対する軸方向の速度が実質的にゼロであるアルカリ金属原子の吸収スペクトルに対するものである。
【0021】
したがって、アルカリ金属原子54の基本線幅周波数は、実質的に温度に依存せず、時間とともにドリフトしないことから、検出レーザ20は、ドップラーフリー吸光分光光度計56により決定される波長に実質的にロックされ得る。例として、第1および第2のプローブレーザ58および60と、ポンプレーザ62と、検出レーザ20とは、すべて、同じ光源に関連し得る。このように、検出レーザ20は、ドップラーフリー吸光分光光度計56の動作に基づいて、第1および第2のプローブレーザ58および60ならびにポンプレーザ62がロックされる同じ実質的に安定な波長に実質的にロックされ得る。例えば、検出レーザ20は、吸収ピーク(すなわち、基本線幅周波数)それ自体に実質的にロックされ得る、または、ドップラーフリー吸光分光光度計56の動作に基づいて、吸収ピークから所定の量だけ実質的にずらされる周波数にロックされ得る。例えば、第1および第2のプローブレーザ58および60、ポンプレーザ62、および検出レーザ20の波長は、すべて、軸方向の速度がゼロであるアルカリ金属原子54の吸収スペクトル上における傾きの絶対値が最大である点に対応する波長に実質的にロックされ得る。
【0022】
図1の例に戻って参照すると、原子線ジャイロスコープシステム10は、検出領域16において磁場勾配B
Gを生成するように構成された磁場生成器26も備える。磁場勾配B
Gは、原子線の軸に対して、軸から離れるにつれて増加する磁場強度を有し得る。このように、磁場勾配B
Gは、光学検出ビームO
DETの特性と相まって、原子線の吸収パラメータを実質的に調整するように実装され得る。例として、光学検出ビームO
DETは、検出レーザ20から生成される、または偏光子(図示せず)の使用に基づくなどして、円偏光され得る。円偏光の向き(例えば、右回りまたは左回り)は、磁場勾配B
Gに対して選択されて、光学検出ビームO
DETの光子と、原子線のアルカリ金属原子との間の相対エネルギーにおけるゼーマンシフトを利用することができる。したがって、磁場勾配B
Gおよび光学検出ビームO
DETの円偏光は、ゼーマン効果に起因する原子線の公称経路からのアルカリ金属原子の軸外位置に応じて、原子線中のアルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の吸収を実質的により多く、またはより少なくすることができる。結果として、強度信号INTの大きさは、光学検出ビームO
DETの光子に対するアルカリ金属原子のゼーマンシフトおよびドップラーシフトに基づいて、光学検出ビームO
DETに対するアルカリ金属原子の軸方向の速度、ひいては軸方向の位置に対応する、原子線中のアルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の相対的な吸収を示し得る。したがって、上述したように、アルカリ金属原子のゼーマンシフトおよびドップラーシフトは、軸方向の速度が実質的にゼロであるアルカリ金属原子の光学吸収スペクトル上の位置に調整された波長を有する光学検出ビームO
DETと併用されて、アルカリ金属原子の原子線の公称ビーム経路からの非常にわずかなずれが、確実に、強度信号INTの大きさを著しく変化させるようにする。
【0023】
また、原子線ジャイロスコープシステム10は、ジャイロスコープセンサ28をさらに備える。ジャイロスコープセンサ28は、強度信号INTの大きさに基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転の角速度と、ひいては原子線ジャイロスコープシステム10の回転角θ
Gとを判定するように構成されたジャイロスコーププロセッサ30を含む。例として、ジャイロスコーププロセッサ30は、強度信号INTの大きさと、光学検出ビームO
DETに対する原子線のアルカリ金属原子の軸方向の位置、ひいては原子線の公称ビーム経路との間の相関を同定するようにプログラムされ得る。したがって、アルカリ金属原子が、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転に応答して、検出領域16中において原子線の公称ビーム経路から外れるため、ジャイロスコーププロセッサ30は、原子線の公称ビーム経路からのアルカリ金属原子の相対的な軸方向の位置に対応する強度信号INTの変化に基づいて、ビーム経路中のアルカリ金属原子の角速度を判定し得る。その結果、ジャイロスコーププロセッサ30は、判定された原子線中のアルカリ金属原子の角速度を、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転角θ
