特許第5798656号(P5798656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798656ウレタン製バンパスプリングおよびその製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5798656
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ウレタン製バンパスプリングおよびその製法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20151001BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20151001BHJP
   F16F 1/37 20060101ALI20151001BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20151001BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20151001BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20151001BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20151001BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20151001BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20151001BHJP
   B29L 31/00 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
   F16F9/58 B
   F16F9/54
   F16F1/37 C
   F16F7/00 B
   B29C39/02
   B29C39/24
   C08G18/42 F
   B29K75:00
   B29K105:04
   B29L31:00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-63589(P2014-63589)
(22)【出願日】2014年3月26日
【審査請求日】2015年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 琢也
(72)【発明者】
【氏名】中村 順和
(72)【発明者】
【氏名】水▲崎▼ 雅薫
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−293697(JP,A)
【文献】 特開2006−56132(JP,A)
【文献】 特開平9−302059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
F16F 1/37
F16F 7/00
B29C 39/02
B29C 39/24
C08G 18/42
B29K 75/00
B29K 105/04
B29L 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングであって、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)および(2)の関係を満たすことを特徴とするウレタン製バンパスプリング。
1.0≦Da/Db<1.34 ……(1)
0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2)
【請求項2】
上記ポリエステル系ポリオールが、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなる、請求項1記載のウレタン製バンパスプリング。
【請求項3】
請求項1または2記載のウレタン製バンパスプリングの製法であって、成形型のキャビティ内に、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、70℃以上で加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程とを備えることを特徴とするウレタン製バンパスプリングの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドに装着され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限するウレタン製バンパスプリングおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図1に示すように、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバ30のピストンロッド31には、ゴムや発泡ポリウレタン樹脂等の弾性体からなる略筒状(蛇腹形状)のバンパスプリング2が外挿され、このショックアブソーバ30のシリンダ(アブソーバプレート)32と、車体側の取付部(アッパーサポート33)との間に配置されている(特許文献1参照)。
【0003】
この車両用バンパスプリングの代表として、発泡ポリウレタン樹脂(以下「ウレタン」と略す)を用いたウレタン製バンパスプリングがあげられる。また、上記ウレタン製バンパスプリングを製造する方法としては、通常、成形型(金型)を用いたモールド成形が用いられる(特許文献2参照)。
【0004】
上記ウレタンのモールド成形は、主型(おもがた)と中子(なかご)からなる成形型(金型)の成形キャビティ内に、ウレタン原料を注入(注型)して加熱することにより、成形型内においてウレタン原料を反応(発泡)させて硬化させた後、上記成形型から取り出し、筒状のウレタン成形体内側の成形型中子を抜き取って(脱型して)から、製品としてのウレタン製バンパスプリングを得る方法である。なお、ウレタンの発泡・硬化方法には、一次加硫,二次加硫の2段階の加熱ステップを経て行う方法もあり、その場合は、一次加硫したウレタン成形体(半硬化品)内側の成形型中子を抜き取って(脱型して)から、このウレタン成形体をさらに加熱して二次加硫させ、完全硬化品(製品)としてのウレタン製バンパスプリングを得る(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3758343号公報
【特許文献2】特開2004−293697号公報