Gに変換し得る。
【0024】
図3は、本発明の一態様による原子線ジャイロスコープシステム100の別の例を示す。原子線ジャイロスコープシステム100は、
図1の例における原子線ジャイロスコープ10の一部分(例えば、原子線システム12および検出システム18)に対応し得る。したがって、以下の
図3の例の説明において、
図1の例における原子線ジャイロスコープシステム10を参照する。
【0025】
原子線ジャイロスコープシステム100は、原子線源102と検出領域104とを含む。原子線源102は、2次元MOTもしくは3次元MOT、またはアルカリ金属蒸気ビームセルとして構成され得る。このように、原子線源102は、108の直交座標系で示される+Z軸方向に沿って、検出領域104内のビーム経路内に原子線106を生成する。このように、X軸(すなわち、
図3の例における受感軸)の周りにおいて原子線ジャイロスコープシステム100が実質的に回転していないときに、原子線106は、+Y軸方向にも−Y軸方向にも実質的に速度成分がない状態で、Z軸に沿って向けられる。原子線ジャイロスコープシステム100、ひいては
図1の例における原子線システム10は、原子線106上の重力などの外力の効果を実質的に考慮に入れるように調整され得ることが理解されるべきである。加えて、受感軸は、ほぼ原子線源102の位置またはその近傍で、原子線ジャイロスコープシステム100の位置を横断して、受感軸を中心とした両方向の回転に応答する原子線106中のアルカリ金属原子の角速度に、実質的に等しく影響を与え得ることもさらに理解されるべきである。
【0026】
また、原子線ジャイロスコープシステム100は、検出レーザ110と光検出器112とも備える。検出レーザ110は、実質的に+Y方向に、ひいては114で示される原子線106の公称ビーム経路と、原子線ジャイロスコープシステム100の受感軸との両方に直交して向けられる光学検出ビームO
DETを生成するように構成されている。光学検出ビームO
DETは、円偏光され得て、また、絶対値が最大であるピークの傾きなど、原子線106のアルカリ金属原子の光学吸収スペクトルのピークからずらされる波長に調整され得る。光検出器112は、検出領域104を出る光学検出ビームO
DET′の強度を測定するように構成されている。このように、光検出器112は、検出領域104を出る光学検出ビームO
DET′の強度に基づく大きさを有する強度信号INTを生成し得る。したがって、強度信号INTの大きさは、原子線106のアルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の吸収量に対応する。
【0027】
光検出器112による、検出領域104を出る光学検出ビームO
DET′の強度の測定は、原子線106のアルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の吸収を測定する一例にすぎないことが理解されるべきである。別の例として、
図1の例における原子線ジャイロスコープシステム10、ひいては
図3の例における原子線ジャイロスコープシステム100は、原子線106のアルカリ金属原子からの発光を測定する蛍光検出を実装し得る。例として、代わりに、原子線ジャイロスコープシステム100は、少なくとも光検出器112を光学検出ビームO
DETの経路の外に含むように構成されて、光検出器112が、光学検出ビームO
DETにより励起された後、アルカリ金属原子から放射された光子を測定するように構成されるようにする。アルカリ金属原子から放出された光子が、アルカリ金属により吸収される光子に実質的に等しいことから、原子線ジャイロスコープシステム100の蛍光検出構成における光検出器112は、同様に、原子線106のアルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の吸収を測定するように構成され得る。
【0028】
さらに、
図3の例に示したように、磁場勾配B
Gを検出領域104に適用する。例として、磁場勾配B
Gは、
図1の例における磁場生成器26により生成され得る。磁場勾配B
Gは、原子線106の公称ビーム経路114に沿った強度がほぼゼロであり、公称ビーム経路114の軸から+Y軸方向または−Y軸方向に離れるにつれて強度が増加するとして示される。また、磁場勾配B
Gは、+X軸方向または−X軸方向にも同様に増加可能であることが理解されるべきである。結果として、原子線106のアルカリ金属原子が、原子線106の公称ビーム経路114の軸から外れて離れるため、ゼーマン効果に基づいて、電子スピンが与える局所磁場と、磁場勾配B
Gの強度との間の相互作用に起因して、アルカリ金属原子のポテンシャルエネルギーは変化する。したがって、公称ビーム経路114の軸から外れて離れるアルカリ金属原子のポテンシャルエネルギーの変化は、公称ビーム経路114に対するアルカリ金属原子の軸方向の位置に基づいて、アルカリ金属原子による光学検出ビームO
DETの光子の吸収に変化を結果として生じ得る。例えば、光学検出ビームO
DETは、ある方向(例えば、右回りまたは左回り)に円偏光され得て、強度信号INTの大きさにより示されるように、公称ビーム経路114に対する−Y軸におけるアルカリ金属原子の光子吸収確率を実質的に増加し、また、公称ビーム経路114に対する+Y軸におけるアルカリ金属原子の光子吸収確率を実質的に減少する。磁場勾配B
Gは、光学検出ビームO
DETの円偏光の向きに適切なように、正または負の勾配のいずれかであり得ることが理解されるべきである。
【0029】
さらに、上述のように、光学検出レーザ110は、絶対値が最大である公称ビーム経路114に沿ったアルカリ金属原子の吸収スペクトルの傾きに対応する波長で光学検出ビームO
DETを生成するように調整され得る。例として、光学検出ビームO
DETは、光学検出ビームO
DETに対するアルカリ金属原子のエネルギーのドップラーシフトに基づいて、強度信号INTの大きさにより示されるように、公称ビーム経路114に対する−Y軸におけるアルカリ金属原子による光子吸収確率を実質的に増加し、また、公称ビーム経路114に対する+Y軸におけるアルカリ金属原子の光子吸収確率を実質的に減少する波長を有し得る。したがって、上述の磁場勾配B
Gに基づいてゼーマンシフト効果と組み合わせると、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム100の回転などに基づく、公称ビーム経路に対するアルカリ金属原子の位置の非常に小さなずれは、強度信号INTの大きさに無視できないほど変化させ得る。この結果、
図1の例におけるジャイロスコーププロセッサ30は、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム100の回転角θ
Gを正確に計算し得る。
【0030】
図1の例に戻って参照すると、原子線システム12および検出システム18は、
図3の例における原子線システム100と実質的に同様に構成されて、原子線源14が単一の原子線を生成し得る。このように、原子線ジャイロスコープシステム10は、原子線の公称ビーム経路に対するアルカリ金属原子の運動に基づいて、受感軸の周りの回転角θ
Gを計算するように構成され得る。しかしながら、このような原子線の公称ビーム経路に対するアルカリ金属原子の運動は、原子線ジャイロスコープシステム10の線形加速からも与えられる。このように、ジャイロスコーププロセッサ30は、単に光学検出ビームO
DETに対するアルカリ金属原子の軸方向の速度に基づくのでは、原子線ジャイロスコープシステム10の回転と線形加速との間を区別することができない。
【0031】
図1の例では、ジャイロスコープセンサ28は、原子線ジャイロスコープシステム10の線形加速度の検出および計算の両方、またはいずれか一方を行うように構成された加速度計32を含む。加速度計32は、線形加速度情報をジャイロスコーププロセッサ30に提供し得て、ジャイロスコーププロセッサ30が、原子線ジャイロスコープシステム10の線形加速度を、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転角θ
Gの計算から実質的に相殺できるようにする。したがって、ジャイロスコーププロセッサ30は、強度信号INTの大きさと、加速度計32により測定される原子線ジャイロスコープ10の線形加速度とに基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム10の回転角θ