【特許文献3】特開2006−56132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウレタン製バンパスプリングには、高荷重、高変形に耐えることが要求されるため、通常、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料が用いられる。しかしながら、NDIの材料コストが高いため、汎用車種へ展開しづらいといった課題がある。そのため、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるバンパスプリングが要望されている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるウレタン製バンパスプリングおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングであって、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)および(2)の関係を満たすウレタン製バンパスプリングを第1の要旨とする。
1.0≦Da/Db<1.34 ……(1)
0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2)
【0009】
また、本発明は、第1の要旨のウレタン製バンパスプリングの製法であって、成形型のキャビティ内に、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、70℃以上で加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程とを備えるウレタン製バンパスプリングの製法を第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者は、低コストなジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料を用いることを検討してみたが、先に述べたように耐久性や耐へたり性の点で問題がある。その要因を突き止めるべく本発明者が更に研究したところ、ウレタン製バンパスプリングのスキン層とコア部との密度および発泡セル径が明らかに異なることに起因し、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料を用いたバンパスプリングでは、歪み(応力集中)による内部クラック(破断)が発生しやすく、その結果、耐久性や耐へたり性に劣るとの知見を得た。型成形製のウレタン製バンパスプリングであれば、その外層(成形型との接触部分)には、上記のようにスキン層が形成される。上記のようにスキン層が問題となるのであれば、脱型後にスキン層を切削するといった対処法もあるが、この対処法では、寸法精度が出ない、製造工程が煩雑になる等の問題が残る。そこで、本発明者は、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることを研究した結果、ポリオール成分の最適化、製法の最適化等により、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料であっても、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることができることを突き止めた。すなわち、本発明に示すように、スキン層とコア部との密度および発泡セル径が特定の関係を満たすことにより、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタン製バンパスプリングは、型成形後に係る中空円筒状のものであって、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料からなり、そのスキン層の密度および発泡セル径と、コア部の密度および発泡セル径とが、特定の関係を満たす。そのため、本発明のウレタン製バンパスプリングは、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性に優れ、しかもコストダウンを図ることができる。
【0012】
また、本発明のウレタン製バンパスプリングの製法は、成形型のキャビティ内に、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、70℃以上で加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程とを備えている。このような製法により、上記のような本発明のウレタン製バンパスプリングを良好に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウレタン製バンパスプリングの実施形態を示す説明図である。
図2】本発明のウレタン製バンパスプリングに係る、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真である。
図3】従来のウレタン製バンパスプリングに係る、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真である。
図4】実施例におけるウレタン製バンパスプリングの耐久性試験の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0015】
本発明のウレタン製バンパスプリングは、自動車のサスペンション装置におけるショックアブソーバのピストンロッドに、その作動ストロークを弾性的に制限するストッパ等として嵌装されるものであり、外見上は、例えば図1に示すような従来のウレタン製バンパスプリングと同様、中空円筒状の形状である。
【0016】
本発明のウレタン製バンパスプリングは、型成形製であることから、従来の型成形製ウレタンバンパスプリングと同様、その外層(成形型との接触部分)にスキン層を有している。しかしながら、本発明のウレタン製バンパスプリングは、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料からなり、スキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)および(2)の関係を満たす。ここで、本発明における「スキン層」とは、成形体表面から厚み方向に2mm以内の部分のことをいい、「コア部」とは、それより深い部分のことをいう。
1.0≦Da/Db<1.34 ……(1)
0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2)
【0017】
図2は、本発明のウレタン製バンパスプリングにおける、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真(50倍)である。一方、図3は、従来のウレタン製バンパスプリングにおける、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真(50倍)である。上記断面写真より、本発明のウレタン製バンパスプリングのほうが、スキン層とコア部との発泡状態に差がないことがわかる。なお、図2の、本発明のウレタン製バンパスプリングにおけるスキン層とコア部が、前記式(1)および(2)の関係を満たすものであり、図3の、従来のウレタン製バンパスプリングにおけるスキン層とコア部は、前記式(1)および(2)の関係を満たさないものである。