Gを計算し得る。
【0032】
上述の
図1および
図3の例では、それぞれの原子線ジャイロスコープシステム10および100は、依然として、原子線106の伝搬方向(すなわち、Z軸)に平行な線形加速度の効果の影響を受ける。具体的には、原子線106の向きに平行な線形加速度は、ジャイロスコープセンサ28に対する原子線106の速度、ひいては受感軸を中心とした所定の回転速度において、原子線106の原子の線形な速度および変位を変化させ得る。結果として、原子線106の向きに沿って加速度に対するジャイロスコープスケールファクタ感度が生じ得る。このように、加速度計32は、+Z軸や−Z軸などの原子線106の方向における加速度を測定するように構成された加速度計を含み得る。この結果、測定された+Z軸または−Z軸における加速度は、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム100の回転の計算から取り除かれる。
【0033】
代替的に、ジャイロスコープスケールファクタ感度は、原子線源14などで原子線106の速度を制御することにより実質的に緩和され得る。例として、2つの反対向きに伝搬する適切に調節され円偏光された光学ビームは、原子線106の伝搬方向に対して平行に向けることができる。これらの2つの光学ビームの調整は、所望の原子線速度がこれらの光学ビームの極小吸収となるようにされ得る。このように、この速度よりも速くまたは遅く移動するあらゆる原子は、これらの2つの光学ビームの極小吸収に対応する速度に一致するまで、それらの速度を実質的に変える押す力を受ける。このことは、原子線ジャイロスコープシステム10の回転速度の測定に使用された効果に似た、ドップラーシフト効果に起因して生じる。具体的には、対照速度よりも遅いまたは速い原子線106の原子は、2つの速度制御光学ビームに対してドップラーシフトされて、検出ビームから光子を吸収する確率を増加または減少させることができる。2つの光のビームの適切な調整は、これらの吸収確率における変化が原子の速度を変える合力を与え、対照速度により厳密に一致するようにすることを確保し得る。このように、対照速度は、原子線106の伝搬方向に平行な線形加速度に対する原子線速度感度を本質的に除去し得る。
【0034】
図4は、本発明の一態様による原子線ジャイロスコープシステム150のさらに別の例を示す。原子線ジャイロスコープシステム150は、二方向性原子線源152と、第1の検出領域154と、第2の検出領域156とを含む。例として、二方向性原子線源152は、2次元MOTとして構成され得る、または、2つの別々の3次元MOTもしくはアルカリ金属蒸気ビームセルとして構成され得る。したがって、二方向性原子線源152は、162の直交座標系で示されるように、−Z軸方向に沿って第1の検出領域154内のビーム経路内に第1の原子線158を生成し、また、+Z軸方向に沿って第2の検出領域156内のビーム経路内に第2の原子線160を生成する。第1および第2の原子線158および160は、このように、互いに反対方向に向けられる。したがって、X軸(すなわち、
図4の例における受感軸)の周りにおいて原子線ジャイロスコープシステム150が実質的に回転していないときに、第1および第2の原子線158および160は、+Y軸方向にも−Y軸方向にも実質的に速度成分がない状態で、それぞれ−Z軸および+Z軸に沿って向けられる。
【0035】
また、原子線ジャイロスコープシステム150は、第1の検出レーザ164と、第2の検出レーザ166と、第1の光検出器168と、第2の光検出器170とも備える。第1の検出レーザ164は、第1の検出領域154において第1の光学検出ビームO
DET1を生成するように構成され、また、第2の検出レーザ166は、第2の検出領域154において第2の光学検出ビームO
DET2を生成するように構成されている。第1および第2の検出ビームO
DET1およびO
DET2のそれぞれは、実質的に+Y方向に、ひいては第1および第2の原子線158および160の公称ビーム経路と、原子線ジャイロスコープシステム150の受感軸とに直交して向けられる。第1および第2の検出ビームO
DET1およびO
DET2は、同じ方向に向けられる必要はないが、反対方向に向けられ得ることが理解されるべきである。
図3の例に関して上述したのと同様に、磁場勾配B
Gは、第1および第2の検出領域154および156に適用され得て、また、第1および第2の光学検出ビームO
DET1およびO
DET2は、それぞれ円偏光され得る。さらに、第1および第2の光学検出ビームO
DET1およびO
DET2は、絶対値が最大であるピークの傾きなど、原子線158および160のアルカリ金属原子の光学吸収スペクトルのピークからずらされる波長に調整され得る。
【0036】
第1および第2の光検出器168および170はそれぞれ、それぞれの検出領域154および156を出るそれぞれの第1および第2の光学検出ビームO
DET1′およびO
DET2′の強度を測定するように構成されている。このように、第1の光検出器168は、第1の検出領域154を出る第1の光学検出ビームO
DET1′の強度に基づく大きさを有する強度信号INT_1を生成し得て、また、第2の光検出器170は、第2の検出領域156を出る第2の光学検出ビームO
DET2′の強度に基づく大きさを有する強度信号INT_2を生成し得る。したがって、強度信号INT_1およびINT_2の大きさは、それぞれの原子線158および160のアルカリ金属原子による第1および第2の光学検出ビームO
DET1およびO
DET2の光子の吸収量に対応する。
図4の例では、第1および第2の強度信号INT_1およびINT_2はそれぞれ、ジャイロスコープセンサ172に提供される。
【0037】
原子線ジャイロスコープシステム150の構成に基づいて、第1および第2の強度信号INT_1およびINT_2のそれぞれは、互いに対して別々に独立に、それぞれの第1および第2の原子線158および160におけるアルカリ金属原子の運動と関連づけられ得る。結果として、ジャイロスコープセンサ172は、第1および第2の強度信号INT_1およびINT_2の大きさの間の差分に基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム150の回転と、原子線ジャイロスコープシステム150の線形加速度との両方を判定するように構成され得る。例として、受感軸(すなわち、二方向性原子線源152の中央に位置する)を中心とした時計回りの回転は、第1の原子線158中のアルカリ金属原子の軸方向の速度を−Y方向にし、また、第2の原子線160中のアルカリ金属原子の軸方向の速度を+Y方向にし得る。受感軸を中心とした反時計回りの回転は、第1の原子線158中のアルカリ金属原子の軸方向の速度を+Y方向にし、また、第2の原子線160中のアルカリ金属原子の軸方向の速度を−Y方向にし得る。しかしながら、原子線ジャイロスコープシステム150の+Y方向の線形加速度は、第1および第2の原子線158および160の両方のアルカリ金属原子の軸方向の速度を−Y方向にし、また、−Y方向の線形加速度は、+Y方向にし得る。
【0038】
したがって、
図1の例におけるジャイロスコーププロセッサ30は、第1および第2の強度信号INT_1およびINT_2の相対的な大きさに基づいて、受感軸を中心とした線形加速度と回転との両方を判定するように構成され得る。具体的には、ジャイロスコーププロセッサ30は、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム150の回転角θ
Gの計算から、Y軸における線形加速度を取り除くように構成され得る。したがって、加速度計は、Y軸における線形加速度の測定に関して、
図4の例におけるジャイロスコープセンサ172から省略し得る。しかしながら、Z軸における線形加速度は、原子線158および160のうちの一方における速度を増加させ、また、原子線158および160のうちの他方における速度を実質的に等しく減少させ得て、原子線ジャイロスコープシステム150がジャイロスコープスケールファクタ感度に依存し得るようにする。したがって、
図3の例に関して上述したのと同様に、原子線ジャイロスコープシステム150は、加速度計を含み得て、または、原子線158および160の速度制御を実装し得て、Z軸における線形加速度が与えるジャイロスコープスケールファクタ感度を実質的に緩和する。
【0039】
さらに、
図3および