【0018】
本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのスキン層の密度(Da)およびコア部の密度(Db)は、前記式(1)に示す関係を満たす必要があるが、スキン層の密度(Da)は0.4〜0.7g/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.6g/cmの範囲である。そして、コア部の密度(Db)は0.4〜0.7g/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.6g/cmの範囲である。
【0019】
また、本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのスキン層の発泡セル径(Ra)およびコア部の発泡セル径(Rb)は、前記式(2)に示す関係を満たす必要があるが、スキン層の発泡セル径(Ra)は25〜400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜300μmの範囲である。そして、コア部の発泡セル径(Rb)は25〜400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜300μmの範囲である。
【0020】
本発明において、スキン層とコア部の密度は、その部位のサンプルに対し、例えば、東洋精機社製の自動比重計DSG−1を用いて測定される。また、スキン層とコア部の発泡セル径は、例えば、前記のような電子顕微鏡による断面写真をもとに、その発泡セル(中空の気泡)の直径(セル径)の10点平均を測定したものである。
【0021】
本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、先に述べたように、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料を用いていても、そのスキン層の密度および発泡セル径と、コア部の密度および発泡セル径とが前記の関係を満たすのは、主に、そのポリオール成分の最適化、製法の最適化によるものである。
【0022】
すなわち、上記ウレタン原料におけるポリオール成分として、本発明では、ポリエステル系ポリオールが用いられる。上記ポリエステル系ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなる、ポリエステル系ポリオールが用いられる。すなわち、上記特定のポリエステル系ポリオールと、MDIとを含有するウレタン原料を用い、後述のように成形型の温度を高温にして一次加硫させることにより、前記に示すようなスキン層およびコア部を有する本発明のウレタン製バンパスプリングを良好に製造することができるからである。
【0023】
なお、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールは、その凝固点が低いため、例えばプレポリマー法を採用する際には、一旦溶融してからプレポリマーを調製するといった作業が不用となることから、プレポリマーの調製が容易となる。また、その凝固点の低さから、プレポリマー法よりも工程の少ないワンショット法を採用することもできる。このように、上記特定のポリエステル系ポリオールを用いることにより、製法上の利点も得られるようになる。
【0024】
そして、上記ポリエステル系ポリオールとしては、その数平均分子量(Mn)が500〜4000であることが好ましく、より好ましくは数平均分子量(Mn)1000〜3000の範囲である。すなわち、このような数平均分子量のポリエステル系ポリオールを用いることにより、先に述べたような特徴的構造のバンパスプリングを良好に作製することができるからである。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー測定等により求めることができる。
【0025】
上記ポリエステル系ポリオールとともに用いられるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、2,2′−MDI、2,4′−MDI、4,4′−MDI、ポリメリックMDIがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0026】
本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのウレタン原料としては、上記のように、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするものが用いられる。そして、上記イソシアネート成分の、ポリオール成分に対する配合割合は、そのNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)]が0.9〜1.3の範囲となるよう配合することが、先に述べたような特徴的構造のバンパスプリングを良好に作製する観点から好ましい。同様の観点から、上記NCOインデックスは、より好ましくは、1.0〜1.2の範囲である。
【0027】
そして、上記ウレタン原料には、ポリオール成分、イソシアネート成分の他、必要に応じ、水等の発泡剤、鎖延長剤、触媒、整泡剤、加水分解防止剤、難燃剤、減粘剤、安定剤、充填剤、架橋剤、着色剤等が配合される。
【0028】
ここで、本発明におけるウレタン製バンパスプリングを製造する方法は、例えば、
1)主型(おもがた)と中子(なかご)とからなる成形型(金型)を準備する金型準備工程と、
2)上記金型の成形キャビティ内にウレタン原料を注入(注型)して加熱し、このウレタン原料を発泡・硬化(半硬化)させて、バンパスプリングの成形体(半製品)を得る一次加硫工程と、
3)上記一次加硫後のバンパスプリング成形体を主型より取り出し、ついでこの成形体の内周から中子を抜き取る脱型工程と、
4)上記脱型後のバンパスプリング成形体を加熱し、ウレタンの硬化反応を完了させて、ウレタン製バンパスプリングの製品を得る二次加硫工程と、からなる。
【0029】
本発明におけるウレタン製バンパスプリングは、上記1)〜4)に準じ、具体的には、つぎのようにして作製される。
【0030】
[金型準備工程]
まず、バンパスプリング(図1参照)の形状と同じキャビティを形成することのできる金型を用意する。また、必要に応じ、その中子の表面(外周面)に、スプレーあるいはその他の方法により、離型剤を塗布し、乾燥させて、この離型剤からなる均一な被膜を形成する。そして、主型と中子を組合せ、所定の成形キャビティを形成した後、所定の温度(70℃以上)まで金型を加温する。