図4の例における原子線ジャイロスコープシステム100および150が、各検出領域に対して一組の光学検出ビームと光検出器との組を含むと同時に、原子線ジャイロスコープシステム100および150は、冗長化のため、または、異なる受感軸を中心とした回転の計算のためなど、さらなる複数組の光学検出ビームと光検出器との組を含み得ることが理解されるべきである。例えば、
図3および
図4の例では、それぞれの検出領域の各々は、Y軸を中心としたそれぞれの原子線ジャイロスコープシステム100および150の回転をさらに計算するなど、+X方向または−X方向におけるアルカリ金属原子を励起するように構成された一組の光学検出ビームおよび光検出器の組を含み得る。
【0040】
図5は、本発明の一態様による原子線ジャイロスコープシステム200のさらなる別の例を示す。原子線ジャイロスコープシステム200は、二方向性原子線源202と、第1の検出領域204と、第2の検出領域206とを含む。例として、二方向性原子線源202は、2次元MOTとして構成され得る、または、2つの別々の3次元MOTもしくはアルカリ金属蒸気ビームセルとして構成され得る。したがって、二方向性原子線源202は、
図4の例において162の直交座標系を参照して上述したのと同様に、−Z軸方向に沿って第1の検出領域204内のビーム経路内に第1の原子線208を生成し、また、+Z軸方向に沿って第2の検出領域206内のビーム経路内に第2の原子線210を生成する。このように、第1および第2の原子線208および210は、
図4の例に関して上述したのと同様に、互いに反対方向に向けられる。
【0041】
また、原子線ジャイロスコープシステム200は、第1の検出レーザ214と、第2の検出レーザ216と、第1の光検出器218と、第2の光検出器220とも備える。
図4の例に関して上述したのと同様に、第1の検出レーザ214は、第1の検出領域204において第1の光学検出ビームO
DET1を生成するように構成され、また、第2の検出レーザ216は、第2の検出領域204において第2の光学検出ビームO
DET2を生成するように構成されている。このように、それぞれの検出領域204および206を出るそれぞれの第1および第2の光学検出ビームO
DET1′およびO
DET2′の強度は、第1および第2の光検出器218および220を介して測定され得る。このように、第1の光検出器218は、第1の検出領域204を出る第1の光学検出ビームO
DET1′の強度に基づく大きさを有する強度信号INT_1を生成し得て、また、第2の光検出器170は、第2の検出領域206を出る第2の光学検出ビームO
DET2′の強度に基づく大きさを有する強度信号INT_2を生成し得る。したがって、強度信号INT_1およびINT_2の大きさは、それぞれの原子線208および210のアルカリ金属原子による第1および第2の光学検出ビームO
DET1およびO
DET2の光子の吸収量に対応する。
【0042】
上述のように、第1および第2の光学検出ビームO
DET1およびO
DET2は、吸収スペクトル上における傾きの絶対値が最大である点に対応する波長に調整され得る。このように、アルカリ原子の速度が、光学検出ビームO
DET1およびO
DET2に対して+軸方向または−軸方向において増加するために、吸収スペクトルに沿った線形性を欠くのに基づいて、原子線208および210による光学検出ビームO
DET1およびO
DET2の光子の吸収は、動作範囲が限定され得る。したがって、原子線ジャイロスコープシステム200は、基準信号INT_REFに対する強度信号INT_1およびINT_2の大きさを監視するように構成された第1のエラー生成器222と第2のエラー生成器224とを含む。例として、基準信号INT_REFは、吸収スペクトル上における傾きの絶対値が最大である点の吸収強度に対応する大きさを有し得る。このように、第1および第2のエラー生成器222および224は、光学検出ビームO
DET1およびO
DET2に対する+軸方向または−軸方向の速度の増加から与えられるなど、基準信号INT_REFと強度信号INT_1およびINT_2との間の差分に対応するそれぞれのエラー信号ERR_1およびERR_2を生成し得る。このように、エラー信号ERR_1およびERR_2の大きさは、基準信号INT_REFに対するINT_1およびINT_2の強度変化によって引き起こされる吸収スペクトルに沿った周波数オフセットとともに線形に変化し得る。
【0043】
エラー信号ERR_1およびERR_2は、それぞれの第1および第2の検出レーザ214および216の各々に提供されて、第1および第2の検出レーザ214および216を動的に調整する。具体的には、エラー信号ERR_1およびERR_2は、吸収スペクトルに沿った周波数オフセットとともに線形に変化する大きさを有するため、エラー信号ERR_1およびERR_2は、それぞれの第1および第2の検出レーザ214および216を吸収スペクトル上における傾きの絶対値が最大である点に対応する周波数に調整し得る。したがって、原子線208および210による光学検出ビームO
DET1およびO
DET2の光子の吸収は、吸収スペクトル上における傾きの絶対値が最大である点に実質的に固定される光学検出ビームO
DET1およびO
DET2の周波数に基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム200の回転の最中であっても、実質的に最大の動作範囲を有し得る。第1および第2の検出レーザ214および216の調整は、実質的に固定周波数を有する検出レーザ214および216の例では、それぞれの音響光学変調器などの周波数シフト装置に提供されるエラー信号ERR_1およびERR_2に基づき得ることが理解されるべきである。
【0044】
さらに、エラー信号ERR_1およびERR_2は、ジャイロスコープセンサ226にも提供され、これは、
図1の例におけるジャイロスコープセンサ30に対応し得る。このように、ジャイロスコープセンサ226は、エラー信号ERR_1およびERR_2の大きさに基づいて、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム200の回転を測定し得る。上述のように、エラー信号ERR_1およびERR_2の大きさは、基準信号INT_REFに対するINT_1およびINT_2の強度変化によって引き起こされる吸収スペクトルに沿った周波数オフセットとともに線形に変化し得る。結果として、感度および線形性を実質的に最大化した状態で、受感軸を中心とした原子線ジャイロスコープシステム200の回転の測定が実行され得る。したがって、原子線ジャイロスコープシステム200は、受感軸を中心とした回転を高精度で測定し得る。受感軸を中心とした回転を計算するために、第1および第2のエラー生成器222および224を含むことは、原子線ジャイロスコープシステム200などの2つの原子線システムに限定されるものではなく、
図3の例における原子線ジャイロスコープシステム100などの単一の原子線ジャイロスコープシステムもまた含み得ることが理解されるべきである。
【0045】
図6は、本発明の一態様による三軸ジャイロスコープシステム250の例を示す。例として、三軸ジャイロスコープシステム250は、航空機および/または宇宙船ようの種々のナビゲーション制御システム、またはヨー、ピッチおよびロール回転運動情報をモニタリングするデバイスに実装され得る。
【0046】
三軸ジャイロスコープシステム250は、X軸ジャイロスコープシステム252と、Y軸ジャイロスコープシステム254と、Z軸ジャイロスコープシステム256とを含む。例として、X軸ジャイロスコープシステム252とY軸ジャイロスコープシステム254とZ軸ジャイロスコープシステム256とは、それぞれ、
図1の例における原子線ジャイロスコープシステム10に実質的に類似するように構成され得る。
図6の例において、X軸ジャイロスコープシステム252はX軸の周りに受感軸を有し得、Y軸ジャイロスコープシステム254はY軸の周りに受感軸を有し得、Z軸ジャイロスコープシステム256はZ軸の周りに受感軸を有し得る。原子線ジャイロスコープシステム252、254、および256のそれぞれの回転軸は、デカルト座標系258によって
図6の例に示される。このように、X軸ジャイロスコープシステム252とY軸ジャイロスコープシステム254とZ軸ジャイロスコープシステム256とは、それぞれ、吸収された光子のエネルギーと、アルカリ金属原子の角速度に起因するアルカリ金属原子のエネルギーとの間のドップラーシフトから生じ、測定された、原子線中のアルカリ金属原子の光学エネルギー吸収の変化に基づいて、それぞれの受感軸を中心とした回転角を計算するように構成され得る。従って、三軸ジャイロスコープシステム250は、X軸ジャイロスコープシステム252と、Y軸ジャイロスコープシステム254と、Z軸ジャイロスコープシステム256によって示される3つすべての受感軸を中心とした回転角を測定し得る。