【0031】
[一次加硫工程]
つぎに、上記成形型のキャビティ内に、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、70℃以上(好ましくは70〜130℃)で、2〜60分間加熱して、発泡,硬化させ、ポリウレタンフォーム化させることにより、一次加硫したバンパスプリング成形体(半製品)を作製する。なお、上記加熱温度は、150℃以上になると、成形体の表面ふくれを生じるおそれもある。また、上記ウレタン原料は、プレポリマー法に従い、一旦プレポリマーを調製してから上記成形型のキャビティ内に注入してもよく、また、ワンショット法に従い、ポリオール成分とイソシアネート成分とを上記成形型のキャビティ内で混合するようにしてもよい。
【0032】
[脱型工程]
つぎに、一次加硫の完了したバンパスプリング成形体を主型より取り出し、ついでこの成形体の内周から中子を抜き取る。
【0033】
[二次加硫工程]
その後、上記のようにして金型から取り出されたバンパスプリング成形体を、加熱炉等を用いて、所定の条件にしたがって加熱し、成形体中に残存する未反応のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを充分に反応させ、硬化反応を終了させて、ウレタン製バンパスプリングの完成品を得る。なお、上記二次加硫工程における加熱条件としては、100〜150℃程度の温度にて、3〜20時間程度加熱する条件が採用される。
【0034】
このようにして得られた本発明のウレタン製バンパスプリングは、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングに適する。
【実施例】
【0035】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0036】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0037】
〔ポリオール剤〕
そのポリオール成分がポリエステル系ポリオールであるポリオール剤(トラール HT−2040、DIC社製)
【0038】
〔鎖延長剤〕
エチレングリコール
【0039】
〔触媒〕
トラール SM−2、DIC社製
【0040】
〔発泡剤〕
【0041】
〔イソシアネート剤〕
そのイソシアネート成分がMDIである、イソシアネート剤(トラール F−2560、DIC社製)
【0042】
[実施例1]
ポリオール剤100重量部と、鎖延長剤11.8重量部と、触媒1.1重量部と、発泡剤0.6重量部とからなるA液を調製した。また、イソシアネート剤169.3重量部からなるB液を準備した。つぎに、図4に示すようなバンパスプリング40の形状と同じキャビティを形成することのできる金型(主型と中子)を用意した。そして、上記主型と中子を組合せ、所定の成形キャビティを形成した後、上記主型と中子からなる金型を加温した。続いて、上記A液およびB液を、3000rpmで5秒間撹拌した(液温:40±1℃、NCOインデックス:1.0)後、上記金型内に注入し、その金型温度を70℃に保持したまま10分間、一次加硫させた。そして、上記一次加硫後のウレタン成形体を、金型より脱型し、さらにオーブンにて二次加硫(110℃×16時間)させ、目的とするウレタン製バンパスプリング(高さ(A)75mm、内径(B)20mm、外径(C)57mm《図4参照》)を作製した。
【0043】
[実施例2〜4、比較例1]
後記の表1に示すように、各成分の配合量等は、実施例1に準ずるが、一次加硫時の金型温度を実施例1と変更した。このようにして、図4に示すような形状のウレタン製バンパスプリング(高さ(A)75mm、内径(B)20mm、外径(C)57mm《図4参照》)を作製した。
【0044】
上記のようにして得られた実施例および比較例のウレタン製バンパスプリングに関し、下記の基準に従い、各特性の測定および評価を行った。これらの結果を後記の表1に併せて示した。
【0045】
〔密度〕
バンパスプリングの断面におけるスキン層(成形体表面から厚み方向に2mm以内)とコア部(スキン層より深い部分)から、それぞれサンプルを切り出し、東洋精機社製の自動比重計DSG−1を用いて、スキン層の密度Da(g/cm)、コア部の密度Db(g/cm)を測定し、Da/Dbを求めた。なお、上記の、比重計による密度測定は、3箇所、各2サンプルの計6回測定を実施し、その平均値を測定値とした。
【0046】
〔発泡セル径〕
バンパスプリングの断面におけるスキン層(成形体表面から厚み方向に2mm以内)とコア部(スキン層より深い部分)の電子顕微鏡写真をとり、その気泡(中空)の直径(セル径)の10点平均から、スキン層の発泡セル径Ra(μm)、コア部の発泡セル径Rb(μm)を測定し、Ra/Rbを求めた。
【0047】
〔耐久性〕
図4に示すように、取付金具43と、ピストンロッド41と、当たり部42とを備えたサーボ耐久試験機に、バンパスプリング40を取付け、周波数2Hzで0〜7000Nの繰り返し(20万回)圧縮試験を行った。なお、バンパスプリング40の高さ(A)は75mmであり、内径(B)は20mmであり、外径(C)は57mmである。また、ピストンロッド41の外径(D)は12.5mmであり、当たり部42の外径(E)は50mmである。そして、初期および20万回圧縮試験後のバンパスプリングの外観を観察し、圧縮試験後に亀裂等の問題がみられたものを「×」、亀裂等の問題がみられなかったものを「○」と評価した。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表の結果から、実施例のバンパスプリングは、耐久性試験後においても亀裂等の問題がみられなかったのに対し、比較例1のバンパスプリングは、Da/Dbの値が大きすぎ、それに起因して、耐久性試験後において内部亀裂を生じ、外観に亀裂がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のウレタン製バンパスプリングは、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングに適する。
【要約】      (修正有)
【課題】高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるウレタン製バンパスプリングおよびその製法を提供する。
【解決手段】ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料からなるウレタン製バンパスプリングであって、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)および(2)の関係を満たす。1.0≦Da/Db<1.34……(1)、0.53<Ra/Rb≦1.0……(2)
【選択図】図1
図1
図4
図2
図3