【0047】
図6の例において、X軸ジャイロスコープシステム252と、Y軸ジャイロスコープシステム254と、Z軸ジャイロスコープシステム256とはそれぞれ、信号を出力するように示され、これらの信号は、運動センサ260に対するそれぞれの回転角θ
G_X、θ
G_Yおよびθ
G_Zを含む。このように、運動センサ260は、三軸ジャイロスコープシステム250を含む関連する車両またはデバイスの合計三軸回転運動を判定するように構成され得る。したがって、三軸ジャイロスコープシステム250を含む関連する車両またはデバイスのヨー、ピッチおよびロールが判定され得る。したがって、運動センサ260は、三軸ジャイロスコープシステム250を含む関連する車両またはデバイスの三軸回転運動を表示、出力、または報告を行うか、あるいはこれらの組み合わせを行うように構成され得る。
【0048】
上記された前述の構造的特徴および機能的特徴に関連して、本発明の様々な態様による方法論は、
図7を参照することによりよく認識される。説明の簡略化のために、
図7の方法論は逐次的に実行するように示され、記載されているが、本発明によれば、一部の態様が本明細書に示され記載されるものとは別の順序で、またはその他の態様と同時に、またはこれらの組み合わせでおこるため、本発明が示される順序に限定されないことが理解され、認識されるべきである。さらに、示される特徴のすべてが、本発明の態様による方法論を実装するように必要とされ得るわけではない。
【0049】
図7は、受感軸を中心とした回転角を計算する方法300の例を示す。302において、アルカリ金属原子を含む原子線は、受感軸に直交する検出領域の長さに沿って生成される。アルカリ金属原子は、ルビジウム(Rb)またはセシウム(Cs)であり得る。原子線は、2次元MOTもしくは3次元MOT、またはアルカリ金属蒸気ビームセルなどの様々な異なる種類の原子線源により生成され得る。304において、光学検出ビームが生成され、これは、光学検出ビームに対する軸方向の速度が実質的にゼロである原子線中のアルカリ金属原子による光子の吸収確率ピークに対応して第2の波長から所定の量だけずらされる第1の波長を有する。光学検出ビームは、ドップラーフリー吸光分光光度計に基づく波長にロックされる検出レーザから生成され得る。検出レーザは、ドップラーフリー吸光分光光度計から光学的に分割され得る。
【0050】
306において、検出領域は、光学検出ビームを用いて照射されて、アルカリ金属原子を励起する。光学検出ビームは、受感軸および原子線の公称ビーム経路の両方に対して直交の向きに、検出領域を通過し得る。308において、原子線中のアルカリ金属原子による光学検出ビームの光吸収を測定される。光吸収は、検出領域を出る光学検出ビームの強度の測定に基づいて、または、アルカリ金属原子から放出される光子の蛍光を測定することにより、測定され得る。光吸収は、公称ビーム経路からずれるアルカリ金属原子に対する光学検出ビームの光子のドップラーシフトに基づくだけでなく、磁場勾配および光学検出ビームの円偏光が引き起こすゼーマンシフトにも基づき得る。
【0051】
310において、測定される光学検出ビームの吸収に関連する強度信号が生成される。強度信号は、検出領域を出る光学検出ビームの強度に関連する大きさを有することができ、このように、原子線中のアルカリ金属原子による光学検出ビームの光子の吸収を示す。強度信号は、反対方向に向けられる2つの原子線のための、2つの別々の光学検出ビームからの1つまたは2つの強度信号であり得る。このように、2つの強度信号は、実装されて、原子線ジャイロスコープシステムの線形加速度を判定し、取り除くことができる。312において、原子線中のアルカリ金属原子のエネルギーのドップラーシフトに起因する強度信号の大きさに基づいて、受感軸を中心とした回転角が計算される。ドップラーシフトは、受感軸を中心としたジャイロスコープシステムの回転が引き起こす、光学検出ビームに対するアルカリ金属原子の軸方向の速度が得られ得る。
【0052】
本発明の例を説明してきた。当然ながら、本発明を記載する目的のために、構成要素または方法論の考え得るすべての組み合わせを記載することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるすべてのこのような代替物、修正物および変化形を含むことを意図される。